(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】偏光板、これを含む画像表示装置および偏光板保護層用の光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220728BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220728BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220728BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20220728BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220728BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220728BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20220728BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/38
B32B27/16 101
C08L63/00 A
C08L71/02
C08K5/378
G09F9/30 349E
(21)【出願番号】P 2020528092
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 KR2018014497
(87)【国際公開番号】W WO2019103514
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158714
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ソ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サンフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ユンキョン・クォン
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213187(JP,A)
【文献】特開2017-72728(JP,A)
【文献】特開2007-126612(JP,A)
【文献】特開2015-105292(JP,A)
【文献】特開2016-4205(JP,A)
【文献】特開2010-66484(JP,A)
【文献】特開2014-185213(JP,A)
【文献】特開2013-142863(JP,A)
【文献】特開2008-134396(JP,A)
【文献】特開2011-235571(JP,A)
【文献】国際公開第2015/105163(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315431(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0037811(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
C08L63/00
C08L71/02
C08K 5/378
G09F 9/30
G02F 1/1335-1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面に接する保護層とを含む偏光板であって、
前記保護層は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む偏光板保護層用の光硬化性組成物の硬化物であり、
前記光硬化性組成物において、
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、
前記光カチオン重合開始剤は、
310nm以下の波長を吸収するヨウ素系化合物である短波長開始剤および
350nm以上の波長を吸収するチオキサントン系化合物である長波長開始剤を含み、
前記
光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる、偏光板。
【請求項2】
前記保護層は、前記偏光子に直
接形成され
ている、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第1のエポキシ系化合物は、脂環式エポキシ系化合物である、請求項1
または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記第2のエポキシ系化合物は、脂肪族エポキシ系化合物である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記保護層の厚さは、5μm~10μmである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記保護層の80℃での貯蔵弾性率は、1,500Mpa~10,000Mpaである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記保護層の偏光子と接する面の他面に備えられたキャリア(Carrier)フィルムをさらに含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記偏光子の保護層が接する面の他面に接着剤層を介して保護フィルムが貼り付けられ
る、請求項1から
7のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物であり、前記接着剤組成物は、エポキシ化合物およびオキセタン化合物を含む、請求項
8に記載の偏光板。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【請求項11】
第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む偏光板保護層用の光硬化性組成物であって、
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、
前記光カチオン重合開始剤は、
310nm以下の波長を吸収するヨウ素系化合物である短波長開始剤および
350nm以上の波長を吸収するチオキサントン系化合物である長波長開始剤を含み、
前記
光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる、偏光板保護層用の光硬化性組成物。
【請求項12】
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第2のエポキシ系化合物は、1~30重量部で含まれる、請求項
11に記載の
光硬化性組成物。
【請求項13】
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記オキセタン化合物は、10~30重量部で含まれる、請求項
11または12に記載の
光硬化性組成物。
【請求項14】
25℃での粘度は、50cps以上200cps以下である、請求項
11から
13のいずれか一項に記載の
光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月24日付で韓国特許庁に提出された特許出願第10‐2017‐0158714号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
本明細書は、偏光板、これを含む画像表示装置および偏光板保護層用の光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の液晶表示装置用の偏光板は、一般的なポリビニルアルコール(PVA、Polyvinyl alcohol)系偏光子を使用し、その偏光子の少なくとも一方の面にポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)などの保護フィルムを貼り付ける構成からなっている。
【0003】
近年、偏光板の低光漏れおよび薄型化の要求が高まっており、この物性を満たすために、既存の予め製膜した保護基材を適用する代わりに、偏光子上に直接保護膜を形成する方法が検討されている。
【0004】
ただし、既存のポリビニルアルコール系延伸型のポリビニルアルコール系偏光子上に直接保護膜を形成する場合、従来のように両面に保護基材を適用する場合に比べて、高温で偏光子の収縮によって生じる応力により偏光子の破断現象が発生する問題を解決することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、偏光板、これを含む画像表示装置および偏光板保護層用の光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面に接する保護層とを含む偏光板であって、前記保護層は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む偏光板保護層用の光硬化性組成物の硬化物であり、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる偏光板を提供する。
【0007】
本明細書は、前記偏光板を含む画像表示装置を提供する。
