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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】生地延展装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 3/02 20060101AFI20220728BHJP
   A21D 8/02 20060101ALN20220728BHJP
【FI】
A21C3/02 A
A21D8/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020522249
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021272
(87)【国際公開番号】W WO2019230792
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018106242
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】小野口 和良
(72)【発明者】
【氏名】樋口 勝道
(72)【発明者】
【氏名】福上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼間 章典
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝雄
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-259358(JP,A)
【文献】特開2010-200725(JP,A)
【文献】特開平03-061441(JP,A)
【文献】特開平08-126463(JP,A)
【文献】特開2002-051686(JP,A)
【文献】特開平08-196195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A21D 2/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地延展装置であって、
生地を上流側から下流側に搬送する下コンベヤと、
前記下コンベヤの上方に配置された上コンベヤと、を有し、
前記上コンベヤは、コンベヤベルトを有し、前記コンベヤベルトは、上流側から下流側に駆動される円弧状の下面を有し、前記円弧状の下面の曲率の中心は、前記コンベヤベルトよりも上に位置し、
更に、前記円弧状の下面による生地の押圧箇所が上流側から下流側に移動するように、前記上コンベヤを運動させる運動機構を有することを特徴とする生地延展装置。
【請求項2】
前記下コンベヤは、第1下コンベヤと、前記第1下コンベヤの下流側に配置された第2下コンベヤを含み、前記第2下コンベヤの速度は、前記第1下コンベヤの速度よりも速いことを特徴とする請求項1に記載の生地延展装置。
【請求項3】
前記上コンベヤは、前記下コンベヤに対して同じ又はそれよりも速い速度で駆動される、請求項2に記載の生地延展装置。
【請求項4】
前記押圧箇所が前記第1下コンベヤの上方にあるとき、前記上コンベヤのコンベヤベルトの速度は、前記第1下コンベヤの速度に対して等しく、
前記押圧箇所が前記第2下コンベヤの上方にあるとき、前記上コンベヤのコンベヤベルトの速度は、前記第2下コンベヤの速度に対して等しいことを特徴とする請求項3に記載の生地延展装置。
【請求項5】
前記上コンベヤは、前記第1下コンベヤよりも速い速度で駆動され、前記第2下コンベヤは、前記上コンベヤよりも速い速度で駆動される、請求項2に記載の生地延展装置。
【請求項6】
前記下コンベヤは、単一のコンベヤであることを特徴とする請求項1に記載の生地延展装置。
【請求項7】
前記上コンベヤは、前記下コンベヤに対して同じ又はそれよりも速い速度で駆動される、請求項6に記載の生地延展装置。
【請求項8】
前記押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、前記押圧箇所における前記上コンベヤと前記下コンベヤの間の距離が小さくなることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の生地延展装置。
【請求項9】
前記押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、前記下コンベヤの搬出方向によって定められる基準線と前記押圧箇所における前記上コンベヤとの間の距離が小さくなり、及び/又は、前記基準線と、前記押圧箇所における前記下コンベヤとの間の距離が小さくなることを特徴とする請求項8に記載の生地延展装置。
【請求項10】
前記押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、前記押圧箇所における前記上コンベヤと前記下コンベヤの間の距離は一定であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の生地延展装置。
【請求項11】
更に、前記上コンベヤに進入する生地を押えるために前記下コンベヤの上方に配置された生地押えローラを有することを特徴とする請求項1~10に記載の生地延展装置。
【請求項12】
前記上コンベヤは、多数の小径ローラを有し、前記多数の小径ローラは、前記コンベヤベルトを支持し、前記コンベヤベルトが円弧状の下面を有するように配置されることを特徴とする請求項1~11に記載の生地延展装置。
【請求項13】
前記下コンベヤは、多数の小径ローラに支持されたコンベヤベルトを有し、前記下コンベヤの多数の小径ローラは、前記下コンベヤのコンベヤベルトが直線状の上面を有するように配置されることを特徴とする請求項1~12に記載の生地延展装置。
【請求項14】
前記運動機構は、前記上コンベヤを揺動させる揺動機構であることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の生地延展装置。
【請求項15】
前記運動機構は、前記上コンベヤを摺動させる摺動機構であることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の生地延展装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地延展装置に係わり、詳細には、下コンベヤによって搬送されるパン生地等の生地を連続的に延展する生地延展装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下コンベヤによって搬送される生地を、移動する上ローラを用いて延展する生地延展装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-019444号公報
【文献】特開平03-061441号公報
