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特許7113031基板収納容器の成形方法、金型、及び、基板収納容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】基板収納容器の成形方法、金型、及び、基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20220728BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019559380
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2018040192
(87)【国際公開番号】W WO2020089986
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000140890
【氏名又は名称】ミライアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】松鳥 千明
【審査官】齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179324(WO,A1)
【文献】特開平6-181254(JP,A)
【文献】特開2014-192230(JP,A)
【文献】特開2010-267761(JP,A)
【文献】特開2005-005396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、
前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、
前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、
前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、
前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、
前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する、前記容器本体及び前記側方基板支持部を一体成形する基板収納容器の成形方法であって、
固定型と可動型とを有する金型の内部の成形空間において、前記固定型に対する前記可動型の移動方向である水平方向に対して、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が、所定の角度をなす方向へ傾いた状態で、前記容器本体を成形する容器本体成形工程と、
前記可動型を前記固定型から後退するように移動をさせ、前記可動型から前記成形空間において成形された前記容器本体を抜く引き抜き工程と、を有する、基板収納容器の成形方法。
【請求項2】
前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成され、
水平方向を基準として、前記容器本体成形工程において成形されて前記成形空間にある前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が傾く方向と、水平方向を境界線とした同じ側に傾いている請求項1に記載の基板収納容器の成形方法。
【請求項3】
前記所定の角度は、0.1°以上1°以下である請求項1又は請求項2に記載の基板収納容器の成形方法。
【請求項4】
複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、
前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、
前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、
前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、
前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、
前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する、前記容器本体及び前記側方基板支持部が一体成形された基板収納容器を成形する金型であって、
固定型と、
前記固定型に対して移動可能な可動型と、
前記固定型と前記可動型とにより形成される金型内部の成形空間であって、前記固定型に対する前記可動型の移動方向である水平方向に対して、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が、所定の角度をなす方向へ傾いた状態で、前記容器本体が成形される成形空間を有する、基板収納容器を成形する金型。
【請求項5】
前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成され、
水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が傾く方向と、水平方向を境界線とした同じ側に傾いている請求項4に記載の金型。
【請求項6】
前記所定の角度は、0.1°以上1°以下である請求項4又は請求項5に記載の金型。
【請求項7】
複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、
前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、
前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、
前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、
