(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
F16B2/08 F
(21)【出願番号】P 2020557165
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2019057078
(87)【国際公開番号】W WO2019201543
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】102018109581.3
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591044393
【氏名又は名称】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ベン コットル
(72)【発明者】
【氏名】マテウス ヤロシュ
(72)【発明者】
【氏名】ビラル アクレミ
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ ランボースキーン
(72)【発明者】
【氏名】マーク カーター
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ボードイン
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0094755(US,A1)
【文献】特開2013-087952(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016103687(DE,A1)
【文献】特表2005-511991(JP,A)
【文献】特表2013-540953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16L 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプバンド(14)およびリング形状のリング要素(24)を含み、前記クランプバンド(14)が、締付け要素(20)により互いに連結された2つの締付けヘッド(16、18)を備え、前記リング要素(24)が、前記クランプバンド(14)内で径方向に位置決めされる、クランプ(10)であって、
前記リング要素(24)が、前記クランプバンド(14)の内側を支持するための少なくとも1つの保持要素(28)を備え、該保持要素が、固定部分(32)により前記リング要素(24)に対して軸方向にオフセットされかつ径方向において少なくとも部分的に外方に延在
し、
前記保持要素(28)のうちの少なくとも1つが、周方向および径方向に少なくとも部分的に延在する2つのばね部分(29)を備え、2つの該ばね部分(29)が前記固定部分から反対の周方向に延在する、クランプ(10)。
【請求項2】
前記リング要素(24)が、前記リング要素(24)から軸方向外方に、場合によっては前記リング要素に対して径方向内方にオフセットするよう延在する少なくとも1つの取付けタブ(26)を備える、請求項1に記載のクランプ(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの取付けタブ(26)が、平坦な構成を有し、略矩形形状である、請求項2に記載のクランプ(10)。
【請求項4】
前記リング要素が、前記クランプバンド(14)内の対応する開口部を通って前記リング要素(24)から外方に延在する少なくとも1つの位置決めタブ(30)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のクランプ(10)。
【請求項5】
前記ばね部分(29)の自由端部が、前記クランプバンド(14)の内側輪郭(36)に対して相補的であるように形成され、かつ、前記クランプバンドの内側に対接する、請求項
1から3のいずれか一項に記載のクランプ(10)。
【請求項6】
前記ばね部分が、前記クランプバンドの内側に対接する径方向外方に向けられた少なくとも1つのバルジ(44)を備える、請求項
1から3のいずれか一項に記載のクランプ(10)。
【請求項7】
前記保持要素が、少なくとも、1つのばね部分(29)上に伸長部(60)を備え、該伸長部が、前記締付けヘッド(16、18)の前記内側に対接する、請求項
1から
3のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項8】
前記リング要素(24)が、径方向部分(52)により前記リング要素(24)から径方向外方に延在する少なくとも1つの固定フック(50)を備え、前記径方向部分(52)が、内方に曲げられた、前記リング要素(24)の外側に対して少なくとも部分的に平行に延びる接触部分(54)に隣接される、請求項
2または3に記載のクランプ。
