(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】タイヤ加硫システム、加硫済みタイヤの製造方法及びタイヤ搬送装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20220728BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
(21)【出願番号】P 2021501197
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006259
(87)【国際公開番号】W WO2020170354
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 智行
(72)【発明者】
【氏名】福田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】日根野 義克
(72)【発明者】
【氏名】奥富 直人
(72)【発明者】
【氏名】初鹿野 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】福井 毅
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058251(JP,A)
【文献】特開2016-055578(JP,A)
【文献】特開2016-036921(JP,A)
【文献】特開2014-172236(JP,A)
【文献】特開2004-074465(JP,A)
【文献】特開2014-162068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを加硫して加硫済みタイヤを製造するタイヤ加硫システムであって、
上金型と、
前記上金型と共に金型を構成する下金型と、
前記上金型を支持する上支持部と、
前記下金型を支持する下支持部と、
前記上支持部に設けられて、加硫済みタイヤを吊り下げ可能なタイヤ吊り下げ部と、
前記上支持部と前記下支持部とを上下方向に相対移動させて、前記上金型と前記下金型とが上下方向に離間された開放位置と、前記上金型と前記下金型とが閉じた閉塞位置と、に切り替え可能な昇降機構と、
前記開放位置で前記加硫済みタイヤを前記タイヤ吊り下げ部によって吊り下げた状態で、前記生タイヤを前記下金型に搬入し、前記下金型に前記生タイヤが搬入された状態で、前記タイヤ吊り下げ部によって吊り下げられた前記加硫済みタイヤを受け取って搬出するタイヤ搬送装置と、
を備え
、
前記タイヤ搬送装置は、
環状に配置された複数の把持部によって前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの各ビードを把持可能な把持機構と、
前記生タイヤを上方から把持する姿勢と、前記加硫済みタイヤを下方から受け取る姿勢との間で前記把持機構を上下反転させる回転機構と、
を備えるタイヤ加硫システム。
【請求項2】
前記タイヤ搬送装置は、
前記複数の把持部を前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの径方向にスライド可能に支持する径方向調整部と、
前記把持機構を移動させる移動機構と、
を
更に備え、
前記把持部は、
前記径方向調整部から突出して延びる基部と、
前記基部の先端に設けられ、前記ビードに対してタイヤ幅方向内側から係合可能な係合爪と、
前記係合爪よりも前記基部の基端に近い側に配置されて、前記タイヤの幅方向外側面を支持可能な外側面支持部と、を備える請求項1に記載のタイヤ加硫システム。
【請求項3】
前記加硫済みタイヤのポストキュアインフレーションを行うPCI装置と、
前記加硫済みタイヤを前記PCI装置に受け渡す第一位置と、ポストキュアインフレーションを行う第二位置と、の間で前記PCI装置を移動させるPCI移動部と、
加硫処理を行う直前の前記生タイヤが載置される生タイヤ置台部と、
を備え、
前記タイヤ搬送装置は、
第一位置で前記加硫済みタイヤを前記PCI装置に受け渡して、前記生タイヤ置台部に載置されている生タイヤを受け取り前記金型に搬入する請求項
1又は2に記載のタイヤ加硫システム。
【請求項4】
前記PCI移動部は、
ポストキュアインフレーションが完了した前記PCI装置を第二位置から第一位置へ移動させる請求項
3に記載のタイヤ加硫システム。
【請求項5】
前記タイヤ搬送装置は、
前記金型が開放される前に、第二位置の前記生タイヤ置台部に載置されている生タイヤを受け取り待機する請求項
3又は4に記載のタイヤ加硫システム。
【請求項6】
前記PCI移動部と前記PCI装置と前記生タイヤ置台部とからなる二組のPCIラインを備え、
前記タイヤ搬送装置は、
前記二組のPCIラインの生タイヤ置台部から前記生タイヤを交互に搬出させるとともに、前記二組のPCIラインの前記PCI装置に対して前記加硫済みタイヤを交互に搬入させる請求項
3から5の何れか一項に記載のタイヤ加硫システム。
【請求項7】
上金型と下金型とで構成された金型に生タイヤを搬入して加硫を行うことで加硫済みタイヤを製造する加硫済みタイヤ製造方法であって、
前記金型を閉じて生タイヤを加硫する加硫工程と、
加硫済みタイヤと前記上金型とを前記下金型に対して相対的に上方に離間させて前記金型を開放するとともに前記加硫済みタイヤを吊り下げる開放工程と、
前記加硫済みタイヤを吊り下げた状態で、
把持機構によって上方から把持した別の生タイヤを前記下金型に搬入する搬入工程と、
前記下金型に別の生タイヤが搬入された状態で、
前記把持機構を上下反転させて、吊り下げられた前記加硫済みタイヤを
前記把持機構によって下方から受け取り搬出する搬出工程と、
を含む加硫済みタイヤの製造方法。
【請求項8】
加硫処理を行った前記加硫済みタイヤを、第一位置で待機するPCI装置まで搬送するタイヤ搬送装着工程と、
前記加硫済みタイヤが装着された前記PCI装置を第一位置から第二位置へ移動させる第一PCI装置移動工程と、
前記PCI装置により第二位置で前記加硫済みタイヤのポストキュアインフレーションを行うPCI工程と、
を含む請求項
7に記載の加硫済みタイヤの製造方法。
【請求項9】
ポストキュアインフレーションが完了した前記PCI装置を第二位置から第一位置へ移動させる第二PCI装置移動工程と、
第一位置で前記PCI装置から加硫済みタイヤを搬出するタイヤ搬出工程と、
を含む請求項
8に記載の加硫済みタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記PCI工程と並行して前記ポストキュアインフレーションにより排出される前記加硫済みタイヤの廃熱を利用して生タイヤを加温する加温工程を含み、
前記金型が開放される前に、加温された前記生タイヤを受け取り待機する請求項
8又は9に記載の加硫済みタイヤの製造方法。
【請求項11】
それぞれ異なる第二位置でポストキュアインフレーションを行うとともに、それぞれ共通する第一位置で前記加硫済みタイヤの搬入及び搬出を行う第一PCI装置と第二PCI装置とを前記PCI装置として用いて、
前記第一PCI装置によるポストキュアインフレーションと、前記第二PCI装置によるポストキュアインフレーションと、を交互に行う請求項
8から10の何れか一項に記載の加硫済みタイヤの製造方法。
【請求項12】
環状に配置された複数の把持部によって生タイヤ及び加硫済みタイヤの各ビードを把持可能な把持機構と、
前記複数の把持部を前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの径方向に移動させる径方向調整部と、
前記把持機構を移動させる移動機構と、