前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、
前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触し、
前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成されている基板収納容器。
【請求項8】
前記容器本体を固定型と可動型とを有する金型の内部の成形空間において成形した後に可動型を移動させる方向である水平方向に平行に生ずる移動方向線を基準として、前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、前記移動方向線を基準として、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向と、前記移動方向線を境界線とした同じ側に傾いている請求項7に記載の基板収納容器。
【請求項9】
前記移動方向線と前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向とは所定の角度をなし、
前記所定の角度は、0.1°以上1°以下である請求項8に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる基板を収納、保管、搬送、輸送等する際に使用される基板収納容器の成形方法、金型、及び、基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハからなる基板を収納して、工場内の工程において搬送するための基板収納容器としては、容器本体と蓋体とを備える構成のものが、従来より知られている(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。
【0003】
容器本体の一端部は、容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する。容器本体の他端部は、閉塞された筒状の壁部を有する。容器本体内には基板収納空間が形成されている。基板収納空間は、壁部により取り囲まれて形成されており、複数の基板を収納可能である。蓋体は、開口周縁部に対して着脱可能であり、容器本体開口部を閉塞可能である。側方基板支持部は、基板収納空間内において対をなすように壁部に設けられている。側方基板支持部は、蓋体によって容器本体開口部が閉塞されていないときに、隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板の縁部を支持可能である。
【0004】
蓋体の部分であって容器本体開口部を閉塞しているときに基板収納空間に対向する部分には、フロントリテーナが設けられている。フロントリテーナは、蓋体によって容器本体開口部が閉塞されているときに、複数の基板の縁部を支持可能である。また、フロントリテーナと対をなすようにして、奥側基板支持部が壁部に設けられている。奥側基板支持部は、複数の基板の縁部を支持可能である。奥側基板支持部は、蓋体によって容器本体開口部が閉塞されているときに、フロントリテーナと協働して複数の基板を支持することにより、隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-186967号公報
【文献】特許4584023号公報
【文献】特許4030280号公報
【文献】特許4150465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の基板収納容器においては、側方基板支持部に対して基板をX、Y、Z方向のそれぞれにおいて、精密な位置に載置する必要がある。基板に様々な処理を施し半導体チップに作り上げる過程に於いて、基板は、装置により頻繁に基板収納容器から出し入れが行われるが、その際に、基板の破損、擦りキズ等を防ぐためである。そこで、一般的には、基板が載せられる側方基板支持部の上面の部分であって基板と接触する部分には突起が設けられ、突起により基板の精密な位置調整が行われると共に、基板に対する最小の接触面積とするために、突起は、基板の外周に於いて、点接触する様な、又は、数ミリが線接触する様な形状を有している。
【0007】
基板収納容器は、射出成形にて成形されて製造される。そして前述の突起を形成するためには、基板収納容器を成形する金型の、側方基板支持部を成形する部分に、突起となる形状の部分を彫り込む必要が有る。しかし、従来、側方基板支持部を容器本体に一体成形していなかったものに対して、側方基板支持部を容器本体の内面に一体成形しようとする場合には、容器本体を金型から離型する際に、突起はアンダーカットとなる。このため、一体成形する場合には、金型にスライド構造を設ける必要がある。
【0008】
金型にスライド構造を設けると、金型の作動動作が複雑になり、金型破損防止のため動作速度を落す必要がある。その結果、成形サイクルが長くなり、生産効率が低下するという問題が生ずる。また、金型の構造が複雑になるため、溶融樹脂の熱量を吸収するために金型内に冷却水を循環させる金型の冷却回路を最適な位置に最適な回路で設置することが難くなり、冷却時間が延びるという問題が生ずる。
【0009】
本発明は、金型にスライド構造を設けずに、容器本体と側方基板支持部とを一体成形することが可能な基板収納容器の成形方法、金型、及び、基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する、前記容器本体及び前記側方基板支持部を一体成形する基板収納容器の成形方法であって、固定型と可動型とを有する金型の内部の成形空間において、前記固定型に対する前記可動型の移動方向である水平方向に対して、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が、所定の角度をなす方向へ傾いた状態で、前記容器本体を成形する容器本体成形工程と、前記可動型を前記固定型から後退するように移動をさせ、前記可動型から前記成形空間において成形された前記容器本体を抜く引き抜き工程と、を有する、基板収納容器の成形方法に関する。
