(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】木造階段の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20220729BHJP
E04F 11/108 20060101ALI20220729BHJP
E04F 11/025 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E04F11/02 100
E04F11/108
E04F11/025
(21)【出願番号】P 2019160106
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592118826
【氏名又は名称】株式会社デイエムウッドラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514040354
【氏名又は名称】株式会社ヤマシタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】大野 光則
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222993(JP,A)
【文献】特開2015-055097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段板と、段板の端部を嵌合させて支持するための横溝が形成された一対の側板と、段板を側板に対して固定するためのくさび材と、を用いて木造階段を施工する方法であって、
くさび材として、長手方向に延在する一方側の側部の厚さ寸法が、反対側の側部よりも小さく設定され、長手方向と直交する断面の輪郭形状がくさび形となるものを使用し、
側板の横溝が、段板の端部を嵌合させた状態で、その下側にくさび材を嵌合させることができる形状、及び、大きさに形成され、
段板の両端部をそれぞれ嵌合させる一対の横溝のうち少なくとも一方の深さ寸法が、段板の横幅寸法と一対の側板の間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定され、
階段室の対向する二つの壁面に対して一対の側板をそれぞれ固定した後、段板を、左右両端部のうちいずれか一方を下方側へ傾けて、階段の表側から、対向する側板の間に差し込み、
下方側に傾けた段板の端部を、対応する側板の横溝の奥まで進入させた状態で、反対側の端部を下方側へ回動させて水平な状態とし、段板の両端部を側板の各横溝内に嵌合させ、
段板の端部を嵌合させた状態の側板の横溝内の下側のスペースに、くさび材を、段板の長手方向に沿って押し込んで挿入し、段板を側板に固定することを特徴とする木造階段の施工方法。
【請求項2】
段板として、段鼻部の下面から下方へ向かって突出する下向き凸条部が形成され、後端部の上面から上方へ向かって突出する上向き凸条部が形成されているものを使用し、
側板として、蹴込み板の側縁を嵌合させて保持するための縦溝が形成されているものを使用し、
段板を側板に固定した後、蹴込み板の上縁を上段側の段板の第一嵌合溝内に嵌合し、下縁を下段側の段板の第二嵌合溝内に嵌合し、左右の側縁を一対の側板の縦溝内に嵌合させて、蹴込み板を上下の段板の間に取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の木造階段の施工方法。
【請求項3】
蹴込み板が、二枚の下地板と、化粧板とによって構成され、
下地板が、上下の段板の間隔寸法よりも大きい高さ寸法を有し、
二枚の下地板の横幅寸法の合計値が、一対の側板の間隔寸法よりも大きく設定され、
一対の側板の縦溝のうち少なくとも一方の深さ寸法が、二枚の下地板の横幅寸法の合計値と一対の側板の間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定されていることを特徴とする、請求項
2に記載の木造階段の施工方法。
【請求項4】
段板として、段鼻部の下面に、蹴込み板の上縁を嵌合させるための第一嵌合溝が形成され、後端部の上面に、蹴込み板の下縁を嵌合させるための第二嵌合溝が形成されているものを使用し、
二枚の下地板のうち一方の下地板を、上縁が奥側、下縁が手前側となるように傾けて、階段の表側から、上段側の段板と下段側の段板の間に差し込み、上縁を上段側の段板の第一嵌合溝の奥まで進入させ、この状態から下縁を奥側へ回動させて垂直な状態とし、下縁を下段側の段板の第二嵌合溝に嵌合させ、当該下地板を左側又は右側へスライドさせ、一方の側縁を側板の縦溝内の奥まで進入させ、
その隣の空いているスペースに、もう一方の下地板を同じ要領で取り付け、
二枚の下地板の位置を調整した後、固定手段により、それらの下地板の上縁部を上段側の段板の下向き凸条部に固定し、下縁部を下段側の段板の上向き凸条部に固定し、
固定した下地板の表面に、化粧板を貼り付けることを特徴とする、請求項