前記生タイヤを上方から把持する姿勢と、前記加硫済みタイヤを下方から受け取る姿勢との間で前記把持機構を上下反転させる回転機構と、
を備え、
前記把持部は、
前記径方向調整部から突出して延びる基部と、
前記基部の先端に設けられ、前記ビードに対してタイヤ幅方向内側から係合可能な係合爪と、
前記係合爪よりも前記基部の基端に近い側に配置されて、前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの幅方向外側面を支持可能な外側面支持部と、を備えるタイヤ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫システム、加硫済みタイヤの製造方法及びタイヤ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加硫金型の交換作業能率を高めるために、金型開閉ステーションの一方側に、タイヤを出し入れするタイヤ移載装置を配置し、金型開閉ステーションの他方側に、金型を交換する金型出入装置を配置したタイヤ加硫システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなタイヤ加硫システムでは、タイヤ移載装置によって生タイヤの搬入及び加硫済みタイヤの搬出の両方を行っている。具体的には、加硫済みタイヤを金型から搬出して置台に置いた後に、生タイヤを置台から受け取って金型に搬入している。すなわち金型を開放しているうちに、タイヤの搬入出の為にタイヤ移載装置を金型と外部との間で二往復する必要がある。そのため、生タイヤの搬入から加硫済みタイヤの搬出までの時間が長くなるという課題がある。そして、金型を開放している時間が長くなるため、金型からの放熱によるエネルギー損失が大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、金型交換の作業効率が低下することを抑制しつつ、金型の開放時間を短縮してエネルギー損失を低減することが可能な加硫システム、加硫済みタイヤの製造方法及びタイヤ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様によれば、タイヤ加硫システムは、生タイヤを加硫して加硫済みタイヤを製造する。このタイヤ加硫システムは、上金型と、下金型と、上支持部と、下支持部と、タイヤ吊り下げ部と、昇降機構と、タイヤ搬送装置と、を備える。下金型は、前記上金型と共に金型を構成する。上支持部は、前記上金型を支持する。下支持部は、前記下金型を支持する。タイヤ吊り下げ部は、前記上支持部に設けられて、加硫済みタイヤを吊り下げ可能になっている。昇降機構は、前記上支持部と前記下支持部とを上下方向に相対移動させて、前記上金型と前記下金型とが上下方向に離間された開放位置と、前記上金型と前記下金型とが閉じた閉塞位置と、に切り替え可能になっている。タイヤ搬送装置は、前記開放位置で前記加硫済みタイヤを前記タイヤ吊り下げ部によって吊り下げた状態で、前記生タイヤを前記下金型に搬入する。タイヤ搬送装置は、前記下金型に前記生タイヤが搬入された状態で、前記タイヤ吊り下げ部によって吊り下げられた前記加硫済みタイヤを受け取って搬出する。前記タイヤ搬送装置は、環状に配置された複数の把持部によって前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの各ビードを把持可能な把持機構と、前記生タイヤを上方から把持する姿勢と、前記加硫済みタイヤを下方から受け取る姿勢との間で前記把持機構を上下反転させる回転機構と、を備える。
上記第一態様では、金型を開放する際に、加硫済みタイヤを上金型と共に上方へ移動させて、吊り下げた状態にすることができる。さらに、この加硫済みタイヤを吊り下げた状態で、タイヤ搬送装置によって、下金型に生タイヤを搬入させることができる。また、タイヤ搬送装置は、下金型に生タイヤが搬入された状態で、タイヤ吊り下げ部によって吊り下げられた加硫済みタイヤを受け取って搬出することができる。このようにすることで、金型が開放されている間に、タイヤ搬送装置が生タイヤを置台に取りに行ったり、加硫済みタイヤを置台に置きに行ったりする必要が無い。そのため、一つのタイヤ搬送装置を用いて金型が開放されている時間を短縮することができる。また、一つのタイヤ搬送装置を用いることができるため、金型の一方側にのみタイヤ搬送装置を配置すればよいため、金型の他方側にスペースを確保することができる。
したがって、金型交換の作業効率が低下することを抑制しつつ、金型の開放時間を短縮してエネルギー損失を低減することが可能となる。
更に、タイヤ搬送装置が回転機構を備えているため、生タイヤを下金型に搬入した後に、回転機構によって把持機構を上下反転させるだけで、加硫済みタイヤを受け取る姿勢にすることができる。これにより、タイヤ搬送装置は、下金型に生タイヤを搬入した後に、迅速に加硫済みタイヤを受け取ることができる。したがって、金型の開放されている時間を更に短縮することができる。
【0007】
本発明の第二態様によれば、第一態様に係るタイヤ搬送装置は、径方向調整部と、移動機構と、を更に備えていてもよい。把持機構は、環状に配置された複数の把持部によって前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの各ビードを把持可能になっている。径方向調整部は、前記複数の把持部を前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの径方向に移動させる。移動機構は、前記把持機構を移動させる。前記把持部は、基部と、係合爪と、外側面支持部と、を備える。基部は、前記径方向調整部から突出して延びる。係合爪は、前記基部の先端に設けられている。係合爪は、前記ビードに対してタイヤ幅方向内側から係合可能になっている。外側面支持部は、前記係合爪よりも前記基部の基端に近い側に配置されている。外側面支持部は、前記タイヤの幅方向外側面を支持可能になっている。
第二態様では、把持機構の把持部が係合爪を有しているため、生タイヤを上方から把持して搬送する際に、把持部によって把持された生タイヤの姿勢を安定させることができる。第二態様では、更に、把持機構の把持部が外側面支持部を備えている。そのため、吊り下げ部に吊り下げられた加硫済みタイヤを把持機構によって下方から受け取り把持する際に、加硫済みタイヤの下方の外側面を外側面支持部によって下方から支持することができる。したがって、生タイヤの搬入及び加硫済みタイヤの搬出を一つの把持機構でより安定して行うことが可能となる。
【0009】
本発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係るタイヤ加硫システムは、PCI装置と、PCI移動部と、生タイヤ置台部と、を備えていてもよい。PCI装置は、前記加硫済みタイヤのポストキュアインフレーションを行う。PCI移動部は、前記加硫済みタイヤを前記PCI装置に受け渡す第一位置と、ポストキュアインフレーションを行う第二位置と、の間で前記PCI装置を移動させる。生タイヤ置台部は、加硫処理を行う直前の前記生タイヤが載置される。前記タイヤ搬送装置は、第一位置で前記加硫済みタイヤを前記PCI装置に受け渡して、前記生タイヤ置台部に載置されている生タイヤを受け取り前記金型に搬入する。
このように構成することで、第一位置で加硫済みタイヤをPCI装置に受け渡し、PCI移動部によって第二位置にPCI装置を移動させてからポストキュアインフレーションを行うことができる。したがって、第一位置でのPCI装置への加硫済みタイヤの受け渡しを円滑に行うことができる。
【0010】
本発明の第四態様によれば、第三態様に係るPCI移動部は、ポストキュアインフレーションが完了した前記PCI装置を第二位置から第一位置へ移動させるようにしてもよい。