【0011】
また、前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成され、水平方向を基準として、前記容器本体成形工程において成形されて前記成形空間にある前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が傾く方向と、水平方向を境界線とした同じ側に傾いていることが好ましい。また、前記所定の角度は、0.1°以上1°以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、
前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する、前記容器本体及び前記側方基板支持部が一体成形された基板収納容器を成形する金型であって、固定型と、前記固定型に対して移動可能な可動型と、前記固定型と前記可動型とにより形成される金型内部の成形空間であって、前記固定型に対する前記可動型の移動方向である水平方向に対して、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が、所定の角度をなす方向へ傾いた状態で、前記容器本体が成形される成形空間を有する、基板収納容器を成形する金型に関する。
【0013】
また、前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成され、水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、水平方向を基準として、前記成形空間にある前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向が傾く方向と、水平方向を境界線とした同じ側に傾いていることが好ましい。また、前記所定の角度は、0.1°以上1°以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、前記基板収納空間内において対をなすように、前記容器本体に一体成形されて設けられ、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、を備え、前記側方基板支持部は、前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部と、前記容器本体の前記一端部に対する他端部とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成され、前記側方基板支持部の上面は、前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触する基板接触部を有し、前記基板接触部はバンプを有し、前記バンプの頂部は前記基板の縁部を支持しているときに前記基板に接触し、前記バンプに関して前記容器本体の一端部の前記容器本体開口部側、前記容器本体の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面、他端部側斜面により構成されている基板収納容器に関する。
【0015】
また、前記容器本体を固定型と可動型とを有する金型の内部の成形空間において成形した後に可動型を移動させる方向である水平方向に平行に生ずる移動方向線を基準として、前記容器本体における前記バンプの前記他端部側斜面が傾く方向は、前記移動方向線を基準として、前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向と、前記移動方向線を境界線とした同じ側に傾いていることが好ましい。
【0016】
また、前記移動方向線と前記容器本体の開口周縁部の端縁全周を通る平面に直交する方向とは所定の角度をなし、前記所定の角度は、0.1°以上1°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金型にスライド構造を設けずに、容器本体と側方基板支持部とを一体成形することが可能な基板収納容器の成形方法、金型、及び、基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1に複数の基板Wが収納された様子を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2を示す上方斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2を示す下方斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2を示す側方断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2が金型Mの成形空間M0において成形された後に、金型Mが型開きした様子を示す概略説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1の基板支持板状部5の板部51を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、第1実施形態による基板収納容器1及び金型Mについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、基板収納容器1に複数の基板Wが収納された様子を示す分解斜視図である。図2は、基板収納容器1の容器本体2を示す上方斜視図である。図3は、基板収納容器1の容器本体2を示す下方斜視図である。図4は、基板収納容器1の容器本体2を示す側方断面図である。
なお、図4においては、便宜上、給気用フィルタ部90、リブ235、及び、トップフランジ236の図示を省略している。
【0020】