【請求項9】
前記リング要素(24)が、互いに平行して配置され、かつ、前記締付け要素(20)の領域内に配置された2つの固定フック(50)を備える、請求項
8に記載のクランプ。
【請求項10】
前記リング要素(24)が、互いに直径方向に対向する少なくとも2つの固定フック(50)を備える、請求項
8に記載のクランプ。
【請求項11】
前記リング要素(24)が、軸方向に延在し、円錐状に先細になる封止領域(25)を備える、請求項
8に記載のクランプ。
【請求項12】
前記取付けタブ(26)が、前記封止領域(25)の径方向内側縁部から延出し、前記保持
要素(28)および場合によっては前記固定フック(50)が、前記リング要素(24)の径方向外側縁部から延出する、請求項
11に記載のクランプ。
【請求項13】
前記保持要素(28)が、軸方向において前記リング要素(24)の前記取付けタブ(26)とは異なる側に配置される、請求項2
または3に記載のクランプ。
【請求項14】
前記封止領域(25)が、前記リング要素(24)に連結されるリング形状の封止要素の形態で構成される、請求項
11に記載のクランプ。
【請求項15】
前記クランプバンド(14)の内側を支持するための少なくとも1つの保持要素(28)を備え、前記保持要素が、固定部分(32)により前記リング要素(24)に対して軸方向にオフセットされ、かつ、径方向において少なくとも部分的に外方に延在する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のクランプ(10)用のリング要素(24)。
【請求項16】
フランジ(12)が構成されるライン端部によるライン接続構成であって、請求項
2または3に記載のクランプ(10)が前記フランジ上に配置される、ライン接続構成
。
【請求項17】
前記フランジ(12)が、前記少なくとも1つの取付けタブ(26)が係合する少なくとも1つの円周凹部(48)を備える請求項
16に記載のライン接続構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のリング要素を含むクランプ、特にプロファイルクランプ(profile clamp)に関し、また、本発明は、対応するリング要素、およびそのようなクランプを用いるライン接続構成に関する。
【背景技術】
【0002】
プロファイルクランプなどのクランプは、例えば、径方向外方に向けられたフランジが装備された2つの管端部の流体密連結のために用いられる。この目的のために、フランジは互いに関して位置決めされ、プロファイルクランプは、一般には2部品のまたは多部品の締付け可能なクランプバンドを用いてフランジ上に設置される。連結部は、軸方向および径方向の保持力がフランジに作用し、プロファイルクランプの締付けの結果として固定される。この目的のために、プロファイルクランプのクランプバンドは、典型的には、フランジと表面接触するU形状またはV形状の断面を有する。
【0003】
所望の封止状態を得るために、リング形状の封止領域を含むリング要素がフランジ間に挿入されることが多く、前述の領域は、両方のフランジと軸方向の表面で接触し、封止作用はフランジの緊締(bracing)の結果として得られる。
【0004】
理想的な封止には、リング要素がフランジに対して正確に配向されることが必須である。リング要素が分離してクランプまたはフランジに固定されていない場合、クランプ、リング要素、および管が連結されるようにユーザが取り扱う必要があり、そのようなクランプの設置が難しくなる。
【0005】
クランプ上でのリング要素の位置決めを簡単にするためのいくつかの解決策が知られている。例えば、変形可能な固定クリップによりリング要素が確実にロックする態様でクランプバンドに固定されるプロファイルクランプが開示されている(特許文献1参照)。この場合、固定クリップは、リング要素と一体に構成されて、リング要素をクランプ内で径方向位置に決めすることができる。
【0006】
リング要素にスペーサを提供することが提案されており、それらのスペーサは、周辺部に分散されるように配置され、弾性的に変形可能であり、かつ、予圧下でクランプバンドの径方向内側に対接する(特許文献2参照)。したがって、リング要素は、プロファイルクランプ内で圧力嵌めの態様でクランプバンド上に保持され、工具を用いずに導入することが可能である。
【0007】