3に記載の木造階段の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅等における木造階段の施工方法に関し、特に、階段の表側から段板(踏み板)等を取り付けることができる階段の施行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅(一戸建て、或いは、集合住宅等)における木造階段の施工方法として、階段室の対向する二つの壁面に一対の側板をそれぞれ固定し、側板に予め形成しておいた横溝及び縦溝に、段板及び蹴込み板の両端部をそれぞれ嵌合させて固定するという方法が広く実施されている。このような階段の施工方法において、段板及び蹴込み板の取り付け作業は、通常、階段の裏側から行われる。
【0003】
具体的には、
図8に示すように、段板50を水平な状態に保持し、階段の裏側から表側へ向かってスライドさせて、段板50の両端部を側板80の横溝81内に進入させ、次にくさび材60を、同様に階段の裏側から表側へ向かってスライドさせ、傾斜した横溝81の底面と段板50の裏面との間の三角形の領域に強く押し込んで段板50を側板80に対して固定し、更に、蹴込み板70を垂直な状態に保持し、階段の裏側から上方へ向かってスライドさせて、蹴込み板70の両端部を側板80の縦溝82内に進入させて固定する、という作業が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、構造上の理由から、階段の裏側から段板等を取り付けることが難しい場合がある。例えば、二階建ての木造集合住宅等において、二階の住居用の屋内階段の裏側に、一階の住居と隔てるための界壁を形成する必要があるような場合である。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、階段の表側から段板等を取り付けることができる木造階段の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、段板と、段板の端部を嵌合させて支持するための横溝が形成された一対の側板と、段板を側板に対して固定するためのくさび材と、を用いて木造階段を施工する方法であって、くさび材として、長手方向に延在する一方側の側部の厚さ寸法が、反対側の側部よりも小さく設定され、長手方向と直交する断面の輪郭形状がくさび形となるものを使用し、側板の横溝が、段板の端部を嵌合させた状態で、その下側にくさび材を嵌合させることができる形状、及び、大きさに形成され、階段室の対向する二つの壁面に対して一対の側板をそれぞれ固定した後、段板を、左右両端部のうちいずれか一方を下方側へ傾けて、階段の表側から、対向する側板の間に差し込み、下方側に傾けた段板の端部を、対応する側板の横溝の奥まで進入させた状態で、反対側の端部を下方側へ回動させて水平な状態とし、段板の両端部を側板の各横溝内に嵌合させ、段板の端部を嵌合させた状態の側板の横溝内の下側のスペースに、くさび材を、段板の長手方向に沿って押し込んで挿入し、段板を側板に固定することを特徴としている。
【0008】
尚、この施工方法においては、一対の側板の横溝のうち少なくとも一方の深さ寸法が、段板の横幅寸法と一対の側板の間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0009】
また、段板として、段鼻部の下面から下方へ向かって突出する下向き凸条部が形成され、後端部の上面から上方へ向かって突出する上向き凸条部が形成されているものを使用し、側板として、蹴込み板の側縁を嵌合させて保持するための縦溝が形成されているものを使用し、段板を側板に固定した後、蹴込み板の上縁を上段側の段板の第一嵌合溝内に嵌合し、下縁を下段側の段板の第二嵌合溝内に嵌合し、左右の側縁を一対の側板の縦溝内に嵌合させて、蹴込み板を上下の段板の間に取り付けることが好ましい。
【0010】
更に、蹴込み板が、二枚の下地板と、化粧板とによって構成され、下地板が、上下の段板の間隔寸法よりも大きい高さ寸法を有し、二枚の下地板の横幅寸法の合計値が、一対の側板の間隔寸法よりも大きく設定され、一対の側板の縦溝のうち少なくとも一方の深さ寸法が、二枚の下地板の横幅寸法の合計値と一対の側板の間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0011】
