(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】治療検査システムの作動方法、並びに治療検査システムの治療検査プログラム、及び、その記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20220729BHJP
A61B 5/0285 20060101ALI20220729BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20220729BHJP
A61B 8/06 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61B5/11 310
A61B5/11 300
A61B5/0285 H
A61B5/026 120
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2017172636
(22)【出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-08-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/140812(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361020(US,A1)
【文献】特開2012-075758(JP,A)
【文献】特表2017-510368(JP,A)
【文献】特開2005-304890(JP,A)
【文献】特開2015-100382(JP,A)
【文献】特開2007-317144(JP,A)
【文献】特開2011-115344(JP,A)
【文献】特開2012-208735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0149139(US,A1)
【文献】国際公開第2016/092707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/026
A61B 5/0285
A61B 5/06-5/22
A61B 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、
前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、
さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法であって、
喉頭隆起の移動方向に沿って配置された1つ乃至複数のセンサからの喉頭隆起の動きの継時変化を検出して嚥下運動データを作成する工程と、
被検者の咀嚼運動に関わる挙動の継時変化を検出して咀嚼運動データを作成する工程と、
前記脳血流を測定する頭部血流検知センサからの血流の変化を検出して頭部血流データを作成する工程と、それら検出データの相関関係から、
十分に咀嚼又は嚥下しているかを自動で監視する工程と、
脳血流が所定血流に達成するまで咀嚼又は嚥下できるように改善を促す工程と、
を含むことを特徴とする老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のための治療検査システムの作動方法。
【請求項2】
ヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、
前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、
さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法であって、
喉頭隆起の移動方向に沿って配置された1つ乃至複数のセンサからの喉頭隆起の動きの継時変化を検出して嚥下運動データを作成する工程と、
前記脳血流を測定する頭部血流検知センサからの血流の変化を検出して頭部血流データを作成する工程と、それら検出データの相関関係から、
嚥下から次の嚥下までの脳血流を自動で監視する工程と、
脳血流が所定血流に足りない場合に改善を促す工程と、
を含むことを特徴とする老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のための治療検査システムの作動方法。
【請求項3】
ヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、
前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、
さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法であって、
被検者の連続する咀嚼運動に関わる挙動の継時変化を検出して咀嚼運動データを作成する工程と、
連続する咀嚼時の前記脳血流を測定する頭部血流検知センサからの血流の変化を検出して頭部血流データを作成する工程と、それら検出データの相関関係から、
連続する咀嚼時の脳血流を自動で監視する工程と、
脳血流が所定血流に足りない場合に改善を促す工程と、
を含むことを特徴とする老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のための治療検査システムの作動方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の作動方法を治療検査システムにより実行させるためのプログラム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の作動方法を治療検査システムにより実行させるためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの嚥下運動又は/及び咀嚼運動による機能障害改善を実現する治療検査システムの作動方法、並びに治療検査システムの治療検査プログラム、及び、その記憶媒体に関するのである。
【背景技術】
【0002】
一般にヒトは老化に伴って摂食嚥下機能は低下する。
【0003】
このような機能低下の器質的原因としては、歯や歯槽骨が失われることにより咀嚼筋が衰えたり、口腔、咽頭、食道の嚥下筋の筋力低下、味覚の低下、唾液の分泌減少、咽頭下垂による飲込み範囲の拡大や、注意・集中力低下等がある。
【0004】
また、機能的原因としては、脳血管障害、神経疾患(パーキンソン病)等がある。
【0005】
さらに、心理的原因 としては、認知症、拒食、心身症等がある。
【0006】
嚥下機能が低下すると、食べ物や飲み物が正しく食べられず気道に入ることにより誤嚥がおこり、気道で細菌やウイルスが繁殖し、誤嚥性肺炎の原因になる。
【0007】
また、認知症の進行により、嚥下機能や咀嚼機能が低下し、食べることが徐々に困難になってくる。
【0008】
その症状としては、空腹なのに食べ物を見ても食べようとしない、先ほど食べたばかりなのにまた食べてしまう、食べ物を口に入れても飲み込もうとしなくなる、口にした食べ物を吐き出してしまう等の例を挙げることができる。
【0009】
このような症状が継続すると低栄養、脱水症の原因となってしまう。
【0010】
認知症初期の段階では、食べたことを忘れたり、食器の使い方が分からなくなったり、食事に集中できなくなったりする。
【0011】
また、認知症中期の段階では、脳の萎縮が進み、食事が食べ始められない、食事が途中で中断する、食べるペースが乱れる、誤嚥も見られるようになる等の症状が現れる。
【0012】
さらに、認知症末期の段階では、脳の萎縮が重度になり、嚥下機能自体が障害されるようになる、そのため口の中の食べ物をうまく粥状にまとめられない、口の中に食べ物を溜め、喉に送れない、誤嚥、窒息のリスクが高くなる、食べる量が少なくなってくる等の症状が現れる。
【0013】