クランプバンドおよびリング形状のリング要素を含むプロファイルクランプであって、クランプバンドが2つの締付けヘッドを備え、これらの締付けヘッドが締付け要素により互いに連結されるプロファイルクランプが、開示されている(特許文献3参照)。プロファイルクランプ上のリング要素の保持を実現し、その保持がさらに回転防止をするために、リング要素は、締付け要素上に保持される、径方向外方に延在する保持タブを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許第60210142T2号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011116768A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016103687A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、クランプ上でのリング要素の位置決めおよびリング要素の回転防止がさらに改善され、また、フランジ上でのクランプの事前組付けが可能である、クランプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主な特徴は、請求項1の特徴部分に提示される。構成が請求項2から16の主題である。さらに、請求項17は、本発明によるクランプのためのリング要素を提案する。請求項18および19は、本発明によるクランプが用いられるライン接続構成に関する。
【0011】
上述の目的を達成するために、クランプ、特にクランプバンドおよびリング形状のリング要素を含むプロファイルクランプであって、クランプバンドが締付け要素により互いに連結される2つの締付けヘッドを備え、リング要素がクランプバンド内で径方向に位置決めされるプロファイルクランプの場合、本発明によれば、リング要素は、クランプバンドの内側を支持するための少なくとも1つの保持要素を備えるようにされ、前述の保持要素は、固定部分によりリング要素に対して軸方向にオフセットされ、かつ、径方向において少なくとも部分的に外方に延在し、保持要素のうちの少なくとも1つが、周方向および径方向に少なくとも部分的に延在する2つのばね部分を備え、2つのばね部分が固定部分から反対の周方向に延在する。
【0012】
したがって、本発明によれば、リング要素は、1つまたは複数の保持要素によりクランプバンドの内側に支持されるかまたはクランプバンドの内側に固定されることが、可能である。この目的のために、少なくとも1つの保持要素はまた、その固定部分により軸方向に延在し、したがって、リング要素に対して軸方向にオフセットされる。したがって、クランプ内に配置されるリング要素の場合、前述のリング要素はまた、クランプに対して軸方向に偏心するように位置する。その結果、リング要素は、クランプバンドのフランクのうちの1つの近くにまたはフランクのうちの1つに接触して配置され、このフランクには、例えばプロファイルクランプが管端部のフランジ上に緊締されるときに、前述のリング要素がいかなる場合でも押し付けられる。したがって、クランプに対するリング要素の軸方向位置は、この作業中は実質的に不変のままである。この場合、保持要素は、様々な幾何形状を有し、かつ、確実にロックする態様および/または圧力嵌めの態様でクランプバンドと相互作用することができ、前述の保持要素は、特にクランプの締付け中に弾性的に変形される。この場合、保持要素がリング要素と一体に構成されることが、有利である。
【0013】
クランプバンドは、プロファイルバンド(profile band)として設計され、かつ、径方向内方に傾斜した2つのフランクを備えることが、好ましい。クランプの締付け中、前述のフランクは、管端部のフランクと当接した状態になり、径方向の力の導入のみならず、管端部の互いに向かう軸方向の緊締をももたらす。
【0014】
有利な一実施形態では、リング要素は少なくとも1つの取付けタブを備え、この少なくとも1つの取付けタブは、リング要素から軸方向外方に延在し、また場合によりリング要素に対して径方向内方または外方にオフセットした態様で延在する。そのような取付けタブは、上述の保持タブと同様に構成され得る。取付けタブは、リング要素と一体に構成されることが好ましい。前述の取付けタブは、具体的には、リング要素の回転防止のためにフランクの凹部内に係合する機能を有する。したがって、取付けタブの空間的な範囲は、非常に大きいものである必要はない。リング要素の外側上に、したがってフランジの外側上に光学的にわずかに可視であるように配置される取付けタブにより、ユーザは、2つのフランジが互いに連結された後でも、リング要素が正しく挿入されたことを確認することができる。
【0015】
いくつかの、特に3つの取付けタブが、リング要素上に配置され、かつ、周方向においてリング要素にわたって均等に分散されることが、好ましい。分散されたいくつかの取付けタブを使用することにより、第1に、回転防止作用を向上させることが可能になり、第2に、リング要素の偏心を回避することが可能になる。取付けタブがフランジの対応する凹部内に係合する結果として、センタリングが達成される。その後、フランジが連結された後でも、対応する凹部における取付けタブを視覚的に検査することにより、中心配向が調べられ得る。さらに、取付けタブは、回転防止作用をもたらすのみならず、フランジ上での事前組付け位置におけるリング要素とクランプとの事前位置決めをももたらすことができる。これは、組付けを簡単にする。
