(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】3’,5’-環状グアノシン一リン酸の新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマー
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6574 20060101AFI20220729BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220729BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220729BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220729BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220729BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220729BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220729BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220729BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20220729BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20220729BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220729BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220729BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220729BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20220729BHJP
C08G 65/335 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C07F9/6574 Z CSP
A61P27/02
A61P35/00
A61P25/28
A61P9/10
A61P25/00
A61P25/02 101
A61P29/00
A61P33/06
A61P33/00
A61P9/00
A61P9/12
A61K31/675
A61K31/77
C08G65/335
(21)【出願番号】P 2019523168
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2017066113
(87)【国際公開番号】W WO2018010965
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522265936
【氏名又は名称】グレイバグ ヴィジョン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ゲニーサー ハンス-ゴットフリート
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーデ フランク
(72)【発明者】
【氏名】レンチュ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エクストレーム ペール
(72)【発明者】
【氏名】マリゴ ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】パケ-デュラン フランソワ
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第89/007108(WO,A1)
【文献】米国特許第05625056(US,A)
【文献】国際公開第99/025384(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記
(21)β-1,N
2-アセチル-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(22)8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N
2-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(23)8-ブロモ-(3-チオフェン-イル-1,N
2-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(24)8-ブロモ-(2-ナフチル-1,N
2-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(25)8-ブロモ-(α-メチル-β-フェニル-1,N
2-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(26)1-ベンジル-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(27)8-チオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(28)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(29)8-カルボキシメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(30)8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(31)8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(32)8-カルボキシメチルチオ-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(33)β-フェニル-1,N
2-エテノ-8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(34)8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(35)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(36)8-(2-アミノフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(37)β-フェニル-1,N
2-エテノ-8-チオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(38)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(39)β-(4-アジドフェニル)-1,N
2-エテノ- 8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(40)8-(2-アミノエチル)-(オクタエトキシ)-アミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(41)8-(3-アミノプロピル)-(ペンタエトキシ)-メチルアミドメチルチオ-グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(42)8-アジドメチルアミドエチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(43)8-(4-(プロパルギルオキシ-(ヘキサエトキシ)-メチル)-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル)-メチルアミドエチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(44)8-ブロモ-1-(3-カルボキシプロピル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(45)8-ブロモ-δ-1,N
2-ブチリルグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(46)1-[アミノメチル-(ペンタエトキシ)-プロピルアミドプロピル]-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(47)8-フェニルグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(48)8-(2-フリル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(49)8-(4-クロロフェニル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(50)8-フェニル-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(51)8-(4-クロロフェニル)-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(52)8-(4-クロロフェニルスルホキシド)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
(53)8-(4-クロロフェニルスルホニル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;及び
(54)8-(4-クロロフェニルスルホニル)-β-フェニル-1,N
2-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
;
から成る群より選択される
化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
(21)β-1,N
2
-アセチル-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項3】
(22)8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項4】
(23)8-ブロモ-(3-チオフェン-イル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項5】
(33)β-フェニル-1,N
2
-エテノ-8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項6】
(31)8-フェニルアミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項7】
(36)8-(2-アミノフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項8】
(34)8-(4-ヒドロキシフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項9】
(30)8-(2-アミノフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項10】
(35)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項11】
(24)8-ブロモ-(2-ナフチル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体
である請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項12】
下記
(25)8-ブロモ-(α-メチル-β-フェニル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(26)1-ベンジル-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(27)8-チオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(28)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(29)8-カルボキシメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(32)8-カルボキシメチルチオ-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(37)β-フェニル-1,N
2
-エテノ-8-チオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(38)8-(4-イソプロピルフェニルチオ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(39)β-(4-アジドフェニル)-1,N
2
-エテノ- 8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(40)8-(2-アミノエチル)-(オクタエトキシ)-アミドメチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;及び
(41)8-(3-アミノプロピル)-(ペンタエトキシ)-メチルアミドメチルチオ-グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項13】
下記
(42)8-アジドメチルアミドエチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(43)8-(4-(プロパルギルオキシ-(ヘキサエトキシ)-メチル)-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル)-メチルアミドエチルチオグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(44)8-ブロモ-1-(3-カルボキシプロピル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(45)8-ブロモ-δ-1,N
2
-ブチリルグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(46)1-[アミノメチル-(ペンタエトキシ)-プロピルアミドプロピル]-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(47)8-フェニルグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(48)8-(2-フリル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(49)8-(4-クロロフェニル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(50)8-フェニル-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(51)8-(4-クロロフェニル)-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(52)8-(4-クロロフェニルスルホキシド)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
(53)8-(4-クロロフェニルスルホニル)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;及び
(54)8-(4-クロロフェニルスルホニル)-β-フェニル-1,N
2
-エテノグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項14】
有効量の請求項1~
13のいずれか1項に記載の化合物
又はその医薬的に許容される塩を含む
、網膜疾患若しくは障害又は神経若しくは神経変性疾患若しくは障害から成る群より選択される疾患又は障害の治療に使用するための組成物。
【請求項15】
化合物又はその医薬的に許容される塩が、
(22)8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
又はその医薬的に許容される塩である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
疾患又は障害がレーバー先天黒内障である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
疾患又は障害がシュタルガルト病である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
疾患又は障害がレーバー先天黒内障である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
疾患又は障害がシュタルガルト病である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
有効量の請求項1~
13のいずれか1項に記載の化合物
又はその医薬的に許容される塩を含む、下記:
a)網膜色素変性症又は網膜の別の遺伝性疾患;
b)代謝性若しくは神経変性疾患、症候群又は眼疾患の結果としての続発性色素性網膜変性症;
c)糖尿病性網膜症、年齢関連黄斑変性症、黄斑円孔/パッカー、眼腫瘍、網膜芽細胞腫、網膜剥離及び河川盲目症を含む網膜の疾患、;
d)神経又は神経変性障害、脳卒中、嗅覚脱失、炎症性及び神経障害性疼痛、軸索再生及び脊髄損傷後修復、
e)寄生虫症、例えマラリア、アフリカトリパノソーマ症、及びシャーガス病
f)心血管疾患、高血圧症、癌、又は急性ショック
の少なくとも1つの治療に使用するための組成物。
【請求項21】
化合物又はその医薬的に許容される塩が、
(22)8-ブロモ-(4-メチル-β-フェニル-1,N
2
-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート、Rp-異性体;
