(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ロスバスタチンカルシウムの中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/42 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
C07D239/42 CSP
(21)【出願番号】P 2018115022
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】500515071
【氏名又は名称】金剛化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】山田 明広
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】横田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】金森 俊樹
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0091014(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104744377(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104744378(CN,A)
【文献】国際公開第2012/176218(WO,A1)
【文献】JAIN, P. P. et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2016年,Vol. 26,pp. 645-649,Supplementary Information p 9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CASREACT(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表される化合物と式(II):
NCCH
2COOR (II)
[式中、Rは水素原子、分岐しても良い低級アルキル基、アリル基、置換基を有しても良いフェニル基、置換基を有しても良いベンジル基又は置換基を有しても良い複素環を示す。]で表される化合物を、
酢酸アンモニウムである触媒存在下で縮合させて、式(III):
【化2】
[式中、Rは前述と同義である。]で表される化合物を得る工程、及び
式(III)で表される化合物を、塩基非存在下で脱炭酸する工程、
を含む、式(IV):
【化3】
で表される化合物の製造方法
であって、
式(I)と式(II)の反応を、溶媒還流温度で生成する水を除去しながら実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
Rが水素原子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Rがメチル基またはエチル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
式(I)で表される化合物と式(II)の反応において、反応溶媒がトルエン又はキシレンである請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
式(I)で表される化合物と式(II)の反応において、反応溶媒がトルエンである請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(III)から(IV)までの反応を、非プロトン性極性溶媒中で実施することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(III)から(IV)までの反応を、ジメチルスルホキシド中で実施することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
式(III)から(IV)までの反応を、炭化水素系溶媒中で実施することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
式(III)から(IV)までの反応を、80~160℃で実施することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
式(V)
【化4】
で表される化合物の製造方法であって、該方法が、
式(I):
【化5】
で表される化合物と式(II):
NCCH
2COOR (II)
[式中、Rは前述と同義である。]で表される化合物を、
溶媒還流温度で生成する水を除去しながら、酢酸アンモニウムである触媒存在下で縮合させて、式(III):
【化6】
[式中、Rは前述と同義である。]で表される化合物を得る工程、
式(III)で表される化合物を、塩基非存在下で脱炭酸して、式(IV):
【化7】
で表される化合物を得る工程、
式(IV)で表される化合物を、水素化ジイソブチルアルミニウムで還元し、引き続き得られたイミンを加水分解して、式(VI)
【化8】
で表される化合物を得る工程、
式(VI)で表される化合物を、チタン触媒及びアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下、1,3-ジエトキシ-1-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエンと反応させ、式(VII)
【化9】
で表される化合物を得る工程、及び
式(VII)で表される化合物を、NaOH、LiOH及びKOHよりなる群から選択される塩基を含むアルカリ溶液により加水分解し、その後、カルシウム塩を用いて塩交換する工程を含む、方法。
【請求項11】
式(III)で表される化合物。
【化10】
[式中、Rは前述と同義である。]
【請求項12】
Rが水素原子である請求項11に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高脂血症治療薬ロスバスタチンの合成中間体の工業的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチンカルシウム[ビス[(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸]カルシウム塩:式(V)]
