(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】多層プリント配線板、多層金属張積層板、樹脂付き金属箔
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220729BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20220729BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220729BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20220729BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220729BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20220729BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H05K3/46 T
B32B25/08
B32B27/32 E
B32B27/26
B32B27/20 Z
B32B15/085 Z
H05K1/03 610K
(21)【出願番号】P 2020202546
(22)【出願日】2020-12-07
(62)【分割の表示】P 2016570529の分割
【原出願日】2016-01-05
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2015008007
(32)【優先日】2015-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015210595
(32)【優先日】2015-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 広明
(72)【発明者】
【氏名】古森 清孝
(72)【発明者】
【氏名】小山 雅也
(72)【発明者】
【氏名】栃平 順
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/046014(WO,A1)
【文献】特表2011-517112(JP,A)
【文献】特開2012-119446(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065453(WO,A1)
【文献】特開2013-151638(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00―43/00
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層を有し、導体層及び前記絶縁層を交互に積層して形成された多層プリント配線板において、
前記複数の絶縁層のうちの各絶縁層が、ポリオレフィン樹脂層のみ、液晶ポリマー樹脂層のみ、又は前記ポリオレフィン樹脂層及び前記液晶ポリマー樹脂層の両方のいずれかで形成されていると共に、
前記複数の絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が
67~90体積%であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含むことを特徴とする
多層プリント配線板。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることを特徴とする
請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーが、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体、水添ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の多層プリント配線板。
【請求項4】
前記成分(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂及び両末端ビニル基のポリフェニレンエーテルオリゴマーからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(C)硬化促進剤をさらに含むことを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(D)充填材をさらに含むことを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂層が、180℃で60分間処理した後の貯蔵弾性率が25℃~150℃において10
5~10
8Paであることを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。
【請求項8】
複数の絶縁層を有し、導体層及び前記絶縁層を交互に積層し、一方又は両方の最外層に金属層を設けて形成された多層金属張積層板において、
前記複数の絶縁層のうちの各絶縁層が、ポリオレフィン樹脂層のみ、液晶ポリマー樹脂層のみ、又は前記ポリオレフィン樹脂層及び前記液晶ポリマー樹脂層の両方のいずれかで形成されていると共に、