又はその医薬的に許容される塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
網膜色素変性症の治療に使用するための、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
網膜色素変性症の治療に使用するための、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
要約
本発明の実施形態は、cGMPシグナル伝達系を阻害する3',5'-環状グアノシン一リン酸(cGMP)類似体の新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーに関する。本発明は、マルチマーのモノマー前駆体として役立ち、及び/又はそれ自体阻害活性をも示し、及び/又は関連マルチマーの阻害活性に影響し得る関連モノマー化合物にも関する。
【0002】
発明の分野
本発明は、3',5'-環状ヌクレオチドグアノシン一リン酸の新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマー(繋留されたダイマー、トリマー及びテトラマーを含めて)、及び医学及び薬学の分野でのそれらの用途にも関する。本発明は、特有の前駆体モノマーにも関する。本発明はさらに、シグナル伝達研究用試薬として及び環状ヌクレオチド制御結合タンパク質とそのイソ酵素のモジュレーターとして、並びにアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして、抗体産生のため又は診断用途のため、例えばチップ表面上での該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
3',5'-環状アデノシン一リン酸(cAMP)及び3',5'-環状グアノシン一リン酸(cGMP)はプリン核酸塩基含有環状ヌクレオチドであり、それぞれ、1957年及び1963年に内在性分子として発見された。それらは、多数の細胞プロセス、例えば遺伝子のコントロール、走化性、増殖、分化、及びプログラム細胞死の二次メッセンジャーとして作用する。いくつかの疾患は、cGMP及び/又はcAMPの異常に高いか又は低いレベルと関連する1。3’,5’-環状リン酸のエクアトリアルな環外位置に硫黄原子が導入された硫黄修飾Rp-グアノシン-3’,5’-モノホスホロチオアート(Rp-cGMPS)及びRp-8-Cl-cGMPSの合成は記載され、細胞のcGMP系のメンバーとしてのcGMP依存性タンパク質キナーゼ(PKG)へのそれらの阻害効果が報告されている。しかしながら、特にRp-cGMPSは、同様の濃度で阻害されるcAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)に対してPKGの特異性の欠如を示した。さらに、Rp-cGMPS及びRp-8-Cl-cGMPSのような親水性類似体の不十分な膜透過性は、生物実験のための主な限界であり、これらの類似体のより広い適用を妨げる。この数十年間に、部分的に膜透過性及び生物活性が改善されたいくつかのRp-cGMPS類似体、例えばRp-8-Br-cGMPS2及びRp-8-Br-PET-cGMPS2b、3が開発された。これらの類似体は、生物学的環境でcGMP系の環状ヌクレオチドに基づくインヒビターのより広い試験を可能にするのに今や少なくとも十分に強力だった。しかしながら、該類似体は、未だに最適ではなく、それらの生物学的効果を発揮するためにはより高いμモルからミリモルまでの範囲で適用しなければならないことがある。特に上方制御されたcGMP系を有する細胞内では、薬理学的物質又は病理学的状況のどちらかによって、Rp-8-Br-PET-cGMPSのような類似体は、最適未満の効力又は部分的にアゴニスト特性さえ示した4。
【0004】
様々な細胞、組織及び器官におけるPKG基質の同一性及び存在に関する知識は限定されている。従ってcGMP-PKG系の生理学的のみならず病理学的重要性が十分に理解されておらず、このことがcGMP関連現象の一般的理解のみならず、該基質が関与する疾患及び状態の治療の開発を低減している可能性がある。より効果的かつ信頼できるcGMP類似体に基づくインヒビターを開発できれば、これらは、現在果たせるものよりずっと鋭くcGMP系関連問題に取り組めるようにすると期待される。
網膜ジストロフィー(RD)は、眼の重症な障害をもたらす神経変性疾患であり、視覚機能を進行的に低下させる。これらの疾患は、光の刺激を電気化学的シグナルに変換して、見えるようにすることに関与している網膜の感覚ニューロンである杆体及び/又は錐体光受容体に影響する。主な変性は、杆体又は錐体のどちらかに影響し得るが、完全な失明に進行することが多い。
RDは遺伝的に異質であり、網膜における機能及び発現パターンが異なる250超の様々な遺伝子に関連する。この多数の標的遺伝子が、遺伝子治療法及び一般的な細胞死機構を標的にする広範な変異依存性神経保護治療法のための代替細胞の開発を妨げる。公表された研究は、変性プロセスの根底にある細胞内機構に関するある程度の情報を提供し、光受容体細胞死で重要な役割を果たすいくつかの因子を同定した。これらの研究は、患者コホートに見られるRDに相同性の遺伝子変異を示す細胞モデル及び動物モデルにほとんど由来している。1つの該手法は網膜肝細胞から分化した初生光受容体を使用し5、それぞれ、RDモデルによって誘発されるか又はRDモデルに由来するときに、網膜細胞死経路の特徴づけに適切なモデルを示し、神経保護活性を有する小分子の試験に有用性を示した6。別の手法は、RDモデルからの網膜外植片に関与し、これを用いて細胞死機構及び実験処理を研究することもできる4。
【0005】
RDで変異した遺伝子は、通常は光受容体特有の機能を伴う。cGMPは、光伝達カスケードにおいて光受容体細胞が光に打たれると光受容体細胞内で起こる直接的役割を果たす。多くの場合、RD変異は、例えば光受容体のcGMP代謝に関与する酵素用遺伝子が影響を受ける状況で、光受容体にcGMPの過剰蓄積をもたらす7。しかし重要なことは、変異遺伝子がcGMP代謝に直接関係ない状況でもcGMPの光受容体蓄積が見られることもあり7、この結果として変異依存性処理手法に可能性のある標的であるとcGMP系を同定する。cGMP代謝に直接関与する遺伝子については、これは、cGMPを5’-GMPに加水分解する光受容体酵素であるホスホジエステラーゼ6(そのサブユニットは、杆体光受容体では遺伝子PDE6B、PDE6A、PDE6Gによって、また錐体光受容体では遺伝子PDE6C、PDE6Hによってコードされる)における変異の場合である。網膜色素変性症(RP)の網膜変性症1(rd1)マウスモデルにおいてはPde6b遺伝子が変異し、これは多くの研究室でよく研究されている。想定される一連のイベントにおいて、PDE6B変異網膜の光受容体におけるcGMPの蓄積は、実際の遺伝子欠陥の直接の結果として起こり、従ってこれは早期かつ機構的に基本的な変性成分と見られ得る。次のステップでは、cGMP増加は下記4つの標的の少なくとも1つを有すると予想することができる:1)cGMPにより活性化されると、特異的タンパク質をリン酸化するPKGs、2)cGMPにより活性化されると、Na+及びCa2+のcGMP制御流入を可能にする環状ヌクレオチド依存性チャネル(CNGC)、3)PDEs、及び4)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネル。最初の2つのcGMPの標的は光受容体変性に直接関連するが4、8、cGMP標的PDE及びHCNチャネルは、さらに変性プロセスに関与する。早期の変性イベントとのそれらの直接的関係のため、PKG及びCNGCは、下流機構は未だに詳細には理解されていないにもかかわらず、疾患ドライバーとみなすことができる4、8。まだ他のcGMP標的がある可能性がある。
【0006】
以前に、特定のエクアトリアル修飾cGMP由来PKGインヒビター、例えば、Rp-8-Br-cGMPS、Rp-8-Br-PET-cGMPSが、分析のインビトロ(rd1及びrd2)モデル系でもインビボ(rd1)モデル系でもrd1及びrd2変異光受容体のいくらかの保護を提示することが分かった4。rd2モデルは、見掛け上はcGMP系に無関係の変異を有する4、7。しかしながら、これらの現在の最先端のエクアトリアル修飾cGMP類似体は、病理学的に不均衡なcGMP系に阻害効果を発揮するためには高い細胞外用量で適用しなければならず、結果として細胞外又は細胞内副作用のリスクを暗示する。
発明者らは、今や、最先端の化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて改善された阻害効果を示す見込がある分類の化合物は、エクアトリアル修飾(阻害性)ポリマー連結マルチマーcGMP(PLM)類似体であることを理解したが、これらは以前に合成又は研究されたことがない。次に、エクアトリアル修飾のない化学的に関連する賦活ポリマー連結ダイマーcGMP(PLD)類似体は、モノマーcGMPと比較すると、スペーサー長に応じて、PKGIα又はCNGCのどちらかの活性化の顕著な増加を誘発すると報告された10。しかしながら、この単一の関連報告の1つの欠点は、有効なアクセスを与えない低収率の合成関連戦略であった10、12。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、RDに利用可能な認可された予防又は治療方法はなく、細胞死経路を直接妨害し、光受容体死を予防できる新規かつ改善された化合物の開発が必要とされている。従って、本発明の目的は、網膜変性プロセス中に活性化される細胞死経路の阻害用の新規エクアトリアル修飾cGMP類似体を提供することである。好ましくは、光受容体細胞死の可能性のある処置に関するそれらの有効性を示すため、新規エクアトリアル修飾cGMP類似体は、網膜幹細胞から分化した初生光受容体及びRD関連細胞又は組織において細胞死の有効なインヒビターでなければならない。本発明のさらなる目的は、ニューロン起源の他の細胞系及び一般的細胞培養又は組織系内でcGMP系を同定及び検証するための研究ツールとしての新規エクアトリアル修飾cGMP類似体を提供することである。さらなる目的では、新規エクアトリアル修飾cGMP類似体は、細胞培養及び組織系内でcGMP系を阻害するのにRp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSより有効でなければならない。本発明の別の目的は、アフィニティークロマトグラフィーのため、抗体産生のため、診断用途のため又は臓器若しくは組織の移植貯蔵溶液用の添加剤として新規エクアトリアル修飾cGMP類似体を提供することである。本発明のさらなる目的は、医療環境内で、網膜及び網膜光受容体の外側でも疾患関連不均衡cGMPの薬理学的阻害のための新規エクアトリアル修飾cGMP類似体を提供することである。
本発明の別の目的は、新規エクアトリアル修飾(阻害性)ポリマー連結マルチマーcGMP類似体を確立しながら、賦活PLD化合物の単一の関連報告に比べて10、有効なアクセスを与えるために収率が改善されたよりロバストかつ位置選択的合成方法を適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
従って、本発明の目的は、新規エクアトリアル修飾(阻害性)ポリマー連結マルチマーcGMP類似体を提供しながら、前記新規エクアトリアル修飾(阻害性)ポリマー連結マルチマーcGMP類似体への有効なアクセを与えるために収率が改善されたよりロバストかつ位置選択的合成方法をも適用することによって解決される。
さらなる態様では、本発明の目的は、cGMP作用型細胞標的の調節不全と関連する病理、状態又は障害を治療又は診断するための最先端の化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて特性が改善された医薬的に許容される新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP(PLM)類似体又はその関連モノマー前駆体によって達成され、好ましくは該標的は、例えば、限定するものではないが、cGMP依存性タンパク質キナーゼ(PKG)、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネル、ホスホジエステラーゼ(PDE)及びcGMP依存性チャネル(CNGC)の少なくとも1つである。さらなる態様では、本発明の目的は、細胞培養若しくは組織内のcGMP系を妨害するのに適した研究ツールとして又は診断ツールとして利用される新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP類似体又はその関連モノマー前駆体によって達成される。
好ましくは、cGMP類似体は、エクアトリアル修飾グアノシン-3',5'-環状ヌクレオチド一リン酸の化学的に共役したマルチマーであり、式(I)若しくは式(II)の繋ぎ止められたダイマー、トリマー及びテトラマー又は式(III)のモノマー前駆体cGMP類似体が含まれる。
【0009】
図面及び式の簡単な説明
式Iは、本発明の化合物の一般構造(分岐及び直鎖状類似体)を示す。
式Ibは、式Iのより詳細な図解を示す。
式IIは、本発明の化合物の一般構造(直鎖状類似体)を示す。
式IIbは、式IIのより詳細な図解を示す。
式IIIは、本発明の個別化合物としてのG単位又は式I若しくはIIの化合物の単位の一般構造を示す。
式IV及びVは、典型的イミダゾリノン置換を特徴とする式IIIのG単位の一般構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】使用変数を図解する本発明のトリマー化合物の例を示す。
【
図2】初生杆体様細胞における細胞死に対する本発明の例示化合物の保護効果(公知化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSと比較した)を示す。解説:rd1変異マウス由来の初生杆体様細胞は、分化後11日に自発細胞死を受ける。培養の10日目に杆体様細胞を化合物にさらし、24時間後に分析した。A.:0.1μM濃度の試験化合物。B.:1μM濃度の試験化合物。エチジウムホモダイマーアッセイにより死細胞の百分率を評価した。未処理細胞をコントロールサンプルとして示してある(黒棒)。基準化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSをダッシュ付き棒として示してある。データは、少なくとも3回の生物学的反復による平均±SDとして示してある。
【
図3】rd1外植実験用の培養パラダイムを示す。解説:生後5日(PN5)の齢の動物を断頭により殺し、前述したように付着した網膜色素上皮と共に網膜を解剖した
9。市販の6ウェル培養インサートの膜上で網膜を平らにした後、1.5mlのカスタムメイドの培養液を各ウェルに加えた。次にこれらの外植片を培養内で2日間如何なる処理もせずに維持した後、本発明の試験類似体を所望濃度で添加し、PN7 (図中「7」)で培地を変えた。次に本発明の類似体濃度は同一で、PN9(図中「9」)にて新しい培地に変えて、培養をPN11(図中「11」)まで維持した。この時点で固定化手順によって実験を終わらせる。従ってこのパラダイムをPN5+2+4と呼ぶ。コントロール、すなわち、如何なる処理もしないrd1外植片は同パラダイムを用いた。比較用に健康動物(野生型、wt)を使用し得る。水平棒のより明るい部分は未処理の最初の期間を表し、より暗い部分は実際の処理時間を示す。
【
図4】網膜外植片における細胞死に対する本発明の例示化合物の保護効果(公知化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSと比較した)を示す。解説:本発明の選択類似体が所与の濃度でrd1外植片の光受容体の細胞死に及ぼす効果。固定化して薄片を作った材料についていわゆるTUNEL染色によって細胞死を評価した後、死細胞数をカウント及び分析し、未処理rd1外植片の死細胞数と比較した。様々な類似体間及び濃度間のより直接の比較を可能にするため、処理/未処理試験片の比率を計算した。最左棒は未処理外植片そのままを表し、効果がないので、これは比率1.0を有する。そして次の棒は50μMのRp-8-Br-PET-cGMPSに関し、効果比率は約0.78だった。この処理が光受容体細胞死を20%超減じたことを意味する。同様に処理の残りを解釈することができる。棒は標準偏差を表し、試験数は8だった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP(PLM)類似体及びその関連モノマー前駆体に関する。その中で用語「エクアトリアル修飾」は、3’,5’-環状一リン酸のエクアトリアル環外位置(式III中のR8)の修飾を指す。本発明は、改善された薬剤及び研究ツールとしての有用性を有する。
将来の実現可能性を秘めて同時に単一分子と共に標的タンパク質の1つより多くの結合部位を取り扱うことによって、活性増加を果たすという概念が、エクアトリアル修飾せずに賦活ポリマー連結ダイマーcGMP類似体(PLD)を使用する前にかつて報告されたことがある10。その報告ではPEGスペーサーの長さだけが異なる1つのPLD同族列が合成され、cGMP依存性タンパク質キナーゼIα(PKG Iα)及び環状ヌクレオチド感受性イオンチャネル(CNGチャネル)を活性化する能力について試験された。これらの結果は、PLDsがモノマーcGMPに比べて増強した賦活ポテンシャルを備えることを示唆したが、この増強は、基本的にそれぞれ取り上げるタンパク質特有の最適なスペーサー長(cGMP単位間の)によって決まる。従って、この最適なスペーサー長からのずれが増加するにつれて、効果が低減し、最終的に消失すると報告された。
【0012】
この研究に基づいて、前記類似体の第2の単位へのポリマースペーサーを介した連結を通じて、Rp配置を有するホスホロチオアート基を特徴とする公知拮抗性cGMP類似体の阻害効力をも改善できると提案された11。しかしながら、これは実際には遂行されなかった。この提案は、連結スペーサーの付着に適した分子内の位置の推奨又は評価をも含めなかった。従って特に他のPKGイソ型Iβ及びIIに関する阻害効果上昇が全く得られない場合に、該阻害効果上昇を達成するために、どの位置でスペーサーが耐容性を示すか分からなかった。さらに、既に遂行されたことがある1つの合成とは別に、該マルチマー拮抗性化合物調製のための合成プロトコルも、さらなる単位及び/又はスペーサーへの連結を果たすのに適した前駆体のカップリング官能基又は官能化の性質の説明もなかった。前記合成(賦活類似体の)では、8位にチオール基を有するcGMPを二官能性PEGビニルスルホンと反応させて8位で連結したダイマーを与えた10-11。この方法の収率は提供されなかった。しかしながら、後に公表されたように12、また我々自身の経験に従って、報告された条件は、8位ではなく7位での付加に有利に働く。従って8位で連結される所望ダイマーは、この戦略を用いては不十分な収率でしか得られないと結論づけなければならない。このように、さらなる探索用の該化合物の阻害性類似体への効果的アクセスを与えるためには、収率が向上した、よりロバストかつ位置選択的方法が必要だった。
