(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】屋根頂部際止水構造及び屋根用板金役物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 1/36 20060101AFI20220729BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E04D1/36
E04D3/40 A
(21)【出願番号】P 2018179897
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390018463
【氏名又は名称】アイジー工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】菊地 伸一
(72)【発明者】
【氏名】眞田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃太
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084415(JP,A)
【文献】特開2006-241796(JP,A)
【文献】特開2018-053707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/36
E04D 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製屋根材が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み又は換気部材本体を設置する際の屋根頂部際止水構造であって、
野地板の上面に下地材が配置され、
前記下地材の上面となる下地材上面に、前記棟包みを設置する貫板、又は前記換気部材本体が配置され、
前記金属製屋根材の屋根頂部側端部を、折り曲げて立ち上げることで立上片を形成し、
前記立上片を、前記下地材の軒先面となる下地材軒先面に当接させ、
前記貫板又は前記換気部材本体を、前記下地材軒先面よりも軒先側に突出させ、
突出させた前記貫板と前記金属製屋根材との間、又は突出させた前記換気部材本体と前記金属製屋根材との間に、弾性力を有する止水材を配置し、
前記止水材にて、前記立上片及び前記下地材軒先面を覆い、
前記止水材の少なくとも一部を覆う水切材を設け、
前記水切材が、前記下地材上面に当接される水切取付板材と、前記水切取付板材の端部から立ち下げた水切立下板材とで形成され、
前記止水材を前記水切立下板材で前記下地材軒先面に押しつけて、前記水切取付板材を固定具で前記下地材に固定する
ことを特徴とする屋根頂部際止水構造。
【請求項2】
前記水切立下板材と前記水切取付板材との内角を90度より大きな角度とした
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根頂部際止水構造。
【請求項3】
前記建造物の屋根に前記金属製屋根材が設置された状態では、前記金属製屋根材を形成する化粧面が、前記野地板と平行ではない横葺き金属屋根材を用いた建築物の屋根頂部において、
前記水切立下板材として、前記水切取付板材の一端部から立ち下げた第1水切立下板材と、前記水切取付板材の他端部から立ち下げた第2水切立下板材とを有し、
前記第1水切立下板材と前記第2水切立下板材との立下長さを異ならせた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の屋根頂部際止水構造。
【請求項4】
金属製屋根材が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み又は換気部材本体を設置する屋根用板金役物の施工方法であって、
野地板の上面に下地材を取り付ける下地材取り付け工程と、
前記下地材取り付け工程の後に、前記金属製屋根材の屋根頂部側端部を折り曲げて立ち上げた立上片を、前記下地材の軒先面となる下地材軒先面に当接させる金属製屋根材取り付け工程と、
前記金属製屋根材取り付け工程の後に、前記立上片及び前記下地材軒先面を、弾性力を有する止水材にて覆う止水材取り付け工程と、
前記止水材取り付け工程の後に、水切取付板材を、前記下地材の上面となる下地材上面に当接させ、前記水切取付板材の一端部から立ち下げた水切立下板材で前記止水材を前記下地材軒先面に押しつけて、前記水切取付板材を固定具で前記下地材に固定する水切材取り付け工程と、