前記複数の絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が
67~90体積%であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることを特徴とする
多層金属張積層板。
【請求項9】
金属箔に第1絶縁層及び第2絶縁層がこの順に形成された樹脂付き金属箔であって、
前記第1絶縁層は、液晶ポリマー樹脂層のみで形成され、
前記第2絶縁層は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層で形成されていると共に、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が
67~90体積%であり、
前記第2絶縁層の前記半硬化状態のポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記第2絶縁層の前記半硬化状態のポリオレフィン樹脂層に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることを特徴とする
樹脂付き金属箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、多層プリント配線板、多層金属張積層板、樹脂付き金属箔、より詳細には、高速信号を処理する電子機器に用いられる多層プリント配線板、多層金属張積層板、樹脂付き金属箔に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス社会の実現を目指し、情報伝達の高速化は継続して進展を続けている。高速信号を処理するプリント配線板としては、フッ素樹脂基板やポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂基板等が現在使用されている。このうちPPE樹脂基板の材料については、例えば、日本国特許出願公表番号2006-516297(以下「文献1」という)に開示されている。
【0003】
更には、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができ、高速信号の伝送損失を低減することができると共に、耐熱衝撃性を高めてスルーホールめっき等の断線を抑制することができる多層プリント配線板が提供されている。この多層プリント配線板は、例えば、日本国特許出願公開番号2011-216841(以下「文献2」という)に開示されているように、導体層及び絶縁層を交互に積層して形成された多層プリント配線板において、絶縁層が、無機フィラー及びポリフェニレンエーテル樹脂を含有する熱硬化性樹脂をガラスクロスに含浸して硬化させた熱硬化性樹脂層と、液晶ポリマー樹脂層とで形成されていると共に、絶縁層全体に対して液晶ポリマー樹脂層が5~80体積%を占めている。
【発明の概要】
【0004】
現状の最先端の高速信号を処理する電子機器用のプリント配線板としては、上述のようにフッ素樹脂基板やPPE樹脂基板が主流である。
【0005】
しかしながら、フッ素樹脂基板を製造するにあたっては、通常のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができず、特殊な加工工程が必要であるというコスト上の問題がある。また、フッ素樹脂基板は、熱膨張係数が大きく耐熱衝撃性が低いので、スルーホールめっき等の断線が発生しやすいという問題もある。
【0006】
一方、文献1のようにPPE樹脂基板を製造するにあたっては、通常のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することはできるが、PPE樹脂基板は、フッ素樹脂基板に比べて高速信号の伝送特性に劣っているという問題がある。
【0007】
また文献2に記載の多層プリント配線板では、絶縁層全体に対して液晶ポリマー樹脂層が5~80体積%を占めていることによって、高速信号の伝送損失を低減することができるものであり、また、絶縁層の残りの部分がガラスクロスで強化され、かつ無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂層で形成されていることによって、耐熱衝撃性を高めてスルーホールめっき等の断線を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、上記の多層プリント配線板では、絶縁層の一部がガラスクロスで強化された熱硬化性樹脂層で形成されていることから、屈曲性が必要な基板用途での使用に不向きであるという問題がある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができ、高速信号の伝送損失を低減することができると共に、屈曲用途での使用が可能な多層プリント配線板、多層金属張積層板、樹脂付き金属箔を提供することを目的とする。
【0010】
本発明に係る多層プリント配線板は、
複数の絶縁層を有し、導体層及び前記絶縁層を交互に積層して形成された多層プリント配線板において、
前記複数の絶縁層のうちの各絶縁層が、ポリオレフィン樹脂層のみ、液晶ポリマー樹脂層のみ、又は前記ポリオレフィン樹脂層及び前記液晶ポリマー樹脂層の両方のいずれかで形成されていると共に、
