IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 佐藤鉄工株式会社の特許一覧 ▶ 日之出水道機器株式会社の特許一覧 ▶ 一般財団法人阪神高速道路技術センターの特許一覧 ▶ 成和リニューアルワークス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】床版の撤去方法およびレール固定具
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220729BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018134356
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020012275
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000172868
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594094124
【氏名又は名称】一般財団法人阪神高速先進技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳博
(72)【発明者】
【氏名】寺口 巨生
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-292404(JP,A)
【文献】特開2017-218885(JP,A)
【文献】特開2003-193418(JP,A)
【文献】特開2006-299753(JP,A)
【文献】特開2015-124547(JP,A)
【文献】特開2018-087418(JP,A)
【文献】特開2013-241784(JP,A)
【文献】特開平01-137006(JP,A)
【文献】特開昭63-014906(JP,A)
【文献】特開平09-158124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートおよび金属を切断可能な第一切断装置を用いて、床版のうち、主桁上以外の部分を切断して撤去する第一の工程と、
主桁上の床版に、レール固定具を介してレールを前記レールの長手方向が橋軸方向と略平行となるように取り付け、次いで、前記レールに取り付け可能であって、前記レールに沿って移動可能であり、コンクリートおよび金属を切断可能な第二切断装置を前記レールに取り付け、次いで、前記第二切断装置を前記レールに沿って橋軸方向に移動させながら、前記第二切断装置により前記主桁上の前記床版のうち主桁寄りの部分を前記床版と前記主桁とを接合する接合部を含めて水平に切断し、切断された前記床版を撤去する第二の工程と、を備えることを特徴とする床版の撤去方法。
【請求項2】
前記主桁上に残った前記床版を斫り装置で除去する第三の工程と、
前記主桁に、架台を設置し、前記架台上において第三切断装置を橋軸方向に移動させながら前記主桁上に残った前記接合部のうち主桁寄りの部分を水平に切断し、切断した前記接合部を撤去する第四の工程と、を備え、
前記第三切断装置は、金属を切断可能なものであり、橋軸方向に移動するための移動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の床版の撤去方法。
【請求項3】
前記主桁上に残った前記接合部を切削装置により切削することにより接合部を除去する第五の工程を備え、
前記切削装置は、切削装置本体と、切削装置本体に支持される主軸と、工具と、を備え、
前記主軸は、前記工具を支持するともに、回転軸を中心に前記工具を回転させるものであり、
前記工具は、金属を切削可能で、回転軸に平行な面に刃を備えており、
前記工具を回転させ、前記工具の回転軸に平行な面で前記接合部の側周面を切削することを特徴とする請求項2記載の床版の撤去方法。
【請求項4】
前記主桁上のうち、前記接合部が残存する部分に対し、処理部材を設置する第五の工程を備え、
前記処理部材は、板状であり、板面を貫通する貫通孔が設けられており、前記板面が主桁に接して設置され、前記貫通孔に前記接合部が納められ、
前記処理部材の厚さは、前記貫通孔に納められる前記接合部の長さ以上となっていることを特徴とする請求項2記載の床版の撤去方法。
【請求項5】
前記架台は、間隔を保って平行に延びる一対の移動路と、前記一対の移動路を連結する連結部材とを備え、前記一対の移動路の間隔は、前記主桁の幅より長いことを特徴とする請求項2、3または4記載の床版の撤去法。
【請求項6】
レール固定具は、前記レールの取り付けが可能であり、前記床版の一方の側面に取り付けられる第一側面固定部と、前記第一側面固定部と連結し、前記床版の上面に取り付けられる第一上面固定部と、を備え、
前記第一側面固定部は、固定具により前記床版の一方の側面に固定され、
前記第一上面固定部は、固定具により前記床版の上面に固定されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の床版の撤去方法。
【請求項7】
レール固定具は、さらに前記床版の他方の側面に取り付けられる第二側面固定部と、前記第二側面固定部と連結し、前記床版の上面に取り付けられる第二上面固定部と、を備え、
前記第二側面固定部は、固定具により前記床版の他方の側面に固定され、
前記第二上面固定部は、固定具により前記床版の上面に固定され、
前記第一上面固定部と前記第二上面固定部とが連結具により連結されることを特徴とする請求項6記載の床版の撤去方法。
【請求項8】
床版にレールを固定するためのレール固定具であって、前記レールの取り付けが可能であり、前記床版の一方の側面に取り付けられる第一側面固定部と、前記第一側面固定部と連結し、前記床版の上面に取り付けられる第一上面固定部と、を備え、
前記第一側面固定部は、固定具により前記床版の一方の側面に固定され、
前記第一上面固定部は、固定具により前記床版の上面に固定されることを特徴とするレール固定具。
【請求項9】
さらに前記床版の他方の側面に取り付けられる第二側面固定部と、前記第二側面固定部と連結し、前記床版の上面に取り付けられる第二上面固定部と、を備え、