ここで、説明の便宜上、後述の容器本体2から蓋体3へ向かう方向(図1における右上から左下へ向かう方向)を前方向D11と定義し、その反対の方向を後方向D12と定義し、これらをあわせて前後方向D1と定義する。また、後述の下壁24から上壁23へと向かう方向(図1における上方向)を上方向D21と定義し、その反対の方向を下方向D22と定義し、これらをあわせて上下方向D2と定義する。また、後述する第2側壁26から第1側壁25へと向かう方向(図1における右下から左上へ向かう方向)を左方向D31と定義し、その反対の方向を右方向D32と定義し、これらをあわせて左右方向D3と定義する。主要な図面には、これらの方向を示す矢印を図示している。
【0021】
また、基板収納容器1に収納される基板W(図1参照)は、円盤状のシリコンウェーハ、ガラスウェーハ、サファイアウェーハ等であり、産業に用いられる薄いものである。本実施形態における基板Wは、直径300mmのシリコンウェーハである。
【0022】
図1に示すように、基板収納容器1は、上述のようなシリコンウェーハからなる基板Wを収納して、工場内の工程において搬送する工程内容器として用いられたり、陸運手段・空運手段・海運手段等の輸送手段により基板を輸送するための出荷容器として用いられたりするものであり、容器本体2と、蓋体3とから構成される。容器本体2は、側方基板支持部としての基板支持板状部5と、奥側基板支持部6(図2等参照)とを備えており、蓋体3は、蓋体側基板支持部としての図示しないフロントリテーナを備えている。
【0023】
容器本体2は、一端部に容器本体開口部21が形成され、他端部が閉塞された筒状の壁部20を有する。容器本体2内には基板収納空間27が形成されている。基板収納空間27は、壁部20により取り囲まれて形成されている。壁部20の部分であって基板収納空間27を形成している部分には、基板支持板状部5が設けられている。基板収納空間27には、図1に示すように、複数の基板Wを収納可能である。
【0024】
基板支持板状部5は、基板収納空間27内において対をなすように壁部20に一体成形されて設けられている。基板支持板状部5は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能である。基板支持板状部5の奥側には、奥側基板支持部6が基板支持板状部5と一体成形されて設けられている。
【0025】
奥側基板支持部6(図2等参照)は、基板収納空間27内において後述する図示しないフロントリテーナと対をなすように壁部20に一体成形されて設けられている。奥側基板支持部6は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、複数の基板Wの縁部の後部を支持可能である。
【0026】
蓋体3は、容器本体開口部21を形成する開口周縁部28(図1等)に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能である。図示しないフロントリテーナは、蓋体3の部分であって蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに基板収納空間27に対向する部分に設けられている。図示しないフロントリテーナは、基板収納空間27の内部において奥側基板支持部6と対をなすように配置されている。
【0027】
図示しないフロントリテーナは、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより複数の基板Wの縁部の前部を支持可能である。図示しないフロントリテーナは、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、奥側基板支持部6と協働して複数の基板Wを支持することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で保持する。
【0028】
基板収納容器1は、プラスチック材等の樹脂で構成されており、特に説明が無い場合には、その材料の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等が上げられる。これらの成形材料の樹脂には、導電性を付与する場合には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性物質が選択的に添加される。また、剛性を上げるためにガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。
【0029】
以下、各部について、詳細に説明する。
図1に示すように、容器本体2の壁部20は、奥壁22と上壁23と下壁24と第1側壁25と第2側壁26とを有する。奥壁22、上壁23、下壁24、第1側壁25、及び第2側壁26は、上述した材料により構成されており、一体成形されて構成されている。
【0030】
第1側壁25と第2側壁26とは対向しており、上壁23と下壁24とは対向している。上壁23の後端、下壁24の後端、第1側壁25の後端、及び第2側壁26の後端は、全て奥壁22に接続されている。上壁23の前端、下壁24の前端、第1側壁25の前端、及び第2側壁26の前端は、略長方形状をした容器本体開口部21を形成する開口周縁部28を構成する。
【0031】
開口周縁部28は、容器本体2の一端部に設けられており、奥壁22は、容器本体2の他端部に位置している。壁部20の外面により形成される容器本体2の外形は箱状である。壁部20の内面、即ち、奥壁22の内面、上壁23の内面、下壁24の内面、第1側壁25の内面、及び第2側壁26の内面は、これらによって取り囲まれた基板収納空間27を形成している。開口周縁部28に形成された容器本体開口部21は、壁部20により取り囲まれて容器本体2の内部に形成された基板収納空間27に連通している。基板収納空間27には、最大で25枚の基板Wを収納可能である。
【0032】