前記水切材取り付け工程の後に、前記棟包みを設置する貫板、又は前記換気部材本体を、前記下地材軒先面よりも軒先側に突出させて取り付ける屋根用板金役物取り付け工程と
を有する
ことを特徴とする屋根用板金役物の施工方法。
【請求項5】
前記水切材取り付け工程では、前記水切取付板材の他端部を前記下地材上面の棟側端部に合わせることで、前記水切立下板材で前記止水材を前記下地材軒先面に押しつける
ことを特徴とする請求項4に記載の屋根用板金役物の施工方法。
【請求項6】
前記屋根用板金役物取り付け工程では、前記貫板の前端、又は前記換気部材本体の前端を、前記水切取付板材の前端に合わせることで位置決めを行う
ことを特徴とする請求項4に記載の屋根用板金役物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製屋根材が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み又は換気部材本体を設置する際の屋根頂部際止水構造、及び棟包み又は換気部材本体を設置する屋根用板金役物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1又は特許文献2に開示されているような、断熱性、遮音性、耐震性が極めて高く、軽量で耐久性や施工性にも優れた横葺きの金属製屋根材が普及しており、このような横葺きの金属製屋根材はリフォームにも最適である。
ところで、小屋裏換気の重要性が認識されはじめており、横葺きの金属製屋根材が用いられる建造物においても換気棟を設けることが極めて有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-66698号公報
【文献】特開2016-180277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、横葺きの金属製屋根材では、屋根頂部際の施工位置によって、下地材上面から金属製屋根材の化粧面までの隙間が変化する。
従って、金属製屋根材と下地材上面との隙間に、弾性力を有する止水材を配置し、この止水材を金属製屋根材側に押圧することで水密性を担保するためには、最大隙間に合わせた止水材を用いる必要があるが、隙間が小さい場合には止水材の圧縮に対する反発力が増加するために施工性が低下してしまう。
【0005】
そこで本発明は、金属製屋根材と下地材上面との隙間の変化に影響することなく、水密性及び施工性に優れた屋根頂部際止水構造及び屋根用板金役物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の屋根頂部際止水構造は、金属製屋根材10が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み20又は換気部材本体30を設置する際の屋根頂部際止水構造であって、野地板41の上面に下地材50が配置され、前記下地材50の上面となる下地材上面50Uに、前記棟包み20を設置する貫板20X、又は前記換気部材本体30が配置され、前記金属製屋根材10の屋根頂部側端部を、折り曲げて立ち上げることで立上片17を形成し、前記立上片17を、前記下地材50の軒先面となる下地材軒先面50Fに当接させ、前記貫板20X又は前記換気部材本体30を、前記下地材軒先面50Fよりも軒先側に突出させ、突出させた前記貫板20Xと前記金属製屋根材10との間、又は突出させた前記換気部材本体30と前記金属製屋根材10との間に、弾性力を有する止水材60を配置し、前記止水材60にて、前記立上片17及び前記下地材軒先面50Fを覆い、前記止水材60の少なくとも一部を覆う水切材70を設け、前記水切材70が、前記下地材上面50Uに当接される水切取付板材71と、前記水切取付板材71の端部から立ち下げた水切立下板材72とで形成され、前記止水材60を前記水切立下板材72で前記下地材軒先面50Fに押しつけて、前記水切取付板材71を固定具で前記下地材50に固定することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の屋根頂部際止水構造において、前記水切立下板材72と前記水切取付板材71との内角αを90度より大きな角度としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の屋根頂部際止水構造において、前記建造物の屋根に前記金属製屋根材10が設置された状態では、前記金属製屋根材10を形成する化