前記複数の絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が67~90体積%であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る多層金属張積層板は、
複数の絶縁層を有し、導体層及び前記絶縁層を交互に積層し、一方又は両方の最外層に金属層を設けて形成された多層金属張積層板において、
前記複数の絶縁層のうちの各絶縁層が、ポリオレフィン樹脂層のみ、液晶ポリマー樹脂層のみ、又は前記ポリオレフィン樹脂層及び前記液晶ポリマー樹脂層の両方のいずれかで形成されていると共に、
前記複数の絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が67~90体積%であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層全体に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る樹脂付き金属箔は、
金属箔に第1絶縁層及び第2絶縁層がこの順に形成された樹脂付き金属箔であって、
前記第1絶縁層は、液晶ポリマー樹脂層のみで形成され、
前記第2絶縁層は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層で形成されていると共に、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の総体積に対して前記液晶ポリマー樹脂層の総体積が67~90体積%であり、
前記第2絶縁層の前記半硬化状態のポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、
前記第2絶縁層の前記半硬化状態のポリオレフィン樹脂層に占める前記成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】多層プリント配線板の一例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5Aは金属張積層板の一例を示す概略断面図であり、
図5Bはプリント配線板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
<多層金属張積層板>
まず本実施形態の多層金属張積層板20について説明する。多層金属張積層板20は、後述の多層プリント配線板10の材料として用いることができる。
図2Aに多層金属張積層板20の一例を示す。多層金属張積層板20は、1つ又は複数の絶縁層2を有し、導体層1及び絶縁層2を交互に積層し、一方又は両方の最外層に金属層5を設けて形成されている。導体層1は、実際には各種の回路を構成する導体パターンを設けて形成されているが、
図2Aでは導体層1を簡略化して図示している。金属層5は、例えば一面に広がる金属からなる層である。このように、多層金属張積層板20は、内部に少なくとも1つの導体層1を有している。
図2Aに示す多層金属張積層板20は、2つの絶縁層2、1つの導体層1及び2つの金属層5を有しているが、絶縁層2、導体層1及び金属層5の層数は特に限定されない。
図2Aに示す多層金属張積層板20においては、導体層1を挟むように絶縁層2が積層され、さらに厚み方向(積層方向)の両方の最外層に金属層5が配置されている。多層金属張積層板20は、後述のプリント配線板6と、絶縁層2を形成し得るポリオレフィン樹脂シート及び液晶ポリマーフィルムと、導体層1又は金属層5となり得る銅箔等の金属箔とを用いて製造することができる。ポリオレフィン樹脂シートは、ポリオレフィン樹脂で形成され、ポリオレフィン樹脂層3を形成する。液晶ポリマーフィルムは、液晶ポリマー樹脂で形成され、液晶ポリマー樹脂層4を形成する。
【0016】
1つ又は複数の絶縁層2のうちの各絶縁層2は、(1)ポリオレフィン樹脂層3のみ、(2)液晶ポリマー樹脂層4のみ、又は(3)ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方、のいずれかで形成されている。ここで、絶縁層2が、ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方で形成されているとは、絶縁層2が、ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方を少なくとも一層ずつ有していることを意味する。このように、各絶縁層2は、特殊加工が必要なフッ素樹脂層ではなく、上記の(1)~(3)のいずれかで形成されていることによって、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができる。
【0017】
図4A~
図4Eに1つの絶縁層2の具体的な層構成の具体例を示す。
図4Aはポリオレフィン樹脂層3のみで形成された絶縁層2を示すものであり、この絶縁層2は、ポリオレフィン樹脂シートを加熱硬化させて形成することができる。この場合、ポリオレフィン樹脂シートは、1枚のみを用いたり、2枚以上重ねて用いたりすることができる。また、
図4Bは液晶ポリマー樹脂層4のみで形成された絶縁層2を示すものであり、この絶縁層2は、液晶ポリマーフィルムにより形成することができる。この場合、液晶ポリマーフィルムは、1枚のみを用いたり、2枚以上重ねて用いたりすることができる。また、
