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特許7113035加圧水素を生成及び分注するためのシステム
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  • 特許-加圧水素を生成及び分注するためのシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】加圧水素を生成及び分注するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20220728BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C01B3/02 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019572154
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018025182
(87)【国際公開番号】W WO2019011475
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】17020297.2
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503195311
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ナグル クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グルーバー サラ
(72)【発明者】
【氏名】アドラー ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ラーチェン ヴィリゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ジェーレ ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ロベンタンツァー ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ベスト サイモン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-181030(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015016326(DE,A1)
【文献】特開2003-342766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0083855(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01354850(EP,A2)
【文献】特表2014-506375(JP,A)
【文献】特開2004-124148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B9/00
C25B1/04
C01B3/02
F17C5/06
F17C7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水素を生成及び分注するためのシステムであって、
-水素発生器としての電解槽(1)
-油圧駆動装置(16)、
-2つ以上の水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)及び
-水素分注ユニット(50)を含むシステムにおいて、
-前記水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)の各々内部ピストン(11a、11b、11c)の運動により水素を定圧で放出することができ、
-前記水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)のうちの最も上流側に位置する第1の水素貯蔵タンク(10a)は前記油圧駆動装置(16)による前記内部ピストン(11a)の作動によりコンプレッサとして働くように配置され、
-前記水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)のうちの前記第1の水素貯蔵タンク(10a)を除く少なくとも1つは、水素を定圧で貯蔵及び放出するための定圧タンクとして働くように配置される、システム。
【請求項2】
