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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ビームクランプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/10 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
F16B2/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018131812
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020008141
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000132079
【氏名又は名称】株式会社スーパーツール
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】的場 隆
(72)【発明者】
【氏名】永屋 貴之
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02303713(GB,A)
【文献】特開2007-010069(JP,A)
【文献】特開2016-196778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
B66C 13/00-15/06
F16B 2/00-2/26
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が開閉軸にて開閉可能となるように取り付けられ、他端部の対向内面に、取り付け対象であるビームが嵌まり込む挟持溝が設けられた左右一対のクランプアームと、
前記左右一対のクランプアームのそれぞれ設けられ、その一方に左ネジの雌ねじ孔、その他方に右ネジの雌ねじ孔が螺設された左右のナット部材と、
前記左右のナット部材に1軸で螺装されたクランプアームの開閉用の左右ネジ棒とで構成されたビームクランプにおいて、
一方のクランプアームのナット部材は、
前記クランプアームに取り付けられた部材本体と、
前記左右ネジ棒が螺装され、前記左右ネジ棒の軸方向にて部材本体に対して当接離間方向に移動可能に設けられ、左右ネジ棒を締め込んだ時に部材本体に当接する当接部が設けられたナットブロックと、
前記左右ネジ棒に平行で、且つ前記ナットブロックに沿うように部材本体に設けられ、前記ナットブロックに係合してナットブロックの離間量を制限するガイドボルトと、
前記ナットブロックと部材本体との間に設けられ、ナットブロックを部材本体から離間方向に押圧付勢するバネとで構成されていることを特徴とするビームクランプ。
【請求項2】
前記ナットブロックには、前記ガイドボルトを挿通するためのガイドボルト挿通孔が穿設され、且つ前記ガイドボルト挿通孔には前記ガイドボルトの頭部が出没する座刳り穴が形成され、
前記部材本体のガイドボルトの植設面から前記ガイドボルトの頭部までの軸長さは、前記植設面から前記座刳り穴の底までの距離より大で、
前記座刳り穴の深さは、前記頭部の軸方向の高さと同じ、またはそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載のビームクランプ。
【請求項3】
ナットブロックの開閉軸側の下面に、雌ねじ孔に至るセットスクリュが螺装されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のビームクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼やI型鋼、或いはT型鋼などで架設したビームに取り付けて、例えば、チェーンブロックやホイストなどの荷役装置を吊り下げられるようにしたビームクランプの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から上記のような型鋼を建物の天井部分に架設したビームに取り付け、チェーンブロック等の荷役装置を吊り下げるビームクランプが広く利用されている(特許文献1)。
