(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】レーザ材料加工距離計測
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2020522305
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 US2018055222
(87)【国際公開番号】W WO2019089204
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-03
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512095392
【氏名又は名称】コヒレント, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリーズ, キース
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-76384(JP,A)
【文献】特開昭62-89592(JP,A)
【文献】特開2013-146734(JP,A)
【文献】特開平3-221285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のワークを加工するためのレーザ装置であって、前記装置は、
レーザ放射ビームを送達するレーザ源と、
導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリ
であって、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを受け取るように位置付けられ且つ配置され、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを集光し、且つ、前記集光されたレーザ放射ビームを前記ワークへ向けるように構成され、前記集光されたレーザ放射ビームは、前記導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れる、集光アセンブリと、
第1の定電流を前記導電性ハウジングへ送達
し、電荷を前記導電性ハウジングに線形的に蓄積させ、これにより、選択された一定の継続時間にわたって一定の電荷が蓄積するように配置される第1の定電流源と、
前記導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように配置される電圧計と
を備え
、
前記導電性ハウジングの前記底面及び前記ワークの上面は、ギャップ距離によって隔てられ、
前記導電性ハウジングに蓄積された前記一定の電荷は、前記ギャップ距離に依存せず、前記ギャップ距離は、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化に比例し、前記一定の継続時間にわたる、
前記測定される電圧の変化が、前記ギャップ距離を決定するために用いられる、装置。
【請求項2】
レーザ放射ビームの焦点とワークとの間の距離は、前記ギャップ距離から決定される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記定電流源は、Howland電流ポンプである、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記基準ノードは前記ワークであり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記ワークとの間との電圧を測定する、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
第2の定電流源及び零のコンデンサをさらに含み、前記零のコンデンサの第1端は前記ワークへ電気的に接続され、前記第2の定電流源は、第2の定電流を前記零のコンデンサの第2端へ送達
し、前記導電性ハウジング及び前記ワークは、前記ギャップ距離に依存しないバックグラウンド静電容量を有し、前記第2の定電流は、前記第1の定電流が前記バックグラウンド静電容量に蓄積する電荷をもたらすのと同じ割合で、前記零のコンデンサに蓄積する電荷をもたらすようにセットされる、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記基準ノードは前記零のコンデンサの前記第2端であり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記零のコンデンサの前記第2端との間の電圧を測定する、請求項
5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記一定の継続時間は、約1マイクロ秒から約1000マイクロ秒の範囲にある、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記第1の定電流は、約1マイクロアンペアから約100マイクロアンペアの範囲にある、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項9】
コントローラをさらに含み、最適距離を維持するために、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項10】
コントローラをさらに含み、予め決められた距離プロファイルに従うように、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項11】
電気絶縁性のワークを加工するためのレーザ装置であって、前記装置は、
前記ワークを機械的に支持するように配置された上面を有する、導電性の平行移動ステージと、
レーザ放射ビームを送達するレーザ源と、
導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリ
であって、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを受け取るように位置付けられ且つ配置され、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを集光し、且つ、前記集光されたレーザ放射ビームを前記ワークへ向けるように構成され、前記集光されたレーザ放射ビームは、前記導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れる、集光アセンブリと、
第1の定電流を前記導電性ハウジングへ送達
し、電荷を前記導電性ハウジングに線形的に蓄積させ、これにより、選択された一定の継続時間にわたって一定の電荷が蓄積するように配置される第1の定電流源と、
前記導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように配置される電圧計と
を備え
、
前記導電性ハウジングの前記底面及び前記平行移動ステージの前記上面は、ギャップ距離によって隔てられ、
前記導電性ハウジングに蓄積された前記一定の電荷は、前記ギャップ距離に依存せず、前記ギャップ距離は、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化に比例し、前記一定の継続時間にわたる、
前記測定される電圧の変化が前記ギャップ距離を決定するために用いられる、装置。
【請求項12】
前記基準ノードは前記
平行移動ステージであり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記
平行移動ステージとの間との電圧を測定する、請求項
11に記載のレーザ装置。
【請求項13】
第2の定電流源及び零のコンデンサをさらに含み、前記零のコンデンサの第1端は前記
平行移動ステージへ電気的に接続され、前記第2の定電流源は、第2の定電流を前記零のコンデンサの第2端へ送達
し、前記導電性ハウジング及び前記平行移動ステージは、前記ギャップ距離に依存しないバックグラウンド静電容量を有し、前記第2の定電流は、前記第1の定電流が前記バックグラウンド静電容量に蓄積する電荷をもたらすのと同じ割合で、前記零のコンデンサに蓄積する電荷をもたらすようにセットされる、請求項
11に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記基準ノードは前記零のコンデンサの前記第2端であり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記零のコンデンサの前記第2端との間の電圧を測定する、請求項
13に記載のレーザ装置。
【請求項15】
コントローラをさらに含み、最適距離を維持するために、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、請求項
11に記載のレーザ装置。
【請求項16】
コントローラをさらに含み、予め決められた距離プロファイルに従うように、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、請求項
11に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、概して、静電容量の距離計測に関する。本発明は、特に、精密レーザ材料加工における静電容量の距離計測に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術の検討
レーザ放射ビームは、広範な材料から作製されるワークを切断し、穴を開け、マーキングし、且つ、線を刻むためにますます用いられている。材料は、金属及び合金、ガラス及びサファイアなどのもろい材料、並びに、ポリマー及びプラスチックなどの柔軟な材料を含む。旧来の機械加工は、加工されるワークが圧力を受けたときに伝播し得るマイクロクラックなどの、好ましくない欠陥を生じ、それによって、加工されるワークを劣化させ、弱くする。レーザ加工は、そのような好ましくない欠陥を最小化し、概してよりきれいであり、且つ、熱の影響を受けたより小さな領域をもたらす。レーザ機械は、高い質の端及び壁を有する、精密な切断及び穴開けを生ずるために、集光されたレーザビームを用いるとともに、好ましくない欠陥の形成を最小化する。レーザ溶接においては、集光されたレーザビームは、それぞれの溶接点又は継ぎ目の位置を精密に定め、最小限の副次的な熱を生ずる。レーザマーキングにおいては、集光されたレーザビームへの制御された曝露が、ワークの良く定義された面積又は体積における、視覚的に識別できる材料変形を生ずる。これらの用途の全てが、向上されたレーザ加工速度及び向上された集光されたレーザビームの位置づけを要求している。
【0003】
所望される特徴は、三次元において、集光ビームを、ワークを通して動かすことにより、ワーク中に形成される。より小さなワークに対しては、直線的に平行移動するステージがワークを支持し、三次元において、最大の制御された走査速度まで、集光ビームを通してワークを動かす。より高い横方向の走査速度は、集光されていないビームを偏向させるための検流計作動モーターを用いて利用可能であり、それによって、集光ビームを横方向へ、ワークを通して平行移動させる。最新技術のレーザ加工ワークステーションは、コンピュータ数値制御を用い、複雑な形状を有するワークへのさらなるの自由度を提供する。「フライングオプティクス」ワークステーションにおいては、レーザ放射ビームは、加工の間、静止したワークに対して動く集光要素へ送達される。より大きなワークに対しては、集光要素は、関節を有するロボットアームへ取り付けられ得る。
【0004】