前記水素発生器(1)は水素を圧力1~45バール(好適には20~45バール)で生成することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)は350バールまで、好適には800バールまで、好適には900バールまで加圧するように設計されることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記水素から酸素残留物を除去するための触媒(8)が設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記水素発生器(1)は水素及び酸素を生成し、
前記生成された酸素の圧力を低減しこれにより前記生成された酸素を冷却するための酸素膨張器(30)が設けられ、
前記電解槽(1)の下流及び前記コンプレッサ(10a)の上流の冷却酸素と前記水素との間で熱を転送するための熱交換器(21)が設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
圧縮された水素から水を分離するための凝結器(20)が前記コンプレッサ(10a)の上流側に配置されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
貯水槽(2)が設けられ、前記貯水槽(2)は前記電解槽(1)へ接続され、前記凝結器(20)と前記貯水槽(2)とを接続する戻りパイプライン(3)が設けられることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記水素貯蔵タンク(10a、10b、10c)は同一であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
水素バッファタンク(40)が前記コンプレッサ(10a)の上流側に設けられることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コンプレッサ(10a)は一段階コンプレッサであることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
無線通信装置(特にスマートフォン)が前記システムへ接続され、前記無線通信装置は、顧客が前記水素貯蔵タンクの現在の充填レベルをチェックし、燃料補給のためのタイムスロットを予約することを可能にするように構成されることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
可動ユニットとして配置されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加圧水素を生成及び分注するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素燃料補給所の概念は十分に展開されている。エネルギー担体としての水素は、宇宙への最初のNASAのミッション以来使用されてきており、その後改善され、多くの異なる分野へ適用されてきた。この用途は、バイク、フォークリフト、車、バス、トラック、船及び列車などの車両を燃料補給するための又は産業用途のための小規模エネルギー貯蔵から大規模エネルギー貯蔵まで及ぶ。
【0003】
ドイツでは、現時点で車のための約30の燃料補給所が存在しており、これは2023年に400まで増加されるはずである。世界中で、200を越える稼働する燃料補給所が存在する。加えて、フォークリフト及び船のための燃料補給所が存在し、そして水素加熱及び電動式ホーム内の燃料補給所のようないくつかの珍しい用途が存在する。
【0004】
したがって、多くの様々な燃料補給所概念が存在し、次のものに従って分類され得る:
●水素のターンオーバ時間:1日当たり80kg水素の「小型」から1日当たり1000kg水素の「大型」まで、
●提供する圧力:350バール、700バール、又は両方、
●燃料補給のやり方(例えば周囲温度、冷却Hなど)、
●水素を生成するやり方:現場で、現場外で、又はパイプラインで、
●ガス又は液体水素。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ローカル又はホーム燃料補給のための水素生成及び燃料補給システムを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、1kg/日~50kg/日の水素を生成及び分注することができる水素燃料補給システムを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、特定インフラストラクチャーに依存することなくほぼどこでも(道路、ガソリンスタンド、工場、ホーム等々)容易に配備され得る民生燃料電池車用の水素燃料補給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的の1つ又は複数は加圧水素を生成及び分注するためのシステムにより達成される。本システムは、
-水素発生器、特に電解槽、
-油圧式駆動装置、
-2つ以上の水素貯蔵タンク、及び
-水素分注ユニットを含み、