【0013】
上述したように、PLDのポテンシャルは、今まで、賦活類似体の単一の同族列及びそのPKGイソ型Iα及びCNGチャネルへの影響についてしか研究されていなかった。この状況ではcGMPシグナル伝達カスケードの他の標的、例えばPKG Iβ及びIIは研究されなかった。従ってこれらの標的に取り組むためにどんな修飾が必要か分からなかった。
網膜細胞死経路用モデルとして本明細書で使用する初生杆体様細胞のような複雑な細胞系内では、cGMP系は調節不全である。従って1つより多くのcGMP標的の過剰活性化は細胞死を引き起こす可能性がある。保護効果を達成するためにどのcGMP標的に取り組む必要があるか分からなかった。例えば複数の標的の阻害が必要な場合、PLD又はPLM類似体のどちらが一般的に適しているか不明だった。以前の研究は、PLD化合物の活性を改善及び最適化するためのモディファイヤーとしてスペーサー長にのみ着目し、結果は、スペーサー長によって決まるかなり選択的な標的親和性を示唆した。従って、同PLDを有する2つ以上の標的に取り組むことは、仮にふさわしいものであっても、両標的の活性化ポテンシャルが顕著に低減するであろう中間のスペーサー長でのみ可能なようだった。
核酸塩基修飾(例えば置換)、カップリング部分又は連結位置のバリエーション、並びにPLM内の2つの異なるcGMP単位の組み合わせが活性化ポテンシャルに及ぼす効果は、以前に取り上げらたことがない。
マルチマーcGMP類似体を用いてcGMPシグナル伝達経路を阻害するという概念に関連する最も必要不可欠な因子は不明だった。
【0014】
我々がこの種の第1の化合物を探索及び確立しようと企てたとき、我々はまず最初に合成的により容易にアクセスできる賦活類似体(R8=O、式III参照)で始め、PKG イソ型Iα、Iβ及びIIを活性化するそれらの能力を研究した。第1セットの類似体を8-(R1)位置でカップリングさせた。先行技術の不十分なカップリング戦略に取って代わるため、例えばペプチド(アミド)及びクリック化学に関わる種々のよりロバストで位置選択的及びより高い収率の方法を開発した。新規PLDは、当技術分野で報告されたものより顕著に活性だった10。それらは、スペーサー長のかなり広いバリエーションにわたってそれらの改善された活性化ポテンシャルをも本質的に維持しながら、適用した全ての新規カップリング法は非常に類似の結果を与えた。驚くべきことに、両方とも以前に研究されたことがないPLDの核酸塩基操作及び/又はカップリング官能基のバリエーションは、スペーサー長によって選択的に誘導された以前に提案された標的を無効にすることがさらに分かった。特に、R4及び/又はR5でのバリエーション(例えばβ-フェニル-1、N2-エテノ(PET)部分;式III参照)は、以前は活性化上昇が観察されなかったスペーサー長でさえ超強PKG Iα活性化を誘導し、効果はいずれのスペーサー長関連効果よりずっと強力だった。R1部分の修飾と重なるスルホニルカップリング官能基の交換も、PKG活性化を顕著に高めた。新規PLDの別の構造態様は、2つのcGMP類似体を互いにカップリングさせる連結位置に関する。それによってPLDの観察された活性増強は、R1位置による連結に限定されなかった。連結がG単位に沿って変動しても、活性増強は存在した。従って、非限定例として、PET部分(R4+R5で)によって連結したPLDは、R1位置で繋ぎ止められたPET置換誘導体と同様に増加したPKGアゴニストポテンシャルを示した。驚くべきことに、異なる結合親和性を有する2つの不等G単位を特徴とする(例えば1つのPET-cGMP単位及びPET部分を欠く単位を含有する)混合(異質性)PLDは、広い範囲でそれらの対応する同族PLDにおける両G単位の特性に似ているPKG(イソ型)活性化プロファイルを与えることになる。さらに混合連結位置を含む混合PLD(例えばR4+R5-PET部分で連結されたPET-cGMP類似体単位及びR1位置で連結されたPET部分を欠く単位)は同様に振る舞った。これらの結果は、非常に増強されたPKG活性を得るためには第2のcGMP(類似体)への連結が必要とされるが、第2のG単位は、必ずしも同種のものである必要がないことを意味する。述べたように、第2のG単位は、PKGの非常に効力の低いアクチベーターであることさえあるが(それぞれの同族PLDについて観察された)、第1のG単位のより優れたPKG活性化(この場合もそれぞれの同族PLDについて観察された)は、混合PLDハイブリッド内で実質的に保存される。これらの予想外の知見は、(混合)PLDの別の新しい大きなポテンシャルを明らかにする。確立されたエフェクター化合物は、特有の生物化学用途では誘導体化される必要があることが多い。例えば、顕微鏡又は分光学的技術を用いて細胞内局在化を可能にするためには蛍光色素の導入が非常に一般的戦略である。代表結果を得るため、理想的にはアッセイ解読を容易にすることを意味する該トランスフォーメーションは、標的活性化プロファイルに影響を与えるべきでない。しかしながら、元々の化合物のこれらの構造操作は、標的の親和性及び特異性に顕著なシフトをもたらすことが多く、活性化ポテンシャルを失うことさえある。これは特にファーマコフォア基でのみ特定部分が導入可能である場合又はそれが立体障害のため標的タンパク質への結合を阻害又は弱める場合である。複数の標的化合物の使用から利益を得る用途のためには、同様に、標的活性化プロファイル(又はその程度)の変化が明白に望ましいこともある。しかしながら、多標的化合物の開発は、標的特異性化合物の製造と全く同じように困難なこともある。1つの標的に取り組むために必要な修飾が第2の標的への結合を阻害するときはいつでも困難である。本発明の範囲内で開示する混合PLDは、これらの両問題への改善された解法を提供する。それらの利点は、2つのcGMP単位(モノマー用の単位ではなく)は全体的なPKG活性化プロファイルに寄与するという事実から生じる。上述したように、完全に異なる標的親和性(モノマー又は同族PLDについて観察される)を与えるであろう該修飾でさえ、それらを1つのcGMP単位でのみ行う限り、親化合物の活性化特性の向上を消さない。この点で、単一のcGMP単位での構造操作の効果は、混合PLD内で緩衝される。従って、混合PLDは、修飾(1つのcGMP単位で)のずっと広い多様性を可能にしながら、PKG活性化のこれらの修飾に起因する望ましくない低下が、仮に存在しても、ほとんど目立たない。他方で、混合PLDは、多標的化合物のデザインをも支援する。異なる標的(例えば異なるPKGイソ型)に取り組むことを意図する官能基(例えばPET基)は、明白に1つのcGM単位で導入可能であり、混合PLDの広範な標的活性化スペクトルを与える。
【0015】
ポリマー連結cGMP類似体の概念は、ダイマーからトリマー及びテトラマーにも拡張された。その点で、特定のcGMP単位の連結は直鎖状又は分岐様式のどちらかで達成される(式I及びII参照)。トリマー及びテトラマー内のcGMP単位数の増加は、(異なる)アクチベーター及び標的依存性官能化cGMP単位を組み合わせるためのより多様な機会をもたらす。試験した類似体は、ダイマー類似体と同様の顕著に改善されたPKG活性化をも与えた。マルチマー賦活cGMP類似体の特性に関するさらに詳細な説明のためには、出願番号16186700.7で同時係属の欧州特許出願を参照されたい。
従って、本発明の関連賦活類似体を用いた実験は、マルチマーcGMP類似体の多くの有益な新規特性を明らかにした。本発明は、PKG活性化ポテンシャルの重要なモディファイヤーとして位置R1、R4及びR5を明確に特定した。これらの位置は、連結位置として使用するときにも、置換基を付着するために使用するときにもかなり広範なバリエーションに耐容性を示す。
【0016】
そこでこの新知識を本発明の阻害性エクアトリアル修飾PLM類似体に合わせて変えて試験した。上述の不確さを考えると、対応ダイマー類似体化合物1及び2(表13)が両方とも、最先端の化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて、活性化cGMP-シグナル伝達系を有することが分かっている生体系である初生杆体様細胞の細胞死を予防する顕著に改善された効力を示すことは予測できなかった(
図2)。この結果は、PLD類似体に起因する阻害効果の最初の証明であり、本発明を支持する概念の証明を意味するので、特に興味深い。さらに、対応する賦活類似体については、R
4及び/又はR
5位置に置換基、例えばPET基(化合物2に存在するように)を有する誘導体は、これらの位置で連結された類似体とよく似たPKG親和性を与えることが分かった。これは、前記代替連結位置を特徴とするエクアトリアル修飾PLM類似体が同様の保護効果を示すことを強く示唆する。化合物1及び2は、PET部分に関してのみ異なる。この部分は、同様に、対応するアクチベーターが経験するようにPKG親和性プロファイルに非常に強い効果をもたらす。従ってこの試験系については少なくともPKG親和性プロファイル、ひいては置換基のかなり広範な変更に耐容性が示されると結論を下す必要がある。さらに、両化合物が別々に良い結果を与える場合、教育された発明者らによれば、それらのPKG親和性プロファイルが異なるにもかかわらず、1つのcGMP単位はPET置換基を有し、1つは該置換基を持たないことを特徴とする混合エクアトリアル修飾PLDは、上述の知見に従う同様に強力なインヒビターを構成する可能性が非常に高いと推測される。また、この概念をトリマー及びテトラマーエクアトリアル修飾PLMに同様に適用できる可能性は非常に高いと思われる。保護効果をさらに改善するため、1つの焦点は、R
1、R
4及び/又はR
5位置でのより良い置換基を見つけることだった。対応アクチベーターから判断すると、これらのモディファイヤーは標的親和性に強い影響を与えた。従って前記修飾を特徴とする多数の類似体を合成し、モノマー前駆体段階で試験して有望な候補を選択した。
【0017】
驚くべきことに、本発明の全ての試験化合物は、最先端の化合物Rp-8-Br-cGMPS及びp-8-Br-PET-cGMPSに比べて、初生杆体様細胞の細胞死を阻止する顕著に改善された効力を示した(
図2)。大多数はダイマー化合物1及び2よりずと有効であり、それらはPLM類似体に変換させるのに有望な候補になった。
この物質β-1の非限定例として、N
2-アセチル-8-ブロモグアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート(Rp異性体、化合物21、表14)が対応ダイマー3に構築され(表13)、これは初生杆体様細胞においてさらに改善された保護効果を示す。
この物質の別の非限定例として8-ブロモ-(3-チオフェン-イル-1,N
2-エテノ)グアノシン-3',5'-環状モノホスホロチオアート(Rp異性体、化合物23、表14)が対応ダイマー20に構築され(表13)、これは初生杆体様細胞においてさらに改善された保護効果を示す。
作製した本発明の全ての試験モノマー及びマルチマー化合物が、光受容体細胞内で病的に高いcGMPレベル及び不均衡なcGMP系を有するRP用の認可された動物モデルであるrd1マウスからの網膜外植片においてRp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて細胞生存率を顕著に改善することはさらに予想外だった(
図4)。
特に驚くべきことに、Rp-8-Br-PET-cGMPSに比べて高い親油性を有する本発明のモノマー及びマルチマー化合物のみならず、親油性が低い当該化合物も(表17)、初生光受容体細胞及びrd1マウス由来の外植片における細胞死に対してRp-8-Br-cGMPSに比べて改善された保護を示した。
【0018】
新規エクアトリアル修飾cGMP類似体は下記式(I)又は(II)の化合物である。
【0019】
【0020】
式中、
G単位G1及びG2は、独立に式(III)の化合物であり、G単位G3及びG4は、G1及びG2とは独立にかつ互いに独立に式(III)の化合物又は非存在であり、ここで、式(II)の場合、G3が非存在であればG4は常に非存在であり、
【0021】
【0022】
ここで、式(III)中、
X、Y及びZはNであり、
R1、R4、R5、及びR8は、各G単位(G1、G2、G3及びG4)について独立に等しいか又は個別であってよく、
その上、
R1は、独立にH、ハロゲン、アジド、シアノ、アシル、アラシル、ニトロ、アルキル、アリール、アラルキル、アミド-アルキル、アミド-アリール、アミド-アラルキル、アミド-O-アルキル、アミド-O-アリール、アミド-O-アラルキル、OH、O-アルキル、O-アリール、O-アラルキル、O-アシル、O-アラシル、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、S-アシル、S-アラシル、S(O)-アルキル、S(O)-アリール、S(O)-アラルキル、S(O)-アシル、S(O)-アラシル、S(O)2-アルキル、S(O)2-アリール、S(O)2-アラルキル、S(O)2-アシル、S(O)2-アラシル、SeH、Se-アルキル、Se-アリール、Se-アラルキル、NR9R10、カルバモイルR11R12、NH-カルバモイルR11R12、O-カルバモイルR11R12、SiR13R14R15であり得、ここで、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15は、互いに独立にH、アルキル、アリール、アラルキルであり得;
R2は非存在であり;
R3はOHであり;
R4は、独立に非存在、H、アミノ、アルキル、アラルキル、ニトロ、Nオキシドであり得、或いはY及びR5並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得るイミダゾール環を形成してよく、或いはY及びR5並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得る(図示せず)下記イミダゾリノン(構造IV、V、n=1)又は同族環(n=2~8)を形成してよく;
【0023】
【0024】
R5は、独立にH、ハロゲン、アジド、シアノ、アシル、アラシル、ニトロ、アルキル、アリール、アラルキル、アミド-アルキル、アミド-アリール、アミド-アラルキル、アミド-O-アルキル、アミド-O-アリール、アミド-O-アラルキル、OH、O-アルキル、O-アリール、O-アラルキル、O-アシル、O-アラシル、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、S-アシル、S-アラシル、S(O)-アルキル、S(O)-アリール、S(O)-アラルキル、S(O)-アシル、S(O)-アラシル、S(O)2-アルキル、S(O)2-アリール、S(O)2-アラルキル、S(O)2-アシル、S(O)2-アラシル、 SeH、Se-アルキル、Se-アリール、Se-アラルキル、NR30R31、カルバモイルR32R33、NH-カルバモイルR32R33、O-カルバモイルR32R33、SiR34R35R36であり得、ここで、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36は、互いに独立にH、アルキル、アリール、アラルキルであり得、或いはR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得るイミダゾール環を形成してよく、或いはR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、それぞれ非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得る(図示せず)上記イミダゾリノン環(構造IV、V、n=1)又は同族環(n=2~8)を形成してよく;
R6はOHであり;
R7はOであり;
かつ
R8は、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、SeH、Se-アルキル、Se-アリール又はSe-アラルキル、ボラノ(BH3)、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ(BH2CN)、S-PAP、Se-PAP、S-BAP又はSe-BAPであり、
ここで、PAPは、光活性化可能保護基であり、その非限定例は、任意に、PAP=o-ニトロ-ベンジル、1-(o-ニトロフェニル)-エチリデン、4,5-ジメトキシ-2-ニトロ-ベンジル、7-ジメチルアミノ-クマリン-4-イル(DMACMケージド)、7-ジエチルアミノ-クマリン-4-イル(DEACMケージド)及び6,7-ビス(カルボキシメトキシ)クマリン-4-イル)メチル(BCMCMケージド)であり;
かつBAPは、生体内活性化可能保護基であり、その非限定例は、任意に、BAP=メチル、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、メトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、シアノエチル、フェニル、ベンジル、4-アセトキシベンジル、4-ピバロイルオキシベンジル、4-イソブチリルオキシベンジル、4-オクタノイルオキシベンジル、4-ベンゾイルオキシベンジルであり;
かつ、
連結残基LR1、LR2、LR3及びLR4は、独立に、それらが結合しているG単位(G1-4)の特定残基R1、R4及び/又はR5のいずれかを置き換えるか又はいずれかに共有結合することができ、
ここで、それらが残基R1、R4及び/又はR5のいずれかに結合する場合、上記特定残基(R1、R4及び/又はR5)のエンドスタンディング(endstanding)基は、結合を確立するプロセス中に変換されるか又は置き換えられて、構築された化合物内の特定連結残基(LR1-4)の一部としてさらに定義され、
同時に