また、段板として、段鼻部の下面に、蹴込み板の上縁を嵌合させるための第一嵌合溝が形成され、後端部の上面に、蹴込み板の下縁を嵌合させるための第二嵌合溝が形成されているものを使用し、二枚の下地板のうち一方の下地板を、上縁が奥側、下縁が手前側となるように傾けて、階段の表側から、上段側の段板と下段側の段板の間に差し込み、上縁を上段側の段板の第一嵌合溝の奥まで進入させ、この状態から下縁を奥側へ回動させて垂直な状態とし、下縁を下段側の段板の第二嵌合溝に嵌合させ、当該下地板を左側又は右側へスライドさせ、一方の側縁を側板の縦溝内の奥まで進入させ、その隣の空いているスペースに、もう一方の下地板を同じ要領で取り付け、二枚の下地板の位置を調整した後、固定手段により、それらの下地板の上縁部を上段側の段板の下向き凸条部に固定し、下縁部を下段側の段板の上向き凸条部に固定し、固定した下地板の表面に、化粧板を貼り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る木造階段の施工方法によれば、木造階段を構成する段板、くさび材、及び、蹴込み板の取り付け作業を、階段の表側から行うことができる。例えば、二階建ての木造集合住宅等において、二階の住居用の屋内階段の裏側に、一階の住居と隔てるための界壁を形成する必要があるような場合、段板等を取り付けて階段を完成させた後で、その階段の裏側に界壁を形成することは困難である。このため施工順序としては、先に界壁を形成し、その後、段板等を取り付けることになる。
【0013】
この場合、段板等の取り付け作業は、階段の表側から行わざるを得ないが、従来方法においては、階段の表側から段板等を取り付けることができなかった。本発明に係る木造階段の施工方法は、上述の通り、段板等を階段の表側から取り付けることができ、従って、階段の裏側に界壁を形成する場合等において、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法において使用される段板10の斜視図、及び、断面図(長手方向と直交する垂直断面図)である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法において使用されるくさび材20の斜視図、及び、断面図(長手方向と直交する垂直断面図)である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法において使用される蹴込み板30の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法において使用される側板40の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法の説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法の説明図である。
【
図8】
図8は、従来の階段の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に沿って、本発明に係る階段の施工方法の実施形態について説明する。
図1~
図4は、本発明の第一実施形態に係る階段の施工方法において使用される段板10、くさび材20、蹴込み板30、及び、側板40を示す図である。
【0016】
段板10は、
図1に示すように、段鼻部12の下面に、この段板10の下方側に配置される蹴込み板(図示せず)の上縁を嵌合させるための第一嵌合溝13が形成されている。また、この第一嵌合溝13の奥側には、本体11の下面から下方へ向かって突出する下向き凸条部14が形成されている。更に、段板10の後端部の上面(本体11の後端縁15の後方)には、この段板10の上方側に配置される蹴込み板30の下縁を嵌合させるための第二嵌合溝17が形成されている。また、この第二嵌合溝17の奥側には、上方へ向かって突出する上向き凸条部16が形成されている。これらの下向き凸条部14、及び、上向き凸条部16は、蹴込み板30を固定するための下地材として機能する。
【0017】
くさび材20は、長手方向と直交する断面が均一なくさび形の形状を呈し(長手方向のいずれの位置においても、長手方向と直交する断面の輪郭形状が同一の形状及び大きさのくさび形となり)、
図2に示すように、長手方向に延在する一方側の側部21の厚さ寸法が、反対側の側部22よりも小さい形状となっている。また、このくさび材20には、側部21,22の間を貫通するビス用の下穴23が穿設されている。尚、この下穴23は、厚さ寸法の大きい側部22側から厚さ寸法の小さい側部21側へ向かって上方へ傾斜するように形成されている。
【0018】
図3に示すように、蹴込み板30は、二枚の下地板31,32と、化粧板33とによって構成される。下地板31,32はいずれも、横幅が、段板10(
図1参照)の約半分の寸法に設定されており、厚さが、段板10の第一嵌合溝13及び第二嵌合溝17(
図1参照)に嵌合できる寸法に設定されている。
【0019】
図4に示すように、側板40には、段板10の端部を嵌合させて支持するための横溝41、及び、蹴込み板30の側縁を嵌合させて保持するための縦溝42が、板厚寸法の約1/3の深さでそれぞれ形成されている。尚、横溝41は、段板10の端部を嵌合させた状態で、その下側にくさび材20を嵌合させることができる形状、及び、大きさとなっている。
【0020】
従来の階段の施工方法においては、