図1に示すように、上壁23及び下壁24の部分であって、開口周縁部28の近傍の部分には、基板収納空間27の外方へ向かって窪んだラッチ係合凹部231A、231B、241A、241Bが形成されている。ラッチ係合凹部231A、231B、241A、241Bは、上壁23及び下壁24の左右両端部近傍に1つずつ、計4つ形成されている。
【0033】
図1に示すように、上壁23の外面においては、リブ235が、上壁23と一体成形されて設けられている。リブ235は、容器本体2の剛性を高める。また、上壁23の中央部には、トップフランジ236が固定される。トップフランジ236は、AMHS(自動ウェーハ搬送システム)、PGV(ウェーハ基板搬送台車)等において基板収納容器1を吊り下げる際に、基板収納容器1において掛けられて吊り下げられる部分となる部材である。
【0034】
図3に示すように、下壁24の四隅には、通気路210(図4参照)として、2種類の貫通孔である給気孔242と排気孔243(図1参照)が形成されている。本実施形態においては、下壁24の前部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部の気体を排出するための排気孔243であり、後部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部に気体を給気するための給気孔242である。給気孔242としての貫通孔には、給気用フィルタ部90が配置されており、排気孔243としての貫通孔には、排気用フィルタ部90Aが配置されている。従って、給気用フィルタ部90及び排気用フィルタ部90Aの内部の気体の流路は、基板収納空間27と容器本体2の外部の空間とを連通可能な通気路210の一部を構成する。また、給気用フィルタ部90と排気用フィルタ部90Aとは、壁部20に配置されており、給気用フィルタ部90と排気用フィルタ部90Aとにおいては、容器本体2の外部の空間と基板収納空間27との間で気体が通過可能である。
【0035】
基板支持板状部5は、第1側壁25及び第2側壁26にそれぞれ設けられており、左右方向D3において対をなすようにして基板収納空間27内に設けられている。具体的には、図4等に示すように、基板支持板状部5は、容器本体2の一端部の容器本体開口部21と、容器本体2の一端部に対する他端部の奥壁22とを結ぶ方向に延びる上面及び下面を有する板状に形成された板部51を有している。板部51と容器本体2の壁部20の第1側壁25、第2側壁26とは、樹脂材料が一体成形されて構成されており、板部51は、第1側壁25又は第2側壁26によって支持されている。
【0036】
板部51は、板状の略弧形状を有している。板部51は、第1側壁25、第2側壁26それぞれに、上下方向D2に25枚ずつ計50枚設けられている。隣接する板部51は、上下方向D2において10mm~12mm間隔で互いに離間して平行な位置関係で配置されている。なお、最も上に位置する板部51の上方には、もう一枚板部51と平行に板状の部材59が配置されているが、これは、最も上に位置して基板収納空間27内へ挿入される基板Wに対して、当該挿入の際のガイドの役割をする部材である。
【0037】
また、第1側壁25に設けられた25枚の板部51と、第2側壁26に設けられた25枚の板部51とは、互いに左右方向D3において対向する位置関係を有している。また、50枚の板部51、及び、板部51と平行な板状のガイドの役割をする部材59は、下壁24の内面に平行な位置関係を有している。板部51の上面には、バンプ511、512が設けられている。板部51に支持された基板Wは、バンプ511、512の突出端にのみ接触し、面で板部51に接触しない。
【0038】
より詳細には、板部51のバンプ511、512は、それぞれ板部51の上面に形成され略左右方向に延びると共に前後方向へそれぞれ下に向かって傾斜する尾根のような形状を有しており、当該尾根の頂上部は、当該前後方向へそれぞれ下に向かって傾斜する斜面の上端部同士を接続する曲面により構成されている。図5に示すように、バンプ511に関して容器本体2の容器本体開口部21の側(前方向D11の側)の板部51の上面の部分は、平坦面である一端部側斜面5111により構成されている。バンプ511に関して容器本体2の奥壁22の側(後方向D12の側)の板部51の上面の部分は、平坦面である他端部側斜面5112により構成されている。
図5は、基板収納容器1の容器本体2が金型Mの成形空間M0において成形された後に、金型Mが型開きした様子を示す概略説明図である。なお、図5においては、説明の便宜上、基板Wを板部51に支持させた様子を図示したが、実際には、金型Mの可動型M1に成形された状態の容器本体2においては、基板Wは板部51に支持されない。
【0039】
また、バンプ512に関して容器本体2の容器本体開口部21側の板部51の上面の部分は、平坦面である一端部側斜面5121により構成されている。一端部側斜面5121の前端部は、他端部側斜面5112の後端部に接続されている。バンプ512に関して容器本体2の奥壁22側の板部51の上面の部分は、平坦面である他端部側斜面5122により構成されている。
【0040】
左右方向おける板部51の端縁に位置する側面には、図6に示すように、移動方向線5101が形成されている。移動方向線5101は、後述のように容器本体2を固定型M2と可動型M1とを有する金型Mの内部の成形空間M0において成形した後に、離型のための型開きの際に、可動型M1を移動させる方向である水平方向に平行に生じて形成されている。他端部側斜面5112、5122は、いずれも、移動方向線5101を基準として、容器本体2の開口周縁部28の端縁全周を通る平面P1に直交する方向に延びる線P2が傾く方向と同じ側に傾いている。
図6は、基板収納容器1の基板支持板状部5の板部51を示す拡大側面図である。成形空間M0は、実際には、金型Mの型開き前の状態で可動型M1と固定型M2との間に形成されるが、説明の便宜上、図5においては、容器本体2の位置を成形空間M0として図示している。