このように構成することで、タイヤ搬送装置によって、第一位置でポストキュアインフレーションを完了した加硫済みタイヤを第一位置から円滑に搬出することができる。
【0011】
本発明の第五態様によれば、第三又は第四態様に係るタイヤ搬送装置は、前記金型が開放される前に、第二位置の前記生タイヤ置台部に載置されている生タイヤを受け取り待機するようにしてもよい。
このように構成することで、金型が開放されたタイミングで、生タイヤを迅速に金型に搬入することができる。
【0012】
本発明の第六態様によれば、第三から第五態様のいずれか一つの態様に係るタイヤ加硫システムは、前記PCI移動部と前記PCI装置と前記生タイヤ置台部とからなる二組のPCIラインを備えていてもよい。この場合、前記タイヤ搬送装置は、前記二組のPCIラインの生タイヤ置台部から前記生タイヤを交互に搬出させるとともに、前記二組のPCIラインの前記PCI装置に対して前記加硫済みタイヤを交互に搬入させるようにしてもよい。
このようにすることで、ポストキュアインフレーションを二組のPCIラインで並行して行うことができる。そのため、ポストキュアインフレーションの待ち時間が発生することを抑制できる。
【0013】
本発明の第七態様によれば、タイヤ製造方法は、上金型と下金型とで構成された金型に生タイヤを搬入して加硫を行うことで加硫済みタイヤを製造する。タイヤ製造方法は、加硫工程と、開放工程と、搬入工程と、搬出工程と、を含む。加硫工程では、前記金型を閉じて生タイヤを加硫する。開放工程では、加硫済みタイヤと前記上金型とを前記下金型に対して相対的に上方に離間させて前記金型を開放するとともに前記加硫済みタイヤを吊り下げる。搬入工程では、前記加硫済みタイヤを吊り下げた状態で、把持機構によって上方から把持した別の生タイヤを前記下金型に搬入する。搬出工程では、前記下金型に別の生タイヤが搬入された状態で、前記把持機構を上下反転させて、吊り下げられた前記加硫済みタイヤを前記把持機構によって下方から受け取り搬出する。
【0014】
本発明の第八態様によれば、第七態様に係るタイヤ製造方法は、タイヤ搬送装着工程と、第一PCI装置移動工程と、PCI工程と、を含むようにしてもよい。タイヤ搬送装着工程では、加硫処理を行った前記加硫済みタイヤを、第一位置で待機するPCI装置まで搬送する。第一PCI装置移動工程では、前記加硫済みタイヤが装着された前記PCI装置を第一位置から第二位置へ移動させる。PCI工程では、前記PCI装置により第二位置で前記加硫済みタイヤのポストキュアインフレーションを行う。
このようにすることで、第一位置で加硫済みタイヤをPCI装置に受け渡し、PCI移動部によって第二位置にPCI装置を移動させてからポストキュアインフレーションを行うことができる。したがって、第一位置におけるPCI装置への加硫済みタイヤの受け渡しを円滑に行うことができる。
【0015】
本発明の第九態様によれば、第八態様に係る加硫済みタイヤの製造方法では、第二PCI装置移動工程と、タイヤ搬出工程と、を含むようにしてもよい。第二PCI装置移動工程では、ポストキュアインフレーションが完了した前記PCI装置を第二位置から第一位置へ移動させる。タイヤ搬出工程では、第一位置で前記PCI装置から加硫済みタイヤを搬出する。
このようにすることで、第一位置でポストキュアインフレーションを完了した加硫済みタイヤを第一位置から円滑に搬出することができる。
【0016】
本発明の第十態様によれば、第八又は第九態様に係る加硫済みタイヤの製造方法では、加温工程を含んでいてもよい。加温工程では、前記PCI工程と並行して前記ポストキュアインフレーションにより排出される前記加硫済みタイヤの廃熱を利用して生タイヤを加温する。この加硫済みタイヤの製造方法では、前記金型が開放される前に、加温された前記生タイヤを受け取り待機する。
このようにすることで、PCI工程中に生タイヤを加温できる。したがって、PCI工程の時間を有効利用して、例えば、季節に応じて生タイヤの温度がばらつくことを抑制できる。
【0017】
本発明の第十一態様によれば、第八から第十態様の何れか一つの態様に係る加硫済みタイヤの製造方法では、それぞれ異なる第二位置でポストキュアインフレーションを行うとともに、それぞれ共通する第一位置で前記加硫済みタイヤの受け渡し及び搬出を行う第一PCI装置と第二PCI装置とを前記PCI装置として用いてもよい。この加硫済みタイヤの製造方法では、更に、前記第一PCI装置によるポストキュアインフレーションと、前記第二PCI装置によるポストキュアインフレーションと、を交互に行うようにしてもよい。
第一PCI装置と第二PCI装置とで並行してポストキュアインフレーションを行うことができる。したがって、ポストキュアインフレーションの待ち時間が発生することを抑制することができる。
【0018】
本発明の第十二態様によれば、タイヤ搬送装置は、把持機構と、径方向調整部と、移動機構と、回転機構と、を備える。把持機構は、環状に配置された複数の把持部によって前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの各ビードを把持可能になっている。径方向調整部は、前記複数の把持部を前記生タイヤ及び前記加硫済みタイヤの径方向に移動させる。移動機構は、前記把持機構を移動させる。前記把持部は、基部と、係合爪と、外側面支持部と、を備える。基部は、前記径方向調整部から突出して延びる。係合爪は、前記基部の先端に設けられている。係合爪は、前記ビードに対してタイヤ幅方向内側から係合可能になっている。外側面支持部は、前記係合爪よりも前記基部の基端に近い側に配置されている。外側面支持部は、前記タイヤの幅方向外側面を支持可能になっている。回転機構は、前記生タイヤを上方から把持する姿勢と、前記加硫済みタイヤを下方から受け取る姿勢との間で前記把持機構を上下反転させる。
【発明の効果】
【0019】
上記タイヤ加硫システム、加硫済みタイヤの製造方法及びタイヤ搬送装置によれば、金型交換の作業効率が低下することを抑制しつつ、金型の開放時間を短縮してエネルギー損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態におけるタイヤ加硫システムの全体構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるタイヤ搬送装置の概略構成を示す図である。
【
図4】この発明の実施形態におけるハンド部の平面図である。
【
図5】この発明の実施形態におけるハンド部の側面図である。
【
図6】この発明の実施形態における加硫済みタイヤの製造方法のフローチャートである。
【
図7】
図6の加硫処理と並行して行うPCI処理のフローチャートである。
【
図8】
図7の第一PCI装置で行うPCI処理のサブルーチンのフローチャートである。
【
図9】
図7の第二PCI装置で行うPCI処理のサブルーチンのフローチャートである。
【
図10】この発明の実施形態におけるハンド部で下金型に生タイヤを搬入する工程を示す側面図である。
【
図11】この発明の実施形態におけるハンド部で上金型から加硫済みタイヤを搬出する工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫システム及び加硫済みタイヤの製造方法について説明する。この実施形態のタイヤ加硫システム及び加硫済みタイヤの製造方法は、未加硫の生タイヤを加硫して加硫済みタイヤを製造する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態におけるタイヤ加硫システムの全体構成を示す図である。
図2は、