ビームクランプは、左右一対のクランプアームがそれらの下端に取り付けられた開閉軸にて、開閉できるように取り付けられており、クランプアームの中間部分に設けられた左右ネジ棒(右ねじと左ねじが左右に並べて刻設されたネジ棒)を回転させることで、該クランプアームを開閉する構造となっている。そして該クランプアームの上端内側にはビームのフランジを両側から挟み込む挟持溝が設けられており、左右ネジ棒を締め込んでいくことによってビームのフランジを両側から挟み込み、当該位置にビームクランプを固定するようになっている。
【0003】
然る後、クランプアームの下端部に設けた開閉軸に上記荷役装置のフックを吊り下げ、荷役作業を行う。荷役作業中、ビームクランプには、吊り下げられた荷役装置から常時、大小様々な力が多方向から加わり、時には左右ネジ棒が緩むことがある。左右ネジ棒は締め付け時の摩擦力で締め付け状態が保持されているので、一端緩むと急速に緩みが拡大し、ビームクランプがフランジから脱落し、吊り荷の落下事故に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-234905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処が、従来のビームクランプにおいては、クランプアームの挟持溝がビームのフランジに十分嵌り込んでいるかどうかなどの取り付け状態の確認の目視や、ハンドル部を目一杯に締め込んだ時の手の感覚だけで締め付け状態を確認しただけであった。しかしながら、左右ネジ棒に錆付きや作動不良があった場合、左右ネジ棒を十分に締め付けたつもりでも実際には必要な締付力が不足し、吊荷の吊り上げや運搬中にビームクランプがビームのフランジから脱落し、吊荷と共に落下するという重大な事故を招く危険性があった。
【0006】
ビームクランプのような重量物を荷役作業する器具では、上記理由からどのような状態でもフランジから脱落しないようにする必要がある。それには仮に左右ネジ棒に緩みが発生したとしても、その緩みが拡大しないようにする必要がある。同時に、ビームクランプのビームへの取り付けのために左右ネジ棒の締め付けを行った時、締め付け状態を外部から確認出来るようにすることも必要である。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の第1の課題は、荷役作業において、ビームクランプの左右ネジ棒の緩みを防止すると共に仮に緩みが発生したとしても、その緩みが拡大しないようにできる構造の提供にあり、第2の課題は吊荷を安全に吊り上げるに必要且つ十分な締付力がビームのフランジに働いたことを目視により確認可能とする構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明(請求項1)は、
一端部が開閉軸4にて開閉可能となるように取り付けられ、他端部の対向内面に、取り付け対象であるビーム80が嵌まり込む挟持溝5L・5Rが設けられた左右一対のクランプアーム1L・1Rと、
前記左右一対のクランプアーム1L・1Rのそれぞれに設けられ、その一方に左ネジの雌ねじ孔25N、その他方に右ネジの雌ねじ孔25Mが螺設された左右のナット部材2L・2Rと、
前記左右のナット部材2L・2Rに1軸で螺装されたクランプアーム1L・1Rの開閉用の左右ネジ棒3とで構成されたビームクランプAにおいて、
一方のクランプアーム1Rのナット部材2Rは、
前記クランプアーム1Rに取り付けられた部材本体20Rと、
前記左右ネジ棒3が螺装され、前記左右ネジ棒3の軸方向にて部材本体20Rに対して当接離間方向に移動可能に設けられ、左右ネジ棒3を締め込んだ時に部材本体20Rに当接する当接部22tが設けられたナットブロック22Rと、
前記左右ネジ棒3に平行で、且つ前記ナットブロック22Rに沿うように部材本体20Rに設けられ、前記ナットブロック22Rに係合してナットブロック22Rの離間量を制限するガイドボルト23と、
前記ナットブロック22Rと部材本体20Rとの間に設けられ、ナットブロック22Rを部材本体20Rから離間方向に押圧付勢するバネ29とで構成されていることを特徴とする。
【0009】
