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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】防振構造、計測装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20220729BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220729BHJP
   F16M 7/00 20060101ALI20220729BHJP
   G01D 11/30 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
F16F15/04 F
F16F7/00 G
F16M7/00 C
G01D11/30 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018122842
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020003008
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511018321
【氏名又は名称】株式会社ユニロック
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】江本 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】御▲崎▼ 哲一
(72)【発明者】
【氏名】高山 宜久
(72)【発明者】
【氏名】曽我 寿孝
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-500232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328442(US,A1)
【文献】国際公開第2009/084199(WO,A1)
【文献】特開平03-033532(JP,A)
【文献】実開昭60-139937(JP,U)
【文献】特開2006-162030(JP,A)
【文献】特開2003-172019(JP,A)
【文献】特開2012-163426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 7/00
F16M 7/00
G01D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振構造であって、
本体と、
前記本体に設けられるフレームと、
前記フレームに弾性部材を介して吊り下げられ、機器が搭載される定盤と、
前記定盤の外側面に設けられる防振材と、
を具備し、
前記防振材は、帯状であり、張力が付与された状態で配置され、前記定盤のそれぞれの側面において、各側面と対向する前記本体の固定部に前記防振材の両端部近傍が接合され、前記防振材の略中央が前記定盤の側面と接合されることを特徴とする防振構造。
【請求項2】
前記定盤の各側面および下面に、前記本体側の対向面との間に隙間をあけて、ストッパが配置され、
前記ストッパの端面には、緩衝部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の防振構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の防振構造を具備し、
前記定盤の上方に測定機器が搭載され、
前記本体の下部に走行装置が設けられることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
前記本の幅方向の断面において、前記本体の上面が円弧状の凹形状であることを特徴とする請求項3記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高精度な光学系の計測器等を搭載することが可能な防振構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルなどのコンクリート構造体の検査方法として、検査対象部の固有振動数を計測することで、検査対象部の健全度を評価する方法が提案されている。この際、検査対象部に振動を加える方法として、例えば、レーザー、超音波、電磁波、光音響等を用い、検査対象部の内部欠陥を非接触で検査を行う検査方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-147813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような非接触による振動測定方法によれば、効率良くコンクリート構造体の健全度を測定することができる。しかしながら、このような非接触による検査対象部の振動測定においては、検査対象部のわずかな振動を検出する必要があるため、周囲からのノイズの影響が極めて大きい。
【0005】
このため、精度よく検査対象部の振動測定を行うためには、防振構造が必要となる。このような、防振構造としては、各種の構造が提案されているが、簡易な構造としては、弾性部材を介して防振対象物を吊り下げる方法がある。例えば、車両本体からバネによって光学計測装置を吊り下げた防振構造がある。
【0006】