粧面11が、前記野地板41と平行ではない横葺き金属屋根材を用いた建築物の屋根頂部において、前記水切立下板材72として、前記水切取付板材71の一端部から立ち下げた第1水切立下板材72aと、前記水切取付板材71の他端部から立ち下げた第2水切立下板材72bとを有し、前記第1水切立下板材72aと前記第2水切立下板材72bとの立下長さを異ならせたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明の屋根用板金役物の施工方法は、金属製屋根材10が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み20又は換気部材本体30を設置する屋根用板金役物の施工方法であって、野地板41の上面に下地材50を取り付ける下地材取り付け工程と、前記下地材取り付け工程の後に、前記金属製屋根材10の屋根頂部側端部を折り曲げて立ち上げた立上片17を、前記下地材50の軒先面となる下地材軒先面50Fに当接させる金属製屋根材10取り付け工程と、前記金属製屋根材10取り付け工程の後に、前記立上片17及び前記下地材軒先面50Fを、弾性力を有する止水材60にて覆う止水材取り付け工程と、前記止水材取り付け工程の後に、水切取付板材71を、前記下地材50の上面となる下地材上面50Uに当接させ、前記水切取付板材71の一端部から立ち下げた水切立下板材72で前記止水材60を前記下地材軒先面50Fに押しつけて、前記水切取付板材71を固定具で前記下地材50に固定する水切材取り付け工程と、前記水切材取り付け工程の後に、前記棟包み20を設置する貫板20X、又は前記換気部材本体30を、前記下地材軒先面50Fよりも軒先側に突出させて取り付ける屋根用板金役物取り付け工程とを有することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の屋根用板金役物の施工方法において、前記水切材取り付け工程では、前記水切取付板材71の他端部を前記下地材上面50Uの棟側端部に合わせることで、前記水切立下板材72で前記止水材60を前記下地材軒先面50Fに押しつけることを特徴とする。
請求項6に記載の本発明は、請求項4に記載の屋根用板金役物の施工方法において、前記屋根用板金役物取り付け工程では、前記貫板20Xの前端、又は前記換気部材本体30の前端を、前記水切取付板材71の前端に合わせることで位置決めを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の屋根頂部際止水構造によれば、止水材を水切立下板材で下地材軒先面に押しつけることで、下地材と金属製屋根材との間の止水を行うため、金属製屋根材と下地材上面との隙間の変化に影響することなく、確実な止水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による屋根頂部際止水構造を示す図
【
図3】屋根頂部際の金属製屋根材の切断位置が異なる施工状態を示す図
【
図4】本発明の他の実施例による屋根頂部際止水構造を示す図
【
図5】本発明の一実施例による屋根用板金役物の施工方法を示すフローチャート
【
図6】本発明の他の実施例による屋根頂部際止水構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による屋根頂部際止水構造は、野地板の上面に下地材が配置され、下地材の上面となる下地材上面に、棟包みを設置する貫板、又は換気部材本体が配置され、金属製屋根材の屋根頂部側部を、折り曲げて立ち上げることで立上片を形成し、立上片を、下地材の軒先面となる下地材軒先面に当接させ、貫板又は換気部材本体を、下地材軒先面よりも軒先側に突出させ、突出させた貫板と金属製屋根材との間、又は突出させた換気部材本体と金属製屋根材との間に、弾性力を有する止水材を配置し、止水材にて、立上片及び下地材軒先面を覆い、止水材の少なくとも一部を覆う水切材を設け、水切材が、下地材上面に当接される水切取付板材と、水切取付板材の端部から立ち下げた水切立下板材とで形成され、止水材を水切立下板材で下地材軒先面に押しつけて、水切取付板材を固定具で下地材に固定するものである。本実施の形態によれば、止水材を水切立下板材で下地材軒先面に押しつけることで、下地材と金属製屋根材との間の止水を行うため、金属製屋根材の野地板からの高さが異なっても確実な止水を行うことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による屋根頂部際止水構造において、水切立下板材と水切取付板材との内角を90度より大きな角度としたものである。