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特許7113442杭打込み中の動的支持力の測定装置及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】杭打込み中の動的支持力の測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20220729BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E02D13/06
G01L5/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021066985
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391002122
【氏名又は名称】調和工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516304562
【氏名又は名称】株式会社シーズエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】北村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森 拓人
(72)【発明者】
【氏名】横山 博康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 努
(72)【発明者】
【氏名】西村 真二
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-93915(JP,A)
【文献】特開2012-184623(JP,A)
【文献】特開平11-209978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/06
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に前記杭(4)の軸力又は動的支持力を測定するために、前記バイブロハンマ(1)とチャック装置(2)との間に取り付けられる計測用部材(3)であって、
所定の弾性係数をもつ筒体(3a)と、
前記筒体(3a)の表面に取り付けられたひずみゲージ(51)とを有する、計測用部材。
【請求項2】
前記筒体(3a)の上端及び下端にそれぞれフランジ部(3b,3c)を有し、前記フランジ部(3b,3c)により前記バイブロハンマ(1)及び前記チャック装置(2)の各々と取り外し可能にそれぞれ固定される、請求項1に記載の計測用部材。
【請求項3】
前記筒体(3a)の上端及び下端が、前記バイブロハンマ(1)及び前記チャック装置(2)の各々と溶接によりそれぞれ固定される、請求項1に記載の計測用部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の計測用部材(3)を取り付けられたバイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に軸力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記ひずみゲージ(51)の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを基に前記杭(4)の打込み中に軸力を算出する工程とを有する、杭打込み中の軸力測定方法。
【請求項5】
杭打込み中に動的支持力を測定するための装置であって、
請求項1~3のいずれかに記載の計測用部材(3)と、
前記バイブロハンマ(1)又は前記計測用部材(3)のいずれかに取り付けられた加速度計(52)とを有する、杭打込み中の動的支持力測定装置。
【請求項6】
杭の打込み深度を測定するために、
前記バイブロハンマ(1)又は前記計測用部材(3)のいずれかに取り付けられ照準器(53)と、
前記照準器を自動追尾するトータルステーションとをさらに有する、請求項5に記載の杭打込み中の動的支持力測定装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の杭打込み中の動的支持力測定装置を用いて杭(4)の動的支持力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記ひずみゲージ(51)及び前記加速度計(52)の各々の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを所定の動的載荷試験法の算定式に適用することによって前記杭(4)の打込み中に動的支持力を算出する工程とを有する、杭打込み中の動的支持力測定方法。
【請求項8】
バイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に動的支持力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記杭(4)に生じるひずみ及び加速度の各々の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを所定の動的載荷試験法の算定式に適用することによって前記杭(4)の打込み中に動的支持力を算出する工程とを有する、杭打込み中の動的支持力測定方法。
【請求項9】
前記動的載荷試験法が、衝撃載荷試験法又は急速載荷試験法である、請求項7又は8に記載の杭打込み中の動的支持力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブロハンマによる杭の打込み中に杭の軸力及び動的支持力を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイブロハンマで杭を打ち込む工程では、先ず、地盤の所定位置に建て込んだ杭をバイブロハンマのチャック装置で把持したのち、バイブロハンマを起動する。バイブロハンマにより発生する杭軸方向の振動を、チャック装置を介して杭に伝え、当該振動により杭が地盤に貫入する際の抵抗を軽減し、バイブロハンマ及び杭の自重により杭を地盤に打ち込む。
【0003】
特許文献1、2、4に記載の杭打込み中の動的支持力の測定方法は、打撃ハンマにより打ち込まれる打撃杭において、リバウンド量から打込み中の動的支持力を求める方法である。一方、バイブロハンマにより打込み中の杭は、チャック装置を介して振動源であるバイブロハンマと一体となることで絶え間なく振動している。したがって、バイブロハンマによる杭の打込みにおいては、打撃杭のようなリバウンド量からの動的支持力の測定はできない。また、特許文献3はバイブロハンマ打込み杭に関するが、地盤強度の一般的指標であるN値に変わる指標をバイブロハンマ打込み中の振動数及び加速度から求める地盤強度測定方法を目的とし、動的支持力を求めるものではない。
【0004】
バイブロハンマによる杭の打込みにおいては、従来、バイブロハンマが消費する電流値と電圧値等を用いて杭の打込み中の動的支持力を測定していた。しかしながら、消費する電流値と電圧値等から導出した値は、動的支持力と正の相関があると推定されるものの動的支持力を直接測定したものではないため、過去の載荷試験結果から求めた係数を乗じて動的支持力を推定していた。一方で、載荷試験は、一般に杭養生後に行うため、過去の載荷試験から求めた係数を乗じて導出した動的支持力は、養生後の支持力を表すことになる。しかし、養生後の支持力は、地盤の経時変化による強度回復(セットアップ)の影響を受けるため、動的支持力との関係は地盤条件によって区々である可能性が高い。このことから、杭打込み時の消費電流値や電圧値等から杭打込み中の動的支持力を導出する方法は、地盤条件による影響を大きく受けることが危惧される。
【0005】
杭の動的支持力は、杭頭の軸力、加速度と杭の質量から求められる。杭頭の軸力は、杭頭に取り付けたひずみゲージにより測定されるひずみに、弾性係数と杭の断面積を乗じることにより算出される。また、加速度は、バイブロハンマ又は杭頭に取り付けた加速度計により計測される。杭の質量は、杭製作時に一般に既知である。
【0006】
さらに、杭の打込み深度を測定するためには、プリズム等の照準器をバイブロハンマ又は杭頭に取り付け、距離を測る光波測距儀と角度を測るセオドライトとを組み合わせた自動追尾型の杭位置測定装置(トータルステーション)を杭近傍の固定点に設置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭61-142216号公報
【文献】特開昭63-73128号公報
【文献】特開平3-93915号公報
【文献】特開平6-33460号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】杭の鉛直載荷試験方法・同解説(社団法人地盤工学会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ひずみゲージは、杭の打込み前に杭頭に取り付ける必要があった。その際には、杭を計測して取付位置を決め、当該取付位置をケガキなどによりマーキングし、杭表面のスケールを磨き取った後に、ひずみゲージを強力な接着剤で杭に接着し、さらに保護コーティング剤を施したうえ、接着剤やコーティング剤が硬化するまで養生しなければならず、作業負担が大きかった。また、杭頭の軸力を知るためには、このひずみゲージを杭1本1本に取り付けることが必要であり、工事工程に少なからず影響を及ぼしていた。時間節約のために複数の杭にまとめてひずみゲージを取り付けると、強度の低いひずみゲージが保管中に損傷する危険性が高い等の問題がある。
【0010】
杭頭にひずみゲージを取り付けることは、上述したように様々な問題がある。したがって、現状では杭打込み中の動的支持力はほとんど測定されていないのが実状である。