このように、認知症の程度が進むにつれて口腔機能は悪化する現象が見られる。
咀嚼時のヒトの脳の状態を調べると、日ごろよく噛んで食べている人ほど大脳皮質の運動野(こめかみ部のうしろ辺りにある)が強く活性化しており、口腔機能と認知症の関連性が推測できる。
【0014】
加齢による初期の認知症症状はよく噛むことでその進行をおさえることができると推測される。
【0015】
また、咀嚼が脳に及ぼす影響もあり、咀嚼できないことがアルツハイマー型認知症の発症リスクになると考えられる。
【0016】
従って、高齢者における噛み合わせ・咀嚼機能の回復は、活動エネルギーの確保ばかりではなく、日常生活動作能力を高めるとともに、加齢に伴う全身機能の低下や恒常性の劣化を抑制し、長寿・自立・生甲斐など、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:quality of life)を確保するための重要な因子の一つであると言える。
【0017】
これらのことから、高齢者等の食事の際に食べものを何度もよく噛んで食べるという意識付けをすることによって、顎を動かし、脳の血流が増し、脳血管内の血流の流れをよくすることができ、認知症防止を図れることが知られている。
また、脳血流と嚥下の関係に関してさらに詳述すると、近年では嚥下に努力を要すると血流が増すこと、血流が良好でないと誤嚥すること、等の関係も分かってきている。
具体的には、大脳皮質の中で加齢によって障害されやすいのは感覚に関わる領域であり,運動に関わる領域はその機能が維持されているがゆえに嚥下時に大きな努力が強いられ,高齢者の嚥下時にはその活性が強まっていることが判明している。
また,認知症やラクナ脳梗塞等で顕著に障害されやすいのも感覚に関わる領域であり、誤嚥性肺炎を繰り返す患者においてはこれらの領域の脳血流が低下していることが分かってきている。
したがって、嚥下と脳血流の相関関係をみることで嚥下に異常があるか否かを調べることが極めて肝要となる。
【0018】
特許文献1には、被検者の咀嚼動作に関する物理量を検出して、当該咀嚼動作に関する物理量に基づいて、当該被検者の咀嚼が継続しているかの検出結果を出力する咀嚼検出手段と、前記被検者の咽頭または喉頭の動きに関する物理量を検出して、当該咽頭または喉頭の動きに関する物理量に基づいて、当該咽頭または喉頭が所定の動きをしているかの検出結果を出力する動き検出手段と、前記咀嚼検出手段および動き検出手段の各検出結果に基づいて、前記被検者が嚥下障害であるかの判定結果を出力する嚥下障害判定手段と、を備える嚥下障害検出システムが提案されている。
【0019】
しかし、特許文献1の嚥下障害検出システムの場合、検出結果に基づき被検者が嚥下障害であることの判定結果を出力するものであり、被検者の嚥下運動や咀嚼運動による機能障害を訓練によって改善することを目的としたものではなく、情報提供手段の指示通りに嚥下したか否かを咀嚼と嚥下との相関関係を見ることで監視するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法であって、喉頭隆起の移動方向に沿って配置された1つ乃至複数のセンサからの喉頭隆起の動きの継時変化を検出して嚥下運動データを作成する工程と、被検者の咀嚼運動に関わる挙動の継時変化を検出して咀嚼運動データを作成する工程と、前記脳血流を測定する頭部血流検知センサからの血流の変化を検出して頭部血流データを作成する工程と、それら検出データの相関関係から、十分に咀嚼又は嚥下しているかを自動で監視する工程と、脳血流が所定血流に達成するまで咀嚼又は嚥下できるように改善を促す工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
請求項1記載の発明によれば、被検者の咀嚼運動、嚥下運動、頭部血流の各データの相関関係に基づき、頭部血流が所定血流に達成するまで咀嚼又は嚥下できるように改善を促すことができる治療検査システムの作動方法を提供することができる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、被検者の嚥下運動、頭部血流の各データの相関関係に基づき、頭部血流が所定血流に達成するまで嚥下できるように改善を促し、老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のために有効な治療検査システムの作動方法を提供することができる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、被検者の咀嚼運動、頭部血流の各データの相関関係に基づき、頭部血流が所定血流に達成するまで咀嚼できるように改善を促し、老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のために有効な治療検査システムの作動方法を提供することができる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、本発明の治療検査システムに適用して、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の作動方法を実現することができるプログラムを提供することができる。
【0043】
請求項5記載の発明によれば、本発明の治療検査システムにおいて当該記憶媒体に格納したプログラムを読み込んで使用することで、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の作動方法を実現することができる記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係る治療検査システムの要部を被検者の頭部、首回りに取り付け,かつ、情報提供手段を視認する状態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は本実施例に係る治療検査システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】
図3は本実施例に係る治療検査システムにおけるネックバンド型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は本実施例に係る治療検査システムにおけるカチューシャ型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図5】
図5は本実施例に係る治療検査システムにおける鉢巻き型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部・顎部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図6】
図6は本実施例に係る治療検査システムにおけるカチューシャ型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部・顎部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図7】
図7は本実施例に係る治療検査システムにおけるネックバンド型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部・顎部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図8】
図8は本実施例に係る治療検査システムにおけるヘアーバンド型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部装着フレームを被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は本実施例に係る治療検査システムにおけるネックバンド型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部貼付具を被検者に取り付けた状態を示す概略構成図である。
