(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】液体ポリシラン及び異性体エンリッチド高級シランを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 33/04 20060101AFI20220728BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20220728BHJP
C07F 7/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C01B33/04
C01B33/12 C
C07F7/02 Z
(21)【出願番号】P 2021517975
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019055803
(87)【国際公開番号】W WO2020077188
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-31
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ニキフォロフ、グリゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フソン、ギローム
(72)【発明者】
【氏名】イトフ、ジェナディ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヤン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530823(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005107(WO,A1)
【文献】特表2016-522140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/04
C01B 33/12
C07F 7/02
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n=4~100であるSi
nH
(2n+2)を製造する方法であって、
a=1~4である液体Si
aH
(2a+2)反応物とB(C
6F
5)
3触媒とを反応させて、n>aであるSi
nH
(2n+2)を製造することを含
み、
前記Si
a
H
(2a+2)
反応物がSi
3
H
8
を含む、方法。
【請求項2】
前記Si
aH
(2a+2)反応物がSi
3H
8及びSi
4H
10の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
n=11~30である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Si
nH
(2n+2)を分別蒸留して
、95%w/w
~100%w/wのn-Si
5H
12を含むSi含有膜形成組成物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Si
nH
(2n+2)を分別蒸留して
、95%w/w
~100%w/wのn-Si
6H
14を含むSi含有膜形成組成物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Si
nH
(2n+2)を分別蒸留して
、95%w/w
~100%w/wのn-Si
7H
16を含むSi含有膜形成組成物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Si
nH
(2n+2)を分別蒸留して
、95%w/w
~100%w/wのn-Si
8H
18を含むSi含有膜形成組成物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高級シラン(すなわち、n=4~100であるSinH2n+2)の合成方法が開示される。より特に、開示された合成方法は、高級シランの異性体比を調整し、且つ最適化する。異性体比は、出発化合物の温度、滞留時間及び相対的な量などのプロセスパラメーターの選択、並びに適切な触媒の選択によって最適化され得る。開示された合成方法で、高級シラン、特に1つの主要異性体を含有するシランの容易な調製が可能となる。純粋な異性体及び異性体エンリッチド混合物は、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)又はその混合物の触媒変換によって調製される。
【背景技術】
【0002】
ポリシランは種々の産業で使用されている。
【0003】
ポリシランを使用するケイ素含有膜の蒸着は、中でも、Seiko Epson Corp.への日本特許第3,185,817号公報;Kanoh et al,Japanese Journal of Applied Physics,Part 1:Regular Papers,Short Notes & Review Papers 1993,32(6A),2613-2619;Showa Denko KKへの日本特許第3,484,815号公報;及びShowa Denko KKへの特開2000/031066号公報によって開示されている。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0184268A1号明細書によると、基材上にポリシラザン及びポリシランを含んでなる酸化物膜を形成するためのコーティング組成物をコーティングすることと、酸化雰囲気中、熱処理によって溝の内部に酸化物膜を形成することとを含んでなる半導体デバイスの製造方法が請求される。ポリシラザン(SiH2NH)n(nは正の整数である)並びにポリシランSinR2n+2及びSinR2n(n≧3、Rは水素である)の式は実施形態にのみ記載される。
【0005】
Si、SiGe、SiC、SiN及びSiOなどのエピタキシャルSiを含有する膜は、中でも、Hazbun et al.,Journal of Crystal Growth 2016,444,21-27;Yi-Chiau Huang et alへの米国特許出願公開第2017/018427号明細書;Dube et alへの米国特許出願公開第2016/126093号明細書;及びHart et al.,Thin Solid Films 2016,604,23-27によって開示されるように、ポリシランを使用して成長させる。
【0006】
ポリシランは、中でも、Lee et al.への米国特許出願公開第2009/0269559号明細書;Forschungszentrum Juelich GmbHへの国際公開第2015/085980号パンフレット;Akao et al.への米国特許出願公開第2010/197102号明細書;及びShowa Denko KKへの日本特許第6,191,821号公報によって開示されるように、印刷された電子機器用のインクとして使用されている。
【0007】
ポリシランは、中でも、Simone et al.,Journal of Propulsion and Power 2006,22,1006-1011;及びHidding et al.,Journal of Propulsion and Power 2006,22,786-789によって開示されるように、高比エネルギー燃料としても使用されている。
【0008】
低級シランから高級シランへの変換は、研究のために、そして商業的目的のために広範囲に研究されている。触媒反応が研究されている。例えば、Berrisへの米国特許第5,047,569号明細書;Corey et al,Organometallic
s,1991,10,924-930;Boudjouk et al,J.Chem.Soc.Chem.Comm.1991 245-246;Tilley et al.への米国特許第5,087,719号明細書;Woo et al.,J.Am.Chem.Soc.1992,114,7047-7055;Ohshita et al.,Organometallics 1994 13,5002-5012;Bourg et al.,Organometallics 1995,14,564-566;Bourg et al.,Organometallics 1995,14,564-566;Ikai et al.への米国特許第5,700,400号明細書;Woo et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst.Sci.Technol.,Sect.A,2000,349,87;Rosenberg et al.,J.Am.Chem.Soc.2001,123,5120-5121;Fontaine et
al.,Organometallics 2002,21,401-408;Kim
et al.,Organometallics 2002,21,2796;Corey et al.,Adv.In Org.Chem.2004,51,pp.1-52;Fontaine et al.,J.Am.Chem.Soc.2004,126,8786-8794;Karshtedt et al.への米国特許出願公開第2008/085373号明細書;Itazaki et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2009,48,3313-3316;Evonik Degussa GMBHへの国際公開第2010/003729号パンフレット;Smith et al.,Organometallics 2010,29,6527-6533;SPAWNT PRIVAT S.A.R.Lへの国際公開第2012/001180号パンフレット;Kovio,Inc.への国際公開第2013/019208号パンフレット;Feigl et al.,Chem.Eur.J.2013,19,12526-12536;Tanabe et al.,Organometallics 2013,32,1037-1043;Brausch et al.への米国特許第8,709,369号明細書;Schmidt et al.,Dalton Trans.2014,43,10816-10827;及びMatsushita et al.への米国特許第9,567,228号明細書を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
全てのこれらの開示にもかかわらず、ポリシランの商業的使用には困難が残る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
n=4~100であるSinH(2n+2)の製造方法が開示される。B(C6F5)3触媒の存在下、a=1~4である液体SiaH(2a+2)反応物を変換し、n>aであるSinH(2n+2)を製造する。或いは、n=4~100であるSinH(2n+2)は、a=1~4及びn>aであるSiaH(2a+2)反応物を触媒的に変換することによって製造され得る。別の選択肢において、a=1~4であるSiaH(2a+2)反応物をB(C6F5)3触媒と反応させ、n=4~100及びn>aであるSinH(2n+2)が製造される。さらに別の選択肢において、a=1~4であるSiaH(2a+2)反応物をB(C6F5)3触媒と接触させ、n=4~100及びn>aであるSinH(2n+2)が製造される。
【0011】
n=5~8である式SinH(2n+2)を有する異性体エンリッチドポリシランを選択的に合成する方法も開示される。a=1~4である液体Si
a
H(2a
反応物は、約2:1~約15:1の範囲の1つの異性体対別の異性体の比率を有する異性体エンリッチドポリシランへと触媒的に変換される。
【0012】
これらの開示された方法のいずれも、以下の態様の1つ又は複数を含み得る:
・n=10~30であること;
・触媒が、B(C6F5)3であること;
・n=30~50であること;
・方法がH2を利用しないこと;
・SiaH(2a+2)反応物が液体であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、液体及び気体の混合物であること;
・SiaH(2a+2)反応物がSi3H8であること;
・SiaH(2a+2)反応物が液体Si3H8であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、Si2H6及びSi3H8の混合物であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、Si2H6及びSi3H8の液体混合物であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、気体Si2H6及び液体Si3H8の混合物であること;
・混合物が、約0.1%w/w~約60%w/wのSi3H8及び約40%w/w~99.9%w/wのSi2H6を含むこと;
・混合物が、約0.1%w/w~約25%w/wのSi3H8及び約75%w/w~99.9%w/wのSi2H6を含むこと;
・混合物が、約0.1%w/w~約10%w/wのSi3H8及び約90%w/w~99.9%w/wのSi2H6を含むこと;
・SiaH(2a+2)反応物が、Si3H8及びSi4H10の混合物であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、Si3H8及びSi4H10の液体混合物であること;
・SiaH(2a+2)反応物が、気体Si3H8及び液体Si4H10の混合物であること;
・混合物が、約0.1%w/w~約60%w/wのSi4H10及び約40%w/w~99.9%w/wのSi3H8を含むこと;
・混合物が、約0.1%w/w~約25%w/wのSi4H10及び約75%w/w~99.9%w/wのSi3H8を含むこと;
・混合物が、約0.1%w/w~約10%w/wのSi4H10及び約90%w/w~99.9%w/wのSi3H8を含むこと;
・約20%w/w~約60%w/wのSiaH(2a+2)反応物を変換すること;
・触媒と混合する前にSiaH(2a+2)反応物を加熱すること;
・SiaH(2a+2)反応物及び触媒を混合して、反応物-触媒混合物を形成すること;
・約1時間~約24時間の範囲の時間、SiaH(2a+2)反応物及び触媒を混合して、反応物-触媒混合物を形成すること;
・反応物-触媒混合物を約30℃~約55℃の範囲の温度まで加熱すること;
・約室温~約53℃の範囲の温度で反応物-触媒混合物を混合すること;
・約15℃~約50℃の範囲の温度で反応物-触媒混合物を混合すること;
・約15℃~約30℃の範囲の温度で反応物-触媒混合物を混合すること;
・得られるSinH(2n+2)混合物からいずれの固体も分離するために、反応物-触媒混合物を濾過すること;
・触媒を含有する反応器中に流動させる前にSiaH(2a+2)反応物を加熱すること;
・触媒中に流動させる前にSinH(2n+2)反応物を加熱すること;