【文献】特開2004-008157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上ローラの直径は、約50~150mmであるので、生地を押圧する面積が比較的小さく、延展効率が低い。そのため、連続的に搬送される生地を効率的に延展するために、複数の上ローラを設けたり、押圧面積を大きくするために、上ローラの直径を大きくしたりする必要がある。無端軌道を運動する複数の上ローラを設けた従来の生地延展装置は、複雑で大型である。また、複数の小径ローラによって延展された生地の表面は、波打つことがある。上ローラの直径が大きくなると、そのためのスペースが必要であり、上ローラが重くなり、生地延展装置が大型になる。
【0005】
そこで、本願発明は、生地を押圧する面積が比較的大きく、延展効率が高い新規な構成を有する生地延展装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による生地延展装置は、生地を上流側から下流側に搬送する下コンベヤと、下コンベヤの上方に配置された上コンベヤと、を有し、上コンベヤは、コンベヤベルトを有し、コンベヤベルトは、上流側から下流側に駆動される円弧状の下面を有し、前記円弧状の下面の曲率の中心は、前記コンベヤベルトよりも上に位置し、更に、円弧状の下面による生地の押圧箇所が上流側から下流側に移動するように、上コンベヤを運動させる運動機構を有することを特徴としている。
【0007】
このように構成された生地延展装置によれば、上コンベヤのコンベヤベルトの下面は、円弧状であり、上流側から下流側に駆動される。円弧状の下面の曲率の中心が上コンベヤよりも上に位置するので、円弧状の下面は、仮想大径ローラの一部分を構成する。生地の押圧箇所は、一般的には、ある時点において下コンベヤとの間の距離が最も小さい円弧状の下面の箇所付近である。円弧状の下面による生地の押圧箇所が運動機構によって上流側から下流側に移動するとき、仮想大径ローラが生地の上を転がることにより得られる効果と同様の効果が得られ、生地を延展させることができる。かくして、生地を押圧する面積が比較的大きく、延展効率が高い新規な構成を有する生地延展装置が提供される。
【0008】
上記生地延展装置の実施形態において、下コンベヤは、第1下コンベヤと、第1下コンベヤの下流側に配置された第2下コンベヤを含み、且つ、第2下コンベヤの速度は、第1下コンベヤの速度よりも速くてもよいし、単一のコンベヤであってもよい。
【0009】
第1下コンベヤ及び第2下コンベヤを有する生地延展装置によれば、第2下コンベヤと第1下コンベヤの間の速度差により生地を引伸ばすことができるので、生地を効率的に延展することができる。下コンベヤが単一のコンベヤである生地延展装置によれば、簡易な生地延展装置を構成することができる。
【0010】
また、上記生地延展装置の実施形態において、好ましくは、上コンベヤのコンベヤベルトの速度が、下コンベヤに対してと同じ又はそれよりも速い速度であり、それにより、上コンベヤと下コンベヤの間の生地を停滞させることなしに搬送することができる。
【0011】
第1下コンベヤ及び第2下コンベヤを有する実施形態において、好ましくは、押圧箇所が第1下コンベヤの上方にあるとき、上コンベヤのコンベヤベルトの速度は、第1下コンベヤの速度に対して等しく、押圧箇所が第2下コンベヤの上方にあるとき、上コンベヤのコンベヤベルトの速度は、第2下コンベヤの速度に対して等しい。
【0012】
また、第1下コンベヤ及び第2下コンベヤを有する実施形態において、上コンベヤと下コンベヤの間の生地を停滞がなければ、上コンベヤが第1下コンベヤよりも速い速度で駆動され、第2下コンベヤが、上コンベヤよりも速い速度で駆動されてもよい。
【0013】
このように第1下コンベヤ及び第2下コンベヤを有する生地延展装置によれば、主に引伸ばしによる生地の延展が可能である。
【0014】
上記生地延展装置の実施形態において、押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、押圧箇所における上コンベヤと下コンベヤの間の距離は、小さくなってもよいし、一定であってもよい。かかる距離が小さくなる場合、下コンベヤの搬出方向によって定められる基準線と押圧箇所における上コンベヤとの間の距離が小さくなってもよいし、上記基準線と、押圧箇所における下コンベヤとの間の距離が小さくなってもよいし、その両方であってもよい。
【0015】
上コンベヤと下コンベヤの間の距離が小さくなる生地延展装置によれば、比較的厚い生地を効率的に延展することができる。また、上コンベヤと下コンベヤの間の距離が一定である生地延展装置によれば、上コンベヤの運動の両方向で生地を効率的に延展することができる。
【0016】
上記生地延展装置の実施形態において、好ましくは、更に、上コンベヤに進入する生地を押えるために下コンベヤの上方に配置された生地押えローラを有する。
【0017】
また、上記生地延展装置の実施形態において、好ましくは、上コンベヤは、多数の小径ローラを有し、多数の小径ローラは、コンベヤベルトを支持し、コンベヤベルトが円弧状の下面を有するように配置される。また、好ましくは、下コンベヤは、多数の小径ローラに支持されたコンベヤベルトを有し、下コンベヤの多数の小径ローラは、下コンベヤのコンベヤベルトが直線状の上面を有するように配置される。
【0018】
上記生地延展装置の実施形態において、運動機構は、上コンベヤを揺動させる揺動機構であってもよいし、上コンベヤを摺動させる摺動機構であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態による生地延展装置の概略的な正面図である。
図2図1の生地延展装置の概略的な平面図である。
図3図1の線III-IIIにおける図1の生地延展装置の概略的な平面図である。
図4a】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図4b】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図4c】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図5】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図6a】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図6b】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図6c】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図7】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図8a】上コンベヤの運動の第3の例を説明する概略図である。
図8b】上コンベヤの運動の第3の例を説明する概略図である。
図9】本発明の第2の実施形態による生地延展装置の概略的な正面図である。
図10a】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図10b】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図10c】上コンベヤの運動の第1の例を説明する概略図である。