【
図10】
図10は本実施例に係る治療検査システムにおける一対の咀嚼運動検知センサ、頭部血流検知センサ、演算手段を備える頭部装着フレームと、情報提供手段との交信状態を示す概略平面図である。
【
図11】
図11は本実施例に係る治療検査システムにおける咀嚼運動検知センサ、頭部血流検知センサ、演算手段を備える頭部装着フレームの構成例を示す概略平面図である。
【
図12】
図12は本実施例に係る治療検査システムにおける咀嚼運動検知センサ、頭部血流検知センサ、演算手段、複数種の情報提供手段を備える頭部装着フレームの構成例を示す概略平面図である。
【
図13】
図13は本実施例に係る治療検査システムにおける咀嚼運動検知センサの具体的構造例を示す概略断面図である。
【
図14】
図14は本実施例に係る治療検査システムにおける喉頭部装着フレームの構成例を示す概略図である。
【
図15】
図15は本実施例に係る治療検査システムにおける喉頭部装着フレームに設けた嚥下運動検知センサを構成する3個のセンサの被検者の喉頭部に対する概略配置説明図である。
【
図16】
図16は本実施例に係る治療検査システムにおいて被検者の咀嚼運動、嚥下運動に関連した作動方法を実施する場合のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図17】
図17は本実施例に係る治療検査システムにおいて被検者の咀嚼運動、頭部血流に関連した作動方法を実施する場合のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図18】
図18は本実施例に係る治療検査システムにおいて被検者の嚥下運動、頭部血流に関連した被検者の作動方法を実施する場合のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図19】
図19は本実施例に係る治療検査システムにおいて被検者の咀嚼運動、嚥下運動、頭部血流に関連した作動方法を実施する場合のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図20】
図20は本実施例に係る治療検査システムの作動方法のうち、嚥下から次の嚥下までの咀嚼数の判定処理を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は本実施例に係る治療検査システムによる被検者の治療検査方法のうち、嚥下周期、咀嚼数の適否の判定処理を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は本実施例に係る治療検査システムの作動方法のうち、嚥下から次の嚥下までの頭部血流(脳血流)の適否の判定処理を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は本実施例に係る治療検査システムの作動方法のうち、連続する咀嚼時の頭部血流の適否の判定処理を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は本実施例に係る治療検査システムの作動方法のうち、咀嚼・嚥下機能の適否、及び、頭部血流の適否の判定処理を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【
図25】
図25は本発明の別の実施例に係る治療検査システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【
図26】
図26は別の実施例に係る治療検査システムに基づいてネックバンド型とした頭部装着フレーム、及び、喉頭部貼付具を被検者に取り付けた状態で検知信号を無線送信する構成とした態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、その目的をヒトの何らかの機能障害が、被験者の食生活による機能障害又は老化や病気に伴う脳の機能障害を、前記被験者の嚥下運動又は/及び咀嚼運動により改善するための治療検査システムの作動方法であって、さらに、前記被検者の喉頭周辺領域の動き又は音を検知する嚥下運動検出手段、あるいは咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知する咀嚼運動検出手段のいずれか一方又は両方の検出手段に、前記被験者の脳血流の状態までも考慮し、脳血流を測定する頭部血流検出手段を備える構成から成る治療検査システムの作動方法であって、喉頭隆起の移動方向に沿って配置された1つ乃至複数のセンサからの喉頭隆起の動きの継時変化を検出して嚥下運動データを作成する工程と、被検者の咀嚼運動に関わる挙動の継時変化を検出して咀嚼運動データを作成する工程と、前記脳血流を測定する頭部血流検知センサからの血流の変化を検出して頭部血流データを作成する工程と、それら検出データの相関関係から、十分に咀嚼又は嚥下しているかを自動で監視する工程と、脳血流が所定血流に達成するまで咀嚼又は嚥下できるように改善を促す工程と、を含むことを特徴とする老化や病気に伴う脳の機能障害の監視又は改善のための治療検査システムの作動方法により実現した。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例に係る治療検査システム、該治療検査システムの作動方法、治療検査プログラム、及び、記憶媒体について図面を参照して詳細に説明する。
【0047】
本実施例に係る治療検査システム1の基本的構成について
図1、
図2を参照して説明する。
図1は本実施例に係る治療検査システム1において、被検者Mの頭部にネックバンド型又はカチューシャ型の態様で装着可能な帯体状弾性材からなり全体として略U状を呈するように湾曲形成した頭部装着フレーム2を取り付けるとともに、被検者Mの喉頭部から首回りに主に帯体状弾性材からなる詳細は後述する嚥下運動検知センサ52を備える喉頭部装着フレーム3(
図14参照)を取り付け、かつ、被検者Mが情報提供手段71の一つであるタブレット型コンピュータ72の画面を視認する状態を示し、また、
図2は本実施例に係る治療検査システム1の全体構成を示すものである。
【0048】
前記頭部装着フレーム2は、被検者Mの咀嚼運動を検知する咀嚼運動検知センサ22を配置した咀嚼筋装着手段を兼ねるとともに、被検者Mの頭部血流(以下、「脳血流」ともいう)を検知する頭部血流検知センサ42を配置した頭部装着手段を兼ねる構成としている。
【0049】
さらに前記頭部装着フレーム2には、演算手段11を備えている。
【0050】
前記嚥下運動検知センサ52は、電気ケーブル4により前記演算手段11に接続されている。
【0051】
尚、前記演算手段11は、前記頭部装着フレーム2とは別体で構成し、頭部装着フレーム2と分離した位置に配置するようにしてもよい。以下に述べる各例の場合も同様である。
【0052】
前記喉頭部装着フレーム3は、被検者Mの嚥下運動を検知する嚥下運動検知センサ52を配置した喉頭部装着手段として機能する構成としている。
【0053】
また、前記咀嚼運動検知センサ22、頭部装着フレーム2により咀嚼運動検出手段21を構成し、前記頭部血流検知センサ42、頭部装着フレーム2により頭部血流検出手段41を構成し、さらに、前記嚥下運動検知センサ52、喉頭部装着フレーム3により嚥下運動検出手段51を構成している。
【0054】
前記咀嚼運動検知センサ22又は前記嚥下運動検知センサ22は、例えば空気圧センサ、変位センサ、振動センサ、加速度センサ、感音センサ、光センサ、筋電計のうちのいずれかのセンサにより選定されるものであり、具体例としてはマイクロホン、咽頭マイクロホン、骨伝導マイクロホン、加速度センサ、圧力センサ、筋電センサ等の例を挙げることができる。
【0055】
