(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】常閉式制動装置およびそれを使用する回転作業台
(51)【国際特許分類】
F16D 55/40 20060101AFI20220728BHJP
B23Q 5/58 20060101ALI20220728BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20220728BHJP
B23Q 5/54 20060101ALI20220728BHJP
B23Q 1/28 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
F16D55/40 A
B23Q5/58 F
B23Q1/52
B23Q5/54 A
B23Q1/28 C
(21)【出願番号】P 2021143136
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳鵬文
(72)【発明者】
【氏名】林建宇
(72)【発明者】
【氏名】黄立文
【審査官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6285402(JP,B2)
【文献】特開2008-114306(JP,A)
【文献】特許第4732734(JP,B2)
【文献】特開平7-243459(JP,A)
【文献】特公昭61-53565(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/40
B23Q 5/58
B23Q 1/52
B23Q 5/54
B23Q 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、ディスクパック、制動リング、加圧リングおよび弾性部材を備え、
前記筐体は格納溝を有し、
前記ディスクパックは前記筐体の前記格納溝に格納され、第一固定ディスク、第二固定ディスクおよび回転ディスクを有し、前記回転ディスクは前記第一固定ディスクと前記第二固定ディスクとの間に配置され、
前記制動リングは前記筐体の前記格納溝内に移動可能に配置されて前記筐体との間が第一チャンバーになり、
前記制動リングは制動部を有し、
前記制動リングが制動位置に据えられる際、前記制動リングの前記制動部は前記第一固定ディスクを押さえ、前記回転ディスクは前記第一固定ディスクと前記第二固定ディスクとの間に固定され、
前記制動リングがロック解除位置に据えられる際、前記制動リングの前記制動部は第一固定ディスクを解放し、前記回転ディスクは前記第一固定ディスクおよび前記第二固定ディスクに対して回転することができ、
前記加圧リングは前記筐体の前記格納溝内に装着され、一部分が前記制動リングに当接して前記制動リングとの間が第二チャンバーになり、
前記弾性部材は前記加圧リングに配置され、前記加圧リングを前記制動リングの方向へ推進し、
前記第一チャンバーのみに流体が流れ込む際、前記制動リングは前記流体の作用によって前記ロック解除位置に維持され、
前記第二チャンバーのみに流体が流れ込む際、前記制動リングは前記流体の作用によって前記制動位置に維持され、前記加圧リングは前記流体の作用によって前記弾性部材を圧縮し、
前記加圧リングを作動させる前記流体の作用方向は前記加圧リングを作動させる前記弾性部材の作用方向と逆であり、
前記第一チャンバーおよび前記第二チャンバーに前記流体が流れ込む前に、前記加圧リングは前記弾性部材の作用力によって前記制動リングを押し、前記制動リングを前記制動位置に維持することを特徴とする、
常閉式制動装置。
【請求項2】
前記制動リングの前記制動部は制動面を有し、前記制動リングが前記制動位置に据えられる際、前記制動リングは前記制動部の前記制動面によって前記第一固定ディスクに当接し、前記制動面の径方向長さが前記第一固定ディスク、前記第二固定ディスクおよび前記回転ディスクの重なっている部位を超えないことを特徴とする請求項1に記載の常閉式制動装置。
【請求項3】
前記制動リングの前記制動部は制動面を有し、前記制動リングが前記制動位置に据えられる際、前記制動リングは前記制動部の前記制動面によって前記第一固定ディスクに当接し、前記制動リングは前記制動面に隣接する内環面を有し、前記制動面と前記内環面との間が第一夾角になり、前記第一夾角は90度以下であることを特徴とする請求項1に記載の常閉式制動装置。
【請求項4】
