(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】水素の一貫生産を伴う電力生産のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 6/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
F02C6/00 E
(21)【出願番号】P 2019545396
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 IB2017057017
(87)【国際公開番号】W WO2018087694
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-28
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】312000387
【氏名又は名称】8 リバーズ キャピタル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アラム,ロドニー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ナビド,ラファティ
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047160(US,A1)
【文献】特表2004-503901(JP,A)
【文献】特開2008-243594(JP,A)
【文献】特表2013-520597(JP,A)
【文献】米国特許第04498289(US,A)
【文献】特表2016-512302(JP,A)
【文献】特表2015-507813(JP,A)
【文献】特開2015-071688(JP,A)
【文献】特開2009-085210(JP,A)
【文献】特開2005-281131(JP,A)
【文献】特開昭62-046901(JP,A)
【文献】特開昭53-037222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0294907(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0211155(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0130957(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009032718(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00-23/18
F01K 25/00-25/14
F02C 3/00- 3/36
F02C 6/00- 6/20
B01D 53/00-53/96
B01J 7/00- 7/02
H01M 8/00- 8/2495
C01B 3/00- 3/58
C10K 1/00- 1/34
C10K 3/00- 3/06
C10J 3/00- 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型の電力生産及び水素生産のためのシステムであって、前記システムは、
加圧二酸化炭素を電力生産のために膨張させる電力生産部
であって、前記電力生産部は、
炭化水素燃料及び酸素を受け取り、少なくとも前記加圧二酸化炭素を含む加熱流を産出するよう構成される燃焼器と、
前記燃焼器から前記加圧二酸化炭素を含む前記加熱流を受け取り、膨張させ、前記電力を生産し、前記膨張二酸化炭素を含む加熱流を形成するよう構成されるタービンと、
前記膨張二酸化炭素を含む前記加熱流を受け取り、二酸化炭素を含む冷却流を形成するよう構成される復熱式熱交換器と、
前記復熱式熱交換器から前記二酸化炭素を含む冷却流を受け取り、前記二酸化炭素の流れを提供するよう構成される分離器と、
前記分離器から前記二酸化炭素の流れを受け取り、前記二酸化炭素を圧縮するよう構成されるコンプレッサーと、
を備える、電力生産部と、
炭化水素燃料を部分酸化し、水素を分離する合成ガスを生成する水素生産部
であって、前記水素生産部は、
酸素及び前記炭化水素燃料の一部を受け取り、前記合成ガスを産出するよう構成される部分酸化燃焼器と、
前記部分酸化燃焼器と流体連通し、前記部分酸化燃焼器から前記合成ガスを受け取り、前記炭化水素燃料の一部を受け取るよう構成される改質器と、
前記改質器と流体連通するシフト反応器と、
前記シフト反応器と流体連通するシフト流熱交換器と、
前記シフト流熱交換器と流体連通する分離器と、
前記分離器と流体連通する圧力スイング吸着部と、
を備え、
前記圧力スイング吸着部は、実質的に純粋な水素の流れを産出するよう構成される、水素生産部と、
前記電力生産部と前記水素生産部の間の1つ以上の流れの通過のために構成される1つ以上の流し部材と、
を備え
、
前記電力生産部での使用のための炭化水素燃料、前記部分酸化燃焼器へ投入される炭化水素燃料、及び改質器へ投入される炭化水素燃料は、同じ炭化水素燃料でも異なる炭化水素燃料でもあり得、
前記部分酸化燃焼器及び前記改質器へ投入される炭化水素燃料は、少なくとも、前記電力生産部のタービンを抜けた膨張二酸化炭素を含む加熱流を受け取って冷却するように構成されている補助熱交換器を通じる通過により加熱される燃料ラインを通じて提供される、システム。
【請求項2】
前記炭化水素燃料は、前記シフト流熱交換器を
通じる通過
によっても加熱される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記改質器に水を通すために構成される送水ラインをさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記送水ラインは、前記シフト流熱交換器を通過する、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記送水ラインは、前記電力生産部のタービンを抜けた膨張二酸化炭素を含む加熱流を受け取り、冷却するよう構成される補助熱交換器を通過する、請求項
3に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧力スイング吸着部は、前記実質的に純粋な水素の流れから分離される廃棄流を産出するよう構成され、前記廃棄流は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン、アルゴン、及び窒素のうち1つ以上を含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電力生産部と前記水素生産部の間の1つ以上の流れの通過のために構成される1つ以上の流し部材は、前記圧力スイング吸着部から前記電力生産部の燃焼器までの、前記廃棄流の少なくとも一部の通過のためのラインを含む、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記電力生産部は、前記電力生産部からの1つ以上の圧縮流に接し、実質的に純粋な二酸化炭素の流れを加熱するよう構成される追加の熱交換器をさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記追加の熱交換器は、前記水素生産部からの流れに接し、前記実質的に純粋な二酸化炭素の流れを加熱するようさらに構成される、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
複合型の電力生産及び水素生産のための方法であって、前記方法は、
電力生産部において電力生産を行うことであって、
再循環CO
2流の存在下、燃焼圧で酸化剤と共に第1燃焼器において第1炭化水素燃料を燃焼させ、CO
2を含む燃焼生成物流を提供することと、
前記CO
2を含む燃焼生成物流をタービン中に膨張させ、電力を生産し、CO
2を含むタービン吐出流を形成することと、
前記CO
2を含むタービン吐出流を復熱式熱交換器において冷却することと、
前記タービン吐出流の別の成分からCO
2を分離し、前記再循環CO
2を含む流れを提供することと、
前記再循環CO
2を含む流れを実質的に前記燃焼圧まで圧縮することと、
前記タービン
吐出流から引き出される熱
を使用して圧縮
された再循環CO
2流
の少なくとも一部を前記復熱式熱交換器において加熱し、
また、前記水素生産から回収された余分な熱を使用して前記圧縮された再循環CO
2
流の少なくとも一部を加熱し、前記再循環CO
2を含む加熱流を提供することと、
前記再循環CO
2を含む前記加熱流を前記第1燃焼器に通すことと、
を含むことと、
水素生産部において水素生産を行うことであって、
第2炭化水素燃料の流れを、部分酸化反応器の中に通し、合成ガス流を形成することと、
前記合成ガスを処理し、実質的に純粋な水素の流れ及び少なくとも一酸化炭素を含む廃棄流を提供すること
であって、前記合成ガスの処理は、前記電力生産において前記圧縮された再循環CO
2
