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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20220728BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220728BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/22 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020550324
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037499
(87)【国際公開番号】W WO2020071195
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018187474
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雄
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 佑生
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-004993(JP,A)
【文献】特開2010-073590(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0128237(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380439(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170329(US,A1)
【文献】中国実用新案第203589031(CN,U)
【文献】特開2009-033004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置の製造方法であって、
第1面を有する基板と、前記基板の前記第1面上に位置する第1層と、前記第1層上に位置し、有機材料を含む第2層と、を準備する工程と、
前記第2層を挟んで前記第1層の反対側から電磁波を照射して前記第2層を加熱する工程と、
を含み、
前記第1面に垂直な方向から見て、前記第1層によって占められる面積は、前記第2層によって占められる面積より大きく、
前記第1層は、前記発光装置から発せられる光のピーク波長に対して50%超の透過率を有し、前記電磁波のピーク波長に対して50%以下の透過率を有する、発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1層は、前記基板の前記第1面の全体に亘って位置している、発光装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1層は、誘電体ミラーを含む、発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第2層は、正孔注入層を含む、発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記基板は、有機材料を含む、発光装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記基板及び前記第2層を準備する工程は、前記基板を大気に曝す工程と、前記基板を大気に曝した後、前記第2層を前記基板上に形成する工程と、を含む、発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第2層を準備する工程は、前記第2層を蒸着によって形成する工程を含む、発光装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第2層を準備する工程は、架橋性モノマーを含む層を前記第1層上に形成する工程を含み、
前記第2層を加熱する工程は、前記架橋性モノマーを架橋させる工程を含む、発光装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載に発光装置の製造方法において、
前記第2層を準備する前に、前記基板の前記第1面上又は前記第1層上に溶媒を塗布する工程をさらに含み、
前記第2層を加熱する工程は、前記溶媒を除去する工程を含む、発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記電磁波のピーク波長は、400nm以上600nm以下にある、発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記発光装置から発せられる光のピーク波長は、600nm超800nm以下にある、発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)を含む発光装置が開発されている。発光装置は、陽極、陰極及び有機層を含んでいる。有機層は、陽極及び陰極の間の電圧による有機エレクトロルミネッセンス(EL)によって光を発することができる。
【0003】
特許文献1には、OLEDを含む発光装置の一例について記載されている。発光装置は、陽極、光学調節層、有機層及び陰極を順に含んでいる。特許文献1には、陽極と有機層の間に光学調節層を配置することで、発光装置の視野角が改善されると記載されている。
【0004】
特許文献2には、OLEDを含む発光装置の一例について記載されている。発光装置は、陽極、アルミニウムフタロシアニン(Al-Pc)層、有機層及び陰極を含んでいる。Al-Pc層は、陽極を覆っており、有機層及び陰極は、Al-Pc層上に順に位置している。Al-Pc層は、陽極側から照射されたレーザ光によって蒸発され、有機層及び陰極を押し上げるように膨張する。Al-Pc層の膨張によって有機層及び陰極が陽極から離されて、陽極と陰極の間のリークを防ぐことができる。