図11a】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図11b】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図11c】上コンベヤの運動の第2の例を説明する概略図である。
図12】本発明の第3の実施形態による生地延展装置の概略的な正面図である。
図13図12の生地延展装置の概略的な平面図である。
図14a】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図14b】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図14c】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図14d】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図14e】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図14f】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図15】本発明の第4の実施形態による生地延展装置の概略的な正面図である。
図16図15の生地延展装置の概略的な平面図である。
図17a】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図17b】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図17c】上コンベヤの運動の例を説明する概略図である。
図18】複数の上コンベヤを有する生地延展装置の概略図である。
図19】複数の上コンベヤを有する生地延展装置の概略図である。
図20】複数の上コンベヤを有する生地延展装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明による生地延展装置の第1の実施形態である生地延展装置1は、メインフレーム2と、上流側から下流側に、すなわち、流れ方向Fにシート状の生地Dを搬送する下コンベヤ4を有している。下コンベヤ4は、本実施形態では、第1下コンベヤ6と、第1下コンベヤ6の下流側に配置された第2下コンベヤ8からなる。生地延展装置1は、更に、下コンベヤ4の上方に配置された上コンベヤ10を有している。生地延展装置1は、好ましくは、下コンベヤ4の上流側に配置された生地供給コンベヤ12aと、下コンベヤ4の下流側に配置された生地搬出コンベヤ12bを有している。
【0021】
第1下コンベヤ6は、小径の入口ローラ6aと、コンベヤプレート6bと、小径の出口ローラ6cと、駆動ローラ6dと、ローラ6a、6c、6dに巻回された第1下コンベヤベルト6eと、駆動ローラ6dに連結された駆動モータ6fを有している。入口ローラ6a及び出口ローラ6cは、それらの間の第1下コンベヤベルト6eが水平になるように配置され、コンベヤプレート6bは、入口ローラ6aと出口ローラ6cの間の第1下コンベヤベルト6eを水平に支持している。入口ローラ6a及び出口ローラ6cの直径は、例えば、10~20mmである。第1下コンベヤベルト6eは、例えば、ウレタン製である。
【0022】
第2下コンベヤ8は、大径の入口ローラ8aと、コンベヤプレート8bと、大径の出口ローラ8cと、駆動ローラ8dと、ローラ8a、8c、8dに巻回された第2下コンベヤベルト8eと、駆動ローラ8dに連結された駆動モータ8fを有している。入口ローラ8a及び出口ローラ8cは、それらの間の第2下コンベヤベルト8eが水平になるように配置される。コンベヤプレート8bは、入口ローラ8aと出口ローラ8cの間の第2下コンベヤベルト8eを水平に支持している。入口ローラ8a及び出口ローラ8cの直径は、例えば、100~150mmである。第2下コンベヤベルト8eは、例えば、ステンレススチール製又はウレタン製である。本実施形態では、入口ローラ8aと出口ローラ8cの間の第2下コンベヤベルト8eは、生地Dを下コンベヤ4から排出する方向を定めている。この排出方向に沿って基準線20を定める(図4a参照)。
【0023】
上コンベヤ10は、大径の入口ローラ10aと、入口ローラ10aに取付けられた入口ローラシャフト10bと、上コンベヤプレート10cと、大径の出口ローラ10dと、出口ローラ10dに取付けられた出口ローラシャフト10eと、ローラ10a、10dに巻回された上コンベヤベルト10fと、入口ローラシャフト10bに連結された駆動モータ10g(図2参照)を有している。
【0024】
上コンベヤプレート10cは、流れ方向Fに沿って円弧をなす下面10caを有している。入口ローラ10aと出口ローラ10dは、上コンベヤベルト10fが、下面10caに押付けられるように配置されている。かくして、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fは、上流側から下流側に駆動される円弧の下面10fa(図4a参照)を有している。入口ローラ10a及び出口ローラ10dの直径は、例えば、100~150mmである。上コンベヤベルト10fは、例えば、ステンレススチール製又はウレタン製である。円弧の下面の曲率の中心は、上コンベヤベルト10fよりも上に位置する。円弧の半径は、好ましくは、500mmよりも大きく、例えば、1mである。したがって、上コンベヤ10は、例えば、直径2mの仮想大径ローラ22の一部を構成する(図4a参照)。
【0025】
図1及び図2に示すように、生地延展装置1は、上コンベヤ10を揺動させる(図4a~図7参照)揺動機構14を有している。揺動機構14は、流れ方向Fの左右両側において、入口ローラ10aと出口ローラ10dの間の位置でメインフレーム2に固定された支点ブラケット14aと、支点ブラケット14aに固定された支点シャフト14bと、支点シャフト14bを中心に揺動可能に取付けられ且つ入口ローラシャフト10bに枢動可能に取付けられた支点アーム14cと、入口ローラシャフト10bに揺動可能に取付けられ且つ出口ローラシャフト10eに枢動可能に取付けられた上コンベヤフレーム14dを有している。駆動モータ10gを支持するブラケット14eが、右側の支点アーム14cに取付けられている。支点アーム14c及び上コンベヤフレーム14dは、上コンベヤ10の入口ローラ10a及び出口ローラ10dが実質的に上下に移動するように配置されている。
【0026】