前記第二側面固定部は、固定具により前記床版の他方の側面に固定され、
前記第二上面固定部は、固定具により前記床版の上面に固定され、
前記第一上面固定部と前記第二上面固定部とが連結具により連結されることを特徴とする請求項8記載のレール固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の床版の撤去方法およびこれに用いられるレール固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、老朽化した橋梁の床版を取り換える工事が増加している。橋梁の床版を取り換える場合、まず既存の床版を撤去する必要がある。鋼桁橋の床版を撤去する場合、主桁上の床版および床版と主桁を接合するスタッドジベル等の接合部をきれいに撤去して、主桁の上フランジ上を極力平らにする必要がある。また、床版の取り換えの作業が行われている間は、交通に支障をきたすこととなるため、床版の撤去作業を早急に完了させることが求められる。
【0003】
非特許文献1には、鋼桁橋の床版の撤去方法について開示されている。この床版の撤去方法は、まず主桁上以外の床版を撤去後、主桁上の床版をウォールソーで水平に切断して、撤去する。次いで、主桁上に残ったコンクリートをチッパーで斫る。次いで、主桁上に残ったスタッドジベルの基部をメタルキラーで切断する。最後に、メタルキラーで切断しきれなかったスタッドジベルをディスクグラインダーで研削して除去する。
【0004】
しかしながら、上記床版の撤去方法は、実験段階ものであり、現地に適用できる段階には達しておらず、また工期もさらに短縮できる余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】赤松伸祐、茂呂拓実、松本茂、「高性能鋳鉄床版を用いた既存RC床版の更新に関する検討」、阪神高速道路第49 回技術研究発表会論文集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、短期間で床版を撤去することができる床版の撤去方法およびこれに用いられるレール固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
床版の撤去方法は、コンクリートおよび金属を切断可能な第一切断装置を用いて、床版のうち、主桁上以外の部分を切断して撤去する第一の工程と、主桁上の床版に、レール固定具を介してレールをその長手方向が橋軸方向と略平行となるように取り付け、次いで、レールに取り付け可能であって、レールに沿って移動可能であり、コンクリートおよび金属を切断可能な第二切断装置をレールに取り付け、次いで、第二切断装置をレールに沿って橋軸方向に移動させながら、第二切断装置により主桁上の床版のうち主桁寄りの部分を床版と主桁とを接合する接合部を含めて水平に切断し、切断された床版を撤去する第二の工程とを備えている。
【0008】
また、床版の撤去方法は、主桁上に残った床版を斫り装置で除去する第三の工程と、主桁に、架台を設置し、架台上において第三切断装置を橋軸方向に移動させながら主桁上に残った接合部のうち主桁寄りの部分を水平に切断し、切断した接合部を撤去する第四の工程とを備えていてもよい。第三切断装置は、金属を切断可能なものであり、橋軸方向に移動するための移動手段を備えている。
【0009】
また、床版の撤去方法は、主桁上に残った接合部を切削装置により切削することにより接合部を除去する第五の工程を備えていてもよい。切削装置は、切削装置本体と、切削装置本体に支持される主軸と、工具とを備えている。主軸は、工具を支持するともに、回転軸を中心に工具を回転させるものである。工具は、金属を切削可能で、回転軸に平行な面に刃を備えている。そして、第五の工程では工具を回転させ、工具の回転軸に平行な面で接合部の側周面を切削する。
【0010】
第五の工程は、上記切削装置により接合部を除去することに代えて、主桁上のうち、接合部が残存する部分に対し、処理部材を設置するものであってもよい。この場合、処理部材は、板状であり、板面を貫通する貫通孔が設けられており、板面が主桁に接して設置され、貫通孔に接合部が納められる。また、処理部材の厚さは、貫通孔に納められる接合部の長さ以上となっている。
【0011】
レール固定具は、レールの取り付けが可能であり、床版の一方の側面に取り付けられる第一側面固定部と、第一側面固定部と連結し、床版の上面に取り付けられる第一上面固定部と、を備えている。第一側面固定部は、固定具により床版の一方の側面に固定される。また、第一上面固定部は、固定具により床版の上面に固定される。
【0012】
また、レール固定具は、さらに床版の他方の側面に取り付けられる第二側面固定部と、第二側面固定部と連結し、床版の上面に取り付けられる第二上面固定部と、を備えるものであってもよい。第二側面固定部は、固定具により床版の他方の側面に固定される。また、第二上面固定部は、固定具により床版の上面に固定される。また、第一上面固定部と第二上面固定部とが連結具により連結される。
【0013】
架台は、間隔を保って平行に延びる一対の移動路と、一対の移動路を連結する連結部材とを備えている。一対の移動路の間隔は、主桁の幅より長くなっている。
【発明の効果】
【0014】
床版の撤去方法によれば、短期間で床版を撤去することができる。また、レール固定具によれば、レール及び第二切断装置が床版に確実に支持され、主桁上の床版を安全に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】鋼桁橋を示す平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】第一実施形態の床版の撤去方法の手順を示すフローチャートである。
図4】主桁上以外の床版を撤去する様子を示す断面図である。
図5】主桁上の床版を第二切断装置で切断する様子を示す平面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7】第一側面固定部を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
