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  • 特許-蛍光波長の調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】蛍光波長の調整方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20220729BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220729BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220729BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20220729BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220729BHJP
   C09K 11/65 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C09K11/08 A
G02B5/20
C09K11/06
C01B32/158
H01L33/50
C09K11/65
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018086389
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189796
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(72)【発明者】
【氏名】香取 重尊
(72)【発明者】
【氏名】井川 拓人
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110953(WO,A1)
【文献】特開2012-238370(JP,A)
【文献】特開2009-031114(JP,A)
【文献】特開平09-106888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
G02B 5/20
C01B 32/158
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体の前駆体から形成される蛍光体膜の蛍光波長を調整する方法であって、前記前駆体が有機色素系材料を含み、前記蛍光体膜の蛍光波長の調整を、前記前駆体および有機溶媒を含む原料溶液を霧化し、得られたミストにキャリアガスを供給し、該キャリアガスでもって前記ミストを基体まで搬送し、ついで前記ミスト前記基体上で反応させて前記蛍光体膜を成膜する際の溶媒により行うことを特徴とする蛍光波長の調整方法。
【請求項2】
前記溶媒が、酸素原子含有有機溶媒を含む請求項1に記載の蛍光波長の調整方法。
【請求項3】
前記蛍光体の前駆体が、カーボンナノチューブを含む請求項1または2のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
【請求項4】
前記霧化を、超音波振動を用いて行う請求項1~のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
【請求項5】
前記蛍光体膜の蛍光波長を300nm~500nmの範囲で調整する請求項1~のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置等に有用な蛍光体膜の蛍光波長を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子のみで構成されるカーボンナノチューブは、電気的特性や熱伝導性、機械的性質に優れた材料である。また、カーボンナノチューブは、非常に軽量、且つ、極めて強靱であり、また、優れた弾性・復元性を有する材料である。このように優れた性質を有するカーボンナノチューブは、工業材料として、極めて魅力的、且つ重要な物質である。
【0003】
特許文献1には、カーボンナノチューブ集合体の分散液とエラストマーであるフッ素ゴムとを混合させたカーボンナノチューブ分散液をシリコン基板上にスプレー塗布した後、加熱乾燥によって溶媒を除去することにより、シリコン基板上にカーボンナノチューブ複合物層を形成することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、カーボンナノチューブを均一に分散させてスプレー塗布することが困難であり、また、カーボンナノチューブ複合物層を得た後、さらに5時間以上加熱乾燥を施す必要があるなど、工程が複雑且つ長時間であった。また、カーボンナノチューブが均一に分散されたカーボンナノチューブ複合物層を得ることが困難であり、また、所望の蛍光ピーク波長を得ることができないなど、複合物層の特性も十分に満足できるものではなかった。
【0004】
特許文献2では、単層カーボンナノチューブと発光性化合物との結合体をクロロホルム、ジクロロエタン、または二硫化炭素に溶解させた溶液が、500nm付近に発光ピークを有すること、この溶液を成形材料として用いて、薄膜に成形することにより、フィルム状の単層カーボンナノチューブ(SWNT)が得られることが記載されている。しかしながら、特許文献2においては、実際にフィルム状に成形したことは記載されておらず、また、単層カーボンナノチューブに発光性化合物を共有結合させて化学修飾しているため、溶液の状態においても光学特性が安定せず、所望の蛍光ピーク波長が得られない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-208727号公報
【文献】特開2005-036112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蛍光体膜の蛍光ピーク波長を容易に調整することができる新規な蛍光波長の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、蛍光体の前駆体を用いて形成される蛍光体膜の蛍光波長を調整する方法において、前記蛍光体膜の蛍光波長の調整を、前記前駆体および溶媒を含む原料溶液を霧化し、得られたミストを基体上で反応させて前記蛍光体膜を成膜する際の溶媒により行うと、蛍光体の種類を変えなくても、得られる蛍光体膜の蛍光ピーク波長を容易に調整することができることを知見し、このような蛍光波長の調整方法が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 蛍光体の前駆体から形成される蛍光体膜の蛍光波長を調整する方法であって、前記蛍光体膜の蛍光波長の調整を、前記前駆体および溶媒を含む原料溶液を霧化し、得られたミストを基体上で反応させて前記蛍光体膜を成膜する際の溶媒により行うことを特徴とする蛍光波長の調整方法。
[2] 前記溶媒が、有機溶媒を含む前記[1]記載の蛍光波長の調整方法。
[3] 前記溶媒が、酸素原子含有有機溶媒を含む前記[1]または[2]に記載の蛍光波長の調整方法。
[4] 前記蛍光体の前駆体が、有機蛍光体を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
[5] 前記蛍光体の前駆体が、カーボンナノチューブを含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
[6] 前記霧化を、超音波振動を用いて行う前記[1]~[5]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
[7] 前記霧化の後、前記ミストまたは前記液滴にキャリアガスを供給し、該キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を前記基体まで搬送し、ついで、前記反応を行う前記[1]~[6]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