【0011】
また、杭頭のひずみゲージにより測定されたひずみを用いて求めた軸力は、バイブロハンマにより生じる杭の振動による加速度や速度に起因する値を含むため、これらを除いて軸力から動的支持力のみを抽出することは困難であった。
【0012】
上記の現状に鑑み、本発明は、バイブロハンマによる杭の打込み中に杭の軸力及び動的支持力を効率的かつ経済的に測定するための、さらに連続的かつ正確に測定するための装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。括弧内の数字は後述する図面中の符号であり、参考のために付している。
- 本発明の態様は、バイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に前記杭(4)の軸力又は動的支持力を測定するために、前記バイブロハンマ(1)とチャック装置(2)との間に取り付けられる計測用部材(3)であって、
所定の弾性係数をもつ筒体(3a)と、
前記筒体(3a)の表面に取り付けられたひずみゲージ(51)とを有する。
- 上記の計測用部材において、前記筒体(3a)の上端及び下端にそれぞれフランジ部(3b,3c)を有し、前記フランジ部(3b,3c)により前記バイブロハンマ(1)及び前記チャック装置(2)の各々と取り外し可能にそれぞれ固定されることが好適である。
- 上記の計測用部材において、前記筒体(3a)の上端及び下端が、前記バイブロハンマ(1)及び前記チャック装置(12)の各々と溶接によりそれぞれ固定されることが好適である。
【0014】
- 本発明のさらに別の態様は、上記の計測用部材(3)を取り付けられたバイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に軸力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記ひずみゲージ(51)の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを基に前記杭(4)の打込み中に軸力を算出する工程とを有する。
【0015】
- 本発明のさらに別の態様は、杭打込み中に動的支持力を測定するための装置であって、
上記の計測用部材(3)と、
前記バイブロハンマ(1)又は前記計測用部材(3)のいずれかに取り付けられた加速度計(52)とを有する。
- 上記の動的支持力測定装置において、杭の打込み深度を測定するために、
前記バイブロハンマ(1)又は前記計測用部材(3)のいずれかに取り付けられ照準器(53)と、
前記照準器を自動追尾するトータルステーションとをさらに有することが好適である。
【0016】
- 本発明のさらに別の態様は、上記の動的支持力測定装置を用いて杭(4)の動的支持力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記ひずみゲージ(51)及び前記加速度計(52)の各々の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを所定の動的載荷試験法の算定式に適用することによって前記杭(4)の打込み中に動的支持力を算出する工程とを有する。
【0017】
- 本発明のさらに別の態様は、バイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に動的支持力を測定する方法であって、
前記杭(4)の打込み中に前記杭(4)に生じるひずみ及び加速度の各々の測定データを取得する工程と、
取得した前記測定データを所定の動的載荷試験法の算定式に適用することによって前記杭(4)の打込み中に動的支持力を算出する工程とを有する。
【0018】
- 上記の動的支持力測定方法において、前記動的載荷試験法が、衝撃載荷試験法又は急速載荷試験法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明よれば、バイブロハンマとチャック装置の間に、ひずみゲージを備えた計測用部材を取り付けることによって、杭頭へのひずみゲージの取付けを不要とした。それによって、工事工程に大きな影響を及ぼすことなく軸力及び動的支持力を測定することを可能とした。計測用部材が着脱可能である場合、さらに測定の効率化、経済化がれる。
【0020】
また、本発明は、バイブロハンマによる杭の打込みを動的載荷試験の連続的な繰り返しと見做すことによって、杭の打込み中に取得した測定データを所定の動的載荷試験方法の算定式に適用することを提示した。これにより、杭の動的支持力を、杭の打込み中に算出することを実現した。動的載荷試験方法は、例えば急速載荷試験法又は衝撃載荷試験法である。本方法によれば、杭の打込み中の動的支持力を連続的にかつ正確に測定することが可能となる。その結果、杭の支持層到達等を、杭を施工しながら把握することができ、杭の打設を過不足なく実施することが可能となる。本発明により、工事の確実性が向上するとともに、安全性と経済性を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の装置及び方法を適用した杭の打込みシステムの全体構成の一例を示した概略構成図である。