図8】第一上面固定部を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は右側面図であり、(C)は平面図である。
図9】主桁上の床版を第二切断装置で切断する様子を示す平面図である。
図10図9のX-X線断面図である。
図11】第二側面固定部を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
図12】他の形態の第一上面固定部および第二上面固定部を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は右側面図であり、(C)は平面図であり、(D)は左側面図である。
図13】主桁上の床版を斫り装置で斫る様子を示す部分横断面図である。
図14】主桁上の接合部を第三切断装置で切断する様子を示す平面図である。
図15図14のXV-XV線断面図である。
図16図14のXVI-XVI線断面図である。
図17】主桁上の接合部を切削装置で切削する様子を示す正面図である。
図18】主桁上の接合部を切削装置で切削する様子を示す側面図である。
図19】第二実施形態の床版の撤去方法の各工程を示すフローチャートである。
図20】第一の態様の処理部材を主桁に設置した状態を示す平面図である。
図21図20のXXI-XXI線断面図である。
図22】第二の態様の処理部材を主桁に設置した状態を示す平面図である。
図23図22のXXIII-XXIII線断面図である。
図24】第三の態様の処理部材を主桁に設置した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の床版の撤去方法について説明する。実施形態の床版の撤去方法は、鋼桁橋の床版に適用される。
以下の説明において、橋軸方向に対し水平に直交する方向を幅方向または横方向というものとし、橋軸方向および幅方向に直交する方向を上下方向とする。また、橋軸方向については前後方向ということがあるものとする。
【0017】
図1および図2は、床版の撤去方法が適用される鋼桁橋を示す。鋼桁橋は、主に、主桁10と、床版20と、接合部30とにより構成されている。
【0018】
主桁10は、橋軸方向に延びるI形部材からなり、上フランジ12と、下フランジ14と、上フランジ12および下フランジ14を接続するウェブ16とを備えている。主桁10は、幅方向に複数備えられ、それぞれ橋台または橋脚等の上に架け渡されている。
【0019】
床版20は、鉄筋コンクリートからなり、幅方向に複数備えられる主桁10の上フランジ12上に設置されている。床版20のうち、主桁10の上フランジ12に設置される部分は、版厚が厚くなるハンチ部22となっている。
【0020】
接合部30は、主桁10と床版20を接合するためのものであり、ここではスタッドジベルが用いられているもののとする。スタッドジベルは、金属製であり、基部が上フランジ12に連結し、基部から上方に延びたものとなっている。
【0021】
第一実施形態の床版の撤去方法は、図3に示すように、第一の工程S1と、第二の工程S2と、第三の工程S3と、第四の工程S4と、第五の工程S5とを備えている。
【0022】
第一の工程S1では、コンクリートおよび金属を切断可能な第一切断装置40を用いて、床版20のうち、主桁10上以外の部分を切断して撤去する。
【0023】
具体的には、床版20を縦に切断する第一切断装置40を用いて、図1および図2に示される一点鎖線のように、主桁10の上フランジ12の側端から幅方向に少し離れた位置で床版20を橋軸方向に切断するとともに、橋軸方向において適当な間隔で床版20を幅方向に切断する。そして、図4に示すように、床版20から切り離された床版ブロック24を順次撤去していく。第一切断装置40としては、コンクリート及び金属を切断可能なコンクリートカッター等を用いることができる。切り離された床版ブロック24の撤去には、クレーン(図示略)を用いることができる。クレーンを用いる場合には、床版ブロック24が床版20から切り離される前に、クレーンを床版20のうち床版ブロック24となりうる部分に連結しておき、床版ブロック24が床版20から切り離されたらクレーンで撤去する。
【0024】
第一の工程S1が完了すると、床版20は主桁10上にのみ残ることとなる。
【0025】
第二の工程S2では、図5および図6に示すように、主桁10上の床版20に、レール固定具60を介してレール50をその長手方向が橋軸方向と略平行となるように取り付ける。次いで、レール50に取り付け可能であって、レール50に沿って移動可能であり、コンクリートおよび金属を切断可能な第二切断装置120をレール50に取り付ける。次いで、第二切断装置120をレール50に沿って橋軸方向に移動させながら、第二切断装置120により主桁10上の床版20のうち主桁10寄りの部分を接合部30を含めて水平に切断し、切断された床版20を撤去する。
【0026】
レール50は、一方向に延びるレール本体52と、レール本体52をレール固定具60に取り付けるための取付部54を備えている。取付部54には、レール50をレール固定具60に取り付けるための貫通孔(図示略)が設けられている。レール50は、貫通孔にボルト56を通し、ボルト56を後述するレール固定具60の締結孔73(レール固定部)に締結することにより、レール固定具60に取り付けられる。
【0027】
レール固定具60は、図5および図6に示すように、レール50の取り付けが可能であり、床版20の一方の側面に取り付けられる第一側面固定部70と、第一側面固定部70と連結し、床版20の上面に取り付けられる第一上面固定部80と、を備えている。第一側面固定部70は、固定具77により床版20の一方の側面に固定される。また、第一上面固定部80は、固定具87により床版20の上面に固定される。レール固定具60は、例えば金属で形成される。
【0028】
第一側面固定部70は、図7に示すように、板状であり、板面が略矩形となっている。第一側面固定部70の高さは、主桁10上の床版20の側面(幅方向に直交する面)の高さより、高くなっている。第一側面固定部70の下部には、固定具77を用いて第一側面固定部70を床版20の側面に固定するために、板面を貫通する貫通孔74が備えられている。固定具77としては、例えばアンカーボルトを用いることができる。