このようにビームクランプAを構成することで、左右ネジ棒3を締め込み、挟持溝5L・5Rの溝奥までビーム80に嵌まり込むと、左右一対のクランプアーム1L・1Rの閉動作が終了する。この状態から左右ネジ棒3を更に締め込むとナットブロック22Rが部材本体20R側に押し込まれ、バネ29が撓められる。左右ネジ棒3を更に締め込むと、ナットブロック22Rの当接部22tが部材本体20Rに当接しナットブロック22Rが停止する。この状態で更に左右ネジ棒3を更に締め込むと、その締付力で左右ネジ棒3が左右のナットブロック22L・22Rの右及び左雌ネジ孔25M・25Nとの強い摩擦力で固定される。そして、撓められたバネ29はその弾発力の分だけ前記摩擦力を増加させる。
これにより、バネ29が存在しない従来例に比べて前記摩擦力が増加するので、より緩み難いし、仮に左右ネジ棒3が緩んだとしても常時バネ29の弾発力が加わっているので、これが緩み止めの働きをなす。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のビームクランプAにおいて、
前記ナットブロック22Rには、前記ガイドボルト23を挿通するためのガイドボルト挿通孔22gが穿設され、且つ前記ガイドボルト挿通孔22gには前記ガイドボルト23の頭部23aが出没する座刳り穴22hが形成され、
前記部材本体20Rのガイドボルト23の植設面21から前記ガイドボルト23の頭部23aまでの軸長さSは、前記植設面21から前記座刳り穴22hの底22sまでの距離Hより大で、
前記座刳り穴22hの深さDは、前記頭部23aの軸方向の高さTと同じ、またはそれ以上であることを特徴とする。
【0011】
これにより、前述のように左右ネジ棒3を締め込んで行くと、クランプアーム1L・1Rの挟持溝5L・5Rの溝奥までビーム80に嵌まり込み、左右一対のクランプアーム1L・1Rの閉動作が終了するこの時点では。部材本体20Rと当接部22tとの間には間隙Kが存在する。この状態から左右ネジ棒3を更に締め込むと、前述同様、ナットブロック22Rが部材本体20R側に押し込まれ、バネ29が撓められる。すると、部材本体20Rに植設されたガイドボルト23の頭部23aがナットブロック22Rの座刳り穴22hから次第に露出してくる。そして、ナットブロック22Rの当接部22tが部材本体20Rに当接するまで締め込むとナットブロック22Rが停止し、外部から視認に十分な高さで前記頭部23a露出する。これにより、バネ29の最大撓みを確認できる。その後、左右ネジ棒3を目一杯締め込んでビームクランプAの取り付けを完了する。バネ29の弾発力は左右ネジ棒3の締付力に加算され緩み止め効果を発揮する。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2のビームクランプAにおいて、ナットブロック22Rの開閉軸4側の下面に、雌ねじ孔25Nに至るセットスクリュ30が螺装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これによれば、左右ネジ棒3を回して、本発明に係るビームクランプAをビーム80に取り付け、該取り付けが完了すると、左右ネジ棒3の締付力に加えてバネ29の弾発力が加算され、左右ネジ棒3の緩みを防止できる。仮に左右ネジ棒3の緩みが発生してもバネ29の弾発力が常時加わっているので、バネ29のない場合に比べて左右ネジ棒3が緩みにくい。
加えて、左右ネジ棒3を締め込んで行くと、ビームクランプAに設けたインジケータとしてのガイドボルト23の頭部23aが座刳り穴22hから頭を出す。これにより、バネ29の最大締め付け位置まで左右ネジ棒3を締め込んだことが目視により確認できる。この状態から更に目一杯左右ネジ棒3を締め込めば、ビームクランプAを必要締付力でビーム80に取り付けたことを確認できる。
更に、ナットブロック22Rの開閉軸4側の下面にセットスクリュ30を設けることで、ビーム80にビームクランプAを取り付けた状態で下からセットスクリュ30を操作することができ、締め込んだ左右ネジ棒3を固定することができ、荷役作業を安全に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のビームクランプをビームに取り付けた状態の斜視図である。
図2図1のX-X断面矢視図である。
図3】本発明のビームクランプを締め込んだ時の部分断面図である。
図4】本発明のビームクランプを緩めた時の部分断面図である。