本明細書は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、
前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、
前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる偏光板保護層用の光硬化性組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書の一実施態様に係る偏光板は、従来の接着剤層の介在を必須とする基材層の代わりに一つの保護層を使用できることから、偏光板の薄膜化および軽量化は言うまでもなく、費用および工程を最小化することができる。
【0009】
本明細書の一実施態様に係る偏光板は、カチオン系保護層の作製時に、キャリア(Carrier)フィルムであるPETとのブロッキング(Blocking)現象を減少させることができ、保護層の保護基材であるキャリアフィルムが貼り付けられた状態での長期保管が容易である。
【0010】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の保護層は、貯蔵弾性率が高いことから、高温で収縮または膨張現象を抑制することができ、偏光子および偏光板の破断現象を防止することができる。
【0011】
本明細書の一実施態様に係る偏光板は、保護層上に別の保護フィルムを含まなくても、高い耐久性を有するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書の一実施態様に係る偏光板を図示した図である。
【
図2】本明細書の他の実施態様に係る偏光板を図示した図である。
【
図3】本明細書のさらに他の実施態様に係る偏光板を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に反対の意味の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとしたとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0014】
既存のポリビニルアルコール系延伸型のポリビニルアルコール系偏光子上に直接保護層を形成する場合、従来のように両面に保護基材を適用する場合に比べて、高温で偏光子の収縮によって生じる応力により偏光子の破断現象が発生する問題を解決することが困難であった。
【0015】
したがって、偏光子上に直接保護層を形成するためには、高温で偏光子の収縮による応力に耐えられる水準の物性が求められる。かかる物性を満たす保護層としては、UV硬化型カチオン系コーティング層が主に使用されるが、かかるカチオン系コーティング層の場合、作製時に、キャリアフィルムであるPETとのブロッキング現象が発生し、長期保管が難しいという問題があった。
【0016】
具体的には、ロール工程で作製される偏光板は、「キャリアフィルム/保護層/偏光子(PVA)/接着剤層/保護フィルム」の積層体からキャリアフィルムを除去して、保護層上に粘着剤層を形成した後、パネルに貼り付けられる。前記キャリアフィルムを除去する工程で、前記保護層とキャリアフィルムとの間にブロッキングが発生するが、これは、保護層に損傷を与えて、偏光板の外観および光学物性の低下を生じさせる。
【0017】
しかし、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、保護層である偏光板保護層用の光硬化性組成物の硬化物に、短波長開始剤および長波長開始剤を特定の含量範囲で含む。前記短波長開始剤および長波長開始剤は、エポキシ開環反応で発生するOHの含量を最小化し、PET製造過程で表面に残存するOHおよびCOOHが、保護層のエポキシ系化合物と化学的共有結合や水素結合を形成することを抑制することができる。したがって、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、キャリアフィルムであるPETとのブロッキング現象を防止できることは言うまでもなく、キャリアPETフィルムの破断現象も防止することができる。また、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、保護層の保護基材であるキャリアフィルムが貼り付けられた状態での長期保管も容易である。
【0018】
また、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、靭性(Toughness)の向上により高温耐久性も改善できることは言うまでもなく、保護層上に別の保護フィルムを含まなくても、高い耐久性を有するという利点がある。
【0019】
また、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、保護層の保護基材であるキャリアフィルムが貼り付けられた状態での長期保管が容易である。
【0020】
図1は本明細書の一実施態様に係る偏光板を図示した図である。前記
図1には、偏光子10の一面に保護層20が備えられた偏光板の構造が例示されている。
また、
図3は本明細書のさらに他の一実施態様に係る偏光板を図示した図である。前記
図3には、偏光子10の両面に保護層20が備えられた偏光板の構造が例示されている。前記
図3のように、偏光子の両面に保護層が備えられる場合、位相差がほとんどなく、且つ薄膜化が可能であるという利点がある。
【0021】
本明細書は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面に接する保護層とを含む偏光板であって、前記保護層は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む偏光板保護層用の光硬化性組成物の硬化物であり、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる偏光板を提供する。
【0022】
本明細書の一実施態様において、前記第1のエポキシ系化合物および前記第2のエポキシ系化合物は、互いに相違するものである。
【0023】
本明細書において、前記偏光子は、当該技術分野において公知の偏光子、例えば、ヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素または二色性染料を染着して製造され得るが、その製造方法は、特に限定されない。本明細書において、偏光子は、保護層(または保護フィルム)を含んでいない状態を意味し、偏光板は、偏光子と保護層(または保護フィルム)を含む状態を意味する。
【0024】
偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着する工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理の後に水洗する工程、およびこれらの工程が実施されて、二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護層を接合する工程を経て製造される。
【0025】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよく、二色性色素による染色と同時に行ってもよく、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色の後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよく、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数のステップで一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸を行うためには、周速が互いに異なるロールの間で一軸に延伸してもよく、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよく、溶剤によって膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、特に限定されないが、通常、4倍~8倍である。
【0026】
一方、前記偏光子は、厚さが5μm~40μmであることが好ましく、5μm~25μmであることがより好ましい。偏光子の厚さが前記数値範囲より薄い場合には、光学特性が劣ることがあり、前記数値範囲より厚い場合には、低温(例えば、-30℃)での偏光子の収縮量が大きくなり、全体的な偏光板の熱に関する耐久性が弱くなり得る。
【0027】
また、前記偏光子がポリビニルアルコール系フィルムである場合、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば、特に制限なく使用可能である。この際、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などがあるが、これに限定されるものではない。また、市販のポリビニルアルコール系フィルム、例えば、クラレ社製のP30、PE30、PE60、日本合成社製のM2000、M3000、M6000などを使用することもできるが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、重合度が1,000~10,000であることが好ましく、1,500~5,000であることがより好ましい。重合度が前記数値範囲を満たすと、分子の動きが自由になり、ヨウ素または二色性染料などと柔軟に混合することができる。