本実施の形態によれば、水切立下板材の上部が下地材軒先面に近接するように傾斜するため、水切材を野地板側に押しつけることで、止水材は下地材軒先面に押圧され、下地材と金属製屋根材との間の止水効果を高めることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による屋根頂部際止水構造において、建造物の屋根に金属製屋根材が設置された状態では、金属製屋根材を形成する化粧面が、野地板と平行ではない横葺き金属屋根材を用いた建築物の屋根頂部において、水切立下板材として、水切取付板材の一端部から立ち下げた第1水切立下板材と、水切取付板材の他端部から立ち下げた第2水切立下板材とを有し、第1水切立下板材と第2水切立下板材との立下長さを異ならせたものである。本実施の形態によれば、金属製屋根材の野地板からの高さに応じて第1水切立下板材と第2水切立下板材とを選択して利用することができる。また、化粧面が野地板と平行ではない場合には、化粧面の切断位置によって化粧面の野地板からの高さが異なるが、止水材を水切立下板材で下地材軒先面に押しつけることで下地材と金属製屋根材との間の止水を行うため、化粧面の野地板からの高さが異なっても確実に止水を行うことができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態による屋根用板金役物の施工方法は、野地板の上面に下地材を取り付ける下地材取り付け工程と、下地材取り付け工程の後に、金属製屋根材の屋根頂部端部を折り曲げて立ち上げた立上片を、下地材の軒先面となる下地材軒先面に当接させる金属製屋根材取り付け工程と、金属製屋根材取り付け工程の後に、立上片及び下地材軒先面を、弾性力を有する止水材にて覆う止水材取り付け工程と、止水材取り付け工程の後に、水切取付板材を、下地材の上面となる下地材上面に当接させ、水切取付板材の一端部から立ち下げた水切立下板材で止水材を下地材軒先面に押しつけて、水切取付板材を固定具で下地材に固定する水切材取り付け工程と、水切材取り付け工程の後に、棟包みを設置する貫板、又は換気部材本体を、下地材軒先面よりも軒先側に突出させて取り付ける屋根用板金役物取り付け工程とを有するものである。本実施の形態によれば、止水材を水切立下板材で下地材軒先面に押しつけることで、下地材と金属製屋根材との間の止水を行うため、金属製屋根材の野地板からの高さが異なっても確実な止水を行うことができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による屋根用板金役物の施工方法であって、水切材取り付け工程では、水切取付板材の他端部を下地材上面の棟側端部に合わせることで、水切立下板材で止水材を下地材軒先面に押しつけるものである。本実施の形態によれば、水切取付板材の他端部と下地材上面の棟側端部とを位置決めに利用することで、止水材の下地材軒先面への押しつけ力を常に一定として確実な施工を行わせることができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による屋根用板金役物の施工方法であって、前記屋根用板金役物取り付け工程では、貫板の前端、又は換気部材本体の前端を、水切取付板材の前端に合わせることで位置決めを行うものである。本実施の形態によれば、位置決めを容易に行え、施工性が向上する。
【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例による屋根頂部際止水構造について説明する。
図1は本実施例による屋根頂部際止水構造を示す図であり、
図1(a)は建造物の屋根頂部の要部分解斜視図、
図1(b)は水切材の斜視図、
図1(c)は換気部材本体の設置位置における断面図、
図1(d)は棟包みの設置位置における断面図である。
【0016】
本実施例は、金属製屋根材10が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み20及び換気部材本体30を設置する際の屋根頂部際止水構造である。なお、本実施例は、建造物が片流れ屋根の場合を示しているが、片流れ屋根に限られるものではなく、切妻屋根や寄棟屋根の陸棟部や下屋の壁際部においても実施できる。