【化1】
は、肝臓でのコレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を選択的に阻害し、高コレステロール血症や家族性高コレステロール血症等の治療薬として有用である(特許文献1及び非特許文献1)。
【0003】
現在までにロスバスタチンカルシウム(V)[以下、式(V)で表される化合物、ということがある]の製造については、様々な製造方法が報告されている(非特許文献1、特許文献2、3)。
これらの中で、特許文献2に記載されている式(IV)で表される化合物からのロスバスタチンカルシウム(V)の製造方法は、有用な合成経路の一つである。これらの製造方法は、式(IV)で表される化合物を水素化ジイソブチルアルミニウム等で還元し、続くイミンの加水分解により得られるα,β-不飽和アルデヒドである式(VI)で表される化合物を、チタン触媒及びアルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下、1,3-ジエトキシ-1-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエンと反応させロスバスタチンの対応するエステル体を経て、その後、ロスバスタチンカルシウム(V)を製造しているところが特徴である(スキーム1)。
スキーム1:
【化2】
【0004】
現在までに式(IV)で表される化合物を製造するための数種類の合成経路が報告されている。以下に説明する。
【0005】
特許文献2ではブロモピリミジン誘導体である式(VIII)で表される化合物とアクリロニトリルをパラジウム触媒存在下、ヘック(Heck)反応する事により式(IV)で表される化合物が良好な収率(70%)で製造されている(スキーム2)。しかし、アクリロニトリルは人体に対して著しく有害であるため、暴露を防いで安全に取り扱う必要がある。また、この反応で使用しているパラジウム触媒は酸素に対する安定性が低いので、反応系からの空気を除去が必要となるため操作性が煩雑になる。また、窒素雰囲気下でのパラジウム触媒の保管が必須である。更に、本特許文献記載の方法では高価なパラジウム触媒を式(VIII)で表される化合物に対して約6モル%という触媒反応にしては比較的多く使用していることから、コスト面においても課題がある。
スキーム2:
【化3】
【0006】
特許文献3では、ホーナー・ワズワース・エモンズ(Horner-Wadsworth-Emmons)反応により式(IV)で表される化合物を製造している(スキーム3)。すなわち、式(I)で表される化合物とシアノメチルホスホン酸ジエチルを、トルエン溶媒中、相間移動触媒Aliquat 336(トリ-n-オクチルメチルアンモニウムクロリド)存在下、20%水酸化ナトリウム水溶液を作用させる事により式(IV)で表される化合物を高収率(89.1~95.4%)で製造している。しかしながら、シアノメチルホスホン酸ジエチルは高価であるため、製造コストが課題になることが予想される。また、相間移動触媒反応は液/液の二層系の反応であるので、反応時の液量が大きくなり、大きなリアクターを必要とする。
スキーム3:
【化4】
【0007】
特許文献4では、反応系でブロモアセトニトリルとジメチルスルフィドからシアノメチルジメチルスルホニウムブロミドを調製した後、これに塩基を作用させて発生させたスルホニウムイリドを式(I)で表される化合物と反応させてオキシラン化合物(IX)へ変換した後、ナノ金触媒下、一酸化炭素加圧条件にて還元反応して式(IV)で表される化合物を製造する方法が記載されている(スキーム4)。このプロセスでは高収率(87%)で式(IV)で表される化合物を与えるが、高価で貴重なナノ金触媒(nano-gold catalyst)を使用している。また、人体に有害な一酸化炭素の使用が必須であり、更に7000Torrの高圧条件下で反応するため特殊な工業用装置を必要とする。
【0008】
スルホニウム塩を調整するために使用するジメチルスルフィドは反応終了後にも再生してくる。ジメチルスルフィドは悪臭を有する化合物であり、環境への排出を避けるよう取り扱う必要がある。
スキーム4:
【化5】
【0009】
特許文献5には、フェニルスルホニルアセトニトリルに塩基を作用させた後に式(I)で表される化合物と縮合させて得られた中間体を、塩化第二水銀で処理する事により式(IV)で表される化合物を高収率(81%)で製造する方法が記載されている(スキーム5)。しかし、塩化第二水銀は猛毒を有し、工業的に取り扱うには不向きな化合物である。
スキーム5:
【化6】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】EP0521471号
【文献】特表2010-511029号
【文献】US8,049,010号
【文献】CN104744377号
【文献】CN104744378号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Bioorganic and Medicinal Chemistry, (1997年),5巻(2),437-444頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ロスバスタチンカルシウム(V)の製造に有用な、式(IV)で表される合成中間体の、簡便で取扱性がよく、且つ、低コストな製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、式(IV)で表される中間体の製造に有用な式(III)で表される化合物、及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、式(I)で表される化合物から(III)で表される化合物を得る工程、及び式(III)で表される化合物を式(IV)で表される化合物に変換する工程を含むことを特徴とする、ロスバスタチンカルシウム(V)の製造方法を提供する。尚、式(IV)で表される化合物からロスバスタチンカルシウム(V)への変換は、例えば従来公知の方法が利用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ロスバスタチン母骨格を含むアルデヒド体である式(I)で表される化合物にシアノ酢酸誘導体を反応させることで製造されるα-シアノアクリル酸誘導体である式(III)で表される化合物を、脱炭酸反応を行う事によりロスバスタチンカルシウムの中間体となる式(IV)で表される化合物を高効率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、式(I)