【0016】
この目的のために、リング要素が取付けタブにより圧力嵌めの態様でライン端部に固定可能とされることが、有利に実現される。すると、取付けタブは、張力下で管端部に対接し、したがってフランジ上でのクランプの事前位置決めをもたらす。フランジ上でのクランプの事前位置決めに、工具は必要とされない。
【0017】
少なくとも1つの取付けタブは、略矩形形状の平坦な構成とされることが、好ましい。これは、丸みを付けられた縁部および/または隅部を除外するものではない。したがって、取付けタブは、製造が容易であり、また、例えば、金属薄板様の材料を基礎として製造され得るリング要素の、部分的に押抜き加工された屈曲部分として製造され得る。
【0018】
リング要素は、クランプバンド内の対応する開口部を通ってリング要素から外方に、特に径方向に延在する少なくとも1つの位置決めタブを備えることが、特に好ましい。この場合、位置決めタブは、リング要素に対接する接線に対して斜めに、つまり径方向外方にも周方向にも延在することが、好ましい。前述の位置決めタブは、この場合、特に保持タブと同じ距離だけ、リング要素に対して軸方向にオフセットされる。さらに、位置決めタブは、弾性的にまた塑性的に変形可能であり、かつ、対応する開口部に差し込まれた後で塑性変形により曲げられることが、好ましい。その結果、リング要素をクランプバンド上に係留することができ、その一方で、位置決めタブの弾性により、なおもリング要素をクランプに対してある程度動かすことができ、したがって、クランプの締付けが容易に可能となる。この目的のために、位置決めタブは、例えば、クランプバンドの締付け動作を補償するために位置決めタブに一定の弾性を与えることができる少なくとも1つのキンクを備え得る。位置決めタブは、可撓性のブリッジの近くに配置されることが好ましく、このブリッジは、クランプバンドの半体を互いに連結し、また、一般には、直径方向において締付けヘッドの反対側に配置される。この場合、ブリッジの異なる側に配置される2つの位置決めタブが設けられることが、好ましい。これは、確実な保持を実現する。この実施形態は、予め組み込まれた取付けタブの代わりとしてまたはそれに加えて使用され得る。
【0019】
好ましい構成では、保持要素のうちの少なくとも1つは、周方向および径方向に少なくとも部分的に延在する少なくとも1つのばね部分を備えるようにされる。この場合、ばね部分を含む保持要素は、ばね部分がクランプバンド内に係合することができるように、つまりクランプバンドのフランク間でクランプバンドの内側に接触することができるように、形成される。この場合、リング要素からの径方向の間隔は、位置決めばねが係合した状態で、クランプバンドに対しておおよそ径方向において中心とされる位置である所望の位置においてクランプバンドによりリング要素が保持されるように、選択される。ばね部分を含む保持要素は、具体的には、クランプバンドが締め付けられていない状態でもクランプバンドが締め付けられた状態でも保持要素がリング要素を保持することができるように、弾力性のある材料を備える。したがって、クランプバンドの締付け中、保持要素は、径方向内方に弾性的に変形される。リング要素にわたって周方向に分散されたいくつかの保持要素を使用する場合、クランプバンドに対するリング要素の中心取付けを維持することも可能である。当然ながら、このことはまた、反対に、圧力嵌めの態様でフランジに連結されるリング要素を用いると、クランプは保持要素によりフランジに対して相応に配向されることを意味する。
【0020】
ばね部分の自由端部が、クランプバンドの内側輪郭に相補的であるように形成され、かつ、クランプバンドの内側に対接することが、好ましい。このようにして、第1に、比較的大きな接触領域が得られ、第2に、保持要素は、軸方向においてもリング要素をクランプ上に固定することができる。
【0021】
好ましい一実施形態では、ばね部分は、径方向外方に向けられた少なくとも1つのバルジを備え、このバルジは、クランプバンドの内側に対接する。第1に、バルジは、リング要素とクランプバンドとの間の軸方向取付けを改善することができる。第2に、有効なばね力が非常に良好な態様で設定されるように、画定されたクランプバンドとの接触領域を得ることができる。同一の相対的な周方向位置においてすべてのばね部分に同一のバルジが設けられた場合、すべての保持要素は、様々な径方向から作用する保持要素の力の間での力平衡の結果としてリング要素のセンタリングが達成されるように、同一のばね特性を概して与えられる。
【0022】