前記第一固定ディスクは受圧部位を有し、前記制動リングが前記制動位置に据えられる際、前記制動リングは前記制動部の前記制動面によって前記第一固定ディスクの前記受圧部位に当接し、前記第一固定ディスクの前記受圧部位と前記制動リングの前記内環面との間が第二夾角になり、前記第二夾角は前記第一夾角より小さいか、それに等しいことを特徴とする請求項3に記載の常閉式制動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つの前記常閉式制動装置と、
回転軸と、を備え、
前記回転軸は前記筐体の前記格納溝内に差し込まれて回転可能に配置され、外周面が前記回転ディスクを固定することによって前記回転ディスクとともに同調作動することができることを特徴とする、
回転作業台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置に関し、詳しくは常閉式制動装置およびそれを使用する回転作業台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工作業が完了した後、主軸が突然回転することを防止するために、一組のブレーキの制動力によって静止中の主軸を安定させる状態を保つことが一般的である。突然の停電や管路破裂が発生した場合、従来のブレーキは主軸に制動力を生じることができなくなるため、機器の損壊が発生しやすいだけでなく、現場の作業員の安全を守ることができなくなる。
【0003】
特許文献1により開示された常閉式油圧ブレーキ装置は、オフ状態または待機状態になる際、常閉式油圧ブレーキ装置が複数のスプリングの弾力によってピストンを押さえて主軸をロックし、主軸の回転を抑制する。主軸のロックを解除する際には、油圧オイルによってピストンを逆方向に動かしてブレーキ装置を緩めれば主軸が通常とおり作動する。しかし特許文献1では、複数のスプリングによる制動力が限られるため、重切削加工および高送り加工に適用することが難しい。
【0004】
図1および
図2に示すように、従来の常閉式ブレーキは、ブレーキディスク1、制動ピストン2、複数の圧縮スプリング3およびロック解除ピストン4を備える。複数の圧縮スプリング3はブレーキディスク1に軸方向推力を生じ、ブレーキディスク1を常時閉鎖状態に維持する。制動ピストン2は流体によってブレーキディスク1に軸方向推力を生じる。従って、
図1に示すように、ブレーキディスク1は制動ピストン2および複数の圧縮スプリング3の作動によって回転軸5に制動効果を生じる。ロック解除ピストン4が流体によってブレーキディスク1に逆推力を生じ、ブレーキディスク1に圧縮スプリング3が生じた軸方向推力に反発する際、
図2に示すように、ブレーキディスク1は回転軸5のロックを解除する。
前記の従来技術において、制動ピストン2に作用する流体の動力と、ブレーキディスク1に圧縮スプリング3が生じる弾力とは方向の同じ作用力である。このため、制動ピストン2に作用する流体の動力が大きければ大きいほど、圧縮スプリング3の生じる弾力が小さくなるため、ブレーキディスク1よって回転軸5に生じる制動効果に影響を与えるだけでなく、重切削加工および高送り加工に適用することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は二重の増圧効果および常閉制動効果を達成し、操作上の安全性を向上させることができ、重切削加工および高送り加工に適用できる常閉式制動装置を主な目的とする。
【0007】
本発明は前記常閉式制動装置を使用する回転作業台を別の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための常閉式制動装置は、筐体、ディスクパック、制動リング、加圧リングおよび弾性部材を備える。筐体は格納溝を有する。ディスクパックは筐体の格納溝に格納され、第一固定ディスク、第二固定ディスクおよび回転ディスクを有する。回転ディスクは第一固定ディスクと第二固定ディスクとの間に配置される。制動リングは筐体の格納溝内に移動可能に配置されて筐体との間が第一チャンバーになる。制動リングは制動部を有する。制動リングが制動位置に据えられる際、制動リングの制動部は第一固定ディスクを押さえるため、回転ディスクは第一固定ディスクと第二固定ディスクとの間に固定される。制動リングがロック解除位置に据えられる際、制動リングの制動部は第一固定ディスクを解放するため、回転ディスクは第一固定ディスクおよび第二固定ディスクに対して回転することができる。加圧リングは筐体の格納溝内に装着され、一部分が制動リングに当接して制動リングとの間が第二チャンバーになる。弾性部材は加圧リングに配置され、弾力によって加圧リングを制動リングの方向へ推進する。
【0009】