図1のII方向から見た図である。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施形態では、二つのタイヤ加硫システム100を一体に併設している場合を例示している。これら二つのタイヤ加硫システム100は、加硫機10を除き境界線Kを基準にして対称に配置されている。そのため、以下の説明においては、二つのタイヤ加硫システム100のうち一方のみを説明する。
【0023】
タイヤ加硫システム100は、加硫機10と、PCI装置20と、着脱部30と、PCI移動部50と、生タイヤ置台部60と、タイヤ搬入・搬出台70と、タイヤ搬送装置80と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、加硫機10は、上下に開閉可能な金型12を有している。加硫機10は、この金型12に搬入された生タイヤを加熱圧縮することで、加硫済みタイヤを成形する。この実施形態で例示では、コンテナタイプの金型12を用いている。金型12は、上下に分離可能な上金型11Aと、下金型11Bと、を備えている。
【0025】
加硫機10は、ベース部(下支持部)13と、ボルスタープレート(上支持部)14と、シリンダー(昇降機構)15と、を備えている。ベース部13は、下金型11Bを下方から支持する。ボルスタープレート14は、上金型11Aを上方から支持する。シリンダー15は、ボルスタープレート14を昇降させる。つまり、シリンダー15によってボルスタープレート14を昇降させることで、上金型11Aを昇降可能になっている。なお、
図2では、金型12を交換するために、ボルスタープレート14と上金型11Aとが離間している状態を示している。
【0026】
この加硫機10の金型12を開放すると、加硫済みタイヤのトレッド部を成形するトレッド型(図示せず)が下金型11Bに残る。この加硫機10の金型12を開放すると、更に、加硫済みタイヤの上側サイドウォールを成形する上側のサイドウォール型(図示せず)がボルスタープレート14と共に上昇する。このボルスタープレート14の中央には、加硫済みタイヤT1を吊り下げ可能な吊り下げ部14A(
図10参照;後述する)が設けられている。この吊り下げ部14Aによって、金型12を開放する際、加硫済みタイヤT1をボルスタープレート14と共に上昇させることができる。なお、
図10、
図11においては、図示都合上、トレッド型やサイドウォール型の図示を省略している。
【0027】
この実施形態における吊り下げ部14Aは、加硫済みタイヤT1の軸線方向で加硫済みタイヤT1の上側のビードと下側のビードとの間まで下降する。そして、吊り下げ部14Aは、その内部に格納された係止片14Aaを揺動させて展開する。これにより係止片14Aaがビード径よりも広がる。そのため、吊り下げ部14Aを上昇させることで、係止片14Aaが加硫済みタイヤT1の上側のビード周りに引っ掛かり、加硫済みタイヤT1を吊り下げることができる。なお、加硫済みタイヤT1を上金型11Aと共に上昇可能な構成であれば、吊り下げ部14Aの構成は如何なる構成であってもよい。
【0028】
PCI装置20は、加硫済みタイヤT1のポストキュアインフレーション(以下、単にPCI処理と称する)を行う。具体的には、加硫後に高温状態となっている加硫済みタイヤT1の内部に圧力を加えた状態で冷却する。この実施形態におけるPCI装置20は、
図2に示すように、加硫済みタイヤT1の軸線O1が上下方向に延びる姿勢でPCI処理を行う。この実施形態では、一つのタイヤ加硫システム100に対して二つのPCI装置20が設けられている。これらPCI装置20は、それぞれ独立して設けられ、加硫済みタイヤT1の内部に圧縮空気を供給するための装置(図示せず)を有している。PCI装置20は、下リム21と、上リム(上蓋)22とを備え、加硫済みタイヤT1の上下の各ビードをそれぞれ閉塞する。加硫済みタイヤT1を着脱する際には、上リム22が取り外される。これらPCI装置20は、それぞれPCI移動部50によって水平方向へ移動可能とされている。
【0029】
着脱部30は、上リム22をPCI装置20から着脱する。この実施形態では、一つのタイヤ加硫システム100に対して一つの着脱部30が設けられている。着脱部30は、上リム22を着脱する第一位置P1(
図1参照)に配置されたPCI装置20に対して上リム22の着脱を行う。この着脱部30は、PCI装置20から加硫済みタイヤT1を搬出する際に取り外した上リム22を、加硫機10から離れる方向D1に移動させて保持する。一方で着脱部30は、PCI装置20へ加硫済みタイヤT1が取り付けられると、上リム22を、方向D1とは反対に、加硫機10に近づく方向D2に移動させてPCI装置20へ装着する。これにより、PCI装置20は、加硫済みタイヤT1をPCI処理可能な状態となる。
【0030】
PCI移動部50は、着脱部30によって上リム22を取り付ける第一位置P1と、PCI処理を行う第二位置P2との間でPCI装置20を移動させる。ここで、この実施形態では、上リム22を取り付ける第一位置P1で、PCI装置20に対して加硫済みタイヤT1が装着されるとともに、上リム22が取り付けられる。
【0031】
PCI移動部50は、加硫済みタイヤT1のPCI処理が完了したPCI装置20を、第二位置P2から第一位置P1へ移動させる。ここで、上述した着脱部30は、第一位置P1へ移動したPCI装置20から上リム22を取り外す。この実施形態におけるPCI移動部50は、ロッドレスシリンダ等のアクチュエータを用いることができる。このPCI移動部50は、PCI装置20を第一位置P1と第二位置P2との間で案内するチューブ51を備えている。
【0032】
生タイヤ置台部60は、第二位置P2に移動したPCI装置20の上方に配置される。言い換えれば、生タイヤ置台部60の下方のスペースで、上述したPCI処理が行われる。生タイヤ置台部60は、加硫処理を行う直前の生タイヤT2が載置可能に形成されている。この実施形態における生タイヤ置台部60には、軸線O2が上下方向に延びる姿勢で生タイヤT2が載置される。
【0033】
この実施形態における生タイヤ置台部60は、上方に向かって開口する上部開口61を有した箱状に形成されている。この生タイヤ置台部60は、脚部62によって下方から支持されている。この実施形態の脚部62は、第二位置P2に配置されたPCI装置20を囲む箱状に形成され、第一位置P1に近い側に開口部63を有している。この開口部63を介して、PCI装置20が第一位置P1と第二位置P2との間を移動する。
【0034】
この実施形態における生タイヤ置台部60では、その下方に配置されたPCI装置20によるPCI処理の廃熱が、生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2に伝達するように構成されている。これにより、タイヤ加硫システム100の設置場所の室温等が低い場合でも、生タイヤT2の温度が低くなりすぎることを抑制できる。
【0035】
図1に示すように、一つのタイヤ加硫システム100には、二組のPCIラインL1,L2が設けられている。これらPCIラインL1,L2は、それぞれ一つのPCI装置20と、一つのPCI移動部50と、一つの生タイヤ置台部60とで構成される。二組のPCIラインL1,L2の備えるそれぞれの生タイヤ置台部60は、
図1の平面視において、タイヤ搬送装置80を中心とした周方向で、着脱部30の位置(言い換えれば、第一位置P1)を基準にして、互いに反対側に配置されている。この実施形態では、PCIラインL1が、境界線Kと平行に延び、PCIラインL2が、境界線Kと交差する方向に延びて、平面視でL字状に配置されている場合を例示している。
【0036】