しかし、吊り下げバネのみでは、減衰機構を有さないため、例えば車両が揺れることにより共振を起こし、車体内で光学装置と車両がぶつかり合うなどによって、光学装置が破壊するおそれがある。しかし、複雑な減衰機構や高価な制震装置を用いたのでは、コスト増となる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造であり、周囲の振動の影響を低減することが可能な防振構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、防振構造であって、本体と、前記本体に設けられるフレームと、前記フレームに弾性部材を介して吊り下げられ、機器が搭載される定盤と、前記定盤の外側面に設けられる防振材と、を具備し、前記防振材は、帯状であり、張力が付与された状態で配置され、前記定盤のそれぞれの側面において、各側面と対向する前記本体の固定部に前記防振材の両端部近傍が接合され、前記防振材の略中央が前記定盤の側面と接合されることを特徴とする防振構造である。
【0009】
前記定盤の各側面および下面に、前記本体側の対向面との間に隙間をあけて、ストッパが配置され、前記ストッパの端面には、緩衝部材が設けられることが望ましい。
【0010】
第1の発明によれば、本体のフレームに弾性部材を介して定盤が吊り下げられるため、振り子の原理やばねの原理によって、効率よく水平方向および鉛直方向の揺れを低周波数にすることができる。また、略V字状の帯状の防振材が、定盤の各側面と本体との間に接合されるため、上下左右の揺れに対して減衰力を発揮させることができる。
【0011】
また、定盤の各側面および下面に、本体側の対向面との間に隙間をあけて、緩衝部材が設けられるストッパが配置されるため、大きな変位に対して、ショックアブソーバーとして機能させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明にかかる防振構造を具備し、前記定盤の上方に測定機器が搭載され、前記本体の下部に走行装置が設けられることを特徴とする計測装置である。
【0013】
前記本の幅方向の断面において、前記本体の上面が円弧状の凹形状であってもよい。
【0014】
第2の発明によれば、本体の下部の走行装置からの振動が、定盤に搭載される計測機器に伝わることを防止することができる。このため、計測機器の破損やねじなどの緩みに伴う光軸ずれなどを防止することができる。
【0015】
また、本体の上面を円弧状の凹形状とすることで、軌道にカントと呼ばれる傾きが形成される場合であっても、定盤と本体との干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造であり、周囲の振動の影響を低減することが可能な防振構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】防振構造1を示す概略平面図。
図2】防振構造1を示す概略側面図。
図3図1のA-A線断面図。
図4図3のB部拡大図。
図5図3のC部拡大図。
図6】防振構造1を示す概略断面図。
図7】計測装置30を示す概略断面図。
図8】防振構造1の効果を示す図。
図9】防振構造1の効果を示す図。
図10】防振構造1の効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、防振構造1を示す概略平面図であり、図2は概略側面図である。防振構造1は、主に、本体3、定盤5、フレーム7、弾性部材11、防振材13a、13b等から構成される。
【0019】
図1に示すように、本体3は、例えば平面視が略長方形であり、本体3の互いに対向する短辺側の端部近傍には、それぞれフレーム7が設けられる。フレーム7は、略コの字状であり、両側の脚部と、脚部にまたがる梁部とを有する。本体3とフレーム7は、鋼製であり、所定の剛性を有する。なお、本体3およびフレーム7の形状は図示した例には限られない。
【0020】
図2に示すように、フレーム7の梁部の下方には複数の弾性部材11が吊り下げられる。弾性部材11は、例えばコイルばねである。弾性部材11の下端は、定盤5に接続される。すなわち、定盤5は、複数の弾性部材11によって、フレーム7に吊り下げられる。この際、定盤5の下面と本体3の上面との間には隙間が形成される。
【0021】
また、定盤5の角部にはフレーム7との干渉を避ける切欠きが設けられ、定盤5の長辺側の側面5b(切欠き部の側面)とフレーム7との間にも隙間が形成される。したがって、定盤5と本体3およびフレーム7とは直接接触しない。なお、定盤5はいわゆる光学定盤であり、上部に光学系の計測機器を搭載可能である。
【0022】
定盤5の外側面には、防振材13a、13bが配置される。防振材13aは、定盤5の短辺側の側面5aの両端部近傍にそれぞれ設けられ、防振材13bは、定盤5の長辺側の側面5bの端部近傍にそれぞれ設けられる。すなわち、防振材13a、13bは、定盤5の四隅近傍に計8カ所に設けられる。防振材13a、13bは、帯状の弾性体であり、例えば樹脂製である。
【0023】
図2に示すように、フレーム7の外面(本体3の短辺側の側面)には、フレーム7の両側の脚部にわたって一対の固定部19が固定される。一対の固定部19は、上下に離間して配置される。
【0024】
図3は、図1のA-A線断面図であり、図4は、図3のB部拡大図である。図4に示すように、防振材13aの両端部は、上下の一対の固定部19に接合される。また、防振材13aの中央部近傍が、定盤5の短辺側の側面5aに接合される。すなわち、防振材13aは、略V字状にそれぞれの部位に固定される。なお、防振材13aには、それぞれの固定部間において所定の張力が付与される。