図2図2は、図1に示したバイブロハンマの拡大図である。
図3図3は、本発明による、杭打込み中の動的支持力測定方法の流れの一例を概略的に示すフロー図である。
図4図4は、動的載荷試験における相対載荷時間と、バイブロハンマの振動周波数及び杭長との関係を示すグラフである。
図5図5は、図4中に黒点で示す条件で試験を行った結果を示すグラフである。
図6図6は、CASE法から求めた杭打込み中の動的支持力と地盤のN値の深度分布を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本発明は、バイブロハンマによる杭の打込み中の軸力及び/又は動的支持力を測定するための装置及び方法に係るものである。本発明はバイブロハンマを用いるいずれの杭打ち工法にも適用され、杭は、例えば鋼管杭である。
【0023】
(1)システム構成
図1は、本発明の装置及び方法を適用した杭の打込みシステムの構成の一例を示した概略構成図である。本例では、水底の地盤に杭4を打ち込む施工を示している。図2は、図1に示したバイブロハンマの拡大図である。
【0024】
バイブロハンマ1は、台船上に設置されたクレーンにより吊り下げられている。チャック装置2は杭4の頭部を把持している。通常、バイブロハンマ1とチャック装置2は直接接続されているが、本発明では、バイブロハンマ1とチャック装置2との間に挟持された計測用部材3が取り付けられている。
【0025】
計測用部材3の本体は、円筒体又は角筒体などの筒体3aである。筒体3aは、好ましくは短尺の鋼管である。杭4が鋼管杭である場合、筒体3aは、直径及び管壁の厚さが杭4と同じでもよく異なっていてもよい。計測用部材3は所定の弾性係数を有しており、その弾性係数は杭4のそれと同じでもよく異なっていてもよい。筒体3aの軸方向の長さは、例えば杭4の直径の0.5~2倍程度であり、好ましくは杭4の直径と同じ程度である。しかしながら、計測用部材3の仕様は、これらに限定されるものではない。
【0026】
計測用部材3は、図示の例では、筒体3aの上端及び下端にそれぞれフランジ部3b、3cが形成されている。これらのフランジ部3b、3cは、例えば筒体3aの上端と下端に溶接接合されている。各フランジ部3b、3cには、複数のボルト孔が形成されている。フランジ部3b、3cのボルト孔は、元々、バイブロハンマ1の下端とチャック装置2の上端に接続用に設けられているボルト孔と一致する位置に形成されている。よって、ボルトとナットを用いて、計測用部材3の上端とバイブロハンマ1の下端、及び、計測用部材3の下端とチャック装置2の上端とをそれぞれ固定することができる。この場合、計測用部材3は、バイブロハンマ1及びチャック装置2に対して取り外し可能である。
【0027】
別の例として、計測用部材3が、バイブロハンマ1及びチャック装置2とそれぞれ溶接により固定されてもよい。取り外し可能又は不能のいずれの場合も、バイブロハンマ1、計測用部材3、及びチャック装置2は一体化され、かたつきなく固定される。この結果、バイブロハンマ1の起振力が、計測用部材3及びチャック装置2へ円滑に伝達される。
【0028】
計測用部材3は、その表面上にひずみゲージ51を取り付けられている。ひずみゲージ51の取付方法は、例えば、上述した方法、すなわち従来ひずみゲージを杭頭に取り付ける際の方法と同じでよい。ひずみゲージ51は、打込み中の杭4の軸力及び動的支持力を算出するためのひずみの測定に用いられる。この場合、従来の杭頭に取り付けるひずみゲージは不要である。
【0029】
さらに、バイブロハンマ1に加速度計52が取り付けられている。別の例として、加速度計52は、計測用部材3又は杭4に取り付けることもできるが、杭4に取り付ける作業負担が大きいので、バイブロハンマ1又は計測用部材3に取り付けることが好ましい。打込み中のバイブロハンマ1、計測用部材3及び杭4は一体であるので、加速度計52により、杭打込み中の杭4の振動加速度が測定される。
【0030】
ひずみゲージ51及び加速度計52には、測定データを送信するための計測用ケーブル62が接続され、図1に示す制御装置8へと延びている。別の例として、ひずみゲージ51、加速度計52を無線式とすることもできる。
【0031】
さらに、バイブロハンマ1にプリズム等の照準器53が取り付けられている。別の例として、照準器53は、計測用部材3又は杭4に取り付けることもできるが、杭4に取り付ける作業負担が大きいので、バイブロハンマ1又は計測用部材3に取り付けることが好ましい。図1に示すように、照準器53を自動追尾するトータルステーション54が、杭4から適宜の距離だけ離間して設置されている。照準器53及びトータルステーション54は、打込み中の杭4の深度を測定するために用いられる。図示の例では、測定データは、トータルステーション54から制御装置8へ無線で送信される。