[8] 前記反応が、熱反応である前記[1]~[7]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
[9] 前記蛍光体膜の蛍光波長を300nm~500nmの範囲で調整する前記[1]~[8]のいずれかに記載の蛍光波長の調整方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施態様にかかる蛍光波長の調整方法によれば、蛍光体膜の蛍光ピーク波長を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例において用いた成膜装置の概略構成図である。
図2】実施例において得られたカーボンナノチューブ含有膜の蛍光スペクトルの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施態様にかかる蛍光波長の調整方法は、蛍光体の前駆体から形成される蛍光体膜の蛍光波長を調整する方法であって、前記蛍光体膜の蛍光波長の調整を、前記前駆体および溶媒を含む原料溶液を霧化し(霧化工程)、得られたミストを基体上で反応させて前記蛍光体膜を成膜する(成膜工程)際の溶媒により行うことを特長とする。
【0012】
(霧化工程)
霧化工程は、前記原料溶液を霧化してミストを発生させる。なお、前記霧化には、前記原料溶液を液滴化することも含まれる。霧化手段は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明の実施態様においては、超音波を用いる霧化手段であるのが好ましい。前記ミストは、初速度がゼロで、空中に浮遊するものが好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。なお、前記ミストには、液滴も含まれる。ミストの液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
【0013】
(原料溶液)
原料溶液は、蛍光体の前駆体と溶媒とを少なくとも含んでおり、霧化が可能であれば特に限定されず、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよい。また、前記原料溶液は、無機材料および有機材料の両方の材料を含んでいてもよい。
【0014】
前記蛍光体の前駆体は、特に限定されず、公知の蛍光体の前駆体であってよく、蛍光体は、無機蛍光体であってもよく、有機蛍光体であってもよい。前記無機蛍光体としては、例えば、YAG:Ce、CaScSi12:Ce、TAG:Ceなどのガーネット構造をもつ蛍光体、(Ca,Ba,Sr)SiO:Euなどの珪酸系蛍光体、 ZnS:Cu,Al、CaGa:Eu、SrGa:Eu、BaGa:Eu、(Ca,Sr,Ba)(Al,Ga,In):Euなどの硫化物蛍光体、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、(Sr,Ba)Si:Eu、(Ca,Ba)Si:Euなどの窒化物系、酸窒化物系の蛍光体を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0015】
前記有機蛍光体としては、例えば、色素系、金属錯体系、もしくは高分子系のものを用いることができる。色素系のものとしては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ-ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、フラーレン、またはカーボンナノチューブ等を挙げることができる。金属錯体系のものとしては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、もしくはキノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。高分子系のものとしては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、もしくはポリビニルカルバゾール誘導体、または前記の色素系のもの、もしくは金属錯体系のものを高分子化したもの等を挙げることができる。
【0016】
本発明においては、前記蛍光体が有機蛍光体であるのが、より良好に蛍光波長の調整を行うことができるため、好ましく、色素系の有機蛍光体であるのがより好ましく、カーボンナノチューブであるのが最も好ましい。前記カーボンナノチューブは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブであってもよいし、多層カーボンナノチューブであってもよい。本発明の実施態様においては、前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであるのが好ましい。前記カーボンナノチューブの製法としては、特に限定されず、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法または化学気相成長法等が挙げられる。また、前記カーボンナノチューブは、化学修飾されているものであってもよいが、本発明の実施態様においては、化学修飾されていない、未修飾のものであるのが好ましい。本発明の成膜方法によれば、未修飾のカーボンナノチューブであっても、簡単且つ容易に、前記蛍光体膜を得ることができる。また、前記原料溶液中の前記蛍光体の前駆体の含有量は、特に限定されないが、本発明の実施態様においては、0.01g/L~1.0g/Lであるのが好ましく、0.1g/L~1.0g/Lであるのがより好ましい。
【0017】
前記溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、無機溶媒であってもよいし、有機溶媒であってもよい。通常、ミストデポジション法で成膜する場合には溶媒として水を用いるが、本発明の実施態様においては、前記溶媒が、有機溶媒を含むのが、蛍光波長の制御性がより良好なものとなるので、好ましく、有機溶媒であるのが、より好ましく、酸素原子含有有機溶媒を含むのがさらにより好ましく、酸素原子含有有機溶媒であるのが最も好ましい。本発明の実施態様においては、所定の溶媒を用いて、ミストデポジション法によって成膜することにより、得られる蛍光体膜の蛍光ピーク波長を容易に調整することができる。前記酸素原子含有有機溶媒は、溶媒として用いることができ、ヘテロ原子または置換基の中に酸素原子を含んでいるものであれば、特に限定されない。本発明の実施態様においては、前記溶媒が、下記式(1)で表される溶媒であるのが、より超音波霧化に適した前記原料溶液を得ることができ、さらに、得られる蛍光体膜の可視領域の蛍光特性をより良好に発現することができるため、好ましく、下記式(2)で表される溶媒であるのがより好ましい。
【0018】
【化3】
(式中、RおよびRは、 それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を表し、RおよびRが結合して環を形成してもよい。)
【0019】
【化4】
(式中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を表し、R、RおよびRから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。)
【0020】
「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などが挙げられる。
【0021】