上述した構造の特徴により、第一チャンバーに流体を流入させれば、制動リングは流体の作用によってロック解除位置に維持される。第二チャンバーに流体を流入させれば、制動リングは流体の作用によって制動位置に維持される。加圧リングは流体の作用によって弾性部材を圧縮する。加圧リングを作動させる流体の作用方向は加圧リングを作動させる弾性部材の作用方向と逆である。第二チャンバーは密閉状態であるため、パスカルの原理(Pascal’s principle)に基づいて圧縮された弾性部材の生じたエネルギーは流体を介して制動リングに作用し、二重の増圧効果を生じさせる。第一チャンバーおよび第二チャンバーに流体を流入させる前に加圧リングは弾性部材の弾力によって制動リングを制動位置に維持する、即ち常閉制動効果を達成する。言い換えれば、本発明による常閉式制動装置は第一チャンバー、第二チャンバー、制動リングおよび加圧リングの組み合わせを採用するため、第一チャンバーおよび第二チャンバーに流体が別々に流入すれば、制動リングは制御されたうえで回転ディスクにロック解除効果および制動効果を生じることができる。また、第一チャンバーおよび第二チャンバーに流体が流入せず、効力を失う際、弾性部材の生じた一部分の制動力によって制動リングを制動位置に維持して常閉制動効果を達成し、操作上の安全性を向上させることができる。
【0010】
比較的好ましい場合、制動リングは内環面を有し、内環面に密封リングおよび背面リングが嵌まり込む。背面リングは密封リングに隣接するように配置される。加圧リングは制動リングに相対する側面に第一凸状縁部および第二凸状縁部を有する。第二凸状縁部は第一凸状縁部に隣接するように配置される。加圧リングは第一凸状縁部が制動リングに当接し、第二凸状縁部が密封リングおよび背面リングに当接する。密封リングは制動リングと加圧リングの間の密封効果を増大させる。作動中の制動リングは背面リングによってバランスを良好に保つため、制動リングが歪んで制動効果を低下させることを避けることができる。
【0011】
比較的好ましい場合、制動リングの制動部は制動面を有する。制動リングが制動位置に据えられる際、制動リングは制動部の制動面によって第一固定ディスクに当接し、制動面の径方向長さが第一固定ディスク、第二固定ディスクおよび回転ディスクの重なっている部位を超えないため、回転ディスクまたは第一固定ディスクと第二固定ディスクとの間の環状スペーサーは制動リングに押されることが発生しない。
【0012】
比較的好ましい場合、制動リングは制動面に隣接する内環面を有し、制動面と内環面との間が第一夾角になる。第一夾角は90度以下であるため、ロック解除状態下で第一固定ディスクを原状に戻し、使用寿命を延長することができる。
【0013】
比較的好ましい場合、第一固定ディスクは受圧部位を有する。制動リングが制動位置に据えられる際、第一固定ディスクの受圧部位と制動リングの内環面との間に形成される第二夾角は第一夾角より小さいか、それに等しいため、良好な支持効果を生じることができる。
【0014】
比較的好ましい場合、弾性部材は弾性シャーシおよび複数の弾性体を有する。複数の弾性体は筐体の格納溝内に加圧リングに隣接するように配置され、かつ加圧リングと弾性シャーシとの間に位置付けられることで加圧リングを制動リングの方向へ推進することができる。
【0015】
上述した課題を解決するため、前記常閉式制動装置を使用する回転作業台は回転軸を有する。回転軸は筐体の格納溝内に差し込まれて回転可能に配置され、外周面によって回転ディスクを固定する。制動リングが制動位置に据えられる際、回転ディスクは第一固定ディスクと第二固定ディスクとの間に挟まれて安定し、回転軸に制動効果を生じさせる。制動リングがロック解除位置に据えられる際、回転ディスクは回転軸とともに同調作動する。
【0016】
本発明による常閉式制動装置およびそれを使用する回転作業台の詳細な構造、特徴、組み立てまたは使用方法について、以下の実施形態の詳細な説明を通して明確にする。なお、以下の詳細な説明および本発明により開示された実施形態は本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の請求範囲を限定できないことは、本発明にかかわる領域において常識がある者ならば理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の常閉式ブレーキにおいてブレーキディスクが回転軸に制動効果を生じる状態を示す断面図である。
【