前記咀嚼運動検知センサ22は、咀嚼運動に関わる顔の筋肉の動き又は咬合音を検知し、前記嚥下運動検知センサ52は、被検者Mの喉頭周辺領域の動き又は音を検知するように構成している。
【0056】
前記頭部血流検知センサ42としては、例えば、株式会社光響のレーザードップラー血流計、オメガウェーブ(株)のレーザー血流計、日本光電工業(株)の超音波トランジット血流計の各技術を採用する例を挙げることができ、頭部血流検知センサ42の選択の自由度を大きくすることができる。
【0057】
次に、
図2を参照して、本実施例の治療検査システム1の全体構成について詳述する。
本実施例の治療検査システム1は、前記咀嚼運動検出手段21の咀嚼運動検知センサ22からの検知信号、前記頭部血流検出手段41の頭部血流検知センサ42からの検知信号、及び、前記嚥下運動検出手段51の嚥下運動検知センサ52からの各検知信号が演算部15に伝送され、予め格納している治療検査プログラムに基づき、被検者Mの咀嚼、嚥下、頭部血流に関する詳細は後述する演算処理、検査処理を行い、検査処理結果を複数種類からなる情報提供手段71に出力する演算手段11を有している。
【0058】
さらに詳述すると、前記咀嚼運動検知センサ22からの検知信号、前記嚥下運動検知センサ52からの各検知信号は各々増幅器12、12により増幅された後、周波数フィルター13により各々フィルター処理され、さらにA/D変換器14によりデジタル信号に変換されて演算手段11を構成する演算部15に伝送されるように構成している。
【0059】
前記頭部血流検知センサ42からの検知信号も演算部15に伝送されるように構成している。
【0060】
また、前記演算手段11は、前記検査処理結果に応じて前記頭部装着フレーム2に組み込んだ情報提供手段71を構成する駆動モータ74(頭部装着フレーム2の振動)、ブザー75(鳴動)、音声発生器76(音声発音)、表示器77(文字情報等表示)のいずれかの要素又はこれら各要素の任意の組み合わせからなる複数要素を駆動する情報提供手段駆動部16と、前記検査処理結果を無線通信(赤外線通信、ブルートゥース(登録商標)通信、又は、無線LAN(Wi-Fi)通信のいずれかの方式)により情報提供手段71を構成するタブレット型コンピュータ72やスマートフォン73に送信し、前記検査処理結果を被検者M自身やドクター等の視認に供する無線通信手段17とを具備している。
【0061】
前記ブザー75に替えて図示しないがLED光を発するLED素子を用いる構成とすることもできる。
【0062】
本実施例の治療検査システム1は、さらに、前記タブレット型コンピュータ72やスマートフォン73を無線LAN(Wi-Fi)、インターネットNを介してクラウドコンピュータシステム81に接続し、このクラウドコンピュータシステム81におけるビッグデータデータベース82や教師データデータベース83にアクセスし得る構成を含んでいる。
【0063】
すなわち、本実施例の治療検査システム1を多くの患者に使用することで多くの治療検査データが得られる。またその治療検査データと患者の症状から、症状別に多数の治療検査データを構築できる。
【0064】
また改善のための治療を行って、その治療をどのくらい続けることによってどのくらいまで改善されたかの治療検査データが得られる。
【0065】
前記治療検査システム1を使用する全国の多数の患者、医師、看護師、介助者らによって治療検査され、これを基に治療改善された結果データ(教師データ)は、インターネット上のクラウドコンピュータシステム81のビッグデータデータベース82に蓄積され、多くの治療検査データから、人工知能によって統計を取りこのような症状の患者にはこのような治療方法が最適であるという解析を深層学習(ディープラーニング)を活用して実行し、最適な教師データを生成して教師データデータベース83に蓄積する。
【0066】
そして、教師データデータベース83に蓄積された最適な教師データは、インターネットNを通じて本実施例の治療検査システム1を使用する患者、医師、看護師、介助者らに解放される。
【0067】
この結果、開放された最適な教師データから、患者に最も適した治療方法を抽出して治療が行われることになる。
【0068】
次に、本実施例における前記頭部装着フレーム2、2A、2B、喉頭部装着フレーム3、喉頭部・顎部装着フレーム3Aの種々の構成例、被検者Mに対する配置例について
図3乃至
図9を参照して個別に説明する。
【0069】
図3は本実施例に係る治療検査システム1における咀嚼運動検知センサ22、頭部血流検知センサ42、演算手段11を搭載し、ネックバンド型とした頭部装着フレーム2を被検者Mの頭部に取り付けるとともに、嚥下運動検知センサ52を搭載した喉頭部装着フレーム3を被検者Mの喉頭部から耳部の近くを経て頭部装着フレーム2に連結した状態を示すものである。
【0070】
尚、
図3において、電気ケーブル4については図示省略する。
【0071】
図4は本実施例に係る治療検査システム1における咀嚼運動検知センサ22、頭部血流検知センサ42、演算手段11を搭載し、カチューシャ型とした頭部装着フレーム2を被検者Mの頭部に取り付けるとともに、嚥下運動検知センサ52を搭載した喉頭部装着フレーム3を被検者Mの喉頭部から耳部の後側を経て頭部装着フレーム2に連結した状態を示すものである。
【0072】
尚、
図4において、電気ケーブル4については図示省略する。
【0073】
図5は本実施例に係る治療検査システム1において、被検者Mの頭部に装着した頭部血流検出手段41を構成するとともに演算手段11を搭載した鉢巻き型とした頭部装着フレーム2A、及び、嚥下運動検出手段51、咀嚼運動検出手段21を構成する喉頭部・顎部装着フレーム3Aを各々被検者Mに取り付け、これらを電気ケーブル4により接続した状態を示す概略構成図である。
【0074】
前記頭部装着フレーム2Aには頭部血流検知センサ42のみを配置し、また、前記喉頭部・顎部装着フレーム3Aには嚥下運動検知センサ52、咀嚼運動検知センサ22を配置している。
【0075】
また、前記喉頭部・顎部装着フレーム3Aは、喉頭部装着フレーム3と同様な手段により被検者Mの喉頭部、顎部に沿うように装着可能としている。
【0076】
図6は本実施例に係る治療検査システム1におけるカチューシャ型とし、演算手段11を搭載した頭部装着フレーム2B、及び、既述した場合と同様な喉頭部・顎部装着フレーム3Aを被検者Mに取り付けた状態を示す概略構成図である。
【0077】
前記頭部装着フレーム2には頭部血流検知センサ42のみを配置し、これらを電気ケーブル4により接続している。
【0078】
図7は本実施例に係る治療検査システム1におけるネックバンド型とし、演算手段11を搭載した頭部装着フレーム2B、及び、既述した場合と同様な喉頭部・顎部装着フレーム3Aを被検者Mに取り付けた状態を示す概略構成図である。
【0079】
前記頭部装着フレーム2には頭部血流検知センサ42のみを配置し、これらを電気ケーブル4により接続している。
【0080】
図8は本実施例に係る治療検査システム1におけるヘアーバンド型とした頭部装着フレーム2、及び、既述した場合と同様な嚥下運動検知センサ52を備える喉頭部装着フレーム3を被検者Mに取り付けた状態を示すものであり、前記頭部装着フレーム2には頭部血流検知センサ42、咀嚼運動検知センサ22、演算手段11、さらに情報提供手段18の一種である表示器77を配置している。
【0081】
図9は本実施例に係る治療検査システム1におけるネックバンド型とし演算手段11を取り付け、かつ、頭部血流検知センサ42のみを動作させる頭部装着フレーム2、及び、嚥下運動検知センサ52を取り付けた嚥下運動検出手段51を構成する喉頭部貼付具78を被検者Mに取り付けた状態を示す概略構成図である。
【0082】