-水素貯蔵タンクのそれぞれは内部ピストンの運動により定圧で水素を放出することができ、
-水素貯蔵タンクの少なくとも1つは油圧駆動装置による内部ピストンの作動によりコンプレッサとして使用され、
-水素貯蔵タンクの少なくとも1つは定圧で水素を貯蔵及び放出するための定圧タンクとして使用される。
【0009】
本発明は、それぞれが別個のモジュールを形成する水素発生器、コンプレッサ、定圧タンク及び水素分注ユニットを含むモジュラー概念として実現され得る。モジュールの数及びサイズを変更することにより、様々な水素生成能力、様々な水素貯蔵能力及び様々な水素圧力を提供することが可能である。本発明のシステムは、水素生成能力に関してそして水素貯蔵能力について容易にグレードアップ/ダウンされ得る。
【0010】
したがって、本発明は効率的な電解槽とコンプレッサ及び1つ又は複数の定圧タンクとの組み合わせにより自律的自給式小型水素燃料補給所を提供する。
【0011】
好適には、電解槽は水素発生器として使用される。このような電解槽は1日当たり約1.2kg~6kg水素の生成を可能にする。例えば20~100個の単一セルを含む可能性がある。それぞれの電気的エネルギー消費は約2kW~10kWであり得る。別の例によると、電解槽は1日当たり5kg、10kg、20kg又は最大50kg水素を生成する。好適には、水素生成速度は1日当たり1.3kg水素~1日当たり21.4kg水素の間で変化する。
【0012】
本発明の好適な実施形態によると、水素発生器は圧力1~45バールで(好適には20~45バールの範囲の高圧で)水素を生成する。これらの圧力における水素は好適には電解槽により生成及び供給され得る。
【0013】
生成された水素は次に、最終的に燃料補給過程が発生するレベルまで圧力を増加するためにコンプレッサにより圧縮される。水素貯蔵タンクの少なくとも1つはコンプレッサとして使用される。コンプレッサは、水素部を油圧部から分離するピストンを備えたシリンダを含む。油圧駆動装置(例えば油圧ポンプ)は油圧液をシリンダに圧入し、次にシリンダは水素部内に存在する水素がゆっくり圧縮されるように内部ピストンを移動する。圧縮ガスはその後、貯蔵される定圧タンクのうちの1つ又は複数へ向けられる。
【0014】
コンプレッサは好適には、水素を水素発生器の出力圧から所望末端圧まで圧縮することができる一段階コンプレッサとして設計される。例えば、コンプレッサは一段階で水素を圧力1~45バール(好適には20~45バール)から350バール~900バール(例えば700バール又は850バール)の圧力まで圧縮することができる。
【0015】
本発明によると、圧縮水素は少なくとも1つの定圧タンク内に(例えば1つ、2つ、又は3つの定圧タンク内に)貯蔵される。このような定圧タンクは、最小フットプリントでもって高圧でのガスの貯蔵を可能にする。700バール燃料補給のために貯蔵ガスの20~30%だけを使用し得る伝統的システムとは対照的に、定圧タンクは貯蔵水素の90%~99%を使用することができる。これは、水素が追加又は解放されると定圧タンク内で移動する内部ピストンにより実現される。定圧タンクへ導入される又は定圧タンクから引き出される水素の量にしたがってピストンを移動することにより、本システムは、水素の圧力を所定の一定圧に維持し、これにより、貯蔵水素のほぼ全量を燃料補給過程の間使用し得る。圧力を一定に保つことの別の利点は、高い信頼性及び長寿命サイクルを保証する材料に対するいかなる負荷サイクルも存在しないということである。
【0016】
好適な実施形態によると、本システムの貯蔵能力は2.4kg~25kg水素である。この貯蔵能力は1、2、3つ以上の定圧タンクにより提供され得る。
【0017】
別の実施態様によれば、水素貯蔵タンク(すなわちコンプレッサとして使用される水素貯蔵タンク及び定圧タンクとして使用される水素貯蔵タンク)は、400バールまでの、好適には800バールまでの、好適には900バールまでの圧力用に設計される。
【0018】
別の実施形態によると、水素発生器は水素と酸素との両方を生成する。これは、例えば電解槽が水素生成に使用される場合である。好適には、電解槽は大気圧を越える高圧で水素及び酸素を生成することができる。
【0019】
電解槽により生成される水素は、コンプレッサ内の水素の加圧前に又は加圧中に好適に除去される水及び/又は酸素を含むかもしれない。生成された水素流から酸素を除去するために、好適には触媒が使用され得る。生成された水素流から水蒸気を除去するために凝結器が使用され得る。
【0020】
コンプレッサに入る前に、水素流は好適には空気冷却器により冷却され得る。
【0021】