LR1は、(a)三価若しくは四価分岐炭化水素部分又は(b)二価炭化水素部分であり、それぞれ、例えば、限定するものではないが、O、N、S、Si、Se、B等のヘテロ原子が組み込まれているか又は組み込まれず、その骨格は、好ましくは1~28個の炭素原子を含有し、飽和又は不飽和、置換又は非置換であり得、
同時に
各付着点は、独立に置換又は非置換炭素又はヘテロ原子であり得、
ポリエチレングリコール(PEG)部分が定義に従って組み込まれる場合、好ましい炭素原子数は、PEG部分に存在する数だけ超えてよく、全てのPEG部分を合わせて
二価連結残基(LR1)の場合は総数1~500のエチレングリコール基(-(CH2CH2O)n-、n=1~500)を含有し得、
又は
二価連結残基(LR1)の場合は総数1~750のエチレングリコール基(-(CH2CH2O)n-、n=1~750)を含有し得
又は
四価連結残基(LR1)の場合は総数1~1000のエチレングリコール基(-(CH2CH2O)n-、n=1~1000)を含有し得、
かつ置換されている場合、
置換基としては、限定するものではないが、任意に1つ以上のアルキル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、(非)置換アリール基、(非)置換ヘテロアリール基、アミノ、オキソ、ニトロ、シアノ、アジド、ヒドロキシ、メルカプト、ケト、カルボキシ、カルバモイル、エポキシ(expoxy)、メトキシ、エチニルが挙げられ、
及び/又は置換基がさらに互いに結合して、ヘテロ原子が組み込まれているか又は組み込まれていない、飽和又は不飽和、置換又は非置換、脂肪族又は芳香族の1~4個の環を有する環系を形成してよく;
LR2、LR3及びLR4は、例えば、限定するものではないが、ヘテロ原子(ヘテロ原子O、N、S、Si、Se、Bであり得る)が組み込まれているか又は組み込まれていない二価炭化水素部分であり、その骨格は、好ましくは1~28個の炭素原子を含有し、飽和又は不飽和、置換又は非置換であり得、
同時に
各付着点は独立に置換若しくは非置換炭素又はヘテロ原子であり得、
かつ
ポリエチレングリコール(PEG)部分が定義に従って組み込まれる場合、好ましい炭素原子数は、PEG部分に存在する数だけ超えてよく、全てのPEG部分を合わせて、総数1~500のエチレングリコール基(-(CH2CH2O)n-、n=1~500)を含有し得、
かつ置換されている場合、
置換基としては、限定するものではないが、任意に1つ以上のアルキル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、(非)置換アリール基、(非)置換ヘテロアリール基、アミノ、オキソ、ニトロ、シアノ、アジド、ヒドロキシ、メルカプト、ケト、カルボキシ、カルバモイル、エポキシ、メトキシ、エチニルが挙げられ、
及び/又は置換基がさらに互いに結合して、ヘテロ原子が組み込まれているか又は組み込まれていない、飽和又は不飽和、置換又は非置換、脂肪族又は芳香族の1~4個の環を有する環系を形成してよく;
ここで、式(II)の場合、G4が非存在であれば、LR4も非存在であり、かつ
式(II)の場合、G3及びG4が非存在であれば、LR3及びLR4も非存在であり、
かつ
G1、G2、G3及びG4は、さらに塩及び/又は水和物であってよく、
同時に、任意に、特定リン酸部分の適切な塩の非限定例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛又はアンモニウム、及びトリアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、アルキルアンモニウム、例えば、トリエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム及びオクチルアンモニウムであり;
かつ
G1、G2、G3及びG4は、任意に同位体若しくは放射標識、PEG化、固定化されるか又は色素若しくは他の報告基で標識され得、
ここで、
該報告基及び/又は色素は、
(a)各G単位(G1、G2、G3及び/又はG4)について独立に特定残基R
1
、R
4
及び/又はR
5
のいずれかに共有結合された又はいずれかを置き換えた連結残基(LR5)を介して、G1、G2、G3及び/又はG4にカップリングされる、
同時にLR5は、LR2の定義どおりであり得、
或いは
(b)式(I)の場合はG3及び/又はG4
を置き換えてよく、
ここで、
任意に適切な色素の例としては、限定するものではないが、蛍光色素、例えばフルオレセイン、アントラニロイル、N-メチルアントラニロイル、ダンシル又はニトロ-ベンゾフラザニル(NBD)系、ローダミンに基づく色素、例えばTexas Red又はTAMRA、シアニン色素、例えばCyTM3、CyTM5、CyTM7、EVOblueTM10、EVOblueTM30、EVOblueTM90、EVOblueTM100 (EVOblueTM-ファミリー)、BODIPYTM-ファミリー、Alexa FluorTM-ファミリー、DY-ファミリー、例えばDY-547P1、DY-647P1、クマリン、アクリジン、オキサゾン、フェナレノン、蛍光タンパク質、例えばGFP、BFP及びYFP、並びに近赤外及び遠赤外色素が挙げられ、
かつ
報告基には、任意に、限定するものではないが、量子ドット、ビオチン及びチロシルメチルエステルが含まれ;
かつ
PEG化は、単一又は複数のLRPEG基の付着を独立に指し、LRPEGは、LR2の定義どおりであり得、但し、この場合(i)各G単位(G1、G2、G3及び/又はG4)について独立に特定残基R
1
、R
4
及び/又はR
5
のいずれかに共有結合するか又はいずれかを置き換えることによって、LR2の1つの末端だけがG単位(G1、G2、G3及び/又はG4)に連結され、かつ(ii)LR2の他の末端は、共役反応及び/又は水素結合を可能にするアルキル基又は反応基のどちらかであることを条件とし、
同時に、任意に、反応基の非限定例は、-NH2、-SH、-OH、-COOH、-N3、-NHS-エステル、ハロゲン基、エポキシド、エチニル、アリルであり、
かつ(iii)LRPEGは、エチレングリコール部分(-(CH2CH2O)n-、n=2~500)が組み込まれることを条件とする。
【0025】
化学定義
本発明の化合物を記述するために用いる種々の用語及びフレーズの定義を以下に列挙する。これらの定義は、本明細書全体を通じて使用する用語に当てはまる。
ハロゲンは、F、Cl、Br、及びIを指す。
アルキルは、例えば、限定するものではないが、O、S、Si、N、Se、B等の(組み込まれた)ヘテロ原子の有無にかかわらず、1~28個、好ましくは1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分であるアルキル基を指し、特に指定のない限り、付着点は炭素原子である。その構造は以下のとおりであり得る。
直鎖状飽和炭化水素部分-例えば、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチル等
又は
直鎖状不飽和炭化水素部分-より好ましくは2~20個の炭素原子を含有し、例えば、限定するものではないが、エチレン、プロピレン、ブチレン及びペンチレン等
又は
分岐飽和炭化水素部分-少なくとも3個の炭素原子を含有することによって一般的アルキルの定義から逸脱し、例えば、限定するものではないが、イソプロピル、sec.-ブチル及びtert.-ブチル等
又は
分岐不飽和炭化水素部分-少なくとも3個の炭素原子を含有することによって一般的アルキルの定義から逸脱し、例えば、限定するものではないが、イソプロペニル、イソブテニル、イソペンテニル及び4-メチル-3-ペンテニル等
又は
環式飽和炭化水素部分-より好ましくは3~8個の環原子を含有し、例えば、限定するものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ピペリジノ、ピペラジノ等
又は
環式不飽和炭化水素部分-より好ましくは3~8個の環原子を含有する。
【0026】
本明細書では、飽和という用語は、基が炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合を持たないことを意味する。しかしながら、飽和基が置換されている場合、1つ以上の炭素-酸素又は炭素-窒素二重結合が存在することがあり、それぞれケト-エノール及びイミン-エナミン互変異性の一部として存在し得る。その構造とは無関係に、本明細書で定義するアルキル基は、置換されるか又は非置換であり得る。置換基としては、限定するものではないが、1つ以上のアルキル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、(非)置換アリール基、(非)置換ヘテロアリール基、アミノ、オキソ、ニトロ、シアノ、アジド、ヒドロキシ、メルカプト、ケト、カルボキシ、カルバモイル、エポキシ、メトキシ、エチニルが挙げられる。本明細書で定義するアルキルがポリエチレングリコール(PEG)部分を含む場合、好ましい炭素原子数は、PEG部分に存在する数だけ超えてよく、PEG部分は、総量1~500のエチレングリコール基(-(CH2CH2O)n-、n=1~500)を含有し得る。
-(CH2CH2O)n-(nはエチレングリコール基の数を表す)の略記表現として-(EO)n-を使用することに留意すべきである。エチレングリコール基の数は、特にn=1~500又は特定例に記載されるとおりであり得る。
【0027】
アラルキルは、それぞれ3~8個の環原子を有する1つ以上の芳香環又はヘテロ芳香環から成る非置換若しくは置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素部分に結合する上記アルキル基を指す。アルキル及びアリールの両部分の置換基としては、限定するものではないが、1つ以上のハロゲン原子、アルキル又はハロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換ヘテロアリール基、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アジド、メトキシ、メチルチオが挙げられる。
アリールは、それぞれ3~8個の環原子を有する1つ以上の芳香環又はヘテロ芳香環から成る非置換若しくは置換芳香族又はヘテロ芳香族炭化水素部分であるアリール基を指す。置換基としては、限定するものではないが、1つ以上のハロゲン原子、ハロアルキル基、置換若しくは非置換 アリール基、置換若しくは非置換ヘテロアリール基、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アジド、メトキシ、メチルチオが挙げられる。
【0028】
アシルは-C(O)-アルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
アラシルは-C(O)-アリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
カルバモイルは-C(O)-NH2基を指し、水素は互いに独立にアルキル基、アリール基又はアラルキル基で置換され得、アルキル基、アリール基又はアラルキル基は上記定義どおりである。
O-アシルは-O-C(O)-アルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
O-アルキルは、Oリンケージを介して結合しているアルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
O-アラシルは-O-C(O)-アリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
O-アラルキルは、Oリンケージを介して結合しているアラルキル基を指し、アラルキル基は上記定義どおりである。
O-アリールは、Oリンケージを介して結合しているアリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
O-カルバモイルは、Oリンケージを介して結合しているカルバモイル基を指し、カルバモイル基は上記定義どおりである。
【0029】
S-アルキルは、Sリンケージを介して結合しているアルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
S-アリールは、Sリンケージを介して結合しているアリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。S-アラルキルは、Sリンケージを介して結合しているアラルキル基を指し、アラルキル基は上記定義どおりである。
S-アラルキルは、Sリンケージを介して結合しているアラルキル基を指し、アラルキル基は上記定義どおりである。
Se-アルキルは、Seリンケージを介して結合しているアルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。Se-アリールは、 Seリンケージを介して結合しているアリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
Se-アラルキルは、Seリンケージを介して結合しているアラルキル基を指し、アラルキル基は上記定義どおりである。NH-アルキル及びN-ビスアルキルは、Nリンケージを介して結合しているアルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
NH-アリール及びN-ビスアリールは、Nリンケージを介して結合しているアリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
NH-カルバモイルは、Nリンケージを介して結合しているカルバモイル基を指し、カルバモイル基は上記定義どおりである。
アミド-アルキルは、NH-C(O)リンケージを介して結合しているアルキル基を指し、アルキル基は上記定義どおりである。
アミド-アリールは、NH-C(O)リンケージを介して結合しているアリール基を指し、アリール基は上記定義どおりである。
アミド-アラルキルは、NH-C(O)リンケージを介して結合しているアラルキル基を指し、アラルキル基は上記定義どおりである。
【0030】
エンドスタンディング基は、(立体的に)利用可能かつ特定連結残基(LR1-4)に共有結合できる、特定残基(R1、R4及び/又はR5)の基を指す。これは、残基(R1、R4及び/又はR5)の実際の末端にあるか又は残基(R1、R4及び/又はR5)のいずれかの側鎖のいずれかの末端にあるか、或いは残基(R1、R4及び/又はR5)内に別のふうに位置して十分に(立体的に)利用可能かつ特定連結残基(LR1-4)に共有結合できる基であり得る。用語エンドスタンディング基の定義は、妥当な場合、残基LR5及び/又はLRPEGについても独立に有効である。さらに、末端という用語は、該当する残基の実際に端部であるエンドスタンディング基を指す。
当業者は、特定の連結残基(LR1-4)は、それが結合する特定のG単位数によって決まるラジカルを表し得ることを十分承知している。従って、式(II)の化合物では、特定の連結残基(LR1-4)はビラジカルであり得、或いはそれが1つの特定のG単位にのみ(中間)結合している場合、モノラジカルであり得る。同様に、式(I)の化合物の場合、それが結合する特定のG単位数に応じて、特定の連結残基(LR1)はビラジカル、トリラジカル、又はテトララジカルであり得、或いはそれが1つの特定G単位にのみ(中間)結合している場合、それはモノラジカルであり得る。
【0031】
別の考慮される一価基を「二価アルキル」においてのように修飾子「二価」と共に用いる場合、これは第2の付着点をもたらす。二価アルキルの非限定例は、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-となる。
環系、例えば、下記式:
【0032】
【0033】
において側鎖又は残基を「フローティング基」と描写するときはいつでも、これらの側鎖(又は残基)は、安定構造が形成される限り、描写され、暗示され、若しくは明示的に定義された水素を含め、環原子のいずれかに付着したいずれの水素原子を置き換え得る。従って結果として生じる全ての置換パターンが含まれる。所与の例について、これは下記に相当する。
【0034】
【0035】
当業者は、上記定義どおりの式IIIに該当する多くの化合物が互変異性形を有することを理解する。本明細書によれば、互変異性体の少なくとも1つが上記定義どおりの式IIIに該当する場合、全ての互変異性形が式IIIに該当することに留意すべきである。
飽和6員環の椅子形では、環原子への結合、及び該結合に付着した分子実体は、それらが環の周辺に位置するか(「エクアトリアル」)、又はそれらが環の近似平面の上又は下に位置を定められているか(「アキシャル」)に応じて「アキシャル」又は「エクアトリアル」と呼ばれる。環状ホスファート環の所与の立体化学のため、アキシャル位は環の近似平面上にしかあり得ない。
天然起源の環状ヌクレオチド一リン酸(cNMP)では、R7とR8が両方とも酸素であり、リン二重結合が両原子間に「分布又は転位」している。生理的pHの水中では、この化合物は両酸素間の負電荷、及びH+又はNa+等の対応カチオンを有する。本発明の化合物は、異なる官能基、例えば、硫黄に置き換えられるエクアトリアル(R8)酸素を有しながら、アキシャル(R7)酸素も任意に置き換えられ得る。新しく導入されるR7及び/又はR8の性質とは無関係に、本明細書の対応化合物構造は、これが原子価規則に従う限り、リンのところに転位した二重結合を有する荷電化合物として表される。単一構造内のそれぞれのリンの二重結合の全ての可能な「位置」及び電子密度又は各電荷の分布を考慮し、描写し、開示するためにこのスタイルを選択する。しかしながら、特定のR7及びR8の性質に応じて本明細書で使用する転位二重結合は、必ずしもR7とR8の間に等しく分布した電荷又は電子密度を指すわけではない。
R7とR8が等しくない場合、リン原子は4つの異なる配位子を有してキラルになり、立体異性形をもたらす。キラルのリンの配置を説明するため、Rp/Sp命名法を用いる。その点中で、R/Sはカーン・インゴルド・プレローグ則に従い、「p」はリンの略語である。
例を与えるため:エクアトリアル残基R8が硫黄の場合(一方でアキシャルR7は酸素である)、対応する環状グアノシン-3',5'-モノホスホロチオアート化合物(cGMPS類似体)は、リンのところでRp配置であり、エクアトリアル残基R8がボラノ基の場合、対応する環状グアノシン-3',5'-モノボラノホスファート化合物(cGMPB類似体)は、リンのところでSp配置である。