図10は頭部装着フレーム2を使用し、この頭部装着フレーム2を同図には図示しないが被検者Mの頭部に装着して、無線通信手段17にて情報提供手段71を構成するタブレット型コンピュータ72、スマートフォン73と無線交信し当該被検者Mの咀嚼運動、頭部血流に関する治療検査を行う一態様を示すものである。
【0083】
前記頭部装着フレーム2には、演算手段11、一個の頭部血流検知センサ42、一対の咀嚼運動検知センサ22、22を配置し、これらと前記演算手段11とを検知信号用ケーブル5、6により接続している。
【0084】
図11は頭部装着フレーム2を使用し、この頭部装着フレーム2を同図には図示しないが被検者Mの頭部に装着して、当該被検者Mの咀嚼運動、頭部血流に関する治療検査を行う別態様を示すものである。
【0085】
前記頭部装着フレーム2には、演算手段11、一個の頭部血流検知センサ42、一個の咀嚼運動検知センサ22を配置し、これらと演算手段11とを検知信号用ケーブル5、6により接続している。
【0086】
前記咀嚼運動検知センサ22の配置は、被検者Mの側頭筋又は咬筋が内部に存在する片方のこめかみ部又は顎関節部に対応する位置とし、もう片方のこめかみ部に対応する位置に頭部血流検知センサ42を配置する構成とすることが好ましい。
【0087】
日頃よく噛んで食べる人ほど大脳皮質の運動部(こめかみ部の後ろ辺り)が強く活性化することが知られており、咀嚼運動検知センサ22はこめかみ部又は顎関節部に対応する配置が被検者Mに呈して負担なく装着する上で最適である。
【0088】
図12は頭部装着フレーム2を使用し、この頭部装着フレーム2を同図には図示しないが被検者Mの頭部に装着して、当該被検者Mの咀嚼運動、頭部血流に関する治療検査及び治療検査に関する情報提供を行うさらに別の態様を示すものである。
【0089】
前記頭部装着フレーム2には、咀嚼運動検知センサ22、頭部血流検知センサ42に加えて、情報提供手段71を構成する駆動モータ74、ブザー75、音声発生器76、表示器77を組み込んでいる。
【0090】
尚、前記ブザー75に替えて発光ダイオードが点滅又は点灯する構成を採用することもできる。
【0091】
また、
図10乃至
図12に示す各態様と、前記嚥下運動検出手段51を構成する喉頭部装着フレーム3とを組み合わせ、当該被検者Mの咀嚼運動、嚥下運動、頭部血流に関する総合的な治療検査及びその治療検査に関する情報提供を行う構成とすることももちろん可能である。
【0092】
次に、前記咀嚼運動検出手段21における被検者Mの食事時においてその頭部両側の側頭筋の動きを検知する咀嚼運動検知センサ22の具体的構成の一例について
図13を参照して説明する。
【0093】
図13に示す咀嚼運動検知センサ22は、気密性を有し、チューブ状のエアパッド23からなり、このエアパッド23自体の弾性力によって内部の空隙24を保持するとともに、前記エアパッド23の元端に前記演算手段11に接続するための検知信号用ケーブル25を配置し、被検者Mの咀嚼に伴うエアパッド23内の空隙24における空気振動を電気信号である検知信号に変換する伝達媒体変換手段26を設けている。
【0094】
前記エアパッド23は、例えば、熱可塑性エラストマー製で、JIS K 6253にて規定されたデュロメータ硬さ試験のタイプAに基づく硬度範囲がA20~A60のものを使用し、その具体的仕様としては、肉厚:0.1mm~2.0mm、長さ50~100mmとしている。
【0095】
また、前記エアパッド23は、前記頭部装着フレーム2と被検者Mの側頭筋(厳密には側頭筋外側の頭皮)に挟まれるように配置するものである。
【0096】
前記伝達媒体変換手段26は、前記エアパッド23の元端に取り付けた端部カバー体27と、前記エアパッド23内の空隙24に臨ませた弾性を有する薄板材からなる受圧電極板28と、この受圧電極板28に対してその外側で対向させた固定電極板29とを保持筒30により保持してコンデンサ31を構成しつつ前記エアパッド23の元端に配置し、前記受圧電極板28に接続した第1信号線31aを端部カバー体27内を経てかつ途中に電池(例えばボタン型電池)34を介在させつつ前記検知信号用ケーブル25の一方の芯線に接続し、また、前記固定電極板29に接続した第2信号線31bを端部カバー体27内を経て前記検知信号用ケーブル25の他方の芯線に接続し、さらに、前記第1信号線31a、第2信号線31b間に前記コンデンサ31と並列接続となるように抵抗32を接続して構成したコンデンサマイク33と、を有する構成としている。
【0097】
そして、被検者Mの咀嚼に伴うエアパッド23内の空隙24における空気(エア)振動によって変化する前記コンデンサ33の静電容量の変化に応じた抵抗32の両端からの電気信号を被検者Mの咀嚼状態に対応する検知信号として前記検知信号用ケーブル25を経て前記演算手段11に出力するように構成している。
【0098】
また、上述した
図13に示す咀嚼運動検知センサ22は、嚥下運動検知センサ52としても応用可能である。
【0099】
図14は、前記嚥下運動検出手段51を構成する嚥下運動検知センサ52を含む喉頭部装着手段として機能する喉頭部装着フレーム3の具体的構成例を示すものである。
【0100】
前記喉頭部装着フレーム3は、帯体状弾性材からなり被検者Mの喉頭部から首回りにわたって取り付け可能な略U状に形成した取付具53と、この取付具53の略U状分部の中央部に被検者Mの喉頭部に対向する配置で取り付けた前記喉頭部の動きを検知する嚥下運動検知センサ52と、前記取付具53の両末端部に各々取り付けた互いの接合により前記取付具53を被検者Mの喉頭部から首回りにわたって固定状態とする面ファスナ54、54と、前記嚥下運動検知センサ52を前記演算手段11に接続するための端子56付きの信号伝送用ケーブル55と、を有する構成としている。
【0101】
前記嚥下運動検知センサ52は、
図15に示すように、上センサ52a(丸数字1で示す)、中センサ52b(丸数字2で示す)、下センサ52c(丸数字3で示す)の3個構成のセンサ群からなり、これらを被検者Mの喉頭隆起(咽仏)の領域に上から下に順に配置するものである。
【0102】
上述したような嚥下運動検知センサ52を構成する上センサ52a、中センサ52b、及び、下センサ52cの食物の嚥下時の移動方向に沿った配置により、これら各センサによる波形データを観測することによって喉頭拳上の時間的変化量を検知することができる。
【0103】
例えば上センサ52aの挙動ピークから中センサ52aの挙動ピークまでの時間を抽出することで食物の飲みこみ速さ(勢い)を検知することが可能となる。
【0104】
図16は本実施例に係る治療検査システム1において被検者Mの咀嚼運動、嚥下運動に関連した作動方法を実施する場合の咀嚼運動検出手段21、嚥下運動検出手段51、演算手段11、情報提供手段71からなるシステム構成を概略的に示すものである。
【0105】
図17は本実施例に係る治療検査システム1において被検者Mの咀嚼運動、頭部血流に関連した作動方法を実施する場合の咀嚼運動検出手段21、頭部血流検出手段41、演算手段11、情報提供手段71からなるシステム構成を概略的に示すものである。
【0106】
図18は本実施例に係る治療検査システム1において被検者Mの嚥下運動、頭部血流に関連した作動方法を実施する場合の頭部血流検出手段41、嚥下運動検出手段51、演算手段11、情報提供手段71からなるシステム構成を概略的に示すものである。
【0107】
図19は本実施例に係る治療検査システム1において被検者Mの咀嚼運動、嚥下運動、頭部血流に関連した作動方法を実施する場合の咀嚼運動検出手段21、嚥下運動検出手段51、頭部血流検出手段41、演算手段11、情報提供手段71からなるシステム構成を概略的に示すものである。
【0108】
次に本実施例に係る治療検査システム1による被検者Mの咀嚼運動、嚥下運動、頭部血流に関連した作動方法について、場合を分けて説明する。
【0109】
図20は、本実施例に係る治療検査システム1による