タイヤ搬入・搬出台70は、タイヤ加硫システム100に搬入される生タイヤT2及び、タイヤ加硫システム100から搬出される加硫済みタイヤT1をそれぞれ一時的に載置可能に形成されている。このタイヤ搬入・搬出台70は、タイヤ加硫システム100内で、境界線Kの延びる方向で加硫機10から最も遠い位置に配置されている。この実施形態における二つのタイヤ加硫システム100のタイヤ搬入・搬出台70は、一体に形成されている。
【0037】
このタイヤ搬入・搬出台70は、生タイヤ置台部60の載置面60aよりも上方に、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1を載置可能な載置面70aを有している。この載置面70aは、平面視で境界線Kと垂直な方向に延びており、加硫済みタイヤ載置部70bと、生タイヤ載置部70cとが、載置面70aの延びる方向に間隔をあけて二つずつ設けられている。なお、載置面70aの延びる方向で、生タイヤ載置部70cが加硫済みタイヤ載置部70bよりも外側に配置される場合を例示しているが、この構成に限られない。
この実施形態におけるタイヤ搬入・搬出台70の下方のスペースには、上述した着脱部30が配置されている。
【0038】
タイヤ搬送装置80は、生タイヤ置台部60に配置された生タイヤT2を加硫機10に搬入するとともに、加硫機10で加硫処理を行った加硫済みタイヤT1を搬出する。具体的には、タイヤ搬送装置80は、加硫機10から搬出された加硫済みタイヤT1を第一位置P1でPCI装置20に受け渡す。更に、タイヤ搬送装置80は、第二位置P2で生タイヤ置台部60に載置されている生タイヤT2を受け取り加硫機10に搬入する。この実施形態におけるタイヤ搬送装置80は、いわゆるロボットアームから構成されている。
【0039】
タイヤ搬送装置80は、着脱部30によって上リム22が取り外されたPCI装置20からPCI処理が完了した加硫済みタイヤT1を取り外して、この加硫済みタイヤT1をタイヤ搬入・搬出台70の加硫済みタイヤ載置部70bに載置する。
【0040】
タイヤ搬送装置80は、PCI装置20に加硫済みタイヤT1を受け渡した後、新たな生タイヤT2をPCIラインL1又はPCIラインL2の生タイヤ置台部60に搬送する。ここで、新たな生タイヤT2は、タイヤ搬入・搬出台70の生タイヤ載置部70cに対して、タイヤ加硫システム100外部から、逐次補充される。その一方で、タイヤ搬入・搬出台70の加硫済みタイヤ載置部70bに載置された加硫済みタイヤT1は、タイヤ加硫システム100の外部へ、逐次搬出される。
【0041】
この実施形態のタイヤ加硫システム100は、一つのタイヤ搬送装置80に対して、二組のPCIラインL1,L2を備えた構成になっている。そのため、タイヤ搬送装置80は、二組のPCIラインL1,L2の二つの生タイヤ置台部60から生タイヤT2を交互に搬出させるとともに、二組のPCIラインL1,L2の二つのPCI装置20に対して加硫済みタイヤT1を交互に搬入させるようになっている。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態におけるタイヤ搬送装置の概略構成を示す図である。
この実施形態で例示するタイヤ搬送装置80は、一般的なロボットアームと同様の構成を備えている。
図3に示すように、タイヤ搬送装置80は、ベース部81と、アーム部82と、ハンド部83と、を備えている。
【0043】
アーム部82は、ベース部81に支持され、第一軸JO1から第六軸JO6回りにそれぞれ回動又は揺動可能な第一関節部J1から第六関節部J6を有している。アーム部82は、複数のアクチュエータ(図示せず)により第一関節部J1から第六関節部J6をそれぞれ動作させることで、ハンド部83を移動可能であるとともに、ハンド部83を様々な姿勢に保持することが可能になっている。また、アーム部82とハンド部83との間の第六関節部J6(回転機構)は、第六軸JO6周りにハンド部83を回動させて、少なくとも上下反転させることが可能となっている。なお、アーム部82が第一軸JO1から第六軸JO6の六軸を有する場合を一例に説明したが、六軸以上であればよい。
【0044】
上述した加硫機10、第一位置P1及び第二位置P2は、
図1に示す一つのタイヤ加硫システム100において、それぞれタイヤ搬送装置80のベース部81を中心とした周方向に並んで配置されている。
【0045】
図4は、この発明の実施形態におけるハンド部の平面図である。
図5は、この発明の実施形態におけるハンド部の側面図である。
図3から
図5に示すように、ハンド部83は、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1の各ビードを把持可能に構成されている。ハンド部83は、把持機構84と、径方向調整部85と、移動機構86と、を備えている。なお、ハンド部83には、把持対象となる加硫済みタイヤT1や生タイヤT2を検出する検出装置(図示せず)を設けてもよい。
【0046】
把持機構84は、環状に配置された複数の把持部87を備えている。把持機構84は、これら複数の把持部87によって、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1の各ビードを内周側から把持可能に構成されている。
【0047】
図5に示すように、把持部87は、基部88と、係合爪89と、外側面支持部90と、を備えている。
基部88は、径方向調整部85から突出して延びている。具体的には、基部88は、径方向調整部85から把持機構84の中心軸線O3に沿って同一方向(
図5では下方)に突出している。この実施形態における基部88は、上下方向に延びる平板状(言い換えれば、帯状)に形成されている。
図4に示す平面視において、これら基部88の幅方向の中心は、それぞれ中心軸線O3を中心とする同一仮想円上に配置されている。そして、
図4の平面視において、これら基部88は、上記仮想円の接線方向に延びている。
【0048】
図5に示すように、係合爪89は、基部88の先端に設けられている。係合爪89は、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1のビードに対して係合可能に形成されている。係合爪89は、タイヤ幅方向にそれぞれ配置された一対のビードの何れか一方に対して、タイヤ幅方向内側から係合可能とされる。この実施形態における係合爪89は、基部88に対して傾斜するように形成されている。具体的には、係合爪89は、中心軸線O3の延びる方向で、基部88(言い換えれば、移動機構86)から離れるにしたがって、それぞれ中心軸線O3を中心とした径方向外側に配置されるように傾斜している。
【0049】
外側面支持部90は、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1の幅方向外側面(言い換えれば、サイドウォールを含む部分)を支持する。外側面支持部90は、係合爪89よりも基部88の基端に近い側に配置されている。外側面支持部90は、基部88から中心軸線O3を中心とした径方向の外側に向かって突出している。外側面支持部90は、その先端に傾斜部91を備えている。傾斜部91は、先端に向かうにしたがって、中心軸線O3方向で移動機構86に近づくように傾斜している。
【0050】
この実施形態における外側面支持部90は、基部88と同等の幅寸法を有した平板状に形成されている。この実施形態では、ハンド部83を、係合爪89が最も上方に配置される姿勢とした場合(
図5のハンド部83を上下反転させた姿勢の場合)、外側面支持部90は、加硫済みタイヤT1の下側の幅方向外側面を下方から支持可能となっている(
図11参照)。この際、基部88は、ビードの径方向内側に挿入された状態となる。