【0005】
特許文献3には、非晶質シリコンを加熱するための方法の一例について記載されている。この例では、非晶質シリコンをレーザ光によって加熱している。特許文献3には、非晶質シリコンに注入されるレーザ光の量は、干渉効果によって、非晶質シリコンの厚さ及びレーザ光の波長に応じて調節可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-227111号公報
【文献】特開2000-331782号公報
【文献】特開昭59-193022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OLEDを含む発光装置の製造プロセスでは、電磁波の照射によって基板上の特定の層を加熱させることがある。このプロセスでは、電磁波の照射によって基板が加熱されて、基板が損傷を受けるおそれがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題としては、電磁波の照射による基板の損傷を抑えることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
発光装置の製造方法であって、
第1面を有する基板と、前記基板の前記第1面上に位置する第1層と、前記第1層上に位置し、有機材料を含む第2層と、を準備する工程と、
前記第2層を挟んで前記第1層の反対側から電磁波を照射して前記第2層を加熱する工程と、
を含み、
前記第1面に垂直な方向から見て、前記第1層によって占められる面積は、前記第2層によって占められる面積より大きい、発光装置の製造方法である。
【0010】
請求項13に記載の発明は、
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面上に位置し、電磁波フィルタとして機能可能な第1層と、
前記第1層上に位置し、有機材料を含む第2層と、
を含み、
前記第1面に垂直な方向から見て、前記第1層によって占められる面積は、前記第2層によって占められる面積より大きい、発光装置である。
【0011】
請求項15に記載の発明は、
発光装置であって、
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面上に位置する第1層と、
前記第1層上に位置し、有機材料を含む第2層と、
を含み、
前記第1層は、前記発光装置から発せられる光のピーク波長に対して50%超の透過率を有し、400nm以上600nm以下のうちの少なくとも一波長の光に対して50%以下の透過率を有する、発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0013】
図1】実施形態に係る発光装置の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1及び図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図4図1及び図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図5図1及び図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図6図1及び図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図7】第2層を加熱する理由の一例を説明するための図である。
図8】第2層を加熱する理由の一例を説明するための図である。
図9図2の第1の変形例を示す図である。
図10図2の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
以下において、「AがB上に位置する」という表現は、例えば、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがB上に直接位置することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が位置することを意味してもよい。さらに、「AがB上に位置する」という表現は、空間的な相対位置を意味するのであって、AがBの上方に位置することを意味するだけでなく、AがBの上方以外(例えば、Bの下方)に位置することを意味することもある。
【0016】
図1は、実施形態に係る発光装置10の平面図である。図2は、図1のA-A断面図である。
【0017】
図1及び図2を用いて、発光装置10の概要を説明する。発光装置10は、基板100、第1層210及び第2層220を含んでいる。図2に示すように、基板100は、第1面102を有している。第1層210は、基板100の第1面102上に位置している。第1層210は、電磁波フィルタとして機能可能である。第2層220は、第1層210上に位置している。第2層220は、有機材料を含んでいる。基板100の第1面102に垂直な方向(図1の視点)から見て、第1層210によって占められる面積は、第2層220によって占められる面積より大きくなっている。
【0018】
上述した構造は、後述する新規なプロセスによって形成されることができる。後述するように、当該新規なプロセスによれば、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を抑えることができる。
【0019】
図1を用いて、発光装置10の平面レイアウトの詳細を説明する。
【0020】
発光装置10は、基板100、第1電極110、有機層120(第2層220を含む。)、第2電極130及び第1層210を含んでいる。
【0021】
基板100は、矩形形状を有している。他の例において、基板100は、矩形形状以外の形状(例えば、円形状又は矩形以外の多角形形状)を有していてもよい。
【0022】