・触媒を含有する反応器中にSiaH(2a+2)反応物を流動させること;
・ガラスウール上に触媒を含有する反応器中にSiaH(2a+2)反応物を流動させること;
・触媒ペレットを含有する反応器中にSiaH(2a+2)反応物を流動させること;
・触媒を含有する反応器中にSiaH(2a+2)反応物を流動させ、SinH(2n+2)混合物を製造すること;
・SiaH(2a+2)反応物が、約200秒~約600秒の範囲の反応器中の滞留時間を有すること;
・反応器を約15℃~約170℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約15℃~約150℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約15℃~約100℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約15℃~約50℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約20℃~約150℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約50℃~約100℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約40℃~約150℃の範囲の温度まで加熱すること;
・反応器を約10psig(69kPa)~約50psig(345kPa)の範囲の圧力に維持すること;
・未反応のSiaH(2a+2)反応物をリサイクルすること;
・触媒が担体上にあること;
・触媒が、担体に物理的に結合されていること;
・触媒が、担体に化学的に結合されていること;
・触媒が、担体に物理的及び化学的に結合されていること;
・担体が、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)又はその組合せであること;
・担体が、アルミナ(Al2O3)であること;
・担体が、シリカ(SiO2)であること;
・触媒がペレットの形態であること;
・触媒が、約0.1%w/w~約70%w/wの触媒及び担体の組合せを含むこと;
・触媒が、約1%w/w~約5%w/wの触媒及び担体の組合せを含むこと;
・SinH(2n+2)を分別蒸留して、約95%w/w~約100%w/wのn-Si5H12を含むSi含有膜形成組成物を製造すること;
・SinH(2n+2)を分別蒸留して、約95%w/w~約100%w/wのn-Si6H14を含むSi含有膜形成組成物を製造すること;
・SinH(2n+2)を分別蒸留して、約95%w/w~約100%w/wのn-Si7H16を含むSi含有膜形成組成物を製造すること;及び/又は
・SinH(2n+2)を分別蒸留して、約95%w/w~約100%w/wのn-Si8H18を含むSi含有膜形成組成物を製造すること。
【0013】
上記で開示される方法のいずれかによって製造されたSi含有膜形成組成物も開示される。開示された組成物は、以下の態様の1つ又は複数をさらに含み得る:
・Si含有膜形成組成物が、約95%w/w~約100%w/wのn-Si5H12を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約95%w/w~約100%w/wのn-Si6H14を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約95%w/w~約100%w/wのn-Si7H16を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約95%w/w~約100%w/wのn-Si8H18を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約0ppmw~約100ppmwのハロゲン化物汚染物質を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約0ppmw~約25ppmwのハロゲン化物汚染物質を含むこと;及び/又は
・Si含有膜形成組成物が、約0ppmw~約5ppmwのハロゲン化物汚染物質を含むこと。
【0014】
蒸着プロセスの間に揮発性ポリシランの蒸気圧を維持する方法も開示される。蒸着プロセスでは、上記で開示されるSi含有膜形成組成物のいずれかが使用される。Si含有膜形成組成物は、蒸発温度に維持される。開示された方法は、以下の態様の1つ又は複数をさらに含み得る:
・Si含有膜形成組成物が、n=4~10であるSinH(2n+2)を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi5H12を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi6H14を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi7H16を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi8H18を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、蒸発温度において初期蒸気圧を有すること;
・蒸発温度が、約0℃~約50℃の範囲であること;
・約75%w/wのSi含有膜形成組成物が消費されるまで、蒸発温度においてSi含有膜形成組成物の初期蒸気圧の約80%を維持すること;及び/又は
・約75%w/wのSi含有膜形成組成物が消費されるまで、蒸発温度においてSi含有膜形成組成物の初期蒸気圧の約90%を維持すること;
・約75%w/wのSi含有膜形成組成物が消費されるまで、蒸発温度においてSi含有膜形成組成物の初期蒸気圧の約95%を維持すること。
【0015】
重合の間に分枝状ポリシランの形成を減少させる方法も開示される。重合プロセスでは、上記で開示されるSi含有膜形成組成物のいずれかが使用される。開示された方法は、以下の態様の1つ又は複数をさらに含み得る:
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi5H12を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi6H14を含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi7H16を含むこと;及び/又は
・Si含有膜形成組成物が、約90%w/w~約100%w/wのSi8H18を含むこと。
【0016】
基材上でSi含有膜を形成するコーティング方法も開示される。上記で開示されるSi含有膜形成組成物は、基材と接触しており、且つSi含有膜は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はスリットコーティング技術によって形成される。開示された方法は、以下の態様を含み得る:
・Si含有膜形成組成物が、約0.5%w/w~約99.5%w/wのペルヒドロポリシラザンをさらに含むこと;
・Si含有膜形成組成物が、約10%w/w~約90%w/wのペルヒドロポリシラザンをさらに含むこと;
・スピンコーティング技術によってSi含有膜を形成すること;
・スプレーコーティング技術によってSi含有膜を形成すること;
・ディップコーティング技術によってSi含有膜を形成すること;
・スリットコーティング技術によってSi含有膜を形成すること;
・Si含有膜を熱硬化させること;
・Si含有膜を光硬化させること;
・Si含有膜を焼きなますこと;
・Si含有膜をレーザー処理すること;
・Si含有膜がSiであること;
・Si含有膜がSiO2であること;
・SiO2膜が、1100℃において成長させる熱酸化物と比較して、約1~約5の範囲のウェットエッチングレートを有すること;
・SiO2膜が、1100℃において成長させる熱酸化物と比較して、約1~約3の範囲のウェットエッチングレートを有すること;
・Si含有膜がSiNであること;
・Si含有膜がSiCであること;
・Si含有膜がSiONであること;
・基材が、約1:1~約1:100の範囲のアスペクト比を有するトレンチを含むこと;及び/又は
・トレンチが、約10nm~約1ミクロンの範囲の臨界寸法を有すること。
【0017】
表記法及び命名法
特定の略語、記号及び用語が次の記載及び請求項全体で使用され、次のものが含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は1つ又は複数を意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、明記された値の±10%を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「含んでなる」という用語は、包括的又は非制限的であり、且つ追加的な引用されていない材料又は方法ステップを排除しない。「から本質的になる」という用語は、明記された材料又はステップ、及び本発明の基本的且つ新規の特徴に本質的に影響を与えない追加的な材料又はステップに請求の範囲を制限する。「からなる」という用語は、請求項に指定されていないいずれの追加的な材料又は方法ステップも排除する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「高級シラン」という用語は、n=4~100であるSinH2n+2を意味し、「低級シラン」という用語は、a=1~4であるSiaH2a+2を意味する。高級シランは線形であっても、又は分岐していてもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「触媒」は、反応における全体的な標準ギブズエネルギー変化を変更することなく、反応速度を増加させる物質を意味する。本明細書で使用される場合、「触媒」という用語には、いずれかの永久的な化学変化を受けない物質、並びに受ける物質が含まれる(後者は、「プレ触媒」と呼ばれることもある)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「不均一触媒」という用語は、反応物とは異なる相に存在する触媒を意味する(例えば、固体触媒対液体反応物;又は液体反応物と混合することができない液体触媒)。不均一触媒は、触媒より本質的に不活性であるか、又は活性が低い担体とブレンドされてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「クエンチング剤」という用語は、反応を脱活性化する物質を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「滞留時間」という用語は、低級シラン反応物が反応器を通る流動中で費やす時間の量を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ペルヒドロポリシラザン」又は「PHPS」という用語は、x=0~2である-SiHx-NH-単位を繰り返すこと、及びケイ素原子がN又はH原子にのみ結合するという事実によって特徴づけられる、Si、H及びNのみを含有する分子、オリゴマー又はポリマーを意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、略語「RT」は、約18℃~約25℃の範囲の温度である室温を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素及び水素を含有する官能基を意味し;「アルキル基」という用語は、炭素及び水素原子のみを含有する飽和官能基を意味する。ヒドロカルビル基は、飽和していても、又は不飽和であってもよい。いずれかの用語も、線形、分岐又は環式基を意味する。線形アルキル基の例としては、限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが含まれる。分岐アルキル基の例としては、限定されないが、t-ブチルが含まれる。環式アルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「Me」という略語はメチル基を意味し;「Et」という略語はエチル基を意味し;「Pr」という略語はプロピル基を意味し;「nPr」という略語は「ノルマル」又は線形プロピル基を意味し;「iPr」という略語はイソプロプル基を意味し;「Bu」という略語はブチル基を意味し;「nBu」という略語は「ノルマル」又は線形ブチル基を意味し;「tBu」という略語は、1,1-ジメチルエチルとしても知られるtert-ブチル基を意味し;「sBu」という略語は、1-メチルプロピルとしても知られているsec-ブチル基を意味し;「iBu」という略語は、2-メチルプロピルとしても知られているイソ-ブチル基を意味し;「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲンアニオンF-、Cl-、Br-、I-及びそれらの混合物を意味し;そして「TMS」という略語は、トリメチルシリル又は-SiMe3を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「芳香族基」という用語は、同一の原子の組合せによる他の幾何学的又は結合配置よりも高い安定性を示す共鳴結合の環を有する、環式平面分子を意味する。例示的な芳香族基としては、置換又は未置換フェニル基(すなわち、それぞれのRが独立してH又はヒドロカルビル基である、C6R5)が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「独立して」という用語は、R基の記載に関連して使用される場合、対象のR基が、同一又は異なる下添字又は上添字を有する他のR基に対して独立して選択されたのみならず、同一R基のいずれの追加の種に対しても独立して選択されることを示すものとして理解されるべきである。例えば、xが2又は3である式MR1
x(NR2R3)(4-x)中、2つ又は3つのR1基は、互いに、或いはR2又はR3と同一であってもよいが、同一である必要はない。さらに、他に特に明記されない限り、R基の値は、異なる式で使用される場合、互いに独立していることは理解されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される場合、Mnという略語は、数平均分子量、又は試料中のポリマー分子の全数で割った試料中の全ポリマー分子の全重量(すなわち、Mn=ΣNiMi/ΣNiであり、Niは重量Miの分子の数である)を意味し;Mwという略語は、重量平均分子量、又はそれぞれの種類の分子の全質量を掛けたそれぞれの種類の分子の重量分率の合計(すなわち、Mw=Σ[(NiMi/ΣNiMi)*NiMi]である)を意味し;且つ「多分散度指数」又はPDIという用語は、Mw:Mnの比率を意味する。
【0033】
本明細書中、元素の周期表からの元素の標準的な略語が使用される。元素がこれらの略語によって示され得ることは理解されるべきである(例えば、Siはケイ素を意味し、Cは炭素を意味し、Hは水素を意味する、など)。