【0051】
径方向調整部85は、複数の把持部87を生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1の径方向にスライド可能に支持する。
図4に示すように、径方向調整部85は、第一リング部材85Aと、複数のスライドブロック85Bと、を備えている。
第一リング部材85Aは、中心軸線O3を中心としたリング状に形成されている。この第一リング部材85Aは、中心軸線O3を中心とした径方向にスライドブロック85Bをスライド自在に支持している。なお、
図5に示す一例では、第一リング部材85Aに形成された凹溝によってスライドブロック85Bをスライド自在にガイドしている(
図5参照)。
【0052】
複数のスライドブロック85Bは、中心軸線O3を中心とした径方向に延びる平面視長方形に形成されている。これらスライドブロック85Bの径方向内側の端部から上述した基部88が延びている。これらスライドブロック85Bには、それぞれ中心軸線O3方向で第一リング部材85Aとは反対側に突出するカムフォロア部85Cを備えている。
【0053】
移動機構86は、把持機構84を移動させる。具体的には、移動機構86は、中心軸線O3を中心とした径方向に把持機構84を変位させる。
図4、
図5に示すように、移動機構86は、第二リング部材86Aと、複数のローラ部86Bと、アクチュエータ86Cと、を備えている。
【0054】
第二リング部材86Aは、上述した第一リング部材85Aよりも大径なリング状に形成されている。この第二リング部材86Aは、上述したカムフォロア部85Cを案内する複数のスライド孔86hを備えている。この実施形態におけるスライド孔86hは、中心軸線O3回りの周方向で、一方から他方に向かうほど径方向外側に配置されるように延びている。この実施形態におけるスライド孔86hは、径方向内側が僅かに凹となる弧状に延びている。
【0055】
ローラ部86Bは、第二リング部材86Aから中心軸線O3方向で第一リング部材85A側に突出するように設けられている。これらローラ部86Bは、中心軸線O3方向に延びる中心軸回りに回転可能に形成されている。これらローラ部86Bは、それぞれ第一リング部材85Aの外周縁を、中心軸線O3回りの回転を許容しつつ、第二リング部材86Aに対して中心軸線O3方向への相対変位を規制している。
【0056】
アクチュエータ86Cは、第一リング部材85Aに対して第二リング部材86Aを、中心軸線O3回りに相対回転させる。アクチュエータ86Cは、例えば、油圧シリンダーやエアシリンダー等からなる。アクチュエータ86Cの長さ方向の両端部のうち一端部が、第一リング部材85Aに接続され、他端部が第二リング部材86Aに接続されている。
【0057】
すなわち、上述した構成を備えるハンド部83によれば、アクチュエータ86Cを伸縮させることで、第二リング部材86Aに対して第一リング部材85Aを中心軸線O3回りに相対回転させることができる。このように第二リング部材86Aに対して第一リング部材85Aを相対回転させることで、カムフォロア部85Cがスライド孔86hに沿って移動する。これにより、中心軸線O3を中心とした径方向にスライドブロック85Bが移動して、中心軸線O3を中心とした径方向に把持部87が移動する。
【0058】
把持機構84によって生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1を上方から把持する際には、例えば、把持部87の係合爪89を中心軸線O3方向で一対のビードの間に配置させて、把持部87を径方向外側に移動させればよい。このようにすることで、基部88がビードの内周に当接する状態となる。これにより、ハンド部83を上昇させたときに係合爪89がビードの内周に係合し、生タイヤT2及び加硫済みタイヤT1を持ち上げて搬送することが可能となる。
【0059】
その一方で、把持機構84によって加硫済みタイヤT1を下方から受け取る際には、例えば、ビードの径方向内側に係合爪89を挿入させて、外側面支持部90の上に加硫済みタイヤT1の下側の幅方向外側面を当接させる。そして、把持部87を径方向外側に移動させて基部88をビードの内周縁に当接させるようにすればよい。これにより、加硫済みタイヤT1を下方から支持して搬送することができる。
【0060】
また、把持機構84によって加硫済みタイヤT1を下方から支持した状態で、第六軸JO6回りにハンド部83を上下反転させれば、加硫済みタイヤT1を上方から把持した状態にすることができる。なお、加硫済みタイヤT1を把持機構84によって下方から支持する場合について説明したが、生タイヤT2を搬送する際に、把持機構84によって下方から支持するようにしてもよい。
【0061】
(加硫システムの動作)
この実施形態のタイヤ加硫システム100は、上述した構成を備えている。次に、この実施形態におけるタイヤ加硫システム100の動作である加硫済みタイヤ製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0062】
この実施形態におけるタイヤ加硫システム100の動作は、制御装置(図示せず)により自動制御されている。この加硫済みタイヤ製造方法の説明では、加硫機10による加硫処理が終了して加硫機10の金型を開放した状態から開始しているが、この開始位置に限られない。この加硫済みタイヤ製造方法の説明では、更に、二組のタイヤ加硫システム100のうち一方のタイヤ加硫システム100の動作のみを説明する。これら二組のタイヤ加硫システム100は、例えば、同時刻に同じ工程を行ったり、消費電力のピークが大きい工程を、互いにずらして行ったりしてもよい。
【0063】
図6は、この発明の実施形態における加硫済みタイヤの製造方法のフローチャートである。
図7は、
図6の加硫処理と並行して行うPCI処理のフローチャートである。
図8は、
図7の第一PCI装置で行うPCI処理のサブルーチンのフローチャートである。
図9は、
図7の第二PCI装置で行うPCI処理のサブルーチンのフローチャートである。
図10は、この発明の実施形態におけるハンド部で下金型に生タイヤを搬入する工程を示す側面図である。
図11は、この発明の実施形態におけるハンド部で上金型から加硫済みタイヤを搬出する工程を示す側面図である。
【0064】
まず、加硫機10の金型が開放される直前に、次に加硫処理を行う生タイヤT2が、タイヤ搬送装置80によって、加硫機10の近傍で待機している。
【0065】
この状態から、
図6に示すように、生タイヤT2を下金型11Bへ搬入する工程(ステップS01)を行う。この工程では、まず、加硫機10の金型12を開放する。この際、
図10に示すように、上金型11Aと共に、吊り下げ部14Aによって係止された加硫済みタイヤT1が、上方へ移動して下金型11Bから離間する。次いで、加硫済みタイヤT1と下金型11Bとの間に、タイヤ搬送装置80によって生タイヤT2を配置する。この際、ハンド部83は、生タイヤT2を上方から把持した状態となっている。ここで、生タイヤT2の中心と、下金型11Bの中心との位置合わせが行われる。その後、タイヤ搬送装置80によって生タイヤT2を下降させて、生タイヤT2を下金型11Bの内部へ搬入する。そして、ハンド部83による生タイヤT2の把持を解除して、ハンド部83を上昇させる。
【0066】
次に、加硫済みタイヤT1を加硫機10から搬出する工程(ステップS02)を行う。この工程では、まず、ハンド部83の姿勢を上下反転させる。そして、