集光要素は、典型的には「加工ヘッド」又は「ノズルアセンブリ」の1つの構成要素である。加工ヘッドはまた、集光ビーム中へ加工ガスを注入する。加工ガスは、直接的にレーザ加工を助ける(酸素などの)活性ガスであり得、又は、(窒素又はアルゴンなどの)不活性ガスであり得る。加工ヘッドは、カメラ及びレンズなどの画像化ハードウェアをさらに含み得、同様にして、セットアップを手助けする可視照準ビームもさらに含み得る。加工ヘッドは、このように様々な選択を有し、例えば、スイスのBelpのRofin-LASAG AGから、商業的に利用可能である。
【0005】
精密なレーザ加工は、加工ヘッドとワークとの間の距離の正確なリアルタイム測定を要求する。好ましい方法は、加工ヘッド及びワークを、静電容量センサの2つの導体として扱うことである。静電容量は、導体の表面積、導体間の任意の媒質の誘電率に比例し、導体間の距離に反比例する。静電容量センサが充電されているとき、距離の変化は、2つの導体間の電位差(これ以降、「電圧」と称する)に比例し、それは容易に測定される。
【0006】
静電容量センサへ振動電圧を適用することがより一般的である。静電容量センサは、抵抗―コンデンサ(RC)回路の1つの構成要素となり、距離の変化は、回路の共振周波数の変化を通して測定される。静電容量の小さな変化に対する敏感性を向上させるために、RC回路は、バンドパスフィルタのスペクトルエッジにおいて運用され得る。1つの実施においては、バンドパスフィルタを通した振動RC回路からの送信出力は、静電容量の及び周波数の小さな変化を、振幅の比例的に非常に大きな変化へ変換する。この実施例は、米国特許第8405409号で説明されており、それはまた、そのような測定に関するノイズ及び応答時間の考察の検討も含んでいる。
【0007】
RC回路を有する静電容量センサの制限は、回路が特定の加工ヘッドのためにカスタマイズされなければならず、且つ、小さな範囲の測定される静電容量における運用のために最適化されることである。一般に、加工ヘッドが取り換えられたとき、又は、ノズル部分だけが取り換えられたときでさえ、静電容量センサは無力となる。さらに、RC回路を用いた静電容量測定におけるノイズは、十分な精度の距離測定を獲得するための最小限の時間を課し、それによって、リアルタイム距離測定のための時間的な分解能を下げる。これは、環境的電気的ノイズ及びレーザ加工によって生み出されるノイズを含む。これらの欠損を克服することを意図した従来技術の回路設計は、概して、ダイナミックレンジ及び複雑性における妥協を要求する。
【0008】
レーザ加工のための広範な加工ヘッド及びノズルを適応可能な、精密な非接触距離測定装置に対するニーズがある。装置は、レーザ加工のリアルタイム制御のための高速な距離測定が可能であるべきである。好ましくは、装置はノイズに耐性があり、幅広いダイナミックレンジを提供し、且つ、比較的単純で堅牢な設計を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の側面において、本発明に従った、導電性のワークを加工するためのレーザ装置は、レーザ放射ビームを送達するレーザ源、及び、導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリを備える。集光アセンブリは、レーザ放射ビームを受け取るように位置づけられ、且つ配置される。集光アセンブリは、レーザ放射ビームを集光し、且つ、集光されたレーザ放射ビームをワークへ向けるように構成される。集光されたレーザ放射ビームは、導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れる。第1の定電流源は、選択された一定の継続時間、第1の定電流を導電性ハウジングへ送達するように提供され、且つ配置される。電圧計は、導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように提供され、且つ配置される。導電性ハウジングの底面及びワークの上面は、ギャップ距離によって隔てられている。一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化が、ギャップ距離を決定するために用いられる。
【0011】
本発明の別の側面において、電気絶縁性のワークを加工するためのレーザ装置は、ワークを機械的に支持するように配置される上面を有する、導電性の平行移動ステージと、レーザ放射ビームを送達するレーザ源と、導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリとを備える。集光アセンブリは、レーザ放射ビームを受け取るように位置づけられ、且つ配置される。集光アセンブリは、レーザ放射ビームを集光し、且つ、集光されたレーザ放射ビームをワークへ向けるように構成される。集光されたレーザ放射ビームは、導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れる。第1の定電流源は、選択された一定の継続時間、第1の定電流を導電性ハウジングへ送達するように提供され、且つ配置される。電圧計は、導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように提供され、且つ配置される。導電性ハウジングの底面及び平行移動ステージの上面は、ギャップ距離によって隔てられている。一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化が、ギャップ距離を決定するために用いられる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
導電性のワークを加工するためのレーザ装置であって、前記装置は、
レーザ放射ビームを送達するレーザ源と、
導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリと、
選択された一定の継続時間の間、第1の定電流を前記導電性ハウジングへ送達するように配置される第1の定電流源と、