【0032】
その他の装置として、台船上に操作ユニット7及び制御装置8が設置されている。図示の電動式バイブロハンマの場合、操作ユニット7は電動式モータを備え、電動式モータを駆動する電流及び電圧を計測する電流計及び電圧計も設けられている。電動式モータとバイブロハンマ1とは、電源ケーブル61で接続されている。油圧式バイブロハンマの場合は、油圧式モータと、モータ圧力を計測する油圧ユニット等が設けられる。
【0033】
制御装置8は、ひずみゲージ51、加速度計52、トータルステーション54の各々から測定データを受信する機能、取得した測定データを基に演算する機能、演算結果を表示する機能、操作ユニット7に対して制御信号を送る機能、等を有する。
【0034】
本発明では、打込み中に各測定データを連続的に得ることができ、それらに基づいてリアルタイムに杭4の軸力及び動的支持力が演算され、その演算結果を連続的に監視することができる。そして、支持層到達等を確認した後、打止めを指示することもできる。
【0035】
(2)杭打込み中の軸力の算出方法
本発明では、計測用部材3にひずみゲージ51を取り付けているので、従来のように杭毎にひずみゲージを取り付ける必要がない。計測用部材3に取り付けたひずみゲージ51の測定データから、以下の式を用いて杭4に発生する軸力Fを算出することができる。
=E×ε×A [1]
=(F-(m1+m2)×a)×A/A [2]

:計測用部材に発生する軸力(N)
:計測用部材の弾性係数(N/m
ε :測定されたひずみ
:計測用部材の断面積(m
:杭に発生する軸力(N)
:杭の断面積(m
m1 :ひずみゲージから下の計測用部材の質量(kg)
m2 :チャック装置の質量(kg)
a :測定された加速度(m/sec

なお、式[1]、[2]のうち計測用部材3の弾性係数Eo、計測用部材3の断面積Ao、杭の断面積Ap、ひずみゲージ51から下の計測用部材3の質量m1、及びチャック装置の質量m2は既知であり、ひずみεと加速度aは測定値である。
【0036】
この杭頭の軸力の算出方法は、バイブロハンマ1、計測用部材3、チャック装置2、及び杭4が一体となって挙動するバイブロハンマ工法であることによって可能な技術である。打撃杭のように打撃装置と杭が別々の挙動する工法では適用できない。本発明では、杭打込み中にひずみゲージ51からひずみの測定データを取得し、取得した測定データから式[1]、[2]により直ちに軸力を算出することを繰り返すことによって、杭打込み中に連続的に杭4の軸力を得ることができる。一方、照準器とトータルステーションの測定データから杭4の打込み深度が得られる。打込み深度と合わせて軸力を表示することによって、杭打込み中の杭4に発生する軸力を監視することができる。
【0037】
(3)杭打込み中の動的支持力の算出方法
次に、式[1]、[2]により求めた軸力Fから加速度や速度に起因する値を除き、動的支持力Rsoilを抽出する方法について述べる。
【0038】
ここで図3は、本発明による、杭打込み中の動的支持力測定方法の流れの一例を概略的に示すフロー図である。打込み開始前に行う準備工程として、装置側の準備と制御側の準備がある。装置側の準備では、ひずみゲージ51を取り付けた計測用部材3、加速度計52、照準器53を装備したバイブロハンマ1をチャック装置2により杭4に設置する(ステップ11)。
【0039】
本発明では、杭打込み中の動的支持力の算出において、既存の動的載荷試験法を利用する。動的載荷試験法には多数の種類があり、大きく分類して急速載荷試験と衝撃載荷試験がある。実際の急速載荷試験ではクッションを介して杭頭に重錘を落下させ、衝撃載荷試験では杭頭を直接ハンマで打撃してその応答をひずみゲージや加速度計で測定する。重錘や打撃ハンマをバイブロハンマによる打込み中に適用することは不可能であるので、従来、バイブロハンマ工法における動的載荷試験の実施は、施工完了した杭の養生後に限られていた。したがって、本発明では、動的載荷試験法の全体を利用するのではなく、動的載荷試験法における動的支持力の算定式を利用する。
【0040】
制御側の準備では、多数の動的載荷試験法の中から適切なものを予め選択することが必要である(ステップ21)。図4を参照して、適切な動的載荷試験法の選択方法の一例を説明する。図4は、動的載荷試験における相対載荷時間Trと、バイブロハンマの振動周波数及び杭長との関係を示すグラフである。なお、代表的な事例として、杭は鋼管杭としている。相対載荷時間Trは、以下の式で表される。
Tr=tL/(2L/c) [3]

Tr:相対載荷時間
tL:載荷時間
(バイブロハンマ打込み杭の場合、バイブロハンマが杭を押下している継続時間として、振動周期の1/2を採用した。)