図2】従来の常閉式ブレーキにおいてブレーキディスクが回転軸にロック解除効果を生じる状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による回転作業台とスイングスピンドルヘッドを組み合わせて使用する状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による回転作業台を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による回転作業台の常閉式制動装置を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による回転作業台を一端から見た平面図である。
【
図7】
図6中の7-7線に沿った断面図、即ち第二チャンバーに第二流体が流れ込む前の状態を示す断面図である。
【
図8】
図6中の8-8線に沿った断面図、即ち第二チャンバーに第二流体が流れ込む前の状態を示す断面図である。
【
図9】
図6中の7-7線に沿った断面図、即ち第二チャンバーに第二流体が流れ込む状態を示す断面図である。
【
図10】
図6中の8-8線に沿った断面図、即ち第一チャンバーに第一流体が流れ込む状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態による常閉式制動装置において制動リングおよびディスクパックが結合した構造を示す断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態による常閉式制動装置において制動リングとディスクパックとの間に形成された夾角を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による常閉式制動装置およびそれを使用する回転作業台を図面に基づいて説明する。なお、明細書および図面において、方向性用語は図面中の方向に基づいて表現される。同じ符号は同じ部品または類似した部品の構造の特徴を示す。
【0019】
(一実施形態)
図3および
図4に示すように、本発明の一実施形態による常閉式制動装置20は回転軸12と結合して回転作業台10を構成する。回転軸12はスイングスピンドルヘッド14に装着され、スイングスピンドルヘッド14を揺らすことができる。
図4および
図5に示すように、本発明の一実施形態による常閉式制動装置20は筐体30、ディスクパック40、制動リング50、加圧リング60および弾性部材70を備える。
【0020】
筐体30は格納溝31および内側凸状辺縁部32を有する。格納溝31は断面が円形である。内側凸状辺縁部32は格納溝31の壁面から径方向に突出して形成される。
図4および
図7に示すように、回転軸12は格納溝31内に回転可能に装着され、内側凸状辺縁部32に囲まれるように配置される。筐体30は径方向に沿って格納溝31に繋がる第一流路33(
図8参照)、径方向に沿って格納溝31に繋がる第二流路34(
図7参照)、第一コネクター16および第二第一コネクター18を有する。第一コネクター16は第一流体22を注入するために第一流路33の入口端に装着される。第二コネクター18は第二流体24を注入するために第二流路34の入口端に装着される。第一流体22および第二流体24は油圧オイルに限らず、気体であってもよい。本実施形態において、第一流体22および第二流体24は油圧オイルである。
【0021】
ディスクパック40は筐体30の格納溝31に格納され、第一固定ディスク41、第二固定ディスク42、環状スペーサー43および二つの重なる回転ディスク44を有する。
図5および
図7に示すように、第一固定ディスク41、第二固定ディスク42および環状スペーサー43は複数のねじ45によって筐体30の内側凸状辺縁部32に固定される。第一固定ディスク41より第二固定ディスク42のほうが筐体30の内側凸状辺縁部32に近い。環状スペーサー43は第一固定ディスク41と第二固定ディスク42との間に位置付けられ、それらを分離する。
図7に示すように、二つの回転ディスク44は外周辺部が第一固定ディスク41と第二固定ディスク42との間に位置付けられ、内周縁部が複数のねじ46によって回転軸12の外側凸状辺縁部122に固定されるため、二つの回転ディスク44は回転軸12とともに回転できる。
【0022】
制動リング50は筐体30の格納溝31内に前後に移動可能に配置されて筐体30との間が第一チャンバー54になる。
図8に示すように、第一チャンバー54は第一流路33に繋がり、前後の両端が筐体30と制動リング50によって閉鎖される。また制動リング50はディスクパック40に隣接し、かつディスクパック40に向かう側面に突出して形成された制動部52を有する。
図9に示すように、制動リング50が制動位置P1に据えられる際、制動リング50は制動部52が第一固定ディスク41を押さえて弾性的に変形させることによって回転ディスク44を第一固定ディスク41と第二固定ディスク42との間に挟んで固定する。