【0034】
本明細書で使用される場合、周期表は化学元素の表配置を意味し;周期表の第I族は、H、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrを意味する。;周期表の第II族は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaを意味する。;周期表の第III族は、B、Al、Ga、In、Tl及びNhを意味する。
【0035】
本明細書に列挙されるいずれかの範囲及び全ての範囲は、「包括する」という用語が使用されるかどうかにかかわらず、それらの終点を包括する(すなわち、x=1~4であるか、又はxは1~4の範囲であるということは、x=1、x=4及びx=その間のいずれかの数である)。
【0036】
本発明の特性及び目的のさらなる理解のために、添付の図面と関連して以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【0037】
本発明の特性及び目的のさらなる理解のために、参照番号が全体で均一的に使用される添付の図面と関連して、以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】開示された合成方法が実行され得るバッチ装置の概略図である。
【
図2】開示された合成方法が実行され得るフロースルー装置の概略図である。
【
図3】
図2のフロースルー装置の一実施形態の概略図である。
【
図5】Si-含有膜形成組成物の調製、ケイ素基材の調製のための代表的なプロセス、及びスピンコーティングプロセスのステップを図示するフローチャートである。
【
図6】実施例2の不揮発性液体のゲル浸透クロマトグラム(GPC)である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
高級シラン(すなわち、n=4~100であるSinH2n+2)の合成方法が開示される。n=5~8である式SinH(2n+2)を有する異性体エンリッチドポリシランを選択的に合成する方法も開示される。
【0040】
高級シランは、蒸気圧のわずかな差異を有する種々の異性体で存在する。例えば、80~90%のn-Si4H10の沸点は、Gelestからのオンラインカタログによると、107℃である。対照的に、i-Si4H10の沸点は101.7℃である。Feher et al.,Inorg.Nucl.Chem.Lett.,1973,9,931。
【0041】
異なる蒸気圧に加えて、少なくとも異なる立体形状のため、異性体は異なる蒸発挙動及び熱安定性を有し得る。1つの異性体が経時的に豊富になる場合、これらの差異は、いずれかの蒸気プロセスにおいてドリフト(drift)を生じ得る。この影響は、他の種類の異性体によって実証されている(例えば、Mehwash Zia and Muhammad Zia-ul-Haq,Journal of Contemporary Research in Chemistry(2016)1(1):34-41を参照のこと)。その結果、本質的に1つの異性体からなるか、1つの異性体が豊富になるか、又は固定の異性体比を有する高級シラン前駆体を提供することは、蒸着プロセスのサイクルあたりの膜成長の再現可能なレートを有するために重要である。
【0042】
同様に、異なる異性体を使用する重合によって、異なる重合生成物が生じ得る。言い換えると、iso-テトラシランは、n-テトラシランによって生じるものよりも分岐を有するポリマーを生じ得る。
【0043】
出願人は、テトラシラン異性体比を調整及び最適化する方法、並びに低いケイ素原子量(6~30)を有するポリシランを選択的に調製する方法を見出した。純粋な異性体又は異性体エンリッチド混合物は、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、テトラシラン(Si4H10)又はそれらの混合物の触媒変換によって調製される。低級シラン反応物(すなわち、a=1~4であるSiaH2a+2)は、商業的な利用可能性のために、魅力的な出発材料を提供する。所望の異性体量を生じるために、種々のプロセスパラメーターは調整され得る。例示的なプロセスパラメーターには、出発化合物の相対的な量及び触媒選択が含まれる。温度及びバッチプロセスのための反応時間又はフロースループロセスにおける滞留時間は、異性体収量に影響を与え得る。得られる高級シラン生成物は、特異的異性体含有量及び高純度である。当業者は、これらの反応物及び生成物を用いて作業する場合に安全性プロトコルが必要であることを認識するであろう。
【0044】
高級シランは、a=1~4であるSiaH(2a+2)反応物を、B(C6F5)3触媒と反応させることによって合成される。SiaH(2a+2)反応物は、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10又はそれらの組合せであり得る。これらの反応物は、商業的に入手可能である。これらの反応物は、気体又は液体の形態で、或いは、例えば組合せとして、開示されたプロセスにおいて使用され得る。例えば、反応物は、気体Si3H8及び液体Si4H10であり得る。
【0045】
以下の実施例において、SiaH(2a+2)反応物は、気体若しくは液体Si3H8、又は液体Si3H8と液体Si2H6若しくはSi4H10との混合物である。実施例は、気体Si3H8の使用と比較して、液体Si3H8の使用によって、より良好なn-Si4H10/i-Si4H10選択性が生じることを実証する。液体Si3H8は、気体Si3H8によって生じるものよりも大きく、より重質のポリシラン(Si≧6)を生じる。結果として、所望のポリシランの合成は、適切なSiaH(2a+2)反応物を選択することによって最適化され得る。より重質のポリシランの数を減少するいくつかの任意選択的な反応物の組合せは、約0.1%w/w~約60%w/wのSi3H8及び約40%w/w~99.9%w/wのSi2H6;約0.1%w/w~約25%w/wのSi3H8及び約75%w/w~99.9% w/wのSi2H6;又は約0.1%w/w~約10%w/wのSi3H8及び約90%w/w~99.9%w/wのSi2H6を含む。より多い量のより重質のポリシランを生じるいくつかの任意選択的な反応物の組合せは、約0.1%w/w~約60%w/wのSi4H10及び約40%w/w~99.9% w/wのSi3H8;約0.1%w/w~約25%w/wのSi4H10及び約75%w/w~99.9%w/wのSi3H8;又は約0.1%w/w~約10%w/wのSi4H10及び約90%w/w~99.9%w/wのSi3H8を含む。
【0046】
B(C6F5)3触媒は、担体上に配置されてよい。例示的な担体としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)又はそれらの組合せが含まれる。当業者は、触媒が担体に物理的及び/又は化学的に結合され得ることを認識するであろう。例えば、触媒は、シリカ又はアルミナ担体上の-OH基と化学的に反応し得る。或いは触媒及び担体は、化学反応が生じることなく、単に物理的に一緒に混合されてもよい。別の選択肢において、触媒及び担体を物理的に混合することによって、物理的及び化学的結合の両方が得られ得る。触媒は、約0.1%w/w~約70%w/wの全触媒及び担体の組合せを含み得、好ましくは、約1%w/w~約10%w/wの全触媒及び担体の組合せを含み得る。
【0047】
或いは、触媒は、ペレットの形態で商業的に提供され得る。
【0048】
以下の実施例に示すように、主張された触媒は、第IV族(Ti、Zr、Hf)、第VIII族(Ru)、第IX族(Co、Rh、Ir)及び第X族(Ni、Pd、Pt)並びにランタニド(Nd)の従来技術の遷移金属触媒よりも多くの重合プロセスの制御を可能にする。
【0049】
低級シラン反応物がB(C6F5)3触媒と接触する時、低級シラン反応物(すなわち、a=1~4であるSiaH2a+2)の触媒作用が起こる。反応は、バッチ反応器又はフロースルー反応器で生じ得る。低級シラン反応物及び触媒をバッチ反応器中で混合し、反応物-触媒混合物を形成してもよい。反応物及び触媒次第で、反応物-触媒混合物は、約1時間~約24時間の範囲の時間で混合され得る。
【0050】
バッチ反応は、ほぼ室温~約53℃の範囲の温度で実行され得る。或いは反応は、約15℃~約50℃の範囲の温度で実行され得る。別の選択肢において、反応は、約15℃~約30℃の範囲の温度で実行され得る。当業者は、反応温度は、選択された触媒、並びに所望のSinH(2n+2)生成物次第で変化することを認識するであろう。SinH(2n+2)生成物は、触媒及び/又はいずれかの固体SinH(2n+2)生成物などの固体を除去するために濾過されてもよい。
【0051】
フロー反応器中、SiaH(2a+2)反応物は、触媒ペレット又はガラスウール上に担持された触媒を含有する反応器中を流動し得る。SiaH(2a+2)反応物は、約200秒~約600秒の範囲の反応器中での滞留時間を有し得る。反応器の圧力は、約10psig(69kPa)~約50psig(345kPa)の範囲であり得る。
【0052】
フロー反応は、約15℃~約170℃の範囲の温度で実行され得る。或いは、反応は、約15℃~約150℃の範囲の温度で実行され得る。別の選択肢において、反応は、約15℃~約100℃の範囲の温度で実行され得る。別の選択肢において、反応は、約15℃~約50℃の範囲の温度で実行され得る。別の選択肢において、反応は、約20℃~約150℃の範囲の温度で実行され得る。別の選択肢において、反応は、約50℃~約100℃の範囲の温度で実行され得る。当業者は、反応温度は、選択された触媒、並びに所望のSinH(2n+2)生成物次第で変化することを認識するであろう。実施例1の表1に示すように、温度が高いほど、より重質のポリシラン(Si≧6)が生じる傾向がある。
【0053】
触媒は、低級シラン反応物を、n=1~100であるSinH(2n+2)混合物へと変換する。好ましくは、触媒は約20%w/w~約60%w/wの低級シラン反応物を変換する。所望のポリシランは、SinH(2n+2)混合物から単離される。n=5~8である場合、1つの異性体対別の異性体の比率が約2:1~約15:1の範囲である異性体エンリッチドポリシランをSinH(2n+2)混合物から分別蒸留して、約95%w/w~約100%w/wのn-Si5H12、n-Si6H14、n-Si7H16又はn-Si8H18、及び好ましくは約98%w/w~約100%w/wのn-Si5H12、n-Si6H14、n-Si7H16又はn-Si8H18を含むSi含有膜形成組成物が製造され得る。
【0054】
当業者は、反応速度及び生成物収率は、低級シラン反応物が置換されているかどうかということ次第で異なることを認識するであろう。主張された未置換の低級シラン(すなわち、a=1~4であるSiaH(2a+2))によって製造される反応生成物は、1つ又は複数の有機基(すなわち、Rが有機基であり、且つxが1又はそれ以上であるSinRxH(2n+2-x))を含有する置換シランによって製造されるものとは異なる。Nippon Oil Co,Ltd.への米国特許第5,700,400号明細書がRu及びRh触媒の使用を開示しているが、それぞれ、Ru/C及びRh/Cが非置換液体又は気体トリシランの変換に関して活性ではないことを実証する比較例1及び2を参照のこと。
【0055】
触媒反応は、H2、N2、Ar又はHeなどの不活性気体の存在下又は不在下において実行され得る。不活性気体は、不活性雰囲気を維持するために使用され得る。不活性気体は、反応混合物を希釈するためにも使用され得る。不活性気体は、所望の範囲内での反応混合物の流動、例えば、約0.1~約1,000mL/分、或いは約1~約10mL/分を維持することを補助するためにも使用され得る。もちろん、これらの不活性気体の添加は、反応生成物からのそれらの除去をさらに必要とする。したがって、別の選択肢において、そして以下の実施例で実証されるように、触媒反応は反応物の蒸気圧下で実行され得る。
【0056】
図1は、低級シラン反応物からn=4~100であるSi
nH
(2n+2)混合物への触媒的変換のための例示的なバッチプロセスシステムの図である。
図1中、トリシラン10及び任意選択的にジシラン又はテトラシラン11を低級シラン反応物として使用する。触媒作用は、N
2、希ガス(すなわち、He、Ne、Ar、Kr、Xe)又はその組合せなどの不活性雰囲気下で実行され得る。いずれか、又は全ての空気は、真空及び/又は不活性気体サイクルを適用することによって、システムの種々の部分(例えば、反応器20、蒸留ユニット40、蒸留ユニット50など)から除去されなければならない。不活性気体は、トリシラン10及び任意選択的にジシラン又はテトラシラン11に圧力をかけ、反応器20への反応物を運搬するためにも役立ち得る。液体窒素、冷凍エタノール、アセトン/ドライアイス混合物、或いはモノエチレングリコール(MEG)などの熱伝導剤、又はDow Corning Corp.によって商標SYLTHERM(商標)で販売される熱伝導流体を使用して、システムの種々の部分(例えば、蒸留セットアップ40、蒸留セットアップ50)を冷却してもよい。
【0057】
Si3H8反応物10及び任意選択的なSi2H6又はSi4H10反応物11は、それぞれ、ライン12及び13を通して反応器20に添加される。反応器20は、触媒(図示せず)を含有する。反応器20は、パドル混合機又はホモジナイザーなどの撹拌機構(図示せず)も含む。反応器20は、複数の「注入ポート」、圧力計、隔膜弁(図示せず)も備えていてもよい。
【0058】
反応器20、並びにトリシラン10及び任意選択的にジシラン又はテトラシラン11反応物並びにいずれかの生成物及び副生成物と接触するいずれか及び全ての構成部分(「接触構成部分」)は、ポリシラン生成物45の意図されない反応及び/又は汚染を防ぐために、クリーンであり、且つ空気及び湿分を含まないべきである。反応器20及び他の接触構成部分は、シランと反応し得るか、又はシランを汚染し得るいずれの不純物も含まないべきである。また反応器20及び他の接触構成部分は、トリシラン10及び任意選択的にジシラン又はテトラシラン11反応物並びに生成物及び副生成物と相溶性であるべきである。
【0059】
例示的な反応器20としては、低い表面粗さ及びミラー仕上げを有するステンレス鋼容器が挙げられる。低い表面粗さ及びミラー仕上げは、機械的研磨によって、及び/又は電解研磨によって得られ得る。高純度は、限定されないが、(a)希酸(HF、HNO3)又は塩基(KOH、NaOH)を用いたクリーニングステップ;(b)それに続く、酸又は塩基の痕跡量の完全除去を確実にするための高純度脱イオン水によるすすぎ;(c)それに続く、反応器20の乾燥を含む処理によって得られ得る。脱イオン水(DIW)すすぎ(ステップb)の完了は、すすぎ水の伝導性が100μS/cm、好ましくは25μS/cm未満に達する時に示され得る。