医学の分野で特に薬物の一部として使用するためには、本発明の化合物の生理学的に許容される塩のみを確実に使用してよいことを当業者は知っている。
【0036】
構造のさらなる明細
一実施形態では、本発明は、上記定義中、式(I)の場合にG4が非存在であるか、又は式(II)の場合にG4及びLR4が非存在である、上記定義に従う化合物に関する。
別の実施形態では、本発明は、上記定義中、式(I)の場合にG3及びG4が非存在であるか、又は式(II)の場合にG3、G4、LR3及びLR4が非存在である、上記定義に従う化合物に関する。
さらなる実施形態では、本発明は、上記定義中、式(I)の場合にG2、G3、G4及びLR1が非存在であるか、又は式(II)の場合にG2、G3、G4、LR2、LR3及びLR4が非存在である、上記定義に従う化合物に関する。この場合、該実施形態は、本発明のマルチマーの前駆体である化合物に相当する。
一実施形態では、本発明は、全てのR8がSHである、上記定義のいずれかに従う化合物に関する。
本発明によれば、下記式(Ib)及び(IIb)に示すように、連結残基LR1、LR2、LR3及びLR4がさらに細分されるのが好ましい。
【0037】
【0038】
式中、
カップリング官能基C1、C1’、C2、C2’、C3、C3’、C4及びC4’は、互いに独立に非存在であるか又は下記から成る群より選択される構造によって定義され得る。
【0039】
【0040】
同時に結合性は、下記によって例示されるように描写又は反転され得る。
G1-O-C(O)-NH-S2 対 G1-NH-C(O)-O-S2
ここで、
カップリング官能基(C1、C1’、C2、C2’、C3、C3’、C4及び/又はC4’)が、G単位の残基(G1-4のR1、R4及び/又はR5)を置き換えるのではなく、それに結合する場合、G単位(又は色素若しくは他の報告基を有するG単位)のカップリングに関与する特定の残基(R1、R4及び/又はR5)は、互いに独立に、
上記でさらに定義したように、エンドスタンディング基がカップリング官能基に置き換えられるか又は変換され
或いは
下記群(存在する場合、Q1はG単位に結合する)
【0041】
【0042】
【0043】
から選択され、
かつ
リンカー(L)は、下記リンカー
【0044】
【0045】
から成る群より選択され、
同時に
上記リストの特定リンカー内の各側鎖についてのnは、定義どおりの等しいか又は別個の値を有し得、
かつ
上記リストのリンカー(L)の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ、及び全ての幾何異性形は、たとえ明示的に描写されなくても、この中に含まれ、
かつ
アンモニウム誘導体等のカチオンリンカー(L)は、クロリド、ブロミド、ヨージド、ホスファート、カルボナート、スルファート、アセタート又は他のいずれもの生理学的に受け入れられる対イオンを含有する塩であり、
かつ
スペーサー(S1、S2、S3及びS4)は、特定化合物内で等しいか又は個別であり、非存在又は-(CH2)n1-(CH2CH2β)m-(CH2)n2-(β=O、S又はNH;m=1~500、n1=0~8、n2=0~8であり、同時に両n1及びn2は、独立に等しいか又は個別であり得る)若しくは-(CH2)n-(n=1~24)であり得る。
【0046】
特に、連結残基LR1、LR2、LR3及びLR4が、式(Ib)及び(IIb)に示すようにさらに細分され、スペーサー部分(S1-4)、カップリング官能基(C1-4、C1’-4’)及びリンカー(L、構造Ibのマルチマーのみ)を含有するのが好ましい、本発明の好ましい実施形態では、カップリング官能基(C1-4、C1’-4’)は、
残基R1、R4及び/又はR5のいずれかに結合するか又はいずれかを置き換えることによってスペーサーとG単位(G1-4)との間に(式IIIの構造と比較せよ)
及び/又は
スペーサーとリンカー(L)、色素若しくは別の報告基との間に
及び/又は
(特定スペーサーが非存在の場合)残基R1、R4及び/又はR5のいずれかに結合するか又はいずれかを置き換えることによってG単位(G1-4)と色素若しくは別の報告基との間に
及び/又は
(特定スペーサーが非存在であり及び/又はG単位が色素若しくは他の報告基に置き換えられる場合)リンカー(L)と色素若しくは他の報告基又はG単位との間に(G1-4、残基R1、R4及び/又はR5のいずれかに結合するか又はいずれかを置き換えることによって)
共有結合を確立する。
【0047】
カップリング官能基(C1-4、C1’-4’)は、当技術分野でよく確立されている方法に従って特定前駆体部分のエンドスタンディング基間の反応で生成される。本発明に従って構築される(モノマー又はマルチマー)化合物内でそれらが変換される前駆体エンドスタンディング基(モノマーG単位及び(市販の)リンカー、色素、報告基及びスペーサーの)及び対応するカップリング官能基(C1-4、C1’-4’)の非限定例を下表1に示す。カップリング官能基(C1-4、C1’-4’)は、特定のモノマー又はマルチマー化合物内で独立にさらに非存在又は等しいか若しくは個別であり得る。
【0048】
表1 エンドスタンディング基及び対応するカップリング官能基(C
1-4、C
1’-4’)
【0049】
当業者は、表1の前駆体エンドスタンディング基、例えば、限定するものではないが、カルボン酸の代わりのNHSエステル又はハロゲンの代わりのトリフラートを同様に用いて特定の対応するカップリング官能基を生成できることを理解する。当業者はさらに、合成前駆体のエンドスタンディング基(残基R
1、R
4及び/又はR
5、リンカー(L)、色素、報告基及びスペーサー(S
1-4))を互いに相互交換して、モノマー又はマルチマー類似体内のカップリング官能基の反転結合性をもたらせることをさらに理解する。
上で用いて定義した変数を示す本発明のマルチマー化合物の非限定例を
図1に与える。
【0050】
本発明の好ましい化合物
本発明によれば、R1が、H、ハロゲン、アジド、ニトロ、アルキル、アシル、アリール、OH、O-アルキル、O-アリール、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、S(O)-アルキル、S(O)-アリール、S(O)-アラルキル、S(O)-ベンジル、S(O)2-アルキル、S(O)2-アリール、S(O)2-アラルキル、アミノ、NH-アルキル、NH-アリール、NH-アラルキル、NR9R10、SiR13R14R15から成る群より選択され、R9、R10、R13、R14、R15がアルキルであるのが好ましい。
本発明によれば、R1が、H、Cl、Br、I、F、N3、NO2、OH、SH、NH2、CF3、2-フリル、3-フリル、2-ブロモ-5-フリル、(2-フリル)チオ、(3-(2-メチル)フリル)チオ、(3-フリル)チオ、2-チエニル、3-チエニル、(5-(1-メチル)テトラゾリル)チオ、1,1,2-トリフルオロ-1-ブテンチオ、(2-(4-フェニル)イミダゾリル)チオ、(2-ベンゾチアゾリル)チオ、(2,6-ジクロロフェノキシプロピル)チオ、2-(N-(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)エチルチオ、(4-ブロモ-2,3-ジオキソブチル)チオ、[2-[(フルオレセインイルチオウレイド)アミノ]エチル]チオ、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルチオ、(7-(4-メチル)クマリニル)チオ、(4-(7-メトキシ)クマリニル)チオ、(2-ナフチル)チオ、(2-(1-ブロモ)ナフチル)チオ、ベンズイミダゾリル-2-チオベンゾチアゾリルチオ、4-ピリジル、(4-ピリジル)チオ、2-ピリジルチオ、5-アミノ-3-オキソペンチルアミノ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクチルアミノ、19-アミノ-4,7,10,13,16-ペンタオキサノナデシルアミノ、17-アミノ-9-アザ-ヘプタデシルアミノ、4-(N-メチルアントラノイル)アミノブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、4-モルホリノ、1-ピペリジノ、1-ピペラジノ、トリフェニルイミノホスホラニルから成る群より選択されるか又は下表2に示すとおりであるのがさらに好ましい。
【0051】
【0052】
本発明によれば、R1が、H、Cl、Br、I、F、N3、NO2、OH、SH、NH2、CF3、2-フリル、3-フリル、(2-フリル)チオ、(3-(2-メチル)フリル)チオ、(3-フリル)チオ、2-チエニル、3-チエニル、(5-(1-メチル)テトラゾリル)チオ、1,1,2-トリフルオロ-1-ブテンチオ、(2-(4-フェニル)イミダゾリル)チオ、(2-ベンゾチアゾリル)チオ、(2,6-ジクロロフェノキシプロピル)チオ、2-(N-(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)エチルチオ、(4-ブロモ-2,3-ジオキソブチル)チオ、[2-[(フルオレセインイルチオウレイド)アミノ]エチル]チオ、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルチオ、(7-(4-メチル)クマリニル)チオ、(4-(7-メトキシ)クマリニル)チオ、(2-ナフチル)チオ、
(2-(1-ブロモ)ナフチル)チオ、ベンズイミダゾリル-2-チオ、ベンゾチアゾリルチオ、4-ピリジル、(4-ピリジル)チオ、2-ピリジルチオ、5-アミノ-3-オキソペンチルアミノ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクチルアミノ、19-アミノ-4,7,10,13,16-ペンタオキサノナデシルアミノ、17-アミノ-9-アザ-ヘプタデシルアミノ、4-(N-メチルアントラノイル)アミノブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、4-モルホリノ、1-ピペリジノ、1-ピペラジノ、トリフェニルイミノホスホラニルから成る群より選択されるか又は下表3に示すとおりであるのが特に好ましい。
【0053】
【0054】
本発明によれば、R1が、H、Cl、Br、SH、2-フリル、3-フリル、(2-フリル)チオ、(3-(2-メチル)フリル)チオ、(3-フリル)チオ、2-チエニル、3-チエニル、(5-(1-メチル)テトラゾリル)チオ、1,1,2-トリフルオロ-1-ブテンチオ、(2-(4-フェニル)イミダゾリル)チオ、(2-ベンゾチアゾリル)チオ、(2,6-ジクロロフェノキシプロピル)チオ、2-(N-(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)エチルチオ、(4-ブロモ-2,3-ジオキソブチル)チオ、[2-[(フルオレセインイルチオウレイド)アミノ]エチル]チオ、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルチオ、(7-(4-メチル)クマリニル)チオ、(4-(7-メトキシ)クマリニル)チオ、(2-ナフチル)チオ、(2-(1-ブロモ)ナフチル)チオ、ベンズイミダゾリル-2-チオ、ベンゾチアゾリルチオ、4-ピリジル、(4-ピリジル)チオ、2-ピリジルチオ、トリフェニルイミノホスホラニルから成る群より選択されるか又は下表4に示すとおりであるのがさらに好ましい。
【0055】
【0056】
本発明によれば、上記に加えて又は上記と無関係に、R4が、H、アミノ、アルキル、アラルキル、ニトロ、Nオキシドから成る群より選択されるか或いはR4が、Y及びR
5並びにY
とR
5
を架橋する炭
素と一緒に、非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得るイミダゾール環を形成し得るか、或いはY及びR
5並びにY
とR
5
を架橋する炭
素と一緒に、それぞれ非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得る(図示せず)上記イミダゾリノン(構造IV、V、n=1)又は同族環(n=2~8)を形成し得るのが好ましい。
本発明によれば、R4が非存在であるか又はアミノ、Nオキシドから成る群より選択されるか又は下表5に示すとおりであるのがさらに好ましい。
表5 基R
4。
【0057】
本発明によれば、R4が非存在であるか又はアミノ、Nオキシドから成る群より選択されるか又は下表6に示すとおりであるのが特に好ましい。
【0058】
【0059】
本発明によれば、R4が非存在であるか又は下表7に示すとおりであるのがさらに好ましい。
【0060】
【0061】
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、R5が、H、ハロゲン、アジド、アシル、アラシル、ニトロ、アルキル、アリール、アラルキル、アミド-アルキル、アミド-アリール、アミド-アラルキル、アミド-O-アルキル、アミド-O-アリール、アミド-O-アラルキル、NH-カルバモイル-アルキル、NH-カルバモイル-アリール、NH-カルバモイル-アラルキル、OH、O-アルキル、O-アリール、O-アラルキル、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、アミノ、NH-アルキル、NH-アリール、NH-アラルキル、NR30R31、SiR34R35R36から成る群より選択され、R30、R31、R34、R35、R36がアルキルであり、或いはR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得るイミダゾール環を形成するか、或いはR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、それぞれ非置換又はアルキル、アリール若しくはアラルキルで置換され得る(図示せず)上記イミダゾリノン環(構造IV、V、n=1)又は同族環(n=2~8)を形成し得るのが好ましい。
【0062】
本発明によれば、R5が、H、NH2、F、Cl、Br、I、ニトロ、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、6-アミノ-n-ヘキシル、トリフルオロメチル、フェニル、4-N,N-ジメチルアミノフェニル、ベンジル、4-アジドベンジル、アミド-n-ブチル、アミドイソブチル、アミド(6-アミノ-n-ヘキシル)、OH、メチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、SH、メチルチオ、エチルチオ、6-アミノ-n-ヘキシルチオ、フェニルチオ、4-アジドフェニルチオ、ベンジルチオ、4-アジドベンジルチオ、メチルアミノ、NH-ベンジル、NH-フェニル、NH-4-アジドフェニル、NH-フェニルエチル、NH-フェニルプロピル、2-アミノエチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、6-アミノ-n-ヘキシルアミノ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクチルアミノ、ジメチルアミノ、1-ピペリジノ、1-ピペラジノ、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリルから成る群より選択されるか又はR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、表5に記載の環系(エントリー2及び3)を形成し得るのがさらに好ましい。
【0063】
本発明によれば、R5が、H、NH2、F、Cl、Br、I、ニトロ、SH、メチルチオ、エチルチオ、6-アミノ-n-ヘキシルチオ、フェニルチオ、4-アジドフェニルチオ、ベンジルチオ、4-アジドベンジルチオ、メチルアミノ、NH-ベンジル、NH-フェニル、NH-4-アジドフェニル、NH-フェニルエチル、NH-フェニルプロピル、2-アミノエチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、6-アミノ-n-ヘキシルアミノ、8-アミノ-3,6-ジオキサオクチルアミノ、ジメチルアミノ、1-ピペリジノ、1-ピペラジノから成る群より選択されるか又はR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に、表6に記載の環系(エントリー2及び3)を形成し得るのが特に好ましい。
本発明によれば、R5がNH2であるか、又はR4、Y並びにYとR
5
を架橋する炭素と一緒に表7に記載の環系(エントリー2及び3)を形成し得るのがさらに好ましい。
【0064】
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、R8が、SH、S-アルキル、S-アリール、S-アラルキル、ボラノ(BH3)、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ (BH2CN)、S-PAP、Se-PAP、S-BAP又はSe-BAPから成る群より選択されるのが好ましく、
ここで、PAPは光活性化可能保護基であり、PAP=o-ニトロ-ベンジル、1-(o-ニトロフェニル)-エチリデン、4,5-ジメトキシ-2-ニトロ-ベンジル、7-ジメチルアミノ-クマリン-4-イル(DMACMケージド)、7-ジエチルアミノ-クマリン-4-イル(DEACMケージド)及び6,7-ビス(カルボキシメトキシ)クマリン-4-イル)メチル(BCMCMケージド)である。
かつ式中、BAPは生体内活性化可能保護基であり、BAP=メチル、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、メトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、シアノエチル、フェニル、ベンジル、4-アセトキシベンジル、4-ピバロイルオキシベンジル、4-イソブチリルオキシベンジル、4-オクタノイルオキシベンジル、4-ベンゾイルオキシベンジルである。
【0065】
本発明によれば、R8が、SH、メチルチオ、アセトキシメチルチオ、ピバロイルオキシメチルチオ、メトキシメチルチオ、プロピオニルオキシメチルチオ、ブチリルオキシメチルチオ、シアノエチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ、4-アセトキシベンジルチオ、4-ピバロイルオキシベンジルチオ、4-イソブチリルオキシベンジルチオ、4-オクタノイルオキシベンジルチオ、4-ベンゾイルオキシベンジルチオ、ボラノ(BH3)、メチルボラノ、ジメチルボラノ、シアノボラノ(BH2CN)から成る群より選択されるのがさらに好ましい。