また、第一側面固定部70の板面の中央には、ボルト56を用いてレール50の取付部54を第一側面固定部70に固定するために、ボルト56が締結される締結孔73(レール固定部)が備えられている。
また、第一側面固定部70の上部には、第一連結具88を用いて第一側面固定部70と第一上面固定部80とを連結するために、板面を貫通する貫通孔75が備えられている。第一連結具88としては、ボルトと、ボルトに締結されるナットとを用いることができる。
【0029】
第一側面固定部70は、床版20のうちハンチ部22の上側にある側面(幅方向に直交する面)にその板面を合わせ、貫通孔74を介してアンカーボルト(固定具77)を床版20の下部に打ち込むことにより床版20に固定される。第一側面固定部70は、床版20の側面に固定された状態では、その上端が床版20の上面より高い位置にあり、床版20の上面より上方に突出する。
【0030】
第一上面固定部80は、図8に示すように、一方向に延びたものであり、その方向に対する横断面が略L字状となっている。第一上面固定部80は、底部81と、底部81に連結する第一側部82とを備えている。底部81は板状であって、板面が略矩形となっている。底部81には、固定具87を用いて第一上面固定部80を床版20の上面に固定するために、板面を貫通する貫通孔84が備えられている。第一側部82は、板状であって、板面が略矩形であり、板面が底部81の板面に対し直角となるように、その下端部が底部81の一方の側端部に連結している。第一側部82には、第一連結具88を用いて第一上面固定部80を第一側面固定部70に固定するために、板面を貫通する貫通孔85が備えられている。
【0031】
第一上面固定部80は、図5および図6に示すように、第一側部82のうち第一側面固定部70側の側面(板面)を第一側面固定部70の側面(板面)うち床版20の上面より上側に突出する部分に合わせるとともに、底部81の底面を床版20の上部に合わせ、第一上面固定部80の第一側部82の貫通孔85および第一側面固定部70の貫通孔75にボルト(第一連結具88)を通してナット(第一連結具88)を締結することにより、第一側面固定部70と連結される。また、第一上面固定部80は、アンカーボルト(固定具87)を底部81の貫通孔84に通して床版20の上面に打ち込むことにより床版20に固定される。
【0032】
なお、第一側面固定部70および第一上面固定部80は、溶接で連結されるものであってもよいし、あらかじめ一体的に形成したものであってもよい。
【0033】
レール固定具60は、第一側面固定部70および第一上面固定部80をそれぞれ個別に床版20に取り付けるより、床版20に取り付ける前に、あらかじめ第一側面固定部70と第一上面固定部80とを第一連結具88を用いて連結しておき、連結された状態で床版20に取り付ける方が好ましい。あらかじめ第一側面固定部70と第一上面固定部80を連結しておけば、レール固定部を床版20により一層容易かつ効率的に取り付けることができる。
【0034】
レール固定具60は、以下に示すような他の態様とすることができる。他の態様のレール固定具60は、図9および図10に示すように、レール50の取り付けが可能であり、床版20の一方の側面に取り付けられる第一側面固定部70と、第一側面固定部70と連結し、床版20の上面に取り付けられる第一上面固定部100と、床版20の他方の側面に取り付けられる第二側面固定部90と、第二側面固定部90と連結し、床版20の上面に取り付けられる第二上面固定部110と、を備えている。そして、第一側面固定部70は固定具77により床版20の一方の側面に固定される。また、第二側面固定部90は固定具97により床版20の他方の側面に固定される。また、第一上面固定部100と第二上面固定部110は第二連結具109により連結される。レール固定具60は、例えば金属で形成される。
【0035】
他の態様のレール固定具60の構成のうち、第一側面固定部70は、図7に示される上記第一側面固定部70と同じものである。第一側面固定部70は、床版20のうちハンチ部22の上側にあって幅方向に直交する一方の側面にその板面を合わせ、貫通孔74を介して固定具77を床版20の下部に打ち込むことにより床版20に固定される。
【0036】
第二側面固定部90は、図11に示すように、締結孔73(レール固定部)を備えていないことを除いて、基本的には上記の第一側面固定部70と同じものである。第二側面固定部90の下部には、固定具97を用いて第二側面固定部90を床版20の側面に固定するために、板面を貫通する貫通孔94が備えられている。また、第二側面固定部90の上部には、第一連結具118を用いて第二側面固定部90と第二上面固定部110とを連結するために、板面を貫通する貫通孔95が備えられている。第二側面固定部90は、床版20のうちハンチ部22の上側にあって幅方向に直交する他方の側面にその板面を合わせ、貫通孔94を介して固定具97を床版20の下部に打ち込むことにより床版20に固定される。固定具77,97としては、例えばアンカーボルトを用いることができる。第一側面固定部70および第二側面固定部90は、床版20の側面に固定された状態では、その上端が床版20の上面より高い位置にあり、床版20の上面より上方に突出することとなる。
【0037】
第一上面固定部100および第二上面固定部110は、図12に示すように、それぞれ一方向に延びたものとなっており、その方向における横断面が略C字状となっている。第一上面固定部100および第二上面固定部110は、それぞれ底部101,111と、底部101,111と連結する第一側部102,112および第二側部103,113とを備えている。
【0038】
底部101,111は板状であって、板面が略矩形となっている。第一側部102,112は、板状であって板面が略矩形であり、板面が底部101,111の板面に対し直角となるように、その下端部が底部101,111の一方の側端部に連結している。また、第二側部103,113は、それぞれ板状であって板面が略矩形であり、板面が底部101,111の板面に対し直角となるように、その下端部が底部101,111の他方の側端部に連結している。