【0060】
乾燥ステップは、He、N2、Ar(好ましくはN2又はAr)などの不活性気体を用いたパージング;表面からの脱気を促進するために反応器20又は他の接触構成部分の圧力を減少すること;反応器20又は他の接触構成部分を熱すること、或いはそれらのいずれかの組合せを含み得る。乾燥ステップは、その間に不活性気体の特定の流動が容器を通して流されるパージングの別の連続、及び真空ステップを含み得る。或いは、乾燥ステップは、反応器20又は他の接触構成部分における低い圧力を維持しながら、パージ気体を絶えず流すことによって実行され得る。乾燥効率及び終点は、反応器20又は他の接触構成部分から出る気体における痕跡量H2O濃度を測定することによって評価され得る。入口ガスは10ppb未満H2Oを有するが、出口ガスは、約0ppm~約10ppmの範囲、好ましくは約0ppm~約1ppmの範囲、より好ましくは約0ppb~約200ppbの範囲の湿分含有量を有さなければならない。パージステップ及び真空ステップの間、乾燥時間を促進するために反応器20又は他の接触構成部分を加熱することが知られている。反応器20は、乾燥の間、典型的に約40℃~約150℃の範囲の温度に維持される。
【0061】
一旦、クリーンにして、乾燥させたら、反応器20は、1×10-6 std cm3/秒未満、好ましくは1×10-8 std cm3/秒未満に全漏れ速度を有するべきである。
【0062】
触媒作用のためのシステムを調製するために、又は触媒作用プロセスの間に使用されるいずれの気体も、半導体グレードであるべきである(すなわち、痕跡量の湿分及び酸素などの汚染物質を含まず(1ppm未満、好ましくは10ppb未満)、且つ粒子を含まない(1リットルあたり5粒子未満@0.5μm))。
【0063】
反応器20、トリシラン10及び任意選択的なジシラン又はテトラシラン11の供給源容器、ポリシラン生成物容器、並びにいずれの他の接触構成部分も、反応より前にシラン、ジシラン又はトリシランなどのシリル化剤への暴露によって不活性化されてもよい。不活性化は、低級又は高級シランと、不活性化された材料との間の反応を最小化することを補助する。
【0064】
図1に示すように、Si
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、空気及び湿分を含まない反応器20中への導入前にライン14で混合されてもよい。或いはSi
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、ライン12及び13(図示せず)を通して反応器20に直接導入されてもよい。Si
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、隔膜ポンプ、蠕動ポンプ又はシリンジポンプなどの液体計量ポンプ(図示せず)を通して反応器20に添加されてもよい。
【0065】
Si3H8反応物10及び任意選択的なSi2H6又はSi4H10反応物11の添加終了後、反応器20を、約25℃~約150℃、或いは約15℃~約100℃の範囲の温度まで加熱してもよい。反応器20は、ジャケット(図示せず)によって所望の温度に維持されてもよい。ジャケットは、入口及び出口(図示せず)を有していてよい。入口及び出口は、熱交換器/冷却装置(図示せず)及び/又は加熱若しくは冷却流体の再循環を提供するためのポンプ(図示せず)に連結していてもよい。或いは、加熱テープ(図示せず)又は加熱マントル(図示せず)を使用して、温度制御ユニット(図示せず)に連結された加熱素子によって、反応器20の温度を維持してもよい。反応器20の中身の温度を監視するために、温度センサー(図示せず)が使用されてもよい。
【0066】
約0.1時間~約72時間、或いは約1時間~約30時間、低級シラン反応物及び触媒を撹拌してもよい。混合は、ほぼ大気圧で実行されてよい。反応の経過は、例えば、ガスクロマトグラフィーを使用して監視されてもよい。支配的な反応生成物は、SiH4、Si5H12などである。
【0067】
反応完成後、反応器20をほぼ室温まで冷却する。反応器20がジャケット付きである場合、反応器20及びその内容物の冷却を補助するために、いずれかの加熱流体を冷却流体と入れ替えてもよい。液体窒素、冷凍エタノール、アセトン/ドライアイス混合物又は熱伝導剤を使用して、反応器20を冷却してもよい。或いは、加熱テープ又は加熱マントルなどのいずれかの加熱機構を止めて、自然冷却が実行されてもよい。いずれの重質の液体不揮発性シラン23も、触媒及び固体反応生成物から濾過されて、ライン22を通して反応器20から除去される。揮発性シラン21は、圧力差によって反応器20から除去される。
【0068】
揮発性シラン21を1つ又は複数のトラップ30中に回収し、n=1~100であるSinH(2n+2)混合物31を製造してもよい。例示的なトラップ30としては、ドライアイス/イソプロパノール、ドライアイス/アセトン、冷凍エタノール及び/又は液体窒素トラップが含まれる。SinH(2n+2)混合物31を1つ又は複数の容器中に回収して、次のプロセスステップの実行の前に新たな位置に輸送してもよい。或いは混合物31を、反応生成物をいずれの反応物及び反応副生成物からもさらに単離するために、蒸留ユニット40にすぐに導入してもよい。蒸留ユニット40は、SiH4反応副生成物43、n≧5である揮発性SinH2n+2、反応副生成物44、並びにいずれの未反応Si3H8反応物41及び未反応の任意選択的なSi2H6又はSi4H10反応物42から所望のポリシラン生成物45を分離する。未反応Si3H8反応物41、並びに未反応の任意選択的なSi2H6又はSi4H10反応物42は、さらなるプロセスで使用するためにリサイクルされてもよい。
【0069】
再び、ポリシラン生成物45は、次のプロセスステップの実行の前に新たな位置に輸送されてもよい。或いはポリシラン生成物45は、他の異性体52からn-異性体51を分離するために分別蒸留ユニット50に向けられてもよい。分別蒸留は、静的カラム又はスピニングバンドカラムを使用して実行されてもよい。スピニングバンド蒸留カラムの長さは、それがより少ないスペースを取るため、静的カラムのものより非常に小さく、混雑した施設において使用するために好ましくなり得る。約90%のn-テトラシランを生じるために適切な静的カラムは、約90~約120の理論プレートを必要とし、高さ約6~7メートルである。
【0070】
図2は、低級シラン反応物からSi
nH
(2n+2)混合物への触媒変換のためのフロープロセスの図である。
図1からの同一参照番号は、
図2中の同一構成部分に関して使用されている。
図1のように、
図2の接触構成部分の全ては、クリーンであり、且つ空気及び湿分を含まないべきである。
図1のように、
図2の触媒作用は、N
2、希ガス(すなわち、He、Ne、Ar、Kr、Xe)又はその組合せなどの不活性雰囲気下で実行されてよい。
【0071】
トリシラン10及び任意選択的なジシラン又はテトラシラン11は、それぞれ、ライン12及び13を通してフロー反応器25に添加される。
図1のように、Si
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、フロー反応器25中への導入の前にライン14において混合され得る。或いはSi
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、ライン12及び13(図示せず)を通してフロー反応器25に直接導入されてもよい。Si
3H
8反応物10及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物11は、隔膜ポンプ、蠕動ポンプ又はシリンジポンプなどの液体計量ポンプ(図示せず)を通してフロー反応器25に添加されてもよい。好ましくは、混合は、ほぼ大気圧の不活性雰囲気下で実行される。
【0072】
以下の
図4の議論のさらなる詳細において示されるように、触媒(図示せず)はフロー反応器25内に位置する。フロー反応器25は、約25℃~約250℃、或いは約40℃~約250℃、又は別の選択肢において、約50℃~約100℃の範囲の温度において維持される。選択される温度は、選択される触媒、並びに標的反応生成物次第である。フロー反応器25は、約0.1気圧~約10気圧の範囲の圧力に維持される。トリシラン10及び任意選択的なジシラン又はテトラシラン11反応物のフローは、約0.01~約100分のフロー反応器25中での滞留時間、或いは約2分~約20分の滞留時間、或いは約1秒~約1,000秒の滞留時間、又は別の選択肢において、約100秒~約600秒の滞留時間が提供されるように選択される。
【0073】
n=1~100であるSinH(2n+2)混合物26は、フロー反応器25を通過後にレシーバー35で回収される。レシーバー35は、限定されないが、ドライアイス/イソプロパノール、ドライアイス/アセトン、冷凍エタノール及び/又は液体窒素トラップを含むいずれの種類のトラップであってもよい。
【0074】
上記の
図1のように、Si
nH
(2n+2)混合物31は、1つ又は複数の容器で回収されて、次のプロセスステップの実行の前に新たな位置に輸送されてもよい。或いは混合物31を、反応生成物をいずれの反応物及び反応副生成物からもさらに単離するために、蒸留ユニット40にすぐに導入してもよい。蒸留ユニット40は、SiH
4反応副生成物43、n≧5である揮発性Si
nH
2n+2、反応副生成物44、並びにいずれの未反応Si
3H
8反応物41及び任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物42から所望のポリシラン生成物45を分離する。未反応Si
3H
8反応物41、並びに任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物42は、リサイクルされてもよい。この連続合成プロセスの間に品質を維持するために、濾過装置及び/又はその場でのGC分析などの未反応のSi
3H
8反応物41及び未反応の任意選択的なSi
2H
6又はSi
4H
10反応物42のリアルタイム分析及び精製が提供されてもよい。
【0075】
再び、ポリシラン生成物45は、次のプロセスステップの実行の前に新たな位置に輸送されてもよい。或いはポリシラン生成物45は、他の異性体52からn-異性体51を分離するために分別蒸留ユニット50に向けられてもよい。分別蒸留は、静的カラム又はスピニングバンドカラムを使用して実行されてもよい。スピニングバンド蒸留カラムの長さ
は、それがより少ないスペースを取るため、静的カラムのものより非常に小さく、混雑した施設において使用するために好ましくなり得る。約90%のn-テトラシランを生じるために適切な静的カラムは、約90~約120の理論プレートを必要とし、高さ約6~7メートルである。
【0076】
図3は、
図2のフロー反応器20の図である。図面を読みやすくするために、この図中に弁が含まれなかったことに留意されたい。
【0077】
ライン102を通してフロー反応器120にSiaH(2a+2)反応物を供給するために、窒素を用いてSiaH(2a+2)反応物100を加圧する。ライン102は、真空110にも接続している。フロー調節器101は、SiaH(2a+2)反応物のフローを制御する。フロー調節器101は、段階的ニードル弁、電子フローメーターなどであり得る。ゲージ103aは圧力を測定して、したがって、調整するためにフロー調節器101と連通していてもよい。
【0078】
フロー反応器120は、2つの熱電対121及び122を含む。本明細書の教示を逸脱することなく、それより多く又は少ない熱電対が使用されてよい。本明細書の教示において使用するために適切な例示的な熱電対としては、Type K又はType J熱電対が含まれる。
【0079】
SinH(2n+2)反応混合物は、ライン123を通してフロー反応器120を出る。圧力調節器104は、反応器120内の圧力を設定し、フロー反応器120からドライアイス/イソプロパノールトラップ130までSinH(2n+2)反応混合物を移動する圧力差をもたらす。ゲージ103bは、反応器120内の圧力を示す。ドライアイス/イソプロパノールトラップ130は、約-78℃より高い温度で凝縮する、いずれのSinH(2n+2)反応生成物も捕捉する。
【0080】
ドライアイス/イソプロパノールトラップ中に捕捉されない、いずれの揮発性SinH(2n+2)反応混合物も、ライン131を通して液体窒素トラップ140に凝縮される。液体窒素トラップ140は、約-78℃~約-196℃未満で凝縮するいずれのSinH(2n+2)反応生成物も捕捉する。ライン131は、真空ライン110にも接続している。圧力ゲージ103cは、ライン131における圧力を監視する。SiH4副生成物は、ライン150を通して排気ガススクラバー(図示せず)に送られる。排気ガススクラバーへの途中でSiH4副生成物を希釈するためにN2 105が用いられる。チェックバルブ106は、この自然発火性副生成物の逆流を防ぐ。
【0081】
図4は、
図3のフロー反応器120の図である。
図4中、バルブ201によって、問題解決又は予防メンテナンスのためにステンレス鋼管フロー反応器220を利用することが可能となる。ステンレス鋼管フロー反応器220は、2つの熱電対221及び222を含む。
図3のように、本明細書の教示を逸脱することなく、より多く、又はより少ない熱電対が使用されてもよい。ガラスウール202は、ステンレス鋼管フロー反応器220の開始部及び終了部に位置する。触媒(図示せず)は、反応器の開始部及び終了部に位置するガラスウール202の間に充填されるか、又はフロー反応器220の開始部及び終了部のガラスウール202の間に充填されたガラスウール(図示せず)に位置していてよい。その結果、Si
nH
(2n+2)反応物は、それがフロー反応器220の開始部でガラスウールを通過する時に、触媒作用の前に加熱され得る。当業者は、ガラスウール/触媒混合物の代わりにガラスビーズ及びペレット触媒の層が使用されてもよいことを認識するであろう。
【0082】
必要に応じて、加熱テープ203によって、ステンレス鋼管フロー反応器220に熱を提供する。断熱材204は、ステンレス鋼管フロー反応器220の温度を維持することを補助する。当業者は、本明細書の教示を逸脱することなく、他の加熱手段が使用されてもよいことを認識するであろう。或いは、例えば、ステンレス鋼管フロー反応器220は、オーブン(図示せず)に配置されてもよい。その実施形態においては、断熱材204は必要とされない。
【0083】
当業者は、開示された方法を実行するために使用されるシステムの装置構成部分のための供給源を認識するであろう。所望の温度範囲、圧力範囲、条例などに基づいて、構成部分のいくつかのレベルのカスタム化が必要とされてもよい。例示的な装置の供給元としては、ステンレス鋼製のParr Instrument Companyの装置及び構成部分が含まれる。
【0084】
所望のポリシラン生成物(