流の少なくとも一部を加熱するために使用される余分な熱を形成するのに効果的であることと、
を含むことと、
を含
み、
前記合成ガスの処理は、1つ以上のシフト反応器においてシフト反応を行う際に放出される熱が、前記電力生産において前記圧縮された再循環CO
2
流の少なくとも一部を加熱するための余分な熱として利用可能であるように、前記1つ以上のシフト反応器における処理を含む、方法。
【請求項11】
前記合成ガスを処理する際に形成される余分な熱は、400℃未満の温度レベルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記廃棄流から前記第1燃焼器に少なくとも前記一酸化炭素を通すことをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ガスを処理することは、前記第2炭化水素燃
料の流れ及び温水の流れを受け取るようにも構成される改質器の中に前記合成ガスを通すことを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記部分酸化反応器を通過する第2炭化水素燃料の流れ、前記改質器により受け取られた第2炭化水素燃料の流れ、前記改質器により受け取られた温水の流れのうち1つ以上は、前記CO
2を含むタービン吐出流から伝達される熱を利用する補助熱交換器において加熱される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記合成ガスを処理することは、前記改質器からの改質された合成ガスを、
前記1つ以上のシフト反応器、続いてシフト流熱交換器の中に通すことを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記
第2炭化水素燃料の流れは、前記シフト流熱交換器を通過する炭化水素燃料ラインを介して、前記部分酸化
反応器及び前記改質器のうち一方又は両方に提供される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記改質器で受け取られた温水の流れは、前記シフト流熱交換器を通過する送水ラインを通して提供される、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記シフト流熱交換器を抜けた流れを水分離器の中に通し、水を除去し、水素及び不純物を含む粗水素流を形成することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
前記実質的に純粋な水素及び前記廃棄流を産出する圧力スイング吸着部の中に前記粗水素流を通すことをさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記廃棄流は、前記電力生産部の燃焼器への投入に適した圧力まで圧縮され、その後、前記電力生産部の燃焼器に通される、請求項
10に記載の方法。
【請求項21】
前記電力生産部は、前記電力生産部からの1つ以上の圧縮流に接し、再循環CO
2の流れを加熱する追加の熱交換器をさらに備える、請求項
10に記載の方法。
【請求項22】
前記圧縮された再循環CO
2
流の少なくとも一部を加熱するために使用される余分な熱を提供するために、前記水素生産部からの加熱流を、前記追加の熱交換器の中に通すことをさらに含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1炭化水素燃料が、燃焼し、前記CO
2を含むタービン吐出流の少なくとも一部に追加の熱を提供するように、前記CO
2を含むタービン吐出流の少なくとも一部は、前記第1炭化水素燃料及び酸素の流れと共に第2燃焼器を通過する、請求項
10に記載の方法。
【請求項24】
前記CO
2を含むタービン吐出流の少なくとも一部に提供される追加の熱の少なくとも一部は、前記水素生産部にある1つ以上の流れに提供される、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記電力生産部とは別のガスタービンにおいて電力生産を行うことであって、前記実質的に純粋な水素の少なくとも一部は、前記ガスタービンにおいて燃焼し、電力を生産することをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CO2循環流体を利用する電力生産サイクルを水素の同時生産のために構成することができる電力生産システム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃料電池での使用など、貯蔵エネルギー源との、そのクリーンな相互変換のために望ましいエネルギー源と長らく考えられている。例えば、水素は、大容量蓄電池に有利に連結した燃料電池を使用する電気自動車の駆動のための燃料として使用することができる。燃料としての水素の使用により、CO2、NOx、CO、及び炭化水素の排出をなくし、その結果、大気汚染を著しく減少させることができることは有益である。しかし、水素ベースの世界経済の実施への道は、非常に大きな水素の生産能力を要するであろう。さらに、当該水素生産法は、利用される化石燃料由来のCO2をほぼ100%回収すると共に、低コストな水素生産を同時に成し遂げることができる必要があるであろう。
【0003】
燃料源としての水素の使用により、旧来の電力生産処理に付随する二酸化炭素の排出を減少させる又はなくすこともできることは有益である。例えば、水素は、窒素及び/又は蒸気で希釈することができ、ガスタービン複合型サイクル発電システムにおいて燃料として使用することができる。
【0004】
ガスタービン複合型サイクル発電システムは、低位発熱量(LHV)基準で60%の範囲の効率で、天然ガスから電力を生産するという能力の観点から世界的な電力発電の主な供給源である。望ましい効率にもかかわらず、燃料中の炭素が二酸化炭素として大気に排出されるため、当該システムは、未だ問題点がある。この問題を解決するため、タービン排気CO2ガスを再循環させ、続いて、冷却し、生成物CO2をガスタービンコンプレッサー区域の入口に移動させることにより、作動流体として空気の代わりにCO2でガスタービンを動作させることが可能である。燃料を純酸素で燃焼させなければならず、燃焼生成物としてCO2及び水のみが生成されるため、かつこの方法が処理効率を下げるものとして機能する空気分離プラントの追加を要するため、この方法もまた問題点がある。化学的及び/又は物理的溶剤洗浄処理は、ガスタービン排気を扱いCO2を除去するために使用されることがよくある。しかし、当該処理は、混合産物を提供し、排気トリートメントシステムの追加費用及び維持費により処理効率を再び低下させることがある。上記で論じたように、ガスタービンにおいて燃料として水素を利用することにより、炭素排出をなくすことが可能である。しかし、当該アプローチは、付随するCO2生成なく優先的に提供される着実な水素供給源を要する。燃料源として水素を使用することが望ましいため、大気へのCO2排出が実質的になく、低コストで、水素燃料を提供する手段が依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、電力生産と水素生産とを兼備するシステム及び方法に関する。特に、電力生産(例えば、電気電力)及び水素生産は、炭化水素燃料の燃焼により同時に成し遂げることができる。より詳細には、炭化水素燃料は、燃焼し、水素を含む及び/又は水素に変換される燃焼生成物を提供することができる。さらに、水素は、炭素排出が実質的にゼロで生産することができ、水素は、電力生産のための燃料として利用することができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、本開示は、さらに、触媒反応及び/又は無触媒反応における炭化水素燃料の部分酸化のために酸素を利用する、水素(H2)及び一酸化炭素(CO)の発生のためのシステム及び方法に関し得る。例えば、部分酸化・無触媒反応器(POX)又は触媒オートサーマル反応器(ATR)を使用することができる。炭化水素燃料の部分酸化に続いて、POX反応器又はATR反応器に対して直列モード又は並列モードいずれかのガス加熱改質器(GHR)を使用し、POX及び/又はATR反応器システムにおける排気顕熱を利用してGHRで起こる吸熱触媒蒸気に加え天然ガスの改質反応のための熱を提供することにより追加のH2及びCO(すなわち、合成ガス)を生成することができる。
【0007】
1つ以上の実施形態において、本発明のシステム及び方法は、水素プラントで発生する余分な熱(例えば、400℃以下の温度レベル)を利用して、電力生産システム及び方法にさらなる入熱を提供することができる。このように加えられる熱は、高い電気発生効率を成し遂げることに助力する点で有益であり得る。
【0008】
他の実施形態において、本開示は、燃料流(例えば、天然ガス)と、H2+CO合成ガス発生反応器への蒸気供給流との一方又は両方を過熱するために要する熱を提供することを包含する。熱の提供は、例えば、電力生産システム及び方法から、タービン吐出流由来の熱を使用することにより、成し遂げることができる。
