IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓋開閉構造 図1
  • 特許-蓋開閉構造 図2
  • 特許-蓋開閉構造 図3
  • 特許-蓋開閉構造 図4
  • 特許-蓋開閉構造 図5
  • 特許-蓋開閉構造 図6
  • 特許-蓋開閉構造 図7
  • 特許-蓋開閉構造 図8
  • 特許-蓋開閉構造 図9
  • 特許-蓋開閉構造 図10
  • 特許-蓋開閉構造 図11
  • 特許-蓋開閉構造 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】蓋開閉構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/34 20140101AFI20220729BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019059503
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159064
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154788(JP,A)
【文献】特開2015-175173(JP,A)
【文献】特開2019-011601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
E05D 11/08
B60K 15/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造であって、
前記開口に取り付けられる有底基材と、
前記開口の内外方向に延び、前記開口の外方向端部で前記蓋体に連結し、前記開口の内外方向にスライド移動する駆動部材と、
前記開口の内外方向に延び、前記駆動部材を前記開口の外方向に付勢する付勢部材と、
前記有底基材に対して固定され、前記付勢部材の一端が固定される第一受部を有するケース部材と、
を備え、
前記駆動部材は、前記有底基材に設けられた貫通孔を通して前記開口の内外方向に延びる棒状の本体部と、前記本体部から前記開口の内外方向に直交する方向に延出し、前記付勢部材の他端が固定される延出部と、を有し、
前記有底基材は、取出口が設けられた第一基底部と、前記第一基底部よりも前記開口の外方向側に位置する第二基底部と、前記第一基底部と前記第二基底部とを接続する段差形成部と、を有し、
前記貫通孔は、前記第二基底部に設けられており、
前記延出部は、前記第二基底部よりも前記開口の内方向に形成される空間内において、前記有底基材又は前記ケース部材の内周面に摺接可能に支持されており、更に、前記本体部に接続する接続板部と、前記接続板部よりも前記開口の外方向側に位置し、前記付勢部材の他端が当接する第二受部と、前記接続板部と前記第二受部とを接続する連結部と、を有し、
前記駆動部材は、前記本体部にて前記有底基材における前記貫通孔の周縁で支持されていると共に、前記延出部の前記接続板部及び前記第二受部にて前記有底基材又は前記ケース部材の内周面で支持されている、蓋開閉構造。
【請求項2】
前記駆動部材は、前記延出部の前記接続板部及び前記第二受部の外周端に、前記有底基材又は前記ケース部材の内周面との摩擦抵抗を低減する処理が施された低摩擦処理部を有する、請求項に記載された蓋開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させることが可能な蓋開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給油口などが設けられた車体の開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の蓋開閉構造は、ボックス部材と、駆動部材と、付勢部材と、ケース部材と、を備えている。ボックス部材は、車体の開口に取り付けられている。ボックス部材は、車体外面から開口内方向へ凹んでおり、給油口が開いた底部を有している。駆動部材は、開口外方向端部で蓋体に連結されている。駆動部材は、開口内外方向にスライド移動することが可能である。付勢部材は、開口内外方向に延びるバネであり、駆動部材を開口外方向に付勢している。ケース部材は、ボックス部材の底部に対して固定されている。ケース部材には、付勢部材の一端が固定されている。付勢部材の他端は、駆動部材の受部に固定されている。付勢部材は、駆動部材に対して開口内方向側に隣接して配置されている。