【化7】
で表される化合物と式(II):
NCCH
2COOR (II)
[式中、Rは水素原子、分岐しても良い低級アルキル基、アリル基、置換基を有しても良いフェニル基、置換基を有しても良いベンジル基又は置換基を有しても良い複素環を示す。]で表される化合物を触媒存在下で縮合させて、式(III):
【化8】
[式中、Rは前述と同義である。]で表される化合物を得る工程、及び
式(III)で表される化合物を、塩基存在下あるいは非存在下で脱炭酸する工程、
を含む、式(IV):
【化9】
で表される化合物の製造方法を提供する。
【0015】
又、本発明は、式(I):
【化10】
で表される化合物と式(II):
NCCH
2COOR (II)
[式中、Rは前述と同義である。]で表される化合物を触媒存在下で縮合させる工程を含む、式(III)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0016】
更に、本発明は、式(III)
【化11】
[式中、Rは、前述と同義である。]で表される化合物を提供する。
【0017】
そして、式(IV):
【化12】
で表される化合物は、その後、公知の方法で、例えば、THFなどの有機溶媒中、チタン触媒(例えば、(S)-(-)-1,1’-ビ-(2-ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン)及びアルカリ金属ハロゲン化物塩(例えば塩化リチウム)の存在下、1,3-ジエトキシ-1-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエンと反応させ、式(VII)で表されるロスバスタチンの対応するエステル体を得て、得られた式(VII)で表される化合物のエステル基を、アルカリ溶液(例えばNaOH、LiOH、KOHの溶液)で加水分解することにより対応するカルボン酸又はその塩とし、その後、Ca塩(例えばCaCl
2)などを用いて塩交換することにより、ロスバスタチンカルシウム(V)へと変換することができる(スキームI)(特許文献2を参照)。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物とを、例えばアミン又はその対応する塩のような触媒存在下で反応させて式(III)で表される化合物へ変換した後、得られた式(III)で表される化合物を脱炭酸反応に付す事で、式(IV)で表される化合物を工業的に簡便に製造することができる。
【0019】
本発明で使用するシアノ酢酸誘導体のような式(II)で表される化合物及びアミン触媒は、ホーナーエモンズ試薬や金属触媒よりも安価であるためコスト面で有利である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明につき、以下詳述する。
【0021】
式(II)及び式(III)で表される化合物において、Rは水素原子、分岐しても良い低級アルキル基(「低級アルキル基」とは、炭素数1から5のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基及びシクロペンチル基等を意味する)、アリル基、置換基を有しても良いフェニル基(例えば、フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、アミノフェニル基、シアノフェニル基、チオメチルフェニル基、メチルスルホニルフェニル基、ニトロフェニル基等)、置換基を有しても良いベンジル基(例えば、ベンジル基、フルオロベンジル基、クロロベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、アミノベンジル基、シアノベンジル基、チオメチルベンジル基、メチルスルホニルベンジル基、ニトロベンジル基等)又は置換基を有しても良い複素環(例えば、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、チアゾ-ル環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾ-ル環等)が挙げられる。
【0022】
式(II)及び式(III)で表される化合物において、Rは、好ましくは水素原子である。
【0023】
別の実施形態では、式(II)及び式(III)で表される化合物において、Rは、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0024】
特に、式(III)で表される化合物において、Rは特に好ましくは水素原子である。
【0025】
式(IV)で表される化合物の製造方法を、スキーム6を参照しながら説明する。式(I)で表される化合物は、文献既知の方法で製造することができる(例えば、非特許文献1等。)。
スキーム6:
【化13】
[式中、Rは前述のとおりである。]
【0026】
第1工程は、アルデヒドである式(I)で表される化合物とシアノ酢酸誘導体である式(II)で表される化合物との反応により式(III)で表される化合物を得る工程である。
【0027】
反応は、通常、アンモニア、有機アミン又はそれらに対応する塩の触媒存在下で行われる。有機アミンとしては、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、へキシルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリへキシルアミン、N,N-エチルジイソプロピルアミン、N-メチルモルホリン、ピロリジン、ピぺリジン、ピぺラジン、N-メチルピロリジン、N-メチルピぺリジン、エチレンジアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、グリシン、アラニン、β-アラニン、リジン、アルギニン、プロリン等が挙げられる。塩は上記に挙げたアンモニア又は有機アミンとの酸付加塩であり、塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、こはく酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等から誘導されるものである。好ましくは酢酸アンモニウムであり、式(I)で表される化合物に対して例えば0.06~1モル等量の範囲で添加できる。