図5図4のY-Y断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例に従い詳述する。本発明のビームクランプAは、左右一対のクランプアーム1L・1R、クランプアーム1L・1Rの下端部に取り付けられた開閉軸4、左右のナット部材2L・2R、クランプアーム1L・1Rの開閉用の左右ネジ棒3とで構成されている。
【0016】
クランプアーム1L・1Rは、左右一対で対称形状に設けられている。そして左右のクランプアーム1L・1Rの前後のそれぞれは、同一形状で前後に配置されたアーム部材1Lf・1Lr/1Rf・1Rrで構成されている。
そしてこれらアーム部材1Lf・1Lr/1Rf・1Rrは、細長い長円形の板材で構成されている。アーム部材1Lf・1Lr/1Rf・1Rrの下端部は、図1図2から分かるように、前側のアーム部材1Lf・1Rf同士が重ね合わされ、後側のアーム部材1Lr・1Rr同士が重ね合わされ、その間に開閉軸4が取り付けられている。
これにより開閉軸4は左右のクランプアーム1L・1Rを下端部で開閉可能に蝶着すると共にこの部分は荷役装置90の吊り下げ部分となる。そして、アーム部材1Lf・1Lr/1Rf・1Rrの先端部分(上端部分)はそれぞれ連結部材6L・6Rで結合されている。
【0017】
一方の右側のナット部材2Rは、右側のクランプアーム1Rの中段部分に設けられ、他方の左側のナット部材2Lは、左側のクランプアーム1Lの中段部分に設けられている。
左側のナット部材2Lは、左側のナットブロック22L及びカラー20Lとで構成されている。
ナットブロック22Lは円柱状の部材で、その中心線に直角にてその中間部分を貫通する右ネジの雌ねじ孔25Mが穿設されている。そしてこのナットブロック22Lの前後両端は左側のアーム部材1Lf・1Lrに穿設した支持孔1Ls・1Lsに回転可能に挿通されている。そしてナットブロック22Lの外周にはカラー20Lが取り付けられており、カラー20Lの端面は、左側のアーム部材1Lf・1Lrの内面に当接している。このカラー20Lには、ネジ棒挿通孔26Lが穿設され、ナットブロック22Lに螺装された左右ネジ棒3が挿通されている。
【0018】
右側のナット部材2Rは、部材本体20R、ナットブロック22R、ガイドボルト23、バネ29及び回転支持軸部24Rとで構成されている。
部材本体20Rは直方体状のブロックで、中心にブロック取付孔26R、その前面と背面の両面に同軸で軸穴28Rが形成されている。この軸穴28Rの中心線が左右ネジ棒3に直交し、部材本体20Rの回転中心となる。
回転支持軸部24Rは円柱状の部材で、部材本体20Rの側面から突出するように上記軸穴28Rに嵌め込まれ、前記部材本体20Rにボルト固定される。この回転支持軸部24Rは部材本体20Rに一体的に形成してもよい。
【0019】
この右側のナット部材2Rは、右側のクランプアーム1Rの中段部分に配置され、その前後一対のアーム部材1Rf・1Rrの中段にて同軸に設けられた支持孔1Rs・1Rsに回転支持軸部24Rが回転自在に嵌め込まれている。即ち、右側のナット部材2Rも、前後で同軸に設けられた支持孔1Rs・1Rsを中心に回転可能に支持されている。
【0020】
右側のナットブロック22Rは、中心軸に一致して左ネジの雌ねじ孔25Nが穿設されている円筒状の部材で、その外周面は、細径部分22m、中間径部分22n及び外鍔部22fの3段に分かれて形成されている。細径部分22mと中間径部分22nの境界の段差部分が当接部22tとなる。
【0021】
この細径部分22mは、部材本体20Rのブロック取付孔26Rに挿脱方向に移動可能に挿通されており、細径部分22mを奥まで押し込んだ時に中間径部分22nの当接部22tが部材本体20Rの外面(後述する植設面21)に当接する。
そしてその外鍔部22fにはガイドボルト挿通孔22gが穿設されており、外鍔部22fの外面側に開口するように、前記ガイドボルト挿通孔22gに一致して座刳り穴22hが穿設されている。座刳り穴22hの底を22sで示す。この底22sが後述するようにガイドボルト23の頭部23aの係合部となる。
【0022】
右側の部材本体20Rの、ナットブロック22Rの外鍔部22fに対向する面にはガイドボルト23がブロック取付孔26Rの両側に植設されている。この面を植設面21とする。
このガイドボルト23の軸部分は外鍔部22fのガイドボルト挿通孔22gに挿通され、その頭部23aが外鍔部22fの座刳り穴22hに出没可能に取り付けられている。即ち、頭部23aの高さTは、座刳り穴22hの深さDと同じか小さく、頭部23aの外径は座刳り穴22hの内径より小さい(図3参照)。