前記導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように配置される電圧計と
を備え、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを受け取るように位置付けられ且つ配置され、前記レーザ放射ビームを集光し、且つ、前記集光されたレーザ放射ビームを前記ワークへ向けるように構成され、前記集光されたレーザ放射ビームは、前記導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れ、
前記導電性ハウジングの前記底面及び前記ワークの上面は、ギャップ距離によって隔てられ、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化が、前記ギャップ距離を決定するために用いられる、装置。
(項目2)
前記一定の継続時間の間、前記導電性ハウジングへ送達される前記第1の定電流は、前記導電性ハウジングに蓄積するための、前記ギャップ距離に依存しない一定の電荷をもたらす、項目1に記載のレーザ装置。
(項目3)
前記ギャップ距離は、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化に比例する、項目1に記載のレーザ装置。
(項目4)
レーザ放射ビームの焦点とワークとの間の距離は、前記ギャップ距離から決定される、項目1に記載のレーザ装置。
(項目5)
前記定電流源は、Howland電流ポンプである、項目1に記載のレーザ装置。
(項目6)
前記基準ノードは前記ワークであり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記ワークとの間との電圧を測定する、項目1に記載のレーザ装置。
(項目7)
第2の定電流源及び零のコンデンサをさらに含み、前記零のコンデンサの第1端は前記ワークへ電気的に接続され、前記第2の定電流源は、第2の定電流を前記零のコンデンサの第2端へ送達する、項目1に記載のレーザ装置。
(項目8)
前記基準ノードは前記零のコンデンサの前記第2端であり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記零のコンデンサの前記第2端との間の電圧を測定する、項目7に記載のレーザ装置。
(項目9)
前記導電性ハウジング及び前記ワークは、前記ギャップ距離に依存しないバックグラウンド静電容量を有する、項目8に記載のレーザ装置。
(項目10)
前記第2の定電流は、前記第1の定電流が前記バックグラウンド静電容量に蓄積する電荷をもたらすのと同じ割合で、前記零のコンデンサに蓄積する電荷をもたらすようにセットされる、項目9に記載のレーザ装置。
(項目11)
前記一定の継続時間は、約1マイクロ秒から約1000マイクロ秒の範囲にある、項目1に記載のレーザ装置。
(項目12)
前記第1の定電流は、約1マイクロアンペアから約100マイクロアンペアの範囲にある、項目1に記載のレーザ装置。
(項目13)
コントローラをさらに含み、最適距離を維持するために、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、項目1に記載のレーザ装置。
(項目14)
コントローラをさらに含み、予め決められた距離プロファイルに従うように、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、項目1に記載のレーザ装置。
(項目15)
電気絶縁性のワークを加工するためのレーザ装置であって、前記装置は、
前記ワークを機械的に支持するように配置された上面を有する、導電性の平行移動ステージと、
レーザ放射ビームを送達するレーザ源と、
導電性の材料から作製されたハウジングを有する集光アセンブリと、
選択された一定の継続時間の間、第1の定電流を前記導電性ハウジングへ送達するように配置される第1の定電流源と、
前記導電性ハウジングと基準ノードとの間の電圧を測定するように配置される電圧計と
を備え、前記集光アセンブリは、前記レーザ放射ビームを受け取るように位置付けられ且つ配置され、前記レーザ放射ビームを集光し、且つ、前記ワークへ前記集光されたレーザ放射ビームを向けるように構成され、前記集光されたレーザ放射ビームは、前記導電性ハウジングの底面上のポートを通して現れ、
前記導電性ハウジングの前記底面及び前記平行移動ステージの前記上面は、ギャップ距離によって隔てられ、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化が前記ギャップ距離を決定するために用いられる、装置。
(項目16)
前記一定の継続時間の間、前記導電性ハウジングへ送達される前記第1の定電流は、前記導電性ハウジングに蓄積するための、前記ギャップ距離に依存しない一定の電荷をもたらす、項目15に記載のレーザ装置。
(項目17)
前記ギャップ距離は、前記一定の継続時間にわたる、測定される電圧の変化に比例する、項目15に記載のレーザ装置。
(項目18)
前記基準ノードは前記ワークであり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記ワークとの間との電圧を測定する、項目15に記載のレーザ装置。
(項目19)
第2の定電流源及び零のコンデンサをさらに含み、前記零のコンデンサの第1端は前記ワークへ電気的に接続され、前記第2の定電流源は、第2の定電流を前記零のコンデンサの第2端へ送達する、項目15に記載のレーザ装置。
(項目20)
前記基準ノードは前記零のコンデンサの前記第2端であり、前記電圧計は、前記導電性ハウジングと前記零のコンデンサの前記第2端との間の電圧を測定する、項目19に記載のレーザ装置。
(項目21)
前記導電性ハウジング及び前記ワークは、前記ギャップ距離に依存しないバックグラウンド静電容量を有する、項目20に記載のレーザ装置。
(項目22)
