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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】構造物用非破壊試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20220729BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20220729BHJP
   G01N 3/30 20060101ALI20220729BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N3/00 M
G01N3/30 N
G01N29/265
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018187660
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020056691
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596102528
【氏名又は名称】株式会社オンガエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 泰士
(72)【発明者】
【氏名】川合 良治
(72)【発明者】
【氏名】田川 謙一
(72)【発明者】
【氏名】松橋 貫次
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】栗原 陽一
(72)【発明者】
【氏名】歌川 紀之
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078685(JP,A)
【文献】特開2001-242036(JP,A)
【文献】特開平05-288722(JP,A)
【文献】特開2006-300809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-G01N 29/52
G01N 3/00-G01N 3/62
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物(C)について、複数の打撃ハンマ(3)を用いて非破壊試験する構造物用非破壊試験装置(1)であって、
前記構造物(C)内に弾性波を入力する打撃ハンマ(3)と、該打撃ハンマ(3)の打撃により該構造物(C)で伝播した弾性波を受信する受信装置(4)と、から成る打撃試験ユニット(2)と、
複数の前記打撃試験ユニット(2)の打撃ハンマ(3)について、それぞれ隣り合う列で位置をずらし、一定ピッチで並べられるように各打撃試験ユニット(2)が可動自在に取り付けられる可動支持部材(7)と、を備え、
前記打撃試験ユニット(2)は、1個の打撃ハンマ(3)と2個の受信装置(4)を三角形状に並べたものであり、2個の受信装置(4)は、前記構造物(C)の測定範囲の広狭に対応し得るように、受信装置(4)同士の間隔を可動自在に並べたものであり、
前記打撃ハンマ(3)と前記受信装置(4)が近接しているので、各打撃ハンマ(3)の打撃による前記構造物(C)内で伝播した弾性波を受信しやすく構成した、ことを特徴とする構造物用非破壊試験装置。
【請求項2】
前記2個の受信装置(4)は、前記構造物(C)内の変状部の深さに対応し得るように、前記打撃ハンマ(3)との間隔をそれぞれ可動自在に並べたものである、ことを特徴とする請求項の構造物用非破壊試験装置。
【請求項3】
前記打撃試験ユニット(2)が前記構造物(C)の表面に対する角度を個々に可変できるように、各打撃試験ユニット(2)が前記可動支持部材(7)に角度可変に取り付けられた、ことを特徴とする請求項の構造物用非破壊試験装置。
【請求項4】
構造物(C)について、複数の打撃ハンマ(3)を用いて非破壊試験する構造物用非破壊試験装置(41)であって、
前記構造物(C)内に弾性波を入力する打撃ハンマ(3)と、
該打撃ハンマ(3)の打撃により該構造物(C)で伝播した弾性波を受信する受信装置(4)と、
複数の前記打撃ハンマ(3)と前記受信装置(4)について、それぞれ間隔を調節できるように各打撃ハンマ(3)と受信装置(4)が取り付けられる装置支持材(42)と、を備え、