L :杭長
c :杭中の縦波伝搬速度(鋼管杭の場合、c≒5,048m/sec)
【0041】
非特許文献1によれば、一般的に、相対載荷時間Trが5以上かつ500以下の場合には急速載荷試験が適しており、5以下の場合には衝撃載荷試験が適していると言われている。図4中に三角形で囲んだ領域は、標準的なバイブロハンマの振動周波数と施工される杭長の範囲を例示している。この範囲内での施工の場合、杭を打ち込む際の挙動に対応する相対載荷時間Trが2~11の間に分布しているので、急速載荷試験又は衝撃載荷試験の適用範囲内であると判る。このことから、標準的なバイブロハンマ及び杭長により杭を打込む工程は、急速載荷試験又は衝撃載荷試験を杭打込み中に継続して行っている状態であると見做すことができる。
【0042】
この想定に基づいて、バイブロハンマによる杭打込み中に急速載荷試験法又は衝撃載荷試験法を適用することによって、特に、それらの方法における動的支持力の算定式を適用することによって、杭打込み中に動的支持力を算出することが可能となる。急速載荷試験法及び衝撃載荷試験法にはそれぞれ幾つかの種類があるので、いずれの試験法を適用するかを施工前の準備工程で選択する。選択する動的載荷試験法は1つである必要はない。制御装置の演算能力に応じて、複数の動的載荷試験法による動的支持力を同時に算出することもできる。複数の動的載荷試験法を適用して、互いの結果を比較することにより信頼度を高めることもできる。
【0043】
図3のフロー図に戻って、本発明を適用した施工工程について説明する。杭の打込みを開始すると共に、制御側では、演算、監視、制御を開始する。杭の打込み中、ひずみゲージ、加速度計、及び照準器とトータルステーションによる測定がそれぞれ行われ、測定データが連続的に制御装置に送られる(ステップ12)。制御装置は、それらの測定データを取得する(ステップ22)。制御装置の演算機能により、ひずみの測定データから上述した式[1]、[2]により軸力を算出する(ステップ23)。
【0044】
さらに、算出された軸力に加え、加速度の測定値及び/又は測定値から算出された値を動的載荷試験法の算定式に適用することにより、動的支持力を算出する(ステップ24)。また、その時点の杭の打込み深度も決定する(ステップ25)。ステップ22~25で得られた結果をディスプレイ等に表示することによって、軸力、動的支持力、打込み深度を監視する(ステップ26)。打込み中、これらのステップを繰り返すことによって、打込み深度に沿って連続的に軸力及び動的支持力を監視できる。杭が支持層に到達したことなども確認できる(ステップ27)。最終的に杭が打止め深度に到達したと判断し(ステップ28)、操作ユニットに対して打止め指示の制御を行う。これによりバイブロハンマが停止し打込みを終了する。
【0045】
図5は、図4中に黒点で示す条件で実際に試験を行った結果を示すグラフである。杭径114.3mm、杭長11.0mの杭の打込み中に、急速載荷試験法と衝撃載荷試験法の各々の算定式を用いて地盤抵抗(動的支持力)を連続的に算出した。横軸は時間である。
【0046】
ここでは、急速載荷試験法として除荷点法を用い、衝撃載荷試験法としてCASE法を用いている。これらは既に確立された動的載荷試験法の手法の中から選択している。しかしながら、これらに限定する必要はなく、バイブロハンマ工法に対してより適用性が高い動的載荷試験法を用いることが好ましい。両手法の概要を以下に示す。
【0047】
・除荷点法(急速載荷試験)
除荷点法では、杭を1質点と見做し、杭の慣性力を、杭頭荷重から差し引くことにより動的支持力Rsoilを求める。算定式は以下の通りである。
soil(t)=Fν(t)-m・a(t) [4]

soil(t) :地盤抵抗(動的支持力)
ν(t) :杭頭荷重
m :杭の質量
a(t) :加速度
【0048】
式[4]の杭頭荷重Fν(t)は、式[1]、[2]で得た杭頭の軸力から算出される。加速度a(t)は、加速度計の測定データから得られる。
【0049】
・CASE法(衝撃載荷試験法)
一次元波動理論に基づいた特性曲線法により、杭頭における下向きの力の入力波と、入力波が杭を1往復した後の上向きの力の反射波との和により動的支持力を求める。算定式は以下の通りである。
soil(0,t)=Fd(0,t-L/c)+Fu(0,t+L/c) [5]
Fd(0,t-L/c)=(F(0, t-z/c)+Z・v(0, t-z/c))/2 [6]
Fu(0,t+L/c)=(F(0, t-z/c)-Z・v(0, t-z/c))/2 [7]

soil(0,t) :杭頭における地盤抵抗(動的支持力)、
Fd(0,t-L/c) :下向きの入力波、
Fu(0,t+L/c) :杭1往復後の杭頭における反射波
F(0,t-z/c) :杭頭における軸力
Z :杭体のインピーダンス(Z=E・A/c)
:杭の弾性係数
:杭の断面積
c :杭中の縦波伝搬速度
v(0, t-z/c) :杭頭の振動速度