図1及び2中の50)の分別蒸留によって、約90%w/w~約100%w/wのn-Si
5H
12、n-Si
6H
14、n-Si
7H
16又はn-Si
8H
18、好ましくは約95%w/w~約100%w/wのn-Si
5H
12、n-Si
6H
14、n-Si
7H
16又はn-Si
8H
18、より好ましくは約97%w/w~約100%w/wのn-Si
5H
12、n-Si
6H
14、n-Si
7H
16又はn-Si
8H
18を含むSi含有膜形成組成物が製造される。Si含有膜形成組成物は、約0%w/w~約10%w/wの非n-異性体、好ましくは約0%w/w~約5%w/wの非n-異性体;より好ましくは約0%w/w~約3%w/wの非n-異性体をさらに含む。例えば、直径1cm及び長さ100cmのスピニングバンド蒸留カラムを使用する、3:1のn-Si
4H
10:i-Si
4H
10混合物の約192グラムの分別蒸留後、出願人は、約90%w/w~約95%w/wのn-テトラシランを製造することができた。当業者は、より高いn-Si
4H
10:i-Si
4H
10比を有する混合物及び/又はより長い蒸留カラムからより高純度のn-テトラシランが得られることを認識するであろう。
【0085】
Si含有膜形成組成物は、約97%モル/モル~約100%モル/モル、好ましくは約99%モル/モル~約100%モル/モル、より好ましくは約99.5%モル/モル~約100%モル/モル、なおより好ましくは約99.97%モル/モル~約100%モル/モルの範囲の純度を有する。
【0086】
Si含有膜形成組成物は、好ましくは、検出限度~100ppbwのそれぞれの電位金属汚染物質(例えば、少なくともAg、Al、Au、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mo、Ni、K、Na、Sb、Ti、Znなど)を含む。
【0087】
Si含有膜形成組成物中のX(X=Cl、Br又はI)の濃度は、約0ppmw~約100ppmw、より好ましくは約0ppmw~約10ppmwの範囲であり得る。
【0088】
下記の実施例で示すように、精製された生成物は、ガスクロマトグラフィー質量分光測定法(GCMS)によって分析されてよい。生成物の構造は、1H及び/又は29Si NMRによって確認されてよい。
【0089】
上記に詳細され、以下の実施例に例示されるように、Si含有膜形成組成物は、その純度を維持するためにそれを反応させない、クリーンな乾燥貯蔵容器中に保存されなければならない。
【0090】
開示された合成方法の利点は以下の通りである:
・費用及び生成物単離の問題を低減することを補助する、熱分解プロセスと比較して、より低いプロセス温度及び所望のポリシランの高い収量;
・プロセスが溶媒不要であること;
・蒸留のみによる精製;
・廃物の生成が最小限であり、環境に優しいこと;並びに
・出発材料の多くは安価であり、容易に入手可能であること。
【0091】
上記の全ては、拡大縮小可能な工業用プロセスを開発する見地から有利である。
【0092】
蒸着方法のための開示されたSi含有膜形成組成物を使用する方法も開示される。開示された方法は、電子又は光電子デバイス又は回路の製作のための元素ケイ素膜などのケイ素含有膜の堆積のためのSi含有膜形成組成物の使用を提供する。開示された方法は、半導体、光電子、LCD-TFT又はフラットパネル型デバイスの製造において有用であり得る。この方法は、その中に配置された基材を有する反応器中に、開示されたSi含有膜形成組成物の蒸気を導入することと、堆積プロセスによって基材上へ、開示されたSi含有膜形成組成物の少なくとも一部を堆積させて、Si含有層を形成することとを含む。
【0093】
開示された方法は、蒸着プロセスを使用する基材上での二金属含有層の形成、より特に、SiMOx又はSiMNx膜(式中、xが0~4であり得、且つMがTa、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Al、B、C、P、As、Ge、ランタニド(Erなど)又はそれらの組合せである)の堆積を提供する。
【0094】
基材上でケイ素含有層を形成するための開示された方法は、半導体、光起電力学、LCD-TFT又はフラットパネル型デバイスの製造においても有用であり得る。開示されたSi含有膜形成組成物は、当該技術分野において既知のいずれかの蒸着方法を使用して、Si含有膜を堆積させ得る。適切な蒸着方法の例としては、化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)が含まれる。例示的なCVD方法としては、熱CVD、プラズマ強化CVD(PECVD)、パルスCVD(PCVD)、低圧CVD(LPCVD)、亜大気圧CVD(SACVD)、大気圧CVD(APCVD)、流動性CVD(f-CVD)、金属有機化学蒸着(MOCVD)、熱線CVD(HWCVD、別名cat-CVD、熱線が堆積プロセスのエネルギー源として利用される)、ラジカル組み込みCVD及びそれらの組合せが含まれる。例示的なALD方法としては、熱ALD、プラズマ強化ALD(PEALD)、空間隔離ALD、熱線ALD(HWALD)、ラジカル組み込みALD及びそれらの組合せが含まれる。超臨界流体堆積も使用されてよい。これらの中で、熱CVD堆積は、高い堆積レート、優れた膜均一性及び共形膜品質が必要とされるプロセスに関して好まれる。熱ALD堆積は、過酷な条件において高い均一性を有する膜を形成するプロセスに関して好まれる(例えば、トレンチ、正孔又はバイア)。一選択肢において、特に急速な成長、共形性、プロセス配向及び一方向膜が必要とされる場合、PECVD堆積は好ましい。別の選択肢において、特に困難な表面(例えば、トレンチ、正孔及びバイア)上に堆積される膜の優れた共形性が必要とされる場合、PEALD堆積プロセスは好ましい。
【0095】
Si含有膜形成組成物の蒸気は、基材を含有する反応チェンバー中に導入される。反応チェンバー内の温度及び圧力並びに基材の温度は、基材上へのSi含有膜形成組成物の少なくとも一部の蒸着のために適切な条件に保持される。言い換えると、蒸発させた組成物のチェンバーへの導入後、チェンバー内の条件は、蒸発させた前駆体の少なくとも一部が基材上に堆積し、ケイ素含有膜を形成するようなものである。Si含有層の形成を補助するために共反応物が使用されてもよい。
【0096】
反応チェンバーは、限定されないが、パラレルプレート型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、シングルウエハ反応器、マルチウエハ反応器又はその他のそのような種類の堆積システムなどの堆積方法が生じるデバイスのいずれかの筐体又はチェンバーであってよい。これらの例示的な反応チェンバーの全ては、ALD反応チェンバーとして有用である。反応チェンバーは、約0.5mTorr~約760Torrの範囲の圧力に維持されてよい。加えて、反応チェンバー内の温度は、約20℃~約700℃の範囲であってよい。当業者は、所望の結果を達成するために簡単な実験を通して温度が最適化され得ることを認識するであろう。
【0097】
反応器の温度は、基材ホルダーの温度を制御すること及び/又は反応器壁部の温度を制御することのいずれかによって制御されてよい。基材を加熱するために使用されるデバイスは、当該技術分野において既知である。反応器壁部は、十分な成長速度で、そして所望の物理的状態及び組成で所望の膜を得るために十分な温度まで加熱されてよい。反応器壁が加熱され得る非限定的な例示的な温度範囲としては、約20℃~約700℃が含まれる。プラズマ堆積プロセスが利用される場合、堆積温度は約20℃~約550℃の範囲であってよい。或いは熱プロセスが実行される場合、堆積温度は約300℃~約700℃の範囲であってよい。
【0098】
或いは、基材は、十分な成長速度で、そして所望の物理的状態及び組成で所望のケイ素含有膜を得るために十分な温度まで加熱されてよい。基材が加熱され得る非限定的な例示的な温度範囲としては、150℃~700℃が含まれる。好ましくは、基材の温度は500℃以下にされる。
【0099】
その上にケイ素含有膜が堆積する基材の種類は、意図される最終使用次第で異なる。基材は、一般に、プロセスが実行される材料として定義される。基材としては、限定されないが、半導体、光電子、フラットパネル又はLCD-TFTデバイス製造において使用されるいずれの適切な基材も含まれる。適切な基材の例としては、ケイ素、シリカ、ガラス、Ge又はGaAsウエハなどのウエハが含まれる。ウエハは、以前の製造ステップから、その上に堆積された異なる材料の1つ又は複数の層を有していてもよい。例えば、ウエハは、ケイ素層(結晶質、非晶質、多孔性など)、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、オキシ窒化ケイ素層、カーボンドープされた酸化ケイ素(SiCOH)層、又はそれらの組合せを含み得る。追加的に、ウエハは、銅層、タングステン層又は金属層(例えば白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム若しくは金)を含んでいてもよい。ウエハは、マンガン、酸化マンガン、タンタル、窒化タンタルなどのバリア層を含んでいてもよい。層は平坦であっても、又はパターン化されていてもよい。いくつかの実施形態において、基材は、パターン化されたフォトレジスト膜でコーティングされていてもよい。いくつかの実施形態において、基材は、MIM、DRAM又はFeRam技術で誘電体材料として使用される酸化物(例えば、ZrO2ベースの材料、HfO2ベースの材料、TiO2ベースの材料、希土類元素酸化物ベースの材料、三元酸化物ベースの材料など)の層、又は銅及び低k層の間のエレクトロマイグレーションバリア及び接着層として使用される窒化物ベースの膜(例えば、TaN)を含み得る。開示されたプロセスは、ウエハ上に直接、或いはウエハ上の層の1つ又は1つより多く(パターン化された層が基材を形成する場合)の上にケイ素含有層を直接堆積してもよい。さらに当業者は、本明細書中で使用される「膜」又は「層」という用語は、表面上に配置されたか、又は塗布されたいくつかの材料の厚さを指し、且つ表面がトレンチ又はラインであり得ることを認識するであろう。本明細書及び請求の範囲を通して、ウエハ及びその上の関連する層は、基材と示される。利用される実際の基材は、利用された特定の前駆体の実施形態次第であり得る。しかし多くの例において、利用される好ましい基材は、水素化カーボン、TiN、SRO、Ru及びSi型基材、例えばポリシラン又は結晶質ケイ素基材から選択される。
【0100】
基材は、高アスペクト比を有するバイア又はトレンチを含むようにパターン化されてもよい。例えば、SiN又はSiO2などの共形Si含有膜は、約20:1~約100:1の範囲のアスペクト比を有するケイ素バイア(TSV)上で、いずれかのALD技術を使用して堆積され得る。
【0101】
n=4~10である場合、Si含有膜形成組成物は、そのままで供給されてよい。或いはSi含有膜形成組成物は、蒸着における使用に適切な溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、中でも、C1~C16飽和又は不飽和炭化水素から選択され得る。
【0102】
蒸着のために、Si含有膜形成組成物は、チュービング及び/又はフローメーターなどの従来の手段によって蒸気の形態で反応器に導入される。蒸気の形態は、直接液体注入、担体ガス不在下の直接蒸気吸引などの従来の蒸発ステップによって、液体を通しての担体ガスのバブリングによって、又は液体を通してのバブリングを実行しない担体ガスによる蒸気のスウィーピングによって、Si含有膜形成組成物を蒸発させることによって製造され得る。Si含有膜形成組成物は、蒸発器に液体状態で供給されてよい(直接液体注入)。それは反応器に導入される前に、蒸発器中で蒸発され、そして担体ガスと混合される。或いは、組成物を含有する容器中に担体ガスを通過させることによって、又は組成物中に担体ガスをバブリングすることによって、Si含有膜形成組成物を蒸発させてもよい。担体ガスとしては、限定されないが、Ar、He又はN2及びそれらの混合物が含まれてよい。次いで、担体ガス及び組成物は蒸気として反応器に導入される。
【0103】
必要に応じて、Si含有膜形成組成物は、Si含有膜形成組成物が十分な蒸気圧を有することが可能となる温度まで加熱されてもよい。デリバリーデバイスは、例えば0~150℃の範囲の温度に維持されてもよい。当業者は、蒸発するSi含有膜形成組成物の量を制御するために既知の様式でデリバリーデバイスの温度が調整されてよいことを認識するであろう。
【0104】
開示された組成物に加えて、反応ガスが反応器に導入されてもよい。反応ガスは、酸化剤、例えば、O2;O3;H2O;H2O2;N2O;酸素含有ラジカル、例えば、O・又はOH・;NO;NO2;カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸;NO、NO2又はカルボン酸のラジカル種;パラホルムアルデヒド;及びそれらの混合物であり得る。好ましくは、酸化剤は、O2、O3、H2O、H2O2、それらの酸素含有ラジカル、例えば、O・又はOH・及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ALDプロセスが実行される場合、共反応物はプラズマ処理された酸素、オゾン又はそれらの組合せである。酸化ガスが使用される場合、得られたケイ素含有膜は酸素も含有する。
【0105】
或いは、反応ガスは、H2、NH3、(SiH3)3N、ヒドリドシラン(例えば、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10、Si5H10、Si6H12)、クロロシラン及びクロロポリシラン(例えば、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Cl6、Si2HCl5、Si3Cl8)、アルキルシラン(例えば、Me2SiH2、Et2SiH2、MeSiH3、EtSiH3)、ヒドラジン(例えば、N2H4、MeHNNH2、MeHNNHMe)、有機アミン(例えば、NMeH2、NEtH2、NMe2H、NEt2H、NMe3、NEt3、(SiMe3)2NH)、ジアミン、例えば、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピラゾリン、ピリジン、B含有分子(例えばB2H6、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、ボラジン、置換ボラジン、ジアルキルアミノボラン)、アルキル金属(例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛)、それらのラジカル種又はその混合物であり得る。H2又は無機Si含有ガスが使用される場合、得られたケイ素含有膜は純粋なSiであり得る。
【0106】