図4Cはポリオレフィン樹脂層3の両側に液晶ポリマー樹脂層4を積層して形成された絶縁層2を示すものであり、この絶縁層2は、ポリオレフィン樹脂シートの両側に液晶ポリマーフィルムを積層して複合シートを形成し、これを加熱硬化させて形成することができる。また、
図4Dは液晶ポリマー樹脂層4の両側にポリオレフィン樹脂層3を積層して形成された絶縁層2を示すものであり、この絶縁層2は、液晶ポリマーフィルムの両側に、ポリオレフィン樹脂シートを積層して複合シートを形成し、これを加熱硬化させて形成することができる。また、
図4Eはポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4を積層して形成された絶縁層2を示すものであり、この絶縁層2は、ポリオレフィン樹脂シート及び液晶ポリマーフィルムを積層して複合シートを形成し、これを加熱硬化させて形成することができる。
図4C~
図4Eの場合、ポリオレフィン樹脂シートや液晶ポリマーフィルムは、それぞれ1枚のみを用いたり、2枚以上重ねて用いたりすることができる。
【0018】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、ポリオレフィン樹脂層3全体に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%であることが好ましい。このように、ポリオレフィン樹脂層3が成分(A)ポリオレフィン系エラストマーを多く含む場合、多層金属張積層板20及びこれを材料として製造された多層プリント配線板10の柔軟性が増し、より屈曲性が高められる。
【0019】
成分(A)ポリオレフィン系エラストマーは、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体、水添ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0020】
成分(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂及び両末端ビニル基のポリフェニレンエーテルオリゴマーからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(C)硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂層3は、成分(D)充填材をさらに含むことができる。
【0023】
一方、液晶ポリマー樹脂層4は、液晶ポリマー(LCP)樹脂をフィルム状に成形することによって形成してもよい。ここで、液晶ポリマー樹脂としては、例えば、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノール及びフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体等を挙げることができる。
【0024】
<多層金属張積層板の製造方法>
多層金属張積層板20は、例えば、次のようにして製造することができる。まず金属張積層板60を準備する。金属張積層板60は、多層金属張積層板20の材料となる。金属張積層板60の具体例としては、
図4A~
図4Eに示す絶縁層2の片面又は両面に金属箔が貼着された片面金属張積層板又は両面金属張積層板を挙げることができる。これらの例のうち、
図4Bに示す絶縁層2の両面に金属層5を設けて形成された金属張積層板60(両面金属張積層板)を
図5Aに示す。この例では、絶縁層2は、液晶ポリマー樹脂層4で形成され、金属層5は、金属箔で形成されている。以下では、液晶ポリマー樹脂層4の両面に金属箔が貼着された金属張積層板60(
図5A参照)を用いる例について説明するが、本発明はこの例に限定されない。金属張積層板60の片面の金属層5の不要部分を除去して導体層1を形成し、金属張積層板60を
図5Bに示すようなプリント配線板6に加工する。より具体的には、
図5Bでは、金属張積層板60の一方の最外層の金属層5の不要部分をエッチングなどにより除去して導体層1とし、他方の最外層の金属層5をそのまま残している。なお、実際には導体層1は、各種の回路を構成する導体パターンを設けて形成されているが、
図5Bでは導体層1を簡略化して図示している。導体層1として、高速信号の伝送が必要な回路や伝送距離の長い回路を含むものを形成する場合には、
図5Bに示すように導体層1は、液晶ポリマー樹脂層4に接触して形成することが好ましい。これにより、高速信号の伝送損失を低減することができる。また多層金属張積層板20及びこれを材料として製造された多層プリント配線板10の耐熱性を向上させる目的からも、この導体層1は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂層4に接触して形成することが好ましい。
【0025】
次に、プリント配線板6と、ポリオレフィン樹脂シート又は液晶ポリマーフィルムとを交互に積層し、これを加熱加圧成形することによって、
図2Aに示すような多層金属張積層板20を得ることができる。
図2Aに示す多層金属張積層板20は、具体的には
図5Bに示すプリント配線板6の導体層1に、ポリオレフィン樹脂層3を形成するためのポリオレフィン樹脂シート、液晶ポリマー樹脂層4を形成するための液晶ポリマーフィルム、金属層5を形成するための金属箔をこの順に重ねて、加熱加圧成形することによって製造することができる。隣接するポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の2層で1つの絶縁層2が形成されている。