【0041】
ここで「同じ側に傾いている」とは、基準となる移動方向線5101に平行である水平方向に平行な線L1と、線L1に対して傾斜している(平行でない)線Aと線Bとを考えた場合、線L1と、線A及び線Bとは、延長してゆくと必ず交点が生ずるが、その交点から線L1に沿って一の方向へ進んだときに、線L1を境界線とする同じ側において線L1から線A及び線Bが離れてゆく場合には、線Aと線Bとは、「同じ側に傾いている」ことを意味する。
【0042】
具体的には、本実施形態においては、移動方向線5101に平行な水平方向な線L1(図5における下側の線L1)と、容器本体2の開口周縁部28の端縁全周を通る平面P1に直交する方向に延びる線P2とに着目すると、線L1と線P2とは、開口周縁部28において交点が生じているが、その交点から線L1に沿って一の方向である後方向D12へ進んでゆくと、線L1を境界線とする図5における上側において、線P2は線L1から離れてゆく。
【0043】
次に、移動方向線5101に平行な水平方向な線L1(図5における下側の線L1)と、他端部側斜面5112とに着目すると、線L1と他端部側斜面5112とは、バンプ111において交点が生じているが、その交点から線L1に沿って一の方向である後方向D12へ進んでゆくと、線L1を境界線とする図5における上側において、他端部側斜面5112は線L1から離れてゆく。
【0044】
また、移動方向線5101に平行な水平方向な線L1(図5における下側の線L1)と、他端部側斜面5122とに着目すると、線L1と他端部側斜面5122とは、図5には図示していないが、他端部側斜面5122を略前方向D11に延長してゆくと、線L1と公差する交点が生ずる。その交点から線L1に沿って一の方向である後方向D12へ進んでゆくと、線L1を境界線とする図5における上側において、他端部側斜面5122は線L1から離れてゆく。以上より、線P2と、他端部側斜面5112及び他端部側斜面5122とは、線L1を基準として同じ側に傾いている。
【0045】
ここで、一端部側斜面5111、5121についても、線L1と公差する交点を考えた場合、交点から線L1に沿って後方向D12へ進んでゆくと、線L1を境界線とする図5における上側において、一端部側斜面5111、5121は線L1から離れてゆく。このため、線P2と、一端部側斜面5111、5121とは、線L1を基準として同じ側に傾いている。このため、線L1に沿って後述のように、可動型M1を移動させて型開きする際に、線L1に対して一端部側斜面5111、5121、他端部側斜面5112、5122の全てが、アンダーカットとなっておらず、抜き勾配を形成する。なお、板部51の下面についても、同様にアンダーカットとなっておらず、抜き勾配を形成している。
【0046】
鉛直方向に一致する垂直線V1を基準として、図5に示す側方視で平面P1が傾斜する角度a1と、水平方向な線L1を基準として線P2の傾斜する角度a2とは等しく、0.1°以上1°以下であり、本実施形態では、0.6°である。0.1°未満では、バンプ511、512における十分な突出量を得ることができないためである。また、1°を超えると容器本体2における他の部分でアンダーカットとなる部分が発生する可能性が高まるからである。このため角度a1及び角度a2を0.1°以上1°以下とすることにより、確実に抜き勾配を確保できる範囲が広くなり、離型をスムーズにすることが可能となる。
【0047】
このような構成の基板支持板状部5は、複数の基板Wのうちの隣接する基板W同士を、所定の間隔で離間した状態で且つ互いに平行な位置関係とした状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能である。
【0048】
図4に示すように、奥側基板支持部6は、奥側端縁支持部60を有している。奥側端縁支持部60は、基板支持板状部5の板部51の後端部に、板部51と一体成形されて構成されている。なお、奥側基板支持部6は、基板支持板状部5とは別体、即ち、奥側端縁支持部60は、基板支持板状部5の板部51とは別体(例えば、別部品)で構成されたリアリテーナによって構成されてもよい。
【0049】
奥側端縁支持部60は、基板収納空間27に収納可能な基板Wの一枚毎に対応した個数、具体的には、25個設けられている。第1側壁25及び第2側壁26に配置された奥側端縁支持部60は、前後方向D1において、後述する図示しないフロントリテーナと対をなすような位置関係を有している。基板収納空間27内に基板Wが収納され、蓋体3が閉じられることにより、奥側端縁支持部60は、基板Wの縁部の端縁を挟持して支持する。
【0050】
図2等に示すように、奥壁22は、気体噴出ノズル部としての突出部8を有している。突出部8は、2つで対をなしており、リブ状に容器本体開口部21へ向って突出し、平行に奥壁22の上端部から下端部に至るまで延びている。即ち、突出部8は中空の柱状を有している。突出部8の内部空間は、隔壁部81によって前側の空間と、後側の空間とに区切られている。
【0051】
前側の空間は、気体流出前保持室803を構成し、後側の空間は、基板収納空間27と容器本体2の外部の空間とを連通可能な通気路210(図4等参照)に連通する気体滞留室801を構成する。
突出部8は、通気路210に流入した気体を基板収納空間27に供給する複数の開口部802を有する。気体滞留室801は、パージガスが一時的に溜められ加圧されることによって、通気路210と突出部8の開口部802との間において、通気路210からの気体を所定の量で均一に保持可能な気体均一保持部であって、複数の開口部802から均一化された流量でパージガスを流出可能とする気体流量均一化部を構成する気体均一保持部を構成する。
【0052】