【0039】
第一上面固定部100の第一側部102には、第一連結具108を用いて第一上面固定部100と第一側面固定部70とを連結するために、板面を貫通する貫通孔104が備えられている。また、第二上面固定部110の第一側部112には、第一連結具118を用いて第二上面固定部110と第二側面固定部90とを連結するために、板面を貫通する貫通孔114が備えられている。第一連結具108,118としては、ボルトと、ボルトに締結されるナットとを用いることができる。また、第一上面固定部100および第二上面固定部110の第二側部103,113には、第二連結具109を用いて第一上面固定部100と第二上面固定部110とを連結するために、板面を貫通する貫通孔105,115が備えられている。第二連結具109としては、ボルトと、ボルトに締結されるナットとを用いることができる。
【0040】
第一上面固定部100は、第一側部102のうち第一側面固定部70側の側面(板面)を第一側面固定部70の側面(板面)うち床版20の上面より上側に突出する部分に合わせ、第一上面固定部100の第一側部102の貫通孔104および第一側面固定部70の貫通孔75にボルト(第一連結具108)を通してナット(第一連結具108)を締結することにより、第一側面固定部70と連結される。
第二上面固定部110は、第一側部112のうち第二側面固定部90側の側面(板面)を第二側面固定部90の側面(板面)のうち床版20の上面より上側に突出する部分に合わせ、第二上面固定部110の第一側部112の貫通孔114および第二側面固定部90の貫通孔95にボルト(第一連結具118)を通してナット(第一連結具118)を締結することにより、第二側面固定部90と連結される。
第一上面固定部100および第二上面固定部110は、それぞれの第二側部103,113の貫通孔105,115にボルト(第二連結具109)を通てナット(第二連結具109)を締結することにより連結される。
【0041】
なお、第一上面固定部100および第二上面固定部110は、アンカーボルトなどの固定具を用いて床版20の上面に固定してもよい。この場合、第一上面固定部100および第二上面固定部110の底部101,111に、板面を貫通する貫通孔を設け、その貫通孔からアンカーボルトを床版20の上面に打ち込むことにより第一上面固定部100および第二上面固定部110を床版20に固定することができる。
【0042】
第一側面固定部70および第一上面固定部100は、溶接で連結されるものであってもよいし、あらかじめ一体的に形成したものであってもよい。また、第二側面固定部90および第二上面固定部110は、溶接で連結されるものであってもよいし、あらかじめ一体的に形成したものであってもよい。
【0043】
レール固定具60は、床版20に取り付ける前に、第一側面固定部70と第一上面固定部100を第一連結具108により連結し、第二側面固定部90と第二上面固定部110を第一連結具118により連結し、第一上面固定部100と第二上面固定部110を第二連結具109により仮に連結しておくと、レール固定部を床版20により一層容易かつ効率的に取り付けることができる。
【0044】
第二切断装置120は、コンクリートおよび鉄筋を切断可能な装置であり、本実施形態ではウォールソーが用いられる。第二切断装置120は、図5および図6に示すように、レール50に取り付けられて、レール50に沿って移動可能な第二切断装置本体122と、第二切断装置本体122に取り付けられて第二切断装置本体122により回転駆動させられる円盤状のカッター124とを備えている。カッター124は、円盤の外周縁にコンクリートおよび金属を切断可能な刃を備えており、円盤の中心を軸として回転する。第二切断装置120は、レール50に取り付けられた状態では、カッター124の回転軸が上下方向に平行となり、盤面が上下方向に直交する。なお、第二切断装置120は、第二切断装置120の移動を駆動させるための移動駆動手段を備えるものであってもよい。
【0045】
上記各構成を踏まえ、図5図12を参照しながら第二の工程S2について具体的に説明する。まず、レール固定具60を主桁10上の床版20に取り付ける前に、あらかじめレール固定具60の第一側面固定部70と第一上面固定部80を第一連結具88により連結し、これらを一体化しておく。他の態様のレール固定具60を用いる場合には、第一側面固定部70と第一上面固定部100を第一連結具108により連結し、第二側面固定部90と第二上面固定部110を第一連結具118により連結し、さらに第一上面固定部100と第二上面固定部110を第二連結具109により仮連結して、レール固定具60の各構成を一体化しておく。
【0046】
次いで、一体化されたレール固定具60を床版20の上面および側面に設置し、固定具77,87,97を用いて床版20に固定する。次いで、レール50を橋軸方向と平行になるようにして第一側面固定部70に取り付ける。レール50は、取付部54の貫通孔(図示略)にボルト56を通し、ボルト56を第一側面固定部70の締結孔73に締結させることによりレール固定具60に取り付ける。次いで、レール50に第二切断装置120を取り付ければ床版20を切断する準備が完了する。そして、第二切断装置120をレール50に沿って橋軸方向に移動させながら、主桁10上の床版20のうちハンチ部22などの主桁10寄りの部分を接合部30を含めて水平に切断する。主桁10上の床版20の切断が完了したら、切断された床版ブロック(図示略)からレール50およびレール固定具60を取り外し、切断された床版ブロックを撤去する。なお、主桁10上の床版20は、第一の工程S1で幅方向に縦に切断されている。床版ブロックの撤去には、クレーン(図示略)を用いることができる。クレーンを用いる場合には、床版20を切断する前に、床版20が切断される部分にクレーンをあらかじめ連結しておき、床版ブロックが床版20から切り離されたらクレーンで撤去する。
【0047】