【0029】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の保護層は、前記偏光子に直接コーティングされて形成される。前記偏光子に直接コーティングされるとは、接着剤層を介することなく、偏光子と保護層が物理的に接することを意味する。すなわち、本明細書の一実施態様に係る保護層は、別の接着剤層なしに偏光子上に直接形成されることで、薄型の偏光板を提供することができる。また、本明細書の一実施態様に係る偏光板の保護層は、別の保護フィルムがなくても偏光子の高温での収縮または膨張現象を効果的に抑制できることから、偏光子および偏光板の破断現象を防止することができる。
【0030】
また、本明細書の一実施態様に係る偏光板の保護層は、光硬化性組成物で形成されることが好ましい。このように、保護層が、光硬化性組成物から形成される硬化型の樹脂層である場合、その製造方法が簡単であり、さらには、保護層と偏光子との密着性に優れるという利点がある。また、偏光板の耐久性をより改善することができる。
【0031】
一方、本明細書の一実施態様に係る偏光板保護層用の光硬化性組成物は、硬化の後、ガラス転移温度が90℃以上130℃以下であることが好ましく、100℃~130℃であってもよい。前記のような数値範囲のガラス転移温度を有する場合、高温環境下でも優れた耐久性を有する保護層を実現することができる。
【0032】
本明細書において、ガラス転移温度は、離型フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)に厚さ50μmで塗布し、光量1000mJ/cm2以上の条件で紫外線を照射して硬化した後、前記離型フィルムを除去し、試験片を所定のサイズにレーザ切断した後、DMA(dynamic mechanical analysis)により測定する。この際、測定温度は、-10℃の開始温度から5℃/minの昇温速度で160℃まで昇温し、10%のstrainで一定に引張する時の貯蔵弾性率の変曲により、ガラス転移温度を確認する。
【0033】
一方、前記保護層の形成方法は、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法により形成され得る。例えば、偏光子の少なくとも一面に、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物を、当該技術分野において公知のコーティング法、例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法で塗布してバリア層を形成した後、紫外線照射装置を用いて、照射光である紫外線を照射する方法で形成され得る。
【0034】
もしくは、前記保護層は、偏光子の少なくとも一面に偏光板保護層用の光硬化性組成物を塗布した後、紫外線照射装置を用いて硬化して保護層を形成してもよいが、これに限定されるものではない。
前記紫外線の波長は、100nm~400nmが好ましく、320nm~400nmがより好ましい。また、前記照射光の光量は、100mJ/cm2~1000mJ/cm2が好ましく、500mJ/cm2~1000mJ/cm2がより好ましい。
【0035】
前記照射光の照射時間は、1秒~10分が好ましく、2秒~30秒がより好ましい。前記の照射時間範囲を満たす場合、光源から過剰に熱が伝達されることを防止し、偏光子に走行しわが発生することを最小化できるという利点がある。
【0036】
本明細書において、前記光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射によってカチオンまたはルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始するものであり、短波長開始剤と長波長開始剤とに分けられる。
【0037】
本明細書において、前記短波長開始剤は、310nm以下の波長を吸収するヨウ素系化合物である。具体的には、前記短波長開始剤は、310nm以下の波長を吸収して活性化し、活性エネルギーの照射によってカチオン(cation)やルイス酸を形成するヨウ素系化合物を意味する。例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Iod‐PF6)、ジフェニルヨードニウムトリフレート(Iod‐OSO2CF3)、ジフェニルヨードニウムp‐トルエンスルホネート(Iod‐OSO2PhCH3)、ジフェニルヨードニウムクロライド(Iod‐Cl)、[4‐メチルフェニル‐(4‐(2‐メチルプロピル)フェニル)]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure 250)などがあり、[4‐メチルフェニル‐(4‐(2‐メチルプロピル)フェニル)]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure 250)が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において、前記長波長開始剤は、350nm以上の波長を吸収するチオキサントン系化合物である。前記長波長開始剤は、350nm以上の波長を吸収して活性化し、活性エネルギーの照射によってカチオン(cation)やルイス酸を形成するチオキサントン系化合物を意味する。例えば、イソプロピル‐チオキサントン(ITX)、1‐クロロ‐2‐プロポキシ‐チオキサントン(CPTX)、2‐クロロ‐チオキサントン(CTX)および2,4‐ジエチル‐チオキサントン(DETX)だけでなく、これらの混合物などがあり、イソプロピル‐チオキサントン(ITX)が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
本明細書の一実施態様において、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれることが好ましい。
【0040】
前記光カチオン重合開始剤が前記数値範囲の含量で含まれる場合、紫外線が保護層の内部まで効果的に逹することができ、重合率にも優れ、生成される重合体の分子量が小さくなることを防止することができる。したがって、形成される保護層の凝集力に優れるという利点がある。特に、前記短波長開始剤および長波長開始剤が前記数値範囲の含量で含まれる場合、保護層の凝集力に優れ、キャリアフィルムであるPETとのブロッキング現象を減少させることができることは言うまでもなく、キャリアPETフィルムの破断現象も防止することができる。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部、 さらに好ましくは2~2.3重量部で含まれ得る。前記数値範囲を満たすと、短波長開始剤の含量が適切に調節され、保護層の高温耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、前記光硬化性組成物は、短波長開始剤および長波長開始剤を特定の範囲で含むことで、保護層の貯蔵弾性率が大幅に向上し、高温耐久性が向上するという効果がある。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記第1のエポキシ系化合物は、脂環式エポキシ系化合物である。
具体的には、前記脂環式エポキシ系化合物は、エポキシ基が脂肪族炭化水素環を構成する隣り合う2個の炭素原子の間に形成されているエポキシ系化合物を意味する。例えば、2‐(3,4‐エポキシ)シクロヘキシル‐5,5‐スピロ‐(3,4‐エポキシ)シクロヘキサン‐m‐ジオキサン、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ‐エキソビス(2,3‐エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド‐エキソビス(2,3‐エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2‐ビス[4‐(2,3‐エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,6‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシシクロヘキシル‐p‐ジオキサン)、2,6‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リモネンジオキシド、2,2‐ビス(3,4‐エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2‐エポキシ‐6‐(2,3‐エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ‐4,7‐メタノインダン、p‐(2,3‐エポキシ)シクロペンチルフェニル‐2,3‐エポキシプロピルエーテル、1‐(2,3‐エポキシプロポキシ)フェニル‐5,6‐エポキシヘキサヒドロ‐4,7‐メタノインダン、o‐(2,3‐エポキシ)シクロペンチルフェニル‐2,3‐エポキシプロピルエーテル)、1,2‐ビス[5‐(1,2‐エポキシ)‐4,7‐ヘキサヒドロメタノインダノキシル]エタンシクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、メチレンビス(3,4‐エポキシシクロヘキサン)エチレングリコールジ(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4‐エポキシシクロヘキサンメタノールのc‐カプロラクトン付加物と多原子価(3~20)アルコールのエステル化化合物などがあり、特に、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれることが好ましい。