【0025】
同様に、防振材13bの両端部は、フレーム7の内側面(固定部)に接合される。また、防振材13bの中央部近傍が、定盤5の長辺側の側面5b(切欠き部の側面)に接合される。すなわち、防振材13bも、略V字状にそれぞれの部位に固定され、それぞれの固定部間において所定の張力が付与される。
【0026】
図1および図2に示すように、本体3の短辺側の端部近傍には、壁部17が起立する。図示した例では、それぞれの辺に2カ所ずつ壁部17が設けられる。また、定盤5の側面5aにおける壁部17との対向部には、それぞれストッパ15aが設けられる。なお、ストッパ15aの先端と壁部17との間には所定の隙間が形成される。
【0027】
同様に、本体3の長辺側の端部近傍には、壁部17が起立する。図示した例では、それぞれの辺に2カ所ずつ壁部17が設けられる。また、定盤5の側面5bにおける壁部17との対向部には、それぞれストッパ15bが設けられる。また、ストッパ15bの先端と壁部17との間には所定の隙間が形成される。
【0028】
また、図3に示すように、定盤5の下面5cには、複数のストッパ15cが設けられる。ストッパ15cの先端と本体3との間には所定の隙間が形成される。すなわち、定盤5の各側面5a、5bおよび下面5cに、本体3側の各対向面との間に隙間をあけて、それぞれストッパ15a、15b、15cが配置される。
【0029】
図5は、図3のC部拡大図である。ストッパ15cは、主に弾性部材23と緩衝部材21から構成される。定盤5との接続部側にはコイルばねからなる弾性部材23が配置され、弾性部材23の先端には緩衝部材21が設けられる。すなわち、ストッパ15cの端面には、緩衝部材21が設けられる。緩衝部材21は、例えば樹脂製である。ストッパ15cは、弾性部材23と緩衝部材21によって、ショックアブソーバーとしての機能を発揮する。
【0030】
なお、ストッパ15a、15bもストッパ15cと同様の構成である。すなわち、定盤5との接続部側にはコイルばねからなる弾性部材23が配置され、弾性部材23の先端には緩衝部材21が設けられる。
【0031】
次に、防振構造1の機能について説明する。定盤5は、本体3に対して弾性部材11により吊り下げられた吊り下げ構造となる。このため、本体3の振動に対して、振り子の原理で水平方向の定盤5の揺れを低周波数にすることができる。また、同様に、本体3の振動に対して、バネの効果で鉛直方向の定盤5の揺れを低周波数にすることができる。
【0032】
また、V字状に張力が付された防振材13a、13bによって、定盤5は、各側面5a、5bにおいてそれぞれ斜め方向に力が加わる。したがって、定盤5は、水平方向および鉛直方向の成分の力で釣り合った状態で維持される。この状態から定盤5が振動すると、それぞれの防振材13a、13bによって減衰力が働く。このため、弾性部材11とともに、本体3の振動が定盤5に伝達することを抑制することができる。
【0033】
ここで、定盤5に大きな変位が生じると、防振材13a、13bが破損するか、または、定盤5が本体3やフレーム7に接触して定盤5に大きな衝撃が付与されるおそれがある。しかし、定盤5の各側面5a、5bおよび下面5cには、ストッパ15a、15b、15cが配置されるため、定盤5に大きな変位が生じた際には、ストッパ15a、15b、15cが本体3(壁部17)と接触して、衝撃を吸収することができる。したがって、定盤5への衝撃を緩和することができる。
【0034】
なお、図6に示すように、本体3の幅方向(進行方向に対して垂直な方向)の断面に、本体3の上面を円弧状の凹形状としてもよい。防振構造1は、後述するように軌道上を走行する場合があるが、軌道にはカントと呼ばれる傾きが形成される場合がある。この場合でも、防振構造1は、吊り下げ式であるため、定盤5は概ね水平を保つことができる。この際、凹形状とすることで、定盤5と本体3との干渉を避けることができる。
【0035】
次に、防振構造1を用いた計測装置について説明する。図7は、計測装置30を示す断面図(図3に対応)である。計測装置30は、防振構造1の本体3の下部に、走行装置33が設けられる。計測装置30は、走行装置33によって、地面や軌道上を走行可能である。なお、走行装置33は、必ずしも動力源を有していなくてもよく、他の車両の牽引によって走行してもよい。
【0036】
定盤5の上方には、計測機器35が設けられる。計測機器35は、例えば、レーザー、超音波、電磁波等を検査対象の表面に発信(発振)するとともに、反射したレーザー、超音波、電磁波等を受信(受振)して、検査対象の内部欠陥を検出することが可能である。例えば、トンネル内の中央通路に計測装置30を走行させて、トンネルのコンクリート壁の内部欠陥を検出することができる。このような計測機器35としては、例えば特許文献1に記載の方法を適用可能である。
【0037】
防振構造1は、本体3の走行時の振動や、駆動源等による振動が定盤5に伝達されることを抑制することができる。ここで、例えば、計測装置30をトンネル内で使用する場合には、振動成分は4Hz以下の低周波数成分であり振動量は小さい。したがって計測時の外乱振動はほとんどない。この場合、防振構造1は、車両の走行時における、本体3と中央通路壁面との衝撃等による高周波数振動を抑えることができる。このように、高周波数振動を抑制することで、ネジの緩みなどを抑制することができる。この結果、計測機器35の光学回路等の光路ズレを防ぐことができる。