通気路210には、気体としての窒素等の不活性ガスあるいは水分を除去(1%以下)したドライエア(以下、パージガスという)等が通過可能である。通気路210は、図4に示すように、気体流入部211と、水平方向延出部212とを有しており、水平方向延出部212には、気体滞留室801の下端部が接続されている。
【0053】
気体流入部211は、下壁24の後端部に形成され下方向D22へ突出し給気孔242を形成する円筒状の気体供給装置接続部202の内部空間により構成されている。水平方向延出部212は、下壁24の外面(下面)に沿って下壁24の外側において、気体流入部211の上端部から後方向D12(図4の右方向)へ延びており、下壁24の外面と、下壁24よりも下側に突出している下側流路形成部203との間の空間により構成されている。そして、水平方向延出部212に接続されている気体滞留室801は、前述のように突出部8の後側の空間によって構成されており、水平方向延出部212の後端部から上方向D21へ奥壁22の上端部に至るまで延びている。
【0054】
隔壁部81には、気体滞留室801からパージガスが流入する微小な流入口811が形成されている。流入口811は、多数形成されており、流入口811の総面積は、開口部802の総面積よりも小さい。
【0055】
気体供給装置接続部202の下端部の開口は、給気孔242を構成する。気体供給装置接続部202には、給気用フィルタ部90が固定されている。排気孔243は、下壁24の貫通孔により構成されており、当該貫通孔には、排気用フィルタ部90Aが固定されている。排気用フィルタ部90Aは、排気用フィルタ部90Aの内部に設けられた図示しない通気膜を通して容器本体2の外部の空間から収納空間27への方向、あるいは収納空間27から容器本体2の外部の空間への方向に気体を通過可能である。その際、図示しない通気膜は、気体に含まれるパーティクル等を通過することを阻止し、気体のろ過を行う。
【0056】
蓋体3は、図1等に示すように、容器本体2の開口周縁部28の形状と略一致する略長方形状を有している。蓋体3は容器本体2の開口周縁部28に対して着脱可能であり、開口周縁部28に蓋体3が装着されることにより、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞可能である。蓋体3の内面(図1に示す蓋体3の裏側の面)であって、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞しているときの開口周縁部28のすぐ後方向D12の位置に形成された段差の部分の面(シール面281)に対向する面には、環状のシール部材4が取り付けられている。シール部材4は、弾性変形可能なポリエステル系、ポリオレフィン系など各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム製、シリコンゴム製等により構成されている。シール部材4は、蓋体3の外周縁部を一周するように配置されている。
【0057】
蓋体3が開口周縁部28に装着されたときに、シール部材4は、シール面281と蓋体3の内面とにより挟まれて弾性変形し、蓋体3は、容器本体開口部21を密閉した状態で閉塞する。開口周縁部28から蓋体3が取り外されることにより、容器本体2内の基板収納空間27に対して、基板Wを出し入れ可能となる。
【0058】
蓋体3においては、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋体3の左右両端部近傍に設けられており、図1に示すように、蓋体3の上辺から上方向D21へ突出可能な2つの上側ラッチ部32Aと、蓋体3の下辺から下方向D22へ突出可能な2つの図示しない下側ラッチ部と、を備えている。2つの上側ラッチ部32Aは、蓋体3の上辺の左右両端近傍に配置されており、2つの図示しない下側ラッチ部は、蓋体3の下辺の左右両端近傍に配置されている。
【0059】
蓋体3の外面においては操作部33が設けられている。操作部33を蓋体3の前側から操作することにより、上側ラッチ部32A、図示しない下側ラッチ部を蓋体3の上辺、下辺からそれぞれ突出させることができ、また、上辺、下辺からそれぞれ突出させない状態とすることができる。上側ラッチ部32Aが蓋体3の上辺から上方向D21へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部231A、231Bに係合し、且つ、図示しない下側ラッチ部が蓋体3の下辺から下方向D22へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部241A、241Bに係合することにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部28に固定される。
【0060】
蓋体3の内側においては、基板収納空間27の外方へ窪んだ凹部(図示せず)が形成されている。凹部(図示せず)及び凹部の外側の蓋体3の部分には、フロントリテーナ(図示せず)が固定されて設けられている。
【0061】
フロントリテーナ(図示せず)は、フロントリテーナ基板受け部(図示せず)を有している。フロントリテーナ基板受け部(図示せず)は、左右方向D3に所定の間隔で離間して対をなすようにして2つずつ配置されている。このように対をなすようにして2つずつ配置されたフロントリテーナ基板受け部は、上下方向D2に25対並列した状態で設けられている。基板収納空間27内に基板Wが収納され、蓋体3が閉じられることにより、フロントリテーナ基板受け部は、基板Wの縁部の端縁を挟持して支持する。
【0062】
上述のような基板収納容器1の容器本体2は、以下のとおりに成形されて製造される。
先ず、容器本体成形工程を行う。容器本体成形工程では、図5に示すように、固定型M2と可動型M1とを有する金型Mの内部の成形空間M0において、前述のように、開口周縁部28の上辺を中心として角度a1だけ回転させて容器本体の奥壁22を含む後部を持上げたように傾けた状態で、容器本体を成形する。以上が容器本体成形工程である。