図10に示すように、制動リング50がロック解除位置P2に据えられる際、制動リング50の制動部52は第一固定ディスク41を解放し、元の状態に戻すため、回転ディスク44は第一固定ディスク41および第二固定ディスク42に対して回転軸12とともに回転することができる。
【0023】
加圧リング60は筐体30の格納溝31内かつ制動リング50に接するように配置され、制動リング50に向かう側面に突出して形成された第一凸状縁部61およびそれに接する第二凸状縁部62を有する。
図7に示すように、加圧リング60は第一凸状縁部61が制動リング50に当接して制動リング50との間が第二チャンバー63になる。第二チャンバー63は外側が第二流路34に繋がり、内側が第一凸状縁部61に閉鎖される。
図7に示すように、加圧リング60は第二凸状縁部62が制動リング50の内環面51に当接する。制動リング50は内環面51に嵌まり込む密封リング55およびそれに接する背面リング56を有する。密封リング55は加圧リング60と制動リング50との間の密封効果を増加させる。背面リング56は作動中の制動リング50のバランスを良好に保ち、制動リング50が歪んだことが原因で制動効果に影響を与えることを抑制することができる。
【0024】
弾性部材70は筐体30の格納溝31内に配置され、環状の弾性シャーシ71、複数の弾性体73(例えば圧縮スプリング)および複数のピン74を有する。弾性シャーシ71は加圧リング60に接するように筐体30内に固定され、加圧リング60に向かう側面に複数の皿穴72(
図5および
図7参照)を有する。
加圧リング60は弾性シャーシ71に向かう側面に複数の凹状孔64(
図7参照)を有する。複数の弾性体73は一つずつ凹状孔64と皿穴72との間に配置される。複数の弾性体73は一端が弾性シャーシ71に当接して弾性シャーシ71の支えになり、他端が加圧リング60に当接し、弾力によって加圧リング60を制動リング50の方向へ推進する。複数のピン74は一つずつ弾性体73を貫通して皿穴72に締め付けられ、複数の弾性体73に支持効果を生じる。
【0025】
(式1)
Ft=F1+F2
【0026】
常閉式制動装置が稼働する際、第二流体24は第二コネクター18によって第二流路34を流れて第二チャンバー64に流れ込み、
図9に示すように制動リング50を制動位置P1に維持すると同時に加圧リング60に複数の弾性体73を圧縮させる。一方、第二チャンバー63は密閉状態であり、加圧リング70を作動させる第二流体24の作用方向は加圧リング70を作動させる複数の弾性体73の作用方向と逆であるため、パスカルの原理(Pascal’s principle)に基づいて複数の圧縮された弾性体73の生じたエネルギーは第二流体24を介して制動リング50に作用し、二重の増圧効果を生じさせる。つまり、第二流体24が第二チャンバー63に流れ込めば、二重の増圧効果は式1によって表示される。
式1において、Ftは制動リング50の生じた総制動力である。F1は制動リング50に第二流体24が生じた推力である。F2はすべての圧縮された弾性体73の生じたエネルギーである。加圧リング60に作用した第二流体24の作用力が大きいければ大きいほど、圧縮された弾性体73の生じたエネルギーが大きくなるため、制動リング50の生じた総制動力も大きくなる。
【0027】
回転軸12を正常に作動させる際、第二チャンバー63に流れ込む第二流体24を遮断し、続いて第一コネクター16によって第一流体22を第一流路33に流入させ、第一チャンバー54に送り込めば、
図10に示すように、第一流体22は制動リング50を押し、制動リング50によって加圧リング60を動かす。複数の弾性体73は依然として加圧リング60に弾力を生じる。加圧リング60に作用した弾性体73の弾力より、制動リング50に作用した第一流体22の作用力のほうが大きい場合、
図10に示すように、制動リング50はロック解除位置P2に維持され、第一固定ディスク41と第二固定ディスク42との間に位置する回転ディスク44を解放するため、回転軸12は再び正常に作動することができる。
【0028】
特殊な状況(例えば突然の停電や管路破裂)が発生したことが原因で常閉式制動装置が効力を失う際、第二流体24は制動リング50に作用力を生じることができなくても、複数の弾性体73は依然として加圧リング60を介して制動リング50に作用力を生じ、
図7に示すように制動リング50を制動位置P1に維持して静止状態の回転軸を安定させることができる。言い換えれば、正常な状況下で制動リング50は第二流体24の作用力および圧縮された弾性体73の作用力によって回転ディスク44に十分な制動力を生じる。第二流体24の作用力が消えても、複数の弾性体73の生じた一部分の制動力によって制動リング50を制動位置P1(