【0009】
別の実施形態において、本発明のシステム及び方法は、冷却された粗水素流から純粋な高圧純水素を分離する圧力スイング吸着(PSA)システムを利用することができる。圧力スイング吸着システムの利用は、例えば、蒸気を用いた触媒シフト反応によるH2へのCOの変換に続いて実施することができる。
【0010】
追加の実施形態において、本開示は、水素プラント用の燃料に存在する実質的に全ての炭素の取り出しを提供することができる。例えば、炭素の取り出しは、PSAからの廃ガスを圧縮し、CO2を冷却タービン排気流から取り出す電力生産サイクルシステム及び方法のための燃料ガスの一部として圧縮した廃ガスを使用することにより成し遂げることができる。
【0011】
所望ならば、電力生産サイクルシステム及び方法に使用される酸素の一部又は全ては、低圧送気で、深冷空気分離プラント又は酸素イオン輸送膜(ITM)酸素燃料燃焼器から供与することができる。水素プラントは、PSAから、最大95バールの実質的に純粋なH2を生産するPOX及び/又はATRへの供給物として、最大105バールの圧力の高圧気体酸素の流れを利用することができる。高圧酸素を供与する深冷空気分離プラントは、特に、酸素を提供する点で有用であり得る。
【0012】
さらに、所望ならば、ガスタービン排気を加熱し、H2プラント燃料、酸素、及び蒸気の供給流のうち1つ以上の予熱を提供するため、第2燃料酸素燃焼器を使用することができる。第2燃料酸素燃焼器には、タービン吐出圧の気体酸素流を供与することができるが、気体酸素流は、O2バーナー噴射システムにおいてCO2で優先的に希釈され、断熱火炎温度を制御することができる。第2の代替案は、予熱した低圧空気を供給されるITM燃焼器を使用して、拡散する酸素で燃えるガスタービン排気を混ぜた予熱した天然ガス流を使用しタービン排気を予熱し、合成ガス反応器用に天然ガス流及び蒸気供給流の必要な過熱を提供することである。
【0013】
1つ以上の実施形態において、本開示は、電力生産及び水素生産を同時にするために構成され得る電力生産システム又は電力生産部を提供することができる。特に、システムは、燃焼器と、タービンと、復熱式熱交換器と、水分離器と、コンプレッサーと、一体化された水素生産システム又は一体化された水素生産部とを備えることができる。
【0014】
1つ以上の実施形態において、本開示は、電力生産のための方法を提供することができる。特に、方法は、
燃焼圧の再循環CO2流の存在下で酸化剤と共に、第1燃焼器で炭素質燃料を燃焼させ、CO2を含む燃焼生成物流を提供することと、
タービン中に燃焼生成物流を膨張させ、電力を生産し、CO2を含むタービン吐出流を形成することと、
CO2を含むタービン吐出流を、復熱式熱交換器で冷却することと、
タービン吐出流の別の成分からCO2を分離し、再循環CO2流を提供することと、
再循環CO2流を実質的に燃焼圧まで圧縮することと、
再循環CO2流から、炭化水素又は炭素質燃料中の炭素の燃焼由来のCO2を除去することと、
タービン排気流から引き出した熱で、及び/又は約400℃未満の温度で供与される外部熱で、圧縮した再循環CO2流を復熱式熱交換器において加熱することと、
場合により予熱した炭素質燃料(及び場合により酸素及び/又は蒸気)を、POX又はATR、場合によっては続いてGHRの中に通し、特にH2及びCOを含み得る合成ガス流を形成することと、
合成ガスを冷却し、高圧蒸気を発生させることと、
CO及びH2OをH2及びCO2に変換することに効果がある1つ以上の触媒シフト反応器の中に合成ガスを通すことと、
合成ガス流からH2を分離することと、
合成ガス流からのH2の分離に続き、残りの燃料ガスを、第1燃焼器及び第2燃焼器のうち一方又は両方に通すことと、
を含み得る。
【0015】
前述の方法において、列挙した工程の全てが、考えられる全ての実施形態において行なわれなければならないわけではないことを理解されたい。むしろ、上記工程のうち1つ以上は任意であってよく、本開示の知識を有する当業者であれば、工程の考えられる様々な組み合わせが別個の実施形態で行われ得ることを認識することができるであろう。
【0016】
前述のことに付け加えて、本開示のシステム及び方法は、追加の構成要素及び構成に関してさらに定義されることができる。例えば、以下のもののうち1つ以上を適用することができる。
【0017】
水素生産は、具体的には、部分酸化反応器及びガス加熱改質反応器など、少なくとも2つの反応器を使用して行われ得る。
【0018】
合成ガス生産に使用するための炭化水素供給流及び/又は蒸気供給流の高温加熱は、電力生産サイクル由来の熱を利用することができる。特に、熱は、電力生産サイクルタービン排気の少なくとも一部由来であり得る。
【0019】
水素は、マルチベッド圧力スイング吸着部において、1つ以上の廃棄成分から分離することができる。
【0020】
水素から分離した1つ以上の廃棄成分は、圧縮され、電力生産サイクルにおいて燃料の一部として使用することができる。
【0021】
水素生産システム及び方法において燃料供給物として使用される炭化水素燃料由来の実質的に全ての炭素は、高圧CO2流として取り出すことができ、CO2パイプラインへの導入に適応し得る。
【0022】
H2プラントから取り除かれる実質的に全ての低温の熱(すなわち、周囲温度超の温度だが、約400℃以下の温度の熱)は、電力生産サイクルへの入熱のために取り出すことができる。
【0023】
1つ以上の実施形態において、本開示は、燃料から(例えば、天然ガスから)の水素生産の一体化、燃料にある炭素由来のCO2の実質的に全ての回収、及び電力システムと水素生産の間の熱の効果的な一体化を提供することができる。当該一体化は、効率が高く(例えば、>60%LHV)、大気へのCO2排出がほぼゼロで、電力コストが部分的又は完全なCO2回収を提供しない現行の処理により発生するコストと実質的に同様である、燃料からの電気電力の生産を成し遂げることができることが好ましい。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示は、電力生産のためのシステムであって、CO2を大気中に排気することなく、CO2作動流体の連続した、圧縮、加熱、膨張、冷却、及び再循環のために構成される電力生産部と、合成ガス流を形成するよう構成される部分酸化燃焼器及び合成ガス流からH2を分離するよう構成される分離器を含む水素生産システム又は水素生産部と、水素生産システム又は水素生産部からH2を受け取り燃焼させるよう構成されるガスタービン複合型サイクル部とを備える。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示は、電力生産処理及び一体化されたH2生産処理であって、
燃焼器において、再循環加熱CO2の存在下、昇圧で、実質的に純粋なO2と共に気体燃料を燃焼させ、燃焼生成物流を形成することと、
タービンにおいて、燃焼生成物流を低圧に膨張させ、軸動力を生産し、タービン排気流を形成することと、
復熱式熱交換器において、再循環CO2流を加熱し、再循環加熱CO2を形成しつつ、タービン排気流を冷却し、冷却タービン排気流を形成することと、
場合によっては、外部供給源から再循環CO2流に約400℃未満の温度レベルの熱を加えることと、
冷却タービン排気流から凝縮水を分離し、再循環CO2流を提供することと、
再循環CO2流を燃焼器への投入に適した圧力まで圧縮することと、
を含み、
H2合成プラント反応器に供給される炭化水素燃料流又は炭素質燃料流及び蒸気流のうち一方又は両方は、タービン排気流から伝達される熱を利用して加熱されるという条件と、
タービン燃焼器燃料入口流量及びタービン入口温度を上げ、タービンからの追加の電力に加え、H2プラント合成反応器への炭化水素又は炭素質及び蒸気の供給物を予熱するために要する熱を提供し、復熱式熱交換器へのタービン入口温度は、独立型CO2電力サイクルにおいてと実質的に同一であるという条件と、
約400℃未満の温度レベルのH2合成プラントからの余分な熱は、H2合成プラントから再循環CO2流に伝達されるという条件と、
1つ以上のCO触媒シフト反応器におけるH2へのCOの変換に続き、H2合成プラントにおいて純粋でない総H2生産流から水素を分離し、続いて、ほぼ周囲温度まで冷却し液体水を除去するという条件と、
H2合成プラントにおけるH2分離後に残る廃棄燃料ガスを燃焼器への投入に適した圧力まで圧縮するという条件と、
H2合成プラントにおけるH2分離は、複数の段階で行われるという条件と、
H2合成プラントにおけるH2分離は、中間物質CO2の除去及び触媒によるH2へのCOのシフト変換を含むという条件と、
実質的に純粋な酸素及び燃料ガスに加え、タービン排気の少なくとも一部を使用し、H2プラント合成反応器への炭化水素又は炭素質及び蒸気の供給物を予熱するために要する熱の少なくとも一部を提供する第2燃焼器を利用するという条件と、
約400℃未満の温度の、加熱し、加圧した水及び/又は蒸気流を提供し、余分な熱をH2合成プラントから再循環CO2流に運ぶという条件と、