【0026】
ここで、
図2Aに示す多層金属張積層板20において、プリント配線板6、ポリオレフィン樹脂シート、液晶ポリマーフィルム、金属箔の枚数を増加させることにより、多層金属張積層板20の層数を増加させて、多層化を実現することができる。
【0027】
図2Aに示す多層金属張積層板20は、プリント配線板6が外側に配置された層構成を有している。この場合、使用するプリント配線板6の一方の最外層に導体層1が設けられ、他方の最外層に金属層5が設けられている。導体層1は、各種の回路を構成する導体パターンを含み、金属層5は、例えば一面に広がる金属からなる層である。そして、多層金属張積層板20の製造時において、導体層1が内側となり、金属層5が外側となるように、プリント配線板6を配置する。一方、図示省略しているが、多層金属張積層板20が、プリント配線板6の全体が内側に配置された層構成を有する場合、使用するプリント配線板6の両方の最外層に導体層1が設けられている。これらの導体層1はいずれも多層金属張積層板20の内部に含まれる。
【0028】
図2Bに多層金属張積層板20の他の一例を示す。この多層金属張積層板20の製造には、上記のプリント配線板6に加えて、片面金属張積層板を利用することができる。片面金属張積層板の一例として、
図4Bに示す絶縁層2の片面に金属層5を設けて形成された片面金属張積層板が挙げられる。この例では、絶縁層2は、液晶ポリマー樹脂層4で形成され、金属層5は、金属箔で形成されている。一般に液晶ポリマーは熱可塑性樹脂であるので、上記の片面金属張積層板の絶縁層2をプリント配線板6に重ねて、液晶ポリマーが溶融する温度で加熱して加圧すれば、容易に多層化を実現することができる。
【0029】
多層金属張積層板20において、各絶縁層2は、(1)ポリオレフィン樹脂層3のみ、(2)液晶ポリマー樹脂層4のみ、又は(3)ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方、のいずれかで形成されている。これにより、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができる。1つ又は複数の絶縁層2の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が5~90体積%である。これにより、高速信号の伝送損失を低減することができる。具体例を挙げると、
図2Aに示す多層金属張積層板20は、2つの絶縁層2を有し、かつ2つの液晶ポリマー樹脂層4を有しているので、2つの絶縁層2の各体積を合計した総体積に対して、2つの液晶ポリマー樹脂層4の各体積を合計した総体積が5~90体積%となる。使用するプリント配線板6、ポリオレフィン樹脂シート、液晶ポリマーフィルムの仕様は、上記の条件を満たすようにあらかじめ決めておき、これらの厚み及び使用枚数も調整しておく。またこの場合も、高速信号の伝送が必要な回路や伝送距離の長い回路を含む導体層1は、液晶ポリマー樹脂層4に接触させるようにすることが好ましい。これにより、高速信号の伝送損失を低減することができる。また多層金属張積層板20の耐熱性を向上させる目的からも、この導体層1は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂層4に接触して形成することが好ましい。
【0030】
なお、多層化は、1回のみで行ったり、2回以上に分けて行ったりすることができる。また目的とする多層金属張積層板20の設計に応じ、層数に関しては特に決まりはなく限定されるものではない。
【0031】
<樹脂付き金属箔>
次に本実施形態の樹脂付き金属箔30について説明する。樹脂付き金属箔30は、上述の多層金属張積層板20の材料、後述の多層プリント配線板10の材料として用いることができる。
図3A及び
図3Bに樹脂付き金属箔30の具体例を示す。樹脂付き金属箔30は、金属箔50に第1絶縁層21及び第2絶縁層22がこの順に形成されている。
【0032】
第1絶縁層21は、(1)液晶ポリマー樹脂層4のみ、又は(2)ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方、のいずれかで形成されている。
図3Aに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、液晶ポリマー樹脂層4のみで形成されている。
図3Bに示す樹脂付き金属箔30では、第1絶縁層21は、ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方で形成されている。
図3Bでは、第1絶縁層21のポリオレフィン樹脂層3を金属箔50に重ねているが、逆に第1絶縁層21の液晶ポリマー樹脂層4を金属箔50に重ねてもよい。ここで、一般に液晶ポリマー樹脂は熱可塑性樹脂、ポリオレフィン樹脂は熱硬化性樹脂である。そのため、第1絶縁層21が液晶ポリマー樹脂層4のみで形成されている場合、第1絶縁層21は、室温では固化しているが、加熱されると溶融し、冷却されると再び固化する。一方、第1絶縁層21がポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方で形成されている場合、第1絶縁層21は、室温では硬化又は固化しているが、加熱されると一部溶融し、この一部は冷却されると再び固化する。
