(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】単回投与粉末吸入器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 13/00 20060101AFI20220729BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61M13/00
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020091260
(22)【出願日】2020-05-26
(62)【分割の表示】P 2017528842の分割
【原出願日】2015-07-29
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】102014017409.3
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517182723
【氏名又は名称】ペルレン パッケージング アクツィエンゲゼルシャフト,ペルレン
【氏名又は名称原語表記】PERLEN PACKAGING AG,PERLEN
【住所又は居所原語表記】Perlenring 3,CH-6035,Perlen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ディーター べラー
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/042822(WO,A2)
【文献】特表2004-524077(JP,A)
【文献】国際公開第2013/036881(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0084379(US,A1)
【文献】国際公開第93/017728(WO,A1)
【文献】特表平11-510412(JP,A)
【文献】国際公開第2014/048895(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部(1)及びカバー要素(2)を少なくとも有し、一回分の粉状薬剤が入れられる少なくとも1つの薬剤チャンバ(11)と、出口開口部(13’)及び前記薬剤チャンバ(11)から前記出口開口部(13’)へと延びる出口ダクト(13)と、前記薬剤チャンバ(11)の前記出口開口部(13’)から離れている側にある空気入口開口部(12’)から前記薬剤チャンバ(11)へと延びる入口ダクト(12)と、を形成する吸入器ハウジング、を備えた単回投与粉末吸入器を製造する方法であって、
プラスチックフィルムを熱成形することにより、軸上に、前記出口ダクト(13)と、前記薬剤チャンバ(11)と、前記入口ダクト(12)と、が形成されている前記ハウジング部(1)をプラスチックで製造するステップであって、前記単回投与粉末吸入器の内壁の構造である空気案内構造(17)が前記出口ダクト(13)に形成され、前記単回投与粉末吸入器の前記内壁の構造である乱流誘導構造(16)が前記薬剤チャンバ(11)の基部に形成され、前記単回投与粉末吸入器の内壁の構造である偏向構造(15)が前記入口ダクト(12)に形成され、前記入口ダクト(12)は、前記空気入口開口部(12’)から前記薬剤チャンバ(11)まで、前記出口ダクト(13)と、前記薬剤チャンバ(11)と、前記入口ダクト(12)とにより規定される前記軸に垂直な2つの方向に狭くなり、かつ、前記出口ダクト(13)が、前記薬剤チャンバ(11)から前記出口開口部(13’)へと向かう方向において、前記出口ダクト(13)と、前記薬剤チャンバ(11)と、前記入口ダクト(12)とにより規定される前記軸に垂直な2つの方向に広くなっている、ステップと、
前記ハウジング部(1)に形成された前記薬剤チャンバ(11)に、一回分の粉状薬剤を充填するステップと、
前記ハウジング部(1)に形成された前記薬剤チャンバ(11)を閉鎖するステップであって、
a)前記薬剤チャンバ(11)を閉鎖するような寸法で漏洩を防止しかつ取り外し可能な態様で接続される閉鎖タブ(30)を有する、フィルム要素を設けることで
、又は、
b)前記薬剤チャンバ(11)に隣接する、前記入口ダクト(12)及び前記出口ダクト(13)の部分(120,130)のそれぞれに配置される2つのプラグ要素(4)であって、各前記プラグ要素(4)のプラグ部(40)が前記部分(120,130)を閉鎖するような形状及び寸法である2つのプラグ要素(4)を提供し、最終的に前記カバー要素を設けることで、又は、
c)前記ハウジング部に、2つの閉塞ダクト(18)であって、各前記閉塞ダクトは、前記ハウジング部の前記薬剤チャンバ(11)の両側に、前記入口ダクト(12)及び前記出口ダクト(13)に直角に形成され、各前記閉塞ダクトは、前記入口ダクト(12)及び前記出口ダクト(13)を封止して閉鎖する隆起部(21)であって、設けられる前記カバー要素(2)の前記閉塞ダクト(18)に対応する位置に形成されている前記隆起部(21)を受け入れる、2つの閉塞ダクトを提供することで、
前記ハウジング部(1)に形成された前記薬剤チャンバ(11)を閉鎖するステップと、
広くかつ実質的に平面状の、プラスチックフィルム、アルミニウム箔、又は複合フィルムからなる前記カバー要素(2)を切り出すか、または、前記カバー要素(2)として、プラスチックフィルムを熱成形することにより、プラスチックから、成形されたカバー要素(2)を製造するステップと、
前記カバー要素(2)を前記ハウジング部(1)に取り付け、前記カバー要素(2)及び前記ハウジング部(1)の2つの部品で前記吸入器ハウジングを形成するステップと、
を含み、
前記単回投与粉末吸入器の製造は、単一の製造装置(100)で実施される、
単回投与粉末吸入器を製造する方法。
【請求項2】
前記ハウジング部(1)が、医薬的に適合する、プラスチックフィルムから成形され、
前記広くかつ実質的に平面状のカバー要素(2)は、前記入口ダクト(12)、前記薬剤チャンバ(11)および前記出口ダクト(13)の境界を定め、