前記第2の定電流は、前記第1の定電流が前記バックグラウンド静電容量に蓄積するための電荷をもたらすのと同じ割合で、前記零のコンデンサに蓄積するための電荷をもたらすようにセットされる、項目21に記載のレーザ装置。
(項目23)
コントローラをさらに含み、最適距離を維持するために、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、項目15に記載のレーザ装置。
(項目24)
コントローラをさらに含み、予め決められた距離プロファイルに従うように、前記コントローラが前記測定される電圧の変化から決定されるギャップ信号を用いることによって、閉ループ方法で加工が制御される、項目15に記載のレーザ装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
本明細書に統合され、その一部分を構成する付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を概略的に例示し、上記の概略的な説明及び下記の好ましい実施形態の詳細な説明と共に、本発明の本質を説明するために供する。
【0013】
【
図1】
図1は、レーザ放射ビームを生み出すレーザ源、レーザ放射ビームを集光する集光アセンブリ、及び、集光アセンブリを充電する定電流を提供する定電流源を含む、導電性のワークをレーザ加工するための、本発明に従ったレーザ装置の1の好ましい実施形態を概略的に例示する。
【0014】
【
図2】
図2は、ワークの上面と集光アセンブリの底面との間に形成された静電容量センサの電気的特性を含む、
図1のレーザ加工装置のさらなる詳細を概略的に例示する。
【0015】
【
図3】
図3は、静電容量センサ及び別の定電流源によって充電される零のコンデンサを含む、
図1及び
図2のレーザ加工装置内の電気素子を概略的に例示する、回路図である。
【0016】
【0017】
【
図5A】
図5Aは、
図3の電気素子を含む
図1及び
図2のレーザ加工装置において、異なるバックグウランド静電容量の値について、ギャップ電圧をギャップ静電容量の関数として概略的に例示するグラフである。
【0018】
【
図5B】
図5Bは、
図3の零のコンデンサを含まない
図1及び
図2のレーザ加工装置において、異なるバックグラウンド静電容量の値について、ギャップ電圧をギャップ静電容量の関数として概略的に例示するグラフである。
【0019】
【
図5C】
図5Cは、従来技術のレーザ加工装置において、異なるバックグラウンド静電容量の値について、ギャップ電圧をギャップ静電容量の関数として概略的に例示するグラフである。
【0020】
【
図6】
図6は、
図1及び
図2の実施形態と同様であるが、電気絶縁性のワークをレーザ加工するための、本発明に従ったレーザ装置の別の好ましい実施形態の詳細を概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
類似の構成要素は類似の数字によって指定される図面を参照して、
図1は、ワーク12をレーザ加工するための、本発明に従ったレーザ装置の1の好ましい実施形態10を概略的に例示する。装置10は、レーザ放射ビーム16aを生み出すレーザ源14を備える。(波長、パルス幅、及び平均出力などの)レーザ放射ビーム16aの性質は、ワーク12のレーザ加工を最適化するように選択される。レーザ放射ビーム16aは、光軸を表す破線、周縁の光線を表す1組の実線、及び伝播方向を指し示す矢印によって描写される。
【0022】
随意の反射鏡18は、レーザ放射ビーム16aを遮断し、且つ、導くように配置される。随意のビームエキスパンダー20は、導かれたレーザ放射ビーム16aを遮断し、且つ、より大きなビーム径を有する、伸長されたレーザ放射ビーム16bを形成するように配置される。集光アセンブリ22は、伸長されたレーザ放射ビーム16bを遮断し、且つ、焦点24を有する集光されたレーザ放射ビーム16cを形成するように配置され、焦点24は、ワーク12の上面26から距離dに位置する。集光アセンブリ22は、レーザ放射ビームを集光するレンズを含む。このレンズは、ワークのレーザ加工を最適化するように選択されるが、それは、単純な単一要素レンズから複雑な複数要素の対物レンズまでの範囲にわたり得る。例えば、「Fθ対物レンズ」は、レンズから固定された距離に位置づけられる平らな焦点面に、焦点24を位置づける。
【0023】
集光アセンブリ22は、レンズを部分的に又は完全に囲む、導電性の材料から作製された外面のハウジングを含む。集光されたレーザ放射ビーム16cは、導電性ハウジングの底面28上のポートを通して現れ、そのポートは、加工ガスを送達する加工ヘッド中のノズルの底面であり得る。「上」及び「底」などの語は、説明の利便性のために本明細書で用いられるが、使用におけるレーザ加工装置の空間的な向きを限定することを意味しない。集光アセンブリ22は、集光アセンブリとワークとの間に位置づけられる体積へ加工ガスを送達するためのノズル及び内部のハードウェアをさらに含み得る。集光アセンブリ22は、レーザ加工を促進する他の便利な特徴を含む、市販の加工ヘッドであり得る。
【0024】
ワーク12は、平行移動ステージ30によって支持され、且つ、平行移動ステージ30によって空間的に位置づけられる。平行移動ステージ30は、導電性の材料から作製され、アースへ電気的に接続される。本明細書において、平行移動ステージとは、ワークを支持する任意の導電性の構造を意味する。ワーク12もまた、導電性の材料から作製され、平行移動ステージ30へ電気的に接続される。集光アセンブリ22は、ワークから、及び、平行移動ステージから、電気的に絶縁されている。
【0025】
集光アセンブリ22の底面28及びワーク12の上面26は、「ギャップ距離」Dによって隔てられている。集光されたレーザ放射ビーム16cの光軸に沿った、集光アセンブリ22のワーク12に対する動きは、ベクトルMによって指し示され、ギャップ距離Dを変化させる。この軸に沿った動きは、集光アセンブリ22を動かすことによって、又は、平行移動ステージ30及びその上のワーク12を動かすことによって、達成され得る。横方向の動きは、平行移動ステージ30及びその上のワーク12を動かすことによって、達成される。