【0003】
上記の蓋開閉構造において、蓋体は、閉状態では、規制部材により付勢部材の付勢力に抗して閉位置にロックされている。そして、蓋体を開動作させるための開操作が行われると、蓋体のロックが解除されて、駆動部材が付勢部材の付勢力により開口外方向にスライド移動する。駆動部材が開口外方向にスライド移動すると、蓋体が回動中心を中心にして回動する。従って、開操作により蓋体を閉状態から開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-175173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の如く、付勢部材は、駆動部材に対して開口内方向側に隣接して配置されている。すなわち、駆動部材と付勢部材とは、開口内外方向に直列に並んで配置されている。このため、この構造では、駆動部材及び付勢部材を含む蓋開閉構造全体の開口内外方向の長さが大きくなり、その長さを短くするうえで限界がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、開口内外方向の長さの短縮化に寄与することが可能な蓋開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である蓋開閉構造は、車体の開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造であって、前記開口に取り付けられる有底基材と、前記開口の内外方向に延び、前記開口の外方向端部で前記蓋体に連結し、前記開口の内外方向にスライド移動する駆動部材と、前記開口の内外方向に延び、前記駆動部材を前記開口の外方向に付勢する付勢部材と、前記有底基材に対して固定され、前記付勢部材の一端が固定される第一受部を有するケース部材と、を備え、前記駆動部材は、前記有底基材に設けられた貫通孔を通して前記開口の内外方向に延びる棒状の本体部と、前記本体部から前記開口の内外方向に直交する方向に延出し、前記付勢部材の他端が固定される延出部と、を有する、蓋開閉構造である。
【0008】
この構成によれば、付勢部材が延びる開口の内外方向の軸線と、駆動部材がスライド移動する開口の内外方向の軸線と、が開口の内外方向に直交する方向にずれた状態で並ぶ。この構成では、付勢部材の付勢力を駆動部材を介して蓋体に付与するうえで、付勢部材と駆動部材とを開口の内外方向に直列的に並べて配置することは不要である。このため、蓋開閉構造における開口の内外方向の長さを、付勢部材が駆動部材に対して車体開口の内外方向に直列的に並んで配置される構造に比べて短くすることができ、これにより、開口の内外方向の長さの短縮化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る蓋開閉構造における蓋体の開状態での外観図である。
図2】実施形態の蓋開閉構造の分解斜視図である。
図3】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の閉状態での断面図である。
図4】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開状態での表面側からの斜視図である。
図5】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開状態での裏面側からの斜視図である。
図6】実施形態の蓋開閉構造が備える有底部材の表面側からの斜視図である。
図7】実施形態の蓋開閉構造が備える有底部材の裏面側からの斜視図である。
図8】実施形態の蓋開閉構造が備える駆動部材の斜視図である。
図9】実施形態の蓋開閉構造が備えるケース部材及び付勢部材の斜視図である。
図10】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の閉状態での正面図である。
図11】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開状態での正面図である。
図12】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開閉動作中の断面を表した遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る蓋開閉構造の具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