図7参照)に維持して常閉制動効果を達成し、操作上の安全性を向上させることができる。
【0029】
図11に示すように、制動リング50の制動部52は第一固定ディスク41を押さえるための制動面53を有する。制動面53は径方向長さLが第一固定ディスク41、第二固定ディスク42および回転ディスク44の重なっている部位を超えない。制動面53の径方向長さLが第一固定ディスク41、第二固定ディスク42および回転ディスク44の重なっている部位を超えた場合、回転ディスク44を圧迫して損壊させるだけでなく、環状スペーサー43を圧迫して制動効果を低下させる可能性がある。
図12に示すように、制動面53は内環面51に隣接し、内環面51との間が90度以下の第一夾角θ1である。第一夾角θ1が90度または90度以上である場合、制動面53は第一固定ディスク41を強く押し付けてS字型に変形させ、第一固定ディスク41の二箇所に折り曲がりを形成するため、第一固定ディスク41を戻の状態に戻すことが難しいだけでなく、ロック解除状態下で回転ディスク44の作動に支障をきたすことが発生する。つまり、第一夾角θ1が90度以下であれば、第一夾角θ1は第一固定ディスク41の変形角に近いため、第一固定ディスク41は一箇所しか折り曲がらない。上述した構造の特徴により、第一固定ディスク41が折り曲がって寿命が短くなるという問題を効果的に改善することができる。
第一固定ディスク41は制動面53に当接する受圧部位412を有する。第一固定ディスク41の受圧部位412と制動リング50の内環面51は第二夾角θ2をなす。第二夾角θ2は第一夾角θ1より小さいか、それに等しいため、同様に良好な支持効果を生じることができ、かつロック解除状態下で第一固定ディスク41を原状に戻し、第一固定ディスク41の使用寿命を延長することができる。
【0030】
上述をまとめると、本発明による常閉式制動装置20は第一チャンバー54、第二チャンバー63、制動リング50および加圧リング60の組み合わせを採用するため、第一チャンバー54および第二チャンバー63に第一流体22および第二流体24が別々に流入すれば、制動リング50は制御されたうえで回転ディスク44にロック解除効果および制動効果を生じることができる。
また、第一チャンバー54に第一流体22が流入する前、かつ第二チャンバー63に第二流体24が流入する前(或いは第二流体24の効力を失う場合)に、弾性体73の生じた一部分の制動力によって制動リング50を制動位置P1に維持して常閉制動効果を達成し、操作上の安全性を向上させることができる。
つまり、本発明による常閉式制動装置20は重切削加工および高送り加工に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 ブレーキディスク
2 制動ピストン
3 圧縮スプリング
4 ロック解除ピストン
10 回転作業台
12 回転軸
122 外側凸状辺縁部
14 スイングスピンドルヘッド
16 第一コネクター
18 第二コネクター
20 常閉式制動装置
22 第一流体
24 第二流体
30 筐体
31 格納溝
32 内側凸状辺縁部
33 第一流路
34 第二流路
40 ディスクパック
41 第一固定ディスク
412 受圧部位
42 第二固定ディスク
43 環状スペーサー
44 回転ディスク
45、46 ねじ
50 制動リング
51 内環面
52 制動部
53 制動面
54 第一チャンバー
55 密封リング
56 背面リング
60 加圧リング
61 第一凸状縁部
62 第二凸状縁部
63 第二チャンバー
64 凹状孔
70 弾性部材
71 弾性シャーシ
72 皿穴
73 弾性体
74 ピン
L 制動面の径方向長さ
P1 制動位置
P2 ロック解除位置
θ1 第一夾角
θ2 第二夾角
【要約】 (修正有)
【課題】常閉式制動装置およびそれを使用する回転作業台を提供する。
【解決手段】常閉式制動装置は筐体、回転ディスク、制動リング、加圧リングおよび弾性部材を備える。回転ディスク、制動リングおよび加圧リングは筐体内に配置され、制動リング筐体との間が第一チャンバーになり、加圧リングと制動リングとの間が第二チャンバーになる。第一チャンバーのみに流体が流れ込む際、制動リングは流体の作用によって常時閉鎖状態から回転ディスクを解放する。第二チャンバーのみに流体が流れ込む際、制動リングは流体の作用によって回転ディスクを常時閉鎖状態に維持する。加圧リングは流体の作用によって弾性部材を圧縮し、圧縮した弾性部材の生じたエネルギーを制動リングに作用させ、制動リングに二重の増圧効果を達成させる。流体の効力を失う際、制動リングは弾性部材によって回転ディスクに制動効果を生じ、操作上の安全性を確保できる。
【選択図】
図5