【0033】
第2絶縁層22は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3で形成されている。半硬化状態とは、硬化反応の中間段階の状態であり、中間段階は、ワニス状態であるAステージと硬化した状態のCステージの間の段階である。半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3は、室温でベタツキのない程度に硬化しており、さらに加熱されると一度溶融した後、完全硬化し、Cステージのポリオレフィン樹脂層3となる。
【0034】
第1絶縁層21及び第2絶縁層22の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が5~90体積%である。これにより、高速信号の伝送損失を低減することができる。
【0035】
第1絶縁層21のポリオレフィン樹脂層3及び第2絶縁層22の半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3のそれぞれが、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含む。第1絶縁層21が液晶ポリマー樹脂層4のみで形成されている場合には、第2絶縁層22の半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含む。
【0036】
第1絶縁層21のポリオレフィン樹脂層3及び第2絶縁層22の半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3のそれぞれに占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である。第1絶縁層21が液晶ポリマー樹脂層4のみで形成されている場合には、第2絶縁層22の半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である。このように、樹脂付き金属箔30において、ポリオレフィン樹脂層3が成分(A)ポリオレフィン系エラストマーを多く含む場合、多層金属張積層板20及びこれを材料として製造された多層プリント配線板10の柔軟性が増し、より屈曲性が高められる。
【0037】
樹脂付き金属箔30は、例えば、次のようにして製造することができる。まず金属箔50の表面に、樹脂シート又は樹脂フィルムを重ねて加熱加圧成形することによって第1絶縁層21を形成する。樹脂シートとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂シートが挙げられ、樹脂フィルムとしては、例えば、液晶ポリマーフィルムが挙げられる。シート及びフィルムは概念上、実質的な差はない。次に第1絶縁層21の表面に樹脂のワニスを塗工して乾燥させる。樹脂のワニスとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂のワニスが挙げられる。このようにして第2絶縁層22が形成され、樹脂付き金属箔30が製造される。樹脂付き金属箔30において、第2絶縁層22は半硬化状態である。
【0038】
具体的には、
図3Aに示す樹脂付き金属箔30を製造する場合には、金属箔50の表面に、液晶ポリマーフィルムを重ねて加熱加圧成形することによって、液晶ポリマー樹脂層4からなる第1絶縁層21を形成する。次に第1絶縁層21の表面にポリオレフィン樹脂のワニスを塗工して乾燥させる。このようにして半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3からなる第2絶縁層22が形成され、
図3Aに示すような樹脂付き金属箔30が製造される。
【0039】
図3Bに示す樹脂付き金属箔30を製造する場合には、金属箔50の表面に、順にポリオレフィン樹脂シート及び液晶ポリマーフィルムを重ねて加熱加圧成形することによって、ポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4からなる第1絶縁層21を形成する。次に第1絶縁層21の表面にポリオレフィン樹脂のワニスを塗工して乾燥させる。このようにして半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3からなる第2絶縁層22が形成され、
図3Bに示すような樹脂付き金属箔30が製造される。
【0040】
樹脂付き金属箔30を用いて、
図2Aに示す多層金属張積層板20は、次にようにして製造することもできる。
図5Bに示すプリント配線板6の導体層1に、
図3Aに示す樹脂付き金属箔30の第2絶縁層22を重ねて、加熱加圧成形することによって製造することができる。樹脂付き金属箔30の第2絶縁層22が半硬化状態から完全硬化状態に変化することにより、プリント配線板6と樹脂付き金属箔30とが接着される。隣接する第1絶縁層21及び第2絶縁層22(硬化後のポリオレフィン樹脂層3)の2層で1つの絶縁層2が形成される。このように、樹脂付き金属箔30の第2絶縁層22(半硬化状態のポリオレフィン樹脂層3)は接着層として機能する。液晶ポリマー樹脂の溶融温度に比べて、半硬化状態のポリオレフィン樹脂の溶融温度ははるかに低温であるので、本実施形態の樹脂付き金属箔30は、より穏和な条件で成形することができることから、加工性に優れており、多層金属張積層板20及び多層プリント配線板10の材料として好適である。