図11に示すように、加硫済みタイヤT1のビード内周側に把持機構84を挿入する。次いで、吊り下げ部14Aによる把持を解除する。これにより、把持機構84の外側面支持部90が加硫済みタイヤT1の幅方向外側面を下方から支持した状態となる。そして、把持部87の基部88がビードに接するように把持部87の径方向位置を調整する。その後、加硫済みタイヤT1を加硫機10の外部へ搬出する。なお、ハンド部83の姿勢を上下反転させるのは、加硫機10の内部で行ってもよいし、加硫機10の外部で行ってもよい。
【0067】
次に、金型12を閉塞する工程(ステップS03)を行う。これには、上金型11Aを下降させる。
その後、生タイヤT2を加硫処理する工程(ステップS04;加硫工程)を行う。これには、例えば、生タイヤT2の内部に予め挿入されているブラダ(図示せず)を膨らませて、ヒータや高温蒸気等を用いて生タイヤT2を加圧及び加熱する。
そして、加硫処理が完了すると、金型12を開放する工程(ステップS05)を行う。この金型12を開放する工程では、ブラダ(図示せず)を萎ませて、吊り下げ部14Aにより金型12内部の加硫済みタイヤT1を係止させる。そして、ボルスタープレート14を上昇させて、上金型11Aと共に加硫済みタイヤT1を、下金型11Bから上方へ離間させる。
【0068】
ここで、加硫機10による金型を閉塞する工程(ステップS03)以降の工程(ステップS03からステップS05)は、金型12から取り出した加硫済みタイヤT1のPCI処理と並行して行われる。
【0069】
図7に示すように、タイヤ搬送装置80は、加硫機10から搬出された加硫済みタイヤT1を第一位置P1へ搬送する(ステップS11)。この際、タイヤ搬送装置80は、ハンド部83を上下反転させて、加硫済みタイヤT1をPCI装置20に上方から受け渡す準備をする。
【0070】
ここで、第一位置P1には、PCIラインL1,L2の何れか一方のPCI装置20が待機している。以下の説明において、PCIラインL1のPCI装置20を第一PCI装置20A、PCIラインL2のPCI装置20を第二PCI装置20Bと称する。
【0071】
この実施形態では、第一PCI装置20Aへの受け渡しと、第二PCI装置20Bへの受け渡しとが、交互に行われる。
第一位置P1に待機しているPCI装置20が第一PCI装置20Aである場合(ステップS12でYes)は、第一PCI装置20AによるPCI処理を行い(ステップS13)、
図6の加硫処理のメインフローに戻る。
【0072】
一方で、第一位置P1に待機しているPCI装置20が第二PCI装置20Bである場合は、第二PCI装置20BによるPCI処理を行い(ステップS14)、
図6の加硫処理のメインフローに戻る。
【0073】
図8に示すように、第一PCI装置20AによるPCI処理では、まず、タイヤ搬送装置80によって、タイヤ搬入・搬出台70から生タイヤ置台部60に生タイヤT2を搬送して載置する(ステップS20)。この際、同時並行でタイヤ搬送装置80により第一PCI装置20Aに上リム22を取り付ける(ステップS21;タイヤ搬送装着工程)。そして、第一PCI装置20Aを第一位置P1から第二位置P2へ移動させる(ステップS22;第一PCI装置移動工程)。なお、ステップS11とステップS21との組み合わせ、及びステップS11とステップS31との組み合わせによって、この発明のタイヤ搬送装着工程が構成される。
【0074】
次に、第一PCI装置20AでPCI処理を行う(ステップS23;PCI工程)。この際、第二位置P2では、第一PCI装置20Aの上方の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2が、第一PCI装置20Aから出る廃熱により加温される(加温工程)。
【0075】
第一PCI装置20AでのPCI処理が完了すると、第一PCI装置20Aを第二位置P2から第一位置P1へ移動させる(ステップS24;第二PCI装置移動工程)。そして、第一位置P1に配置された第一PCI装置20Aから上リム22を取り外し(ステップS25)、タイヤ搬送装置80によって加硫済みタイヤT1をタイヤ搬入・搬出台70へと搬出する(ステップ26;タイヤ搬出工程)。
【0076】
その後、PCIラインL1の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2をタイヤ搬送装置80によって加硫機10の近傍まで搬送して待機させて(ステップS27)、PCI処理のメインフローに戻る。この待機させている生タイヤT2は、加硫機10の金型12が開放されると、即座に下金型11Bに搬入される(ステップS01)。
【0077】
その一方で、第二PCI装置20BによるPCI処理では、
図9に示すように、上述した第一PCI装置20AによるPCI処理と同様の工程が行われる。この第二PCI装置20BによるPCI処理は、第一PCI装置20Aが第二位置P2に配置されてPCI処理を行っているときに、第一位置P1に移動して加硫済みタイヤT1の取り付け及び取り外しを行う。つまり、第一PCI装置20Aと第二PCI装置20Bとに対する加硫済みタイヤT1の搬入は交互に行われる。同様に、PCIラインL1の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2の搬出と、PCIラインL2の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2の搬出とは、交互に行われる。
【0078】
第二PCI装置20BによるPCI処理では、まず、タイヤ搬送装置80によって、タイヤ搬入・搬出台70から生タイヤ置台部60に生タイヤT2を搬送して載置する(ステップS30)。この際、同時並行でタイヤ搬送装置80により第二PCI装置20Bに上リム22を取り付ける(ステップS31)。そして、第二PCI装置20Bを第一位置P1から第二位置P2へ移動させる(ステップS32)。
【0079】
次に、第二PCI装置20BでPCI処理を行う(ステップS33)。この際、第二位置P2では、第二PCI装置20Bの上方の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2が、第二PCI装置20Bから出る廃熱により加温される(加温工程)。
【0080】
第二PCI装置20BでのPCI処理が完了すると、第二PCI装置20Bを第一位置P1へ移動させる(ステップS34)。そして、第一位置P1に配置された第二PCI装置20Bから上リム22を取り外し(ステップS35)、タイヤ搬送装置80によって加硫済みタイヤT1をタイヤ搬入・搬出台70へと搬出する(ステップ36)。
【0081】
その後、PCIラインL2の生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2をタイヤ搬送装置80によって加硫機10の近傍まで搬送して待機させて(ステップS37)、PCI処理のメインフローに戻る。この待機させている生タイヤT2は、加硫機10の金型12が開放されると、即座に下金型11Bに搬入される(ステップS01)。
【0082】
(実施形態の作用効果)
上述した実施形態では、第一位置P1で加硫済みタイヤT1をPCI装置20に受け渡し、上リム22を取り付けて、PCI移動部50によって第二位置P2にPCI装置20を移動させてからPCI処理を行うことができる。したがって、PCI装置20への加硫済みタイヤT1の受け渡しを円滑に行うことができる。また、生タイヤ置台部60の下方のスペースを、PCI処理を行うスペースとして有効利用することができる。
【0083】
さらに、PCI処理を行っている加硫済みタイヤT1の熱が、加硫済みタイヤT1の上方に配置された生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2に伝達される。そのため、生タイヤT2の温度が低下し過ぎてしまうことを抑制できる。したがって、加硫済みタイヤT1の品質がばらつくことを抑制できる。