棟包み20は、建造物の屋根面に配置される棟包み天面板材21と、建造物の壁面に配置される棟包み垂下板材22とで構成され、換気部材本体30は、建造物の屋根面に配置される換気天面板材31と、建造物の壁面に配置される換気垂下板材32と、換気天面板材31の下面に取り付ける止水箱33とで構成される。
【0017】
野地板41の上面には下地材50が配置され、棟包み20を設置する貫板20X、又は換気部材本体30は、下地材50の上面となる下地材上面50Uに配置される。
金属製屋根材10の棟側端部は、
図1(c)、
図1(d)に示すように、折り曲げて立ち上げることで立上片17を形成している。立上片17は、下地材50の軒先面となる下地材軒先面50Fに当接させる。
貫板20X又は換気部材本体30は、下地材軒先面50Fよりも軒先側に突出させて設置する。
止水材60は、突出させた貫板20Xと金属製屋根材10との間、又は突出させた換気部材本体30と金属製屋根材10との間に配置し、立上片17及び下地材軒先面50Fを覆う。止水材60は、弾性力を有する平型止水であり、例えば発泡弾性部材を用いることができる。
【0018】
図1(b)に示すように、水切材70は、下地材上面50Uに当接される水切取付板材71と、水切取付板材71の端部から立ち下げた水切立下板材72とで形成され、
図1(a)、
図1(c)、
図1(d)に示すように、止水材60の少なくとも一部を覆う。水切取付板材71と水切立下板材72との内角αは、90度より大きな角度としている。
水切材70は、水切立下板材72で止水材60を下地材軒先面50Fに押しつけ、水切取付板材71を固定具(図示せず)で下地材50に固定することで設置する。
このように、止水材60を水切立下板材72で下地材軒先面50Fに押しつけることで、下地材50と金属製屋根材10との間の止水を行うため、金属製屋根材10の野地板41からの高さが異なっても確実な止水を行うことができる。
また、水切取付板材71と水切立下板材72との内角αを90度より大きな角度とすることで、水切立下板材72の上部が下地材軒先面50Fに近接するように傾斜するため、水切材70を野地板41側に押しつけることで、止水材60は下地材軒先面50Fに押圧され、下地材50と金属製屋根材10との間の止水効果を高めることができる。
貫板20X又は換気部材本体30は、下地材軒先面50Fよりも軒先側に突出させて設置することで、止水材60を金属製屋根材10の方向に確実に押圧できる。
【0019】
図2は同実施例による屋根頂部際止水構造を示す図であり、
図2(a)は換気部材本体の設置位置における断面図、
図2(b)は建造物の壁面側から見た要部斜視図、
図2(c)は金属製屋根材の示す断面図である。
【0020】
図2(a)に示すように、建造物は、柱42の上端に棟木43を設け、棟木43の上部には垂木44を斜め下方に傾斜して設けている。
垂木44の上部には野地板41を設け、野地板41の上面に金属製屋根材10が敷設されている。
棟木43の壁側と垂木44の棟側には破風下地45を設けている。破風下地45の屋外側面には、破風板46が配置される。
換気用開口47は、野地板41の棟側端部の一部に形成されている。野地板41の開口端部には捨水切34を取り付けている。
換気天面板材31は止水箱33とともに、下地材50及び野地板41に固定具35によって固定され、換気垂下板材32は建造物の壁面(破風下地45及び破風板46)に固定具36によって固定される。
換気垂下板材32は、換気天面板材31に連接する上部面32aと、固定具36によって固定される下部面32bとの間に段差を有している。上部面32aと下部面32bとの間に段差を形成することで、固定具36による換気垂下板材32の歪みを軽減することができる。
【0021】
また、
図2(b)に示すように、棟包み垂下板材22についても、換気垂下板材32と同様に、棟包み天面板材21に連接する上部面22aと、固定具36によって固定される下部面22bとの間に段差を形成することで、固定具36による棟包み垂下板材22の歪みを軽減している。
【0022】
図2(c)に示すように、金属製屋根材10は、化粧面11の棟側端部の屋外側に形成した溝部12と、化粧面11の軒先側端部の屋内側に形成した差込片13と、溝部12の更に棟側に形成した釘打ち部14を有している。
溝部12には、棟側に配置する金属製屋根材10の差込片13が差し込まれ、差込片13は、軒先側に配置する金属製屋根材10の溝部12に差し込む。
金属製屋根材10は、化粧面11、溝部12、差込片13、及び釘打ち部14を形成する金属板材だけで構成されるものであってもよいが、化粧面11の野地板側に断熱材15を備えていることが好ましく、断熱材15の野地板側に裏面材16を備えていることが更に好ましい。