前記成形されたカバー要素は、前記ハウジング部(1)に対応するように、少なくとも前記入口ダクト(12)および前記出口ダクト(13)の領域において形成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハウジング部(1)、又は、前記カバー要素(2)、又は、前記ハウジング部(1)および前記カバー要素(2)、は透明である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤チャンバ(11)における前記入口ダクト(12)の断面は、前記薬剤チャンバ(11)における前記出口ダクト(13)の断面より小さい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤チャンバ(11)を閉鎖する前記ステップの前に、少なくとも1つの解凝集体が提供され、前記薬剤チャンバ(11)内に配置される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルム要素(3)には、前記閉鎖タブ(30)を起点として、前記薬剤チャンバ(11)の一方の側から反対側の前記入口ダクトまたは前記出口ダクト(12、13)を通り、前記空気入口開口部(12’)または前記出口開口部(13’)から延出するように配置される、少なくとも1つの引抜きタブ(32)が設けられる、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カバー要素(2)が成形される際、前記薬剤チャンバ(11)に対向する側に、少なくとも1つの穿孔要素(23)を有する弾性圧力要素(22)が形成され、前記弾性圧力要素(22)に圧力がかけられると前記閉鎖タブ(30)が穿孔される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各前記プラグ要素(4)は、それぞれ前記空気入口開口部(12’)および前記出口開口部(13’)から延出するように配置される引抜きタブ(42)を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末吸入器には、持上げ要素が設けられ、前記持上げ要素により、前記隆起部(21)を前記閉塞ダクト(18)から持ち上げられることが可能であり、
前記持上げ要素は、前記入口ダクト(12)および前記出口ダクト(13)を通り、かつ前記隆起部(21)と前記ハウジング部(1)との間において前記閉塞ダクト(18)を横断して延在するように配置されるプルテープ(5)であり、前記プルテープは、両端に把持部分(52)を有する、または、一方の端部に把持部分(52)を有しかつ他端(50)において前記吸入器ハウジングの係留構造(17’)に係留され、前記係留構造は、前記入口ダクト(12)の前記偏向構造(17)および前記出口ダクト(13)の前記空気案内構造(15)と同時に形成される、
または、
前記持上げ要素は、前記入口ダクト(12)および前記出口ダクト(13)の前記部分(120,130)に配置される前記プラグ要素(4)によって形成される、
または、
前記持上げ要素は、前記薬剤チャンバ内に遊動するように配置された構造体である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハウジング部(1)に前記薬剤チャンバ(11)を形成するステップでは、
前記薬剤チャンバ(11)は、少なくとも1つの仕切り壁(11b)によって少なくとも2つのサブチャンバ(11a)に細分される、
または、
2つ以上の薬剤チャンバ(11)が前記ハウジング部(1)に形成され、前記2つ以上の薬剤チャンバ(11)は、前記入口ダクト(12)および前記出口ダクト(13)と互いに並んで並列に配置される、または、互いに直列に配置されて、前記入口ダクト(12)は最初の前記薬剤チャンバ(11)に通じ、前記出口ダクト(13)は最後の前記薬剤チャンバ(11)から延在し、かつ前記薬剤チャンバ(11)がさらなるダクトを介して一緒に接続されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カバー要素(2)を成形する際、
前記ハウジング部(1)に形成された各前記サブチャンバ(11a)のための圧力要素に少なくとも1つの穿孔要素(23)が設けられるか、
または、
少なくとも1つの穿孔要素(23)を有する弾性圧力要素(22)が、前記ハウジング部(1)に形成された各前記薬剤チャンバ(11)のために設けられる、
請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の単回投与粉末吸入器と、その製造方法とに
関する。
【背景技術】
【0002】
商業的に慣習的な粉末吸入器(「吸入器」)は、複数回使用されるように設計されてい
ることが多く、したがって、製造が複雑でありかつ費用がかかる。使い捨て物品としての
使用は、適していない場合が多い。しかしながら、複数回の使用により、重大な衛生上の
問題がもたらされる場合があり、それは、患者が、使用後に吸入器を正しく洗浄しないか
、めったに洗浄しないか、またはまったく洗浄しないためである。もう1つの問題は、キ
ャップを紛失する可能性があることである。衛生の観点から、患者が吸入器を間違って使
用し、たとえば、吸入器内に吐き出す場合も不都合であり、すなわち、既知の吸入器では
、患者は、必ずしも、吸入器を通してではあるが意図された呼気方向に吐き出すとは限ら
ず、それにより、吸入器は、複数回使用すると呼吸による湿気のために詰まる傾向があり
、それは、粉状薬剤が吸入器の空気ダクト内で固まり、付着したままになるためである。
病原菌で汚染される可能性もあるこれらの沈殿物および膠着物により、たとえば鼻に適用
する場合でも投与の不正確および別の問題点がもたらされる可能性があり、すなわち、そ
こでは、たとえば副鼻腔炎に治療が効かないことが判明した場合、鼻の細菌を考慮するべ
きである。罹患者は、吸入器を介して(鼻から、口腔咽頭から)繰り返し再感染する可能
性がある。
【0003】
国際公開第2007/042822号パンフレットは、互いに接合されて、出口を備え
た吸入器ハウジングを形成する、金属製の第1ハウジング部および第2ハウジング部を有
する単回投与粉末吸入器について記載している。第1ハウジング部は、粉状薬剤の1回分
の投与量を収容する薬剤チャンバを備え、薬剤チャンバは、第1ハウジング部に締結され
た箔によって閉鎖される。この箔は、使用者が使用するために把持して引きはがすことが
できるように、吸入器ハウジングから延出し、その結果、薬剤チャンバから粉状薬剤が放
出される。第2ハウジング部は、収集穴および/または分散チャンバを有し、それを通し
て、吸入器ハウジングに形成された空気ダクトが出口に通じる。薬剤チャンバが開放され
た後、吸入時に、出口において箔が引きはがされた後に残るハウジング部間の間隙を通し
て空気流が発生し、前記空気流は、薬剤チャンバから放出される粉状薬剤を伴って収集穴
または分散チャンバから出る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術から、本発明の目的は、製造が容易かつ費用効率が高く、使用が容易であ
り、収容される粉末の解凝集(deagglomeration)と粉末を完全に空にす
ることとに関して改善された単回投与粉末吸入器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する単回投与粉末吸入器によって達成される。