【0084】
この実施形態では、更に、PCI処理が完了したPCI装置20を第二位置P2から第一位置P1まで移動させて、上リム22を取り外して、加硫済みタイヤT1をタイヤ搬入・搬出台70へ搬出させるようにした。したがって、PCI処理が完了した加硫済みタイヤT1を円滑に搬出させることができる。
【0085】
この実施形態では、更に、生タイヤ置台部60に載置された生タイヤT2を加硫機10に搬入させた後に加硫済みタイヤT1をPCI装置20へ受け渡すようにした。そのため、生タイヤT2の温度が低下する前に、生タイヤT2を加硫機に搬入させることができる。
【0086】
この実施形態では、更に、タイヤ搬送装置80が、PCI装置20に加硫済みタイヤT1を受け渡した後、新たな生タイヤT2をPCIラインL(L1,L2)の生タイヤ置台部60に搬送するようにした。そのため、第一位置P1で加硫済みタイヤT1を受け取ったPCI装置20がPCI移動部50によって第二位置P2に移動する時間を利用して、新しい生タイヤT2をタイヤ搬送装置80によって生タイヤ置台部60に搬入させることができる。
【0087】
この実施形態では、更に、生タイヤ置台部60が、着脱部30を基準にして互いに反対側に配置されるようにした。そのため、二組のPCIラインL1,L2の各第一位置P1を着脱部30の配置されている位置に設定できる。さらに、PCI処理を二組のPCIラインL1,L2で並行して行うことができる。したがって、複数のPCIラインL1,L2を設けつつ、タイヤ搬送装置80は、それぞれのPCIラインL1,L2に対して着脱部30により上リム22を着脱する位置で加硫済みタイヤT1を受け渡し及び受け取りすることができる。
【0088】
この実施形態では、更に、タイヤ搬送装置80が、二組のPCIラインL1,L2の生タイヤ置台部60から生タイヤT2を交互に搬出させるようにした。更に、タイヤ搬送装置80が、二組のPCIラインL1,L2の第一PCI装置20A、第二PCI装置20Bに対して加硫済みタイヤT1を交互に搬入させるようにした。したがって、生タイヤT2を円滑に加硫機10に搬入させることができる。更に、加硫機10から搬出した加硫済みタイヤT1に対して円滑にPCI処理を行うことができる。
【0089】
この実施形態では、更に、金型12を開放する際に、加硫済みタイヤT1を上金型11Aと共に上方へ移動させて、吊り下げた状態にするようにした。この実施形態では、更に、この加硫済みタイヤT1を吊り下げた状態で、タイヤ搬送装置80によって、下金型11Bに生タイヤT2を搬入させるようにした。また、タイヤ搬送装置80は、下金型11Bに生タイヤT2が搬入された状態で、吊り下げ部14Aによって吊り下げられた加硫済みタイヤT1を受け取って搬出するようにした。
【0090】
このようにすることで、金型12を開放している間に、タイヤ搬送装置80が生タイヤT2を生タイヤ置台部60に取りに行ったり、加硫済みタイヤT1を第一位置P1に置きに行ったりする必要が無い。そのため、一つのタイヤ加硫システム100において、一つのタイヤ搬送装置80を用いて金型12が開放されている時間を短縮することができる。また、一つのタイヤ搬送装置80を用いることができるため、金型12の一方側にのみタイヤ搬送装置80を配置すればよいため、金型12の他方側に、例えば、金型交換を行うためのスペースを確保することができる。
【0091】
したがって、金型交換の作業効率が低下することを抑制しつつ、金型の開放時間を短縮してエネルギー損失を低減することが可能となる。
【0092】
この実施形態では、更に、把持機構84の把持部87が係合爪89を有するようにした。そのため、生タイヤT2を上方から把持して搬送する際に、把持部87によって把持された生タイヤT2の姿勢を安定させることができる。
さらに、把持機構84の把持部87が外側面支持部90を備えるようにした。そのため、吊り下げ部14Aに吊り下げられた加硫済みタイヤT1を把持機構84によって下方から受け取り把持する際に、加硫済みタイヤT1の下方の幅方向外側面を外側面支持部90によって下方から支持することができる。したがって、生タイヤT2の搬入及び加硫済みタイヤT1の搬出を一つの把持機構84でより安定して行うことが可能となる。
【0093】
この実施形態では、更に、タイヤ搬送装置80が第六関節部J6を備えるようにした。そのため、生タイヤT2を下金型11Bに搬入した後に、第六関節部J6によってハンド部83を上下反転させるだけで、加硫済みタイヤT1を受け取る姿勢にすることができる。これにより、タイヤ搬送装置80は、下金型11Bに生タイヤT2を搬入した後に、迅速に加硫済みタイヤT1を受け取ることができる。したがって、金型12の開放されている時間を更に短縮して、エネルギー損失をより一層低減することができる。
【0094】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0095】
上述した実施形態では、一つのタイヤ加硫システム100に対してPCIラインを二組設ける場合について説明したが、二組に限られない。例えば、一つのタイヤ加硫システム100に対して、一つのPCIラインを一組だけ設けたり三組以上のPCIラインを設けたりしてもよい。
【0096】
上述した実施形態では、第二位置P2で生タイヤT2を加温する場合について説明した。しかし、生タイヤT2の加温は必要に応じて行えばよく、例えば、生タイヤT2の加温を行わないようにしてもよい。
【0097】
上述した実施形態では、タイヤ搬送装置80が第六関節部J6によってハンド部83を上下反転可能な場合について説明した。しかし、この構成に限られず、例えば、一つのハンド部83に対して、上下対称に二つの把持機構84を設けるようにしてもよい。
【0098】
上述した実施形態では、係合爪89や外側面支持部90を有する把持機構84により生タイヤT2を上方から把持したり、加硫済みタイヤT1を下方から支持したりする場合について説明した。しかし、生タイヤT2や加硫済みタイヤT1を把持可能な構造であれば、如何なる構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
上記タイヤ加硫システム、加硫済みタイヤの製造方法及びタイヤ搬送装置によれば、金型交換の作業効率が低下することを抑制しつつ、金型の開放時間を短縮してエネルギー損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 加硫機
11A 上金型
11B 下金型
12 金型
13 ベース部
14 ボルスタープレート
14A 吊り下げ部
14Aa 係止片
15 シリンダー
20 PCI装置
20A 第一PCI装置
20B 第二PCI装置
21 下リム
22 上リム(上蓋)
26 ステップ
30 着脱部
36 ステップ
50 PCI移動部
51 チューブ
60 生タイヤ置台部
60a 載置面
61 上部開口
62 脚部
63 開口部
70 タイヤ搬入・搬出台
70a 載置面
70b 加硫済みタイヤ載置部
70c 生タイヤ載置部
80 タイヤ搬送装置
81 ベース部
82 アーム部
83 ハンド部
84 把持機構
85 径方向調整部
85A 第一リング部材
85B スライドブロック
85C カムフォロア部
86 移動機構
86A 第二リング部材
86B ローラ部
86C アクチュエータ
86h スライド孔
87 把持部
88 基部
89 係合爪
90 外側面支持部
91 傾斜部
100 タイヤ加硫システム
J1 第一関節部
J6 第六関節部
K 境界線
L1,L2 PCIライン
O1,O2 軸線
O3 中心軸線
P1 第一位置
P2 第二位置
T1 加硫済みタイヤ
T2 生タイヤ