H2合成プラントから生産したH2をN2及び/又は蒸気と組み合わせ、ガスタービンにおける燃焼に適した燃料ガスを生産し、電力を生産するという条件と、
のうち1つ以上が適用される、電力生産処理及び一体化されたH2生産処理に関する。
【0026】
1つ以上の実施形態において、本開示は、特に、複合型の電力生産及び水素生産のためのシステムであって、加圧した二酸化炭素を電力生産のために膨張させる電力生産部と、炭化水素燃料を部分酸化し、水素が分離される合成ガスを生成する水素生産部と、電力生産部と水素生産部の間の1つ以上の流れの通過のために構成される1つ以上の流し部材とを備えるシステムを提供することができる。
【0027】
別の実施形態において、言及した複合型の電力生産及び水素生産のためのシステムは、任意の順又は数で組み合わせることができる以下の記述のうち1つ以上に関してさらに定義することができる。
【0028】
電力生産部は、炭化水素燃料及び酸素を受け取り、加圧した二酸化炭素を少なくとも含む加熱流を産出するよう構成される燃焼器と、加圧した二酸化炭素を含む加熱流を燃焼器から受け取り、膨張させ、電力を生産し、膨張した二酸化炭素を含む加熱流を形成するよう構成されるタービンと、膨張した二酸化炭素を含む加熱流を受け取り、二酸化炭素を含む冷却流を形成するよう構成される復熱式熱交換器と、二酸化炭素を含む冷却流を復熱式熱交換器から受け取り、二酸化炭素の流れを提供するよう構成される分離器と、二酸化炭素の流れを分離器から受け取り、二酸化炭素を圧縮するよう構成されるコンプレッサーと、を備えることができる。
【0029】
水素生産部は、炭化水素燃料の一部及び酸素を受け取り、合成ガスを産出するよう構成される部分酸化燃焼器と、部分酸化燃焼器と流体連通し、合成ガスを部分酸化燃焼器から受け取り、炭化水素燃料の一部を受け取るよう構成される改質器と、改質器と流体連通するシフト反応器と、シフト反応器と流体連通するシフト流熱交換器と、シフト流熱交換器と流体連通する分離器と、分離器と流体連通する圧力スイング吸着部を備えることができ、圧力スイング吸着部は、実質的に純粋な水素の流れを産出するよう構成される。
【0030】
炭化水素燃料は、シフト流熱交換器を通過する炭化水素燃料ラインから部分酸化燃焼器及び改質器に提供され得る。
【0031】
炭化水素燃料ラインは、電力生産部のタービンを抜けた膨張した二酸化炭素を含む加熱流を受け取り、冷却するよう構成される補助熱交換器を通過することができる。
【0032】
システムは、水を改質器へ通すために構成され得る送水ラインをさらに備えることができる。
【0033】
送水ラインは、シフト流熱交換器を通過することができる。
【0034】
送水ラインは、電力生産部のタービンを抜けた膨張した二酸化炭素を含む加熱流を受け取り、冷却するよう構成される補助熱交換器を通過することができる。
【0035】
圧力スイング吸着部は、実質的に純粋な水素の流れから分離される廃棄流を産出するよう構成され得、排気流は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン、アルゴン、及び窒素のうち1つ以上を含む。
【0036】
電力生産部と水素生産部の間での1つ以上の流れの通過のために構成される1つ以上の流し部材は、圧力スイング吸着部から電力生産部の燃焼器への廃棄流の少なくとも一部の通過のためのラインを含み得る。
【0037】
電力生産部は、電力生産部からの1つ以上の圧縮流に接し、実質的に純粋な二酸化炭素の流れを加熱するよう構成される追加の熱交換器をさらに備え得る。
【0038】
追加の熱交換器は、さらに、水素生産部からの流れに接し、実質的に純粋な二酸化炭素の流れを加熱するよう構成され得る。
【0039】
1つ以上の実施形態において、本開示は、特に、複合型の電力生産及び水素生産のための方法であって、再循環CO2流の存在下、燃焼圧で酸化剤と共に第1燃焼器において第1炭化水素燃料を燃焼させ、CO2を含む燃焼生成物流を提供することと、CO2を含む燃焼生成物流をタービン中に膨張させ、電力を生産し、CO2を含むタービン吐出流を形成することと、CO2を含むタービン吐出流を復熱式熱交換器において冷却することと、タービン吐出流の別の成分からCO2を分離し、再循環CO2を含む流れを提供することと、再循環CO2を含む流れを実質的に燃焼圧まで圧縮することと、タービン排気流から引き出される熱で圧縮した再循環CO2流を復熱式熱交換器において加熱し、再循環CO2を含む加熱流を提供することと、再循環CO2を含む加熱流を第1燃焼器に通すこととを含む電力生産部において電力生産を行うこと、及び第2炭化水素燃料の流れを部分酸化反応器の中に通し、合成ガス流を形成することと、合成ガスを処理し、実質的に純粋な水素の流れ及び少なくとも一酸化炭素を含む廃棄流を提供することと、を含む水素生産部において水素生産を行うことを含む方法を提供することができる。
【0040】
別の実施形態において、複合型の電力生産及び水素生産のための言及した方法は、任意の順又は数で組み合わせることができる以下の記述のうち1つ以上に関してさらに定義することができる。
【0041】
方法は、排気流から、第1燃焼器に少なくとも一酸化炭素を通すことをさらに含み得る。
【0042】
合成ガスの処理は、第2炭化水素燃料ガスの流れ及び温水の流れを受け取るようにも構成される改質器の中に合成ガスを通すことを含み得る。
【0043】
部分酸化反応器を通過する第2炭化水素燃料の流れ、改質器により受け取られた第2炭化水素燃料の流れ、及び改質器により受け取られた温水の流れのうち1つ以上は、CO2を含むタービン吐出流から伝達される熱を利用する補助熱交換器で加熱することができる。
【0044】
合成ガスの処理は、改質器からの改質された合成ガスを、シフト反応器、続いてシフト流熱交換器の中に通すことを含み得る。
【0045】
炭化水素燃料の流れは、シフト流熱交換器を通過する炭化水素燃料ラインを介して、部分酸化燃焼器及び改質器の一方又は両方に提供され得る。
【0046】
改質器にて受け取られた温水の流れは、シフト流熱交換機を通過する送水ラインを通し提供され得る。
【0047】
方法は、シフト流熱交換機を抜けた流れを水分離器の中に通し、水を除去し、水素及び不純物を含む粗水素流を形成することをさらに含み得る。
【0048】
方法は、実質的に純粋な水素及び廃棄流を産出する圧力スイング吸着部の中に粗水素流を通すことをさらに含み得る。
【0049】
廃棄流は、電力生産部の燃焼器への投入に適した圧力まで圧縮され、その後、電力生産部の燃焼器に通され得る。
【0050】
電力生産部は、電力生産部からの1つ以上の圧縮流に接し、再循環CO2の流れを加熱する追加の熱交換器を含み得る。
【0051】
方法は、水素生産部からの熱が再循環CO2の流れに伝達されるように、水素生産部からの加熱流を、追加の熱交換器の中に通すことをさらに含み得る。
【0052】
水素生産部から再循環CO2の流れに伝達される熱は、約400℃未満の温度レベルであり得る。
【0053】
第1炭化水素燃料が、燃焼し、CO2を含むタービン吐出流の少なくとも一部に追加の熱を提供するように、CO2を含むタービン吐出流の少なくとも一部は、第1炭化水素燃料及び酸素の流れと共に第2燃焼器を通過することができる。
【0054】
CO2を含むタービン吐出流の少なくとも一部に提供される追加の熱の少なくとも一部は、水素生産部にある1つ以上の流れに提供され得る。
【0055】
方法は、電力生産部とは別のガスタービンにおいて電力生産を行うことであって、実質的に純粋な水素の少なくとも一部は、ガスタービンにおいて燃焼し、電力を生産することをさらに含み得る。
【0056】
1つ以上の実施形態において、本開示は、電力生産のためのシステムであって、CO2を大気中に排気することなく、CO2作動流体の連続した、圧縮、加熱、膨張、冷却、及び再循環のために構成される電力生産部と、合成ガス流を形成するよう構成される部分酸化燃焼器、及び合成ガスを処理し、実質的に純粋な水素の流れ及び廃棄流を形成するよう構成される1つ以上の追加部材を含む水素生産部と、水素生産部から実質的に純粋な水素の少なくとも一部を受け取り、燃焼させるよう構成されるガスタービン複合型サイクル部と、を備えるシステムをさらに提供することができる。
【0057】
このように本開示は前述の一般的な用語で記載されており、ここで、添付図面を参照されたい。なお、添付図面は、必ずしも一定の比率の縮尺で描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】CO
2作動流体を使用し、深冷酸素プラントを含む電力生産の例示的システム及び方法のフローチャートである。
【
図2】
図1に図解されるような、電力生産システム及び方法との一体化のための構成要素を含む水素生産設備のフローチャートである。
【