図16に示す態様での被検者Mの食物の咀嚼運動、嚥下運動に関連した作動方法の一連の工程を示すものである。
【0110】
尚、この場合、前記頭部装着フレーム2に搭載した演算手段11の演算部15に対しては、オペレータ(ドクター等)によって嚥下から次の嚥下までの咀嚼数(設定咀嚼数:例えば30回)の設定処理がなされ、また、被検者Mの頭部に装着した
図16に示す態様の頭部装着フレーム2における咀嚼運動検知センサ22の検知信号、嚥下運動検知センサ52の検知信号に基づく被検者Mの咀嚼数と設定咀嚼数との比較及び前記咀嚼数の適否の判定処理、前記咀嚼数の適否に応じた被検者M等に対する情報提供処理を実行する治療検査プログラムが格納されているものとする。
【0111】
具体的には、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの喉頭部に配置した嚥下運動検知センサ52、すなわち、喉頭隆起の移動方向に沿って配置された3個の上センサ52a、中センサ52b、下センサ52cからの喉頭隆起の動きの継時変化に関する検知信号を取り込み嚥下運動データを作成する
【0112】
また、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの頭部に配置した咀嚼運動検知センサ22による咀嚼運動に関わる挙動の継時変化に関する検知信号を取り込み咀嚼運動データを作成する。
【0113】
次に前記演算手段11の演算部15は、咀嚼運動データ、嚥下運動データの相関から当該被検者Mの咀嚼数と設定咀嚼数との比較及び前記咀嚼数の適否の判定処理を行う。
【0114】
すなわち、当該被検者Mが十分に咀嚼してから嚥下しているかを自動で監視する。
【0115】
そして、前記演算手段11の演算部15は、当該被検者Mが十分に咀嚼してから嚥下していないと判定した場合には所定条件に達成するまで咀嚼して嚥下できるように改善を促す情報伝達を前記情報伝達手段71を動作させて実行し、また、十分に咀嚼してから嚥下していると判定した場合には咀嚼数が正常である旨の情報伝達を実行する。
【0116】
さらに付言すれば、当該被検者Mに関して嚥下から次の嚥下までの咀嚼数を例えば30回と設定した場合、設定後に食事を開始し、咀嚼が少ない場合は早食いが予想されるので、呑み込む(飲み込む)まで(嚥下から次に嚥下まで)の咀嚼回数が足りない旨の警告表示(情報提供)をする。
【0117】
当該被検者Mがその後も食事を続けた場合嚥下から次の嚥下まで咀嚼数を検知する。
【0118】
そして、咀嚼数が設定値よりも少ない場合は前記情報伝達手段71の一種であるタブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面に警告表示を行う。
【0119】
一方、咀嚼数が設定値よりも多い場合はよく噛んでいると判定し、咀嚼数が正常である旨を前記情報伝達手段71の一種であるタブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面に表示する。
【0120】
この結果、情報提供手段71の一種であるタブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面表示結果により、当該被検者Mに関してはよく噛んで食べるように気を付けるようになるという効果を発揮させることができる。
【0121】
一般に、認知症患者の場合、食事をするということはしっかり咀嚼して嚥下することをいうものであり、認知症の具体的な症状例としては、
よく咀嚼ができない→咀嚼できないことで認知症リスクが高まる。
口の中に食べ物を溜めることはできるが喉に送れない。
食べ物を口の中に入れても飲み込もうとしない。
等がある。
【0122】
このため、認知症改善策としては、よく噛むように促すことで認知症の進行を抑えるようにしたり、何回噛んだら呑み込むようにする訓練を行ったりすることを挙げることができる。
【0123】
図20に示す作動方法を実施することで認知症の症状の改善を行うことができる。
【0124】
すなわち、嚥下から次の嚥下までの咀嚼回数を例えば30回と設定し、設定後に食事を開始し、咀嚼が少ない場合は認知症リスクがあることが予想されるので、呑み込むまで(嚥下から次に嚥下まで)の咀嚼回数が足りない旨の警告表示(情報提供)をする。その後も食事を続け嚥下から次の嚥下まで咀嚼数を検知する。
【0125】
そして、咀嚼数が設定値よりも少ない場合はその旨情報提供を行い、また、咀嚼数が設定値よりも多い場合はよく噛んでいると判断し咀嚼が正常である旨情報提供を行う。
【0126】
このようにして、
図20に示すような作動方法により、被検者Mの認知症の症状の改善を実現することができる。
尚、
図20に示す作動方法において、咀嚼回数の設定(嚥下から次の嚥下までの咀嚼回数の設定)を、本実施例に係る治療検査システム1におけるタブレット型コンピュータ72に対する入力操作(食べ物の種類の入力等)により行い、これを基に必要な咀嚼回数が自動で設定され、これに基づき必要回数に達したら飲み込んでよいという指示を出す等の指示を前記タブレット型コンピュータ72の画面に表示する構成とすることもできる。
【0127】
図21は本実施例に係る治療検査システム1による
図16に示す態様での被検者Mの食物の咀嚼運動、嚥下運動に関連した作動方法の一連の工程の別の例を示すものである。
【0128】
尚、この場合、前記頭部装着フレーム2に搭載した演算手段11の演算部15に対しては、オペレータ(ドクター等)によって嚥下周期の設定及び連続する咀嚼数の上限(設定咀嚼数:例えば30回)の設定処理がなされ、また、被検者Mの頭部に装着した
図16に示す態様の頭部装着フレーム2における咀嚼運動検知センサ22の検知信号、嚥下運動検知センサ52の検知信号に基づく被検者Mの連続する咀嚼数の判定処理、被検者Mの連続する咀嚼数と設定咀嚼数との比較処理、被検者Mの嚥下から次の嚥下までの周期の判定処理、被検者Mの咀嚼数が設定咀嚼数より少ないと判定された場合の被検者Mの嚥下周期と設定嚥下周期との比較処理、及び、被検者Mの咀嚼数が設定咀嚼数より少なく、かつ、被検者Mの嚥下周期が設定嚥下周期より長いと判定された場合の被検者M等に対する注意を促す情報提供処理を実行する治療検査プログラムが格納されているものとする。
【0129】
具体的には、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの喉頭部に配置した嚥下運動検知センサ52、すなわち、喉頭隆起の移動方向に沿って配置された3個の上センサ52a、中センサ52b、下センサ52cからの喉頭隆起の動きの継時変化に関する検知信号を取り込み嚥下運動データを作成する。
【0130】
また、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの頭部に配置した咀嚼運動検知センサ22による咀嚼運動に関わる挙動の継時変化に関する検知信号を取り込み咀嚼運動データを作成する。
【0131】
次に前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの連続する咀嚼数と設定咀嚼数との比較処理を行い、前記咀嚼数が設定咀嚼数より多いと判定した場合には被検者M等に対する注意を促す(そろそろ噛んで飲み込みましょう等)情報提供処理を実行する。
【0132】
また、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの連続する咀嚼数と設定咀嚼数との比較処理を行い、前記咀嚼数が設定咀嚼数より少ないと判定し、かつ、被検者Mの嚥下周期が設定嚥下周期よりも長いと判定した場合にも被検者M等に対する注意を促す(例えば良く噛んで飲み込みましょう等)情報提供処理を実行する。
【0133】
さらに付言すると、脳の機能障害がある場合、食物を口の中に入れても飲み込もうとしない傾向がある。