【0006】
こうした吸入器を製造するという目的は、独立請求項13の特徴を有する方法によって
達成される。
【0007】
装置の発展形態は、従属請求項において明記されている。
【0008】
本発明による単回投与粉末吸入器は、粉状薬剤の完全な投与量または部分的な投与量を
収容する少なくとも1つの薬剤チャンバが形成されているハウジング部を有する吸入器ハ
ウジングからなる。したがって、本発明による単回投与粉末吸入器は、いわばブリスター
なしであるように、すなわち、薬剤で充填される別個のブリスターを使用することなく使
用可能な吸入器である。吸入器ハウジングは、出口開口部と、薬剤チャンバから出口開口
部まで延在する出口ダクトとを有する。本発明によれば、ハウジング部に同様に形成され
るのは出口ダクトのみではなく、薬剤チャンバの出口開口部から離れる側における空気入
口開口部と、空気入口開口部から薬剤チャンバまで延在する入口ダクトとでもある。した
がって、粉末吸入器に対して関連する部分のすべてが、単一のハウジング部に形成される
ことが可能であり、その後、ハウジング部は、薬剤チャンバが粉末の投与量で充填された
後、単にカバー要素で覆われる。単回投与粉末吸入器が使用されるときの粉末の解凝集、
均一な分散、および粉末を完全に空にすることを補助および改善するために、ハウジング
部において空気入口ダクト、薬剤チャンバ、出口ダクトに、薬剤チャンバへの、薬剤チャ
ンバを通る、かつ薬剤チャンバから出る空気流に影響を与えるための空気案内、乱流誘導
および/または偏向構造が形成される。流速を制御するために、また、入口ダクトを空気
入口開口部から薬剤チャンバまで狭くし、かつ出口ダクトを出口開口部の方向において薬
剤チャンバから広くする。その結果、最適に機能する粉末吸入器に対して必要な構造のす
べてが有利に1つのハウジング部に設けられ、それにより、粉末吸入器を完成させるため
に必要なことはまた、単一のさらなる構成要素、すなわちカバー要素のみである。換言す
れば、本発明による粉末吸入器は、有利には、単に2つのみのハウジング部からなり、そ
れらは、さらに単純に製造し互いに接合することができる。したがって、粉末吸入器は、
極めて費用効率高く製造することができ、したがって、単回使用で粉末の投与量(または
粉末のいくつかの投与量の組合せ)を投与するのに好適であり、使用者に対して関連する
衛生上の利点がある。したがって、本発明による粉末吸入器は、吸入による粉状薬剤の最
適な投与に対して必要な構造を提供するだけでなく、粉状薬剤に対するブリスターパック
ともなる。
【0009】
好ましくは、ハウジング部は、費用効率が高いように、プラスチックからなり、射出成
型プロセスで、または好ましくは医薬的に適合する(pharmaceutically
compliant)、好ましくは単一タイプのプラスチックフィルムを成形すること
により、特に好ましくは熱成形することにより、製造することができる。空気入口ダクト
、薬剤チャンバおよび出口ダクトの境界を定め、かつ吸入器ハウジングを形成するように
ハウジング部を完成させるために、ハウジング部を覆うようにカバー要素が設けられ、カ
バー要素は、広くかつ実質的に平面でかつ成形されずに、容易にかつ費用効率高く形成す
ることができる。本明細書において、「実質的に平面でかつ成形されない」とは、最も単
純かつ好ましい変形形態において、カバー要素が完全に平坦であり得ることを意味するが
、カバー要素が、たとえば、安定化および流れの最適化の両方のために、空気入口ダクト
、薬剤チャンバおよび出口ダクトに沿って長手方向の曲率を有することも可能である。し
かしながら、別法として、カバー要素が、少なくとも入口ダクトおよび出口ダクトの領域
において、ハウジング部に対応するように形成されることも可能である。したがって、ハ
ウジング部のように、カバー要素も同様に、プラスチックから構成し、射出成型プロセス
において、または好ましくは医薬的に適合する、好ましくは単一タイプのプラスチックフ
ィルムを成形することにより、特に好ましくは熱成形することにより、製造することがで
きる。したがって、本発明による粉末吸入器の構造は、ブリスターパックの構造に対応す
る。この場合、2つの吸入器ハウジング構成要素、すなわちハウジング部およびカバー要
素のうちの少なくとも一方は、透明であるように具現化することができ、それにより、薬
剤チャンバ内に存在する粉末およびその投与を眼で確認することができる。したがって、
好ましくは、少なくともハウジング部は、アルミニウム箔またはプラスチックフィルムで
覆われる透明なプラスチックフィルムから成形することができ、それにより、空気入口開
口部および出口開口部のみが開放したままとなる。覆うためにプラスチックフィルムが使
用される場合、これは、好ましくは、第1ハウジング部と同じプラスチックから構成する
ことができ、それにより、粉末吸入器を使用後に容易に再利用することができる。当然な
がら、カバー要素として複合フィルムも使用することができるが、これは、その再利用可
能性が低いため、好ましくない。カバー要素に対する材料選択は、それが成形されたカバ
ー要素であるように意図されるか、または実質的に平面のカバー要素であるように意図さ
れるかによって決まる。カバー要素が成形される場合、好ましい材料は、ハウジング部に
対応するプラスチック熱成形フィルムであり、それにより、成形されたカバー要素は寸法
的に安定する。
【0010】
さらに、吸入器の内容物および使用に関する情報を使用者に提供するために、有利には
カバー要素に印刷することができる。この情報は、文字で与えることができ、または好ま
しくは、国際的に理解可能であるために、グラフィックおよび任意選択的に色で補助する
ことができる。適切な場合、フィルムに点字で情報を与えることも可能である。
【0011】
ハウジング部を不透明なまたは着色されたプラスチックから製造することも可能である
。このように、異なるように着色されたプラスチックはまた、収容された粉末薬剤のタイ
プおよび/または量に関する情報を与えることができる。
【0012】
出口開口部は、マウスピースとして形成するか、または鼻ノズルに接続することができ
る。空気入口開口部から薬剤チャンバまで狭くなっている入口ダクトと、出口開口部の方
向において薬剤チャンバから広くなっている出口ダクトとに加えて(鼻ノズルが存在する
場合、前記出口ダクトは、任意選択的に再び狭くなる)、薬剤チャンバにおける空気入口
ダクトの断面はまた、好ましくは、流速を制御するために、薬剤チャンバにおける出口ダ
クトの断面より小さいままとすることができる。
【0013】
単回投与粉末吸入器が使用されるときに薬剤チャンバにおける粉末の解凝集を補助する
ために、その中に少なくとも1つの遊動する(loose)解凝集体(deagglom