図1及び図3に示すように、揺動機構14は、更に、入口ローラ10aを上下方向に移動させる入口ローラ移動機構16と、出口ローラ10dを上下方向に移動させる出口ローラ移動機構18を有している。入口ローラ移動機構16は、駆動モータ16aと、駆動モータ16aに連結され且つ左右方向に延びる駆動シャフト16bを有している。入口ローラ移動機構16は更に、流れ方向Fの左右両側において、駆動シャフト16bに固定され且つ中間シャフト16dに枢動可能に取付けられた揺動アーム16cと、中間シャフト16dに枢動可能に取付けられ且つ入口ローラシャフト10bに枢動可能に取付けられたロッド16eを有している。出口ローラ移動機構18は、駆動モータ18aと、駆動モータ18aに連結され且つ左右方向に延びる駆動シャフト18bを有している。出口ローラ移動機構18は更に、流れ方向Fの左右両側において、駆動シャフト18bに固定され且つ中間シャフト18dに枢動可能に取付けられた揺動アーム18cと、中間シャフト18dに枢動可能に取付けられ且つ出口ローラシャフト10eに枢動可能に取付けられたロッド18eを有している。
【0027】
生地延展装置1は、更に、上記駆動モータ6f、8f、10g、16a、18aを制御するコントローラ(図示せず)を有している。コントローラ(図示せず)は、入口ローラ移動機構16及び出口ローラ移動機構18の作動、及び、下コンベヤ及び上コンベヤの速度を制御して、揺動運動を行う。
【0028】
次に、上コンベヤ10の揺動運動のいくつかの例を説明する。
【0029】
図4a~図4cは、上コンベヤ10の揺動運動の第1の例における第1の位置(図4a)、第2の位置(図4b)、及び第3の位置(図4c)を示す概略的な正面図であり、図5は、第1の位置、第2の位置、第3の位置における上コンベヤ10を重ねて示した図である。第1の位置から第3の位置へ移動する揺動運動により、上コンベヤベルト10fの円弧の下面10faによる生地Dの押圧箇所が上流側から下流側に移動する。押圧箇所は、一般的には、ある時点において下コンベヤ4との間の距離が最も小さい円弧の下面10faの箇所付近である。したがって、押圧箇所は、円弧の下面10faの最下位置24で代表され、それを黒丸で示す。第1の例における最下位置24の軌跡26は、直線であり、軌跡26と基準線20の間の垂直方向距離は、上流側から下流側に向かって小さくなる(図5参照)。すなわち、押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、押圧箇所における上コンベヤ10と下コンベヤ4の間の距離が小さくなる。引続いて、逆の動作で、第3の位置から第1の位置へ移動する揺動運動を行う。
【0030】
図6a~図6cは、上コンベヤ10の揺動運動の第2の例における第1の位置(図6a)、第2の位置(図6b)、及び第3の位置(図6c)を示す概略的な正面図であり、図7は、第1の位置、第2の位置、第3の位置における上コンベヤ10を重ねて示した図である。第1の位置から第3の位置へ移動する揺動運動により、上コンベヤベルト10fの円弧の下面10faによる生地Dの押圧箇所が上流側から下流側に移動する。押圧箇所は、一般的には、ある時点において下コンベヤ4との間の距離が最も小さい円弧の下面10faの箇所付近である。したがって、押圧箇所は、円弧の下面10faの最下位置24で代表され、それを黒丸で示す。第2の例における最下位置24の軌跡26は、直線であり、軌跡26と基準線20の間の垂直方向距離は、上流側から下流側に向かって一定である(図7参照)。すなわち、押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、押圧箇所における上コンベヤ10と下コンベヤ4の間の距離が一定である。引続いて、逆の動作で、第3の位置から第1の位置へ移動する揺動運動を行う。
【0031】
図8a~図8bは、上コンベヤ10の揺動運動の第3の例における第4の位置(図8a)、及び第5の位置(図8b)を示す概略的な正面図である。第3の例において、第1の位置から第3の位置へ移動する揺動運動は、第1の例又は第2の例と同じである。引続いて、上コンベヤ10を上昇させ、第4の位置及び第5の位置へ移動する揺動運動により、円弧の下面10faの最下位置24を生地Dから離した状態で下流側から上流側に移動させる。引続いて、上コンベヤ10を下降させ、第1の位置に戻す。
【0032】
次に、生地延展装置1の作動を説明する。
【0033】
第1下コンベヤ6を速度V1で作動させ、第2下コンベヤ8を、速度V1よりも速い速度V2で作動させる。また、上コンベヤベルト10fを、下コンベヤ6、8に対して同じ速度で駆動する。具体的には、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第1下コンベヤ6の上に位置するとき、上コンベヤベルト10fの速度を、第1下コンベヤ6の速度V1と同じ速度にする。また、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第2下コンベヤ8の上に位置するとき、上コンベヤベルト10fの速度を、第2下コンベヤ8の速度V2と同じ速度にする。上コンベヤベルト10fの速度の切替えは、例えば、最下位置24が第1下コンベヤ6と第2下コンベヤ8の間に来たときに行う。
【0034】
また、上コンベヤ10の揺動運動を行う。揺動速度、すなわち、円弧の下面10faの最下位置24の流れ方向Fの移動速度が、少なくとも第2下コンベヤ8の速度V2よりも速くなるように定められる。仮に、最下位置24の移動速度が下コンベヤ4の速度と同じであるとすると、上コンベヤ10(仮想大径ローラ22)が押圧する生地Dの箇所は変わらない。最下位置24の移動速度を速くすることにより、仮想大径ローラ22が転がるような作用により、広い範囲の生地Dを押圧して、延展効率を向上させる。
【0035】
図4a~図4c及び図5に示す第1の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離が小さくなるので、生地Dは効率的に延展される。また、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置に揺動するとき、最下位置24が、速度V1で作動する第1下コンベヤ6の上方から速度V2で作動する第2下コンベヤ8の上方に移動し、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fの速度がV1からV2に切替わるので、生地Dは、流れ方向Fに引伸ばされて効率的に延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離が更に小さくなるので、生地Dは効率的に延展される。これに対して、上コンベヤ10が第3の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しある。また、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離が大きくなるので、生地はあまり延展されない。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0036】