本発明によれば、R8が、SH、メチルチオ、アセトキシメチルチオ、ピバロイルオキシメチルチオ、メトキシメチルチオ、プロピオニルオキシメチルチオ、ブチリルオキシメチルチオ、シアノエチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ、4-アセトキシベンジルチオ、4-ピバロイルオキシベンジルチオ、4-イソブチリルオキシベンジルチオ、4-オクタノイルオキシベンジルチオ、4-ベンゾイルオキシベンジルチオから成る群より選択されるのが特に好ましい。
本発明によれば、R8がSHであるのがさらに好ましい。
【0066】
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、G単位を別のG単位又は色素若しくは他の報告基と結合することに関与する残基は、R1、R4及び/又はR5であり得、この場合、特定の残基は、
エンドスタンディング基がカップリング官能基に置き換えられるか又は変換される上記好ましい実施形態についての定義どおりであるか
又は
下表8(存在する場合、Q1はG単位に結合する)に示す群から選択されるのが好ましい。
【0067】
表8 G単位を別のG単位又は色素若しくは他の報告基と結合することに関与する残基R
1、R
4及びR
5(存在する場合、Q
1はG単位に結合する)
【0068】
本発明によれば、G単位を別のG単位又は色素若しくは他の報告基と結合することに関与する残基は、R1、R4及び/又はR5であり得、この場合、特定の残基は、
エンドスタンディング基がカップリング官能基に置き換えられる又は変換されるその好ましい実施形態についての定義どおりであるか
又は
下表9(存在する場合、Q1はG単位に結合する)に示す群から選択されるのがさらに好ましい。
【0069】
表9 G単位を別のG単位又は色素若しくは他の報告基と結合することに関与する残基R
1、R
4及びR
5(存在する場合、Q
1はG単位に結合する)
【0070】
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、カップリング官能基(C1-4及びC1’-4’)が非存在であるか又は下表10に示す群から選択されるのがさらに好ましい。
【0071】
表10 カップリング官能基(C
1-4及びC
1’-4’)。
【0072】
本発明によれば、カップリング官能基(C1-4及びC1’-4’)が非存在であるか又は下表11に示す群から選択されるのがさらに好ましい。
【0073】
表11 カップリング官能基(C
1-4及びC
1’-4’)。
【0074】
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、リンカー(L)が非存在であるか又は下表12に示す群から選択されるのが好ましい。
【0075】
【0076】
同時に特定リンカー内の各側鎖についてのnは、定義どおりの等しいか又は個別の値を有し得る。
上記に加えて又は上記とは無関係に、本発明によれば、式(I)の場合にG4又はG4及びG3が非存在であるか、
又は式(II)の場合にG4及びLR4又はG4、LR4、G3及びLR3が非存在であるのが好ましい。
本発明によれば、式(I)の場合にG4及びG3が非存在であるか
又は式(II)の場合にG4、LR4、G3及びLR3が非存在であるのがさらに好ましい。
上記例示に基づく本発明の特に好ましい実施形態は、請求項5、6、7及び8のいずれか1項に記載されるとおりである。
本発明によれば、表13の化合物、及び請求項9に記載の化合物が特に好ましい。疑念がある場合には、式で示した化学構造が有効なものであることに留意すべきである。さらに表13の化合物は遊離酸として示されていることに留意すべきである。しかしながら、本発明は、限定するものではないが、Na+、Li+、NH4
+、Et3NH+及び(i-Pr)2EtNH+等のカチオンを備えるこれらの化合物の塩をも含む。
【0077】
表13 本発明の新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP化合物の構造
【0078】
本明細書で使用するエクアトリアル修飾という用語は、式IIIに示すようにR8位の修飾を指すことに留意すべきである。R8がSHであり、ホスホロチオアート基を表す本発明の非限定例については、結果として生じる配置はRpである。この状況を鏡で映される場合(以下に示す)と混同しないように注意すべきである。それは本発明の一部でなく、エクアトリアル位に硫黄修飾もあるが、結果として生じる配置はSpである。
【0079】
【0080】
優先出願からの構造1、2、4~13及び15~19は、この明らかに編集上間違った構造要素を含有した。この点で、優先出願から当業者が疑いなく直接誘導できるようにこれらは補正された。編集上間違った構造要素は、構造の描写中に光学的又は対称的理由のため下方のリボース部を反転させるときに誤って容易に作り出される。しかしながら、反転は、Rp配置が誤ってSpに変換されている、キラルのリン中心を映し出すことになる。一般式IIIがこの状況を許さず、本発明の示した明確な例の合成に適用した全てのモノマー前駆体(表13)がRp配置だったと支持するので、このように編集上誤ってSp配置で記載された構造要素は当業者にとって明白な誤記である。当業者には、疑いもなく、この配置は使用反応条件下で反転し得ず、従って表13の構築マルチマー内の全てのG単位はRp配置でなければならないことが分かる。
【0081】
エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP類似体(PLMs)の合成用のモノマーエクアトリアル修飾前駆体cGMP類似体(G単位)は式(III)の化合物である。上述したように、rd1マウスからの初生杆体様細胞及び網膜外植片内における細胞死を阻止する効力は、モノマー前駆体をPLM内の付加的前駆体に連結すると強く上昇する。モノマー前駆体の典型的なエクアトリアル修飾PLMへの新しいロバストかつ位置選択的変換方法の非限定例を実施例セクションで与える。さらに表1は、カップリング反応に使用できる典型的なエンドスタンディング基、及び当技術分野の確立された方法に従って変換されるPLM内の対応カップリング官能基の概要を与える。
【0082】
ある態様の本発明は、上記本発明のいずれかの化合物の式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)のモノマー前駆体にも関し、式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)のモノマー前駆体は、本明細書で上述したいずれかの前記化合物の文脈で定義され、かつ好ましくは式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)のモノマー前駆体は、下記:R8は、置換若しくは非置換ボラノ官能基でない
という条件を満たし、さらに、式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)のモノマー前駆体化合物は、下記化合物から成る化合物の群より選択されないという条件を満たす。
【0083】
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、上記本発明のいずれもの化合物の式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)に従うモノマー前駆体は、
R8が置換若しくは非置換ボラノ官能基でなく、
かつ
R4がHでなく、R5がNH2であるか
又は
R5がNH2、H、4-メトキシトリチルでなく、R4及びR5が
【0085】
【0086】
でないか
又は
R4及びR5が
【0087】
【0088】
であり、
かつR1が、-NH-、-S-、-S(O)-若しくは-S(O)2-ブリッジ又は炭素-炭素結合による付着を特徴とし、-SH、NH2、-S(CH2)nNH2、-S(CH2)nOH、-NH(CH2)nNH2及び-NH(CH2)nOH(n=1-100)を除く上記群から選択されるか
又は
R1が、モノパラ置換フェニルチオ及びモノパラ置換フェニルアミノを除いて直前に記載したとおりである
という条件を満たす。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記本発明のいずれもの化合物の式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)に従うモノマー前駆体は、
R8が置換若しくは非置換ボラノ官能基でなく、
かつ
R4がHでなく、R4+R5が
【0090】
【0091】
でないか
又は
R4がHであり、R5がNH2でなく、かつ
(a) R1がHでないか
若しくは
(b) R5がH若しくは4-メトキシトリチルでなないか
又は
R4及びR5が
【0092】
【0093】
であり、かつR1が、-NH-、-S-、-S(O)-若しくは-S(O)2-ブリッジ又は炭素-炭素結合による付着を特徴とし、-SH、NH2、-S(CH2)nNH2、-S(CH2)nOH、-NH(CH2)nNH2及び-NH(CH2)nOH(n=1-100)を除く上記群から選択されるか
又は
R1が、モノパラ置換フェニルチオ及びモノパラ置換フェニルアミノを除いて直前に記載したとおりである
という条件を満たす。
【0094】
上記本発明のいずれもの化合物の式(III)のモノマー化合物及び/又は式(III)に従うモノマー前駆体の本発明のさらに好ましい実施形態では、式(III)のモノマー化合物及び/又は本発明のモノマー前駆体は、下表14に示す群から選択される。
【0095】
【0096】
上述したように、本発明の化合物は、周知標識技術に従ってさらに標識することができる。例えば、限定するものではないが、蛍光相関分光法のため、蛍光エネルギー移動研究のため、又は生細胞内でのそれらの濃度の測定のため、共焦点顕微鏡又は他の顕微鏡を用いて生細胞内の環状ヌクレオチド結合タンパク質の細胞内分布を局在化するために蛍光色素を化合物に結合することができる。
当然のことながら、化合物の水和物も本発明の範囲内である。
蛍光色素の代わりに又は蛍光色素に加えて、本発明の化合物を(放射性)核種で標識することができる。当業者は、このために使用できる多くの技術及び適切な同位体を知っている。
上述したように、本発明は、特定化合物のPEG化形態をも含み、PEG化は一般的に水溶性、薬物動態学的及び体内分布特性を大いに改善することが知られている。
【0097】
本発明は、エクアトリアル修飾ホスファート部分の負電荷を生体内活性化可能保護基でマスクした、記載化合物のプロドラッグ形態をさらに含む。該構造が親油性を高め、それと共に膜透過性及びバイオアベイラビリティを高めて、母化合物に比べて効力が10~1000倍向上することが広く認められている。該生体内活性化可能保護基は、当技術分野の周知技術に従って導入可能であり、これには、限定するものではないが、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシブチル、アセトキシイソブチルが含まれる。本発明の対応する残基R8の非限定例はアセトキシメチルチオ、プロピオニルオキシメチルチオ及びブチリルオキシメチルチオである。保護基のより不安定な例としては、アルキル又はアリール基並びに置換アルキル又はアリール基が挙げられる。R8位の化学的に不安定な保護基の非限定例は、メチル、エチル、2-シアノエチル、プロピル、ベンジル、フェニル及びポリエチレングリコールである。これらの化合物はそれ自体不活性であるが、極端に膜透過性であり、非常に高い細胞内濃度につながる。エステル結合が加水分解すると、生物学的に活性な母化合物が遊離される。
【0098】
本発明の化合物は、光分解性(photolysable)基(「ケージド」又は光活性化可能保護基とも呼ばれる)を備えることもでき、当技術分野の周知技術に従って導入可能である。例えば、限定するものではないが、ケージド基をR8チオ官能基に結合して、親油性及びバイオアベイラビリティが顕著に上昇した化合物をもたらすことができる。ケージド基の非限定例は、o-ニトロ-ベンジル、1-(o-ニトロフェニル)-エチリデン、4,5-ジメトキシ-2-ニトロ-ベンジル、7-ジメチルアミノ-クマリン-4-イル(DMACMケージド)、7-ジエチルアミノ-クマリン-4-イル(DEACMケージド)及び6,7-ビス(カルボキシメトキシ)クマリン-4-イル)メチル(BCMCMケージド)である。
【0099】
本発明の化合物を不溶性支持体に固定化することもできる。不溶性支持体としては、限定するものではないが、アガロース、デキストラン、セルロース、デンプン及び他の炭水化物に基づくポリマー等、合成ポリマー、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリスチロール及び同様の物質、アパタイト、ガラス、シリカ、金、グラフェン、フラーレン、カルボラン、チタニア、ジルコニア又はアルミナ、種々の配位子との結合に適したチップの表面等がある。
文献に記載されているように、化合物の定方向又は無向送達及び放出目的のためにナノ粒子又はリポソーム内に本発明の化合物を被包することもできる13。
【0100】
さらに、本発明の化合は、研究ツール化合物として、好ましくは疾患又は障害、好ましくは網膜疾患若しくは障害又は神経若しくは神経変性疾患若しくは障害から成る群より選択される疾患又は障害に関する研究ツール化合物として使用するの適している。
本明細書で使用する用語「研究ツール」又は「研究ツール化合物」は、研究室及び化合物の前臨床研究におけるいずれの実験的使用をも定義し、特にヒト並びに予防及び/又は医学的処置におけるいずれの使用をも排除する。特に、前記用語は、ヒトに適用しないが、研究室及び前臨床環境において疾患又は障害、好ましくは網膜疾患若しくは障害又は神経若しくは神経変性疾患若しくは障害から成る群より選択される疾患又は障害を研究するために使用する、研究室及び前臨床研究における化合物のいずれの実験的使用にも関連する。
本発明の化合物は、疾患又は障害、好ましくは網膜疾患若しくは障害又は神経若しくは神経変性疾患若しくは障害から成る群より選択される疾患又は障害の治療での使用に適している。
【0101】
本明細書では、病理、状態又は障害の治療は、特に反対の指定のない限り、明示的に言及がない場合でさえ、その予防をも包含するものと理解すべきである。
網膜の疾患又は状態を治療又は予防するために本発明のエクアトリアル修飾cGMP類似体を使用するのが好ましい。疾患関連の不均衡なcGMP系を抑制するエクアトリアル修飾cGMP類似体で網膜の疾患及び状態を治療するのが好ましく、該疾患及び状態には、網膜の珍しい遺伝性疾患、例えば網膜色素変性症、シュタルガルト病、黄色斑眼底、若年性ベスト病、成人性卵黄状中心窩黄斑ジストロフィー(adult vitelliform foveomacular dystroph)(成人性卵黄状変性症(adult vitelliform degeneration))、家族性ドルーゼン(ノースカロライナ黄斑ジストロフィー)、Bietti結晶性ジストロフィー、進行性錐体ジストロフィー、アルポート症候群、良性家族性斑点網膜症、レーバー先天黒内障、先天性単色性色覚及び遺伝性黄斑ジストロフィー等が含まれる。
さらに、本発明のこれらのエクアトリアル修飾cGMP類似体を用いて、いくつかの代謝性及び神経変性疾患、種々の症候群及び他の眼疾患で起こる続発性色素性網膜変性症を治療することができる。これら疾患には、アッシャー症候群、ワールデンブルグ症候群、アルストレム(Alstrom)症候群、アルポート症候群、レフサム症候群、及び他の全身状態(全てそれら自体の全身の徴候を有する)をも伴う網膜色素変性症及び難聴が含まれ、低身長、腎機能不全、及び多指症は、色素性網膜症を伴うときのバルデ・ビードル症候群又はローレンス・ムーン症候群のいくつかの兆候であり、ムコ多糖症は、網膜色素変性症(例えば、ハーラー症候群, シェイ症候群(Scheie's syndrome)、サンフィリポ症候群(Sanfilippo's syndrome))、並びにミトコンドリア障害カーンズ・セイヤー症候群と関連し得る。上記のものに加えて、これらには下記:フリートライヒ運動失調症、ムコ多糖症、筋ジストロフィー(筋緊張性ジストロフィー)、バッテン症候群、バッセン・コーンツヴァイク症候群、ホモシスチン尿症、シュウ酸症、眼及び網膜の外傷、網膜色素上皮変化を伴う緑内障、末期クロロキン網膜症、末期チオリダジン網膜症、末期梅毒性視神経網膜炎及び癌関連網膜症も含まれる。本発明のこれらのエクアトリアル修飾cGMP類似体を用いて網膜の他の一般的疾患、例えば糖尿病性網膜症、年齢関連黄斑変性症、黄斑円孔/パッカー(Pucker)、眼腫瘍、例えば網膜芽細胞腫、網膜剥離及び河川盲目症/オンコセルカ症を治療することもできる。
【0102】
さらに、本発明のエクアトリアル修飾cGMP類似体を用いて、疾患関連の不均衡なcGMP系に伴う全体的に異なる状態、例えば神経障害又は神経変性障害、脳卒中、嗅覚脱失、炎症性及び神経障害性疼痛、軸索再生及び脊髄損傷後修復を治療することができる。本発明のエクアトリアル修飾cGMP類似体を用いて心血管疾患、高血圧症、急性ショック及び癌を治療することもできる。これには、活発なcGMP系に寄生虫生存が非常に依存性であるマラリア、睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)、及びシャーガス病のような特定の寄生虫症も含まれる。
別の態様では、本発明は、上記病理、状態又は障害の治療又は予防方法であって、治療的又は予防的に有効な量の本発明のエクアトリアル修飾cGMP類似体を予防又は治療が必要な対象に投与することによる方法に関する。
本発明の好ましい実施形態を記述する下記実施例によって本発明をさらに説明するが、これらは決して本発明を限定する意図でない。
【実施例】
【0103】
実施例
1. 化合物の合成
一般的実験方法