【0045】
前記第1のエポキシ系化合物が前記数値範囲の含量で含まれる場合、光硬化時に効果的に組成物が硬化され得、硬化の後、ガラス転移温度および貯蔵弾性率を高く維持できることから、耐久性に優れるという利点がある。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記第2のエポキシ系化合物は、脂肪族エポキシ系化合物である。
具体的には、前記脂肪族エポキシ系化合物は、分子内に脂肪族鎖または脂肪族環を含むエポキシ系化合物を意味する。例えば、1,4‐シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルジグリシジルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、n‐ブチルグリシジルエーテル、2‐エチルヘキシルグリシジルエーテルなどがあり、特に、1,4‐シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルとネオペンチルジグリシジルエーテルを使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。また、前記第2のエポキシ系化合物は、前記脂肪族エポキシ系化合物から選択される1種または2種以上の化合物であってもよい。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第2のエポキシ系化合物は、1~30重量部で含まれることが好ましい。
【0048】
前記第2のエポキシ系化合物が前記数値範囲の含量で含まれる場合、光硬化時に効果的に組成物が硬化され得、硬化の後、ガラス転移温度および貯蔵弾性率を高く維持できることから、耐久性に優れるという利点がある。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記オキセタン化合物の種類は、特に限定されず、当該技術分野において公知のオキセタン化合物を使用することができる。例えば、3‐エチル‐3‐〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ベンゼン、1、3‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4´‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2´‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3´,5,5´‐テトラメチル‐4,4´‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4‐{(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2‐{(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2‐ビス〔4‐{(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール‐ホルムアルデヒド樹脂の3‐クロロメチル‐3‐エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕‐トリシクロ[5.2.1.0 2,6]デカン、2,3‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1‐トリス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕プロパン、1‐ブトキシ‐2,2‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2‐ビス〔{2‐(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4‐(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6‐ビス〔(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ〕‐2,2,3,3,4,4,5,5‐オクタフルオロヘキサンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記オキセタン化合物は、10~30重量部で含まれることが好ましく、20~30重量部で含まれることがより好ましい。
【0051】
前記オキセタン化合物が前記数値範囲の含量で含まれる場合、光硬化性組成物の硬化後のガラス転移温度および貯蔵弾性率が高く維持されるという利点がある。また、粘度を一定に維持できることから、均一な厚さの保護層の形成が可能であるという利点がある。
【0052】
本明細書の一実施態様によると、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物は、必要に応じて、染料、顔料、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤および可塑剤のうち1以上をさらに含んでもよい。
【0053】
本明細書の一実施態様によると、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物は、ラジカル開始剤をさらに含んでもよい。
【0054】
本明細書の一実施態様に係るラジカル開始剤は、ラジカル重合性を促進して硬化速度を向上させるためのものであり、前記ラジカル開始剤としては、当該技術分野において一般的に使用されるラジカル開始剤が、制限なく使用可能である。
【0055】
前記ラジカル開始剤は、例えば、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン(1‐Hydroxy‐cyclohexyl‐phenyl‐ketone)、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐1‐プロパノン(2‐Hydroxy‐2‐methyl‐1‐phenyl‐1‐propanone)、2‐ヒドロキシ‐1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル]‐2‐メチル‐1‐プロパノン(2‐Hydroxy‐1‐[4‐(2‐hydroxyethoxy)phenyl]‐2‐methyl‐1‐propanone)、メチルベンゾイルホルメート(Methylbenzoylformate)、オキシ‐フェニル‐酢酸‐2‐[2‐オキソ‐2‐フェニル‐アセトキシ‐エトキシ]‐エチルエステル(oxy‐phenyl‐acetic acid‐2‐[2‐oxo‐2phenyl‐acetoxy‐ethoxy]‐ethyl ester)、オキシ‐フェニル‐酢酸‐2‐[2‐ヒドロキシ‐エトキシ]‐エチルエステル(oxy‐phenyl‐acetic acid‐2‐[2‐hydroxy‐ethoxy]‐ethyl ester)、アルファ‐ジメトキシ‐アルファ‐フェニルアセトフェノン(alpha‐dimethoxy‐alpha‐phenylacetophenone)、2‐ベンジル‐2‐(ジメチルアミノ‐)1‐[4‐(4‐モルホリニル)フェニル]‐1‐ブタノン(2‐Benzyl‐2‐(dimethylamino)‐1‐[4‐(4‐morpholinyl)phenyl]‐1‐butanone)、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐(4‐モルホリニル)‐1‐プロパノン(2‐Methyl‐1‐[4‐(methylthio)phenyl]‐2‐(4‐morpholinyl)‐1‐propanone)、ジフェニル(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐ホスフィンオキシド(Diphenyl(2,4,6‐trimethylbenzoyl)‐phosphine oxide)、ホスフィンオキシド(Phosphine oxide)、フェニルビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐ホスフィンオキシド(phenylbis(2,4,6‐trimethylbenzoyl)‐phosphineoxide)などがある。本明細書
では、前記例示のうち、1種または2種以上を使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記保護層の厚さは、5μm~10μmが好ましく、6μm~8μmがより好ましい。
前記保護層の厚さが前記数値範囲よりも小さい場合には、保護層の強度や高温耐久性の低下およびクラックが生じる恐れがあり、前記数値範囲を超える場合には、偏光板の薄型化の面で好適でない。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の25℃での粘度は、50cps以上200cps以下が好ましく、50cps以上130cpsがより好ましい。