erator)を配置することができ、それは、薬剤チャンバ内の空気入口ダクトの形状
によって生成される乱流空気流によって粉末とともに渦を巻き、粉末凝集を分解する。好
ましくは、解凝集体は、薬剤チャンバ内に留まり、かつ空気流ダクトまたは出口ダクトに
入ることができないように、十分大きい寸法を有する。任意選択的に、解凝集体は、開口
部を有するように、すなわち空気透過性であるように具現化することができ、それにより
、解凝集体が薬剤チャンバの出口開口部の正面に位置することになる場合でも、空気流は
閉塞されない。
【0014】
本発明によれば、単回投与粉末吸入器の薬剤チャンバは、粉末の投与量で(任意選択的
に、解凝集体によっても)充填された後に閉鎖され、それにより、充填された単回投与粉
末吸入器を使用されるまで保管することができる。この閉鎖は、粉末吸入器が、収容され
た粉末の吸入に対して使用されるように意図されたときに開放されるように意図されてい
る。閉鎖の目的で、本発明により種々の変形形態が提供される。
【0015】
使用者に対する容易な操作性のために好ましい変形形態は、薬剤チャンバを閉鎖する閉
鎖タブを備えた、たとえばアルミニウムまたはプラスチック製のフィルム要素(剥離フィ
ルム)を備える。
【0016】
こうしたフィルム要素は、テープ部分を介して閉鎖タブに接続された引抜きタブを有す
ることができ、前記引抜きタブは、薬剤チャンバの一方の側から反対側の空気入口ダクト
または出口ダクトを通って空気入口開口部または出口開口部から延出する。換言すれば、
テープ部分は、引抜きタブとともに、薬剤チャンバの出口側から空気入口ダクトを通って
空気入口開口部から延出するか、または好ましくは、薬剤チャンバの入口側から出口ダク
トを通って出口開口部から延出し、それは、ダクト断面が薬剤チャンバの出口側の方で大
きいためである。引抜きタブに牽引力がかけられると、閉鎖要素は薬剤チャンバから引き
はがされ、それにより粉末薬剤が放出され、吸入器ハウジングから閉鎖要素を取り除くこ
とができる。
【0017】
引抜きタブに対する代替形態として、薬剤チャンバを閉鎖する閉鎖タブを開放するため
に、カバー要素を、薬剤チャンバとは反対側で弾性圧力要素の形状にすることができ、圧
力要素は、その内面に、薬剤チャンバに面する側として1つまたは複数の穴あけ要素を有
し、それにより、圧力要素に圧力をかけることによって好ましくは閉鎖タブに穴をあける
ことが可能になる。
【0018】
フィルム要素に対する代替形態として、薬剤チャンバは、2つのプラグ要素によって閉
鎖することができ、その場合、各プラグ要素は、空気入口ダクトおよび出口ダクトの、薬
剤チャンバに隣接する部分に配置されるプラグ部分を有し、さらに、プラグ要素は、それ
ぞれの場合に空気入口開口部および出口開口部から延出する引抜きタブを有する。粉末吸
入器に対して吸入の用意をするために、この場合、プラグ部分は、引抜きタブに対する牽
引力により、空気入口ダクトおよび出口ダクトから取り除かれる。
【0019】
薬剤チャンバを閉鎖する、さらなる、ただし技術的により複雑な代替形態では、ハウジ
ング部において、薬剤チャンバの両側に空気入口ダクトおよび出口ダクトに対して横切る
方向にまたは直角に、横方向に境界が定められた閉塞ダクトが形成され、前記閉塞ダクト
は、結果としてハウジング部に対して安定性を向上させ、カバー要素の対応して形成され
た隆起部(fold)が、空気入口ダクトおよび出口ダクトを封止して閉鎖するように、
前記閉塞ダクトに受け入れられる。薬剤チャンバを開放するように空気入口ダクトおよび
出口ダクトを空いた状態にするために、これらの隆起部を閉塞ダクトから持ち上げること
ができるように、粉末吸入器は持ち上げ要素を有し、それに対して、この場合も本発明に
より種々の実施形態が提供される。
【0020】
本発明による粉末吸入器の持上げ要素は、吸入器ハウジングにおける、すなわちカバー
要素における少なくとも1つの所定のかつマークされた圧力、曲げまたは引張点とするこ
とができ、それにより、吸入器ハウジングの特定の点において圧力もしくは牽引力をかけ
るか、または曲げを加えることにより、閉塞ダクトから出るように隆起部が持上げられる
。
【0021】
それに対する代替形態として、持上げ要素としてプルテープを設けることができ、プル
テープは、空気入口ダクトおよび出口ダクトを通り、かつカバー要素の隆起部とハウジン
グ部との間において閉塞ダクトを横断して延在する。このプルテープは、両端に把持部分
を有することができ、それにより、隆起部を持ち上げるためにプルテープの両端が同時に
引っ張られる。より容易な取扱いのための好ましい代替形態として、プルテープは、一端
にのみ把持部分を有することができ、他端は、吸入器ハウジングの係留構造に係留される
。この係留構造は、空気入口ダクトまたは出口ダクトの空気偏向または案内構造と同時に
構成することができる。
【0022】
さらに、上述したプラグ要素は、薬剤チャンバに隣接するダクト部分から引き出されて
いる間に隆起部を持ち上げるという点で、持上げ要素として使用することも可能である。
【0023】
最後に、薬剤チャンバ内に遊動するように配置される構造も考えられ、好ましくは、解
凝集体である前記構造が隆起部を持ち上げるために使用されることが可能である。
【0024】
ハウジング部に対して単一タイプのプラスチック熱成形フィルム、カバーに対してアル
ミニウム箔またはプラスチックフィルムを有する、好ましい費用効率の高い実施形態では
、本発明による粉末吸入器は、1回のみ使用されるように設計されているが、構成要素は
、再利用に対して非常に適している。さらに、製造に使用されるプラスチックは、再利用
に対して供給されない場合、好ましくは生分解性であり得ることも可能である。
【0025】
より高い衛生条件を満たすために、使用されるプラスチックは、防腐性および/または
抗微生物性(antimicrobial)プラスチックであり得る。それに対する代替
形態として、少なくとも空気入口ダクト、薬剤チャンバおよび出口ダクト、ならびにマウ
スピースまたはノーズピースに対して、防腐性および/または抗微生物性コーティングを
与えることができる。
【0026】
偽造に対して保護するために、プラスチックはまた、完成した粉末吸入器において確認
することができるマーカも含むことができる。
【0027】
最後に、たとえば、2種以上の活性成分が同時に投与されるように意図されている場合
、薬剤チャンバを少なくとも1つの仕切り壁によって少なくとも2つのサブチャンバに細
分することができ、または2つ以上の薬剤チャンバをハウジング部に形成することができ
、それらは、それぞれの場合に空気入口ダクトおよび出口ダクトを備えて互いに並んで並
列に配置されるか、または互いに直列に配置され、その場合、空気入口ダクトは第1薬剤
チャンバに通じ、および出口ダクトは最後の薬剤チャンバから延在し、かつ薬剤チャンバ