非破壊試験の対象物に応じて、前記構造物(C)を詳細に点検するときは打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を狭めて配置し、広範囲に点検するときは打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を広げられるように配置し得るように構成した、ことを特徴とする構造物用非破壊試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の構造物に生じたひび割れ、空洞、劣化、及び鉄橋のようなコンクリートと一体になった金属製構造物に生じた内部欠陥などの欠陥個所(変状部)について、弾性波などを用いて非破壊試験により点検する技術に係り、特に広範囲に点検できるように打撃ハンマと複数の受信装置を有する試験装置ユニットから成る構造物用非破壊試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、トンネル、橋梁などの大型構造物が多い。コンクリートの欠陥に関しては、曲げ・ひび割れ深さ及び注入材の充填度、疲労によるコンクリート内部のひび割れ、鉄筋腐食に伴う鉄筋コンクリート界面の状況、PCグラウト(プレストレストコンクリート注入材)の充填度等が評価対象となる。更に、長期間にコンクリート構造物には各種要因により空洞が発生することがある。このような空洞の存在はコンクリート構造物の強度劣化に大きな影響を与えるものであり、空洞の検出はコンクリート構造物の維持に重要なことである。
【0003】
鋼橋やコンクリート橋のような橋梁についても、その維持管理のために各種の検査が行われている。鋼橋の金属製構造物について様々な非破壊試験により点検されている。例えば金属製構造物の異常、表面疵及び内部欠陥の試験には超音波探傷試験(垂直、斜角、SH波等)、超音波厚さ測定、磁粉探傷試験、浸透探傷試験、亀裂深度計による亀裂深さ検査、AE検査、塗膜劣化センサによる塗膜性能検査が実施されている。
【0004】
コンクリートに関する物性及び欠陥については、種々の試験方法で試験又は点検されている。コンクリートの物性及び欠陥評価において、評価指標としての弾性波伝播特性(伝播速度、振幅及び周波数スペクトル)の特徴とその役割を明確にする必要がある。このコンクリートの物性に関してはセメントの凝結硬化性状が評価対象となる。
【0005】
セメントの凝結硬化性状、曲げ、ひび割れ、深さについて種々の非破壊試験方法がある。更に、注入材の充填度、疲労によるコンクリート内部のひび割れ、鉄筋腐食に伴う鉄筋コンクリート界面の状況について種々の非破壊試験方法がある。例えば、弾性波を利用した非破壊試験には、衝撃弾性波法、超音波法等がある。その他に、打音によりコンクリート中に弾性波を発生させ、この弾性波がコンクリート表面から空気中に放射されたものを測定する打音法がある。この打音法はコンクリートのひび割れ及び剥離、内部空隙範囲の検出に利用されている。更に、コンクリートのひび割れに伴って発生し伝搬する弾性波を検出し、コンクリート表面にAE変換子(センサ)を設置して検出するアコースティック・エミッション(AE Acoustic Emission)法がある。このAE法はコンクリートのひび割れの発生・進展位置の検出に利用されている。
【0006】
衝撃弾性波法は、入力装置としてハンマ、鋼球等が用いられる。この入力装置は主に人の作業により駆動される。受信装置は加速度センサ、AEセンサ等が用いられる。この試験方法の弾性波は、波長が長く、エネルギーが大きいという性質がある。この試験方法は、再現性のある弾性波を入力することが困難であるが、実構造物での実績が多い。
【0007】
一方、超音波法は、入力装置として探触子、AEセンサ等が用いられる。この入力装置は電圧の制御で駆動される。受信装置は探触子、AEセンサ等が用いられる。この試験方法の弾性波は、波長が短く、エネルギーが小さいという性質がある。この試験方法は、再現性のある弾性波を入力することが可能であるが、実構造物での実績が少ない。
【0008】
衝撃弾性波法によるコンクリートの物性及び欠陥についての非破壊試験に関する技術として、例えば特許文献1の特開2000-131290公報「コンクリートの非破壊検査装置」のように、外力を加えられたコンクリートから発生する振動を振動信号として検出する信号検出手段と、上記振動信号を複数の所定の周波数帯域毎の時系列信号に変換する変換手段と、上記時系列信号の最大値を上記周波数帯域毎に抽出する抽出手段と、上記各最大値をあらかじめ設定された上記周波数帯域毎の振動基準値と比較する比較手段とを備えたコンクリートの非破壊検査装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-131290公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように衝撃弾性波法は、測定が容易であり、入力する弾性波の波長が長く、エネルギーが大きいため減衰しにくく、コンクリートの実構造物での計測においてよく利用されている。しかし、弾性波の入力にハンマや鋼球を使用するため、打撃する人によりその打撃力が均一になりにくく、測定誤差が生じやすいという問題を有していた。