第1層210は、基板100の第1面102の全体に亘って位置している。言い換えると、基板100の第1面102の全体は、第1層210によって覆われている。他の例において、第1層210は、基板100の第1面102の一部分のみに位置していてもよい。
【0023】
第1電極110は、一方向に延伸しており、第2電極130は、当該一方向に直交する方向に延伸して第1電極110と交差している。
【0024】
有機層120は、基板100の第1面102の一部分に位置しており、第1電極110及び第2電極130の重なり合い領域から当該重なり合い領域の外側にかけて位置している。
【0025】
図1に示す例において、基板100の第1面102に垂直な方向(図1の視点)から見て、第1層210によって占められる面積は、第2層220(有機層120)によって占められる面積より大きくなっている。第1層210は、第2層220(有機層120)と重なる領域から当該領域の外側にかけて位置している。第1層210は、図1に示すように、基板100の第1面102の全体に亘って位置していてもよいし、又は図1に示す例とは異なり、基板100の第1面102の一部分のみに位置していてもよい。他の例において、基板100の第1面102に垂直な方向(図1の視点)から見て、第1層210によって占められる面積は、第2層220(有機層120)によって占められる面積より小さくなっていてもよい。
【0026】
発光装置10は、発光部140を含んでいる。発光部140は、第1電極110及び第2電極130の重なり合い領域によって画定されている。
【0027】
他の例において、発光装置10は、図1に示す平面レイアウトと異なる平面レイアウトを有していてもよい。実施形態の説明から明らかなように、発光装置10が図1に示す平面レイアウトを有する場合だけでなく、発光装置10が図1に示す平面レイアウトと異なる平面レイアウトを有する場合にも、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を抑えることができる。
【0028】
図2を用いて、発光装置10の断面の詳細を説明する。
【0029】
基板100は、第1面102及び第2面104を有している。第1電極110、有機層120、第2電極130及び第1層210は、基板100の第1面102側に位置している。第2面104は、第1面102の反対側にある。
【0030】
図2に示す例において、発光装置10は、ボトムエミッションである。有機層120から発せられた光は、第1電極110及び基板100を透過して基板100の第2面104から出射される(図2において、光は、白矢印で示されている。)。
【0031】
基板100は、透光性を有している。したがって、有機層120から発せられた光は、基板100を透過することができる。
【0032】
基板100は、可撓性を有していてもよいし、又は有していなくてもよい。
【0033】
一例において、基板100は、ガラスを含んでいてもよく、ガラス基板にしてもよい。他の例において、基板100は、有機材料(例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)又はポリイミド)を含んでいてもよく、樹脂基板にしてもよい。基板100が樹脂基板である場合、基板100の第1面102及び第2面104の少なくとも一方は、無機バリア層(例えば、SiN又はSiON)を有していてもよい。
【0034】
第1層210は、基板100の第1面102上に位置している。図1を用いて説明したように、第1層210は、基板100の第1面102の全体に亘って位置していてもよいし、又は基板100の第1面102の一部分のみに位置していてもよい。
【0035】
第1電極110は、第1層210上に位置している。第1電極110は、アノードとして機能してもよい。
【0036】
第1電極110は、透光性を有している。したがって、有機層120から発せられた光は、第1電極110を透過することができる。第1電極110は、透明導電材料を含んでいてもよい。透明導電材料は、例えば、金属酸化物(例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide))又はIGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、カーボンナノチューブ又は導電性高分子である。他の例において、第1電極110は、金属薄膜(例えば、Ag)又は合金薄膜(例えば、AgMg)を含んでいてもよい。
【0037】
有機層120は、第1電極110を覆っている。有機層120は、第2層220及び有機層122を含んでいる。第2層220は、有機材料を含んでいる。
【0038】
図2に示す例において、第2層220は、有機層120のうちの最下層であり、正孔注入層(HIL)を含んでいてもよい。有機層122は、第2層220上に位置している。有機層122は、発光層(EML)を含んでおり、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子輸送層(HTL)及び電子注入層(HIL)をさらに適宜含んでいてもよい。第2層220がHILを含む場合、有機層122は、HILを含まなくてもよい。
【0039】
他の例において、第2層220は、有機層120のうちの最下層以外の層であってもよい。この例においても、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を抑えることができる。
【0040】
第2電極130は、有機層120上に位置している。第2電極130は、カソードとして機能してもよい。
【0041】
第2電極130は、遮光性(例えば、光反射性)を有している。第2電極130は、遮光性導電材料を含んでいてもよい。一例において、遮光性導電材料は、金属又は合金であり、より具体的には、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn及びInからなる群の中から選択される少なくとも1つの金属又はこの群から選択される金属の合金である。