はさらなるダクトを介して一緒に接続される。しかしながら、収容された粉末の完全な解
凝集および完全に空にすること、ならびに均一な分散、したがって均一な吸入を達成する
ために、いくつかの薬剤チャンバ間でより多い1回分の投与量を分割することが、流れに
関してより有利である可能性もある。
【0028】
したがって、本発明による単回投与粉末吸入器は、単一の薬剤チャンバに粉状薬剤の完
全な投与量を収容することができ、またはそれぞれの場合に2つ以上のサブチャンバまた
は並列もしくは直列の薬剤チャンバに部分的な投与量を収容することができ、前記部分的
な投与量は、使用時に同時に吸入される。
【0029】
サブチャンバがフィルム要素によって閉鎖されるか、またはいくつかのチャンバがいく
つかのフィルム要素によって閉鎖される場合、フィルム要素を開放するために、成形され
たカバー要素に対応するように穴あけ要素を備えることができる。換言すれば、薬剤チャ
ンバが、1つまたは複数の仕切り壁によってサブチャンバに細分される場合、圧力要素に
おいて各サブチャンバに対して少なくとも1つの穴あけ要素が設けられ、それは、カバー
要素において薬剤チャンバに対向して形成され、それにより、圧力要素に圧力がかけられ
ると、各サブチャンバの上のフィルム要素が穿孔され、したがって、その中に存在する粉
状物質を放出することができる。いくつかの粉末チャンバを備えるハウジング部が設けら
れる場合、成形されたカバー要素に、それぞれの少なくとも1つの穴あけ要素を備える対
応する数の圧力要素が設けられる。
【0030】
本発明による単回投与粉末吸入器を製造する本発明による方法は、有利には、単一装置
で実施することができる。したがって、これは、フィルムを熱形成し、充填し、封止する
ブリスター機械である。本方法は、まず、プラスチックからのハウジング部の射出成形、
または好ましくは熱成形を提供し、そこで、薬剤チャンバは、粉状薬剤の投与量が充填さ
れる。ハウジング部の製造および/または充填と平行して、実施形態に応じて、単に広く
かつ実質的に平面のカバー要素の切断または打抜き加工等、分離方法によってフィルムか
ら、または射出成形もしくは好ましくは熱成形によってプラスチックから製造される。薬
剤チャンバがフィルム要素で閉鎖され、閉鎖タブが薬剤チャンバに封止されるかまたは接
着接合された後、ハウジング部にカバー要素が好ましくは同様に封止により、接着接合に
より、または溶接(たとえば、超音波溶接)により取り付けられる。カバー要素が取り付
けられる前に、閉鎖タブを引き抜くことによって薬剤チャンバが開放されるように設けら
れるフィルム要素で薬剤チャンバが閉鎖される場合、引抜きタブに至るテープ部分が折り
曲げられるかまたは折り返され、それにより、引抜きタブは、ハウジング部の開口部のう
ちの1つから突出する。フィルム要素に対する代替形態として、2つのプラグ要素により
、かつ/またはカバー要素の、閉塞ダクトに受け入れられる隆起部により、薬剤チャンバ
を任意選択的に閉鎖することも可能である。
【0031】
この単純な方法により、粉末吸入器の極めて費用効率の高い製造が可能になり、この方
法は、さらに、患者特定の実施形態および充填も経済的に可能であるように種々の変形形
態に迅速かつ容易に適合する。さらに、費用効率の高い製造を粉末の最適な放出と組み合
わせるこの粉末吸入器はまた、このため、第三世界の国々において販売または配布される
のにも適している。
【0032】
さらなる実施形態と、これらの実施形態および他の実施形態に関連する利点のうちのい
くつかとは、添付の図を参照して以下の詳細な説明から明確にかつよりよく理解可能であ
る。実質的に同一であるかまたは同様である対象またはその一部に対して同じ参照符号を
与えている場合がある。図は、単に本発明の一実施形態の概略的な実例である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による単回投与粉末吸入器のハウジング部の斜視図を示す。
【
図3】
図1のハウジング部を通る縦断面での図を示す。
【
図4】薬剤チャンバがフィルム要素によって閉鎖されている、
図1のハウジング部の斜視図を示す。
【
図5】カバー要素として平面(アルミニウム)箔で閉鎖されている、
図4のハウジング部を有する、本発明による粉末吸入器の斜視図を示す。
【
図6】
図5の本発明による粉末吸入器を通る縦断面での図を示す。
【
図7】鼻用に形成された出口を備えた、本発明による粉末吸入器の斜視図を示す。
【
図8】薬剤チャンバを閉鎖するために2つのプラグ要素が設けられている、ハウジング部の斜視図を示す。
【
図9】カバー要素として平面(アルミニウム)箔で閉鎖されている、
図8のハウジング部を有する、本発明による粉末吸入器の斜視図を示す。
【
図10】薬剤チャンバを閉鎖するために2つの閉塞ダクトが設けられ、薬剤チャンバを開放するためにプルテープが設けられている、ハウジング部の斜視図を示す。
【
図11】カバー要素として平面(アルミニウム)箔で閉鎖され、カバー要素の隆起部が閉塞ダクトに受け入れられる、
図10のハウジング部を有する、本発明による粉末吸入器の斜視図を示す。
【
図12】カバー要素に対する牽引力によって持上げられる、閉塞ダクト内のカバー要素の隆起部によって薬剤チャンバが閉鎖されている、本発明による粉末吸入器の概略側断面図を示す。
【
図13】カバー要素および曲げ要素に対する圧力によって持上げられる、閉塞ダクト内のカバー要素の隆起部によって薬剤チャンバが閉鎖されている、本発明による粉末吸入器の概略側断面図を示す。
【
図14】閉鎖タブを開放する穴あけ要素を備えた圧力要素を有する成形されたカバー要素を有する、本発明による粉末吸入器の縦断面での図を示す。
【
図15】圧力要素が、2つのサブチャンバの上の閉鎖タブを開放する2つの穴あけ要素を有する成形されたカバー要素を有する、本発明によるさらなる粉末吸入器の縦断面での図を示す。
【
図16】粉末吸入器が切り出される前に、カバー要素が取り付けられている4つの形成されたハウジング部を備えた熱成形フィルムの斜視図を示す。
【
図17】本発明による粉末吸入器を製造する製造装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による装置は、製造が単純でありかつ費用効率が高い粉末吸入器であって、2つ
のハウジング部、すなわち、互いに接合されて吸入器ハウジングを形成する、成形された
ハウジング部とカバー要素とからなる、粉末吸入器に関する。本発明による粉末吸入器は
、ブリスターパックのように具現化することができ、そこでは、ハウジング部もしくはカ
バー要素または両方は透明であり、したがって、粉末吸入器、特に薬剤チャンバが見える
ようにする。吸入器は、少なくとも部分的に透明であるように構成されているため、内容