【0038】
以上説明したように、本発明実施形態による防振構造1は、吊り下げ式の制震構造において、防振材13a、13bによって、効率よく振動の伝達を抑制することができる。このため、複雑な構造の制振装置などが不要であり、極めて簡易な構造で効率よく振動を抑制することができる。
【0039】
また、ストッパ15a、15b、15cによって、大変位における定盤5への衝撃等を抑制することができる。なお、大変位が生じない場合には、ストッパ15a、15b、15cは、必ずしも必要ではない。
【0040】
また、このような防振構造1を用いた計測装置30によって、例えば、トンネル内の欠陥を精度よく測定することができる。
【実施例
【0041】
本発明にかかる防振構造について、その効果を評価した。図8は、吊り下げ式の防振構造において、防振材13a、13bの有無による防振効果の差を評価したものである。図中Lは、防振材なしの水平方向の振動を示し、図中Mは、防振材なしの鉛直方向の振動を示す。また、図中Nは、防振材13a、13bを配置した水平方向の振動を示し、図中Oは、防振材13a、13bを配置した鉛直方向の振動を示す。
【0042】
吊り下げバネ(弾性部材11)のみの場合では、固有振動数が低周波数になり除振効果が上がるが、共振倍率が高いため、計測装置30の走行時の定盤5上の揺れが大きくなる。また、防振材がないと、揺れは単純な並進運動にならず、多くの振動モードが発生する。
【0043】
これに対して、防振材13a、13bを配置することで、この揺れを抑制すると共に、防振材13a、13bが定盤5の4隅近傍に8箇所設けられているため、定盤5の回転モードが抑制され、単一のモードに集約される。したがって、定盤5上の計測機器35への影響を抑制することができる。
【0044】
次に、計測装置30を走行させた際の防振構造1について、鉛直方向の防振効果を評価した。計測装置30をアスファルト製の直線コースを走行させ、その際の本体3の鉛直方向の振動と、定盤5の鉛直方向の振動を加速度センサによって検出した。センサ感度は、3m/s=1Vとした。
【0045】
図9(a)は、各部の鉛直方向の振動の測定結果である。図9(a)の上段(図中D)は、本体3の下部における振動の測定結果を示し、図9(a)の中段(図中E)は、フレーム7上部における振動の測定結果を示し、図9(a)の下段(図中F)は、定盤5の上部の振動の測定結果を示す。
【0046】
本体3の下部の振動(図中D)に比べて、定盤5を吊り下げているバネ上(フレーム7)の振動(図中E)が大きいのは、本体3の傾きなどが働いたためである。これに対して、フレーム7に吊り下げられた定盤5の振動(図中F)では、特に、本体3の下部および上部に発生していた小刻みな振動が抑制された。すなわち、高い周波数の振動に対して、振動抑制効果が得られた。
【0047】
図9(b)は、本体3の下部の振動に対する定盤5の上部の振動の比率から計算された振動伝達率を示す図であり、横軸は周波数である。図より、約5~6Hz(図中G)に共振周波数が見られるが、高周波数になればなるほど防振効果が向上していることが分かる。すなわち、定盤5上の計測機器35におけるネジの緩みやレンズのずれなどの要因となる、振動の高周波成分を効率よく抑制することができた。
【0048】
同様に、計測装置30を走行させた際の防振構造1について、水平方向の防振効果を評価した。計測装置30を草地に走行させた際の、本体3の水平方向の振動と、定盤5の水平方向の振動を加速度センサによって検出した。センサ感度は、3m/s=1Vとした。
【0049】
図10(a)は、各部の水平方向の振動の測定結果である。図10(a)の上段(図中H)は、本体3の下部における振動の測定結果を示し、図10(a)の中段(図中I)は、フレーム7上部における振動の測定結果を示し、図10(a)の下段(図中J)は、定盤5の上部の振動の測定結果を示す。
【0050】
鉛直方向の振動と同様に、本体3の下部の振動および、定盤5を吊り下げているバネ上(フレーム7)の振動に対して、小刻みな高い周波数の振動が抑制された。すなわち、水平方向に対しても、高い周波数の振動に対して、振動抑制効果が得られた。
【0051】
図10(b)は、本体3の下部の振動に対する定盤5の上部の振動の比率から計算された振動伝達率を示す図であり、横軸は周波数である。図より、約3Hz(図中K)に共振周波数が見られるが、共振倍率は小さく、5Hz以上の振動が防振されていることが分かる。すなわち、水平方向に対しても、定盤5上の計測機器35におけるネジの緩みやレンズのずれなどの要因となる、振動の高周波成分を効率よく抑制することができた。このように、走行試験においても、防振構造1によって、定盤5上の計測機器35への影響を抑制することが可能であるという効果を確認することができた。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1………防振構造
3………本体
5………定盤
5a、5b………側面
5c………下面
7………フレーム
11………弾性部材
13a、13b………防振材
15a、15b、15c………ストッパ
17………壁部
19………固定部
21………緩衝部材
23………弾性部材
30………計測装置
33………走行装置
35………計測機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10