図6a~図6c及び図7に示す第2の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離は一定であり、生地Dはその距離に応じて延展される。また、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置に揺動するとき、最下位置24が、速度V1で作動する第1下コンベヤ6の上方から速度V2で作動する第2下コンベヤ8の上方に移動し、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fの速度がV1からV2に切替わるので、生地Dは、流れ方向Fに引伸ばされて効率的に延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離は一定であり、生地Dはその距離に応じて延展される。第3の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しあるが、生地Dは、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離に応じて延展される。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0037】
第3の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第3の位置まで揺動するとき、第1の例又は第2の例と同様である。上コンベヤ10を上昇させて、第4の位置から第5の位置に揺動させるとき、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fは生地Dから離れているので、生地Dは延展されない。一方、第1の例及び第2の例と異なり、生地Dを上流側に押し戻す作用はない。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0038】
次に、図9を参照して、本発明による生地延展装置の第2の実施形態である生地延展装置30を説明する。生地延展装置30は、第1下コンベヤ32以外、第1の実施形態である生地延展装置1と同様の構成を有している。したがって、第2の実施形態において、第1下コンベヤ32以外の構成要素に、第1の実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
第1下コンベヤ32は、小径の入口ローラ32aと、コンベヤプレート32bと、小径の出口ローラ32cと、駆動ローラ32dと、ローラ32a、32c、32dに巻回された第1下コンベヤベルト32eと、駆動ローラ32dに連結された駆動モータ32fを有している。入口ローラ32a、出口ローラ32c、及び駆動ローラ32dは、それらの間の第1下コンベヤベルト32eが基準線20に対して角度αで傾斜するように配置され、コンベヤプレート32bは、入口ローラ32aと出口ローラ32cの間の第1下コンベヤベルト32eを角度αで支持している。入口ローラ6a及び出口ローラ6cの直径は、例えば、10~20mmである。第1下コンベヤベルト6eは、例えば、ウレタン製である。
【0040】
上コンベヤ10の揺動運動は、第1の実施形態と同様である。第1の例の揺動運動を、図4a~図4cの代わりに図10a~図10cに示し、第2の例の揺動運動を、図6a~図6cの代わりに図11a~図11cに示し、その説明を省略する。第3の例の揺動運動については、図8a~図8bを参照することにより、その説明を省略する。
【0041】
次に、生地延展装置30の作動を説明する。
【0042】
第1下コンベヤ32を速度V1で作動させ、第2下コンベヤ8を、速度V1よりも速い速度V2で作動させる。また、上コンベヤベルト10fを、下コンベヤ32、8に対して同じ速度で駆動する。具体的には、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第1下コンベヤ32の上に位置するとき、上コンベヤベルト10fの速度を、第1下コンベヤ32の速度V1と同じ速度にする。また、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第2下コンベヤ8の上に位置するとき、上コンベヤ10の速度を、第2下コンベヤ8の速度V2と同じ速度にする。上コンベヤベルト10fの速度の切替えは、例えば、最下位置24が、第1下コンベヤ32と第2下コンベヤ8の間に来たときに行う。
【0043】
また、上コンベヤ10の揺動運動を行う。揺動速度、すなわち、円弧の下面10faの最下位置24の流れ方向Fの移動速度が、少なくとも第2下コンベヤ8の速度よりも速くなるように定められる。仮に、最下位置24の移動速度が下コンベヤ4の速度と同じであるとすると、上コンベヤ10(仮想大径ローラ22)が押圧する生地Dの箇所は変わらない。最下位置24の移動速度を速くすることにより、仮想大径ローラ22が転がるような作用により、広い範囲の生地Dを押圧して、延展効率を向上させる。
【0044】
図10a~図10cに示す第1の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第1下コンベヤ32との間の距離が小さくなるので、生地Dは効率的に延展される。また、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置に揺動するとき、最下位置24が、速度V1で作動する第1下コンベヤ32の上方から速度V2で作動する第2下コンベヤ8の上方に移動し、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fの速度がV1からV2に切替わるので、生地Dは、流れ方向Fに引伸ばされて効率的に延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離が更に小さくなるので、生地Dは効率的に延展される。これに対して、上コンベヤ10が第3の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しある。また、上コンベヤ10と第1下コンベヤ32との間の距離が大きくなるので、生地はあまり延展されない。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ32、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0045】
図11a~図11cに示す第2の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで揺動するとき、第1下コンベヤ32の傾斜により、上コンベヤ10と第1下コンベヤ32との間の距離が小さくなるので、生地Dは効率的に延展される。また、上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置に揺動するとき、最下位置24が、速度V1で作動する第1下コンベヤ32の上方から速度V2で作動する第2下コンベヤ8の上方に移動し、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fの速度がV1からV2に切替わるので、生地Dは、流れ方向Fに引伸ばされて効率的に延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離は一定であり、生地Dはその距離に応じて延展される。上コンベヤ10が第3の位置から第2の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しあるが、生地は、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離に応じて延展される。また、上コンベヤ10が第2の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しある。また、上コンベヤ10と第1下コンベヤ32との間の距離が大きくなるので、生地はあまり延展されない。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ32、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0046】