【0011】
トンネルのようなコンクリート構造物は、点検箇所が広範囲に及ぶものであった。例えば、鉄道用のトンネルは、終電時間から始発時間までの短い時間に広範囲の非破壊試験を実施する必要があった。自動車道のトンネルは、その点検時間のときに一部車両の通行を規制しなければならなかった。特許文献1の「コンクリートの非破壊検査装置」では、このような広範囲に及ぶ点検を所定時間内で円滑に処理できないという問題を有していた。
【0012】
なお、多数の非破壊試験装置を同時に稼働させることも考えられるが、その操作に当たる作業者が多くなり作業コストが大きくなる。非破壊試験装置を単純に複数連結しただけの装置では、トンネルのようなコンクリート構造物には湾曲した面があるため、正確に試験できない場合があった。
【0013】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、非破壊試験装置をユニット化すると共に複数を連結することで、同時に広範囲に非破壊試験を実施することができると共に、縦の壁面、天井面又は床面のいずれの壁面のコンクリート等の構造物の表面に対して打撃ハンマを適切な角度で打撃し、かつ弾性波を受信することができ、試験の精度が高い構造物用非破壊試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明は、構造物(C)について、複数の打撃ハンマ(3)を用いて非破壊試験する構造物用非破壊試験装置(1)であって、
前記構造物(C)内に弾性波を入力する打撃ハンマ(3)と、該打撃ハンマ(3)の打撃により該構造物(C)で伝播した弾性波を受信する受信装置(4)と、から成る打撃試験ユニット(2)と、
複数の前記打撃試験ユニット(2)の打撃ハンマ(3)について、それぞれ隣り合う列で位置をずらし、一定ピッチで並べられるように各打撃試験ユニット(2)が可動自在に取り付けられる可動支持部材(7)と、を備え、
前記打撃試験ユニット(2)は、1個の打撃ハンマ(3)と2個の受信装置(4)を三角形状に並べたものであり、2個の受信装置(4)は、前記構造物(C)の測定範囲の広狭に対応し得るように、受信装置(4)同士の間隔を可動自在に並べたものであり、
前記打撃ハンマ(3)と前記受信装置(4)が近接しているので、各打撃ハンマ(3)の打撃による前記構造物(C)内で伝播した弾性波を受信しやすく構成した、ことを特徴とする。
【0015】
前記2個の受信装置(4)は、前記構造物(C)内の変状部の深さに対応し得るように、前記打撃ハンマ(3)との間隔をそれぞれ可動自在に並べた構成にすることができる。
前記打撃試験ユニット(2)が前記構造物(C)の表面に対する角度を個々に可変できるように、各打撃試験ユニット(2)が前記可動支持部材(7)に角度可変に取り付けられた構成にすることができる。
【0016】
第2の本発明は、構造物(C)について、複数の打撃ハンマ(3)を用いて非破壊試験する構造物用非破壊試験装置(31)であって、
前記構造物(C)内に弾性波を入力する打撃ハンマ(3)と、該打撃ハンマ(3)の打撃により該構造物(C)で伝播した弾性波を受信する受信装置(4)と、から成る打撃試験ユニット(2)と、
複数の前記打撃試験ユニット(2)について、それぞれ間隔を調節できるように各打撃試験ユニット(2)が取り付けられる間隔調節支持材(32)と、を備え、
非破壊試験の対象物に応じて、前記構造物(C)を詳細に点検するときは各打撃試験ユニット(2)の間隔を狭め、広範囲に点検するときは各打撃試験ユニット(2)の間隔を広げられるように構成した、ことを特徴とする。
【0017】
第3の本発明は、構造物(C)について、複数の打撃ハンマ(3)を用いて非破壊試験する構造物用非破壊試験装置(41)であって、
前記構造物(C)内に弾性波を入力する打撃ハンマ(3)と、
該打撃ハンマ(3)の打撃により該構造物(C)で伝播した弾性波を受信する受信装置(4)と、
複数の前記打撃ハンマ(3)と前記受信装置(4)について、それぞれ間隔を調節できるように各打撃ハンマ(3)と受信装置(4)が取り付けられる装置支持材(42)と、を備え、
非破壊試験の対象物に応じて、前記構造物(C)を詳細に点検するときは打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を狭めて配置し、広範囲に点検するときは打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を広げられるように配置し得るように構成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の本発明の構成では、複数の打撃試験ユニット(2)により構造物(C)について同時に広範囲に打撃試験を実施することができる。