【0041】
<多層プリント配線板>
次に本実施形態の多層プリント配線板10について説明する。多層プリント配線板10は、多層金属張積層板20の最外層の金属層5の不要部分をエッチングにより除去して導体層1を形成することによって製造することができる。
図1に本実施形態の多層プリント配線板10の一例を示す。多層プリント配線板10は、1つ又は複数の絶縁層2を有し、導体層1及び絶縁層2を交互に積層して形成されている。
図1に示す多層プリント配線板10は、2つの絶縁層2及び3つの導体層1を有しているが、絶縁層2及び導体層1の層数は特に限定されない。
図1に示す多層プリント配線板10においては、導体層1と絶縁層2とが交互に積層され、厚み方向(積層方向)の両方の最外層に導体層1が配置されている。多層プリント配線板10は、例えば、多層金属張積層板20の一方又は両方の最外層の金属層5の不要部分をエッチングなどにより除去して導体層1を形成することができる。導体層1には、例えば、信号層、電源層、グラウンド層が含まれる。なお、実際の多層プリント配線板10においては、導体層1は、各種の回路を構成する導体パターンを設けて形成されているが、
図1では導体層1を簡略化して図示している。金属層5は、例えば、一面に広がる金属からなる層を意味する。また、
図1において、異なる導体層1同士を電気的に接続するためのスルーホールめっき等は図示省略している。
【0042】
多層プリント配線板10は、導体層1及び絶縁層2を交互に積層して形成されているが、絶縁層2が、特殊加工が必要なフッ素樹脂層ではなく、ポリオレフィン樹脂層3のみ、液晶ポリマー樹脂層4のみ、又はポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方のいずれかで形成されていることによって、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができる。また、1つ又は複数の絶縁層2の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が5~90体積%であることによって、高速信号の伝送損失を低減することができる。また多層プリント配線板10は、ガラスクロスで強化された熱硬化性樹脂層を有しておらず、ポリオレフィン樹脂層3を有しているため、屈曲用途での使用が可能である。特にポリオレフィン樹脂層3は、180℃で60分間処理した後の貯蔵弾性率が25℃~150℃において、105~108Paであることが好ましい。これにより、多層プリント配線板10の耐熱衝撃性を高めてスルーホールめっき等の断線を抑制することができ、更にリフロー時の半田耐熱性を高める効果を奏する。
【0043】
1つ又は複数の絶縁層2の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が5体積%未満であると、高速信号の伝送が必要な導体層1を十分に確保することができず、また耐熱性能を十分に確保することもできない。1つ又は複数の絶縁層2の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が90体積%を超えると、多層プリント配線板10の厚み方向(積層方向)の熱膨張係数(z-CTE)が高くなり、耐熱衝撃性が低下してスルーホールめっき等の断線を十分に抑制することができなくなる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、1つ又は複数の絶縁層2のうちの各絶縁層2が、ポリオレフィン樹脂層3のみ、液晶ポリマー樹脂層4のみ、又はポリオレフィン樹脂層3及び液晶ポリマー樹脂層4の両方のいずれかで形成されていることによって、従来のエポキシ樹脂基板やポリイミド樹脂基板等と同様に加工することができる。また1つ又は複数の絶縁層2の総体積に対して液晶ポリマー樹脂層4の総体積が5~90体積%であることによって、高速信号の伝送損失を低減することができる。更に多層プリント配線板10、多層金属張積層板20、樹脂付き金属箔30は、ガラスクロスで強化された熱硬化性樹脂層を有しないため、屈曲用途での使用が可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0046】
実施例1~5及び比較例1において、
図1に示すような3層プリント配線板を製造した。説明の便宜上、3層の導体層1(導体パターンを設ける前の銅箔も含む)は、一方の最外層から順にL1~L3と名付けて区別することにする。なお、表1中、「PCB構成」は3層プリント配線板の層構成を意味する。また、以下において、例えば、「L1/L2の銅張積層板(又はプリント配線板)」等の表現は、L1、L2の導体層1を含む銅張積層板(又はプリント配線板)を意味し、また、「L1~L3の3層プリント配線板」等の表現は、L1~L3の導体層1を全て含む3層プリント配線板を意味する。また、表2及び表3に実施例1~5及び比較例1で用いたポリオレフィン樹脂シートを構成する樹脂組成物を示す。
【0047】
(実施例1-(1)~1-(11))