第3の例の揺動運動の場合、上コンベヤ10が第1の位置から第3の位置まで揺動するとき、第1の例又は第2の例と同様である。上コンベヤ10を上昇させて、第4の位置から第5の位置に揺動させるとき、上コンベヤ10の上コンベヤベルト10fは生地Dから離れているので、生地Dは延展されない。一方、第1の例及び第2の例と異なり、生地Dを上流側に押し戻す作用はない。上記の動作を繰返して、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ32、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0047】
次に、図12及び図13を参照して、本発明による生地延展装置の第3の実施形態である生地延展装置40を説明する。生地延展装置40は、揺動機構14を摺動機構に変更したこと以外、第1の実施形態である生地延展装置1と同様の構成を有している。したがって、第3の実施形態において、摺動機構以外の構成要素に、第1の実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
図12及び図13に示すように、生地延展装置40は、上コンベヤ10を摺動させる摺動機構44を有している。摺動機構44は、流れ方向Fの左右両側において、流れ方向Fにメインフレーム2に固定されたリニアレール44aと、リニアレール44aに沿って摺動する摺動ブロック44bと、摺動ブロック44bに固定され且つ入口ローラシャフト10b及び出口ローラシャフト10eに枢動可能に取付けられた上コンベヤフレーム44cを有している。駆動モータ10gを支持するブラケット44dが、右側の上コンベヤフレーム44cに取付けられている。
【0049】
摺動機構44は、更に、上コンベヤフレーム44cを駆動する駆動機構46を有している。駆動機構46は、駆動モータ46aと、駆動モータ46aに連結されたアーム46bと、アーム46b及び上コンベヤフレーム44cに枢動可能に連結された連結シャフト46cを有している。
【0050】
生地延展装置40は、更に、駆動モータ6f、8f、10g、46aを制御するコントローラ(図示せず)を有している。コントローラ(図示せず)は、摺動機構44の作動、及び、下コンベヤ4及び上コンベヤ10の速度を制御して、以下に説明する摺動運動を行う。
【0051】
次に、上コンベヤ10の摺動運動の例を説明する。
【0052】
図14a~図14fは、上コンベヤ10の摺動運動の例における第1の位置(図14a)、第2の位置(図14b)、第3の位置(図14c)、第4の位置(図14d)、第5の位置(図14e)、及び第6の位置(図14f)を示す概略的な正面図である。第1の位置から第4の位置へ移動する摺動運動により、上コンベヤベルト10fの円弧の下面10faによる生地Dの押圧箇所が上流側から下流側に移動する。押圧箇所は、一般的には、ある時点において下コンベヤ4との間の距離が最も小さい円弧の下面10faの箇所付近である。したがって、押圧箇所は、円弧の下面10faの最下位置24で代表され、それを黒丸で示す。この例における最下位置24の軌跡26は、直線であり、軌跡26と基準線20の間の垂直方向距離は、上流側から下流側に向かって一定である。すなわち、押圧箇所が上流側から下流側に移動するとき、押圧箇所における上コンベヤ10と下コンベヤ4の間の距離は一定である。引続いて、逆の動作で、第4の位置から第6の位置、第6の位置から第1の位置へ移動する摺動運動を行う。
【0053】
次に、生地延展装置40の作動を説明する。
【0054】
第1下コンベヤ6を速度V1で作動させ、第2下コンベヤ8を、速度V1よりも速い速度V2で作動させる。また、上コンベヤ10を第1の位置から第4の位置に(上流側から下流側に)メインフレーム2に対して摺動速度V3で摺動させ、引き続いて、上コンベヤ10を第4の位置から第6の位置及び第6の位置から第1の位置に(下流側から上流側に)メインフレーム2に対して摺動速度V3で摺動させる。
【0055】
上コンベヤベルト10fを、下コンベヤ6、8に対して同じ速度で駆動する。具体的には、上コンベヤ10の摺動が停止し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第1下コンベヤ6の上に位置するとき(図14aの第1の位置)、上コンベヤベルト10fの速度を、第1下コンベヤ6の速度V1と同じ速度にする。上コンベヤ10が上流側から下流側に速度V3で摺動し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第1下コンベヤ6の上に位置するとき(図14bの第2の位置)、上コンベヤ10に対する上コンベヤベルト10fの速度V4を、V1-V3にする。上コンベヤ10が上流側から下流側に速度V3で摺動し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第2下コンベヤ8の上に位置するとき(図14cの第3の位置)、上コンベヤ10に対する上コンベヤベルト10fの速度V5を、V2-V3にする。上コンベヤ10の摺動が停止し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第2下コンベヤ8の上に位置するとき(図14dの第4の位置)、上コンベヤベルト10fの速度を、第2下コンベヤ8の速度V2と同じ速度にする。上コンベヤ10が下流側から上流側に速度V3で摺動し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第2下コンベヤ8の上に位置するとき(図14eの第5の位置)、上コンベヤ10に対する上コンベヤベルト10fの速度V6を、V2+V3にする。上コンベヤ10が下流側から上流側に速度V3で摺動し、上コンベヤベルト10fの下面10faが押圧する生地Dが主に第1下コンベヤ6の上に位置するとき(図14fの第6の位置)、上コンベヤ10に対する上コンベヤベルト10fの速度V7を、V1+V3にする。上コンベヤ10が摺動している間の上コンベヤベルト10fの速度の切替えは、例えば、上コンベヤベルト10fの下面10faの最下位置24が、第1下コンベヤ6と第2下コンベヤ8の間に来たときに行う。
【0056】