金属製屋根材10を形成する化粧面11は、棟側では軒先側よりも野地板41に近接しており、野地板41と平行ではない。
【0023】
金属板材は、例えば金属板(カラー鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、ステンレス板、サンドイッチ鋼板、クラッド鋼板等)等をロール成形、プレス成形、押出成形等によって形成することができる。
断熱材15は、防水、断熱、補強、嵩上げ、遮音、吸音、緩衝、防火、及び結露防止のいずれかの機能を少なくとも有し、例えば、スチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等の合成樹脂発泡体を用いることができる。
また、断熱材15には、難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、耐火性、防火性を向上させることが好ましい。
裏面材16は、クラフト紙、アルミ蒸着紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布の1種、又は2種以上をラミネートし、防水処理し、又は難燃処理されたシートで形成することができる。
【0024】
図3は、屋根頂部際の金属製屋根材の切断位置が異なる施工状態を示している。
図3(a)に示す屋根頂部際の金属製屋根材10aは軒先側端部に近い位置で切断し、
図3(b)に示す屋根頂部際の金属製屋根材10bは棟側端部に近い位置で切断している。
従って、金属製屋根材10aの切断位置における野地板41から化粧面11までは、金属製屋根材10bの切断位置における野地板41から化粧面11までよりも高くなる。すなわち、金属製屋根材10aの切断位置における化粧面11から下地材上面50Uまでの隙間は、金属製屋根材10bの切断位置における化粧面11から下地材上面50Uまでの隙間よりも狭くなる。
このように、化粧面11から下地材上面50Uまでの隙間は、金属製屋根材10の切断位置によって異なるが、止水材60を水切立下板材72で下地材軒先面50Fに押しつけることで下地材50と金属製屋根材10との間の止水を行うため、確実に止水を行うことができる。
【0025】
図4は本発明の他の実施例による屋根頂部際止水構造を示す図である。
本実施例は、水切材70以外の部材は上記実施例と同一である。
図4(a)に示すように、本実施例による水切材70は、水切立下板材72として、水切取付板材71の一端部から立ち下げた第1水切立下板材72aと、水切取付板材71の他端部から立ち下げた第2水切立下板材72bとを有し、第1水切立下板材72aと第2水切立下板材72bとの立下長さを異ならせている。
図4(b)から
図4(d)は、化粧面11から下地材上面50Uまでの隙間が異なる施工状態を示しており、
図4(b)が最も狭い隙間の状態を、
図4(d)が最も広い隙間の状態を示している。
図4(b)に示す隙間では、第1水切立下板材72aを棟側に、第2水切立下板材72bを軒先側となるように水切材70を配置し、水切立下板材72bで止水材60を下地材軒先面50Fに押しつける。
図4(c)及び
図4(d)に示す隙間では、第2水切立下板材72bを棟側に、第1水切立下板材72aを軒先側となるように水切材70を配置し、第1水切立下板材72aで止水材60を下地材軒先面50Fに押しつける。
図4(c)及び
図4(d)に示す隙間においても、第2水切立下板材72bで止水材60を下地材軒先面50Fに押しつけることができるが、第2水切立下板材72bの下端部と化粧面11との間からの止水材60の露出が多くなってしまう。従って、化粧面11から下地材上面50Uまでの隙間が大きい場合には、第1水切立下板材72aを軒先側に配置することで、止水材60の露出を少なくでき、紫外線による劣化を防止して耐久性を高めることができる。
【0026】
このように、本実施例によれば、金属製屋根材10の野地板41からの高さに応じて第1水切立下板材72aと第2水切立下板材72bとを選択して利用することができる。
なお、本実施例においても、水切取付板材71と第1水切立下板材72aとの内角αa、及び水切取付板材71と第2水切立下板材72bとの内角αbは、共に90度より大きな角度とすることが好ましく、内角αa、αbを90度より大きな角度とすることで、止水材60を押えやすく施工しやすいとともに、止水材60を下地材軒先面50Fに確実に押圧でき、高い水密性を確保できる。