【0050】
式[6]、[7]の杭頭における軸力F(0,t-z/c)は、上述した式[2]の通り、ひずみゲージの測定データから算出される。杭頭の振動速度v(0, t-z/c)は、加速度計の測定データから得た加速度を時間積分することにより算出される。
【0051】
図5より、急速載荷試験法と衝撃載荷試験法による計算結果はほぼ一致していることが判る。このように、全く異なる方法により計算した結果が一致することから、動的支持力を正確に把握していると考えられる。このことは本発明の方法の信頼度を示している。
【0052】
急速載荷試験と衝撃載荷試験は、それぞれ地盤工学会基準JGS 1815-2002及びJGS 1816-2002で試験方法として確立されている。したがって、これらの動的載荷試験法の算定式を用いて杭打込み中の動的支持力を算出することによって、軸力に含まれる加速度や速度に起因する値を除いた動的支持力を得ることができる。
【0053】
杭の打込み中に動的支持力が連続的かつ正確に得られることは極めて有用である。これにより、杭の支持層到達等を杭の施工と同時に把握することができ、施工しながら杭の打込みを調整することも可能となる。すなわち、施工中の情報を基にリアルタイムに工事をコントロールする情報化施工が可能となる。この結果、工事の確実性、安全性、経済化を同時に獲得することができる。
【0054】
図6は、CASE法から求めた杭打込み中の動的支持力Rsoilと地盤のN値の深度分布を示している。動的支持力Rsoilは、周面抵抗力と先端抵抗力の和で表されるが、図6よりN値の深度分布に比較的よく一致しており、本発明の算出法の確かさが裏付けられる。
【0055】
本発明による動的支持力測定方法では、上述した計測用部材に取り付けたひずみゲージによりひずみを測定することが好ましいが、従来のように杭頭にひずみゲージを取り付けてひずみを測定する場合にも適用可能である。その場合も、ひずみゲージで測定されたひずみから軸力を算出し、軸力と加速度計で測定された加速度とを、動的載荷試験法の算定式に適用することにより動的支持力を算出することができる。
【0056】
(4)まとめ
本発明の計測用部材を用いることによって、測定装置をバイブロハンマと計測用部材のみに集約することができる。よって、従来のように杭1本1本にひずみゲージを取り付ける必要がなく、工事工程に大きな影響を及ぼすことなく、動的支持力の測定が可能となる。
【0057】
さらに、計測用部材を取り外し可能とした場合、動的支持力測定の終了後、取り外して別工事に転用することが可能である。すなわち一旦、計測用部材を作製すれば、損傷を受けたひずみゲージ等の計器を取り換えるだけで、繰り返して複数の工事に転用することが可能である。これにより、計測の効率化及び経済化を大幅に図れる。
【0058】
本発明の動的支持力測定方法は、バイブロハンマによる杭の打込みを動的載荷試験の連続的な繰り返しと見做して、動的載荷試験の算定式を用いて動的支持力を測定する方法である。特に急速載荷試験法及び衝撃載荷試験法は、地盤工学会基準JGS 1815-2002及びJGS 1816-2002において試験方法として確立された技術であることから、信頼性の高いデータを得ることができる。本方法によれば、軸力に含まれる加速度や速度に起因する値を除いて動的支持力を算出することができる。したがって、杭打込み中の動的支持力を連続的にかつ正確に測定することが可能となり、杭の支持層到達等を、杭を施工しながら把握することができ、情報化施工が可能となる。情報化施工が可能になれば、杭の打設を過不足なく行うことができ、工事の確実性が向上するとともに、安全性と経済性を同時に実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 バイブロハンマ
2 チャック装置
3 計測用部材
4 杭
51 ひずみゲージ
52 加速度計
53 照準器
54 トータルステーション
61 電源ケーブル
62 計測用ケーブル
7 操作ユニット
8 制御装置
【要約】      (修正有)
【課題】バイブロハンマによる杭の打込み中に杭の軸力及び動的支持力を効率的かつ経済的に測定する。
【解決手段】バイブロハンマ(1)による杭(4)の打込み中に前記杭(4)の軸力又は動的支持力を測定するために、計測用部材(3)が、前記バイブロハンマ(1)とチャック装置(2)との間に取り付けられ、所定の弾性係数をもつ筒体(3a)と、前記筒体(3a)の表面に取り付けられたひずみゲージ(51)とを有する。杭打込み中の動的支持力測定方法が、杭(4)の打込み中に前記ひずみゲージ(51)及び加速度計(52)の各々の測定データを取得する工程と、取得した前記測定データを所定の動的載荷試験法の算定式に適用することによって前記杭(4)の打込み中に動的支持力を算出する工程とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6