一実施形態の蓋開閉構造1は、例えば車両の車体に設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる構造である。蓋開閉構造1は、図1図2、及び図3に示す如く、有底基材10と、蓋体20と、駆動部材30と、リンク部材40と、ケース部材50と、付勢部材60と、を備えている。蓋開閉構造1は、駆動部材30の直線的なスライド移動とリンク部材40の回動とが適切に連動することにより蓋体20を開閉動作させることが可能である。
【0012】
有底基材10は、車両の車体の側壁やボンネットなどに設けられた車体開口に取り付けられている。有底基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体であって、容器状或いは箱状に形成されている。具体的には、有底基材10は、一端側にて開口しかつ他端側にて底壁が形成された筒状の基底部材である。有底基材10は、円筒状や四角筒状に形成されている。有底基材10の一端側には、開口11が設けられている。開口11は、給油口や充電口に連通している。開口11は、所定の平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。
【0013】
有底基材10は、環状に形成された側壁部12と、側壁部12における開口11側の端部とは反対側である奥端部(すなわち、側壁部12における車体開口の内方向Xiの端部)を塞ぐ底壁をなす基底部13と、を有している。基底部13には、図4図5図6、及び図7に示す如く、給油口や充電口に連なる取出口13aが設けられている。取出口13aには、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。取出口13aは、蓋体20の閉状態で車体開口内に隠れる一方、蓋体20の開状態で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0014】
有底基材10の基底部13は、底面が二段になるように形成されており、第一基底部14と、第二基底部15と、段差形成部16と、を有している。第一基底部14は、基底部13の大部分を占めた広範囲に広がる底面部である。上記の取出口13aは、第一基底部14に設けられている。第二基底部15は、第一基底部14よりも車体開口の外方向Xo側に位置する底面部である。第二基底部15には、車体開口の内外方向Xに貫通する貫通孔15a,15bが設けられている。段差形成部16は、第一基底部14と第二基底部15とを接続する側壁部であって、第二基底部15を第一基底部14に対して底上げする機能を有している。第一基底部14と、第二基底部15と、段差形成部16と、は一体形成されている。
【0015】
蓋体20は、有底基材10の開口11ひいては車体開口を塞ぐ板状の部材である。蓋体20は、開口11や車体開口を開閉させることが可能である。蓋体20は、開口11の平面形状に合わせた形状に形成されている。蓋体20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。蓋体20は、表皮部材21と、保持部材22と、を有している。蓋体20は、表皮部材21が保持部材22に取り付け固定されることにより両部材21,22が互いに組み付けられた状態で構成される。
【0016】
表皮部材21は、蓋体20の表面として外部に露出する部材である。表皮部材21は、平板状に形成されており、有底基材10の開口11に対応した平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。また、保持部材22は、蓋体20の裏側を構成しており、表皮部材21を保持する部材である。表皮部材21と保持部材22とは、複数箇所で互いに締結されることにより固定される。
【0017】
保持部材22は、支持部23を有している。支持部23は、表皮部材21の裏面に沿うように形成されており、表皮部材21の裏面から車体開口の内方向Xiに突出している。支持部23は、二箇所設けられている。各支持部23にはそれぞれ、第一係合部24が設けられている。第一係合部24は、駆動部材30の一端部に係合する部位である。第一係合部24は、表皮部材21の裏面に沿って延びるように開いた孔部又は溝部である。二箇所の支持部23の間には、第二係合部25が設けられている。第二係合部25は、リンク部材40の一端部に係合する部位である。第二係合部25は、表皮部材21の裏面に沿って延びるピン部である。上記の第一係合部24は、第二係合部25よりも開口11の内外方向Xに直交する方向Yの開口中央側の位置で延びるように配置されている。