或いは反応ガスは、限定されないが、エチレン、アセチレン、プロピレン、イソプレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ペンテン、ペンチン、シクロペンタン、ブタジエン、シクロブタン、テルピネン、オクタン、オクテン又はそれらの組合せなどの飽和又は不飽和、線形、分枝状又は環式の炭化水素であり得る。
【0107】
反応ガスをそのラジカル型へと分解するために、反応ガスはプラズマによって処理されてもよい。プラズマで処理される場合、N2は還元剤として利用され得る。例えば、プラズマは、約50W~約500W、好ましくは約100W~約200Wの範囲の電力で発生させてよい。プラズマは発生し得るか、又は反応器自体の範囲内で存在し得る。或いはプラズマは、一般に反応器から取り出される位置、例えば離れて位置するプラズマシステム中に存在してもよい。当業者は、そのようなプラズマ処理のために適切な方法及び装置を認識するであろう。
【0108】
所望のケイ素含有膜は、例えば、限定されないが、B、P、As、Zr、Hf、Ti、Nb、V、Ta、Al、Si又はGeなどの別の元素を含有する。
【0109】
Si含有膜形成組成物及び1つ又は複数の共反応物は、同時に(化学蒸着)、順番に(原子層堆積)、又は他の組合せで反応チェンバー中に導入されてよい。例えば、Si含有膜形成組成物の蒸気が1パルスで導入され得、そして2つの追加的な金属供給源が別のパルスで一緒に導入されてよい(変性原子層堆積)。或いは反応チェンバーは、Si含有膜形成組成物の導入の前に、共反応物をすでに含有していてもよい。共反応物は、反応チェンバー内に局在化されたか、又はそれから離れたプラズマシステムに通されて、ラジカルに分解されてよい。或いは、他の前駆体又は反応物が断続的に導入される間、Si含有膜形成組成物は連続的に反応チェンバーに導入されてもよい(パルス化学蒸着)。別の選択肢において、Si含有膜形成組成物及び1つ又は複数の共反応物は、その下でいくつかのウエハを保持しているサセプターが回転されるシャワーヘッドから同時に噴霧されてもよい(空間ALD)。
【0110】
1つの非限定的な例示的な原子層堆積プロセスでは、Si含有膜形成組成物の蒸気相が反応チェンバーに導入され、そこで、それが適切な基材と接触する。次いで、反応チェンバーをパージ及び/又は真空にすることによって、過剰な組成物は反応チェンバーから除去されてよい。酸素供給源は、自己制御様式で、吸収されたSi含有膜形成組成物とそれが反応する、反応チェンバーに導入される。反応チェンバーをパージ及び/又は真空にすることによって、いずれの過剰量の酸素供給源も反応チェンバーから除去される。所望の膜が酸化ケイ素膜である場合、このツーステッププロセスによって所望の膜の厚さが提供され得るか、又は必要な厚さを有する膜が得られるまで繰り返されてもよい。
【0111】
或いは所望の膜がケイ素金属/メタロイド酸化物膜(すなわち、xが0~4であり得、且つMがB、Zr、Hf、Ti、Nb、V、Ta、Al、Si、Ga、Ge又はそれらの組合せであるSiMOx)である場合、上記のツーステッププロセスの後に、反応チェンバー中に金属又はメタロイド含有前駆体の蒸気の導入が行われてもよい。金属又はメタロイド含有前駆体は、堆積されるケイ素金属/メタロイド酸化物膜の性質に基づいて選択される。反応チェンバーへの導入の後、金属又はメタロイド含有前駆体は基材と接触する。反応チェンバーをパージ及び/又は真空にすることによって、いずれの過剰量の金属又はメタロイド含有前駆体も反応チェンバーから除去される。再び、金属又はメタロイド含有前駆体と反応させるために、酸素供給源を反応チェンバー中に導入させてよい。反応チェンバーをパージ及び/又は真空にすることによって、過剰量の酸素供給源は反応チェンバーから除去される。所望の膜厚が達成されたら、プロセスを終了してよい。しかしながら、より厚い膜が望ましい場合、全4ステップのプロセスを繰り返してもよい。Si含有膜形成組成物、金属又はメタロイド含有前駆体及び酸素供給源の供給を交替することによって、所望の組成及び厚さの膜を堆積することができる。
【0112】
追加的に、パルス数を変化させることによって、所望の化学量論的M:Si比を有する膜が得られ得る。例えば、それぞれのパルス後に酸素供給源のパルスを続けて、Si含有膜形成組成物の1パルス及び金属又はメタロイド含有前駆体の1パルスを有することによって、SiMO2膜を得てもよい。しかしながら、当業者は、所望の膜を得るために必要なパルスの数が、得られた膜の化学量論的比と同一とはなり得ないことを認識するであろう。
【0113】
上記プロセスから得られるケイ素含有膜は、SiO2;SiC;SiN;SiON;SiOC;SiONC;SiBN;SiBCN;SiCN;SiMO、SiMN(式中、Mの酸化状態次第で、MはZr、Hf、Ti、Nb、V、Ta、Al、Geから選択される)を含み得る。当業者は、適切なSi含有膜形成組成物及び共反応物の適切な選択によって、所望の膜組成物が得られ得ることを認識するであろう。
【0114】
所望の膜厚が得られたら、膜に、熱焼きなまし、炉焼きなまし、急速熱焼きなまし、UV又はeビーム硬化及び/又はプラズマガス暴露などのさらなる加工を受けさせてよい。当業者は、これらの追加的な加工ステップを実行するために利用されるシステム及び方法を認識するであろう。例えば、ケイ素含有膜は、不活性雰囲気、H含有雰囲気、N含有雰囲気又はそれらの組合せの下で、約0.1秒~約7200秒の範囲の時間で、約200℃~約1000℃の範囲の温度に暴露されてよい。最も好ましくは、温度は3600秒未満の間、600℃である。より好ましくは、温度は400℃未満である。焼きなましステップは、堆積プロセスが実行される同一反応チェンバーで実行されてよい。或いは基材を反応チェンバーから取り出し、別の装置で焼きなまし/フラッシュ焼きなましプロセスを実行してもよい。いずれもの上記の後処理方法、特にUV硬化は、膜がSiN含有膜である場合、膜の連結性及び架橋結合を強化して、そして膜のH含有量を減少するために有効であることがわかった。典型的に、400℃未満(好ましくは約100℃~300℃)までの熱焼きなまし及びUV硬化の組合せを使用して、最高密度を有する膜が得られる。
【0115】
開示されたSi含有膜形成組成物は、エレクトロニクス及びオプティクス産業で使用されるケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素又は酸窒化ケイ素膜を形成するためのコーティング堆積プロセスにおいても使用されてよい。酸化ケイ素膜は、O2、O3、H2O、H2O2、NO、N2O及びそれらの組合せの少なくとも1つを含有する酸化雰囲気下で堆積させた膜の熱処理から得られる。開示されたSi含有膜形成組成物は、高温に耐えることができる強い材料を必要とする航空宇宙、自動車、軍需又は鉄鋼産業又は他のいずれかの産業で使用するための保護コーティング又はプレセラミック材料(すなわち、窒化物及び酸窒化物)を形成するために使用されてもよい。
【0116】
コーティングプロセスに関して、Si含有膜形成組成物は、好ましくは単離されたSinH(2n+2)化合物又はSinH(2n+2)混合物(n=10~100、好ましくは10~30又は30~50)を含む。SinH(2n+2)混合物は、約400Da~約1000Daの範囲のMn、約1000Da~約2000Daの範囲のMw及び約1~約10の範囲のMw/Mnを有し得る。
【0117】
コーティングプロセスで使用されるSi含有膜形成組成物は、粘度又は層の厚さなどのコーティング組成物の特性を調整するために、異なる沸点を有する溶媒又は溶媒系をさらに含んでもよい。例示的な溶媒としては、炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン又はn-ヘキサン;ケトン、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン又は2-ヘプタノン;エーテル、例えば、エチルエーテル、ジブチルエーテル又はテトラヒドロフラン;シラン、例えば、m-トリルシラン、o-トリルシラン、p-トリルシラン、p-エチルフェニルシラン、m-エチルフェニルシラン、o-エチルフェニルシラン、m-キシレン、o-キシレン又はそれらの組合せ;及びアミン、例えば、ピリジン、キシレン又はメチルピリジン;エステル、例えば、プロピオン酸2-ヒドロキシエチル又は酢酸ヒドロキシルエチル;並びにそれらの組合せが含まれる。例示的な溶媒系は、30℃~100℃の沸点(BP)を有する、より低い温度で沸騰する1つの溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、シクロヘキサン、アセトンなどを含有し得る。溶媒系は、70℃~200℃のBPを有する、より高い沸点を有し得る第2の溶媒、例えば、トルエン、THF、キシレン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、グリコールなども含み得る。コーティング方法のために適切であるために、Si含有膜形成組成物は、約500~約1,000,000、好ましくは約1,000~約100,000、より好ましくは約3,000~約50,000の範囲の分子量を有し得る。溶媒は、Si含有膜形成組成物の約60%w/w~約99.5%w/w、好ましくは約80%w/w~約99%w/w、より好ましくは約85%w/w~約95%w/wを含み得る。
【0118】
Si含有膜形成組成物は、ペルヒドロポリシラザンをさらに含み得る。1つの特に好ましいペルヒドロポリシラザンは、米国特許出願公開第2018/072571号明細書に開示される。Si含有膜形成組成物は、約0.5%w/w~約99.5%w/wのペルヒドロポリシラザン、好ましくは約10%w/w~約90%w/wのペルヒドロポリシラザンを含み得る。
【0119】
Si含有膜形成組成物のために適切な他の添加剤としては、重合開始剤、界面活性剤、顔料、UV吸収剤、pH調整剤、表面変性剤、可塑剤、分散助剤、触媒及びそれらの組合せが含まれる。触媒は、Si含有膜形成組成物を合成するのに用いられる触媒と同一であっても、又は異なっていてもよい。例示的な触媒は、脱シリル化カップリング(DSC)、架橋結合又はH2排除に触媒作用を及ぼすことによって、その後の加工ステップにおいてSi含有膜形成組成物のさらなる高密度化を促進するように選択されてよい。そのような触媒は、貯蔵時に組成物を安定に保持し、そして理想的には50℃~200℃の室温より高い温度まで加熱された場合のみ反応を誘発するように、室温におけるそれらの低い活性に関して選択されるべきである。例えば、P(Ph)3、P(トリル)3又は金属カルボニルは、高温活性化に関して適切な触媒であり得る。組成物は、光子への曝露時にさらなる架橋結合を誘発する光活性材料、例えば、光酸発生剤及び光重合開始剤、例えばラジカル開始剤、カチオン開始剤、アニオン光重合開始剤、例えば、モノアリールケトン、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート及び/又はホスフィン酸化物を含んでいてもよい。
【0120】
触媒は、Si含有膜形成組成物からシリカへの変換を促進し得る。
【0121】
Si含有膜は、当該技術分野で既知のいずれかのコーティング方法を使用して堆積されてよい。適切なコーティング方法の例は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、繊維紡糸、押出成形、成型、キャスティング、含浸、ロールコーティング、トランスファーコーティング、スリットコーティングなどが含まれる。非半導体用途での使用に関して、開示されたSi含有膜形成組成物は、BN、SiN、SiCN、SiC、Al2O3、ZrO2、Y2O3及び/又はLi2O粉末などのセラミック充填剤も含み得る。コーティング方法は、好ましくは適切な膜厚制御及びギャップフィル性能を提供するために、スピンコーティングである。
【0122】
開示されたSi含有膜形成組成物は、基材の中心に直接適用されて、次いでスピンによって基材全体に広げてもよく、又は噴霧によって基材全体に適用されてもよい。基材の中心に直接適用される場合、組成物を基材上に均等に分布するために、遠心力を利用して基材を回転させてもよい。当業者は、基材のスピンが必要であるかどうかには、Si含有膜形成組成物の粘度が寄与するであろうことを認識するであろう。代わりに、基材は、開示されたSi含有膜形成組成物に浸漬されてもよい。溶媒又は膜の揮発性成分を蒸発させるために、結果として生じる膜を特定の期間室温で乾燥させてもよく、或いは強制乾燥若しくは焼成によって、又は熱硬化及び照射、例えば、イオン照射、電子照射、UV及び/又は可視光照射などを含むいずれかの以下の適切なプロセスの1つ又は組合せの使用によって乾燥させてもよい。
【0123】
スピンオンSi含有膜形成組成物は、オプティクス用途に適切な透明な酸窒化ケイ素膜の形成のためにも使用されてよい。
【0124】
スピンコーティング、ディップコーティング又はスプレーコーティング用に使用される場合、開示されたSi含有膜形成組成物は、湿分又は酸素バリアとして、或いはディスプレイ、発光デバイス及び光起電デバイスにおける不動態化層として有用である酸化ケイ素又は窒化ケイ素バリア層の形成のために使用されてもよい。
【0125】
半導体用途において、Si含有膜形成組成物は、エッチングハードマスク、イオン注入マスク、反射防止コーティング、階調逆転層などの犠牲層の形成のために使用されてもよい。代わりに、Si含有膜形成組成物は、ギャップフィル酸化物層、プレ金属誘電体層、トランジスタ応力層、エッチング停止層、中間層誘電体層などの非犠牲層(「リーブビハインド」膜)を形成するために使用されてもよい、
【0126】
ギャップフィル用途に関して、トレンチ又は正孔は、約0.5:1~約100:1の範囲のアスペクト比を有していてよい。Si含有膜形成組成物は、典型的に基材上でスピンされ、溶媒を蒸発させるために50℃~300℃でプレベークされ、そして最終的に300~1000℃の範囲の温度において、典型的にO2、O3、H2O、H2O2、N2O、NOを含有する酸化雰囲気中で基材を焼き鈍しすることによって酸化ケイ素へと変換される。酸化物の品質は、様々な雰囲気(酸化又は不活性)中でのマルチステップ焼き鈍しプロセスによって改善され得る。
【0127】
図5は、Si含有膜形成組成物の調製、ケイ素基材の調製及びスピンコーティングプロセスのステップに関する代表的なプロセスを示すフローチャートである。当業者は、本明細書の教示から逸脱することなく、
図5に提供されるものよりも少ない、又はそれより多いステップが実行されてもよいことを認識するであろう。例えば、R&D環境において利用される特徴決定ステップは、商業的な操作においては必要とされなくてもよい。当業者は、膜の望ましくない酸化を防ぐために不活性雰囲気下で、且つ/又は膜の粒子汚染を防ぐことの補助となるクリーンルーム中でプロセスが好ましくは実行されることをさらに認識するであろう。
【0128】