厚み50μmの液晶ポリマーフィルム((株)クラレ製「Vecstar」)を1枚用い、その両側に厚み18μmの銅箔を重ねた後、これを310℃で10分間加熱加圧成形することによって、L1/L2の液晶ポリマー銅張積層板を製造した。また、同様の液晶ポリマーフィルムに対し片側のみに厚み18μmの銅箔を重ね、同様の成形をすることによって、L3の液晶ポリマー銅張積層板を製造した。
【0048】
次に、L1/L2の液晶ポリマー銅張積層板のL2に信号層を形成し、L1~L2の液晶ポリマープリント配線板を得た。
【0049】
また、厚み25μmのポリオレフィン樹脂シートを表2に示した(1)~(11)の各種類の樹脂組成物で形成し、このポリオレフィン樹脂シートを2枚重ねて厚み50μmの接着シートを形成し、この接着シートをL1~L2のプリント配線板とL3の銅張積層板との間に介在させ、これを180℃で60分間加熱加圧成形することによって、3層金属張積層板を製造した。表2に示す各種類の樹脂組成物を構成する各成分の具体的なメーカー名、商品名を表3に示す。
【0050】
そして、3層金属張積層板のL1、L3にグラウンド層を形成することによって、3層プリント配線板を製造した。
【0051】
(実施例2-(1)~2-(11))
厚み12μmの銅箔を使用したことと、厚み25μmのポリオレフィン樹脂シートを接着シートとして1枚使用したこと以外は、実施例1と同じ方法で3層プリント配線板を製造した。
【0052】
(実施例3-(1)~3-(11))
厚み25μmの液晶ポリマーフィルムを使用したことと、厚み50μmのポリオレフィン樹脂シートを8枚重ねて厚み400μmの接着シートとして使用したこと以外は、実施例2と同じ方法で3層プリント配線板を製造した。
【0053】
(実施例4-(1)~4-(11))
厚み25μmの液晶ポリマーフィルム((株)クラレ製「Vecstar」)を1枚用い、その両側に厚み12μmの銅箔を重ねた後、これを310℃で10分間加熱加圧成形することによって、L1/L2の液晶ポリマー銅張積層板を製造した。また、同様の液晶ポリマーフィルムに対し片側のみに厚み12μmの銅箔を重ね、同様の成形をすることによって、L3の液晶ポリマー銅張積層板を製造した。次に、L3の液晶ポリマー銅張積層板の液晶ポリマー樹脂層上に、ポリオレフィン樹脂として、表2に示した(1)~(11)の各種類の樹脂組成物を塗工乾燥して、厚み25μmのポリオレフィン樹脂層を形成し、液晶ポリマー片面銅張積層板を製造した。
【0054】
次に、L1/L2の液晶ポリマー銅張積層板のL2に信号層を形成し、L1~L2の液晶ポリマープリント配線板を得た。
【0055】
L1~L2の液晶ポリマープリント配線板とL3の液晶ポリマー片面銅張積層板とを重ね合わせ、これを180℃で60分間加熱加圧成形することによって、3層金属張積層板を製造した。
【0056】
そして、3層金属張積層板のL1、L3にグラウンド層を形成することによって、3層プリント配線板を製造した。
【0057】
(実施例5)
ポリオレフィン樹脂シートとして、表2に示す(12)の樹脂組成物で形成された厚み25μmのポリオレフィン樹脂シートを1枚使用したこと以外は、実施例1と同じ方法で3層プリント配線板を製造した。
【0058】
(比較例1)
接着シートとして、厚み100μmのガラスクロス強化ポリフェニレンエーテル樹脂プリプレグ(ガラスクロスで強化され、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有するプリプレグ)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で3層プリント配線板を製造した。
【0059】
実施例及び比較例に関して下記評価を行った。
【0060】
(伝送損失)
各3層プリント配線板について、L2の信号層の5GHzでの伝送損失を測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
(屈曲性)
各3層プリント配線板について、L1にL(ライン)/S(スペース)=1/1mmの配線パターンを形成し、MIT法(JIS P 8115)での屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
(耐熱性)
各3層プリント配線板について、L1に25mm角の銅パターンを形成し、常態(30℃以下、60%Rh以下)及び吸湿(60℃、60%Rh、120H)後の半田Floatでの耐熱性(JIS C 5012 10.4.1)を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
実施例1~4の各々において、樹脂組成物を11種類のいずれにしても、各評価項目の結果は変わらなかった。
【0067】
表1に見られるように、各実施例は、比較例1に比べて屈曲性に優れることが確認された。比較例1ではガラスクロス強化ポリフェニレンエーテル樹脂プリプレグを用いたため、屈曲性が得られなかった。
【0068】
また、実施例1~4は、実施例5に比べて屈曲性が更に優れ、吸湿後の半田耐熱性においても優れることが確認された。実施例1~4は実施例5よりもエラストマーの含有率が大きいため柔軟性が優れ、その結果、屈曲性が優れる結果となった。また、樹脂の機械的強度が大きいため耐熱性に優れた結果となった。