図3】空気分離部からの窒素ガス及び水素発生部からの水素ガスがガスタービン複合型サイクル部に投入される、複合型システムを図解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、本発明の主題について、その例示的実施形態を参照して、以下でより完全に記載する。これら例示的実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であるように記載され、当業者に主題の範囲を完全に伝えるものであろう。実際、主題は、多くの異なる形態で具現化されることができ、本明細書に明記される実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これら実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「一」、「一つ」、「その」は、文脈で特段他の意味が明示されていない限り、複数形を含む。
【0060】
本開示は、電力生産及び水素生産を同時に成し遂げるシステム及び方法を提供する。これまで、電力及び水素の同時生産を提供するために努力がなされおり、このようなこれまでの試みによる1つ以上の構成要素を本開示のシステム及び方法に組み込んでもよい。例えば、アラム(Allam)らによる米国特許第6,534,551号は、1)蒸気及び/又は酸素との炭化水素燃料ガス反応と、2)圧縮酸化剤ガスを利用する電力システムであって、作動膨張により電力を生産する燃焼器の生成物と共に燃料ガスを燃やし、膨張した燃焼生成物ガスを水素合成反応に使用される蒸気を過熱するために使用し、酸素生産部を燃焼生成物ガスの膨張により生産された電力の少なくとも一部により動かす、電力システムとの組み合わせを記載する。アラム(Allam)らによる米国特許第6,534,551号は、参照により本明細書に援用される。
【0061】
1つ以上の実施形態において、本発明のシステム及び方法が、生産した炭素を実質的に全て回収する、特に、生産したCO2を実質的に全て回収すると共に、電力生産と組み合わせた水素生産を提供することができることは有益である。組み合わせは、水素及び電力の同時生産を成し遂げるのに適した構成要素の組み合わせを有する単一のシステムであり得る。いくつかの実施形態において、水素生産システム又は水素生産部は、構成要素の適切なまたぎを有して電力生産システム又は電力生産部と並行して動作することができるため、2つのシステム又は2つの部は、単一の、一体化されたシステムとして機能している。従って、本開示は、水素プラントに関連し得、当該水素プラントとは本明細書で利用される水素生産システム又は水素生産部を形成するために必要な構成要素の組み合わせを指す。
【0062】
本開示に係る有用な電力生産サイクルは、CO2(特に、超臨界CO2-又はsCO2)が作動流で使用される任意のシステム及び方法を含み得る。非限定の例として、参照により本明細書に援用されるアラム(Allam)らの米国特許第8,596,075号は、再循環CO2流が直接加熱され、電力生産で使用されるシステム及び方法を記載する。具体的には、再循環CO2流は、高温及び高圧で提供され、炭素質燃料が酸素で燃焼する燃焼器に提供され、タービン中に膨張して電力を生産し、熱交換器で冷却され、精製されて水及び他の不純物を除去され、加圧され、タービン排気から取得した熱を使用して再度加熱され、再び燃焼器を通りサイクルを繰り返す。当該システム及び方法は、全ての燃料及び燃焼由来の不純物、余分なCO2、及び水を、気体又は超臨界流体、液体又は固体(例えば、灰)として除去し、全ての流れの大気への排出を事実上ゼロにする点で有益である。システム及び方法は、例えば、再循環CO2流が再度加圧された後かつ燃焼前に、低い温度レベル(すなわち500℃未満)の入熱(すなわち、タービン排気流からの復熱に加え、再循環CO2流に加えられる低い温度レベルの熱)を使用することによって高効率を達成する。本明細書における電力生産サイクルという表現は、CO2作動流体と、本明細書及び援用される文献に記載される構成要素及び方法の工程の組み合わせとを利用する電力生産サイクルを示すことを理解されたい。
【0063】
本開示に係る有用な電力生産サイクルは、以上で記載したものよりも多くの工程又は少ない工程を含み得、通常、高圧再循環CO2流を電力生産のために膨張させ、さらなる電力生産のために再度再循環させるサイクルを含み得る。本明細書において使用される場合、高圧再循環CO2流は、少なくとも100バール(10MPa)、少なくとも200バール(20MPa)、又は少なくとも300バール(30MPa)の圧力を有し得る。全ての実例において、圧力の上限は、本開示に係るシステム及び/又は方法を実施する時点で適用可能な機材の限界によって決めることができる。高圧再循環CO2流は、いくつかの実施形態において、約100バール(10MPa)~約500バール(50MPa)、約150バール~約450バール(45MPa)、又は約200バール(20MPa)~約400バール(40MPa)の圧力を有し得る。従って、本明細書における高圧再循環CO2流という表現は、前述の範囲内の圧力のCO2流とし得る。当該圧力は、CO2を含む高圧作動流など、本明細書に記載される他の高圧流の表現にも適用される。燃焼は、約400℃以上、約500℃以上、約600℃以上、約800℃以上、又は約1000℃以上の温度で行われ得る。全ての実例において、温度の上限は、本開示に係るシステム及び方法を実施する時点で適用可能な機材の限界によって決めることができる。いくつかの実施形態において、再循環CO2との混合後の第1燃焼器の出口温度は、約400℃~約1,500℃、約500℃~約1200℃、又は約600℃~約1000℃とすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、水素生産設備と一体化した、以上で記載したような電力生産サイクルは、電力生産の効率を上げるため、水素プラントにより生産される過剰な低い温度レベルの熱を利用することができる。例えば、タービン排気流における蒸気及び炭化水素供給物の過熱は、電力生産システム及び方法において、タービン電気出力を上げて行うことができる。さらに、水素プラントは、水素プラント又はシステムへの炭化水素燃料供給物に存在する炭素由来のCO2が実質的に全て回収され、場合によっては、電力生産サイクルプラントから回収されたCO2と組み合わせられるように、電力生産サイクルと一体化することができる。一体化システムは、大気への排出をゼロにすると共に、電力プラント及びH2プラントの両方から生産されたCO2を最大100%回収する。
【0065】
本開示に係る使用のための水素生産プラントは、従前の水素生産プラントにおいて適すると知られた様々な構成要素を組み込むことができる。例えば、水素生産プラントは、場合によっては蒸気を追加で使用する、酸素との炭化水素の部分酸化を使用して、炭化水素供給物をCO+H2ガスに変換する第1段階反応器を含む2段階反応器を備えることができる。いくつかの実施形態において、純酸素との天然ガス供給物の当該部分酸化(POX)は、約1300℃~約1500℃の出口温度、約30バール~約150バールの通常の圧力で行うことができる。オートサーマル改質器(ATR)は、部分酸化バーナーの後に、蒸気及び一般的には天然ガスである余分な炭化水素を加えることができるため、高温ガスは、その後、さらにH2+COを得て、ガス混合物を約30バール~約150バールの圧力で約1000℃~約1100℃の出口温度まで冷却するその後の蒸気-炭化水素の改質反応が起こる触媒床を通過することができる。第2段階反応器は、両反応器からの総H2+COガス生成物(例えば、約1000℃以上の温度)を使用し、管内の触媒を用いて、対流加熱シェル側フローにおける改質反応の吸熱を提供する蒸気/炭化水素触媒改質器を備えることができる。場合によっては、2つの反応器は、直列又は並列モードで動作することができる。好ましい構成としては、器の上部にある単一の管板から垂れる、触媒が充填された開口管を有し、生成物H2+COが改質器の管を出て、GHRの底部でPOX反応器又はATRからの生成物ガスと混合され、総生成物H2+CO流が、シェル側を通過し、通常約1050℃から550℃~800℃まで冷却される縦型ガス加熱改質器(GHR)が使用される。
【0066】
2つの反応器構成の利点は、炭化水素供給物からのH2+COの収量が最大となり、反応器で形成される全てのCO2が高圧システム内に含有されることである。生成物CO+H2ガスは、蒸気を発生させる廃熱ボイラー(WHB)にてさらに冷却され、さらなる利点としては、この蒸気の量が、ほんのわずかに余分な流量で、2つのH2+CO反応器に、求められる蒸気量を提供することにのみ十分であることが挙げられる。システムにおける蒸気生産の副生成物は、大量ではない。
【0067】
水素を発生させるため、約240℃~約290℃の通常の温度でWHBを出て、通常約20%~約40%(モル)の蒸気を含有するH2+CO生成物は、COが蒸気と反応し、CO2及びさらなるH2を生成する1つ以上の触媒シフトコンバーターを通過する。H2生産処理シーケンス全体の反応を以下に示す(炭化水素としてCH4を使用)。
CH4+1/2O2 → CO+2H2 部分酸化