各打撃試験ユニット(2)が可動支持部材(7)に千鳥配置され、打撃ハンマ(3)と受信装置(4)が近接しているので、打撃ハンマ(3)の打撃による前記構造物(C)表面に生じる弾性波を確実に受信装置(4)が受信することができる。
打撃試験ユニット(2)が前記構造物(C)の表面に対する角度を個々に可変できるものは、湾曲した構造物(C)の表面に対して打撃ハンマ(3)を適切な角度で打撃させ、かつ弾性波を確実に受信装置(4)が受信することができる。その結果、打撃試験の精度が高くなる。
【0019】
第2の本発明の構成では、各打撃試験ユニット(2)の間隔を調節できるように配置されているので、打撃ハンマ(3)の打撃試験の対象物に応じて適宜調節することができる。詳細に点検するときは、打撃試験ユニット(2)同士の間隔を狭めて配置して打撃試験をすることができる。
【0020】
第3の本発明の構成では、打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を調節できるように配置されているので、打撃ハンマ(3)の打撃試験の対象物に応じて適宜調節することができる。詳細に点検するときは、打撃ハンマ(3)と受信装置(4)の間隔を狭めて配置して打撃試験をする。精度の高い打撃試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の打撃試験ユニットを横長に配置した構造物用非破壊試験装置を示す一部切欠いた平面図である。
図2】実施例1の打撃試験ユニットを横長に配置した構造物用非破壊試験装置を示す一部切欠いた正面図である。
図3】実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの一例を示す拡大平断面図である。
図4】各打撃試験ユニット2を制御する制御装置を示すブロック図である。
図5】実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの変形例1を示す拡大平断面図である。
図6】実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの変形例2を示す拡大平断面図である。
図7】複数の打撃試験ユニットを横長に位置調節可能に配置した実施例2の構造物用非破壊試験装置を示す概略平面図である。
図8】複数の打撃ハンマと複数の受信装置を横長に位置調節可能に配置した実施例3の構造物用非破壊試験装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の構造物用非破壊試験装置は、コンクリート等の構造物内に弾性波を入力する打撃ハンマと、打撃ハンマの打撃により構造物で伝播した弾性波を受信する受信装置とから成る打撃試験ユニットと、複数の打撃試験ユニットの打撃ハンマについて、それぞれ隣り合う列で位置をずらし、一定ピッチで並べられるように各打撃試験ユニットが取り付けられる可動支持部材とを備えた装置である。
【実施例1】
【0023】
<非破壊試験装置の構成>
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の打撃試験ユニットを横長に配置した構造物用非破壊試験装置を示す一部切欠いた平面図である。図2は実施例1の打撃試験ユニットを横長に配置した構造物用非破壊試験装置を示す一部切欠いた正面図である。図3は実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの一例を示す拡大平断面図である。
実施例1の構造物用非破壊試験装置1は、衝撃弾性波法による非破壊試験をする打撃試験ユニット2を横長に配置したものである。各打撃試験ユニット2は、入力装置として打撃ハンマ3が用いられ、受信装置4として加速度センサなどが用いられたものである。特に、この打撃試験ユニット2は、1個の打撃ハンマ3と2個の受信装置4を略三角形状に並べたものである。打撃試験ユニット2は、1個の打撃ハンマ3と2個の受信装置4が配置されたユニットである。これは、1個の打撃ハンマ3と2個又は複数の受信装置4の配置は、自ずと三角形状又は多角形状の配置になる。面配置するための最小個数となる。
【0024】
各打撃試験ユニット2における打撃ハンマ3の打撃により検査対象物のコンクリート構造物C内で伝播した弾性波を、受信装置4が受信する。この受信した弾性波について、反射エコーや波の周波数、位相などを分析し、コンクリート等の構造物C内部の欠陥CR、背面空洞Sの有無、その欠陥CRの位置までの距離を測定する。更に、変状部(異常箇所)については、後日、確認、補修するためにマーキング装置5でマーキングをする。
【0025】
これらの実施例では、コンクリート製の構造物Cについて説明しているが、本発明の検査対象物はこのコンクリート製の構造物Cに限定されないことは勿論である。鋼橋の金属製構造物についても検査対象物となる。