物を確認するかまたは使用時に内容物を完全に空にすることができる。さらに、使用中の
乱流を監視することができる。
【0035】
ハウジング部は、空気入口ダクト、薬剤チャンバおよび出口ダクトを提供するように形
成され、有利には、プラスチック熱成形フィルムによって費用効率高く製造することがで
き、または任意選択的に、プラスチック射出成形プロセスで製造することも可能である。
【0036】
空気入口ダクト、薬剤チャンバおよび出口ダクトの境界を定めるために、アルミニウム
箔、複合フィルムまたは(透明)プラスチックフィルムであり得る医薬的に適合したフィ
ルムを、カバー要素として、たとえば、封止、溶接または接着接合によりハウジング部に
単に取り付けることができる。
【0037】
図1~
図3は、本発明による粉末吸入器を製造するために使用されるハウジング部1の
例を示す。ここでは、熱成形フィルムから成形されるハウジング部1は、半じょうご型(
half-funnel-shaped)空気入口ダクト12を有し、それは、空気入口
開口部12’から薬剤チャンバ11まで延在し、薬剤チャンバ11は、カップ状に形成さ
れている。空気入口から離れる側では、出口ダクト13が、薬剤チャンバ11から出口開
口部13’まで延在し、出口開口部13’は、この場合、口内に容易に受け入れられ得る
ように半楕円形断面を有する。
【0038】
空気入口ダクト12には、使用中に引き込まれる空気流に対して、薬剤チャンバ11に
達する前に渦を巻かせるために、複数の空気案内構造15が形成されている。薬剤チャン
バ11の基部には、渦巻いた粉末の解凝集を促進する乱流誘導構造16が形成されている
。薬剤チャンバ11に隣接する出口ダクト13の幅が広がることにより、スペーサ効果が
確保され、そこでは、じょうご型入口によってあらかじめ上昇する流速が低下するだけで
なく、同伴された粉末が均一に分散される。この効果は、ハウジング部1に対して、出口
領域における安定性をさらに向上させる案内構造17によって補助される。
【0039】
好ましくは熱成形フィルムによって行われるが、任意選択的に射出成形によっても行う
ことができるハウジング部1の製造に続き、薬剤チャンバ11に粉末の投与量(任意選択
的に、遊動する解凝集体)が充填され、その後に閉鎖される。
【0040】
薬剤チャンバ11は、種々の方法で閉鎖することができる。
【0041】
図4~
図6は、薬剤チャンバ11を閉鎖するために、フィルム要素3が使用される実施
形態を示す。フィルム要素3は、閉鎖タブ30を有し、それは、薬剤チャンバ11を閉鎖
するような寸法になっている。この閉鎖タブ30から、テープ部分31が引抜きタブ32
まで延在し、引抜きタブ32は、ここでは、確実な把持のためにリブ加工されている。こ
の場合、テープ部分31は、閉鎖タブ30の上で折り重ねられ、引抜きタブ32は、折り
重ねられた端部から遠い側でハウジング部1から突出する。図示する例では、テープ部分
31は、閉鎖タブ30の内側で偏向し、引抜きタブ32とともに出口開口部13’から突
出する。
【0042】
概して、こうしたフィルム要素3を逆に配置することも可能であることも考えられ、そ
れにより、引抜きタブ32は入口開口部12’から突出するが、薬剤チャンバ11におけ
る出口ダクト13の断面が好ましくは入口ダクト12の断面より大きいため、出口ダクト
13は、閉鎖タブ30を引き抜くのに適している。閉鎖タブ30は、薬剤チャンバ11の
壁部分または一周する肩部に封止し、溶接し、または接着接合することができ、そこでは
、接続は、漏れないように、ただし解除可能なようにも具現化され、それにより、引抜き
タブ32に対する牽引力により、閉鎖タブ30を破ることなく取り外すことができる。
【0043】
図1~
図6に示す例は、本発明による粉末吸入器の好ましい変形形態を表し、それは、
ブリスター型構造であるため、単一機械で極めて単純にかつ費用効率高く製造することが
でき、さらに、使用者が容易にかつ直観的に操作することができる。
【0044】
図7は、本発明による粉末吸入器を、口内に受け入れられるような形状である出口以外
でも形成し得ることを例として示す。(点線によって示す)(概念的な)出口開口部13
’に、鼻用に形成された出口部片14を付加することができ、それは、ハウジング部から
離れる方向に一体的に延在することができ、または出口開口部13’の上に配置すること
ができる。
【0045】
図8および
図9は、本発明による粉末吸入器の変形形態を示し、そこでは、カバー要素
2が空気入口ダクト12、薬剤チャンバ11および出口ダクト13を覆う前に、薬剤チャ
ンバ11は2つのプラグ要素4によって閉鎖される。プラグ要素4は、各々、プラグ部分
40を有し、そこから、テープ部分41が引抜きタブ42まで延在している。各プラグ要
素4のプラグ部分40は、薬剤チャンバ11に隣接する、空気入口ダクト12の部分12
0および出口ダクト13の部分130に配置され、この部分120、130を閉鎖するよ
うな寸法および形状である。プラグ部分40の材料は、漏れ止め閉鎖を可能にするように
選択されるが、これは、引抜きタブ42に対する牽引力によって打ち勝つことができる。
別法として、プラグ部分40とダクト部分120、130との間に接着剤または封止手段
を導入することができ、前記接着剤または封止手段により、引抜きタブ42に対する牽引
時にプラグ部分40を破壊することなしに除去することができる。
【0046】
図10~
図13に、薬剤チャンバの閉鎖に対するさらなる代替形態を示す。
図10およ
び
図11は、ハウジング部1を示し、そこでは、薬剤チャンバ11に隣接する空気入口ダ
クト12の部分120および出口ダクト13の部分130において、薬剤チャンバ11に
対して横切る方向に延在する閉塞ダクト18が形成されている。実質的に平面のカバー要
素2は、これらの閉塞ダクト18に対応する箇所において、一体的に形成された隆起部2
1を有し、それらは、閉塞ダクト18を充填し、したがって、空気入口ダクト12の部分
120および出口ダクト13の部分130を閉塞し、それにより薬剤チャンバ11を閉鎖
する。このように閉鎖された薬剤チャンバ11を開放し、空気入口ダクト12および出口
ダクト13を空けるために、隆起部21は、閉塞ダクト18から出るように持ち上げられ
、その目的で、本発明による種々の変形形態が提供される。
【0047】
この目的で、
図10および
図11に示す例では、プルテープ5が設けられ、そのテープ
部分51は、出口ダクト13から、閉塞ダクト18および薬剤チャンバ11を横断して、
空気入口ダクト12まで延在する。プルテープ5は、端部分50によって出口ダクト13
の係留構造17’に締結され、前記係留構造17’は、同時に空気案内構造としての役割
を果たす。プルテープ5の他端では、空気入口ダクト12からタブ52が突出している。