有利には、保持要素は、2つのばね部分を備え、2つのばね部分は、いずれの場合にも、固定部分から反対の周方向に延在する。この場合、位置決めばねは、固定部分がばね部分間で中心に配置されるように、周方向において等しい長さにわたって延在することが好ましい。周方向に延在するばね部分の対応する設計を通じて、径方向のばね作用が提供される。中心に配置された固定部分の結果として、実質的に径方向の力のみが、各位置決めばねから実際のリング要素に対して絶えず与えられる。
【0023】
好ましい構成では、保持要素は、少なくとも1つのばね部分上に伸長部を備え、前述の伸長部は、締付けヘッドの内側に対接する。具体的には、この場合、締付けヘッドに隣接して配置される2つの保持要素は、そのような伸長部を含む少なくとも1つのばね部分を備え、この場合、伸長部は、締付けヘッドのうちの1つの内側に対接する。前述の伸長部は、締付けヘッド上でリング要素を支持し、したがって、リング要素とクランプバンドとの間に回転防止作用を提供する。
【0024】
さらに好ましい構成では、リング要素は、径方向部分によりリング要素から径方向外方に延在する少なくとも1つの固定フックを備え、径方向部分は、内方に曲げられた接触部分に隣接され、この接触部分は、リング要素の外側に対して少なくとも部分的に平行に延びる。前述の固定フックは、リング要素を管端部のフランジに固定するために使用されてよく、固定フックは、フランジを覆って係合し、また場合により予圧下でフランジに対接する。このようにして、リング要素、したがってクランプは、フランジ上に確実に事前位置決めされ得る。
【0025】
この場合、リング要素は、互いに平行して配置されかつ 締付け要素の領域内に配置される2つの固定フックを備えることが、好ましい。締付け要素の領域では、クランプバンドは一般に、固定フックのための十分なスペースがそこに存在するように中断され、したがって、固定フックは、クランプの締め付けを邪魔しない。
【0026】
この場合、有利には、リング要素は、互いに直径方向に対向する少なくとも2つの固定フックを備えるようにされる。具体的には、この場合、締付け要素の領域に構成された固定フックの対の反対側に、1つの固定フックが配置される。その結果、リング要素は、一般に締付け要素の反対側でクランプバンドに設けられるブリッジの形態をした関節連結部により、フランジに対して確実に位置決めされ、この関節連結部の結果として、固定フックのための十分な設置スペースを得ることができる。この場合、固定フックは、ブリッジにより互いに連結されるクランプバンドの部分間に係合するという点で、リング要素とクランプバンドとの間で回転防止安全装置としての役割を同時に果たすことができる。
【0027】
特に好ましい構成では、リング要素は封止領域を備え、この封止領域は、軸方向に延在し、かつ、円錐状に先細になる。この場合、封止領域は、実質的にリング形状とされ、かつ、フランジの内側に当接した状態となる。したがって、リング要素は、管端部間の連結部の気密度を向上させるために組み入れられた封止機能を有する。
【0028】
この場合、取付けタブが封止領域の径方向内側縁部から延出し、保持要素、また場合により固定フックがリング要素の径方向外側縁部から延出することが、特に好ましい。このようにして、フランジ上でのクランプの確実な事前位置決めの他に、クランプの締付け後の良好な封止状態を得ることが、第1に可能である。
【0029】
具体的には、保持要素は、軸方向においてリング要素の取付けタブとは異なる側に配置される。その結果、リング要素は、前述の要素が取付けタブによって保持されるように意図されているフランジ上に直接位置決めされ、クランプは、前述のフランジに対してある程度軸方向にオフセットされ、したがって締付け中に軸方向に動かされることはほとんどない。
【0030】
好ましい構成では、封止領域は、リング要素に連結されるリング形状の封止要素の形態で構成される。上記で説明された封止領域とリング要素の一体構成と比較すると、この好ましい構成は、例えばリング要素とは異なる材料から封止要素を製造することができるという利点を有する。この場合、リング要素は、言わば、管端部のフランジ上に封止要素およびクランプを位置決めするのに役立つ。
【0031】
導入部で述べられた目的はまた、リング要素が、クランプバンドの内側を支持するための少なくとも1つの保持要素を備え、前述の保持要素が、固定部分によりリング要素に対して軸方向にオフセットされ、かつ、径方向において少なくとも部分的に外方に延在する、クランプのためのリング要素によって達成される。少なくとも1つの保持要素により、リング要素は、クランプのクランプバンド上に確実に保持される。上述されたように構成されるいくつかの保持要素が設けられることも可能である。さらに、リング要素は、1つまたは複数の取付けタブ、1つまたは複数の位置決めタブ、さらに固定フックを備えることができる。