上コンベヤ10の摺動速度V3、すなわち、円弧の下面10faの最下位置24の流れ方向Fの移動速度が、少なくとも第2下コンベヤ8の速度V2よりも速くなるように定められる。仮に、最下位置24の移動速度が下コンベヤ4の速度と同じであるとすると、上コンベヤ10(仮想大径ローラ22)が押圧する生地Dの箇所は変わらない。最下位置24の移動速度を速くすることにより、仮想大径ローラ22が転がるような作用により、広い範囲の生地Dを押圧して、延展効率を向上させる。
【0057】
上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで摺動するとき、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離は一定であり、生地Dはその距離に応じて延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置に摺動するとき、最下位置24が、速度V1で作動する第1下コンベヤ6の上方から速度V2で作動する第2下コンベヤ8の上方に移動し、上コンベヤ10に対する上コンベヤベルト10fの速度がV4からV5に切替わるので、生地Dは、流れ方向Fに引伸ばされて効率的に延展される。上コンベヤ10が第3の位置から第4の位置まで摺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離は一定であり、生地Dはその距離に応じて延展される。第4の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用が少しあるが、生地Dは、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8との間の距離に応じて延展される。かくして、生地延展装置1は、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0058】
揺動機構を採用すると、上コンベヤ10のスペースを比較的小さくすることができ、揺動運動を比較的自由に設定できるが、機構自体が比較的複雑である。摺動機構を採用すると、上コンベヤ10のスペースが流れ方向に長くなり、摺動運動の自由度が比較的小さいが、機構自体が比較的簡単である。
【0059】
次に、図15を参照して、本発明による生地延展装置の第4の実施形態である生地延展装置50を説明する。生地延展装置50は、上コンベヤ10の上ローラユニット52、第2下コンベヤ8の下ローラユニット54、及び生地押えローラ56以外、第1の実施形態である生地延展装置1と同様の構成を有している。したがって、第4の実施形態において、上ローラユニット52、下ローラユニット54、及び生地抑えローラ56以外の構成要素に、第1の実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
生地延展装置50は、第1の実施形態である生地延展装置1の上コンベヤ10の上コンベヤプレート10cの代わりに、上ローラユニット52を有している。上コンベヤ10の上ローラユニット52は、多数の小径ローラ52aを有し、多数の小径ローラ52aは、上コンベヤベルト10fを支持しており、且つ、上コンベヤベルト10fが上流側から下流側に駆動される円弧の下面10faを有するように配置されている。上ローラユニット52は、更に、小径ローラ52aを支持する多数のシャフト52bと、シャフト52bを支持する多数のブラケット52cと、多数のブラケットが取付けられるベース52dを有している。小径ローラ52aの外径は、例えば、30~40mmである。小径ローラ52aの配置密度を高めるために、小径ローラ52aを千鳥配列することが好ましい(図16参照)。
【0061】
また、生地延展装置50は、第1の実施形態である生地延展装置1の入口ローラ8a及び第2下コンベヤ8のコンベヤプレート8bの代わりに、下ローラユニット54を有している。第2下コンベヤ8の下ローラユニット54は、小径の入口ローラを有する入口プレート54aと、多数の小径ローラ54bと、中間プレート54cを有している。入口プレート54a、小径ローラ54b、中間プレート54c、及び出口ローラ8cは、それらの間の第2下コンベヤベルト8eを支持しており、且つ、第2下コンベヤベルト8eが直線状(水平)になるように配置される。下ローラユニット54は、更に、小径ローラ54bを支持する多数のシャフト54dと、シャフト54dを支持する多数のブラケット54eと、多数のブラケットが取付けられるベース54fを有している。小径ローラ54bの外径は、例えば、30~40mmである。小径ローラ54bの配置密度を高めるために、上ローラユニット52と同様、小径ローラ54bを千鳥配列することが好ましい(図示せず)。
【0062】
また、生地延展装置50は、上コンベヤ10に進入する生地Dを押えるための生地押えローラ56を有している。生地押えローラ56は、第1の下コンベヤ6の上方に且つ上コンベヤ10の上流側に配置されている。生地押えローラ56は、第1の下コンベヤ6に対する高さを調整することができるようにメインフレーム2に取付けられている。また、生地押えローラ56は、回転速度を調節することができるように、モータ56aによって駆動される。
【0063】
次に、生地延展装置50の作動を説明する。
【0064】
第1下コンベヤ6を速度V1で作動させ、第2下コンベヤ8を、速度V1よりも速い速度V2で作動させる。生地押えローラ56を、第1下コンベヤ8の速度V1よりも少し速い周速で作動させ、生地Dが生地押えローラ56の手前で滞留することを防止する。また、上コンベヤ10を、第1下コンベヤ6の速度V1よりも速い速度V3で駆動する。なお、第2下コンベヤ8の速度V2は、上コンベヤ10の速度V3よりも速い速度に設定される。上コンベヤ10の上ローラユニット52及び第2下コンベヤ8の下ローラユニット54により、上コンベヤベルト10f及び第2下コンベヤベルト8eの駆動ローラ10e、8dに対するスリップを防止して、生地Dの延展を向上させる。
【0065】
また、多数の小径ローラ54bで上コンベヤベルト10fの円弧の下面10faを支持している箇所と支持していない箇所が多数存在するので、生地Dを押圧する際に上コンベヤベルト10fの下面10faに凹凸が形成され、コンベヤベルト10fの円弧の下面10faの生地Dに対するスリップを防止して、生地Dの延展を向上させる。また、コンベヤベルト10fの円弧の下面10faの表面に凹凸が形成されることで、多数の凸部で押圧された生地Dが隣接する凹部に逃げることができ、生地の延展を向上させる。
【0066】
また、上コンベヤ10の揺動運動を行う。揺動速度、すなわち、円弧の下面10faの最下位置24の流れ方向Fの移動速度が、第2下コンベヤ8の速度V2の約8~17倍に定められる。仮想大径ローラ22が転がるような作用により、広い範囲の生地Dを押圧して、延展効率を向上させる。また、上コンベヤ10の揺動速度を速くすることにより、揺動運動によって生じる生地Dの表面の凹凸が軽減される。上コンベヤ10の速度V3を一定にしているため、第1~第3の実施形態で行われていた上コンベヤ10の速度切替を省略することができる。