前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の粘度が前記数値範囲を満たす場合、保護層の厚さを薄く形成することができ、作業性に優れるという利点がある。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記保護層の80℃での貯蔵弾性率は、1,500Mpa~10,000Mpaが好ましく、1,800Mpa~8,000Mpaがより好ましく、2,000Mpa~7,000Mpaが最も好ましい。
前記保護層の貯蔵弾性率が前記数値範囲を満たす場合、偏光子に加えられるストレスを効果的に抑制して、高温または高湿環境で、偏光子の収縮または膨張による偏光子のクラックの発生を効果的に抑制する効果がある。また、偏光子に対する接着力も改善することができる。したがって、高温での偏光板の収縮および膨張を効果的に抑制することで、偏光板が液晶パネルなどに適用されたときに、優れた接着力は言うまでもなく、光漏れ現象が発生することを防止することができる。
【0059】
また、本明細書は、前記保護層の偏光子と接する面の他面に備えられたキャリア(Carrier)フィルムをさらに含む偏光板を提供する。
本明細書において、前記キャリアフィルムは、偏光板の作製工程の際、保護層を保護するための工程用フィルムを意味する。具体的には、ロール工程で作製される偏光板は、「キャリアフィルム/保護層/偏光子(PVA)/接着剤層/保護フィルム」の積層体からキャリアフィルムを除去して保護層上に接着剤層を形成した後、パネルに貼り付けられるが、キャリアフィルムは、この過程で使用される工程用フィルムである。前記キャリアフィルムは、偏光板の製造工程で剥離が容易なものであれば、特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートまたはトリアセチルセルロースがある。前記のようにキャリアフィルムを使用する場合、保護層の形成時に、キャリアフィルムが偏光子を効果的に保護して、保護層形成用の組成物によって他の構成が汚染されることを防止することができ、加圧手段によって加えられる圧力をキャリアフィルムが吸収して、偏光子に作用する応力が緩和し、破断や押圧を効果的に抑制する効果がある。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤層の80℃での貯蔵弾性率が、100Mpa以上1,800Mpa以下であってもよく、好ましくは300Mpa以上1,500Mpa以下であってもよく、より好ましくは500Mpa以上1,200Mpa以下であってもよい。前記範囲を満たす場合、接着剤層による接着力が増大し、保護フィルムの剥離が生じにくいという効果がある。
【0061】
前記接着剤層の貯蔵弾性率は、離型フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)に、前記接着剤層と同じ組成を有する光硬化性組成物を厚さ50μmで塗布し、光量1,000mJ/cm2以上の条件で紫外線を照射して硬化した後、離型フィルムを除去し、試験片を所定のサイズにレーザ切断した後、DMAにより測定する。この際、測定温度は、-30℃の開始温度から5℃/minの昇温速度で160℃まで昇温しながら、10%のstrainで一定に引張するときの貯蔵弾性率を測定し、80℃になったときの貯蔵弾性率の値を記録した。
【0062】
本明細書は、前記偏光子の保護層が接する面の他面に接着剤層を介して保護フィルムが貼り付けられた偏光板を提供する。
具体的には、本明細書の一実施態様に係る偏光板は、前記保護層が偏光子の一面に形成された場合、保護層が形成された面の反対面に、偏光子を支持および保護するために、接着剤層を介して別の透明保護フィルムを貼り付けることができる。
【0063】
この際、前記保護フィルムは、偏光子を支持および保護するためのものであり、当該技術分野において一般的に知られている様々な材質の保護フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP、cycloolefin polymer)フィルム、トリアセチルセルロースフィルム(TAC、Tri‐Acetyl Cellulose)といったアクリル系フィルムなどが使用され得る。中でも、光学特性、耐久性、経済性などを考慮して、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが特に好ましい。
【0064】
一方、前記偏光子と保護フィルムの貼り付けは、ロールコータ、グラビアコータ、バーコータ、ナイフコータまたはキャピラリーコータなどを使用して、偏光子または保護フィルムの表面に偏光板用の接着剤組成物をコーティングした後、これらを貼り合わせロールで加熱して貼り合わせるか、常温圧着して貼り合わせる方法、または貼り合わせの後、UV照射する方法などにより行われ得る。
【0065】
図2は本明細書の他の実施態様に係る偏光板を図示した図である。前記
図2には、偏光子10の一面に保護層20が備えられ、前記偏光子の保護層が接する面の他面に接着剤層30が備えられ、前記接着剤層上に保護フィルム40が備えられた偏光板の構造が例示されている。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物であり、前記接着剤組成物は、エポキシ化合物およびオキセタン化合物を含む。
【0067】
前記接着剤層は、光硬化性接着剤組成物で形成されることが好ましい。このように、接着層が光硬化性組成物で形成される硬化型樹脂層である場合、その製造方法が簡単であり、さらに、保護フィルムとの密着性に優れるという利点がある。また、偏光板の耐久性をより改善することができる。
【0068】
前記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテル型エポキシ化合物のうち少なくとも一つ以上を使用することができ、好ましくは、脂環式エポキシ化合物とグリシジルエーテル型エポキシ化合物の混合物を使用することができる。前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも一つ以上含むエポキシ化合物を意味する。
【0069】
前記エポキシ化合物の例としては、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物、多価カルボン酸と3,4‐エポキシシクロヘキシルメチルアルコールのエステル化物またはカプロラクトン変性物、末端に脂環式エポキシ基を有するシリコン系化合物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、ジシクロペンタジエンジオキシド、リモネンジオキシド、4‐ビニルシクロヘキセンジオキシド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、両末端水酸基のポリブタジエンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、スチレン‐ブタジエン共重合体の二重結合が一部エポキシ化した化合物(例えば、ダイセル化学工業(株)製の「エポフレンド」〕、およびエチレン‐ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのイソプレン単位が一部エポキシ化した化合物(例えば、KRATON社製の「L‐207」)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックエポキシ、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、臭素化ビスフェノールエポキシ、n‐ブチルグリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル(炭素数12~14)、2‐エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o‐クレシル(cresyl)グリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはグリセリントリグリシジルエーテルなどが挙げられ、1,4‐シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルまたは芳香族エポキシ化合物の水添化合物などが挙げられ、好ましくは、環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテル、好ましくは炭素数3~20、好ましくは炭素数3~16、より好ましくは炭素数3~12の環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルが使用され得るが、これに限定されるものではない。
【0071】
一方、前記脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテル型エポキシ化合物が混合されて使用される場合、その重量比は、1:1~1:0.5であることが好ましい。
【0072】