【0027】
図5は本発明の一実施例による屋根用板金役物の施工方法を示すフローチャートである。
本実施例は、金属製屋根材10が用いられる建造物の屋根頂部に、棟包み20又は換気部材本体30を設置する屋根用板金役物の施工方法である。
まず、下地材取り付け工程S1では、野地板41の上面に下地材50を取り付ける。
金属製屋根材取り付け工程S2では、下地材取り付け工程S1の後に、金属製屋根材10の棟側端部を折り曲げて立ち上げた立上片17を、下地材50の軒先面となる下地材軒先面50Fに当接させる。屋根頂部際に配置する金属製屋根材10については、棟側端部をあらかじめ切断して立上片17を形成している。
止水材取り付け工程S3では、金属製屋根材取り付け工程S2の後に、立上片17及び下地材軒先面50Fを、弾性力を有する止水材60にて覆う。
水切材取り付け工程S4では、止水材取り付け工程S3の後に、水切取付板材70を、下地材50の上面となる下地材上面50Uに当接させ、水切取付板材70の一端部から立ち下げた水切立下板材72で止水材60を下地材軒先面50Fに押しつけて、水切取付板材71を固定具で下地材50に固定する。
なお、水切材取り付け工程S4では、水切取付板材70の他端部を下地材上面50Uの棟側端部に合わせることで、水切立下板材72で止水材60を下地材軒先面50Fに押しつける。
屋根用板金役物取り付け工程S5では、水切材取り付け工程S4の後に、棟包み20を設置する貫板20X、又は換気部材本体30を、下地材軒先面50Fよりも軒先側に突出させて取り付ける。貫板20Xの前端、又は換気部材本体30の前端を水切取付板材71の前端に合わせることで位置決めを行える。
【0028】
本実施例によれば、止水材60を水切立下板材72で下地材軒先面50Fに押しつけることで、下地材50と金属製屋根材10との間の止水を行うため、金属製屋根材10の野地板41からの高さが異なっても確実な止水を行うことができる。
また、本実施例によれば、水切取付板材70の他端部と下地材上面50Uの棟側端部とを位置決めに利用することで、止水材60の下地材軒先面50Fへの押しつけ力を常に一定として確実な施工を行わせることができる。
【0029】
図6は本発明の他の実施例による屋根頂部際止水構造を示す図であり、
図6(a)は両棟の陸棟部に施工する屋根頂部際止水構造、
図6(b)は下屋の壁際部に施工する屋根頂部際止水構造である。なお、上記実施例と同一機能部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
【0030】
図6(a)に示す建造物では、垂木44は、棟木43の上部から両側方に斜め下方に傾斜して設けている。垂木44の上部には野地板41を設け、野地板41の上面には金属製屋根材10が敷設される。
図6(a)に示す本実施例では、換気部材本体30は、一対の換気天面板材31と、これら換気天面板材31の下面に取り付ける止水箱33とで構成され、換気垂下板材32を備えていない。
図6(b)に示す建造物では、垂木44の棟側端面には外壁下地材48が配置されている。
図6(b)に示す本実施例では、換気垂下板材32を、上方に折り曲げて外壁下地材48の外表面に配置している。換気垂下板材32の外表面には、屋根下葺材49aや外装材49bが更に配置される。
図6に示すように、屋根頂部際止水構造は、切妻屋根や寄棟屋根の陸棟部や下屋の壁際部においても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、片流れ屋根だけでなく両流れ屋根及び下屋においても適用できる。
【符号の説明】
【0032】
10 金属製屋根材
10a、10b 金属製屋根材
11 化粧面
12 溝部
13 差込片
14 釘打ち部
15 断熱材
16 裏面材
17 立上片
20 棟包み
20X 貫板
21 棟包み天面板材
22 棟包み垂下板材
22a 上部面
22b 下部面
30 換気部材本体
31 換気天面板材
32 換気垂下板材
32a 上部面
32b 下部面
33 止水箱
34 捨水切
35、36 固定具
41 野地板
42 柱
43 棟木
44 垂木
45 破風下地
46 破風板
47 換気用開口
48 外壁下地材
49a 屋根下葺材
49b 外装材
50 下地材
50F 下地材軒先面
50U 下地材上面
60 止水材
70 水切材
71 水切取付板材
72 水切立下板材
72a 第1水切立下板材
72b 第2水切立下板材
α、αa、αb 内角