本発明における「置換基」としては、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、-OR1a(R1aは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。)、-SR1b(R1bは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。)、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基、ニトロ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、置換シリル基、水酸基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシチオカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシチオカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換ホスフィノ基、アミノスルホニル基、アルコキシスルホニル基又はオキソ基等が挙げられる。
【0022】
「炭化水素基」としては、炭化水素基及び置換炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基又はアラルキル基等が挙げられる。
【0023】
アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、tert-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、1-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルペンタン-3-イル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等が挙げられる。アルキル基は、中でも炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基がとりわけ好ましい。
【0024】
アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル、インデニル、ペンタレニル、ナフチル、アズレニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、アセナフチレニル、ビフェニレニル、ナフタセニル又はピレニル等が挙げられる。アリール基は、中でも炭素数6~14のアリール基がより好ましい。
【0025】
アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が好ましい。該アラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル、4-フェニルブチル、1-フェニルペンチルブチル、2-フェニルペンチルブチル、3-フェニルペンチルブチル、4-フェニルペンチルブチル、5-フェニルペンチルブチル、1-フェニルヘキシルブチル、2-フェニルヘキシルブチル、3-フェニルヘキシルブチル、4-フェニルヘキシルブチル、5-フェニルヘキシルブチル、6-フェニルヘキシルブチル、1-フェニルヘプチル、1-フェニルオクチル、1-フェニルノニル、1-フェニルデシル、1-フェニルウンデシル、1-フェニルドデシル、1-フェニルトリデシル又は1-フェニルテトラデシル等が挙げられる。アラルキル基は、中でも炭素数7~12のアラルキル基がより好ましい。
【0026】
「炭化水素基」が有していてもよい置換基は、前記した「置換基」などが挙げられる。置換炭化水素基の好ましい具体例としては、例えばトリフルオロメチル、メトキシメチル等の置換アルキル基、トリル(例えば4-メチルフェニル)、キシリル(例えば3,5-ジメチルフェニル)、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル又は4-メトキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル等の置換アリール基又は置換アラルキル基等が挙げられる。
【0027】
「置換基を有していてもよい複素環基」としては、複素環基及び置換複素環基が挙げられる。複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2~14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の例えば窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、3~8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル-2-オン基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、モルホリニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、チオラニル基又はスクシンイミジル基等が挙げられる。
【0028】
芳香族複素環基としては、例えば、炭素数2~15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等の異種原子を含んでいる、3~8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式の複素環基等が挙げられ、その具体例としては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ〔b〕チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、ブテリジニル、カルバゾリル、α-カルボリニル、β-カルボリニル、γ-カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、インドリジニル、ピロロ〔1,2-b〕ピリダジニル、ピラゾロ〔1,5-a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2-a〕ピリジル、イミダゾ〔1,5-a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2-b〕ピリダジニル、イミダゾ〔1,2-a〕ピリミジニル、1,2,4-トリアゾロ〔4,3-a〕ピリジル、1,2,4-トリアゾロ〔4,3-b〕ピリダジニル、ベンゾ〔1,2,5〕チアジアゾリル、ベンゾ〔1,2,5〕オキサジアゾリル又はフタルイミノ基等が挙げられる。
【0029】
「複素環基」が有していてもよい置換基としては、前記した「置換基」などが挙げられる。
【0030】
本発明の実施態様においては、前記式(1)において、RとRとが縮合して環を形成するのが好ましく、また、前記式(2)において、R、RおよびRから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成するのも好ましい。RとRとが縮合して形成される環、またはR、RおよびRから選ばれる任意の2つの基が結合して形成される環としては、例えば、1~3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を環の構成原子として含んでいてもよい5~20員環などが挙げられる。形成される好ましい環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、シクロテトラデカン環、シクロペンタデカン環、シクロヘキサデカン環又はシクロヘプタデカン環等の単環;ジヒドロナフタレン環、インデン環、インダン環、ジヒドロキノリン環又はジヒドロイソキノリン環等の縮合環などが挙げられ、これらの環は、通常、1または2個のヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子または硫黄原子等)を含んでいる。また、これらの環は、炭化水素基、複素環基、アルコキシ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。炭化水素基、複素環基の具体例としては、前記の炭化水素基、複素環基に記載したものなどが挙げられる。