別の実施形態では、加圧酸素は、生成された水素流をコンプレッサに入る前にさらに乾燥又は除湿するために使用され得る。このような目的のために、生成された酸素は、生成された酸素の圧力を低減するために酸素膨張器へ送られる(例えばノズルを貫流することにより)。酸素の圧力は好適には、電解槽の出口に存在するその圧力値から大気圧まで低減される。酸素を膨張させ酸素圧力を低減することにより、酸素の温度は低下し、酸素は冷めることになる。
【0022】
熱交換器では、その膨張及び減圧後のそのように冷却された酸素はコンプレッサの上流の水素流との間接的熱交換状態にされる。この結果、水素は冷却されて水素中の水蒸気は凝結され、凝結器により水素流から除去され得る。熱交換器を出た後、酸素は大気へ解放される。
【0023】
好適には、電解槽は水素発生器として使用される。この場合、電解槽へ接続されて電解槽へ供給する貯水槽を設けることが好ましい。貯水槽は好適には、貯水槽と脱イオン化システムとの接続により又は脱イオン水を備えたタンクによるかのいずれかにより脱イオン水を供給する。上述のように、水素流から水を分離する凝結器が設けられる。この水は、凝結器と貯水槽とを接続する戻りパイプラインを介し貯水槽へ戻され得る。
【0024】
既に説明したように、コンプレッサ及び定圧タンクは内部ピストンを備えた水素貯蔵タンクとして設計される。一実施形態では、コンプレッサとして使用される水素貯蔵タンクと定圧タンクとして使用される水素貯蔵タンクとは同一である。
【0025】
通常動作では、コンプレッサは次の2段階間で交互に切り替わる:電解槽により生成された水素がコンプレッサ内で収集される蓄積段階と、収集された水素がピストンにより圧縮されて定圧タンクへ転送される圧縮段階。コンプレッサがその圧縮段階にあり水素を圧縮している場合、水素発生器により生成された水素はコンプレッサへ供給されることができない。したがって、コンプレッサの圧縮段階中に水素を一時的に貯蔵する追加水素バッファタンクをコンプレッサの上流に有することが好ましい。
【0026】
本発明のシステムは好適には無線通信装置(特にスマートフォン)へ接続される。この通信装置を介し、水素生成、定圧タンク内に貯蔵される水素の量、及び/又は定圧タンクから引き出される水素が制御及び監視され得る。加えて、無線通信リンクは、顧客が水素貯蔵タンクの充填レベルをチェックすることと、それらの燃料補給タイムスロットを予め予約することと、水素の引き出された量と交換に支払いをすることとを可能にする。
【0027】
例:
水素は電解槽により生成される。水素は電解槽を40バールの圧力のままにする。次に、水素ガスは、逆圧調節器、酸素の潜在的残留物を分離するための触媒、及び水素ガスを冷却するための空気冷却器中を通過させられる。空気冷却器の下流に、HOの潜在的残留物を除去するための凝結器が水素流内に配置され得る。次に、水素ガスは内部ピストンを含む水素貯蔵タンク(コンプレッサとして働く貯蔵タンクなど)へ渡される。逆圧調節器は水素が電解槽へ逆流することを防止する。コンプレッサでは、油圧ピストンが緩やかな動きで上方へ移動し、水素を例えば850バールの所望圧力レベルまで圧縮する。圧縮機システムが稼働中、下流の逆止弁が開き、水素は貯蔵のために2つの定圧タンクへ導かれる。
【0028】
定圧タンクは特に、900バールの圧力までの高加圧ガスを貯蔵するように設計される。定圧タンク内の内部ピストンは定圧タンクを水素部と油圧部とに分割する。水素ガスが定圧タンクへ導かれると、ピストンは、水素ガスが圧力を一定に維持するために追加されるので、定圧タンク内の水素部の容積を増加するように同じペースで移動する。定圧タンクが満たされる又は少なくとも部分的に満されると、本システムは燃料補給の準備が整う。
【0029】
電解槽からの生成された酸素は、酸素濃度中の過剰水素を防止するために圧力保持弁及び触媒を介し導かれる。酸素は膨張器に入り、大気へ解放される。コンプレッサに到達する前に水素を冷却及び除湿するために膨張器の冷却能力が使用される。
【0030】
燃料補給過程中、定圧タンク内のピストンは、油圧モータにより推進され、水素を定圧タンクの水素部から押し出す。車両の燃料補給は分注ノズルを介し行われる。
【0031】
このような燃料補給過程は通常、水素の1kg当たり8分程度かかり、すべての安全基準を満足する。
【0032】
電解槽、コンプレッサ及び定圧タンクの3つの構成要素の一体化は、本発明のシステムを小型水素燃料補給所の高効率及び高費用効率解決策にする。主要な利点は、既存標準規格を満足するように十分に高い水素流を依然として維持する一方で低電力消費と小さなフットプリントとである。
【0033】
本発明は特に、既存ガソリンスタンド上の、車販売業者配送所及び修理店、従来のガソリンスタンド、レストラン、スーパーマーケット、公共企業体、郵便サービス、現場の産業、ヨット、又はビル内の水素燃料補給目的に好適である。本発明によるシステムは特に可動ユニットとして設計され得る、すなわち、経済的要件がもはや満たされなければ(余りに低い又は余りに高い要求であれば)、本システムは供給源から容易に切り離され別の場所へ移動され得る。本発明はトレーラ又は軽トラック上にすら設置される可能性がある。