【0042】
発光装置10は、発光部140を含んでいる。発光部140は、第1電極110及び第2電極130の重なり合い領域によって画定されている。
【0043】
図3から図6は、図1及び図2に示した発光装置10の製造方法の一例を説明するための図である。図3から図6は、図2に示したA-A断面における断面を示している。
【0044】
発光装置10は、以下のようにして製造される。
【0045】
まず、図3に示すように、基板100及び第1層210を準備する。第1層210は、基板100の第1面102上に位置している。第1層210は、基板100の第1面102の全体に亘って位置していてもよい。
【0046】
次いで、図4に示すように、第1層210上に第1電極110を形成する。
【0047】
次いで、図5に示すように、第1層210上に第2層220を形成して、第1電極110を第2層220で覆う。
【0048】
図3から図5に示す工程において、基板100、第1層210及び第2層220を準備している。
【0049】
次いで、図6に示すように、第2層220を挟んで第1層210の反対側から電磁波を照射して第2層220を加熱する(図6において、電磁波は矢印で示されている。)。
【0050】
第1層210は、電磁波フィルタとして機能可能である。具体的には、第1層210は、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を選択的に透過させることができるとともに、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光のピーク波長と異なるピーク波長を有する電磁波、具体的には、第2層220を加熱させるための電磁波を選択的に遮蔽することができる。一例において、第1層210は、発光装置10から発せられる光のピーク波長に対して、50%超の透過率、好ましくは80%以上の透過率を有し、第2層220を加熱させるための電磁波のピーク波長に対して、50%以下の透過率、好ましくは20%以下の透過率を有している。
【0051】
上述した構成によれば、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を抑えることができる。具体的には、上述した構成においては、第1層210は、第2層220を加熱させるための電磁波を遮蔽することができる。したがって、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を抑えることができる。
【0052】
上述した構成によれば、第1層210による発光装置10の発光強度の低下を抑えることができる。具体的には、上述した構成においては、第1層210は、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を透過させることができる。したがって、第1層210による発光装置10の発光強度の低下を抑えることができる。
【0053】
第1層210は、誘電体ミラーを含んでいてもよい。一例において、誘電体ミラーは、交互に並ぶ高屈折率領域及び低屈折率領域を含んでいてもよい。誘電体ミラーは、一の波長帯域の電磁波(つまり、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光)を選択的に透過することができ、他の波長帯域の電磁波(つまり、第2層220を加熱させるための電磁波)を選択的に遮蔽することができる。
【0054】
一例において、第1層210は、第2層220を加熱させるための電磁波を選択的に反射してもよい。この例において、第1層210は、第2層220を加熱させるための電磁波のピーク波長に対して、50%以上の反射率、好ましくは80%以上の反射率を有していてもよい。この例によれば、第1層210による電磁波の反射によって、第1層210から第2層220に電磁波を照射することができる。
【0055】
他の例において、第1層210は、第2層220を加熱させるための電磁波を選択的に吸収してもよい。この例において、第1層210は、電磁波を加熱させるための電磁波に対して、50%以上の吸収率、好ましくは80%以上の吸収率を有していてもよい。この例によれば、第1層210による電磁波の吸収によって、電磁波から基板100を保護することができる。
【0056】
一例において、第2層220を加熱させるための電磁波は、400nm以上600nm以下にピーク波長を有する光、例えば、キセノンフラッシュランプから発せられる光であってもよい。この例において、第1層210は、400nm以上600nm以下のうちの少なくとも一波長の光を選択的に遮蔽してもよく、例えば、400nm以上600nm以下のうちの少なくとも一波長の光に対して、50%以下の透過率、好ましくは20%以下の透過率を有していてもよい。
【0057】
一例において、発光装置10から発せられる光は、600nm超800nm以下にピーク波長を有する光、例えば、赤色光であってもよい。
【0058】
一例において、発光装置10から発せられる光のピーク波長及び第2層220を加熱させるための電磁波のピーク波長の差の大きさは、50nm以上、好ましくは100nm以上であってもよい。この差の大きさが大きいほど、発光装置10から発せられる光のスペクトル及び第2層220を加熱させるための電磁波のスペクトルの重なり合いを小さくすることができる。したがって、第1層210は、高い信頼性をもって、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を選択的に透過させることができるとともに、第2層220を加熱させるための電磁波を選択的に遮蔽することができる。
【0059】