【0031】
前記アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、5-メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0032】
置換アミノ基としては、アミノ基の1個または2個の水素原子が置換基で置換されたアミノ基などが挙げられる。置換アミノ基の置換基の具体例としては、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基等)、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。アルキル基で置換されたアミノ基、すなわちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N-メチル-N-イソプロピルアミノ基またはN-シクロヘキシルアミノ基のモノまたはジアルキルアミノ基などが挙げられる。アリール基で置換されたアミノ基、すなわちアリール基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N-フェニルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N-ナフチルアミノ器、N-メチル-N-フェニルアミノ基又はN-ナフチル-N-フェニルアミノ基等のモノまたはジアリールアミノ基などが挙げられる。アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N-ベンジルアミノ基又はN,N-ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。また、N-ベンジル-N-メチルアミノ基等のジ置換アミノ基が挙げられる。アシル基で置換されたアミノ基、即ちアシルアミノ基の具体例としては、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基又はベンゾイルアミノ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアルコキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基、n-ブトキシカルボニルアミノ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基又はヘキシルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアリールオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、アミノ基の1個の水素原子が前記したアリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基が挙げられ、その具体例として、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基又はナフチルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキルオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えば、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0033】
前記原料溶液には、上記した溶媒以外の溶媒が含まれていてもよい。このような溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、上記した溶媒以外の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒であってもよい。有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒であってもよい。前記有機溶媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類等があげられる。前記無機溶媒としては、水等が挙げられ、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられる。
【0034】
(成膜工程)
成膜工程では、前記基体上で前記ミストまたは前記液滴を反応させることによって、基体上に、成膜する。前記反応は、前記基体上で、前記ミストが反応さえすればそれでよく、物理的な反応であってもよいし、化学的な反応であってもよい。乾燥による反応であってもよいが、熱による熱反応が好ましく、熱反応は、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程では、前記熱反応を、通常、300℃以下で行う。なお、下限については、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、100℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、非酸素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのが好ましい。また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明の実施態様においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0035】
本発明の実施態様においては、前記霧化の後、前記ミストまたは前記液滴に、キャリアガスを供給し、該キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を前記基体まで搬送し、ついで、前記反応を行うのも、吹き付ける場合等とは全く異なり、得られる蛍光体膜の蛍光波長の制御性がさらにより優れたものとなり、より安定的に所望の蛍光波長を得ることができるので、好ましい。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0036】
(基体)
前記基体は、成膜する膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。多孔質構造体であってもよい。
【0037】
また、表面の一部または全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜および絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されているものも、前記基体として好適に用いることができる。前記金属膜の構成金属としては、例えば、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられる。半導体膜の構成材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムのような元素単体、周期表の第3族~第5族、第13族~第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等が挙げられる。また、前記導電性膜の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化インジウム(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化タングステン(WO)などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、導電性酸化物からなる導電性膜であるのが好ましく、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜であるのがより好ましい。前記絶縁性膜の構成材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸窒化シリコン(Si)などが挙げられる。