【0018】
駆動部材30は、車体開口の内外方向Xにスライド移動することが可能なスライド部材である。駆動部材30は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。駆動部材30は、車体開口の内外方向Xに延びている。駆動部材30は、有底基材10に対してスライド移動可能に取り付けられている。駆動部材30は、有底基材10の第二基底部15の貫通孔15aを通して延びている。
【0019】
駆動部材30は、図8に示す如く、本体部31と、延出部32と、を有している。本体部31は、車体開口の内外方向Xに延びる棒状の部位である。延出部32は、本体部31から車体開口の内外方向Xに直交する方向に延出する部位である。本体部31及び延出部32は、互いに一体となって車体開口の内外方向Xにスライド移動する。本体部31は、二箇所設けられている。二箇所の本体部31は、共通の延出部32に一体的に形成されている。二箇所の本体部31の先端部(すなわち、車体開口の外方向Xoの端部)同士は、ピン部33を介して接続されている。ピン部33は、二箇所の本体部31を繋いだ状態で蓋体20の第一係合部24に係合して支持されている。
【0020】
各本体部31は、有底基材10の第二基底部15の貫通孔15aを通して車体開口の内外方向Xに延びている。有底基材10は、第二基底部15よりも車体開口の内方向Xiに形成される空間17を有している。この空間17は、基底部13の第一基底部14から車体開口の内方向Xi及び外方向Xoに突出する壁部18により形成されている。延出部32は、空間17内において有底基材10の壁部18の内周面に摺接可能に支持されている。延出部32は、本体部31における第二基底部15の貫通孔15aよりも車体開口の内方向Xi側の部位において二つの本体部31同士を接続している。
【0021】
延出部32は、接続板部32aと、受部32bと、連結部32cと、を有している。接続板部32aは、本体部31に接続するフランジ状の板部位である。接続板部32aは、その外縁が有底基材10の空間17を形成する壁部18の内周面に沿う形状になるように形成されている。受部32bは、付勢部材60の端が当接する面部位を有している。受部32bにおける車体開口の内方向Xiに向いた面には、付勢部材60が保持される座部34が設けられている。
【0022】
受部32bは、本体部31及び接続板部32aに対して、車体開口の内外方向Xに直交する方向Yにずれた位置(具体的には、開口11の内外方向Xに直交する方向Yの開口中央側の位置)に設けられている。受部32bは、その外縁が有底基材10の空間17を形成する壁部18の内周面に沿う形状になるように形成されている。受部32bは、接続板部32aよりも車体開口の外方向Xoに位置している。連結部32cは、接続板部32aと受部32bとを接続する部位である。連結部32cは、車体開口の内外方向Xを含む面内で広がる面部位である。連結部32cは、その車体開口の内方向Xiの端部が接続板部32aに接続されると共に、その車体開口の外方向Xoの端部が受部32bに接続されるように配置されている。
【0023】
駆動部材30は、本体部31にて有底基材10における第二基底部15の貫通孔15aの周縁で支持されていると共に、延出部32の接続板部32a及び受部32bにて有底基材10における空間17を形成する壁部18の内周面で支持されている。
【0024】
尚、駆動部材30は、延出部32の接続板部32a及び受部32bの外周端に有底基材10の壁部18の内周面との摩擦抵抗を低減する処理が施された低摩擦処理部を有することが、駆動部材30と有底基材10との摺動時の摩擦抵抗を低減するうえで好ましい。また、駆動部材30は、本体部31の外周面に同様の処理が施された低摩擦処理部を有することとしてもよい。この低摩擦処理は、例えば、駆動部材30と有底基材10とをその接触面積が小さくなるように面接触でなく点接触させるために接触部に突起を設けることや、接触部の表面に摩擦抵抗を低減する材料を塗り或いは貼ることなどである。
【0025】
リンク部材40は、蓋体20を有底基材10に対して回動可能に支持する部材である。リンク部材40は、例えば樹脂により成形された射出成形体や板状のバネ鋼で形成されている。リンク部材40は、有底基材10の第二基底部15の貫通孔15bを通してアーム状に延びている。貫通孔15bは、第二基底部15において二つの貫通孔15aの間に配置されている。リンク部材40には、図2に示す如く、係合部41,42が設けられている。係合部41,42はそれぞれ、表皮部材21の裏面に対して平行に延びるように開いた孔部又は溝部である。係合部41はリンク部材40の一端部に、係合部42はリンク部材40の他端部に、それぞれ設けられている。