ステップAにおいて、所望のSinH(2n+2)生成物(n=10~30又はn=30~50)を溶媒と混合し、1~50重量%の混合物を形成する。これ2種の成分を混合するために、当該技術分野において既知の混合機構を使用してもよい(例えば、機械的撹拌、機械的振盪など)。成分次第で、混合物を27℃~約100℃の範囲の温度まで加熱してもよい。加熱温度は、常にプレベーク温度より低く維持されるである。特定の成分次第で、混合を1分~1時間実行してよい。
【0129】
ステップBにおいて、任意選択的な触媒、任意選択的なペルヒドロポリシラザン、例えば、米国特許出願公開第2018/072571号明細書に開示されるもの、又は両方を同一様式で混合物に添加し、機械的に撹拌してもよい。成分次第で、混合物を27℃~約100℃の範囲の温度まで加熱してもよい。特定の成分次第で、混合を1分~1時間実行してよい。
【0130】
任意選択的なステップCにおいて、混合物を老化させて、添加剤間のいずれの反応も平衡に達するようにさせてよい。混合後、混合物を使用の前1時間~2週間老化させてもよい。成分次第で、混合物を27℃~約100℃の範囲の温度で老化させてもよい。触媒含有組成物に関して、触媒及びポリシランは、短時間で部分的に反応してもよい。したがって、組成物を安定化させるために、使用の前に老化が勧められる。初期老化試験結果は、組成物が、得られた酸化物膜のさらなる収縮が生じない平衡に達することを示す。当業者は、適切な老化期間を決定するために必要な老化試験を実行することが可能であるであろう。
【0131】
ステップB又は任意選択的なステップCの後、いずれの粒子又は他の固体含有物も除去するために、混合物を濾過してもよい。当業者は、フィルターがSi含有膜形成組成物の成分と適合性でなければならないことを認識するであろう。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、典型的に適切な濾過材料である。フィルターのサイズは約0.02ミクロン~約1ミクロンの範囲である。
【0132】
当業者は、混合を促進するため、及び所望のSinH(2n+2)生成物とのより均質な混合物を可能にするために、溶媒又は溶媒の1つ中で触媒をプレブレンドすることなどの他の添加順序が可能であることも認識するであろう。
【0133】
図5には、スピンコーティングプロセスのための基材を調製するための任意選択的なプロセスも提供される。
【0134】
その上にSi含有膜が堆積される平面又はパターン化された基材は、ステップ1及び2並びに代替的なステップ3a及び3bにおける堆積プロセスに対して調製されてよい。高純度気体及び溶媒が調製プロセスにおいて使用される。気体は典型的に半導体グレードであり、且つ粒子汚染がないものである。半導体使用のために、溶媒は粒子フリーであるべきであり、典型的に100粒子/mL未満(0.5μm粒子、より好ましくは10粒子未満/mL)であり、且つ表面汚染を導くであろう不揮発性残渣を含まないべきである。50ppb未満(それぞれの元素に対して、好ましくは5ppb未満)の金属汚染を有する半導体グレード溶媒が勧められる。
【0135】
任意選択的なステップ1において、基材を約60秒間~約120秒、好ましくは約90秒間、室温(約20℃~約25℃)においてアセトンなど、洗浄溶媒中で超音波処理してもよい。次いで、平面又はパターン化された基材を、約60秒~約120秒間、好ましくは約90秒間、イソプロプルアルコール(IPA)など、別の洗浄溶媒中、室温で超音波処理してもよい。当業者は、同一又は異なる超音波処理器でこれらのステップを実行してもよいことを認識するであろう。異なる超音波処理器ではより多くの装置が必要とされるが、より容易なプロセスが提供される。両方に関して使用される場合、超音波処理器は、基材のいずれの汚染も防ぐためにステップ1及び2の間に徹底的にクリーニングされなければならない。開示された方法に適切な代表的な超音波処理器としては、Leela Electronics Leela Sonic Models 50、60、100、150、200、250又は500、或いはBranson’s B Seriesが含まれる。
【0136】
任意選択的なステップ2において、基材をIPA超音波処理器から取り出し、そして新しい洗浄溶媒ですすいでもよい。N2又はArなどの不活性気体を使用して、すすがれた基材を乾燥させる。
【0137】
親水性表面が望ましい場合、任意選択的なステップ3aにおいて、ステップ2の基材を25℃及び周囲圧力において1時間、UV-オゾンによって処理して、OH末端親水性表面を生じてもよい。またステップ3aは、有機汚染もさらに除去する。
【0138】
親油性表面が望ましい場合、任意選択的なステップ3bにおいて、ステップ2の基材を25℃において1~2分間、1%HF水溶液中に浸漬させ、上部の自然酸化物層をエッチング除去し、H末端親油性表面を生じてもよい。
【0139】
当業者は、任意選択的なステップ1、2並びに代替的なステップ3a及び3bが代表的なウエハ調製プロセスを提供することを認識するであろう。複数のウエハ調製プロセスが存在し、そして本明細書の教示から逸脱することなく利用され得る。例えば、Handbook of Silicon Wafer Cleaning Technology,3rd Edition,2017(William Andrew)を参照のこと。当業者は、少なくとも基材材料及び必要とされる清浄度に基づき、適切なウエハ調製プロセスを決定し得る。
【0140】
基材は、ステップ2、3a又は3bのいずれかの後にスピンコーティングプロセスに続行してもよい。
【0141】
図5のフローチャートは、代表的なスピンコーティングプロセスも示す。
【0142】
任意選択的に上記のように調製された基材をスピンコーターに移す。例示的な適切なスピンコーターとしては、ScreenのCoat/Develop Track DT-3000、S-cubedのScene12、EVGの150XT、Brewer ScienceのCee(登録商標)Precisionスピンコーター、Laurellの650シリーズスピンコーター、Specialty Coating SystemのG3スピンコーター、又はTokyo ElectronのCLEAN TRACK ACT装置系統群が含まれる。ステップ4において、ステップB又はCのSi含有膜形成組成物をステップ2、3a又は3bの基材に分配させる。ウエハ基材はステップ5でスピンされる。当業者は、ステップ4及びステップ5が経時的(静的モード)又は同時的(動的モード)に実行されてよいことを認識するであろう。ステップ4は、手動又は自動分配デバイス(ピペット、シリンジ又は液体フローメーターなど)を使用して実行される。ステップ4及び5が同時に実行される場合、初期のスピン速度は遅い(すなわち、約5rpm~約999rpm、好ましくは約5rpm~約300rpm)。Si含有膜形成組成物の全てが分配された後(すなわち、ステップ4が静的又は動的モードで完了した時点)、スピン速度は約1000rpm~約4000rpmの範囲である。ウエハは、典型的に約10秒~約3分間を要するが、均一なコーティングが基材上に達成されるまでスピンされる。ステップ4及び5によって、ウエハ上にSi含有膜が生成される。当業者は、スピンコーティングプロセスの必要とされる期間、加速速度、溶媒蒸発速度などは、標的膜厚及び均一性を得るために、それぞれの新規配合物に対して最適化が必要とされる調節可能なパラメーターであることを認識するであろう(例えば、University of Louisville,Micro/Nano Technology Center-Spin Coating Theory,2013年10月を参照のこと)。
【0143】
Si含有膜が形成された後、ステップ6においてウエハをプレベーク又はソフトベークして、スピンコーティングプロセスからPHPS組成物のいずれの残留揮発性有機成分及び/又は副産物も除去する。触媒の活性化温度次第で、触媒作用がステップ6において開始してもよい。ステップ6は、約30℃~約300℃、好ましくは80℃~200℃の範囲の温度で、約1分~約120分の範囲の期間、熱チェンバー中又はホットプレート上で実行されてよい。代表的なホットプレートとしては、EVGの105 Bake Module、Brewer ScienceのCee(登録商標)Model 10又は11、或いはPolosのprecision bake platesが含まれる。
【0144】
ステップ7において、基材を硬化して、所望の材料を製造する。3つの非制限的な選択肢を
図5に示す。3つの選択肢のいずれも、不活性又は反応性気体を使用して実行されてよい。代表的な不活性気体としては、N
2、Ar、He、Kr、Xeなどが含まれる。反応性気体は、膜中に酸素、窒素又は炭素を導入するために使用されてよい。
【0145】
膜中に酸素を導入する代表的な反応性気体としては、O2、O3、空気、H2O、H2O2、N2O、NOなどの酸素含有気体が含まれる。O2/Ar下では、硬化温度は、約400℃~約800℃に達し得る。O2は硬化気体として使用され得る。代わりに、H2O2下、約300℃~約500℃の範囲の温度において硬化が生じ得る。H2O2は強酸化剤であり、そしてさらにトレンチ中への一貫したSi酸化物膜粘稠度を可能にし得る。
【0146】
膜中に炭素を導入する代表的な反応性気体としては、炭素含有気体、特にアルケン及びアルキン(エチレン、アセチレン、プロピレンなど)などの不飽和炭素含有気体が含まれる。
【0147】
膜中に窒素を導入する代表的な反応性気体は、DHC反応に続行することが可能となるように少なくとも1つのN-H結合を有さなければならない。完全にCフリーの膜に関して、これは、硬化気体がNH3又はN2H4を含んでなり得ることを意味する。代わりに、C含有N源が使用されてもよいが、膜中にいくらかのCをもたらし得る。代表的なC含有N源としては、置換ヒドラジン(すなわち、各Rが、独立して、H又はC1~C4炭化水素であるが、ただし、少なくとも1つのRがHであるN2R4)(例えば、MeHNNH2、Me2NNH2、MeHNNHMe、フェニルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、2-クロロへキシル-1,1-ジメチルヒドラジン、1-tert-ブチル-1,2,2-トリメチルヒドラジン、1,2-ジエチルヒドラジン、1-(1-フェニルエチル)ヒドラジン、1-(2-メチルフェニル)ヒドラジン、1,2-ビス(4-メチルフェニル)ヒドラジン、1,2-ビス(トリチル)ヒドラジン、1-(1-メチル-2-フェニルエチル)ヒドラジン、1-イソプロピルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、N,N-ジメチルヒドラジン、1-Boc-1-メチルヒドラジン、テトラメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、2-ベンジリデン-1,1-ジメチルヒドラジン、1-ベンジル-2-メチルヒドラジン、2-ヒドラジノピラジン)、第一級又は第二級アミン(すなわち、各Rが、独立して、C1~C4炭化水素であり、且つxは1又は2であるHxNR3-x)(例えば、NMeH2、NEtH2、NMe2H、NEt2H、(SiMe3)2NH、n-ブチルアミン、Sec-ブチルアミン、Tert-ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、ヘキシルアミン、イソブチルアミン、イソプロピルアミン、メチルヘキサンアミン、ペンチルアミン、プロピルアミン、環式アミン、例えば、ピロリジン又はピリミジン)、エチレンジアミン(すなわち、各Rが、独立して、H、C1~C4炭化水素であるが、ただし、少なくとも1つのRがHであるR2N-C2H4-NR2)(例えば、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン)、ピラゾリン、ピリジン、それらのラジカル、或いはそれらの混合物が含まれる。所望のSi含有膜が酸素も含有する場合、C含有N源としては、エタノールアミンなどのx=1~4炭化水素であるH2N-CxH2x-OHが含まれ得る。好ましくは、反応物はNH3、そのラジカル又はそれらの混合物である。
【0148】
ステップ7aにおいて、基材は、不活性又は反応性気体下、約101℃~約1,000℃、好ましくは、約200℃~約800℃の範囲の温度で熱硬化を受ける。炉又は急速熱プロセッサを使用して熱硬化プロセスを実行してもよい。代表的な炉としては、ThermoFisher Lindberg/Blue M(商標)管状炉、Thermo Scientific Thermolyne(商標)ベンチトップ管状炉又はマッフル炉、Insetoテーブルトップ石英管状炉、NeyTech Vulcanベンチトップ炉、Tokyo Electron TELINDY(商標)熱プロセッシング装置、又はASM International ADVANCE(登録商標)垂直炉が含まれる。代表的な急速熱プロセッサとしては、Solaris 100、ULVAC RTP-6又はAnnealsys As-one 100が含まれる。
【0149】
代わりに、ステップ7bにおいて、基材に、単色又は多色源を使用して、約190nm~約400nmの範囲の波長においてUV硬化を受けさせる。ステップ8bを実行するのに適切な代表的なVUV-又はUV-硬化システムとしては、限定されないが、Nordson Coolwaves(登録商標)2 UV硬化システム、Heraeus Noblelight Light Hammer(登録商標)10プロダクト プラットフォーム又はRadium Xeradex(登録商標)ランプが含まれる。
【0150】
さらに別のステップ7cの選択肢において、熱及びUVプロセスの両方を、ステップ7a及び7bに関して指定された同一温度及び波長基準で実行してもよい。熱及びUV硬化は、同時に又は連続的に実行されてよい。当業者は、硬化方法及び条件の選択が所望標的ケイ素含有膜によって決定されるであろうことを認識するであろう。
【0151】
別の選択肢において、熱硬化プロセスは段階的な様式で続行されてもよい。より特に、熱硬化は、約10~約30分の範囲の期間で、不活性又は反応性気体下、約50℃~約500℃の範囲の温度において開始されてよい。温度を約50℃~約150℃増加させて、さらに10~30分間維持してもよい。必要であれば、追加的な逐次的温度追加を使用してもよい。代わりに、指定されたランプ(ramp)を使用して温度を増加させ、次いで、短時間、特定の温度で維持されてもよい。例えば、ウエハは、約1℃/分~約100℃/分、好ましくは約5℃/分~約40℃/分、より好ましくは約10℃/分~約20℃/分のランピング速度で加熱される室温チェンバー中に配置されてよい。温度が、例えば、