【0023】
ナットブロック22Rの中間径部分22nの外周部分、即ち、右側の部材本体20Rの植設面21と右側のナットブロック22Rの外鍔部22fの間にバネ29が取り付けられており、ナットブロック22Rを、常時、部材本体20Rから離間する方向に押圧付勢している。そして図4から分かるように、離間する方向に押圧付勢されたナットブロック22Rは、その外鍔部22fの座刳り穴22hの底22sが部材本体20Rに植設されたガイドボルト23の頭部23aに係合している。そしてこの時、植設面21と中間径部分22nの当接部22tとの間に間隙Kが発生する(図4)。
【0024】
開閉用の左右ネジ棒3は、左ねじと右ねじが一方の端部と他方の端部に並べて刻設されたねじ部材3aと、ねじ部材3aから延びたハンドル部3b、及びハンドル部3bの端部にてハンドル部3bに直交しスライド自在に設けられた回し棒3cとで構成されている。 この左右ネジ棒3の左ねじと右ねじの螺設部分は、ナット部材2L・2Rの上記左右のナットブロック22L・22Rにねじ方向を合わせて螺入されている。従って、左右ネジ棒3を回転させると、左右のナットブロック22L・22Rが近接方向に移動し、逆転させることで離間方向に移動する。これにより左右のナット部材2L・2Rを介してクランプアーム1L・1Rが開閉軸4を中心に開閉する。
【0025】
そして図5に示すように、右側のナットブロック22Rの外鍔部22fにセットスクリュ30が取り付けられている。このセットスクリュ30のねじ孔は右側のナットブロック22Rの雌ねじ孔25Nに至る。セットスクリュ30の設置位置は、開閉軸4側であるから、ビームクランプAをビーム80に装着した場合、外鍔部22fの下面側に位置する。
【0026】
以上のようなビームクランプAにおいて、一方である右側の部材本体20R、右側のナットブロック22Rとインジケータとして働くガイドボルト23との関係を図3,4に従って説明する。
ガイドボルト23が植設されている部材本体20Rの植設面21からガイドボルト23の頭部23aの基端までの軸長さS(ガイドボルト23の軸部の長さ)は、植設面21にナットブロック22Rの中間径部分22nの段差状の当接部22tを当接させた状態で、前記植設面21から前記座刳り穴22hの底22sまでの距離Hより大である。この差(軸長さS-距離H)は、座刳り穴22hの底22sから頭部23aまでの隙間で、後述する間隙Kに等しい。
そして、前記座刳り穴22hの深さDは、前記頭部23aの軸方向の高さTと同じ、またはそれ以上の長さに形成されている。
従って、図4のように、バネ29の弾発力によりナットブロック22Rが部材本体20Rから離間する方向に押し出され、頭部23aが座刳り穴22hの底22sに係合している場合には、頭部23aは前記座刳り穴22h内に嵌まり込んで埋没し、外から視認できない。この時、ナットブロック22Rの細径部分22mと中間径部分22nの段部境界である当接部22tと部材本体20Rの植設面21との間には間隙Kが発生する。
【0027】
逆に図3のように、締め込みが完了した状態、即ち、当接部22tが植設面21に当接した状態では、頭部23aの中間以上が座刳り穴22hから露出する。この露出部分を23bで示す。この露出部分23bに外部から視認しやすい色に塗装しておくと外部から視認しやすい。当接部22tが植設面21に当接した状態で、ナットブロック22Rの中間径部分22nと外鍔部22fの合計長さWは、植設面21からガイドボルト23の頭部23aの先端までの長さYより露出部分23bだけ短い。
そして、頭部23aの露出部分23bと非露出部分との間に例えば太い線23dを設けておけば、当該太い線23dの露出により、当接部22tが植設面21に当接したことを目視で確認できる。この状態で目一杯左右ネジ棒3を締め付けると、後述するように必要締付力でビームクランプAをビーム80に取り付けたことになる。
【0028】
次にこのビームクランプAの使用方法について説明する。左右ネジ棒3のハンドル部3bを回してビームクランプAのクランプアーム1L・1Rを開く。この状態では、図4に示すように、バネ29の弾発力により右側のナットブロック22Rは押圧され、部材本体20Rの植設面21から離間しており、ガイドボルト23の頭部23aは、座刳り穴22h内に埋没して外部から見えない。従って、部材本体20Rの植設面21と当接部22tとの間には間隙Kが生じている。なお、右側のナットブロック22Rは、離間状態でガイドボルト23の頭部23aが座刳り穴22hの底22sに係合して保持され、クランプアーム1L・1Rの開状態を維持している。