【0026】
底面28と焦点24との間の距離は固定され、又は別様に既知であるため、焦点24と上面26との間の距離dは、ギャップ距離Dを測定することによって決定される。レーザ加工がワーク12から材料を取り去っているときには、距離dは負になり得ることに留意すべきである。静電容量センサは、上面26と底面28との間に形成される。ほとんどの用途においては、上面26は底面28よりも非常に大きな面積を有している。これらの用途において、適した近似として、ギャップ距離Dにわたる「ギャップ静電容量」C
Gは、特定の集光アセンブリの底面の面積Aのみに依存する。空気及び一般的に用いられる加工ガスのいずれも、1.00から1.01の間の値である誘電率kを有している。平行な極板のコンデンサの静電容量についての式を用いて、一度ギャップセンサが特定の集光アセンブリのために較正されると、ギャップ静電容量C
Gはギャップ距離Dにのみ依存する。
【数1】
【0027】
上面26を含むワーク12は、アース電位V0にある。底面28を含む集光アセンブリ22の導電性ハウジングは、電位V1にある。電圧計32は、導電性ハウジングと基準ノードとの間に電気的に接続される。ここで、基準ノードはワークであり、それによって電圧計32は導電性ハウジングとワークとの間の「ギャップ電圧」V1-V0を測定する。定電流源34は、集光アセンブリ22へ電気的に接続され、定電流I1を提供する。ある継続時間にわたって、定電流源34は、電荷を、集光アセンブリ22の導電性ハウジングに線形的に蓄積させる。定電流源34が、選択された一定の継続時間T0の間運用されるたびに、ギャップ距離Dによらず一定の電荷Q0が蓄積する。
【0028】
一定の電荷Q
0が、「ギャップ静電容量」C
Gを有する静電容量センサに蓄積することよってもたらされる、ギャップ電圧の変化ΔVを測定することで、ギャップ距離Dを決定するための距離計測が完成される。
【数2】
式(1)及び式(2)を組み合わせると、ギャップ距離Dは、定電流源34が運用されている一定の継続時間T
0にわたるギャップ電圧の変化ΔVに比例する。
【数3】
最も単純な実施においては、既知のギャップ距離Dにセットしたときのギャップ電圧の変化ΔVを測定することによって、静電容量センサが較正され得る。
【0029】
図2は、本発明に従ったレーザ加工装置10のさらなる詳細を、概略的に例示する。ワーク12、集光アセンブリ22及び平行移動ステージ30は、それらが導電性であることを指し示すために、斜線が施されている。集光されたレーザ放射ビーム16cは、例示の明確性のために図面から省かれている。R1は、上面26と底面28との間の電気抵抗を表す。一般的に、空気及び加工ガスは、特にレーザ加工がこれらのガスのイオン化をもたらすときには、完璧な電気絶縁体ではない。加工中にワーク12から放出される材料はまた、ギャップにわたるいくつかの電荷の漏れをもたらし得る。ワーク12と集光アセンブリ22との間の電荷の漏れにとっての、他の二次的な経路は、綿密な設計により最小化され得、これによって、電気抵抗R1が無視できるようになる。
【0030】
反対に、集光アセンブリ22の導電性ハウジング及びワーク12の、バックグラウンド静電容量又は「漂遊静電容量」C1は、静電容量センサの分解能を制限するために十分重要である。すべて導電性の部分、及び、上面26及び底面28の近くに位置する電気ケーブルは、バックグラウンド静電容量C1に寄与し、C1はギャップ距離Dに関係がない。典型的なレーザ加工装置において、C1は、10pF(ピコファラド)から1000pFまでの値をとり得、特に加工ヘッドの設計に依存する。CG、R1及びC1は共に、静電容量センサの総計の電気インピーダンスZ1である。それらは個々には、実際的な電気的構成要素ではないが、むしろ、静電容量センサの電気的特性を表す。
【0031】
図3は、レーザ加工装置10内の電気素子の好ましい選択及び配置を概略的に例示する回路図である。回路は、上述の静電容量センサのインピーダンスZ1を含む。別の定電流源36は、定電流I
2を供給することによって、「零のコンデンサ」C2を充電するように配置される。零のコンデンサC2の第1の端は、ワーク12へ電気的に接続され、アース電位V
0にある。零のコンデンサC2の第2の端は、定電流源36へ電気的に接続され、電位V
2にある。定電流源34は、基準電位V
Rへ直接的に接続される。定電流源36は、電位差計R2を通して基準電位V
Rへ接続され、電位差計R2は、好ましくはデジタル電位差計である。定電流源36の基準電位は、電位差計R2を調整することにより、V
Rより小さくセットされ得、それによって、定電流I
2を調整する。
【0032】
定電流源34及び36のための典型的な回路は、Howland電流ポンプであり、Texas Instruments Application Report SNOA474A,Revised April 2013,「A Comprehensive Study of the Howland Current Pump」において、詳細に説明されている。定電流源は、良く知られた電子設計技術であり、そのさらなる説明は、本発明の本質を理解するためには必要ではない。
【0033】
また、電圧計は、導電性ハウジングと基準ノードとの間に、電気的に接続される。ここで、基準ノードは、零のコンデンサC2の第2の端であり、電圧計は、差動増幅器38である。差動増幅器38は、静電容量センサ及び零のコンデンサの両方にわたる電圧V2-V1に比例する、増幅された電圧V3を生ずる。定電流I1がバックグラウンド静電容量C1を充電する割合と同一の割合で、零のコンデンサC2を充電するように、定電流I2はセットされる。それによって、バックグラウンド静電容量C1は零にされ、差動増幅器38は、ギャップ静電容量CGを充電する定電流I1によって生ずる電圧V2-V1の成分だけを効果的に増幅する。