本明細書の一実施態様によると、前記脂環式エポキシ化合物は、前記エポキシ化合物の全重量を基準として、30~80重量部が好ましく、50~70重量部がより好ましい。前記数値範囲を満たす場合、光硬化時に効果的に組成物が硬化され得るという利点がある。
【0073】
本明細書の一実施態様によると、前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物は、前記エポキシ化合物の全重量を基準として、10~60重量部が好ましく、30~50重量部がより好ましい。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記エポキシ化合物は、分子内に四員環のエーテルを有する化合物であり、例えば、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、1,4‐ビス〔(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3‐エチル‐3‐(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチル〕エーテル、3‐エチル‐3‐(2‐エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどがあるが、これに限定されるものではない。また、これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に手に入れることが可能であり、具体的には、アロンオキセタンOXT‐101(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT‐121(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT‐211(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT‐221(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT‐212(東亞合成(株)製)などを使用することができる。
【0075】
本明細書の一実施態様によると、前記接着剤組成物の全体100重量部に対して、前記エポキシ化合物の含量は、10~50重量部で含まれることが好ましく、15~40重量部で含まれることがより好ましい。
【0076】
本明細書の一実施態様によると、前記接着剤組成物の全体100重量部に対して、前記オキセタン化合物の含量は、10~50重量部で含まれることが好ましく、15~40重量部で含まれることがより好ましい。
【0077】
本明細書の一実施態様によると、前記接着剤組成物は、光カチオン重合開始剤またはラジカル開始剤をさらに含んでもよい。前記光カチオン重合開始剤またはラジカル開始剤の種類は、上述の前記偏光板保護層用組成物の光カチオン重合開始剤およびラジカル開始剤の例示から選択され得る。
【0078】
また、本明細書の前記接着剤組成物は、光増感剤をさらに含んでもよい。
前記光増感剤は、例えば、カルボニル化合物、有機硫化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、アントラセン系化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、本明細書の前記接着剤組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤が含まれる場合、シランカップリング剤が接着剤の表面エネルギーを低減し、接着剤の濡れ性(wetting)が向上する効果が得られる。
【0080】
この際、前記シランカップリング剤は、エポキシ基、ビニル基、ラジカル基のようなカチオン重合性官能基を含むことがより好ましい。また、カチオン重合性官能基が含まれていないシランカップリング剤を使用する場合には、界面活性剤やカチオン重合性官能基を含んでいないシランカップリング剤と比較して、ガラス転移温度を低下させず、濡れ性を改善する効果がある。これは、シランカップリング剤のカチオン重合官能基が、接着剤組成物のシラン基と反応して架橋形態をなし、硬化後に接着剤層のガラス転移温度が低下する現象を減少させるためである。
【0081】
一方、前記接着剤層は、当該技術分野において公知の方法により形成され得る。例えば、偏光子または保護フィルムの一面に接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成した後、偏光子と保護フィルムを貼り合わせた後、硬化する方法により行われ得る。この際、前記塗布は、当該技術分野において公知の塗布方法、例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法で行われ得る。また、前記接着剤組成物をコーティングした後、硬化する前に、別の乾燥過程をさらに行ってもよい。乾燥方法は、通常使用される方法であれば制限されない。
【0082】
本明細書は、前記偏光板を含む画像表示装置を提供する。
本明細書において、前記画像表示装置は、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)および有機電界発光表示装置(OLED)であってもよい。
【0083】
より具体的には、前記画像表示装置は、液晶パネルと、この液晶パネルの両面にそれぞれ備えられた偏光板とを含む液晶表示装置であってもよく、この際、前記偏光板のうち少なくとも一つが、上述の本明細書の一実施態様に係る偏光子を含む偏光板であってもよい。すなわち、前記偏光板は、ヨウ素および/または二色性染料が染着されたポリビニルアルコール系偏光子と、前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムとを含む偏光板において、局地的に400nm~800nmの波長帯域での単体透過度が80%以上である偏光解消領域を有し、前記偏光解消領域の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下であり、偏光度が10%以下であり、垂れ(Sagging)が10μm以下であることを特徴とする。
【0084】
この際、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は、特に限定されない。例えば、TN(twisted nematic)型、STN(Super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のような受動行列方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどがあるが、これに限定されるものではない。また、液晶表示装置を構成するその他の構成、例えば、上部および下部基板(例えば、カラーフィルタ基板またはアレイ基板)などの種類も特に制限されない。
本明細書は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含み、前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる偏光板保護層用の光硬化性組成物を提供する。
【0085】
前記第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物、オキセタン化合物および光カチオン重合開始剤に関する説明は、上述のとおりである。
【実施例】
【0086】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0087】
<実験例>‐偏光板保護層用の光硬化性組成物の製造
<実験例1>‐光硬化性組成物1の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)20重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を2.11重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを0.84重量部添加し、光硬化性組成物1を製造した。
【0088】
<実験例2>‐光硬化性組成物2の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)20重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を2重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを0.79重量部添加し、光硬化性組成物2を製造した。
【0089】
<実験例3>‐光硬化性組成物3の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)20重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を2.64重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを1.05重量部添加し、光硬化性組成物3を製造した。
【0090】
<実験例4>‐光硬化性組成物4の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)20重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を1.85重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを0.74重量部添加し、光硬化性組成物4を製造した。