第二の工程S2が完了すると、主桁10上には第二切断装置120により切断しきれなかった床版20と接合部30が残ることとなる。第二工程では、主桁10上の床版20のうち主桁10寄りの部分を第二切断装置120で切断するため、床版20の鉄筋を含む部分は撤去され、主桁10上に残る床版20はコンクリートのみで構成される。
【0048】
第三の工程S3では、図13に示すように、第二の工程S2後に主桁10上に残った床版20と接合部30のうち、床版20を斫り装置130を用いて除去する。
【0049】
斫り装置130としては、コンクリートチッパーやコンクリートブレーカーを用いることができる。
【0050】
第三工程が完了すると、主桁10上には第二の工程S2で切断しきれなかった接合部30のみが残ることとなる。
【0051】
第四の工程S4では、図14および図15に示すように、主桁10に、架台140を設置し、架台140上において第三切断装置150を橋軸方向に移動させながら主桁10上に残った接合部30のうち主桁10寄りの部分を水平に切断し、切断した接合部30を撤去する。第三切断装置150は、金属を切断可能なものであり、架台140上で移動するための移動手段153を備えている。
【0052】
架台140は、図14および図16に示すように、一対の移動路142,142と、一対の移動路142,142を連結する移動路連結部144とを備えている。
【0053】
移動路142は、第三切断装置150の通路となるものであり、金属製であって、一方向に延びる板状の部材からなり、板面が略矩形状となっている。一対の移動路142,142は、板面を上下方向に直交させた状態で、幅方向に間隔を保って長手方向が平行となるように配される。その間隔は、主桁10の幅、言い換えれば主桁10の上フランジ12の幅以上の長さとなっている。
【0054】
移動路連結部144は、間隔を保って配される一対の移動路142,142を連結するためのものであり、金属製であって、一方向に延びる板状の部材からなる。移動路連結部144は、板面が上下方向に直交し、またその長手方向が移動路142の長手方向に直交する状態で一対の移動路142,142の上面の前側および後側の部分に連結される。
【0055】
移動路142および移動路連結部144には、両者を第三連結具148により固定するために、両者が重なる部分にそれぞれの板面を貫通する貫通孔145,146が設けられている。第三連結具148としては、ボルトと、ボルトに締結されるナットを用いることができる。一対の移動路142,142および移動路連結部144は、貫通孔にボルト(第三連結具148)を通して、ナット(第三連結具148)を締結することにより、一体化される。
【0056】
第三切断装置150は、図14および図15に示すように、第三切断装置本体151と、第三切断装置本体151に取り付けられ、循環駆動するカッター152とを備えている。
【0057】
第三切断装置本体151は、正面視して門型のものであり、その側部には第三切断装置150を移動させるための移動手段153として車輪を備えている。
【0058】
移動手段153は横方向を軸として回転する回転軸に連結して回転するものであり、これにより第三切断装置150は前後方向に移動できるようになっている。
【0059】
第三切断装置本体151は、一対のプーリー154,154を備えている。一対のプーリー154,154は、それぞれ門の左右の脚部分において、前後方向を軸として回転する回転軸に回転可能に支持されている。少なくとも一方のプーリー154は第三切断装置本体151により回転駆動される。
【0060】
カッター152は、ベルト状でかつ環状のものであり、一対のプーリー154,154に架け渡されている。カッター152は、一対のプーリー154,154間では上下で水平となっている。この水平となる部分の長さは、幅方向における接合部30が存在する区間の長さより長いものとなっている。カッター152は、前後方向の一端に金属を切断可能な刃を備えている。一対のプーリー154,154に架け渡されたカッター152のうち下側の水平な部分は、切断対象を切断する部分であり、切断対象をその根元付近で切断するため、移動手段153の接地面の近くに位置している。
【0061】
第三切断装置150は、橋軸方向に移動しながら、プーリー154でカッター152を循環させることにより、切断対象を水平に切断する。この際、第三切断装置150は、接合部30を第三切断装置本体151の脚の間にくぐらせて移動する。
【0062】
上記各構成を踏まえ、図14図16を参照しながら第四の工程S4について具体的に説明する。まず、架台140を主桁10の上フランジ12上に設置する。架台140は、移動路142の長手方向が橋軸方向と略平行となり、一対の移動路142,142の間に主桁10の上フランジ12が位置し、また移動路連結部144は、幅方向と略平行となった状態で、主桁10の上フランジ12上に設置される。また、架台140は、移動路連結部144が主桁10の上フランジ12上に残っている接合部30に干渉しない位置に設置される。架台140を主桁10の上フランジ12に設置したら、固定手段149を用いて、架台140を主桁10に固定する。固定手段149としては、例えば万力を用いることができる。移動路連結部144と上フランジ12とを万力で固定することにより、架台140が主桁10に固定される。
【0063】
次いで、第三切断装置150をその前後方向が橋軸方向と平行となるようにして、架台140の一対の移動路142,142に設置する。そして、カッター152を循環させながら第三切断装置150を橋軸方向に移動させて、主桁10上に残った接合部30を水平に切断していく。この際、幅方向に接合部30が複数存在する場合には、第三切断装置150により幅方向にある接合部30をまとめて同時に切断していく。架台140を設置した範囲以外の接合部30を切断する場合には、固定手段149による架台140の固定を解除し、架台140を橋軸方向にずらし、主桁10上の全ての接合部30を切断するまで上記工程を繰り返す。
【0064】
第四の工程S4が完了すると、主桁10上には第四の工程S4で切断しきれなかった接合部30が残ることとなる。
【0065】
第五の工程S5では、図17および図18に示すように、主桁10上に残った接合部30を切削装置160により切削することにより接合部30を除去する。なお、図17は、切削装置160にとっては側面図となり、図18は切削装置160にとっては正面図となる。