【0034】
静電容量センサZ1にわたって接続されるスイッチSW1は、必要なときに静電容量センサが放電されることを可能とする。零のコンデンサC2にわたって接続されるもう1つのスイッチSW2は、必要なときに零のコンデンサが放電されることを可能とする。スイッチSW1及びSW2は、好ましくは、デジタル制御されたスイッチである。
【0035】
バックグランド静電容量C1が適切に零にされるように、定電流I2を調整する単純な方法は、レーザ加工中に用いられるいかなるギャップ距離よりも非常に大きいギャップ距離Dをセットするように、ワーク12と集光アセンブリ22とを隔てることである。式(1)は、ギャップ静電容量CGが小さくなることを示しており、従って、静電容量センサZ1のインピーダンスは、およそバックグラウンド静電容量C1となる。スイッチSW1及びスイッチSW2を開けることは、静電容量センサZ1及び零のコンデンサC2の充電を開始させる。適切に零にされるとき、それらは同一の割合で充電し、従って、電位V1は、電位V2にほぼ等しくなり、増幅された電位V3はおよそ0Vになる。電位差計R2は、この状況が達成されるまで調整される。
【0036】
差動増幅器38は、サンプルホールド回路40へ接続される。サンプルホールド回路40は、増幅された電圧V3を受け取り、出力電圧V4を提供する。サンプルホールド回路40は、コントローラ42へ接続され、コントローラ42は出力電圧V4を測定する。コントローラ42は、サンプルホールド回路40へ制御信号VTを提供し、且つ、電位差計R2をセットするために用いられる「零にする電圧」VNを提供する。コントローラ42はまた、ギャップ距離Dに比例する出力「ギャップ信号」VGも提供する。
【0037】
コントローラ42は、複数の電気部品、多目的のマイクロコントローラ集積回路(IC)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)デバイスを有する、カスタマイズされた電子回路であり得る。差動増幅器38及びサンプルホールド回路40は、コントローラ42内へ統合され得る。回路図及び上で提供された説明から、当業者は、本発明の意図及び範囲から出ずに、これらの測定を実施し、且つ、回路の機能を制御するための代替となる方法を認識し得る。基本的な実施において、ギャップ信号VGは、アナログからデジタルへのコンバータチャネルを通して測定される出力電圧V4であり得る。いくつかの追加の処理によって、ギャップ信号VGは、マイクロメートル単位で較正されたギャップ距離Dのデジタル信号であり得る。
【0038】
図4Aから
図4Fは、
図1から
図3の静電容量センサを用いてギャップ信号V
Gを決定するための、典型的な機構を概略的に例示するタイミング図を形成する。この例は、静電容量センサが、上述のように較正され、且つ零にされているものと仮定する。この例において、測定及び制御は、集光アセンブリ22のワーク12に対する動きと同時である。また、例示する目的のために、動き及び測定は、比較的高いデューティーサイクルで起きている。
【0039】
図4Aは、時間の関数としてギャップ距離Dを描写する。ここで、ギャップ距離DがD
α、D
β、及びD
γの3つの値の間を行くように、集光アセンブリ22が動かされる。
図4Bは、時間の関数として制御信号V
Tを描写する。ここで、スイッチSW1及びスイッチSW2は、V
Tが高いときは開いており、V
Tが低いときは閉じている。一定の継続時間T
0の間、静電容量センサ及び零のコンデンサの充電を可能とするために、SW1及びSW2が開く。
図4Cは、時間の関数として電位V
1を描写する。
図4Dは、時間の関数として、差動増幅器38からの増幅された電圧V
3を描写する。
図4Eは、時間の関数として、サンプルホールド回路40からの出力電圧V
4を描写する。制御信号V
Tが高くなることは、継続的なサンプリングの引き金となり、V
Tが低くなることは、ホールディングの引き金となる。
図4Fは、時間の関数としてギャップ信号V
Gを描写する。制御信号V
Tが低くなった後、及び、応答時間のT
R後、ギャップ信号V
Gは、出力電圧V
4から決定される新しい値へ変化する。
【0040】
帯域幅の高い距離計測に対しては、距離を頻繁に測定する性能を予定して、短い一定の継続時間T0が好ましい。式(2)は、短い一定の継続時間T0が、高い定電流I1を要求することを示す。しかし、より高い充電電流は、より大きな磁場を誘導し、ひいては、磁場が電気的ノイズを誘導する。従って、計測帯域幅と測定ノイズとの間のいくらかの妥協がある。一定の継続時間T0は、好ましくは、約1μs(マイクロ秒)から約1000μsの範囲にあり、最も好ましいのは約20μsである。定電流I1は、好ましくは、約1μA(マイクロアンペア)から約100μAの範囲にあり、最も好ましいのは約10μAである。応答時間TRは、コントローラ42の速度によって制限され、好ましくは、約5μs未満であり、最も好ましいのは、約1μs未満である。
【0041】
図5Aは、レーザ加工装置10の1つの実施例において、異なるバックグウランド静電容量C1の値について、計算される電圧V
2―V
1を、ギャップ静電容量C
Gの関数として概略的に例示するグラフである。描写された例において、集光アセンブリ22の底面28は、0.9mm(ミリメートル)の内径及び1.5mmの外径を有している環状の形状を有している。0.01pFから10pFの描写された範囲のギャップ静電容量C
Gは、1mmから0.001mmの範囲のギャップ距離Dに対応する。
【0042】
バックグラウンド静電容量C1を零にすることの利点は、より大きなギャップ距離Dに対応する、より小さなギャップ静電容量C
Gに対して、電圧V
2―V