【0091】
<実験例5>‐光硬化性組成物5の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)20重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を1.72重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを0.68重量部添加し、光硬化性組成物5を製造した。
【0092】
<実験例6>‐光硬化性組成物6の製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)65重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部および1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を1.58重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを0.63重量部添加し、光硬化性組成物6を製造した。
【0093】
前記光硬化性組成物1~6の短波長開始剤および長波長開始剤の含量を、以下の表1にそれぞれ示した。
【0094】
【0095】
<実験例7>‐接着剤組成物Aの製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)30重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部、1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)(商品名:LD‐204)45重量部およびノナンジオールジアクリレート(商品名:A‐NOD‐N)10重量部を使用し、短波長開始剤として、Irgacure 250を3重量部および長波長開始剤として、ESACURE ITXを1重量部添加し、接着剤組成物Aを製造した。
【0096】
<実験例8>‐接着剤組成物Bの製造
3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド‐2021P)30重量部、3‐エチル‐3‐[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT‐221)15重量部、1,4‐シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)(商品名:LD‐204)45重量部およびノナンジオールジアクリレート(商品名:A‐NOD‐N)10重量部を使用し、光開始剤として、ジフェニル‐(4‐フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(CPI100P、Sanapro社製)を5重量部添加し、接着剤組成物Bを製造した。
【0097】
<実施例1>‐偏光板の製造(保護フィルム/接着剤層/PVA/保護層)
<実施例1‐1>
(1)積層体(保護フィルム/接着剤層/PVA)の製造
ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムに二色性染料を染着した後、所定の方向に延伸し架橋させる方法で偏光子を製造した。前記製造した偏光子の一面に、接着剤組成物Aを、ロールコータを使用してコーティングして接着剤層を形成し、保護フィルムとして、PETフィルム(TA‐044、Toyobo社製)を積層した後、紫外線照射装置を用いて、1,000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化し、前記偏光子と保護フィルムを互いに接着した。前記接着剤層の厚さは、2μmであった。
【0098】
(2)偏光板の製造
前記偏光子の保護フィルムが積層された面の他面に光硬化性組成物1をバーコータまたはロールコータを使用してコーティングし、紫外線照射装置を用いて、1,000mJ/cm2の紫外線を照射して6μmの厚さを有する保護層を形成し、偏光板を製造した。前記偏光板は、偏光子の一面に接着剤層を介して保護フィルムが積層され、前記偏光子の保護フィルムが積層された面の他面に保護層が直接形成された構造である。
【0099】
<比較例1‐1~1‐5>
前記実施例1‐1で光硬化性組成物1の代わりに、光硬化性組成物2~6をそれぞれ使用した以外は、実施例1‐1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0100】
<評価例1>
<評価例1‐1>‐高温促進評価(クラック発生率評価)
前記実験例1~6で製造された光硬化性組成物を用いて、前記実施例1‐1と同様に積層体を製造した。次に、先が丸い鉛筆で300gの荷重で掻いて偏光子にクラックを生じさせた以外は、前記実施例1‐1および比較例1‐1~1‐5と同じ方法で偏光板を製造した。
前記偏光板を幅120mm、長さ100mmに切断した後、80℃で100~300時間以上放置した後、偏光子の収縮によりクラックが生じて光が漏れるかを観察し、全体のクラックのうち光が漏れるクラックの数を計算して、偏光板内のクラック(crack)発生率を導き出し、その結果を下記表2に示した。
*クラック発生率:(光が漏れるクラックの数/全体クラックの数)×100(%)
【0101】
<評価例1‐2>‐PETブロッキング評価
前記実験例1~6で製造された光硬化性組成物を用いて、前記実施例1‐1と同様に積層体を製造した。次に、前記積層体の保護層上にキャリアPETフィルム(XD500、東レ社製)を積層した以外は、前記実施例1‐1および比較例1‐1~1‐3と同じ方法で偏光板を製造した。
前記で作製された偏光板を5日間エージング(Aging)した後、フィルム高速剥離装置(CBT‐4720、忠北テク社製)を用いて、ASTM 3330測定法により測定することができる。偏光板に対して、180゜の角度で、30m/minの速度でキャリアPETフィルムを剥離し、その結果を下記表2に示した。
【0102】
3日経過後および9日経過後の外観に応じて、Lv.0~Lv.3に区分した。その結果を、外観に応じて、Lv.0~Lv.3に区分した。Lv.0は、剥離された保護層とキャリアPETのいずれも外観に異常がない状態を意味し、Lv.1は、保護層の外観には異常がないが、剥離されたキャリアPETフィルムの表面の一部にスクラッチがある状態を意味し、Lv.2は、保護層の表面が損傷し、キャリアPETフィルムが剥離された状態を意味し、Lv.3は、キャリアPETフィルムが剥離されず、破れた状態(破断)を意味する。この際、キャリアPETフィルムの表面がきれいに剥離されたかを確認するために、ヘーズメータ(Haze meter)により透過ヘーズ(Haze)を測定し、初期フィルム値と対比して変化する数値を比較した。ヘーズ(Haze)は、曇り度および濁度を意味し、その程度を%で表した。
【0103】
<評価例1‐3>‐キャリアフィルム剥離力評価
前記実施例1‐1および比較例1‐1~1‐5で作製された偏光板を、温度20℃、湿度50%の条件で7日間放置した後、幅50mm、長さ200mmに切断してから、保護層の前記キャリアフィルムに対する剥離力を、フィルム高速剥離装置(CBT‐4720、忠北テク社製)を用いて、ASTM 3330測定法により測定した。具体的には、キャリアフィルムに対して、前記保護層から30m/minの速度で、180゜の角度で剥離力を測定した。
【0104】
【0105】
前記表2に示されているように、本明細書の偏光板保護層用の光硬化性組成物を用いた実施例1‐1およびは、クラックの発生が防止され、特に、実施例1‐1、PETブロッキングを防止する効果に優れることが分かる。具体的には、実施例1‐1、比較例1‐1~1‐4に比べて、クラック発生およびPETブロッキングをいずれも防止する効果に優れることが分かる。
【0106】
また、前記キャリアフィルム剥離力評価の結果から分かるように、本明細書の偏光板保護層用の光硬化性組成物を用いた実施例1‐1、キャリアPETブロッキングの防止に効果的であり、保護フィルムとの優れた接着力および密着力を要する接着剤用組成物とは作用する原理が相違することが分かる。
【0107】
<実施例2>‐偏光板の製造
<比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3>‐(保護フィルム/接着剤層/PVA/保護層)
下記の表3のように、保護層の厚さを異ならせた以外は、前記実施例1‐1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0108】
<比較例2‐1>‐(保護フィルム/接着剤層/PVA/接着剤層/保護フィルムA)
前記比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3で使用されたものと同じ偏光子の一面に、接着剤組成物Aを、厚さ2μmになるようにロールコータを使用して塗布し、コロナ処理された厚さ80μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TA‐044、Toyobo社製)を接合した。前記偏光子の接着剤組成物Aが塗布された面の他面に、接着剤組成物Bを、厚さ1μmになるようにロールコータを使用して塗布し、保護フィルムAとして厚さ25μmのTACフィルム(富士フィルム社製)を接合した後、紫外線を照射して前記光硬化性接着剤組成物AおよびBを硬化し、偏光板を製造した。