基板100の第1面102に垂直な方向(図1に示した視点)から見て、第1層210によって占められる面積は、第2層220によって占められる面積より大きくてもよい。このようにして、第2層220と重なる領域及びその領域の周囲に第1層210を配置させて、電磁波から基板100を保護することができる。特に、第1層210が基板100の第1面102の全体に亘って位置する場合、電磁波から基板100をより確実に保護することができる。
【0060】
基板100は、有機材料を含んでいてもよく、樹脂基板であってもよい。樹脂基板は、電磁波の加熱による損傷を受けやすい。したがって、第1層210を設けることは、基板100が有機材料を含む場合に有意義となる。
【0061】
図7及び図8は、第2層220を加熱する理由の一例を説明するための図である。図7は、図5に示した工程における第1電極110及び第2層220の一部分の拡大図であり、図8は、図6に示した工程後における第1電極110及び第2層220の一部分の拡大図である。
【0062】
図7に示す例では、第1電極110の表面に異物Pが付着している。図7に示す例では、第1電極110を形成した後、第1電極110を形成するためのチャンバから第2層220を形成するためのチャンバへの基板100(例えば、図4)の移動のため、基板100(例えば、図4)を大気に曝している。基板100の移動の間に、大気中の異物(図7に示す例では、異物P)が第1電極110の表面に付着することがある。
【0063】
図7に示す例において、第2層220は、蒸着層であり、蒸着によって形成されている。蒸着によって形成された層は、他の堆積(例えば、ALD(Atomic Layer Deposition))によって形成された層よりも、段差被覆性に劣っている。したがって、第2層220は、異物Pの周辺において途切れることがある。仮に、第2層220が途切れたまま第2層220上の要素(例えば、図2に示した第2電極130)を形成すると、第1電極110及び第2電極130(例えば、図2)の間で短絡が生じ得る。
【0064】
図8に示すように、第2層220の加熱(図6)は、異物Pを第2層220によって埋め込むために行われる。第2層220は、一定の温度(例えば、第2層220の有機材料のガラス転移点超の温度)に加熱されて、流動性を呈するようになる。図8に示すように、加熱によって、第2層220は、異物Pを埋め込むように変形することができる。第2層220による異物Pの埋込によって、第1電極110及び第2電極130(例えば、図2)の間で短絡を防止することができる。
【0065】
図7及び図8を用いて説明した理由とは異なる他の理由として、第2層220は、第2層220に含まれる架橋性モノマーを架橋させるために加熱されてもよい。この例においては、第2層220を準備する工程は、架橋性モノマーを含む層を第1層210上に形成する工程を含む。架橋性モノマーは、第2層220の加熱によって架橋される。この例において、第2層220を加熱させるための電磁波は、例えば、紫外線(UV)ランプから発せられる光であって、365nm以下にピーク波長をもつものであってもよい。
【0066】
図7及び図8を用いて説明した理由とは異なるさらに他の理由として、第2層220は、基板100上の溶媒を除去するために加熱されてもよい。この例においては、発光装置10の製造方法は、第2層220を準備する前に、基板100の第1面102上又は第1層210上に溶媒を塗布する工程を含んでいてもよい。溶媒は、塗布プロセスによって基板100の第1面102上又は第1層210上に層を形成するために用いられ得る。
【0067】
図9は、図2の第1の変形例を示す図である。
【0068】
第1層210は、第1電極110を覆っていてもよい。第1層210は、HILを含んでいてもよいし、又はHILを含んでいなくてもよい。有機層122は、第1層210上に位置している。有機層122は、EMLを含んでおり、HIL、HTL、ETL及びEILを適宜含んでいてもよい。有機層122は、第2層220を含んでいる。有機層122は、第2層220のみを含んでいてもよいし、又は第2層220以外の層を含んでいてもよい。
【0069】
図9に示す例においても、第2層220を加熱させるための電磁波の照射による基板100の損傷を第1層210によって抑えることができる。
【0070】
図10は、図2の第2の変形例を示す図である。
【0071】
発光装置10は、トップエミッションであってもよい。有機層120から発せられた光は、第2電極130を透過して基板100の第2面104の反対側から出射される(図10において、光は、白矢印で示されている。)。図10に示す例において、第1電極110は、遮光性を有していてもよく、第2電極130は、透光性を有している。
【0072】
図10に示す例において、第1層210は、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を選択的に透過させることができなくてもよい。図10に示す例において、有機層120から発せられた光は、第1層210を透過する必要がない。したがって、図10に示す例において、第1層210は、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を選択的に透過させることができなくてもよい。他の例において、第1層210は、発光装置10(すなわち、有機層120)から発せられる光を選択的に透過させることができてもよい。
【0073】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0074】
この出願は、2018年10月2日に出願された日本出願特願2018-187474号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
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図7
図8
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図10