【0134】
図21に示す例では、嚥下周期(嚥下から次に嚥下までの時間)と咀嚼数上限を設定し、設定後に食事を開始し、嚥下周期と連続する咀嚼数を抽出する。
【0135】
連続する咀嚼数が設定値よりも多い場合、口の中でもぐもぐ口を動かしているだけで飲み込んでない事が予想されるので、そろそろ呑み込むように被験者に情報提供する。
【0136】
連続する咀嚼数が設定値よりも少ない場合は、口の中にため込んでいることが予想されるので嚥下周期を抽出し、この嚥下周期が設定嚥下周期よりも長い場合は、よく噛んで呑み込むように被験者に情報提供する。
【0137】
また、嚥下周期が設定値よりも短い場合は正常であることを被験者に情報提供する。
【0138】
尚、
図21に示す例では、咀嚼数の上限、嚥下周期の上限だけを設定しているが、夫々の下限設定を行って所定の範囲に至らない場合に咀嚼数が足りないことを情報提供したり、嚥下周期が早すぎることを被検者に情報提供するようにしてもよい。
【0139】
図21に示すような作動方法により、被検者Mの食物の咀嚼状態、嚥下状態の適正化を実現し、当該被検者Mの脳の機能障害改善に資することができる。
【0140】
次に、
図22乃至
図24を参照して被検者Mの食物の咀嚼運動、嚥下運動、及び、頭部血流(脳血流)に関連した作動方法の一連の工程について説明する。
【0141】
被検者Mが認知症患者の場合、「食べものを何度もよく噛んで食べる(呑み込む)」ことにより、 顎を動かし、脳の血流が増し、脳血管内の血流の流れをよくすることで、認知症防止を図れることが知られている。
【0142】
図24は、本実施例に係る治療検査システム1による
図19に示す態様での被検者Mの食物の咀嚼運動、嚥下運動、及び、脳血流に関連した作動方法の一連の工程を示すものである。
【0143】
尚、この場合、前記頭部装着フレーム2に搭載した演算手段11の演算部15に対しては、オペレータ(ドクター等)によって脳血流の設定処理、嚥下から次の嚥下までの咀嚼数(設定咀嚼数:例えば30回)の設定処理がなされ、また、被検者Mの頭部に装着した
図19に示す態様の頭部装着フレーム2における被検者Mの食事に伴う咀嚼運動検知センサ22の検知信号、及び、喉頭部装着フレーム3における嚥下運動検知センサ52の検知信号に基づいた被検者Mの咀嚼・嚥下機能の適否の判定処理、前記頭部血流検知センサ4の検知信号に基づく脳血流の抽出処理、抽出した脳血流と設定脳血流との比較処理、咀嚼・嚥下機能が正常でない場合の被検者M等に対する情報提供処理、脳血流の適否に関する被検者M等に対する情報提供処理を実行する治療検査プログラムが格納されているものとする。
【0144】
具体的には、前記演算手段11の演算部15は、被検者Mの喉頭部に配置した嚥下運動検知センサ52、すなわち、喉頭隆起の移動方向に沿って配置された3個のセンサ52a、52b、52cからの喉頭隆起の動きの継時変化に関する検知信号を取り込み嚥下運動データを作成する
【0145】
また、前記演算部15は、被検者Mの頭部に配置した咀嚼運動検知センサ22による咀嚼運動に関わる挙動の継時変化に関する検知信号を取り込み咀嚼運動データを作成する。
【0146】
そして、被検者Mの咀嚼・嚥下機能の適否の機能判定処理を行う。
【0147】
さらに、前記演算部15は、頭部血流無検知センサ42の血流信号を取り込み被検者Mの脳血流データ(脳血流値データ)を作成する。
【0148】
次に前記演算手段11の演算部15は、咀嚼運動データ、嚥下運動データに基づき当該被検者Mの咀嚼・嚥下機能の適否の判定結果に基づいて、咀嚼・嚥下機能が正常でない場合には、前記情報伝達手段71の一種であるタブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面に「咀嚼・嚥下機能が正常でない」旨の情報を表示する情報提供を行う。
【0149】
また、咀嚼・嚥下機能が正常である場合には、演算部15は、さらに、作成した脳血流データと設定脳血流のデータとの比較処理を行い、当該被検者Mの脳血流が正常である場合には脳血流が正常である旨の、又は、脳血流が足りない旨の情報を各々前記タブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面に表示する情報提供を行う。
【0150】
このようにして、
図24に示す被検者Mの食物の咀嚼運動、嚥下運動、脳血流に関連した作動方法によれば、被験者Mは咀嚼・嚥下機能が正常になるように食事を続け、正常であれば、脳血流状況が設定脳血流よりも多いか否かを確認することができる。
【0151】
また、前記タブレット型コンピュータ72又はスマートフォン73の画面を被験者Mではなく、ドクター等が視認したような場合においては、脳血流が足りなければ、被検者Mにその旨伝達して脳血流が多くなるように咀嚼・嚥下を行うように促して食事を続行させ、脳血流が設定値よりも多くなれば改善効果が現れたことを被験者Mにその旨伝達して、食事を終了させるようにすることも可能である。
【0152】
この結果、被検者Mの食事に関して、顎を多く動かし、脳血流を増加させ、脳血管内の血流の流れを良くして、当該被検者Mの認知症防止を実現することができる。
【0153】
図22は
図18に示す態様での被検者Mの食物の嚥下から次の嚥下までの脳血流に関連した作動方法の一連の工程を示すものである。
【0154】
尚、この場合、前記頭部装着フレーム2に搭載した演算手段11の演算部15に対しては、オペレータ(ドクター等)によって嚥下から次の嚥下までの頭部血流(脳血流)の設定処理がなされ、また、喉頭部装着フレーム3における嚥下運動検知センサ52の検知信号に基づく被検者Mの嚥下から次の嚥下までの時間信号の抽出処理、被検者Mの頭部に装着した
図18に示す態様の頭部装着フレーム2における被検者Mの食事に伴う頭部血流検知センサ42の検知信号に基づく頭部血流の抽出処理、被検者Mの嚥下から次の嚥下までの時間内における抽出した頭部血流と、設定頭部血流との比較処理、抽出した頭部血流の設定頭部血流との比較による頭部血流の正常の場合、又は、頭部血流が足りない場合の被検者Mに対する情報提供処理を実行する治療検査プログラムが格納されているものとする。
【0155】
具体的には、前記演算部15は、被検者Mの嚥下から次の嚥下までの頭部血流検知センサ42の血流信号を取り込み被検者Mの脳血流データ(脳血流値データ)を作成(抽出)する。
【0156】
尚、前記演算部15は、嚥下運動検知センサ52の検知信号に基づいて嚥下運動データを作成しているもとする。
【0157】
そして、前記演算部15は、被検者Mの嚥下から次の嚥下までの抽出した脳血流値のデータと設定頭部血流値のデータとを比較判定し、抽出した脳血流値が設定頭部血流値より多い場合には脳血流が正常である旨の、また、抽出した脳血流値が設定頭部血流値より少ない(足りない)場合には脳血流が足りない旨の被検者Mに対する情報提供処理を各々実行する。
【0158】
図22に示すような処理内容の作動方法によれば、被検者Mの食物の嚥下運動、脳血流に関連して、当該被験者Mは嚥下から次の嚥下までの頭部血流を確認しつつ食事を続けることができ、被検者Mの食事に関して、嚥下間隔を適正にし、脳の血流を増加させ、脳血管内の血流の流れを良くすることが可能となり、当該被検者Mの認知症防止を実現することができる。
【0159】
図23は
図17に示す態様での被検者Mの連続した咀嚼時の脳血流に関連した作動方法の一連の工程を示すものである。
【0160】
尚、この場合、前記頭部装着フレーム2に搭載した演算手段11の演算部15に対しては、オペレータ(ドクター等)によって連続する咀嚼時の頭部血流値(脳血流値)の設定処理がなされ、頭部装着フレーム2における被検者Mの食事に伴う咀嚼運動検知センサ22の検知信号に基づく連続咀嚼時の咀嚼運動データの作成処理、頭部装着フレーム2における被検者Mの食事に伴う頭部血流検知センサ42の検知信号に基づく頭部血流データの抽出処理、連続咀嚼時における被検者Mの頭部血流と設定頭部血流との比較処理、前記被検者Mの頭部血流の正常の場合、又は、頭部血流が足りない場合の被検者Mに対する情報提供処理を実行する治療検査プログラムが格納されているものとする。