【0028】
反応は、通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセト二トリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。より好ましくは、トルエン又はキシレンであり、特にトルエンが推奨される。
【0029】
反応は、0℃から溶媒還流温度で行われる。反応の進行と共に生成する水を除去しながら反応を実施しても良い。
【0030】
第2工程は、α-シアノアクリル酸誘導体である式(III)で表わされる化合物の脱炭酸反応により式(IV)で表される化合物を得る工程である。
【0031】
脱炭酸反応は、通常、不活性溶媒中、式(III)で表わされる化合物を加熱することにより起こる。
【0032】
好適な不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンの様な炭化水素系溶媒、DMF、DMSO、NMP、DMIの様な非プロトン性極性溶媒、及び1,4-ジオキサンの様なエーテル等が挙げられる。より好ましい溶媒はDMSOである。
【0033】
反応は80~160℃で行われ、好ましい反応温度は110~140℃である。
【0034】
本反応は塩基非存在下でも進行するが、塩基を添加する事により反応は活性化される。塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-エチルジイソプロピルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピぺリジン、ピリジン、ルチジン、コリジン、4-ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられ、好ましくはピリジン誘導体であり、より好ましくはピリジン又は4-ジメチルアミノピリジンである。塩基は式(III)で表わされる化合物に対し、例えば1~2モル等量の範囲で添加できる。
【実施例】
【0035】
本発明は、更に下記の実施例で詳しく説明されるが、これらの例は単なる実例であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲で変化させてもよい。プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)データの記載には次の略号を用いた。すなわち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、bはブロードである。
【0036】
(実施例1)
3-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-5-ピリミジニル)-2-シアノアクリル酸(III:R=H)の製造
4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-5-ホルミル-ピリミジン(I)50.0g(0.1423モル)とシアノ酢酸14.52g(0.1707モル)及び酢酸アンモニウム0.66g(0.0085モル)の混合物にトルエン150gを加え、生成する水を除去しながら約12時間加熱還流した。反応液を冷却した後、析出結晶をろ取し、乾燥して表題化合物55.37gを白色結晶として得た。
【0037】
1H-NMR(DMSO-d6)δ=1.23(d,6H,J=6Hz),3.10(m,1H),3.50(s,3H),3.58(s,3H),7.35(m,2H),7.67-7.70(m,2H),8.74(s,1H)。
【0038】
(実施例2)
トランス-N-(5-(2-シアノビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-ピリミジニル)-N-メチルメタンスルホンアミド(IV)の製造
3-(4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)-5-ピリミジニル)-2-シアノアクリル酸(III:R=H)55.37g(0.1323モル)とピリジン20.93g(0.2646モル)のDMSO110.7g混合物を外温約120℃で約15時間反応した。反応液を冷却した後、水554g中に注いだ。析出結晶をろ取し、水洗後、乾燥して表題化合物50.11gを微黄色結晶として得た。
【0039】
1H-NMR(DMSO-d6)δ=1.32(d,6H,J=6Hz),3.30(m,1H),3.52(s,3H),3.59(s,3H),5.32(d,1H,J=17Hz),7.16-7.21(m,2H),7.50(s,1H),7.57-7.61(m,2H)。
【0040】
上記方法で得られたトランス-N-(5-(2-シアノビニル)-4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-ピリミジニル)-N-メチルメタンスルホンアミド(IV)を、THFなどの有機溶媒中、チタン触媒(例えば、(S)-(-)-1,1'-ビ-(2-ナフチルオキシ)(ジイソプロポキシ)チタン)及びアルカリ金属ハロゲン化物塩(例えば塩化リチウム)の存在下、1,3-ジエトキシ-1-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエンと反応させ、ロスバスタチンのエステルを得て、得られたロスバスタチンエステルのエステル基を、アルカリ溶液(例えばNaOH)で加水分解することにより対応するロスバスタチンナトリウムとし、その後、CaCl2を用いて塩交換することによりロスバスタチンカルシウムが得られうる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により製造される式(IV)で表される化合物は、ロスバスタチンカルシウムの製造に利用することができる。