テープ部分51は、カバー要素2が配置されるときに、隆起部21によって閉塞ダクト1
8に押し込まれる。空気入口ダクト12および出口ダクト13を空けるために、タブ52
において、係留構造17’に保持されたテープ部分51に対して牽引力がかけられ、それ
により、テープ部分51は、閉塞ダクト18から出るように隆起部21を持ち上げること
ができる。図示するもの以外で、こうしたプルテープを、2つのタブを用いて非係留式に
具現化することも可能であり、隆起部21を持ち上げ、空気入口ダクト12および出口ダ
クト13を空けるために、2つのタブが引っ張られる。
【0048】
それに対する代替形態として、
図12に示すように、二重矢印aによって示すように、
隆起部を持ち上げるために、カバー要素2に対して牽引力Zをかけることができる。しか
しながら、隆起部を持ち上げるためかつ/またはこの目的で提供される点においてハウジ
ングを曲げるため、特定の点でカバー要素2に対して圧力Dをかけることも可能である。
【0049】
空気入口ダクト12および出口ダクト13を通る流路を空け、薬剤チャンバ11を開放
するさらなる可能性は、隆起部を持ち上げるために(上述したような)プラグ要素を取り
外すことを含む。さらに、閉塞ダクト内の隆起部を持ち上げるために、薬剤チャンバ内に
遊動するように配置され、したがって自由に移動可能であり、使用時に解凝集体としても
作用する、好ましくは球形の構造を持ち上げることによって使用することができる。
【0050】
概して、本発明による粉末吸入器は、図示する例示的な実施形態と異なる場合があり、
したがって、本発明は、空気乱流誘導構造、偏向構造および案内構造15、16、17お
よび17’の図に示す数および形状に限定されず、空気力学、抵抗および/または解凝集
を改善するために、薬剤チャンバ11および出口13における、空気入口ダクト12に形
成される本発明による単回投与粉末吸入器の内壁の構造は、内腔内流れ要素として、図示
する形状と異なる場合があり、たとえば、シケイン、ブレード、らせん、渦巻線またはメ
アンダーとして形成することができる。
【0051】
さらに、薬剤チャンバを通る流れプロファイルは、薬剤チャンバの入口および出口にお
けるサイズ、形状および縁部設計(鋭い、傾斜したまたは丸い)に関してボアの輪郭を変
化させることにより、抵抗、貫通流および粉末に対して空気力学的に調整することができ
る。したがって、粉末吸入器、特に薬剤チャンバを通る速度および進路に関して、種々の
要素が空気流に影響を与え、これらの要素は、完全に空にすることならびに空気流におけ
る解凝集および分散に影響を与え、たとえば、空気入口において断面輪郭が狭くなり、出
口において断面が広くなり、流路は、好ましくは、薬剤チャンバの出口側より入口側の方
が狭い。
【0052】
図14および
図15は、本発明による粉末吸入器を示し、そこでは、薬剤チャンバ11
を備えるハウジング部1のみでなくカバー要素2も成形されている。この実施形態では、
空気入口ダクト12および出口ダクト13を形成するためのハウジング部1およびカバー
要素2におけるそれぞれの部分は、開放角度に関して、かつ形成された空気乱流誘導構造
、偏向構造および案内構造15、17において互いに対応する。カバー要素2は、入口ダ
クト12と出口ダクト13との間に位置する部分においてのみ、ハウジング部1と異なり
、カバー要素2は、薬剤チャンバ11の代わりに、弾性圧力要素22として形成された領
域を有し、それは、
図14では、薬剤チャンバ11の方向において内向きに向けられた中
心穴あけ要素23を有し、
図15では、2つの穴あけ要素23を有し、前記2つの穴あけ
要素23は、仕切り壁11bによって薬剤チャンバ11内に形成される2つのサブチャン
バ11aとそれぞれ対向して位置している。
【0053】
圧力要素22は、同心円壁構造によって形成され、それらは、この点でプラスチックフ
ィルムの弾性変形を可能にし、それにより、内向きに一体的に形成された穴あけ要素23
を、閉鎖タブ30に穴をあけるために、圧力をかけることによって薬剤チャンバ11の方
向に移動させることができ、穴あけ要素23は、圧力が解除されると、その開始位置に戻
る。穴あけ要素は、1つまたは複数の針から構成するか、またはピラミッド状スパイク等
、角張った構造によって形成することができる。開放の目的で、圧力が両側に、すなわち
、圧力要素22に対する圧力および薬剤チャンバ11に対する逆圧がかけられる場合、た
とえばアルミニウム箔から構成することができる閉鎖タブ30は、有効に強制的に開放さ
れ、それは、閉鎖タブ30が薬剤チャンバ11に対する逆圧によって張力下に置かれ、穴
あけ要素23に対して曲がることができないためである。
【0054】
本発明による単回投与粉末吸入器のハウジング部およびカバー部は、熱によって互いに
溶接することができるが、接着接合、締付接続(一方のハウジング部の周縁部が他方のハ
ウジング部の周縁部の周囲で曲げられる)、ラッチ接続または縫合接続も可能性がある。
【0055】
本発明による粉末吸入器は、単回使用であるように提供されるため、薬剤チャンバが開
放され、粉末の投与量が吸入された後、吸入器ハウジングは再度使用されることはできず
、これは、誤用から保護する役割も果たす。しかしながら、すぐれた再生利用可能性また
は生分解性に加えて、環境保護の観点から問題点とみなされる包装廃棄物の量の増加も多
回投与吸入器の使用の低減により総合的に判断され、多回投与吸入器内には、通常、残量
の粉状薬剤が収容されているため、多回投与吸入器の廃棄はより複雑である。
【0056】
本発明による単回使用粉末吸入器により、さまざまな適応に対して、たとえば、数回の
使用のみが必要である場合、または必要に応じて、たとえば片頭痛、痛み、免疫調節剤、
バイオ製剤、もしくはCNS物質の投与の場合、経済的な使用が可能になる。本発明によ
る粉末吸入器は衛生的であり、誤用のための高い空気湿度または汚損等、望ましくない影
響が大幅に防止される。
【0057】
費用効率の高い製造のために、本発明による粉末吸入器はまた、第三世界および危険地
域における使用にも適している。
【0058】
実際には、本発明による粉末吸入器は、患者特定の薬剤パックを経済的に正当であるよ
うに具現化することができるように合理的な価格で製造される。したがって、粉状薬剤(
または複数の薬剤)の組成物および投与量を、各患者に適応した所定方法で、本発明によ
る粉末吸入器に充填することができる。
【0059】
図1~
図14に関連して、粉末の投与量が存在する単一薬剤チャンバを有する、本発明
による単回投与粉末吸入器の例示的な実施形態を示す。
図15は、薬剤チャンバ11が、
この場合にはハウジング部1と一体的に形成された仕切り壁11bによって2つのサブチ
ャンバ11aに細分され、それにより、互いに別個に保管する必要がある2つの異なる粉