【0161】
具体的には、前記演算部15は、頭部血流検知センサ42の連続する咀嚼時の血流信号を取り込み被検者Mの脳血流データ(脳血流値データ)を作成(抽出)する。
【0162】
そして、前記演算部15は、連続する咀嚼時の設定頭部血流値のデータと抽出した脳血流値のデータとを比較判定し、抽出した脳血流値が設定頭部血流値より多い場合には脳血流が正常である旨の、また、抽出した脳血流値が設定頭部血流値より少ない(足りない)場合には脳血流が足りない旨の被検者Mに対する情報提供処理を各々実行する。
また、咀嚼回数が多くても、柔らかいものだけを咀嚼していると脳血流値がそれほど上がらないことが知られていることから、もう少し固いものを食べるように、という情報提供処理を被験者Mに対して行う構成とすることも可能である。
すなわち、脳の活性化を表わす脳血流の増加は、手や指の運動よりも、咀嚼による脳血流の増加が多いことが知られており、硬い食物のほうが柔らかい食物よりも効果があることが知られている。
したがって、歯ごたえのある食物を食事に取り入れてよく噛むことは脳の活性化に極めて重要であると言える。
【0163】
図23に示すような処理内容の作動方法によれば、被検者Mは食物の咀嚼運動、脳血流に関連して、被験者Mは連続する咀嚼時における頭部血流を確認しつつ食事を続けることができ、当該被検者Mの食事に関して、咀嚼状態を適正にし、脳の血流を増加させ、脳血管内の血流の流れをよくすることが可能となり、当該被検者Mの認知症防止を実現することができる。
【0164】
上述した本実施例において、前記咀嚼部装着手段としては、被験者Mの頭部又は顎部に装着可能な弾性部材からなるフレーム、又は、ベルトを採用し、この咀嚼部装着手段により支持される前記咀嚼運動検知センサ22を被験者Mの側頭筋又は咬筋に的確に臨ませて配置とすることができる。
【0165】
また、上述した本実施例において、前記嚥下運動検知センサ52又は前記咀嚼運動検知センサ22は、空気圧センサ、変位センサ、振動センサ、加速度センサ、感音センサ、光センサ、筋電計のうちのいずれかから選定することができ、これにより、前記嚥下運動検知センサ52又は前記咀嚼運動検知センサ22の選択の自由度を大きくすることが可能である。
【0166】
図25は本発明の別の実施例に係る治療検査システム1Aの全体構成を示すものである。
【0167】
尚、
図25に示す治療検査システム1Aにおいて、
図2に示す治療検査システム1の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0168】
図25に示す別の実施例に係る治療検査システム1Aは、前記咀嚼運動検出手段21に咀嚼運動無線通信部11aを、前記頭部血流検出手段41に頭部血流無線通信部41aを、前記嚥下運動検出手段51に嚥下運動無線通信部51aを各々設けるとともに、前記演算手段11に検出手段用無線通信部11aを付加する構成としたことが特徴であり、残余の構成は
図2に示す治療検査システム1の場合と同様である。
【0169】
図25に示す別の実施例に係る治療検査システム1Aにおいては、前記咀嚼運動検知センサ22の検知信号を咀嚼運動無線通信部21aから検出手段用無線通信部11aに無線送信し、前記頭部血流検知センサ42の検知信号を頭部血流無線通信部41aから検出手段用無線通信部11aに無線送信し、さらに前記嚥下運動検知センサ52の検知信号を嚥下運動無線通信部51aから検出手段用無線通信部11aに無線送信し、これらの各検知信号を前記演算部15により処理する構成の基に
図2に示す治療検査システム1の場合と同様な動作を実行することが可能となる。
【0170】
すなわち、
図25に示す別の実施例に係る治療検査システム1Aによれば、前記咀嚼運動検知センサ22、頭部血流検知センサ42、及び、嚥下運動検知センサ52と、前記演算手段11との間の検知信号を無線通信で行う構成の基に、一つの演算部15により上述した各検知信号の相関を判定してその結果を情報提供手段71に伝送し被検者Mやドクター等に情報提供することができる。
【0171】
また、前記治療検査システム1Aによっても既述した
図20乃至
図24に示す各作動方法を実行することも可能となる、
【0172】
図26は、既述した
図9に示す構成を応用した前記治療検査システム1Aの具体的構成例を示すものであり、電気ケーブル4を省略するとともに、ネックバンド型とし演算手段11を取り付け、かつ、頭部血流無線通信部41a(
図26には図示せず)を付加した頭部血流検知センサ42、及び、咀嚼運動無線通信部21a(
図26には図示せず)を付加した咀嚼運動検知センサ22を取り付けた頭部装着フレーム2を被検者Mの頭部に取り付け、また、嚥下運動無線通信部51a(
図26には図示せず)を付加した嚥下運動検知センサ52を取り付けた嚥下運動検出手段51を構成する喉頭部貼付具78を被検者Mの喉頭部に貼り付け、前記頭部血流検知センサ42、咀嚼運動検知センサ22及び嚥下運動検知センサ52から各々の検知信号を検出手段用無線通信部11(
図26には図示せず)を付加した演算手段11に無線送信する態様を示している。
【0173】
近年では嚥下運動検知センサ52等も小型化が進んでおり、
図26に示すように、嚥下運動検知センサ52を取り付けた喉頭部貼付具78を被検者Mの喉頭部に貼り付け、検知信号を無線送信する構成を採用することにより、長期入院患者や長期療養患者の使用上の簡便さを実現することが可能となる。
【0174】
尚、
図1、
図3乃至
図8に示す各システム構成の場合も、各々
図26に示す治療検査システム1Aの場合と同様な検知信号を無線送信する構成とすることももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の治療検査システムは、健常者の認知症発生防止対策用として、また、医療機関における入院患者、介護施設における要介護者等の認知症発生防止対策用又は認知症進行予防対策用として広範に利用可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 治療検査システム
1A 治療検査システム
2 頭部装着フレーム
2A 頭部装着フレーム
2B 頭部装着フレーム
3 喉頭部装着フレーム
3A 喉頭部・顎部装着フレーム
4 電気ケーブル
5 検知信号用ケーブル
6 検知信号用ケーブル
11 演算手段
11a 検出手段用無線通信部
12 増幅器
13 周波数フィルター
14 A/D変換器
15 演算部
16 情報提供手段駆動部
17 無線通信手段
21 咀嚼運動検出手段
21a 咀嚼運動無線通信部
22 咀嚼運動検知センサ
23 エアパッド
24 空隙
25 検知信号用ケーブル
26 伝達媒体変換手段
27 端部カバー体
28 受圧電極板
29 固定電極板
30 保持筒
31 コンデンサ
31a 第1信号線
31b 第2信号線
32 抵抗
33 コンデンサマイク
34 電池
41 頭部血流検出手段
41a 頭部血流無線通信部
42 頭部血流検知センサ
51 嚥下運動検出手段
51a 嚥下運動無線通信部
52 嚥下運動検知センサ
52a 上センサ
52b 中センサ
52c 下センサ
53 取付具
54 面ファスナ
55 信号伝送用ケーブル
56 端子
71 情報提供手段
72 タブレット型コンピュータ
73 スマートフォン
74 駆動モータ
75 ブザー
76 音声発生器
77 表示器
78 喉頭部貼付具
81 クラウドコンピュータシステム
82 ビッグデータデータベース
83 教師データデータベース
M 被検者
N インターネット