約100℃~約400℃の所望の加熱温度に達したら、例えば、約5分~約120分間の範囲の指定された期間、ランピングを停止してもよい。次いで、同一又は異なるランピング温度速度を使用して、次の所望の加熱温度、例えば、約300℃~約600℃までチェンバー温度を増加させ、そして例えば、約5分~約120分間の範囲の別の指定された期間で維持してもよい。第3の加熱温度、例えば、約500℃~約1,000℃が所望である場合、これを再び繰り返して、そして例えば、約5分~約300分間の範囲の別の指定された期間で維持してもよい。別の選択肢において、硬化に、いずれの特定の温度でいずれかの期間が指定されることなく、遅い一定の加熱ランプを使用してもよい(例えば、約0.5℃/分~約3℃/分)。硬化が完了したら、炉を約1℃/分~約100℃/分の範囲の冷却速度で室温まで冷却させることができる。出願人が、これらの熱硬化ステップのいずれも、結果として生じる膜における亀裂及び空隙の形成を減少させるための補助となると考える。
【0152】
さらに、酸素含有雰囲気が必要とされる場合、収縮率は、O2:H2O比を制御することによってさらに減少され得る。好ましくは、O2:H2O比は約6:1~約2.5:1の範囲である。代わりに、収縮率は、H2O2:H2O雰囲気を使用して減少されてもよい。収縮率は、100%×[1-(ハードベーク膜厚)/(プレベーク膜厚)]として算出され得る。開示されたSi含有膜形成組成物は、約-5%~約15%、好ましくは約0%~約10%、より好ましくは約0%~約5%の範囲の酸化物収縮率を提供し得る。硬化後、結果として生じるSiO2膜は、約1.8:1~約2.1:1の範囲のO:Si比を有する。結果として生じるSiO2膜のC含有量は、約0原子%~約7原子%、好ましくは約0原子%~約5原子%の範囲である。Si、O及びC濃度は、X線光電子スペクトロスコピー(XPS)によって決定されてよい。1%HF水溶液を使用する硬化されたSiO2膜のウェットエッチング速度比は、1100℃において成長した熱酸化物と比較して、約1:1~約5:1の範囲である。
【0153】
ステップ8において、硬化された膜は、標準分析ツールを使用して特徴決定される。代表的なツールとしては、限定されないが、エリプソメーター、X線光電子スペクトロスコピー、原子力顕微鏡法、X線蛍光、フーリエ-変換赤外線スペクトロスコピー、走査型電子顕微鏡法、二次イオン質量分光測定(SIMS)、ラザフォード後方散乱分光分析(RBS)、応力分析のためのプロフィルメーター又はそれらの組合せが含まれる。
【0154】
上記で議論したプロセスから結果として生じるケイ素含有膜としては、SiO2;SiN;SiON;SiOC;SiONC;SiCN;MがZr、Hf、Ti、Nb、V、Ta、Al、Ge、B、Nbから選択されるSiMCOが含まれ得る。当業者は、適切なSi含有膜形成組成物及び共反応物の適切な選択によって、所望の膜組成物が得られ得ることを認識するであろう。
【0155】
開示されたSi含有膜形成組成物は、半導体電子デバイスにおけるシャロートレンチ分離誘電体、プレ金属誘電体及び中間層誘電体における用途に関して、従来技術のNH含有PHPS組成物よりも低いSi含有膜の収縮率を提供する。出願人は、開示されたSi含有膜形成組成物から製造された酸化物膜は、X線光電子スペクトロスコピー(XPS)又はエネルギー分散型X線(EDX)スペクトロスコピーによって決定される場合、いずれの特徴の底部及び上部の間で約95~100%、好ましくは98~100%の化学量論的均一性を有するであろうと考える。出願人は、さらに、結果として生じる酸化物膜が、プロフィルメーターによって決定される場合、約-160MPa~約+160MPaの範囲の薄膜応力測定値を有するであろうと考える。
【0156】
収縮率は、硬化ステップの間にそれらが酸化される前の短鎖オリゴマーの損失(揮発)に関連すると考えられるため、収縮率を減少させるための膜の硬化及びSiO2への変換の方法についても広く研究されている。そのようなものとして、硬化の間の酸化と短鎖ケイ素含有オリゴマーの蒸発の間に競合作用があり、そして硬化方法(蒸気相の組成物、温度ランプ速度など)は最終膜の収縮率に有意な影響を与える。
【0157】
全体的に、両パラメーターを組み合わせて、最終収縮率が得られる。
【0158】
本発明の特性及び目的のさらなる理解のために、添付の図面と関連して、以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【実施例】
【0159】
本発明の実施形態をさらに説明するために、次の非制限的な実施例が提供される。しかしながら、実施例は包括的であるように意図されず、そして本明細書に記載される本発明の範囲を制限するように意図されない。
【0160】
生成物流の一部又は生成物のアリコートを使用するガスクロマトグラフィー(GC)などのいずれかの適切な手段によって、反応生成物を分析することができる。以下の実施例において、Thermal Conductivity Detector(TCD)を備えたAgilent 7890A及びAgilent 6890 Gas Chromatographs上でGC分析を実行した。注入ポートは、不活性(N2又はAr)雰囲気下にあった。
【0161】
例示的な方法:カラム:Rtx-1(クロスボンドジメチルポリシロキサン)105m×0.53mm×5μm。検出器T=250℃;参照フロー:20mL/分;メイクアップフロー:5mL/分;担体ガス:5mL/分(ヘリウム);オーブン:35℃、8分、ランプ20℃/分、200℃、13分;インジェクター:200℃;スプリットレスモード;試料サイズ:1.0μL。
【0162】
実施例1.Si3H8及びB(C6F5)3からのポリシランの調製。
窒素雰囲気下のグローブボックス中、固体B(C6F5)3(0.25g、0.5mmol)を250mLの三ツ口フラスコ中に入れた。フラスコは還流凝縮器を備えており、減圧/窒素ラインに接続されていた。液体Si3H8(71.6g、775.6mmol)を窒素下でフラスコに導入した。1気圧のN2において、撹拌しながら混合物を6時間、49~54℃まで加熱した。反応の間、還流凝縮器を-30℃に維持した。反応の間に形成するシランを、還流凝縮器の後に設置される液体窒素トラップ中に凝縮した。非凝縮性気体(水素)を排出した。6時間後、反応混合物を室温まで冷却した。還流凝縮器を切断した。全ての揮発性物質を動的減圧下で液体窒素トラップに移し、22.25gの不揮発性液体(ポリシラン)がフラスコ中に残った。不揮発性液体は、6個以上のケイ素原子を有するシランの混合物であった[GC]。液体窒素トラップ中に回収される揮発性フラクションのGC分析によって、1.4%のSi2H6;89.6%のSi3H8;2.5%のiso-Si4H10及び4.1%のn-Si4H10、1.3%のSi5H12合計及び0.7%の合計6個以上のケイ素原子を有するシランを含有するSi2-Si8シランの混合物が明らかにされた。
【0163】
貯蔵のために、35重量%又は10重量%の溶液となるように、不揮発性液体(ポリシラン)をジイソプロピルアミン中に溶解した。
【0164】
構造:
【化1】
合成の条件及び再現性を例示するために、2つ以上の反応を以下の表に例示する(表1)。
【0165】
【0166】
屈折率検出器を使用して、ポリスチレン標準に基づいてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を実行した。GPC結果を
図6に示す。結果を表2にまとめる。
【0167】
【0168】
GPCデータは、GCでは検出できなかった14~20個のケイ素原子を有する不揮発性フラクションを含むことを示す。ポリシランの分子量は、実験条件、すなわち、温度に依存する。
【0169】
所与の温度、触媒量、基材及び反応時間4~8時間におけるMn 400~600DAを有するトリシランからの液体ポリマーの再現可能な形成は予想外である(表4参照)。比較のために、T=100℃及び120℃において、B(C6F5)3によるPhSiH3の重合によって、1000DAより大きい分子量を有するポリマーが得られ、最低量のB(C6F5)3(0.4%)による1つの実施例のみで200DAであった[Chemistry-A European Journal,2013,19,12526-12536]。
【0170】
比較例1.液体Si3H8による従来技術触媒に関する結果の概要
従来技術の均一触媒Cp2ZrCl2/BuLi、Cp2ZrCl2/LiNMe2、RuCl4(p-シメン)2及びNi(COD)2(COD=シクロオクタジエニル)を用いる液体Si3H8の触媒作用が実行された[Joyce Y.Corey,“Dehydrocoupling of Hydrosilanes to Polysilanes and Silicon Oligomers:A 30 Year Overview”,Advances in Organometallic Chemistry,Volume 51,2004 Elsevier Inc.からの触媒]。従来技術の不均一触媒Ru(5%)/C及びRh(5%)/Cを用いた液体Si3H8の触媒作用も実行された[“Method for Producing a Semiconductor Material”,Keizo Ikai;Masaki Minami;Mitsuo Matsuno,Nippon Oil Co.,Ltd.、米国特許第5700400A号明細書(1995年8月14日)からの触媒]。シリカ上であり、且つMMAO(MMAO=変性メチルアルミノキサン、式[(CH3)0.95(n-C8H17)0.05AlO]n)と組み合わせたFeCl3も試験した。
【0171】
【0172】
CpTiCl2及びCpZrCl2均一触媒は、トリシランを制御不可能な様式で不揮発性固体へと重合させた。その結果、これらの触媒は、異性体エンリッチドテトラシラン又は液体高級シランの制御可能な合成のために有用でない。
【0173】
RuCl4(p-シメン)2、Ni(COD)2及びFeCl3均一触媒、並びにRu(5%)/C及びRh(5%)/C不均一触媒は、非置換液体トリシランから高級シランへの変換に関する活性がない。
【0174】
実施例2.ポリシランと一緒にPHPSを使用するオキシド膜形成及び高温ハードベーキング
トルエン中7重量%のポリシラン配合物をトルエン中7重量%のPHPS配合物と1:1の体積比でブレンドした。ポリシランは、実施例1と同様に調製され、534のMn及び1345のMwを有した。PHPS配合物は、米国特許出願公開第2018/072571号明細書の実施例8に開示されるように調製され、2150のMn及び6390のMwを有した。ブレンド後、0.1~0.2mLの混合配合物を、N2充填グローブボックス中で1分間、1500rpmで1インチ平方のSiウエハ上でスピンコーティングした。Siウエハ上で形成された膜をグローブボックス中で3分間、150℃においてホットプレート上でプリベークした。ウエハをグローブボックスから取り出し、そして偏光解析装置を使用して膜厚を測定した。3つの異なるハードベーキング温度を使用して、PHPSのみの配合物及びPHPS-ポリシランブレンド配合物からの膜の収縮を比較した。表4に列挙される膜性能は、ポリシランを添加することによって最高3.2%まで膜収縮が減少することを示す。XPSデータは、これらの膜がC及びNを含まず、そしてそれらは、化学量論的なSiO1.9~2.0の化学組成を有することを示す。
【0175】
【0176】
実施例3.ポリシランと一緒にPHPSを使用するオキシド膜形成及び低温ハードベーキング
実施例2と同一のトルエン中7重量%のポリシラン配合物を実施例2と同一のトルエン
中7重量%のNHを含まないPHPS配合物と1:1の体積比でブレンドした。ブレンド後、0.1~0.2mLの混合配合物を、N2充填グローブボックス中で1分間、1500rpmで1インチ平方のSiウエハ上でスピンコーティングした。得られた膜を、実施例1に記載されているものと同様に加工した。表5に列挙される膜性能は、ポリシランを添加することによって約2%まで膜収縮が減少し得ることを示す。XPSデータは、これらの膜がC及びNを含まず、そしてそれらは、ほぼ化学量論的なSiO2の化学組成を有することを示す。
【0177】
【0178】
実施例4.触媒及びポリシランによるPHPS及び低温ハードベーキング
ジイソプロピルアミン中10重量%のポリシラン配合物を実施例2のトルエン中7重量%のNHを含まないPHPS配合物と混合することによって、1/1 w/wのPHPS/ポリシラン配合物を調製した。ポリシランは、554のMw及び509のMnを有する。2重量%のCo2(CO)8触媒を、このPHPS/ポリシラン配合物に添加した。次いで、PHPS/ポリシラン/Co2(CO)8配合物を200nmのPTFEシリンジ濾過装置に通して濾過した。0.1~0.2mLのこの配合物を、N2充填グローブボックス中で1分間、1500rpmで1インチ平方のSiウエハ上でスピンコーティングした。Siウエハ上で堆積された膜をグローブボックス中で3分間、150℃においてホットプレート上でプリベークした。プリベークされた膜をグローブボックスから取り出し、そして偏光解析装置を使用して膜厚を測定した。プリベークされた膜を管状炉に配置し、10%の過酸化水素、33%の蒸気及び57%のN2を用いて大気圧下で3時間、400℃においてハードベークした。ハードベーキング後、膜厚を再び測定し、ハードベークされた膜の厚さを得、収縮率を算出した:100%×[1-(ハードベーク膜厚)/(プリベーク膜厚)]。結果を表6に列挙する。
【0179】
【0180】
実施例5.ポリシラン及び低温ハードベーキング
1.5重量%のジイソプロピルアミン及び94重量%のp-トリルシラン中4.5重量%のポリシラン配合物を混合することによって、ポリシラン配合物の溶液を調整した。次いで、配合物を200nmのPTFEシリンジ濾過装置に通して濾過した。0.1~0.2mLのこの配合物を、N2充填グローブボックス中で1分間、1500rpmで1インチ平方のSiウエハ上でスピンコーティングした。Siウエハ上で堆積された膜をグローブボックス中で3分間、150℃においてホットプレート上でプリベークした。プリベークされた膜をグローブボックスから取り出し、そして偏光解析装置を使用して膜厚を測定した。プリベークされた膜を管状炉に配置し、10%の過酸化水素、33%の蒸気及び57%のN2を用いて大気圧下で3時間、400℃においてハードベークした。ハードベーキング後、膜厚を再び測定し、ハードベークされた膜の厚さを得、収縮率を算出した:100%×[1-(ハードベーク膜厚)/(プリベーク膜厚)]。結果を表7に列挙する。
【0181】
【0182】
本発明の実施形態が示され、説明されたが、本発明の精神又は教示から逸脱することなく、当業者はそれらの修正を実行することができる。本明細書に記載される実施形態は例示のみを目的とし、制限するものではない。組成物及び方法の多くの変形及び修正が可能であり、且つ本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、本明細書に記載される実施形態に制限されず、特許請求の範囲によってのみ制限され、その範囲は、特許請求の範囲の対象の全ての等価物を含むであろう。