【0032】
導入部で述べられた目的はまた、フランジが構成されるライン端部によるライン接続構成によって達成され、前述のフランジ上には、上記の構成におけるクランプが配置される。クランプは、管端部またはフランジ上に事前組付けされて、第2の管端部への連結が確立されクランプが締め付けられるまで、未締付け状態またはほとんど締め付けられていない状態に保持され得ることが、好ましい。
【0033】
この場合、リング要素の少なくとも1つの取付けタブが係合する少なくとも1つの円周凹部をフランジが備えることが、特に好ましい。その結果、リング要素と対応する円周凹部との間で確実なロック連結が達成され、円周凹部は、フランジの外側上に径方向に配置されており、かつ、リング要素の回転的に固定された配向を確実とする。さらに、取付けタブは、フランジとの圧力嵌め連結を形成するために、予圧を加えられてもよい。
【0034】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲に記載の文言(phrasing)から、また、図面を参照して例示的な実施形態を以下に説明することから、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】プロファイルクランプの形態のクランプを含むフランジの立体図である。
【
図3】封止領域を含む、クランプのリング要素の図である。
【
図4】管端部のフランジ上に配置されたクランプの図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明によるクランプ10を示しており、このクランプ10は、プロファイルクランプの形態で構成され、フランジ12上に予め位置決めされかつ開放されており、つまり緊締されていない。クランプ10は、2つの締付けヘッドまたは締付けジョー16および18を含むクランプバンド14を備え、2つの締付けヘッドまたは締付けジョー16および18は、締付け要素20により互いに連結され、また、クランプバンド14の端部を曲げることによって製造される。しかし、例えばループに曲げられたクランプバンドの端部により締付けジョーが形成され、そのループの中に締付けボルトが導入するようにすることも考えられる。この場合、クランプバンドの輪郭はまた、平坦な内側から径方向内方に傾斜した2つのフランクを含む実質的にV形状の断面を有する図示された形態から比較的大きく逸脱し得る。
【0037】
クランプバンド14は、締付けヘッド16および18とは反対側のブリッジ要素22により互いに連結される2つのプロファイル半体14aおよび14bに細分化される。これにより、ブリッジ要素22は、緊締中の2つの半体14aおよび14bの相対運動を許容する継手としての役割を果たす、一定の弾性を提供する。この場合、ブリッジ要素はまた、例えばクランプバンドのフランクの領域における切欠きにより、クランプバンド14と一体に作り出されてもよい。この場合、例えば、クランプの3部品構成も可能である。
【0038】
例えばリング形状の設計のリング要素24が、クランプ10内に配置される。リング要素24は、保持要素28、取付けタブ26、位置決めタブ30、および固定フック50を備える。取付けタブ26は、
図2を参照しながら以下でさらに説明される。保持要素28は、リング要素24の外周に隣接する固定部分32を備える。固定部分32は、リング要素24から軸方向に延在する。2つの指状延長部34は、対称的に前述の固定部分から周方向に延在しており、前述の延長部は、一部の区間で径方向外側に開きまた一部の区間では径方向内側に開いた湾曲した形状を有して、ばね部分29を形成する。全部で3つの保持要素28が、リング要素24上に配置され、かつ、クランプバンド14の内側輪郭36に係合する。このようにして、リング要素24とクランプバンド14は、互いに対称的に配向される。クランプバンド14の緊締中、ばね部分29を含む保持要素28は、弾性的に圧縮し、その際にそれらの対称的な相対位置を確実にすることができる。
【0039】
位置決めタブ30は同様に、リング要素24上に配置され、かつ、径方向外方に延在する。位置決めタブの2つの端部は
図1に示すように、クランプバンド14の開口部38を通過して、クランプバンドの外側上で曲げられている。これにより、リング要素24とクランプ10との間の連結が可能となり、前述の連結は、クランプ10の取扱いを大幅に改善する。
【0040】
オプションとして、リング要素24の内周上に配置された径方向内方に突出する指部を用いることもさらに可能である。前述の指部は、弾性的に変形可能であり、特に予圧下においてフランジ12上に配置されてもよい。その結果、フランジ12上でのリング要素24の圧力嵌め保持がさらにもたらされる。圧力嵌め保持はまた、必要に応じて、取付けタブ26によっても達成される。