【0038】
なお、金属膜、半導体膜、導電性膜および絶縁性膜の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよい。このような形成手段としては、例えば、ミストCVD法、スパッタ法、CVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法、ALD(原子層堆積)法、塗布法(例えばディッピング、滴下、ドクターブレード、インクジェット、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布等)などが挙げられる。
【0039】
前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明の実施態様においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明の実施態様においては特に限定されないが、0.5μm~100mmが好ましく、1μm~10mmがより好ましい。前記基板は、板状であって、成膜する膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよい。本発明の実施態様においては、前記基板が、ガラス基板であるのが好ましい。
【0040】
また、本発明の実施態様においては、前記基体上に、直接、成膜してもよいし、バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層を介して成膜してもよい。バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明の実施態様においては、ミストCVD法が好ましい。
【0041】
上記のようにして成膜することで、簡単かつ容易に良質な蛍光体膜を得ることができ、得られる膜の蛍光ピーク波長も容易に調整することができる。また、得られる膜の膜厚も、成膜時間を調整することにより、容易に調整することができる。なお、調整する蛍光波長の範囲は、特に限定されず、用いる蛍光体の種類等によって適宜設定される。本発明においては、得られる蛍光体膜の蛍光波長を750nm以下の範囲で調整するのが好ましく、600nm以下の範囲で調整するのがより好ましく、300nm~500nmの範囲で調整するのが最も好ましい。
【0042】
前記蛍光体膜は、例えば、電子部品、コンピュータまたは医用機器など様々な用途に用いることができ、特に、発光装置に有用である。前記発光装置としては、例えば、表示装置または照明装置などが挙げられ、より具体的には、例えば屋内及び屋外用の照明等の照明装置、携帯電話、家庭用電化製品、屋外設置用ディスプレイ等の各種電子機器の画像表示装置などが挙げられる。いずれも公知の手段等を用いて、公知の光源等とともに好適に用いることができる。
【実施例
【0043】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いた成膜装置1を説明する。成膜装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給源2bと、キャリアガス(希釈)供給手段2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、ホットプレート8と、ホットプレート8上に載置された基板10と、ミスト発生源4から基板10近傍までをつなぐ供給管9とを備えている。
【0045】
2.原料溶液の作製
カーボンナノチューブを2-ピロリドンに混合し、これを原料溶液とした。なお、溶液中のカーボンナノチューブの濃度は0.485g/Lとした。
【0046】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aを、ミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、ガラス基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて基板10の温度を180℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3aおよび3bを開いて、キャリアガス供給源2aから供給されるキャリアガスの流量を4.0L/分に、キャリアガス(希釈)2bから供給されるキャリアガス(希釈)の流量を4.0L/分に調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0047】
4.蛍光体膜の成膜
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、容器5内の水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bにキャリガスを供給し、該キャリアガスによって、供給管9内を通って、ミスト4bを基板10へと搬送した後、大気圧下、180℃にて、基板10近傍でミストが熱反応して、基板10上に蛍光体膜が形成された。なお、成膜時間は、20分であった。
【0048】
5.評価
上記4.にて得られた蛍光体膜につき、蛍光光度計を用いて蛍光スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。図2から分かるように、得られた蛍光体膜は、467nmに蛍光ピーク波長を有していた。
【0049】
(実施例2)
溶媒として、2-ピロリドンに代えて、N-メチルピロリドン(NMP)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体を得た。得られた膜につき、実施例1と同様にして蛍光スペクトルを測定した。得られた膜は、382nmおよび468nmに蛍光ピーク波長を有していた。
【0050】
(実施例3)
溶媒として、2-ピロリドンに代えて、アセトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体膜を得た。得られた膜につき、実施例1と同様にして蛍光スペクトルを測定した。その結果、得られた膜は、373nmおよび469nmに蛍光ピーク波長を有していた。
【0051】
(実施例4)
溶媒として、2-ピロリドンに代えて、γ―ブチロラクトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体膜を得た。得られた膜につき、実施例1と同様にして蛍光スペクトルを測定した。その結果、得られた膜は、360nmに蛍光ピーク波長を有していた。
【0052】
(実施例5)
溶媒として、2-ピロリドンに代えて、メシチレンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体膜を得た。得られた膜につき、実施例1と同様にして蛍光スペクトルを測定した。その結果、得られた膜は、353nmおよび363nmに蛍光ピーク波長を有していた。
【0053】
実施例1~5から明らかなとおり、本発明の蛍光波長の調整方法によれば、蛍光体の種類を変えることなく、蛍光体膜の蛍光ピーク波長を容易に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の蛍光波長の調整方法は、良好な蛍光特性を有する蛍光体膜を簡単且つ容易に形成でき、さらに、容易に蛍光ピーク波長の調整が可能であるため、種々の幅広い分野に利用可能であり、蛍光体膜を用いる、電子部品や電子機器、発光装置等の種々の製造分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 成膜装置
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b ミスト
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板

図1
図2