【0109】
<比較例2‐2>‐(保護フィルム/接着剤層/PVA/接着剤層/保護フィルムA)
前記比較例2‐1で保護フィルムAとしてRinken社製のアクリルフィルムを使用し、保護フィルムAの厚さを40μmに形成した以外は、比較例2‐1と同じ方法で偏光板を製造した。
<比較例2‐3>‐(保護フィルム/接着剤層/PVA/接着剤層/保護フィルムA)
前記比較例2‐1で保護フィルムAとしてLGC社製のアクリルフィルムを使用し、保護フィルムAの厚さを40μmに形成した以外は、比較例2‐1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0110】
<評価例2>
<評価例2‐1>‐高温促進評価(クラック発生率)
前記比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3および比較例2‐1~2‐3で作製した偏光板に対して、高温促進評価を行った。先が丸い鉛筆で300gの荷重で掻いて偏光子にクラックを生じさせた。次に、前記偏光板を幅120mm、長さ100mmに切断した後、80℃で100時間放置した後、偏光子の収縮によりクラックが生じて光が漏れるかを観察し、全体のクラックのうち光が漏れるクラックの数を計算して、偏光板内のクラック(crack)発生率を導き出し、その結果を下記表3に示した。
*クラック発生率:光が漏れるクラックの数/全体クラックの数×100(%)
【0111】
<評価例2‐2>‐貯蔵弾性率評価
前記実験例1で製造された光硬化性組成物1および実験例8で製造された接着剤組成物Bを、それぞれ、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、RPK38‐401、東レ先端素材社製)に厚さ50μmで塗布し、光量1000mJ/cm2以上の条件で紫外線を照射して硬化した後、離型フィルムを除去し、試験片を幅5.3mm、長さ4.5cmサイズにレーザを用いて切断した。次に、DMA(Dynamic mechanical analyzer)を用いて、貯蔵弾性率を測定した。測定モードは、Multi‐Frequency‐Strainであり、Strain 10%およびfrequency 1Hzで、-30℃から160℃まで1分当たり5℃ずつ昇温しながら測定した結果を下記表3に示した。
【0112】
また、比較例2‐1~2‐3で使用されたそれぞれの保護フィルムAに対して、DMA(Dynamic mechanical analyzer)を用いて、貯蔵弾性率を測定した。測定モードは、Multi‐Frequency‐Strainであり、Strain 10%およびfrequency 1Hzで、-30℃から160℃まで1分当たり5℃ずつ昇温しながら測定した結果を下記表3に示した。
【0113】
【0114】
前記表3に示されているように、本明細書の偏光板保護層用の光硬化性組成物を用いた比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3は、クラック発生防止の効果は言うまでもなく、貯蔵弾性率にも優れることが分かる。具体的には、偏光子に直接保護層が形成される比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3は、接着剤層および保護フィルムAで構成される比較例2‐1~2‐3に比べてクラック発生率が底いことが分かる。また、比較例2‐1~2‐3による偏光板の保護フィルムAの厚さは、25μm~40μmであり、比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3の保護層の厚さである5μm~10μmに比べて厚いにもかかわらず、クラックが多数発生し、耐久性が劣ることが分かる。
【0115】
また、比較実施例2‐1ならびに実施例2-2および2‐3による偏光板は、保護層が偏光子に直接形成され、前記保護層の貯蔵弾性率は、別の保護フィルムを含まず、且つ1,500Mpa以上の高い貯蔵弾性率を有する。したがって、本明細書の一実施態様に係る保護層は、別の保護フィルムがなくても、偏光子の高温での収縮または膨張現象を効果的に抑制できることが分かる。
【0116】
一方、比較例2‐1~2‐3による偏光板は、保護フィルムAの貯蔵弾性率が高くても、偏光子上に形成される接着剤層の貯蔵弾性率が低い。したがって、偏光子の高温での収縮または膨張現象を効果的に抑制することができない。
【0117】
以上、本明細書の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
(付記)
(付記1)
偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面に接する保護層とを含む偏光板であって、
前記保護層は、第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む偏光板保護層用の光硬化性組成物の硬化物であり、
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、
前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、
前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる、偏光板。
(付記2)
前記保護層は、前記偏光子に直接コーティングされて形成される、付記1に記載の偏光板。
(付記3)
前記短波長開始剤は、310nm以下の波長を吸収するヨウ素系化合物である、付記1または2に記載の偏光板。
(付記4)
前記長波長開始剤は、350nm以上の波長を吸収するチオキサントン系化合物である、付記1から3のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記5)
前記第1のエポキシ系化合物は、脂環式エポキシ系化合物である、付記1から4のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記6)
前記第2のエポキシ系化合物は、脂肪族エポキシ系化合物である、付記1から5のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記7)
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第2のエポキシ系化合物は、1~30重量部で含まれる、付記1から6のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記8)
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記オキセタン化合物は、10~30重量部で含まれる、付記1から7のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記9)
前記保護層の厚さは、5μm~10μmである、付記1から8のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記10)
前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の25℃での粘度は、50cps以上200cps以下である、付記1から9のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記11)
前記保護層の80℃での貯蔵弾性率は、1,500Mpa~10,000Mpaである、付記1から10のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記12)
前記保護層の偏光子と接する面の他面に備えられたキャリア(Carrier)フィルムをさらに含む、付記1から11のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記13)
前記偏光子の保護層が接する面の他面に接着剤層を介して保護フィルムが貼り付けられる、付記1から12のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記14)
前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物であり、前記接着剤組成物は、エポキシ化合物およびオキセタン化合物を含む、付記13に記載の偏光板。
(付記15)
付記1から14のいずれか一つに記載の偏光板を含む、画像表示装置。
(付記16))
第1のエポキシ系化合物、第2のエポキシ系化合物およびオキセタン化合物からなる光重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記光重合性化合物の全体100重量部に対して、前記第1のエポキシ系化合物は、50~80重量部で含まれ、
前記光カチオン重合開始剤は、短波長開始剤および長波長開始剤を含み、
前記偏光板保護層用の光硬化性組成物の全体100重量部に対して、前記短波長開始剤は、2~2.5重量部で含まれ、前記長波長開始剤は、0.8~1.5重量部で含まれる、偏光板保護層用の光硬化性組成物。
【符号の説明】
【0118】
10:偏光子
20:保護層
30:接着剤層
40:保護フィルム