【0066】
切削装置160は、切削装置本体161と、切削装置本体161に支持される主軸167と、金属を切削可能な工具168と、を備えている。
【0067】
切削装置本体161は、切削装置本体161に対して前後方向および横方向に移動する移動部162を備えている。また、移動部162には主軸167を昇降させる昇降部(図示略)が備えられている。切削装置本体161は、移動部162の移動や主軸167の昇降を操作するための操作部163を備えている。
【0068】
また、切削装置本体161は、主桁10に設置するために、一対の設置部164を備えている。設置部164は、前後方向に延びるものであり、その方向に対する横断面が略L字状となっている。設置部164は、底部165と、底部165と連結する側部166とを備えている。底部165は板状であって、板面が略矩形となっている。側部166は、板状であって、板面が略矩形であり、板面が底部165の板面に対し直角となるように、その下端が底部165の一方の側端部に連結している。設置部164は、底部165の底面が略水平になるようにして、ねじ等の固定具を用いて側部166を切削装置本体161の側面に固定することにより、切削装置本体161に取り付けられる。
【0069】
主軸167は、工具168を支持するともに、上下方向を回転軸として工具168を回転駆動させるものであり、移動部162に昇降可能に支持されている。
【0070】
工具168は、金属を切削可能であって、円柱状のものであり、その上部が主軸167に取り付けられている。また、工具168は、回転軸に平行な面、すなわち側周面に切削刃を備えている。工具168としては、エンドミルを用いることができる。
【0071】
切削装置160は、操作部163を操作することにより主軸167および工具168を水平方向に移動させたり、昇降させたりすることができる。
【0072】
上記各構成を踏まえ、図17および図18を参照しながら第五の工程S5について具体的に説明する。まず、切削装置160を、切削装置160の前後方向が主桁10の幅方向と略平行となるようにするとともに、工具168が接合部30の側方に位置するように設置する。この際、工具168の先端は、上フランジ12の上面と接していてもよいし、接しない程度に上フランジ12の上面に近接させるようにしてもよい。主桁10に設置した切削装置160は、万力などの固定手段149により、設置部164と主桁10の上フランジ12を挟み込むことにより、主桁10に固定する。切削装置160を主桁10に固定すると、接合部30の切削が行い易く、切削の仕上がりがよくなるとともに、効率よく切削できる。
【0073】
次いで、切削装置160の工具168を回転させ、操作部163を操作して工具168を移動させることにより、主桁10の幅方向にある一または複数の接合部30を個々に切削して、除去していく。この際、工具168の側周面を接合部30の側周面にあてて接合部30を切削していく。切削装置160を設置した範囲で切削できない接合部30については、切削装置160を上フランジ12の幅方向の反対側に移動させて設置したり、橋軸方向に移動させて設置して、接合部30の切削を行う。
【0074】
第五の工程S5が完了すると、主桁10上の接合部30が除去され、主桁10の上フランジ12の上面は面一となり、床版20の撤去が完了する。
【0075】
なお、切削装置160は、移動部162および昇降部の両方および一方を備えないものであってもよい。また、切削装置160は、設置部164を備えないものであってもよい。設置部164を備えない場合、切削装置160は主桁10に固定しないで接合部30の切削を行うものとなる。
【0076】
上記第一実施形態の床版の撤去方法によると、短期間で床版20を撤去することができる。
【0077】
また、第一実施形態の床版の撤去方法は、第二の工程S2を備えることにより、短時間で主桁10上に残る床版20の大部分を切断して撤去することができる。また、レール50の側面にのみ取り付けられるレール固定具60を介してレール50および第二切断装置120を主桁10上の床版20の側面に取り付けようとすると、床版20の厚さが第二切断装置120に対して相対的に薄いため、レール固定具60を床版20に固定するための固定具を打ち込むスペースやレール50の取付部54を取り付ける範囲が狭く、主桁10上の床版20にレール50および第二切断装置120を確実に支持させることができないという問題があるが、第二の工程S2では、レール固定具60を床版20の上面と側面に固定するので、レール50および第二切断装置120を確実に床版20に支持させることができる。また、レール固定具60は、実施形態のように、第一側面固定部70の高さが、主桁10上の床版20の側面(幅方向に直交する面)の高さより高く、第一側面固定部70を主桁10の上面より突出させて床版20に取り付けることにより、レール50の取付部54が取り付けられる範囲を上下方向に広く確保することができるので、レール50の取付部54を確実に第一側面固定部70に固定することができ、ひいてはレール50および第二切断装置120をより確実に床版20に支持させることができる。また、第二の工程S2では、レール固定具60を床版20に設置する前に、第一上面固定部80と第一側面固定部70を予め第一連結具88により連結しておけば、レール固定具60を床版20に容易かつ短時間で取り付けることができる。
【0078】
また、第一実施形態の床版の撤去方法は、第四の工程S4を備えることにより、主桁10上に残った接合部30を短時間で切断し、撤去することができる。また、第四の工程S4は、架台140の移動や設置が容易であり、架台140が設置された範囲における接合部30の切断が完了したら、架台140を橋軸方向に移動させて主桁10に設置し、第三切断装置150による主桁10上に残った接合部30の切断を繰り返すことができる。
【0079】
また、第一実施形態の床版の撤去方法は、第五の工程S5を備えることにより、切削装置160を用いて、主桁10上に残った接合部30を切削して除去するので、従来のグラインダーなどの研磨装置で接合部30を研磨して除去する場合に比べ、作業時間を大幅に短縮することができ、また除去面も格段にきれいに仕上げられる。