【0026】
係合部41は、蓋体20に係合する部位である。係合部41は、蓋体20の第二係合部25に係合する。蓋体20とリンク部材40とは、係合部25,41にて相対的に回動可能に連結されている。蓋体20は、第二係合部25にてリンク部材40に対して回動可能に支持されている。
【0027】
係合部42は、有底基材10に係合する部位である。有底基材10は、表皮部材21の裏面に対して平行に延びる係合部19を有している。係合部19は、空間17内に配置されており、対面する壁部18の内周面を繋ぐように延びるピン部である。係合部42は、有底基材10の係合部19に係合する。リンク部材40と有底基材10は、係合部42,19にて相対的に回動可能に連結されている。リンク部材40は、係合部42にて有底基材10に対して回動可能に支持されている。
【0028】
ケース部材50は、上記の空間17を閉塞する部材である。ケース部材50は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。ケース部材50は、有底基材10に対して車体開口の内方向Xi側に隣接して配置されている。ケース部材50は、有底基材10に係合により固定されている。ケース部材50は、図9に示す如く、板部51と、取付部52と、受部53と、を有している。
【0029】
板部51は、駆動部材30(具体的には、本体部31及び延出部32の接続板部32a)に対して車体開口の内方向Xiに配置されている。板部51は、例えば平面板状に形成されている。取付部52は、ケース部材50を有底基材10に取り付け固定するための部位である。取付部52は、板部51の対向する二つの辺それぞれに設けられた壁部位である。ケース部材50は、取付部52に設けられた係合部52aが有底基材10の壁部18の外壁に設けられた係合部18aに係合することにより有底基材10に固定される。
【0030】
受部53は、駆動部材30(具体的には、延出部32の受部32b)及び付勢部材60に対して車体開口の内方向Xiに配置されている。受部53は、板部51に対して、車体開口の内外方向Xに直交する方向Yにずれた位置(具体的には、開口11の内外方向Xに直交する方向Yの開口中央側の位置)に設けられている。受部53は、付勢部材60の端が当接する面部位と、その面部位から車体開口の外方向Xoに延びる、付勢部材60が保持される筒部と、を有している。
【0031】
付勢部材60は、車体開口の内外方向Xに延びるスプリングバネ部材である。付勢部材60の一端は、ケース部材50の受部53に固定されている。付勢部材60の他端は、駆動部材30の延出部32の受部32bに固定されている。付勢部材60の延びる車体開口の内外方向Xの軸線と、駆動部材30がスライド移動する車体開口の内外方向Xの軸線と、は車体開口の内外方向Xに直交する方向Yにずれている。付勢部材60は、ケース部材50と駆動部材30との間で駆動部材30を車体開口の外方向Xoに付勢する付勢力、ひいては、蓋体20を開動作させる付勢力を発生する。
【0032】
また、蓋開閉構造1は、蓋体20の開閉を検知するための開閉センサ構造を有している。駆動部材30は、図8に示す如く、センサ突部35を有している。センサ突部35は、延出部32の接続板部32aに設けられている。センサ突部35は、接続板部32aにおける車体開口の内方向Xiに向いた面から車体開口の内方向Xiに延びている。ケース部材50は、貫通孔部54を有している。貫通孔部54は、板部51に車体開口の内外方向Xに貫通するように設けられている。貫通孔部54には、図9に示す如く、例えばコンピュータからなる検知部(図示せず)にそれぞれ配線を介して接続された二つの端子71,72が配置されている。
【0033】
駆動部材30のセンサ突部35は、駆動部材30のスライド移動ひいては蓋体20の開閉に従って、ケース部材50の貫通孔部54に挿抜される。具体的には、蓋体20の開状態では、センサ突部35が貫通孔部54の二つの端子71,72の間から抜かれている。この場合、二つの端子71,72は、互いに導通している。一方、蓋体20の閉状態では、センサ突部35が二つの端子71,72の間に挿入されている。この場合、二つの端子71,72は、互いに遮断されている。検知部は、二つの端子71,72の状態に基づいて蓋体20の開閉を検知する。