次に、引き抜き工程を行う。引き抜き工程では、金型Mの内部の成形空間M0において、容器本体2が固化した後に、図5に示すように、可動型M1を固定型M2から後退するように移動をさせて型開きする。このときの可動型M1の移動方向は、水平方向であり、線L1に沿った方向である。このため、前述のように、線L1に沿って可動型M1を移動させて型開きする際に、線L1に対して一端部側斜面5111、5121、他端部側斜面5112、5122の全てが、アンダーカットとなっておらず、抜き勾配を形成しているため、バンプ511、512が一体成形された容器本体2の板部51について、可動型M1を移動させて型開きして離型することが可能である。なお、容器本体2における他の全ての部分についても、アンダーカットとなっておらず、容器本体2全体について可動型M1を移動させて型開きして離型することが可能である。
【0063】
上記構成の本実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
前述のように、容器本体2及び側方基板支持部5を一体成形する基板収納容器1の成形方法は、固定型M2と可動型M1とを有する金型Mの内部の成形空間M0において、固定型M2に対する可動型M1の移動方向である水平方向に対して、容器本体2の開口周縁部28の端縁全周を通る平面P1に直交する方向に平行な線P2が、所定の角度をなす方向a2へ傾いた状態で、容器本体2を成形する容器本体成形工程と、可動型M1を固定型M2から後退するように移動をさせ、可動型M1から成形空間M0において成形された容器本体2を抜く引き抜き工程と、を有する。
【0064】
そして、バンプ511、512に関して容器本体2の一端部の容器本体開口部21側、容器本体2の他端部側は、それぞれ平坦面である一端部側斜面5111、5121、他端部側斜面5112、5122により構成され、水平方向に平行な線L1を基準として、容器本体成形工程において成形されて成形空間M0にある容器本体2におけるバンプ511、512の他端部側斜面5112、5122が傾く方向は、所定の角度a1(=角度a2)における、線L1を基準として、容器本体2の開口周縁部28の端縁全周を通る平面P1に直交する方向に沿った線P2が傾く方向と、線L1を基準とした同じ側に傾いている。
【0065】
上記構成により、側方基板支持部を構成する板部51の上面の基板接触部がバンプ511、512を有する構成であっても、記容器本体2を抜く引き抜き工程において、バンプ511、512の部分がアンダーカットとならず、抜き勾配が形成される。このため、バンプ511、512が形成された板部51が一体成形された容器本体2を、そのまま可動型M1から引き抜いて離型することが可能である。
この結果、基板収納容器1の容器本体2を成形する金型Mにおいては、スライド構造を設けない構成とすることが可能であるため、スライド構造により生ずる金型Mの割り部が生ずることを防いでバリの発生を防ぐことが可能となり、また、バンプ511、512が形成された板部51が一体成形された容器本体2を成形する金型Mに係る費用を抑えることが可能となる。これにより、基板収納容器1の容器本体2においては、可動型M1から容易に引き抜いて離型することが可能であるため、基板収納容器1の容器本体2を製造に係る費用を抑えることが可能となる。
【0066】
また、所定の角度a1(=角度a2)は、0.1°以上1°以下である。この構成により、バンプ511、512における十分な突出量を得ることができ、且つ、容器本体2の各部においてアンダーカットを発生させないようにすることが可能となる。このため角度a1及び角度a2を0.1°以上1°以下とすることにより、確実に抜き勾配を確保できる範囲が広くなり、離型をスムーズにすることが可能となる。また、基板Wの下側において必要とされる板部51と基板Wとの間の隙間を十分に確保することが可能となり、且つ、基板Wと、バンプ511、512とを点接触とすることが可能となる。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
【0068】
例えば、本実施形態においては、バンプ511、バンプ512の2つが板部51に設けられたがこの構成に限定されない。例えば、1つの板部に1つのバンプが設けられていてもよい。
【0069】
また、容器本体及び蓋体の形状、容器本体に収納可能な基板Wの枚数や寸法は、本実施形態における容器本体2及び蓋体3の形状、容器本体2に収納可能な基板Wの枚数や寸法に限定されない。また、本実施形態における基板Wは、直径300mmのシリコンウェーハであったが、この値に限定されない。
【0070】
また、本実施形態においては、下壁24の前部に2つの排気用フィルタ部90Aが設けられ、下壁24の後部に2つの給気用フィルタ部90が設けられたが、この構成に限定されない。例えば、下壁24の後部に2つの排気用フィルタ部90Aが設けられ、下壁24の前部に2つの給気用フィルタ部90が設けられてもよい。また、排気用フィルタ部と給気用フィルタ部とが2つずつ設けられていなくてもよい。また、排気用フィルタ部90Aは、下壁24に取り付けられることに限られない。排気用フィルタ部90Aは、下壁24以外の壁部、蓋体に取り付けても良く、例えば、下壁と蓋体との両方に取り付けても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 基板収納容器
2 容器本体
3 蓋体
5 基板支持板状部
21 容器本体開口部
27 基板収納空間
28 開口周縁部
511、512 バンプ(基板接触部)
5101 移動方向線
5111、5121 一端部側斜面
5112、5122 他端部側斜面
D1 固定型
D2 可動型
L1 線
M 金型
M0 成形空間
P1 面
P2 線
W 基板
a1、a2 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6