状物質または薬剤が、吸入時に、閉鎖タブが開放された後にのみ一緒になることができる
、本発明の変形形態を示す。
【0060】
しかしながら、本発明により、空気入口と出口との間の流路において並列にまたは直列
に配置される2つ以上の薬剤チャンバがハウジング部内に形成されることも考えられる。
ここでは、並列とは、それぞれの場合に少なくとも1つの空気入口ダクトが(共通の空気
入口開口部または別個の空気入口開口部から)薬剤チャンバの各々に通じ、それぞれの場
合に少なくとも1つの出口ダクトが、各薬剤チャンバから出て、マウスピースまたは鼻ノ
ズルとして形成された出口に通じることを意味する。薬剤チャンバが直列に配置される場
合、空気入口ダクトは、第1薬剤チャンバと同程度に延在し、そこから、さらなるダクト
が次の薬剤チャンバまで延在し、出口ダクトは、最後の薬剤チャンバから出口開口部まで
延在する。薬剤チャンバの各々において、粉末の投与量が存在することができ、これらは
、使用時にのみ互いに接触する異なる活性剤であり得る。したがって、こうした粉末吸入
器は、原則的に、1回分の投与量を超える粉末を収容するが、それにも関わらず、この粉
末吸入器は、本発明によれば、「単回投与」粉末吸入器であるものとして理解されるべき
であり、それは、この粉末の複数回分の投与量が1回の使用で結合して吸入され、その後
、粉末吸入器を使用することができなくなるためである。
【0061】
使い捨て品として設計される、本発明による粉末吸入器を製造するために使用されるプ
ラスチックは、好ましくは、生分解性プラスチックであり得る。
【0062】
本発明による各粉末吸入器に対して、少なくとも部分的に、防腐性または抗菌性(an
tibacterial)および/もしくは抗微生物性コーティングを与えることができ
る。したがって、吸入装置が使用されるときにいかなる微生物も吸入されないために、特
に、空気入口ダクト、薬剤チャンバおよび空気出口チャンバをコーティングすることがで
きる。しかしながら、より容易な適用のために、吸入装置全体にコーティングすることも
可能である。こうしたコーティングの例は、EndingenのRilit社製のPer
lazid(登録商標)である。別法として、防腐性または抗菌性および/もしくは抗微
生物性プラスチックを使用して、吸入装置を製造することができる。
【0063】
本発明による粉末吸入器は、たとえば外装して販売することも可能であり、それにより
、粉末吸入器が清潔でありまたは滅菌されており、したがって直ちに使用し得ることが確
実になる。別法として、カバー要素がその両端に部分的な重なりを有することも考えられ
る可能性があり、それにより、出口を(任意選択的に空気入口も)ヨーグルトのカップの
蓋のように閉鎖することができる。したがって、部分的な重なりを、たとえば形成された
タブを用いて開口部から引きはがすことができる。フィルムもそれによりハウジング部か
ら引きはがすことができるのを阻止するために、部分的な重なりの接続箇所に所定の破断
点、たとえば穿孔を設けることができる。
【0064】
さらに、本発明による粉末吸入器を製造するために使用されるプラスチックは、識別す
ることができるようにマーカを有することができ、それにより、マーカを含まない偽装品
を識別することができる。
【0065】
図16は、プラスチック熱成形フィルム10を示し、そこでは、各々が入口ダクト12
および出口ダクト13ならびに薬剤チャンバ11を備えた4つのハウジング部1が形成さ
れている。より明確にするために、ハウジング部の要素のすべてに参照符号が与えられて
いるとは限らない。ハウジング部1の薬剤チャンバ11は、フィルム要素3の閉鎖タブ3
0によって充填されかつ閉鎖される。さらに、各ハウジング部1に広いカバー要素2が取
り付けられていることが分かり、前記カバー要素2は、薬剤チャンバ11と反対側の穴あ
け要素23とともに圧力要素22を有する。それぞれの粉末吸入器を完成するために、こ
こで必要なものは、対応する充填されたブリスター構造体を分離することのみである。
【0066】
したがって、従来の粉末吸入器とは対照的に、粉末を吸入することができる前に吸入器
ハウジング内に挿入されなければならない、カプセルまたはブリスターに、粉末の投与量
は提供されない。本発明による粉末吸入器は、いわばブリスター自体によって形成され、
それは、吸入される粉末を収容する。したがって、吸入器ハウジング内への粉末収容カプ
セルの挿入を省くことができる。
【0067】
図17は、本発明による粉末吸入器用の例示的な製造装置100のモジュールを要約す
る。当然ながら、本発明による方法ステップを実施する他の製造装置が同様に考えられる
。第1モジュールM1では、ハウジング部1の成形が行われる。例示的な方法の変形形態
では、連続プロセスの場合、予熱および成形ステーションへの前方の搬送の前に、そこで
ロール状の製品から熱形成フィルムをスプライス加工してエンドレスフィルムを形成する
ことができる。それに対する代替形態として、半連続的プロセスまたは断続的プロセスも
考えられ、そこでは、たとえば、スプライス加工を省くことができる。第2モジュールM
2は充填ステーションであり、そこでは、成形された薬剤チャンバが所定タイプまたは混
合物および量の粉末で充填される。適切な場合、特定の患者に対して適応する粉末組成物
および投与量が充填されることも可能である。第3モジュールM3では、薬剤チャンバは
、閉鎖フィルムによって封止されるかまたはプラグ要素で閉鎖され、カバー要素が連続プ
ロセスで取り付けられる。成形されたカバー要素の場合、これらは、同様に予熱の前にモ
ジュール1において、ハウジング部に対応する方法で熱成形フィルムから成形し、ハウジ
ング部とともに熱成形フィルムの上に配置し、封止することができる。最終モジュールM
4では、さらなる封止ステーションが続くことができ、その後、熱成形フィルムから作製
された粉末吸入器が分離され、好ましくは打抜き加工され、完成したブリスターとして排
出される。
【符号の説明】
【0068】
1 ハウジング部
10 熱成形フィルム
11 薬剤チャンバ
11a、11b サブチャンバ、仕切り壁
12、120 空気入口ダクト、薬剤チャンバに隣接する部分
12’ 空気入口開口部
13、130 出口ダクト、薬剤チャンバに隣接する部分
13’ 出口開口部
14 ノーズピース
15、16、17 空気乱流誘導、偏向、案内構造
17’ 係留装置
18 閉塞ダクト
2 カバー要素
21 隆起部
22 圧力要素
23 穴あけ要素
3 フィルム要素
30 閉鎖タブ
31 テープ部分
32 引抜きタブ
4 プラグ要素
40 プラグ部分
41 テープ部分
42 引抜きタブ
5 プルテープ
50 端部分
51 テープ部分
52 プルタブ
100 製造装置
Z 牽引力
D 圧力
KD 点