全ての適用溶媒及び試薬は、商業的供給業者から入手可能だった。Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSは、Biolog Life Science Institute(Bremen, Germany)から入手可能だった。使用溶媒は分析グレード又はhplcグレードと明示した。ジメチルスルホキシドは、使用前の少なくとも2週間活性化分子ふるい上で貯蔵した。クロマトグラフ操作は周囲温度で行なった。反応の進行も単離生成物の純度も逆hplc(RP-18、ODS-A-YMC、120-S-11、250×4mm、1.5mL/分)により決定し、UV検出は、ほとんどの環状GMP生成物及び不純物の検出に適した中間波長である263nm、又は特定の出発物質若しくは生成物のλmaxのどちらかで行なった。合成は、典型的にネジ蓋付きの2mLのポリプロピレン反応バイアル中20-200μmolスケールで行なった(不活性ガス雰囲気及び/又は脱気を必要とする反応は丸底フラスコ(典型的に10又は25mL)で行なった)。難溶性試薬の溶解は、試薬の添加前に超音波処理又は加熱(70℃)により達成した。PET部分を有するいくつかのcGMP類似体に主に適用されるこれらの技術で溶解が起こらない場合は懸濁液を使用した。生成物の精製は、分取逆相hplc(RP-18、ODS-A-YMC、12nm-S-10、250×16mm、UV 254nm)により達成した。溶出剤の組成は個々の合成例に記載してあり、特に指定のない限り、分析目的にも同様に使用可能である。生成物の脱塩は、反復凍結乾燥によるか又は分取逆相hplc(RP-18、ODS-A-YMC、12nm-S-10、250×16mm、UV 254nm)によって、ヌクレオチドについての標準手順に従って達成した。speedvacコンセントレーターを用いて溶媒を除去する場合、蒸発前に溶液を-70℃で15分間凍結させた。生成物は、適用緩衝液に応じて、ナトリウム塩又はトリエチルアンモニウム塩として単離された。収率は、報告純度を備える単離生成物の割合を表す。それらは、JASCO V-650分光光度計(JASCO Germany GmbH、Gross-Umstadt、Germany)で測定したλmaxでのUV吸光度からランベルト・ベールの法則に従って計算した。構造的に関連する化合物の文献公知の値から吸光係数を推定した。Esquire LC 6000分光計(Bruker Daltronics、Bremen、Germany)を用いてESI-MSモードでマトリックスとして50%の水/50%のメタノールを用いて質量スペクトルを得た。
【0104】
8-チオ-置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の調製のための実験手順
一般手順A:
典型的実験では、対応チオール反応体(8eq)及びNaOH(2M、4eq)をH2O/i-PrOH(1:1、v/v)中の対応8-Br-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ナトリウム塩、65mM、1eq)の溶液に順次加えた。反応混合物を90℃に加熱し、ブロミド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで撹拌した。次に溶液を室温に戻し、HCl(1M)で中和し、speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、MTBE(3×)で洗浄した*。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して8-チオ-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
*残渣が水に溶けない場合、得られた懸濁液をMTBEで洗浄し、(必要ならば)MeOHで希釈して残留沈殿物を溶かした。
一般手順A2:
典型的実験では、H2O/i-PrOH(1:1、v/v)中の対応8-Br-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ナトリウム塩、65mM、1eq)の溶液に対応チオール(アート)反応体(4.5eq)を加えた。ブロミド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を室温で撹拌した。次にNaOH(10%)で溶液をpH6に調整し、speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、CH2Cl2(3×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して8-チオ-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0105】
一般手順B:
典型的実験では、8-Br-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ナトリウム塩、87mM、1eq)の溶液を対応ジチオール(水/i-PrOH、2:3、v/v中50mM、10eq)とNaOH(2M、5eq)の懸濁液に2時間かけて少しずつ加えた。反応混合物を90℃に加熱し、ブロミド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に懸濁させ、HCl(1M)で中和して濾過した。粗生成物溶液を分取逆相hplcにかけ、脱塩してチオール類似体を得た。
一般手順C:
典型的実験では、ホウ酸緩衝液(100mM、pH12)中の8-Br-置換cGMP類似体(ナトリウム塩、200mM、1eq)の溶液にNaOH(2M、16eq)及び対応チオール反応体(8eq)を順次加えた。反応混合物を90℃に加熱し、ブロミド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで撹拌した。次に溶液を室温に戻し、HCl(1M)で中和した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩した。
【0106】
一般手順D:
典型的実験では、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2eq)及び対応ブロミド(1eq)をDMSO中の8-SH-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ナトリウム又はトリエチルアンモニウム塩、100mM、1eq)の溶液に順次加えた。チオール出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、酢酸エチル(3×)で洗浄し、分取逆相hplcにかけ、脱塩した。
一般手順E:
ダイマーエクアトリアル修飾cGMP類似体の形成のため、DMSO中でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2eq)、対応ビスブロミドスペーサー(0.5eq)及び8-SH-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ナトリウム又はトリエチルアンモニウム塩、100mM、1eq)を用いて一般手順Dに従った。
【0107】
カルボン酸エステル官能化エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の対応カルボン酸又はアミドへの変換のための実験手順
一般手順F:
典型的実験では、水/MeOH(1:1、v/v)中の対応エステル(80mM、1eq)の溶液にNaOH(2M、10eq)を加えた。エステル出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。次に溶液をHCl(1M)で中和し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してカルボン酸類似体を得た。
一般手順G:
典型的実験では、対応エステル(1eq)を過剰のメタノールアンモニア(4.2M、200eq)に溶かした。出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、HCl(1M)で中和し、シリンジフィルターを通して濾過した。粗生成物を分取逆相hplcにかけ、脱塩してカルボン酸アミド類似体を得た。
【0108】
エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体とのアミド結合の形成のための実験手順
一般手順H:
典型的実験では、対応酸置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)と対応アミン(1.1eq)の溶液にHOBt(1.1eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.2eq)及びEDC(1.1eq)を順次加えた*。出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、酢酸エチル(5×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、水に再び溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してカップリングしたエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
*有効性の低い反応体はわずかに過剰に用いた。従って、官能基反転のある反応のためには、アミン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)及び酸反応体(1.1eq)を使用した。
【0109】
一般手順I:
典型的実験では、対応酸置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)と対応ビスアミノスペーサー(0.5eq)の溶液にHOBt(1.1eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.2eq)及びEDC(1.1eq)を順次加えた。一般手順Hに記載されるとおりに仕上げを行なってダイマーエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
一般手順J:
典型的実験では、対応カルボン酸置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)と対応アミン(1.1eq)の溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.2eq)及びPyBOP(1.1eq)を順次加えた*。出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した(通常は<10分)。水(100μL)を加え、10分間撹拌を続け、speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、必要ならばNaOH(2M)又はHCl(1M)でpHを6に調整し、溶液を酢酸エチル(5×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、水に再び溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩し、カップリングしたエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
*有効性の低い反応体はわずかに過剰に用いた。従って、官能基反転のある反応のためには、アミン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)及び酸反応体(1.1eq)を用いた。
【0110】
一般手順K:
典型的実験では、対応カルボン酸置換エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(DMSO中100mM、1eq)をビスアミノスペーサー(DMSO中400mM、5eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.2eq)及びPyBOP(1.1eq)の溶液に40分かけて少しずつ加えた。さらなるPyBOP (1eq)を加え、出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した(通常は<10分)。一般手順Jに記載されるとおりに仕上げを行なって、モノマーエクアトリアル修飾cGMP類似体カップリング生成物を得た。
一般手順L:
一般手順Jに従って対応酸置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中100mM、1eq)、ビスアミノスペーサー(0.5eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン (2.2eq)及びPyBOP(1.1eq)を用いてダイマーエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
一般手順M:
対応アミン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(DMSO中33mM、1eq)、リンカー三酸(0.3eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2eq)及びPyBOP(1.3eq)を用いて一般手順に従ってトリマーエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
一般手順N:
一般手順Jに従って対応アミン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(ジイソプロピルエチルアンモニウ塩、DMSO中50mM、1eq)*、リンカー四酸(テトラジイソプロピルエチルアンモニウム塩、0.25eq)*、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3eq)及びPyBOP(1.3eq)を用いてテトラマーエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
*反応体をジイソプロピルエチルアンモニウム塩に変換するため、反応体に水中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1酸性官能基当たり3eq)(0.1~0.3M)を施し、高真空でspeedvacコンセントレーターを用いて蒸発乾固させた。
【0111】
8-スルホニル及び8-スルホキシド置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の調製のための実験手順
一般手順O:
典型的実験では、NaOAc緩衝液(2M、pH4.2)中のOXONE(登録商標)(180mM、5eq)の溶液を水/MeOH(1:1、v/v)中の対応8-チオ置換グアノシン類似体(40mM、1eq)の溶液に滴加した。チオ発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。次に溶液をNaOH(2M)で中和し、シリンジフィルターを通して濾過した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して8-スルホニル置換グアノシン類似体を得た。次に、確立されたチオリン酸化(thiophosphorylation)プロトコル2bに従って対応エクアトリアル修飾cGMP類似体への変換を行なった。
一般手順P:
反応時間を短くし、酸化剤OXONE(登録商標)の当量を減らして(1.5eq)8-スルホキシド置換エクアトリアル修飾cGMP類似体の形成に有利に働くように、一般手順Oに従った。
【0112】
8-アジドアルキルチオ置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の生成のための実験手順
一般手順Q:
典型的実験では、琥珀色フラスコ内でDMF中の1,2-ジブロモアルカンの溶液(1.5M、15eq)に5時間かけてNaN3(22.5eq)を少しずつ加えた。反応混合物を23時間撹拌し、8-SH-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(トリエチルアンモニウム塩、1eq)並びにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1eq)を順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで撹拌を続けた(通常は約1時間)。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、MTBE(5×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して8-アジドアルキルチオ置換類似体を得た。
【0113】
エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体にアジド及び末端アルキンを[3+2]環付加するための実験手順
一般手順R:
典型的実験では、琥珀色フラスコ内でアルキン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(H2O中40mM、1eq)に対応アジドの溶液(CH2Cl2中0.5M、1.1eq)を加えた。ブロモトリス(トリフェニルホスフィン)銅(I)([Cu(PPh3)3Br])(0.05eq)を加え、アルキン出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。混合物を水(1.5mLまで)で希釈し、CH2Cl2(3×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してトリアゾール含有生成物を得た。
【0114】
一般手順S:
典型的実験では、[Cu(PPh3)3Br](0.05eq)を琥珀色フラスコ内で水/N,N-ジイソプロピルエチルアミン(7:1、v/v)中の対応アジド(13mM、1eq)と対応アルキン(13mM、1eq)の溶液に加えた。出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を65℃で撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、CH2Cl2(3×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してトリアゾール含有生成物を得た。
一般手順T:
水/N,N-ジイソプロピルエチルアミン(8:1、v/v)中で[Cu(PPh3)3Br](0.05eq)、対応アジド置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(23mM、1eq)及び対応ビスアルキン(12mM、2eq)を用いて一般手順Sに従った。条件を選択してモノマー及びダイマートリアゾール含有生成物を得た。
一般手順U:
水/N,N-ジイソプロピルエチルアミン(10:1、v/v)中で[Cu(PPh3)3Br](0.05eq)、対応アジド置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(33mM、1eq)及び対応ビスアルキン(16mM、0.5eq)を用いて一般手順Sに従ってダイマートリアゾール含有生成物を得た。
【0115】
アジド置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の対応アミンへの変換のための実験手順
一般手順V:
典型的実験では、琥珀色フラスコ内でトリエチルアミンを添加してアジド置換エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(水中2.5mM、1eq)をpH10に調整し、10℃に冷却した。DL-ジチオスレイトール(5eq)を加え、アジド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した(通常は<20分)。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で混合物を蒸発乾固させた。残渣を水(1mL)に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してアミン置換エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0116】
Br置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体と有機ボロン酸の鈴木クロスカップリングのための実験手順
一般手順W:
典型的実験では、EtOH/H2O(1:1、v/v)中のBr置換エクアトリアル修飾cGMP類似体(52mM、1eq)とボロン酸(72mM、1.4eq)の溶液にK2CO3水溶液(2M、3eq)及びPd(dppf)Cl2(0.05eq)を順次加えた。即座に3サイクルの凍結-ポンプ-解凍技術を適用して反応混合物を脱気し、ブロミド出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまでアルゴン下90℃で撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水に懸濁させ、CHCl3(3×)で洗浄した。沈殿物が溶解するまで(H2O/MeOH=1:1まで)メタノールを加えた。この組成物から残留CHCl3を含有する有機相が現れたら、それを分離した。次にMacherey-Nagel Chromafix C 18 (S) 270mgカートリッジ(10mLのMeOH、それぞれ50%MeOH及び30%MeOHでプレコンディショニングした)を通して水相を濾過し、30%MeOH(6mL)ですすいだ。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩してクロスカップリング生成物を得た。
*用いた全ての溶媒は、実験前に減圧下で超音波処理により脱気した。
【0117】
一般手順X(ビスボロン酸試薬4-B(OH)2PhS-(EO)5-(CH2)2-4-SPhB(OH)2の調製):
典型的実験では、DMF中の4-メルカプトフェニルボロン酸(0.2M、1eq)及びBr-(EO)5-(CH2)2-Br(0.5eq)の溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2eq)を加えた。ボロン酸出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣をメタノール(1mL)に溶かし、分取逆相hplc(62%MeOH)にかけて4-B(OH)2PhS-(EO)5-(CH2)2-4-SPhB(OH)2を得た(収率34%)。
【0118】
1,N2-官能化エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の調製のための実験手順
一般手順Y:
典型的実験では、DBU(7eq)及び対応2-ブロモ-アセト反応体(3.5eq)をDMSO中の対応エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(50mM、1eq)に順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで光の排除下で反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣をメタノール(0.5mL)に溶かし、HCl(1M)でpHを6~7に調整した。それによって沈殿物が形成された場合、メタノールを加えてそれを再び溶かした。そうでなければ、全ての成分がちょうど溶解した状態になるまで水をゆっくり加えた(最大H2O/MeOH=5:1)。溶液を分取逆相hplcにかけ、脱塩して1,N2-エテノ官能化エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0119】
一般手順Y2:
典型的実験では、DBU(2eq)及び対応ブロモ酢酸アルキル反応体(1.1eq)をDMSO中の対応エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(100mM、1eq)に順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣をH2O(0.5mL)に溶かし、HCl(1M)でpHを6~7に調整した。溶液を分取逆相hplcにかけ、脱塩して1,N2-アシル官能化エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
一般手順Y3:
典型的実験では、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2eq)及びPyBOP(1.1eq)を対応1-カルボキシアルキル置換エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(DMSO中10mM、1eq)に順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。水(100μL)を加え、10分間撹拌を続け、speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣を水(1mL)に溶かし、NaOH(2M)でpHを5~6に調整し、溶液を酢酸エチル(5×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、水に再び溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して1,N2-アシル官能化エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0120】
1-置換エクアトリアル修飾グアノシン-3’,5’-環状一リン酸類似体の調製のための実験手順
一般手順Z:
典型的実験では、DBU(4eq)及び対応ブロミド(又はヨージド)反応体(4eq)をDMSO中の対応エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(50~300mM、1eq)に順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣をH2O(0.5mL)に溶かし、結果として生じた溶液が中性でない場合、HCl(1M)でpHを7に調整した。溶液を酢酸エチル(4×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して1-置換エクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0121】
一般手順Z2:
典型的実験では、DBU(2eq)及び対応ジブロミド反応体(0.5eq)をDMSO中の対応エクアトリアル修飾cGMP類似体の溶液(15mM、1eq)に順次加えた。エクアトリアル修飾cGMP類似体出発物質が完全に消費されるか又はさらなる反応の進行が観察されなくなるまで反応混合物を90℃で撹拌した。speedvacコンセントレーターによる高真空蒸発を通じて溶媒を除去した。残渣をH2O(0.5mL)に溶かし、HCl(1M)でpHを5~7に調整し、溶液を酢酸エチル(4×)で洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で水相を蒸発させ、残渣を再び水に溶かし、分取逆相hplcにかけ、脱塩して1-置換ダイマーエクアトリアル修飾cGMP類似体を得た。
【0122】
本発明の好ましい実施形態を記述する図面及び例(表15)によって本発明をさらに説明するが、これらは決して本発明を限定する意図でない。新規化合物の構造例は遊離酸の形態で描写してある。HPLC仕上げ後、化合物は適用緩衝液の塩として得られるが、ヌクレオチドに関する標準手順に従ってカチオン交換により他の塩形態又は遊離酸に変換可能である。
【0123】
表15 本発明の新規エクアトリアル修飾ポリマー連結マルチマーcGMP化合物の例
【0124】
本発明の好ましい実施形態を記述する図面及び表16の例によって本発明のモノマー前駆
体及び/又は本発明のモノマー化合物をさらに説明するが、これらは決して本発明を限定する意図でない。新規化合物の構造例は遊離酸の形態で描写してある。HPLC仕上げ後、化合物は適用緩衝液の塩として得られるが、ヌクレオチドに関する標準手順に従ってカチオン交換により他の塩形態又は遊離酸に変換可能である。
【0125】
表16 本発明のモノマー前駆体及び/又はモノマー化合物の例
【0126】
2. 親油性の決定
所与の類似体が受動拡散によって細胞脂質二層を通過する予想能力について一般的に受け入れられている指標はオクタノール/水分配係数Log Pであるが、該データの決定は環状ヌクレオチド等の極性構造についてはかなり困難である。従ってフラグメント分析及び対応計算によって親油性情報を得るだけのことが多い。
グラジエント溶出中のRP-18逆相シリカ上の保持データに基づく確立されたHPLC法を親油性の決定に用いた。
この方法は、log Pの代わりに、同様に対数尺度に関する分析物の親油性に従って分析物を順位付けする記述子log k’gをもたらす。環状ヌクレオチド等の荷電分子は逆相上でほとんど保持率を持たないので、親油性トリエチルアンモニウムカチオンによるイオン対クロマトグラフィーを使用する。
非修飾cGMP自体(log k’g 0.77)は、受動拡散による膜透過性でないとみなされ、リン酸部分で負電荷に対抗するそれぞれかなりの疎水性修飾及び置換基を有する類似体のみが細胞外適用に使用できることを意味する。
我々の研究室で広く利用する環状ヌクレオチド類似体の前分析は、細胞中への注目すべき拡散は少なくとも1.2のlog k’gを有する類似体についてのみ起こることを示した。これはWernerらの研究(2011)によく適合する14。
Rpホスホロチオアートを有する12の新規エクアトリアル修飾cGMP類似体の対応する分析結果を下表17に示す。比較及びコントロール用に、この系列内で3つの確立された構造(化合物A~C)を再分析した。
【0127】
表17 本発明の例示化合物のlog k’
g値(化合物番号は、表13及び14に記載の構造を指す)。
*ダイマー類似体の値はモノマー類似体の値と直接比較できない。
【0128】
全てのモノマー類似体はlog k’g値>1.2を有したので、細胞膜を通過するのに十分な親油性を有する。
ほとんどのモノマー類似体はRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて同様の親油性を有し、高いことさえある。log k’g値>2.831を有する全てのモノマー類似体は、生体系内で改善された膜透過、ひいてはRp-8-Br-PET-cGMPSに比べて改善された特性を有すると予想される。
表17は、2つのcGMPSダイマー(化合物1及び2)に関する親油性データを同様に示す。しかしながら、これらの構造は生理的pHで2つの負電荷を有するので、対応する値は、 単一の負電荷しか持たないモノマー類似体について得られたlog k’g値と直接比較できない。
【0129】
3. 初生杆体様細胞:エチジウムホモダイマーアッセイを用いる細胞死の評価
背景
インビトロでの分化後の網膜幹細胞由来の初生光受容体は、網膜変性及びcGMP不均衡に関連する細胞死の機構を研究するため並びに神経保護活性を有する化合物をスクリーニングするために適したインビトロシステムであることが実証されている5~6。従ってこのインビトロシステムでの薬物のスクリーニングによって得られたデータは、網膜外植片に関するさらなる調査研究及び疾患の動物モデルの眼のインビボでのさらなる調査研究のために使用可能である。
【0130】
実験パート
マウス眼の毛様体上皮から幹細胞を単離することによって初生杆体様細胞を得た15。FGF(20ng/ml)、へパリン(2μg/ml)、N2(1x)、グルコース(0,6%)、HEPES(5μM)及び1%ペニシリン/ストレプトマシンを含むDMEM/F12内で細胞がニューロスフェアを形成するまで細胞を培養した。シングルニューロスフェアを選んで、FGF濃度の低減(10ng/ml)以外は前と同じ培地内でECM被覆したスライドガラス上に蒔いて接着を誘導する。4日後に、培地を1%のFBSに懸濁したN2、グルコース、HEPES及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM/F12に交換して、杆体様光受容体に分化できるようにする。化合物による処理は、ニューロスフェアプレーティング後10日目に始める。rd1変異眼由来の細胞が細胞死のピークを示し、インビボ網膜におけるような細胞死経路を活性化するので、この時点を選択した5b。化合物を水に溶かしてから1nM~100μMの濃度で分化培地に希釈した。処理24時間後に細胞をPBSで洗浄し、4%PFA中で固定した。その後スライドガラスを2μMのエチジウムホモダイマーに2分間浸し、核をDAPIで染色した。エチジウムホモダイマーは死細胞の核を染色する。細胞死を評価するため、各化合物濃度について3つの異なるスライドガラスから顕微鏡写真を撮り、細胞の総数、並びにエチジウムホモダイマーポジティブ死細胞の数を各写真でカウントした。未処理細胞と処理細胞との間の有意差を統計的に評価するため、独立スチューデントt検定を使用し、p値≦0.05を有意とみなした(*≦0.05、**≦0.01、***≦0.001)。
【0131】
結果
図2は、本発明の例示化合物の保護効果を示す。本発明の全ての試験化合物は、未処理細胞(黒棒)に比べて並びに基準化合物Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPS(ダッシュ付き棒)に比べて0.1μM(
図2a)及び1μM(
図2b)の両試験化合物濃度で初生杆体様細胞の有意に改善された生存率をもたらした。本発明の例示化合物の最強先例は、公知化合物に比べて細胞死の4.7~9倍良い低減を示した。
【0132】
4. 網膜外植片:光受容体細胞死の決定
背景
種々の環状ヌクレオチド類似体の特性を評価するために網膜光受容体又は光受容体様細胞を変性させる細胞系を使用することに加えて、若い動物からの網膜を培養に外植し、3週間まで維持する無血清の器官型外植片培養システムを使用することができる4、9。この外植片システムは、インビボのような組織学的状況における光受容体生存の評価を可能にする。これは細胞構築の大半を無傷のまま維持するが、例えばいずれかの処理化合物の体液等による変性又は希釈のリスクもない(そうでなければインビボでは危険である)。rd1マウスは、RDについて、また光受容体細胞死の早期発生及び急速な進行を含めたその変性特性のため非常によく研究されたモデルである。rd1変性は、外植片培養の時間枠下で容易に起こさせ得る。これは、繰り返し活用されてきた神経保護の可能性を探すための容易な薬理学的治療介入という利益を与える4、8。これらの研究は、とりわけいくつかの疾患ステップの概要を示すことを可能にした。
【0133】
実験パート
式(I)、(II)の様々な化合物及びそのモノマー前駆体である式(III)の様々な化合物が、遺伝性網膜変性を患うモデルマウスから得た網膜光受容体の変性に及ぼす効果を、上記網膜外植片システムを用いて調べた。この実験では、通常は生後5日(PN5)に若い動物から網膜を切断し、無血清培地内で数日間培養し(rd1培養パラダイムについての
図3をも参照されたい)、通常は1日おきに培地を変える。
変性に及ぼす様々な類似体の効果を観察するため、網膜は実験の最後に固定(保存)する。この後で組織学的及び他の分析、特に光受容体細胞死の定量を可能にするいわゆるTUNEL染色用に網膜を調製する。
【0134】
結果
図4は、本発明の類似体による一連の試験結果を示し、光受容体細胞死に及ぼす効果を処理対非処理の比として表わしてある(図の解説参照)。最左棒は非処理rd1外植片を表し、他の棒は50μM、10μM又は1μMのどれかの濃度で用いた本発明の選択類似体を示す。これらの類似体の効果を、濃度を一致させた以前に入手可能だった類似体Rp-8-Br-PET-cGMPSと比較する。Rp-8-Br-cGMPS及びRp-8-Br-PET-cGMPSの全ての濃度で本発明の1種以上の類似体がよりよく働くことに留意されたい。
【0135】
【0136】
文献
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3.Butt, E.; Pohler, D.; Genieser, H.G.; Huggins, J.P.; Bucher, B., Inhibition of cyclic GMP-dependent protein kinase-mediated effects by (Rp)-8-bromo-PET-cyclic GMPS.Br J Pharmacol 1995, 116 (8), 3110-6.
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