【0080】
次に、第二実施形態の床版の撤去方法について説明する。第二実施形態の床版の撤去方法は、図19に示すように、第一の工程S1と、第二の工程S2と、第三の工程S3と、第四の工程S4と、第五の工程S5とを備えている。第二実施形態の床版の撤去方法は、第一実施形態とは、第五の工程S5の内容だけが異なるものであるため、ここでは第五の工程S5についてのみ説明する。
【0081】
第五の工程S5では、図20図24に示すように、主桁10上のうち、接合部30が残存する部分に対し、処理部材170,180,190を設置する。
処理部材170,180,190は、金属製の板状のものであり、板面を貫通する貫通孔172,182,192を備えている。貫通孔172,182,192は、その孔内に接合部30を収容するためのものであり、接合部30が存在する位置に設けられている。貫通孔172,182,192の径は、貫通孔172,182,192内に接合部30を収容できる大きさとなっている。処理部材170,180,190の厚さは、処理部材170,180,190を主桁10上に設置した際、接合部30が貫通孔172,182,192から突出しないようにするために、接合部30の長さ以上となっている。
【0082】
処理部材170,180,190は、板面が主桁10の上フランジ12に接するようにして主桁10に設置され、貫通孔172,182,192に接合部30が納められる。
【0083】
処理部材170,180,190は、その上面に新規の床版20を主桁10に取り付けるための床版固定具(図示略)が設置され、ボルトとナットなどにより床版固定具とともに上フランジ12に固定される。そのため、処理部材170,180,190は、あらかじめボルトを通すための貫通孔174,184,194を備えるものであってもよい。また、主桁10に設置した処理部材170,180,190の貫通孔172,182,192には、孔を埋め戻すために、パテなどの充填剤を充填してもよい。
【0084】
以下に、処理部材170,180,190の複数の態様について説明する。処理部材170の第一の態様は、図20および図21に示すように、板面の形状が矩形であり、橋軸方向においては複数の接合部30を収容でき、また幅方向においては全ての接合部30を収容できる複数の貫通孔172を備えている。処理部材170の第一の態様は、橋軸方向に複数設置することができ、橋軸方向において、すべての接合部30を貫通孔172に収容するように複数設置してもよいし、一部の区間の接合部30には設置しないようにしてもよい。
【0085】
処理部材180の第二の態様は、図22および図23に示すように、板面の形状が矩形であり、橋軸方向において複数の接合部30を収容できる複数の貫通孔182を備えている。処理部材180の第二の態様は、橋軸方向および幅方向に複数設置することができ、橋軸方向および幅方向において、すべての接合部30を貫通孔182に収容するように複数設置してもよいし、一部の区間の接合部30には設置しないようにしてもよい。処理部材180の第二の態様は、処理部材180上に新たに部材を設置する観点からは、幅方向に関しては、少なくとも幅方向の最も外側において橋軸方向に並ぶ接合部30に設置されることが好ましい。
【0086】
処理部材190の第三の態様は、図24に示すように、板面の形状が矩形であり、1の幅方向に並ぶ全ての接合部30を収容できる複数の貫通孔192を備えている。処理部材190の第三の態様は、橋軸方向に複数備えることができ、橋軸方向において、すべての接合部30を貫通孔192に収容するように複数設置してもよいし、一部の区間の接合部30には設置しないようにしてもよい。
【0087】
なお、処理部材170,180,190は、1の貫通孔を備え、1の接合部30を収容できるものであってもよい。
【0088】
上記第二実施形態の床版の撤去方法によると、第五の工程S5において、接合部30が残存する部分に対し、処理部材170,180,190を設置して、接合部30を貫通孔172,182,192に収容することにより、主桁10上を平らにすることができ、主桁10上に残存する接合部30を完全に除去する必要がないので、第一実施形態に比べ、床版20の撤去にかかる工期を大幅に短縮することができる。
【0089】
本発明の床版の撤去方法およびこれに用いられるレール固定具は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 主桁
12 上フランジ
14 下フランジ
16 ウェブ
20 床版
22 ハンチ部
24 床版ブロック
30 接合部
40 第一切断装置
50 レール
52 レール本体
54 取付部
56 ボルト
60 レール固定具
70 第一側面固定部
73 締結孔(レール固定部)
74,75 貫通孔
77 固定具
80 第一上面固定部
81 底部
82 第一側部
84,85 貫通孔
87 固定具
88 第一連結具
90 第二側面固定部
94,95 貫通孔
97 固定具
100 第一上面固定部
101 底部
102 第一側部
103 第二側部
104,105 貫通孔
108 第一連結具
109 第二連結具(連結具)
110 第二上面固定部
111 底部
112 第一側部
113 第二側部
114,115 貫通孔
118 第一連結具
120 第二切断装置
122 第二切断装置本体
124 カッター
130 斫り装置
140 架台
142 移動路
144 移動路連結部
145,146 貫通孔
148 第三連結具
149 固定手段
150 第三切断装置
151 第三切断装置本体
152 カッター
153 移動手段
154 プーリー
160 切削装置
161 切削装置本体
162 移動部
163 操作部
164 設置部
165 底部
166 側部
167 主軸
168 工具
170,180,190 処理部材
172,174,182,184,192,194 貫通孔
S1 第一の工程
S2 第二の工程
S3 第三の工程
S4 第四の工程
S5 第五の工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24