CH4+2O2 → CO2+2H2O 熱の発生
CH4+H2O → CO+3H2 改質
CH4+CO2 → 2CO+2H2 改質
CO+H2O → CO2+H2 COシフト
【0068】
COシフト反応器を通過する総CO+H2生成物は、冷却され、著しい量の熱は、ガス冷却及び蒸気凝縮のため、通常、約290℃以下の温度レベルで、放出される。この熱は、単一の温度レベルではなく、ほぼ周囲温度に至るまでの温度範囲にわたり放出される。この熱放出の一部は、ボイラー供給水を予熱するために使用することができるが、温度レベルが低く、ある温度範囲でしか利用できない大量の余剰量が存在する。
【0069】
2つの反応器におけるH2+CO発生の効率は、炭化水素及び蒸気供給物を、通常約400℃~約550℃、好ましくは約500℃~約550℃に予熱することにより、著しく上げることができる。これは、H2+CO発生反応器に加えWHB内で利用可能な、これら温度レベルの余分な熱がないため、外部熱源を使用することにより行うことが好ましい。
【0070】
冷却H2リッチガス流は、次に、凝縮水を除去する冷却器(例えば、周囲温度冷却器)を通過する。ガス流は、その後、実質的に純粋な水素を単離することができる分離器を通る。例えば、ガス流は、通常約10ppm~約50ppmの総不純物を有し、供給物から生成物H2への圧力損失が通常約1バール~約2バールである純粋な流れとして通常約85%~約90%(モル)の水素を分離する従来のマルチベッド圧力スイング吸着器を通過することができる。粗H2供給流中の全ての不純物は、廃棄燃料ガス流として分離され、廃棄流は、H2、CO、CO2、CH4、N2、アルゴン、及び少量の蒸気相H2Oなどの成分の任意の組み合わせを含み得る。圧力は、通常約1.1バール~約1.5バールである。この廃ガスは、通常、炭化水素反応器の総炭化水素供給物の低位発熱量(LHV)の約20%を有するため、その効果的な使用は、H2生産の経済全体にとって利点がある。廃ガスは、総炭化水素供給物からの全ての炭素をCO2+COとして含有し、パイプラインの圧力が高いときの純CO2としてのこの炭素の取り出しは、同様に、気候変動排出目標に合致するという利点がある。
【0071】
CO2作動流を利用する電力生産サイクルとの、高圧の、2つの反応器による水素発生システムの一体化は、様々な利益を成し遂げることができる。電力生産サイクルからのタービン排気は、通常、約700℃~約800℃の範囲である。2つの反応器への蒸気及び炭化水素供給物は、別個の熱交換器にあるタービン排気フローの一部を利用して、約500℃~約550℃の範囲まで予熱され得る。これは、単純に、タービン燃焼器において燃える燃料の増加を要し、必要以上の熱を要する。この増加は、タービン入口温度及び流量を上げ、タービンからの著しい追加電力出力を提供する。復熱式熱交換器に入る前に約700℃~約800℃の通常の温度までタービン排気を冷却することができる一方、蒸気及び炭化水素又は炭素質燃料は、約400℃~約550℃の通常の温度に加熱され得る。
【0072】
代替配置として、タービン排気流の少なくとも一部を予熱し、2段階反応器システムにおける合成ガスの発生に要する燃料及び蒸気を予熱するために要する熱を送達する第2燃焼器が具備され得る。ある燃焼器配置は、CO2で希釈された実質的に純粋なO2を含む酸化剤を使用し、20%~30%モルのO2を含有する酸化剤を生成し、燃焼を燃やす。第2の燃焼器配置は、H2プラント予熱条件で求められるように温度が上がるよう燃料の調整された一部を追加されたタービン排気の少なくとも一部に、予熱した低圧空気流由来の実質的に純粋なO2を拡散させるO2イオン輸送膜反応器を使用する。
【0073】
PSAからの廃ガスは、通常約200バール~約400バールまで圧縮され、供給炭化水素と混合され、電力生産サイクルにおいて燃料ガスとして非常に効果的に使用され得る。炭化水素反応器の供給物からの炭素を、電力生産サイクルシステム内でCO2として回収することができることは、さらなる利点である。通常約50%~約70%(モル)とその高いCO+CO2の含有量により、廃ガスのマスフローが大きく、追加のタービン電力を増やせることは、さらなる利点である。あるいは、PSAからの廃ガスは、第1PSAの入口圧まで圧縮することができ、CO2は、多くの既知の処理のうち1つで除去することができ、CO2を失ったガス流は、第2PSAに送り、より多くのH2を分離し、総H2生産流に追加することができる。場合によっては、廃ガスは、エコノマイザ熱交換器で予熱され得、蒸気が追加され得、より多くのH2を追加の触媒COシフト反応器で生産することができる。ガスは、その後、第2PSAにてより多くのH2を分離するよう処理される前に、エコノマイザ熱交換器で冷却され得る。
【0074】
冷却H2+CO流から利用可能な著しい量の低位熱は、電力生産サイクルに加えることができる低い温度レベルの熱を提供し、タービン排気からの復熱を増加させ、その結果、高効率を成し遂げるのに理想的に適する。具体的には、冷却H2+CO流からの「低位」熱は、約200℃~約400℃、約220℃~約350℃、特に約240℃~約290℃の温度レベルであり得る。H2産出に応じて、これは、電力生産サイクルにおける寄生電力の減少が著しい断熱部ではなく、従来の内部冷却コンプレッサーである電力生産サイクル酸素プラントのメインエアーコンプレッサーとなり得る。それは、さらなる寄生電力の減少と共に、熱いCO2コンプレッサーフローをより少なくすることにもつながるであろう。以上で言及したような温度範囲(ほぼ周囲温度に至るまで)にわたるこの余分な熱を利用できることは、同様の温度範囲にわたる高圧再循環CO2の側流の加熱に適する。定義される一体化システムは、従来の深冷酸素生産を利用し、酸素燃料燃焼器を加えた電力生産サイクルに、又は酸素イオン燃焼器を利用するシステムに等しく適用可能である。
【0075】
本開示に係る一体化された電力生産及び水素生産を、様々な図面と関連して、以下で記載する。特に、
図1は、深冷酸素プラントを有し、天然ガス燃料を使用する電力生産サイクルシステムを図解する。例示的実施形態に対応する動作パラメータと関連してシステムを以下に記載するが、電力生産サイクルは、本明細書で別途定義されるものであってもよいことを理解されたい。さらに、電力生産サイクルは、パルマー(Palmer)らによる米国特許第9,068,743号、アラム(Allam)らによる米国特許第9,062,608号、パルマー(Palmer)らによる米国特許第8,986,002号、アラム(Allam)らによる米国特許第8,959,887号、パルマー(Palmer)らによる米国特許第8,869,889号、Allamらによる米国特許第8,776,532号、及びアラム(Allam)らによる米国特許第8,596,075号に別途記載されるような構成要素及び/又は動作パラメータを組み込むことができ、これら文献の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0076】
1つ以上の実施形態において、本開示に係る電力生産サイクルは、CO2を含む作動流体を少なくとも圧縮、加熱、膨張、及び冷却の段階を通し繰り返し循環させるように構成され得る。特に、いくつかの実施形態において、CO2は、超臨界と液体及び/又はガスの状態間を転移することができるが、CO2はこれら段階のうち少なくともいくつかを通して超臨界であり得る。様々な実施形態において、効率を向上させることができる電力生産サイクルは、
・再循環CO2流の存在下で酸化剤と共に炭素質燃料を燃焼させ、少なくとも約500℃又は少なくとも約700℃(例えば、約500℃~約2000℃又は約600℃~約1500℃)の温度及び少なくとも約100バール(10MPa)又は少なくとも約200バール(20MPa)(例えば、約100バール(10MPa)~約500バール(50MPa)又は約150バール(15MPa)~約400バール(40MPa))の圧力の燃焼生成物流を提供する工程、
・電力生産のため、タービン中に、高圧再循環CO2流(例えば、上記で言及したような圧力)を膨張させる工程、
・特にタービン吐出流の、高温再循環CO2流(例えば、上記で言及したような圧力)を復熱式熱交換器において冷却する工程、
・復熱式熱交換器及び周囲温度冷却器において、特に膨張及び冷却された燃焼生成物流に存在する1つ以上の燃焼生成物(例えば、水)を濃縮する工程、
・水及び/又はCO2からの別の物質を分離し、再循環CO2流を形成する工程、
・場合によっては中間冷却を伴う複数の段階で行われる、再循環CO2流を高圧(例えば、上記で言及した圧力)まで圧縮し、、流れの濃度を上げる工程、
・復熱式熱交換器において、圧縮再循環CO2流を加熱する工程であって、特に冷却タービン排気流に接して加熱する工程、及び
・場合によっては、冷却タービン排気流からの復熱に加え、再循環CO2流に熱を加える工程であって、熱は、本明細書に記載されるような水素生産システム又は水素生産部から取得した低位熱などの別の供給源からのものである工程、
の組み合わせを含み得る。
【0077】