【0034】
次に、蓋開閉構造1の動作について説明する。
【0035】
蓋体20は、閉状態では規制部材(図示せず)により付勢部材60の付勢力に抗して閉位置にロックされている(図10に示す状態)。この蓋体20の閉ロックにおいて車両乗員などの操作者により所定の開操作がなされると、蓋体20の閉ロックが解除される。蓋体20の閉ロックが解除されると、付勢部材60の付勢力が駆動部材30に付与されて、駆動部材30がその付勢力により有底基材10に対して車体開口の外方向Xoにスライド移動する。
【0036】
駆動部材30が有底基材10に対して車体開口の外方向Xoにスライド移動すると、駆動部材30の押圧力が蓋体20に付与されることで、駆動部材30のピン部33と蓋体20の第一係合部24とが係合した状態で、蓋体20が第二係合部25を中心にして駆動部材30に対して回動する。また、この駆動部材30に対する蓋体20の回動と同期して、リンク部材40と蓋体20の第二係合部25とが係合しかつリンク部材40と有底基材10の係合部19とが係合した状態で、リンク部材40が有底基材10に対して回動する。蓋体20の開動作中、有底基材10に対するリンク部材40の回動は、有底基材10の基底部13に対するリンク部材40の傾動角度が大きくなってリンク部材40が車体開口の内外方向Xに延びた状態になるように行われる。これにより、蓋体20が有底基材10に対して回動して開状態となる(図11に示す状態)。
【0037】
従って、蓋体20の閉状態において操作者により所定の開操作が行われることにより、駆動部材30を有底基材10に対して車体開口の外方向Xoにスライド移動させて、蓋体20を開状態側へ回動させて開状態とすることができる(図12参照)。尚、蓋体20の開状態側への回動は、所定の角度(例えば、蓋体20の閉状態から100°の角度)で移動規制されるまで行われればよく、その移動規制により停止されればよい。
【0038】
蓋体20の開状態において操作者により所定の閉操作がなされると、蓋体20、駆動部材30、及びリンク部材40が上記した開操作での工程とは逆の工程で動作する。この所定の閉操作は、操作者が蓋体20の表面側を車体開口の内方向Xiに押圧して蓋体20に第二係合部25を中心にして閉状態側へ回動させる力を付与することである。この閉操作が行われると、付勢部材60の付勢力に抗して、まず、蓋体20が第二係合部25を中心にして有底基材10に対して閉状態側へ回動すると共に、その後、蓋体20ひいては駆動部材30が有底基材10に対して車体開口の内方向Xiにスライド移動する。そして、蓋体20は、規制部材により閉位置にロックされる閉状態になる。
【0039】
従って、蓋体20の開状態において操作者により有底基材10に対する蓋体20の閉状態側への回動及び車体開口の内方向Xiへの押圧操作が行われることにより、蓋体20を閉状態側へ回動させると共に、駆動部材30を有底基材10に対して車体開口の内方向Xiへ押し込んで、蓋体20を閉状態とすることができる(図12参照)。
【0040】
このように、蓋開閉構造1によれば、付勢部材60の付勢力やその付勢力に抗する操作者の閉操作により駆動部材30を有底基材10に対して車体開口の内外方向Xにスライド移動させることで、その蓋体20を開閉動作させることができる。
【0041】
また、蓋開閉構造1において、付勢部材60は、ケース部材50の受部53と、駆動部材30の本体部31から車体開口の内外方向Xに直交する方向Yに延出する延出部32の受部32bとの間に配置されており、その付勢部材60の両端は、両受部53,32bに固定されている。すなわち、付勢部材60が延びる車体開口の内外方向Xの軸線と、駆動部材30がスライド移動する車体開口の内外方向Xの軸線と、は車体開口の内外方向Xに直交する方向Yにずれた状態で並ぶ。
【0042】
この蓋開閉構造1の構成においては、付勢部材60の付勢力を駆動部材30を介して蓋体20に付与するうえで、付勢部材60と駆動部材30とを車体開口の内外方向Xに直列的に並べて配置することは不要であり、付勢部材60と駆動部材30とを車体開口の内外方向Xに直交する方向Yに並べて配置すれば十分である。このため、蓋開閉構造1における車体開口の内外方向Xの長さを、付勢部材が駆動部材に対して車体開口の内外方向Xに直列的に並んで配置される構造に比べて短くすることが可能である。従って、蓋開閉構造1によれば、車体開口の内外方向Xの長さの短縮化に寄与することができ、全体構成のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