1が、広範なバックグラウンド静電容量C1にわたって共通の値に調整され得ることである。ここで、共通の値は、約0V(ボルト)に都合よく選択される。レーザ加工の用途において、C1の大きな変化は、例えば、加工ヘッドに変化があるときに起こる。10000pFのC1の値は非現実的に高いが、
図5Aは、そのような大きいバックグラウンド静電容量も、本発明の回路によって取り扱われ得ることを例示する。
【0043】
図5Bは、
図3の回路がバックグラウンド静電容量C1を零にするために用いられていないことを除いて
図5Aと同一のレーザ加工装置を用いて、計算されるギャップ電圧V
1―V
0を、ギャップ静電容量C
Gの関数として概略的に例示するグラフである。その代わりに、ギャップ電圧V
1―V
0は、
図1において描写される電圧計32を用いて簡単に測定される。大きなバックグラウンド静電容量C1は、ギャップ静電容量C
Gを圧倒し、これによって、ギャップ距離Dの大きな変化が、ギャップ電圧V
1―V
0の比較的小さな変化を生ずる。それに対応して、静電容量センサの分解能は制限される。
図5A及び
図5Bは合わせて、バックグラウンド静電容量C1を零にすることを含む利点が、距離計測におけるより大きなダイナミックレンジであり、広範なバックグラウンド静電容量C1を適応させることであるということを例示する。
【0044】
図5Cは、V
1―V
0と同等の計算されるギャップ電圧を、ギャップ静電容量C
Gの関数として概略的に例示するグラフである。計算は、100pFのバックグラウンド静電容量C1を適応させるように調整されたRC回路及びバンドパスフィルタを有する、同等の従来技術の静電容量センサをモデル化する。加工ヘッドの底面の形状および寸法は、
図5A及び
図5Bと同一である。RC回路は、描写されたギャップ静電容量の範囲において、2MHz(メガヘルツ)未満で振動するように調整されている。モデルにおいて、RC回路からの無線周波数(RF)出力は、7次の650kHz(キロヘルツ)線形位相ローパスフィルタを通してフィルタリングされる。フィルタリングされたRF出力の振幅は、RFパワー検出器によって測定される。
図5Aの本発明の静電容量センサに比べて、従来技術の静電容量センサは、非常に小さなダイナミックレンジを有し、標的となるバックグラウンド静電容量C1は100pFである。この例において、従来技術の静電容量センサは、約0.001mmから0.1mmの小さな距離範囲においてのみ用いられ、且つ、標的となる100pFのバックグラウンド静電容量の周囲においてのみ用いられる。
【0045】
図6は、本発明に従った、レーザ加工装置50の別の実施形態の詳細を概略的に例示する。装置50は、ワーク12が、誘電率k’を有する電気絶縁性の材料から作製されることを除いて、
図1及び
図2の装置10と同様である。静電容量センサは、平行移動ステージ30の上面52と集光アセンブリ22の底面28との間に形成される。上面52と底面28との間のギャップ距離D’は、再び、上述した方法で、一定の継続時間T
0の間定電流I
1を適用したときの、ギャップ電圧の変化ΔVを測定することにより決定される。しかし、ギャップ距離D’を計算するときは、誘電率k’及びワーク12の厚さt’が考慮されなければならない。今度は、ギャップ距離D’が、
図1に描写された焦点24とワーク12の上面26との間のギャップ距離dを決定する。
図3の好ましい回路、及び、
図4の典型的な測定及び制御の機構は、レーザ加工装置50にとって同一の利点を提供する。
【0046】
図3へ戻ると、Howland電流ポンプなどの定電流源は、静電容量距離計測中の測定ノイズを最小化することにおける利点を有している。漂遊電流は、集光アセンブリ及び平行移動ステージへ接続される電気ケーブルに誘導され得、その電気ケーブルは、静電容量センサの電気ケーブル、又は静電容量センサと接する任意の導電性部分を含む。漂遊電流は、従来技術の静電容量センサにおける電気的ノイズ及び測定の不確実性の主な原因である。好ましい回路における、定電流源34及び定電流源36は、十分な動作インピーダンスを有すると仮定すると、定電流源が、比例的により大きい又はより小さい電流を提供することによって、電位V
1又は電位V
2の素子に誘導される漂遊電流が自動的に補われる。
【0047】
図3の回路は、例えば2つのHowland電流ポンプといった、2つの分離した構成要素として、定電流源34及び定電流源36を描写する。電子設計の当業者は、本発明の意図及び範囲から出ることなく、ただ1つのHowland電流ポンプ及び分流器を用いることによって、2つの定電流源が実現され得ると認識するだろう。零のコンデンサC2にわたって接続される電位差計は、定電流I
1に対するI
2の調整を提供し得、それによって、上述の方法でバックグラウンド静電容量C1を零にすることができ得る。
【0048】
一度本発明のレーザ加工装置が零にされ、且つ、較正されると、レーザ加工は、閉ループ方法で制御され得、それによって、コントローラ42又はより高度なコントローラが、フィードバックとしてのギャップ信号を用いて、要求される距離D、距離D’又は距離dへレーザ加工装置をセットする。溶接する用途において、レーザ加工装置は、閉ループ制御を用いて一定の最適距離に維持され得、又は、ワークを所望の形に機械加工するために、予め決められた距離プロファイルに従うようにプログラムされ得る。レーザ加工装置は、自動加工の間、必要に応じて再び零にされ得、再び較正され得る。例えば、それぞれの新たなワークを加工する際の第1段階である。閉ループ制御の一般的な原理は、電子工学及びレーザ材料加工の技術においてよく知られている。ここでのさらなる説明は、本発明の本質を理解するためには必要ではない。
【0049】
本発明は、好ましい実施形態及び他の実施形態によって、上述される。しかし、本発明は、本明細書で説明され、描写された実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、この後に添えられる請求項によってのみ限定される。