【0026】
なお、非破壊試験装置が超音波法による試験装置の場合は、図示しないが、入力装置として探触子、AEセンサ等が用いられる。この入力装置は電圧の制御で駆動される。受信装置は探触子、AEセンサ等が用いられる。
【0027】
各打撃試験ユニット2における打撃ハンマ3は、コンクリート構造物Cを打撃し、発生した弾性波をンクリート構造物C内に入力させる装置である。打撃ハンマ3、例えば筒体内において摺動自在になるハンマヘッド6と、このハンマヘッド6を引き戻し、又は押圧するように取り付けられたコイルバネ等の弾性部材を収納し、この筒体にソレノイドを設けたものである。このソレノイドを作動させ、ハンマヘッド6を往復動させる。
【0028】
実施例1の構造物用非破壊試験装置1は、図1図2に示すように複数の打撃試験ユニット2の打撃ハンマ3について、所謂「千鳥配置」の状態に可動支持部材7に取り付けられている。即ち、それぞれ隣り合う列で位置をずらし、一定ピッチで並べられるように各打撃試験ユニット2が可動支持部材7に取り付けられている。可動支持部材7は打撃試験ユニット2の略三角形状のケーシング8を包むように保持する部材である。実施例1の構造物用非破壊試験装置1は、複数の打撃試験ユニット2が可動支持部材7に長方形状に配置されたものである。このように各打撃試験ユニット2は、千鳥配置状態に打撃ハンマ3と受信装置4が近接して配置されているので、各打撃ハンマ3の打撃による構造物C内で伝播した弾性波を受信しやすい。
【0029】
<非破壊試験装置を制御する制御装置の構成>
図4は各打撃試験ユニット2を制御する制御装置を示すブロック図である。
実施例1の各打撃試験ユニット2を制御する制御装置11の入力側には、増幅処理部12(AMP)及び制御信号入力部13が接続されている。増幅処理部12(AMP)は、受信装置4(加速度センサ)が受信した弾性波の検知信号を増幅処理する。
【0030】
制御装置11の出力側には、打撃ハンマ3を作動させる打撃ハンマ動作信号出力部14及び表示処理部15が接続されている。表示処理部15にはLED等が接続されている。現在の動作状態を知らせるものである。信号処理部16は、受信装置4(加速度センサ)の検知信号を増幅処理する増幅処理部12(AMP)を処理して、これらの出力側の各動作を行わせる。
【0031】
更に、制御装置11の出力側には、マーキング装置5でマーキングするマーキング動作信号出力部17が接続されている。これらも信号処理部16が、入力側の受信装置4(加速度センサ)の検知信号を処理して各動作を行わせる。
【0032】
打撃試験ユニット2は、複数組み合わせて使用するものである。そこで、長方形状の打撃試験ユニット2の場合は「線」として長くなるようにつなぐことができる。一方、正方形状の打撃試験ユニット2の場合は「面」として広げるようにつなぐことができる。
【0033】
各打撃試験ユニット2を含む非破壊試験装置1は、先ず、検査対象物である構造物Cの表面に、この非破壊試験装置1を設置する。トンネルの場合は、非破壊試験装置1を支持装置で支え、トンネルの縦壁面、更には天井面において打撃試験しながら移動させる。このとき支持装置は、台車に設けられた昇降装置、アームなどがある。更には吸盤状の装置によりトンネル内壁面を自由に走行させる方式のものでもよい。
【0034】
打撃試験ユニット2の打撃ハンマ3のハンマヘッド6を構造物Cの表面に当接させ、打撃ハンマ3を作動させる。打撃ハンマ3の打撃により弾性波が発生し、構造物C内に入力される。
【0035】
このように構造物Cに入力された弾性波は、構造物C内において伝播する。この伝播した弾性波を受信装置4(加速度センサ)で受信する。受信した弾性波について、反射エコーや波の周波数、位相などを分析する。その分析の結果、構造物C内部の欠陥、背面空洞の有無、その欠陥の位置までの距離を測定する。
【0036】
これらの解析結果に基づいて、弾性波に異常があるときに、該当箇所(変状部)にマーキング装置5でマーキングする。例えば、マーキングは、該当箇所(変状部)に「ドット」を印字する。なお、非破壊試験装置1(打撃試験ユニット2)の移動方向は、下から上への移動、水平方向又は上から下への移動のいずれの場合でも良い。
【0037】
<打撃試験ユニットの変形例1>
図5は実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの変形例1を示す拡大平断面図である。
変形例1の打撃試験ユニット2は、1個の打撃ハンマ3と2個の受信装置4が配置されたユニットである。更に、変形例1の打撃試験ユニット2は、2個の受信装置4の間隔が自由に変更できるようになっている。打撃ハンマ3の打撃による構造物C内で伝播した弾性波を受信する2個の受信装置4の間隔を変更することで、構造物Cなどの点検対象物の厚みや材質に応じて可変し得るようになっている。この変形例1の打撃試験ユニット2では、図5に示すように、2個並列する受信装置4を近づけたり、遠ざけたりする。