【0029】
この状態でクランプアーム1L・1R間の上部開口をビーム80の下から挿入し、ビーム80のフランジ81にクランプアーム1L・1Rの挟持溝5L・5Rを一致させ、この状態で左右ネジ棒3を逆転させる。これにより、クランプアーム1L・1Rは開閉軸4を中心にして閉じ、挟持溝5L・5Rにフランジ81が嵌まり込んだ状態で締め込まれて行く。この時点ではクランプアーム1L・1Rは前記バネ29の弾発力により間隙Kが保持されたまま閉じられて行く。
【0030】
挟持溝5L・5Rの奥端にフランジ81の端部が達すると、その状態では左右のクランプアーム1L・1Rがフランジ81を両側からバネ29の弾発力で挟んだ状態となり、これ以上閉じない。従って、左右のナットブロック22L・22Rもこの状態で停止する。 しかしながらこの時点では上記のようにバネ29の弾発力だけでの挟持状態であり、上記間隙Kが存在するので、フランジ81に対するクランプアーム1L・1Rの締付力は不足する。この時点では頭部23aの露出はない。
【0031】
そこで、この状態から更に左右ネジ棒3を回して締め込んで行くと、バネ29に抗して右側のナットブロック22Rが右側の部材本体20Rに向かって次第に捻じ込まれ、頭部23aの露出が開始される。そして最終的に中間径部分22nの当接部22tが右側の部材本体20Rの植設面21に圧接される。この時、右側のナットブロック22Rの移動に伴い、ガイドボルト23の頭部23aが座刳り穴22hから突き出、外部から視認できる。このガイドボルト23の頭部23aの座刳り穴22hから突出量が所定幅(例えば、目印塗装面23cにより判別する。上記のように太い線23dを設けておけば塗装面23cの露出端が明瞭に視認できより確実にバネ29の撓み完了を確認できる。)となったことを確認の上、左右ネジ棒3を更に目一杯締め込む。これにより左右ネジ棒3による必要締付力での締め付けが完了する。この時点ではバネ29が撓んでいるので、前記必要締付力に弾発力が加算されることになる。
【0032】
そして、最後に下側からセットスクリュ30を締め込み、右側のナットブロック22Rに左右ネジ棒3をロックする。然る後、ビーム80に固定されたビームクランプAの開閉軸4に荷役装置90を吊り下げ、荷役作業を行う。
ビームクランプAは、既述のように荷役作業では荷役装置90から大小様々な力が多方向から加わる。この力は左右ネジ棒3を常に緩める方向に働く。本発明では、上記のようにバネ29により、左右ネジ棒3の締付力に弾性力が加算されることになり、左右ネジ棒3の緩みが防止される。仮に、緩みが発生したとしてもバネ29による弾発力が常に左右ネジ棒3に働いているため、ばね29による弾発力以上の外力が働かない限り、ビームクランプAのビーム80から急な脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
A:ビームクランプ、D:座刳り穴の深さ、H:植設面から座刳り穴の底までの距離、K:間隙、S:ガイドボルトの植設面からガイドボルトの頭部までの軸長さ、T:頭部の軸方向の高さ、W:ナットブロックの中間径部分と外鍔部の合計長さ、Y:植設面からガイドボルトの頭部の先端までの長さ
1L・1R:(左右の)クランプアーム、1Lf・1Lr/1Rf・1Rr:アーム部材、1Ls・1Rs:支持孔、2L・2R:ナット部材、3:左右ネジ棒、3a:ねじ部材、3b:ハンドル部、3c:回し棒、4:開閉軸、5L・5R:挟持溝、6L・6R:連結部材、20L:カラー、20R:部材本体、21:植設面、22L・22R:ナットブロック、22f:外鍔部、22g:ガイドボルト挿通孔、22h:座刳り穴、22m:細径部分、22n:中間径部分、22s:底、22t:当接部、23:ガイドボルト、23a:頭部、23b:露出部分、24R:回転支持軸部、25N:左ネジの雌ねじ孔、25M:右ネジの雌ねじ孔、26L:ネジ棒挿通孔、26R:ブロック取付孔、28R:軸穴、29:バネ、30:セットスクリュ、80:ビーム、81:フランジ、90:荷役装置
図1
図2
図3
図4
図5