【0034】
本発明及び本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】水素を生成及び分注するための本発明のシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示す本発明のシステムは電解槽1を水素発生器として利用する。一体化冷却器26を備えた冷却ループは生成された処理熱を除去する。貯水槽2は、給水配管3を介し電解槽1へ接続され、電解槽1に例えば40バールの圧力で脱イオン水をポンプ25により供給する。
【0037】
電解槽1は約40バーの圧力において水素及び酸素を生成する。電解槽のタイプ及びサイズに依存して、水素生成速度は、1日当たり1.5kg水素~1日当たり20kg水素の間(好適には1日当たり2.5kg~1日当たり15kgの間)で変化する。
【0038】
次に、生成された水素ガスは、電解槽がその運転圧に到達すると自動的に開く逆圧調節器6中に通される。逆圧調節器6は水素が電解槽1へ逆流するのを防止する。次に、水素はいかなる酸素残留物も除去するために触媒8中に通される。水素ガスは空気冷却器9により冷却され得る。空気冷却器9の下流には、水素流から水蒸気を除去するために凝結器20が設けられる。以下により詳細に説明されるように、高圧において電解槽1により生成される酸素はこのような目的のための冷媒として使用され得る。
【0039】
本システムは3つの同一水素貯蔵タンク10a、10b、10cを含む。水素貯蔵タンク10a、10b、10cはそれぞれ内部ピストン11a、11b、11cを備える。内部ピストン11a、11b、11cはそれぞれ、水素貯蔵タンク10a、10b、10cを水素部12a、12b、12cと油圧部13a、13b、13cとに分割する。
【0040】
水素貯蔵タンクの1つはコンプレッサ10aとして働く。凝結器20を離れた水素ガスはコンプレッサ10aの水素部12aに入れられる。コンプレッサ10aでは、内部ピストン11aが緩やかな動きで移動し、水素を850バールの圧力レベルまで圧縮する。ピストン11aは、タンク27により供給される油圧液を使用する油圧駆動装置16により駆動される。コンプレッサの上流側に、コンプレッサ10aの圧縮段階中に水素を一時的に貯蔵する水素バッファタンク40が設けられる。コンプレッサ10aの圧縮段階が完了すると、バッファタンク40内に貯蔵された水素はコンプレッサ10aへ導かれる。
【0041】
水素貯蔵タンク10b、10cは定圧タンクとして使用される。圧縮水素は、貯蔵のために逆止弁14、15を介し定圧タンク10b、10cの水素部12b、12c内に導かれる。
【0042】
定圧貯蔵タンク10b、10cのピストン11b、11cもまた油圧駆動装置16により作動される。水素ガスが定圧貯蔵タンク10b、10cへ加えられる又は定圧貯蔵タンク10b、10cから引き出されると、ピストン11b、11cは、水素部12b、12c内の圧力が同じ状態のままとなるようにそれに応じて移動される。したがって、水素部12b、12c内の圧力は、定圧タンク10b、10cの充填中、及び水素が定圧タンク10b、10cから引き出される場合は燃料補給過程中、一定に保たれ得る。
【0043】
電解槽1内で生成された酸素は、逆圧調節器17、触媒18及び空気冷却器19中を通されて膨張器30内に入れられる。膨張された酸素は最後に大気中に放出される。膨張器30内の酸素の膨張中、冷気が生成される。この冷気は水素がコンプレッサ10a内で圧縮される前に間接的熱交換により水素を冷却するために使用される。水素を冷却するために、冷たい酸素が、凝結器20内に配置された熱交換器21中に通される。水素から凝結するいかなる水も収集され、復水ライン22を介し貯水槽2へ戻される。
【0044】
車両タンクなどの水素消費車両又は装置のタンクを燃料補給するために、弁23が開かれ、定圧タンク10b、10c内のピストン11b、11cが油圧駆動装置16により推進される。したがって、水素ガスが定圧タンク10b、10cの水素部12b、12cから押し出され、車両を燃料補給するために、分注ノズル50により形成される水素分注ユニットへ導かれる。
【符号の説明】
【0045】
1 電解槽
2 貯水槽
3 給水配管
6 逆圧調節器
8 触媒
9 空気冷却器
10a, 10b, 10c 水素貯蔵タンク
11a, 11b, 11c 内部ピストン
12a, 12b, 12c 水素部
13a, 13b, 13c 油圧部
14 逆止弁
15 逆止弁
16 油圧駆動装置
17 逆圧調節器
18 触媒
19 空気冷却器
20 凝結器
21 熱交換器
22 復水ライン
23 弁
25 ポンプ
26 冷却器
27 タンク
30 膨張器
40 水素バッファタンク
50 分注ノズル
図1