【0038】
受信装置4同士の間隔を調整することで、コンクリートの構造物Cの測定範囲の広狭(面)に対応することができる。例えば、コンクリートの構造物Cの測定範囲を広げる場合は、伝播した弾性波を受信する範囲を広げるために、受信装置4同士の間隔を広げる。逆にコンクリートの構造物Cの測定範囲が狭い場合は、弾性波を受信する範囲を広げる必要がないために、受信装置4同士の間隔を狭める。
【0039】
<打撃試験ユニットの変形例2>
図6は実施例1の構造物用非破壊試験装置を構成する打撃試験ユニットの変形例2を示す拡大平断面図である。
変形例2の打撃試験ユニット2は、2個の受信装置4が、打撃ハンマ3との間隔が自由に変更できるようになっている。必要に応じて、2個の受信装置4を打撃ハンマ3に近づけたり、遠ざけたりする。これも構造物Cなどの点検対象物の厚みや材質に応じて可変するためである。
【0040】
受信装置4と打撃ハンマ3との間隔を調整することで、コンクリート構造物C内の変状部の深さに対応することができる。例えば、コンクリートの構造物Cが薄い場合は、伝播した弾性波を受信する時間が短いので、その間隔を狭くする。逆にコンクリートの構造物Cが厚い場合は、弾性波を受信する時間が長くなるので、その間隔を広くする。
【0041】
各打撃試験ユニット2は、可動支持部材7に角度可変に取り付けることも可能である。このように、打撃試験ユニット2がコンクリート構造物Cの表面に対する角度を個々に可変できると、湾曲した構造物Cの表面に対して打撃ハンマ3を適切な角度で打撃し、かつ弾性波を確実に受信装置4が受信することができる。
【実施例2】
【0042】
<非破壊試験装置の構成>
図7は複数の打撃試験ユニットを横長に位置調節可能に配置した実施例2の構造物用非破壊試験装置を示す概略平面図である。
実施例2の構造物用非破壊試験装置31は、複数の打撃試験ユニット2について、それぞれ間隔を調節できるように各打撃試験ユニット2が取り付けられる間隔調節支持材32と、を備えた装置である。例えば間隔調節支持材32としては、打撃試験ユニット2を支持具33を介して支持するスライドレールを用いることができる。このスライドレールは、伸縮可能な部材でもよい。運搬が容易になるからである。
【0043】
この実施例2の非破壊試験装置31は、その非破壊試験の対象物に応じて、構造物Cを詳細に点検するときは各打撃試験ユニット2の間隔を狭める。逆に、広範囲に点検するときは各打撃試験ユニット2の間隔を広げられるように構成したものである。
【実施例3】
【0044】
<非破壊試験装置の構成>
図8は複数の打撃ハンマと複数の受信装置を横長に位置調節可能に配置した実施例3の構造物用非破壊試験装置を示す概略平面図である。
実施例3の構造物用非破壊試験装置41は、複数の打撃ハンマ3と受信装置4について、それぞれ間隔を調節できるように各打撃ハンマ3と受信装置4が取り付けられる装置支持材42を備えた装置である。そのスライドレールのような装置支持材42には、打撃ハンマ3と受信装置4とは支持具43を介して支持するようになっている。
【0045】
この実施例3の非破壊試験装置41は、非破壊試験の対象物に応じて、構造物Cを詳細に点検するときは打撃ハンマ3と受信装置4の間隔を狭めて配置する。逆に、広範囲に点検するときは打撃ハンマ3と受信装置4の間隔を広げて配置することができるようになっている。
【0046】
また、図示していないが、実施例3の構造物用非破壊試験装置41は、その装置支持材42はスライドレールに代えて伸縮可能な部材を用いることができる。
【0047】
なお、本発明は、非破壊試験装置をユニット化すると共に複数を連結することで、同時に広範囲に非破壊試験を実施することができると共に、縦の壁面、天井面又は床面のいずれの壁面の構造物Cの表面に対して打撃ハンマ3を適切な角度で打撃し、かつ弾性波を受信装置4で受信することができ、試験の精度を高めることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、鉄道のトンネル、高速道路、建造物等の構造物に限定されず、更にコンクリート以外の金属製、合成樹脂製の構造物の非破壊検査に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,31,41 非破壊試験装置
2 打撃試験ユニット
3 打撃ハンマ
4 受信装置
5 マーキング装置
7 可動支持部材
32 間隔調節支持材
33 支持具
42 装置支持材
43 支持具
C 構造物(コンクリート構造物)
図1
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図8