【0041】
図2は、リング要素24のやや解放された図を示す。ここで、リング要素24は金属薄板のような工作物を基礎として製造できることが明らかである。保持要素28、取付けタブ26、および位置決めタブ30は、リング要素24と一体に構成され、かつ、押抜き加工および成形により製造することができる。
【0042】
例として、保持要素28は、それらの固定部分32から周方向において外方に延在し、いずれの場合にも、前述のセクションにS形状を有する。このようにして、関連する固定部分32よりもさらに径方向外方に突出する2つのバルジ44が形成される。したがって、リング要素24を挿入したとき、またはクランプバンド14をリング要素24上に設置したときに、バルジ44とクランプバンド14の内側輪郭36との間に明確な表面接触を生じさせることが可能である。この明確な表面接触は、クランプバンド14上のすべての位置決めばね28の概して同一のばね挙動を許容し、クランプ10の開状態および閉状態におけるリング要素34のセンタリングをもたらす。
【0043】
取付けタブ26が、径方向内方にオフセットされ、径方向においてリング要素24の外周と内周との間の略中央に配置される。例として、リング要素2からもっぱら軸方向に延在する比較的小さな矩形の取付けタブ26が示されている。
【0044】
管端部のフランジには円周凹部48を設けることが可能であり、この円周凹部48の位置は、取付けタブ26の位置と一致する。したがって、リング要素24は、取付けタブ26が凹部48内に到達し、その結果回転防止作用をもたらすように、フランジ12上に設置される。
【0045】
位置決めタブ30は、保持要素28と同じ程度または同様の範囲で、リング要素24から軸方向に延在している。さらに、位置決めタブ30は、クランプバンド14の開口部38を通って突出するように、相対的に外側に向かって径方向に突出する。位置決めタブ30が開口部38に差し込まれると、クランプバンド14への確実なロック連結が確立されるように、前述の位置決めタブの端部分46を曲げることができる。角度を付けられた形態により、位置決めタブ30が内側輪郭36とリング要素24の外周との間隔を補償することが可能であり、前述の間隔は、弾性変形によるクランプ10の緊締のために可変である。
【0046】
次いで、
図3は、統合された封止領域25を含むリング要素24を示し、この封止領域25は、リング要素24の軸方向に延在して円錐状に先細になる延長部を形成する。この場合、封止領域25の勾配は、前述の封止領域が前述のフランジに面当接した状態となるように、フランジの内側の勾配にほぼ相当する。これは、
図4に示されている。
【0047】
この場合、取付けタブ26は、封止領域25の軸方向縁部から延出するが、保持要素28および固定フック50は、リング要素24の反対側の軸方向縁部に配置され、反対の軸方向に延在する。その結果、取付けタブ26は、封止領域25と共にリング要素24をフランジ上に事前位置決めし、一方で、クランプ10は、保持要素28および固定フック50によりリング要素24に対してあらかじめ位置決めされており、実質的に、締め付けられた後にクランプ10が想定する位置に既に対応している。
【0048】
組み立てられた状態では締付けヘッド18に隣接して配置される保持要素28において、締付けヘッドに面するばね部分29は、いずれの場合にも伸張部60を備え、この伸長部60は、それぞれの締付けヘッドの内側に当接することができ、したがって回転防止作用をもたらす。この場合、伸長部60は、2つの直線部分を実質的に備え、直線部分のうちの一方は、ばね部分に隣接し、かつ、もう一方の直線部分に移行し、このもう一方の直線部分は、自由端部を有し、また、例えば
図4に示されるように、最終的には締付けヘッドに当接する。したがって、前述の伸長部60は、リング要素24とクランプバンド14との間に回転防止作用をもたらす。
【0049】
本発明は、上記実施形態のうちの1つに限定されるものではなく、様々な方法で修正され得る。
【0050】
特許請求の範囲、本明細書、および図面から明らかになる、構造上の詳細、空間的な配置、および方法ステップを含むすべての特徴および利点は、個別にも種々の組み合わせにおいても本発明にとって必要不可欠であり得る。
【符号の説明】
【0051】
10 クランプ
12 フランジ
14 クランプバンド
14a、14b クランプバンド半体
16 締付けヘッド
18 締付けヘッド
20 締付け要素
22 ブリッジ要素
24 リング要素
25 封止領域
26 取付けタブ
28 保持要素
29 ばね部分
30 位置決めタブ
32 固定部分
34 指状拡張部
36 内側輪郭
38 開口部
44 バルジ
46 端部分
48 凹部
50 固定フック
52 径方向部分
54 接触部分
60 伸長部