図1をより詳細に参照すると、水素生産部との組み合わせに適した電力生産部が例示される。電力生産部は、共に動作したとき、電力生産に効果的な個々の部材の組み合わせを包含することを意図しており、従って、電力生産システムと同じ意味であることを意図していることを理解されたい。同様に、水素生産部は、共に動作したとき、水素生産に効果的な個々の部材の組み合わせを包含することを意図しており、従って、水素生産システムと同じ意味であることを意図していることを理解されたい。例示される電力生産部は、特定の動作パラメータに関連して記載されるが、電力生産部は、本明細書の開示全体と一致するパラメータの範囲にわたって動作することができることを理解されたい。
図1に例示される電力生産部において、熱交換器101で715℃に加熱された304バールのCO
2流107は、燃焼器102に入り、燃焼器102において、電気モーター106により動かされるコンプレッサー105にて、305バール(251℃)まで圧縮されたメタン流112由来の燃焼生成物と混合され、約25%の酸素及び約75%のCO
2のモル組成で、熱交換器101で715℃に加熱された酸化剤流108中で燃やされる。結果として生じる混合流110は、1150℃及び300バールでタービン103に入り、30バール及び725℃まで膨張し、流れ109として出て、発電機104において電力を発生する。30バールの流れは、熱交換器101において冷却され、熱を高圧CO
2流に伝達し、65℃で流れ113として出る。この流れは、充填区域114と、ポンプ116及び間接冷水熱交換器117を備え、水流119、120、及び121を充填区域の上部に向かわせる循環水区域とを有する直接接触冷水器115においてさらに冷却される。CH
4燃焼から生産された余分な液体水、流れ118は、冷水器115の底部から除去される。冷却器115の上部を出た実質的に純粋なCO
2の冷却流122は、複数の流れに分割される。実質的に純粋なCO
2流122の第1部分123は、外部での使用又は他で使用するために排水される正味のCO
2生産流161及び希釈流163に分けられる。好ましい実施形態において、希釈流163は、29バールの燃料器の酸素フロー150と混ざり、25%(モル)の酸素を含有する燃焼器の酸化剤流151を形成する。冷却された実質的に純粋なCO
2の主要な部分124は、2段階内部冷却CO
2コンプレッサー(第1コンプレッサー段階159、中間冷却器160、及び第2コンプレッサー段階125を有する)に入り、このコンプレッサーにて、67.5バールまで圧縮され、流れ162として出る。冷却器115を抜けたCO
2流は、実質的に純粋であり、3mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満、0.1mol%未満、又は0.01mol%未満の不純物を含む。
【0078】
電力生産サイクルは、400℃未満の温度レベルで高圧CO2流に提供される著しい量の追加発生する熱を要する。ここで例示される実施形態において、熱は、圧縮熱を提供する2つの供給源由来である。第1の供給源は、電気モーター141により駆動されて、空気流139を圧縮するエアーコンプレッサー140からの、5.6バール及び226℃の断熱圧縮された深冷酸素プラント供給空気流142である。第2の供給源は、135℃の温度で熱交換器101から取得し、コンプレッサー136において断熱圧縮され、226℃の流れ137を生産する29.3バールのCO2の流れ135である。これら2つの流れは、多段階ポンプ129から直接取得した吐出流130から分割された304バールのCO2流131に追加の熱を提供する追加の熱交換器134を通過する。追加の熱交換器134からの追加の熱は、流れ131において50℃から流れ133において221℃にCO2の温度を上昇させる。冷却CO2流138及びCO2再循環コンプレッサー吐出流162は、組み合わさり、冷却水熱交換器126で冷却され、19.7℃のCO2再循環流128を生産する総CO2流127を形成する。高密度のCO2液のこの流れは、多段階ポンプ129にて305バールまで圧縮される。50℃の吐出流130は、復熱式熱交換器101に入る主要な部分132と、断熱圧縮流137及び142の冷却に接して221℃まで熱交換器134において加熱され、上記で言及したような流れ133を生産する副流131とに分けられる。流れ133は、熱交換器101において高圧CO2フローの主要な部分132と再び合わさる。この手法において、高いレベルの動作効率を成し遂げるため、再循環CO2流に追加の加熱(すなわち、タービン吐出流109からの復熱に加えて)を施す。側流179は、高圧CO2流の主要な部分132から取得することができ、タービンブレード冷却流として、タービン103に向かう。
【0079】
56℃の冷却空気流143は、深冷空気分離システムに入る。深冷空気分離システムは、直接接触空気冷却器と、冷水器と、切替式デュアルベッド熱再生吸着部とを有する空気清浄部144を備え、5.6バール及び12℃の空気の乾燥CO2フリーストリームを送達する。この空気の一部(流れ145)は、電気モーター178により駆動されるコンプレッサー146において70バールまで圧縮され、空気流148及び147は、ポンプ式液体酸素サイクル空気分離深冷システム149に入る。空気分離器からの生成物は、廃棄窒素流164及び30バールの生成物酸素流150であり、生成物酸素流150は、直接接触CO2冷却器115を出たCO2流(希釈流163)の冷却部分と混ざり、酸化剤流151を生産する。酸化剤流151は、CO2/O2圧縮機構において、304バールまで圧縮される。具体的には、酸化剤流151は、電気モーター153により駆動されるコンプレッサー152において圧縮され、流れ155として出て、中間冷却器154にて冷却され、流れ156として出て、ポンプ157においてさらに圧縮される。結果として生じる圧縮酸化剤流158は、熱交換器101において715℃まで加熱され、流れ108として出て、燃焼器102に入る。
【0080】
電力生産サイクルは、酸素を生産するために、別個の深冷空気分離プラントを要する。酸素は、約20%~約30%モルの調整された濃度で、通常700℃超に予熱され、CO2で希釈されて、燃焼器に送達されなければならず、通常、別個のO2/CO2コンプレッサー機構、又あるいは、電力消費が著しく大きいより複雑な深冷空気分離プラントを必要とする。CH4燃料111は、上記で論じたように、高圧コンプレッサー105において305バールまで圧縮される。
【0081】
電力生産サイクルシステムとの水素プラントの一体化(例示される実施形態において、天然ガスを燃料とする)を
図2に示す。システムは、共に85バールの圧力の、270℃で99.5%純粋なO
2の供給物流221及び500℃の天然ガス流246を用いる部分酸化(POX)反応器201を有する。POX反応器201は、1446℃の生成物H
2+CO流222(飽和蒸気流223の追加により1350℃に、場合によっては急冷及び冷却され得る)を提供し、生成物H
2+CO流222は、ガス加熱改質
(GHR)反応器202の底部203に入る。生成物H
2+CO流222は、開口触媒充填管204を出た改質H
2+CO生成物流と混合され、総生成物CO+H
2流は、シェル側上方を通過し、吸熱改質反応のための熱を提供し、600℃の流れ224として出る。管は、自由に動作温度で下方に膨張し、熱い端部での圧力差、従って管壁での応力は無視できる程度である。管に加え、露出金属部は、炭素を析出させる不均化反応(Boudouard reaction)により生じるメタルダスティング腐食に耐性がある、INCONEL(登録商標)693などの合金から製造される。加えて、金属面は、アルミナコーティングによりさらに保護することができる。
【0082】
流れ224は、廃熱ボイラー236を通過することにより冷却され、320℃の生成物ガス流254として出る。生成物ガス流254は、直列な2つの触媒充填COシフト反応器207及び208を通過する。出口流226及び228は、熱をボイラー給水の予熱及び天然ガス流の予熱に使用するシフト流熱回収型熱交換器209及び210に入る。具体的には、COシフト反応器207を出た流れ226は、シフト流熱交換器209を通過し、流れ227として出て、COシフト反応器208に入る。COシフト反応器208を出た流れ228は、冷水器235を通過し、流れ229として出る前に、シフト流熱交換器210を通過する。ボイラー供給水流256及び257は、シフト流熱交換器210及び209でそれぞれ加熱され、温水流258を提供する。天然ガス流241及び242は、シフト流熱交換器210及び209でそれぞれ加熱され、290℃の天然ガス流243を提供する。ボイラー供給水流258は、廃熱ボイラー供給物流260と、290℃の過多流259に分けられ、大過剰流259は、熱交換器134(
図1参照)で60℃まで冷却され、その熱を電力生産サイクルの再循環高圧CO
2流131~133(
図1参照)の一部に放出する。
【0083】