また、蓋開閉構造1において、有底基材10は、底面が二段になる基底部13を有し、その基底部13は、二つの底面部である第一基底部14及び第二基底部15を有している。そして、車体開口の内外方向Xにスライド移動する駆動部材30が貫通する貫通孔15aは、第一基底部14よりも車体開口の外方向Xo側に位置する第二基底部15に設けられている。
【0044】
この蓋開閉構造1の構成においては、有底基材10に第二基底部15が設けられていない構造に比べて、駆動部材30における基底部13から車体開口の内方向Xiに突出する部位の長さをある程度確保したまま、その駆動部材30における車体開口の内方向Xiの端部の位置を蓋体20に近づけることができる。このため、蓋開閉構造1の機能を確保したまま、駆動部材30全体の長さを短くすること、ひいては、蓋開閉構造1における車体開口の内外方向Xの全長を短くすることができる。
【0045】
また、駆動部材30がスライド移動可能に支持される有底基材10の支持点(具体的には、貫通孔15aの周縁)を蓋体20に近づけることができる。このため、貫通孔15aの周縁から蓋体20までの距離を短縮化することができ、これにより、駆動部材30のスライド移動の軸ズレ(ガタツキ)を生じ難くすることができ、駆動部材30の安定したスライド移動を確保することができる。
【0046】
また、駆動部材30のスライド移動は、第二基底部15の貫通孔15aを貫通した状態で行われる。この第二基底部15は、第一基底部14よりも車体開口の外方向Xo側に位置している。このため、開口11内に進入した水や塵が第二基底部15に形成された貫通孔15a,15bから空間17へ進入するのを抑制することができ、その水や塵に起因した駆動部材30のスライド不良を低減することができる。また、空間17内には延出部32が壁部18の内周面に摺接可能に支持されており、延出部32は空間17を区切るように存在する。このため、水や塵が空間17へ進入した場合においても、ケース部材50に設けられた端子71,72にその水や塵が降り注ぐのを抑制することができる。尚、この端子71,72への水抑制効果を上げるためには、端子71,72をケース部材50のより車体開口の外方向Xo側に配置することが好ましく、更に、ケース部材50の車体開口の内方向Xi側の端部に水抜き孔を設けることがより好ましい。
【0047】
更に、駆動部材30は、有底基材10の二箇所でスライド移動可能に支持される。具体的には、駆動部材30は、本体部31にて貫通孔15aの周縁で支持されると共に、その貫通孔15aの周縁位置よりも車体開口の内方向Xi側の延出部32にて壁部18の内周面で支持される。このため、駆動部材30のスライド移動の軸ズレ(ガタツキ)を抑制することができ、駆動部材30の安定したスライド移動を確保することができる。
【0048】
尚、上記の実施形態においては、ケース部材50の受部53が特許請求の範囲に記載した「第一受部」に、駆動部材30の延出部32の受部32bが特許請求の範囲に記載した「第二受部」に、それぞれ相当している。
【0049】
ところで、上記の実施形態においては、駆動部材30が車体開口の内外方向Xにスライド移動する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、駆動部材30が、車体開口の内外方向Xに対して僅かに傾斜した方向にスライド移動するものに適用することとしてもよい。この傾斜方向は、駆動部材30がスライド移動するスライド軸線が車体開口の内方向Xi側から外方向Xo側にかけて、蓋体20が開動作する際にその蓋体20のうち内方向Xiに移動する内方移動側に傾く方向である。この変形形態の構造においては、蓋体20を有底基材10に対して駆動部材30のスライド軸線が傾斜する角度まで大きく傾けることができるので、蓋体20の開動作を大開度まで行うことができ、蓋体20の開閉の角度範囲をより広げることができる。
【0050】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:蓋開閉構造、10:有底基材、13:基底部、14:第一基底部、15:第二基底部、16:段差形成部、17:空間、20:蓋体、30:駆動部材、31:本体部、32:延出部、32a:接続板部、32b:受部、32c:連結部、33:ピン部、40:リンク部材、50:ケース部材、53:受部、60:付勢部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12