【0067】
図17a~図17cは、図4a~図4cで示した揺動運動と同様の揺動運動の第1の位置(図17a)、第2の位置(図17b)、及び第3の位置(図17c)を示す。上コンベヤ10が第1の位置から第2の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離が小さくなるので、仮想大径ローラ22による生地Dの延展が効率的に行われる。更に、上コンベヤ10の速度V3が第1下コンベヤ6の速度V1よりも速いので、上コンベヤ10と生地押えローラ56の間の生地D(特に上側)が流れ方向Fに引伸ばされて、生地Dが効率的に延展される。上コンベヤ10が第2の位置から第3の位置まで揺動するとき、上コンベヤ10と第2下コンベヤ8との間の距離が更に小さくなるので、仮想大径ローラ22による生地Dの延展が効率的に行われる。更に、第2下コンベヤ8の速度V2が上コンベヤ10の速度V3よりも速いので、上コンベヤ10と生地押えローラ56の間の生地D(特に下側)が流れ方向Fに引伸ばされて、生地Dが効率的に延展される。すなわち、生地Dの上側と下側の延展が交互に行われる。また、上コンベヤ10が第3の位置から第1の位置に戻るとき、生地Dを上流側に押し戻す作用があり、生地D内のガスを抜く効果がある。一方、上コンベヤ10と第1下コンベヤ6との間の距離が大きくなるので、仮想大径ローラ22による生地Dの延展はあまりないが、上コンベヤ10と生地押えローラ56の間の引伸ばしは行われるので、生地Dが効率的に延展される。上記の動作を繰返して、生地延展装置50は、上コンベヤ10と下コンベヤ6、8の間の生地Dを搬送しながら延展する。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0069】
上記実施形態では、(メインフレーム2に対する)上コンベヤベルト10fの速度を、下コンベヤ4の速度に対して同じにしたけれども、下コンベヤ4の速度に対して速くしてもよい。上記実施形態では、第2下コンベヤの速度を第1下コンベヤの速度よりも速くしたが、これらの速度が同じであってもよい。上記実施形態では、下コンベヤは、第1下コンベヤと第2下コンベヤを有していたけれども、単一の下コンベヤであってもよい。上記実施形態では、下コンベヤ4は、基準線20が水平になるように配置されていたが、基準線が斜めになるように配置されてもよい。
【0070】
上コンベヤと下コンベヤの間の生地を停滞がなければ、下コンベヤが上コンベヤよりも速い速度で駆動されてもよい。第4の実施形態で説明した生地押えローラ56を任意の実施形態に追加し、上コンベヤ10と生地押えローラ56の間の生地Dの引伸ばしにより、延展効率を向上させてもよい。また、第4の実施形態で説明した小径ローラ52a、54bを任意の実施形態に採用してもよい。
【0071】
上記第3の実施形態において、上コンベヤ10を基準線20と平行に摺動させたけれども、基準線20に対して斜めに摺動させて、押圧箇所(実施形態では最下位置24)が上流側から下流側に移動するとき、押圧箇所における上コンベヤと下コンベヤの間の距離が小さくなるようにしてもよい。
【0072】
上記実施形態において、上コンベヤベルト10fの下面10faは、円弧であったけれども、円弧状であってもよく、すなわち、大きい曲率を有する円弧を含む凸状の輪郭を有していてもよい。円弧状の下面の曲率の中心は、かかる円弧の曲率の中心であり、大きい曲率を確保するために、上コンベヤベルト10fよりも上にあることが好ましい。上記凸状の輪郭は、複数の円弧、曲線及び/又は直線の組合せであってもよい。
【0073】
上記実施形態において、最下位置24の軌跡26は直線であったが、軌跡26は直線に限らず、例えば、円弧であってもよいし、円弧を組合せた軌跡であってもよいし、直線と円弧を組合せた軌跡であってもよいし、その他の曲線であってもよい。
【0074】
上記実施形態において、生地延展装置は、1つの上コンベヤ10を有していたけれども、複数の上コンベヤ10を組合せて生地延展装置を構成してもよい。
【0075】
例えば、図18に示す例では、生地延展装置51は、2つの上コンベヤ10と、3つの下コンベヤ52、53、54を有する。上流側の上コンベヤ10は、上流側の下コンベヤ52と中間の下コンベヤ53の上方に配置され、下流側の上コンベヤ10は、中間の下コンベヤ53と下流側の下コンベヤ54の上方に配置される。中間の下コンベヤ53の速度V2は、上流側の下コンベヤ52の速度V1よりも速く、下流側の下コンベヤ54の速度V3は、中間の下コンベヤ53の速度V2よりも速い。上コンベヤ10は、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に作動する。
【0076】
例えば、図19に示す例では、生地延展装置61は、2つの上コンベヤ10と、3つの下コンベヤ62、63、64を有する。上流側の上コンベヤ10は、上流側の下コンベヤ62と中間の下コンベヤ63の上方に配置され、下流側の上コンベヤ10は、下流側の下コンベヤ64の上方に配置される。中間の下コンベヤ63の速度V2は、上流側の下コンベヤ62の速度V1よりも速く、下流側の下コンベヤ64の速度V3は、中間の下コンベヤ63の速度V2よりも速い。上流側の上コンベヤ10は、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に作動する。下流側の上コンベヤ10は、速度がV3で一定であること以外、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に作動する。
【0077】
例えば、図20に示す例では、生地延展装置71は、2つの上コンベヤ10と、4つの下コンベヤ72、73、74、75を有する。上流側の上コンベヤ10は、上流側の下コンベヤ72と2番目の下コンベヤ73の上方に配置され、下流側の上コンベヤ10は、3番目の下コンベヤ73と下流側の下コンベヤ74の上方に配置される。2番目の下コンベヤ73の速度V2は、上流側の下コンベヤ72の速度V1よりも速く、3番目の下コンベヤ74の速度V3は、2番目の下コンベヤ73の速度V2よりも速く、下流側の下コンベヤ75の速度V4は、3番目の下コンベヤ74の速度V3よりも速い。上流側の上コンベヤ10は、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に作動する。
【符号の説明】
【0078】
1 生地延展装置
4 下コンベヤ
6 第1下コンベヤ(下コンベヤ)
8 第2下コンベヤ(下コンベヤ)
10 上コンベヤ
10f 上コンベヤベルト(コンベヤベルト)
10fa 下面
14 揺動機構(運動機構)
20 基準線
24 最下位置(押圧箇所)
30 生地延展装置
32 第1下コンベヤ(下コンベヤ)
40 生地延展装置
44 摺動機構(運動機構)
52a 小径ローラ
54b 小径ローラ
56 生地押え装置
D 生地
F 流れ方向
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図14f
図15
図16
図17a
図17b
図17c
図18
図19
図20