熱交換器210を出た粗H2流271(水蒸気並びに微量のCO、CH4、N2、及びArと共に、炭化水素又は炭素質供給物の炭素の燃焼由来のCO2の実質的に全てを含有する)は、冷水器235においてほぼ周囲温度まで冷却される。凝縮水は、分離器212において流れ229から分離される。分離器212を出た水流262及び熱交換器134を出た冷却水流253は、精製水255及び余分な水流261を生産する水トリートメント部214に入る。精製水255は、ボイラー供給水流として機能し、ポンプ213にて約87バールの圧力に圧送される。ポンプ213を出た加圧ボイラー供給水流256は、熱交換器210に入る。
【0084】
廃熱ボイラー供給物流260は、廃熱ボイラー236で加熱され、飽和蒸気流249として出て、蒸気流250と急冷流223とに分割される。共に290℃の飽和蒸気流250及び予熱天然ガス流243は、補助熱交換器237に入り、補助熱交換器237にて、
図1におけるタービン排気流である流れ109に対応する流れ247に接して500℃まで加熱される。出口流248は、約725℃で復熱式熱交換器101(
図1の電力生産部にある)に入る。この場合、
図1の電力生産部にあるタービン103の入口温度は、上昇し、熱交換器237で伝達された必要な熱を提供し、タービンの電力出力は増加する。従って、補助熱交換器237は、飽和蒸気流250及び天然ガス流243への補助的加熱を提供するよう構成され、この補助的加熱は、電力生産部からの流れにより提供される。
【0085】
熱交換器237を出た熱い天然ガス流244は、500℃の供給物を、流れ246としてPOX反応器201に提供するものと、流れ245としてGHR反応器202に提供するものとで分割され、流れ245は、蒸気流251と混合され、総GHR供給物流252を形成する。GHR反応器202に供給された総GHR供給物流252は、この場合、6:1の蒸気と炭素の比(GHR反応器供給物における水素と組み合わせられた炭素)を提供する。この高い比率は、総生成物H2+CO流224における未変換メタンを少量とすると共にH2+CO生成物の圧力を80バールとすることを可能にする。
【0086】
水分離器212を出た粗水素生成物流230は、流れ230に存在した水素の88%を含み、50ppmの不純物レベルの実質的に純粋なH
2生成物流239を生産するマルチベッド圧力スイング吸着部215内を通る。従って、実質的に純粋なH
2生成物流は、500ppm未満の不純物、250ppm未満の不純物、100ppm未満の不純物、又は75ppm未満の不純物(例えば、不純物含有量が0に至るまで)を含み得る。全てのCO
2に加え、CO、H
2、CH
4、アルゴン、N
2、及び微量の水蒸気といった様々な含有物を含有する1.2バールの圧力の廃棄流232は、電気モーター219により駆動されるコンプレッサー216において30バールまで圧縮され、流れ238として出る。吐出流238は、冷却器217において、ほぼ周囲温度まで冷却され、電力生産システムの天然ガスコンプレッサー105(
図1参照)に、入口流111の一部(
図1参照)として加えられる。320バールのコンプレッサーの吐出流112(
図1参照)は、電力生産部の燃焼器102(
図1参照)に供給物を提供する。85バールの天然ガス供給流241は、
図1にあるコンプレッサー105の一部である別個の天然ガスコンプレッサーの段階からも生産することができる。
【0087】
性能
共に純粋なCH4又は天然ガス供給物を有する、290.3MWの電力を生産する電力生産サイクルシステムとの、246,151Nm3/時で動作する水素生産部の一体化は、以下のように算出された性能データをもたらす。
H2を50ppmの総不純物レベル及び74バールの圧力で生産する。
一体化システムからの電力生産=234.23MW。
水素生産用CH4=92,851.2Nm3/時(923.2Mwに等しい)。
43,773.9Nm3/時(435.2Mwに等しい)の電力生産用CH4。
水素プラント及び電力プラントへのCH4供給物由来の炭素のCO2としての取り出しは、100%である。
一体化システムからのCO2生成は、6,437.1MT/Dである。
CO2は、150バールの圧力で生成される。
【0088】
本明細書に記載されるようなシステム及び方法において、燃焼器における実質的に純粋な酸素の使用は、大量の実質的に純粋な窒素を提供するという付随的な利益を有することができる。窒素は、電力生産部に付随し得る空気分離部から直接、比較的高圧で提供されることができ、実質的に純粋な酸素の必要な流れを提供する。この窒素の少なくとも一部は、本明細書に記載されるように生成することができる水素と混ぜることができる。最終産物は、従来のガスタービン複合型サイクル発電システムでの使用に適したH
2+N
2燃料ガスである。このことは、
図3に例示され、
図3において、空気分離部(
図1参照)からの窒素ガス160及び水素生産設備(
図2参照)からの水素ガス239は、ガスタービン複合型サイクル部300に投入される。
【0089】
H2+N2燃料ガスは、任意のガスタービン複合型サイクル発電システムにおいて利用することができる。既知のシステムは、別の方法ではCO2の除去に必要とされるであろう構成要素の使用を除去する、廃止する、またさもなければ、放棄するために必要に応じて変更することができる。本開示に従い利用することができる既知のガスタービン複合型サイクル発電システムは、ヴィッヒマン(Wichmann)らによる米国特許第8,726,628号、ロジャース(Rogers)らによる米国特許第8,671,688号、ベンツ(Benz)らによる米国特許第8,375,723号、リリー(Lilley)らによる米国特許第7,950,239号、エロール(Eroglu)らによる米国特許第7,908,842号、稲毛らによる米国特許第7,611,676号、ベンツ(Benz)らによる米国特許第7,574,855号、シュッツ(Schutz)による米国特許第7,089,727号、上松らによる米国特許第6,966,171号、及びスミス(Smith)による米国特許第6,474,069号に記載され、これら文献の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0090】
本開示により提供されるシステムの組み合わせであって、これにより、CO2を大気中に吐出することが実質的になく、炭化水素燃料を燃焼させる燃焼電力システムから水素ガス及び窒素ガスが提供される、システムの組み合わせは、ガスタービン複合型サイクルシステムの従来の動作を超える明確な利点を提供する。特に、本発明のシステムの組み合わせは、通常ガスタービンに要する天然ガス燃料をなくし、燃焼時CO2を生成することのない燃料に置き換えることができる。このように、いくつかの実施形態において、本開示は、1)酸素ベースの水素生産部、2)生成したCO2を実質的に全て回収する発電部、及び追加の発電を提供する従来のガスタービン複合型サイクル発電部の組み合わせを提供する。本明細書に記載されるような複合型システムは、驚くほど高い効率、低コストの発電、及び大凡100%のCO2回収を提供することができる。従って、結果として、大凡100%CO2を回収し、100%のCO2回収を提供しない既知の電力生産法のコスト以下の動作コストで、天然ガス燃焼による電力生産を提供するためのこれまでに知られていない手法となる。
【0091】
システムの組み合わせは、様々な手法で実施することができる。いくつかの実施形態において、現存する複合型サイクルパワーステーションは、全てのCO2排出をなくすと同時に、発電容量を増加させるために変換することができる。当該変換は、CO2循環流体を使用する電力の生産及びH2+N2燃料ガスの生成のための、本明細書に記載される別のシステム部材の追加を含み得る。
【0092】
性能
以上で記載されるような複合型システムのための性能計算は、ISO条件で、432.25Mwの電力を生産するようになされたGE PG9371(FB)ガスタービンコジェネレーションシステムに基づき得る。100%のCO2回収、H2生成、N2生成、及びガスタービンにおけるH2+N2燃料ガスの燃焼を伴う天然ガス燃焼電力生産部の組み合わせを考慮して、本開示の実施形態に従い算出した値を以下に提供する。
複合型システムからの正味の総電力生産は、697Mwである。
ガスタービンへの燃料は、50%H2+50%N2(モル)であると仮定する。
総メタン供給物は、1,368.6Mw(LHV)である。
要する酸素は、4979MT/日である。
150バールの圧力で生成されるCO2は、6,437Mt/日である。
全体の効率は、50.9%(LHV基準)である。
【0093】
当業者であれば、前述の説明および付随する図面に示される教示の利益を有して本開示の主題に関連する、本開示の主題の多くの変更形態及び他の実施形態を思いつくであろう。それ故、本開示は、本明細書に記載される具体的な実施形態に限定されるものではなく、変更形態及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。明細書において具体的な用語が用いられているが、それらは単に一般的かつ記述的な意味で使用されており、限定を目的としていない。