図8に示すように、階段室の壁面に固定した側板80に対して、段板50、くさび材60、及び、蹴込み板70を、階段の裏側から取り付けていたが、本実施形態に係る階段の施工方法においては、階段の表側から段板10、くさび材20、及び、蹴込み板30を取り付けることができる。
【0021】
具体的には、
図5に示すように、階段室の対向する二つの壁面に対して一対の側板40A,40Bをそれぞれ固定した後、段板10を、左右両端部のうちいずれか一方を下方側へ傾けて、階段の表側から、対向する側板40A,40Bの間に差し込み、側板40A,40Bの各横溝41内に、段板10の両端部を嵌合させる。
【0022】
段板10は、両端部が、壁面に固定された一対の側板40A,40Bの横溝41内にそれぞれ嵌合した状態で支持されることになるため、段板10の横幅寸法は、側板40A,40Bの間隔寸法よりも大きく設定する必要があるところ、側板40A,40Bの横溝41は、階段の表側には開口していないため、段板10を水平に保持した状態では、階段の表側から側板40A,40Bの間の領域に進入させることはできないが、
図5に示すように、段板10を左右いずれかの方向に傾けることにより、側板40A,40Bの間の領域に、階段の表側から問題なく進入させることができる。
【0023】
また、段板10の横幅寸法との関係で、横溝41が十分な深さ寸法に設定されているため(即ち、側板40A,40Bの横溝41のうち少なくとも一方の深さ寸法が、段板10の横幅寸法と側板40A,40Bの間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定されているため)、下方側に傾けた段板10の端部を、十分な深さ寸法を有する横溝41の奥まで進入させた状態で、反対側の端部を下方側へ回動させることにより、反対側の側板40との干渉を回避して、段板10を水平な状態とすることができ、段板10の両端部を側板40A,40Bの各横溝41内に嵌合させることができる。
【0024】
次に、
図6に示すように、段板10の両端部を嵌合させた側板40A,40Bの各横溝41内の下側のスペースに、くさび材20をそれぞれ取り付ける。このとき、くさび材20を、厚さ寸法が小さく設定されている側部21が奥側となる向きで横溝41内にそれぞれ進入させ、下穴23内に挿入したビス(図示せず)を側板40A,40B内に打ち込んで固定する。
【0025】
尚、従来の施工方法においては、
図8に示すように、くさび材60を、階段の裏側から表側へ向かって(段板50の後端縁55側から段鼻部52側の方向へ)押し込んで横溝81内に挿入していたため、作業者は、階段の裏側から作業を行う必要があったが、本実施形態においては
図6に示すように、くさび材20を、段板10の長手方向に沿って(側板40の側面と垂直な方向から)押し込んで、横溝41内に挿入することになる。このため作業者は、階段の表側からくさび材20の取り付け作業を行うことができる。
【0026】
側板40A,40Bに対し、段板10及びくさび材20を取り付けて固定したら、蹴込み板30(
図3参照)を、各段板10の間に取り付ける。まず、蹴込み板30を構成する二枚の下地板31,32のうち、一方の下地板31を、
図7(1)に示すように、上段側の段板10Aと下段側の段板10Bの間に取り付ける。
【0027】
具体的には、下地板31の上縁が奥側、下縁が手前側となるように僅かに傾けて、階段の表側から、上段側の段板10Aと下段側の段板10Bの間に差し込み、下地板31の上縁を、上段側の段板10Aの段鼻部の下側の第一嵌合溝13の奥まで進入させ、この状態から下地板31の下縁を奥側へ回動させて、下地板31を垂直な状態とし、下地板31の下縁を、下段側の段板10Bの後端部の第二嵌合溝17に嵌合させる。そして、下地板31を左側へスライドさせて、下地板31の一方の側縁を側板40Aの縦溝42内の最奥部まで進入させ、
図7(2)に示すような状態とする。
【0028】
次に、
図7(2)に示す下地板31の隣の空いているスペースに、もう一方の下地板32を同じ要領で取り付ける。続いて、下地板31,32の位置を調整し、
図7(3)に示すように、表面側からビス34を打ち込んで(或いは、釘などのその他の固定手段を使用して)、下地板31,32の上縁部を、上段側の段板10Aの下向き凸条部14(
図7(2)参照)に固定し、下地板31,32の下縁部を、下段側の段板10Bの上向き凸条部16(
図7(2)参照)に固定する。最後に、固定した下地板31,32の表面に、
図3に示す化粧板33(上下の段板10A,10Bの間隔寸法と同じ高さ寸法を有し、かつ、左右の側板40A,40Bの間隔寸法と同じ横幅寸法を有する)を貼り付ける。
【0029】
蹴込み板30は、上段側の段板10Aの第一嵌合溝13及び下段側の段板10Bの第二嵌合溝17内に、上縁及び下縁がそれぞれ嵌合し、かつ、側板40A,40Bの縦溝42内に、左右両側縁がそれぞれ嵌合した状態で保持されることになるため、上下の段板10A,10Bの間隔寸法よりも大きい高さ寸法を有し、かつ、左右の側板40A,40Bの間隔寸法よりも大きい横幅寸法を有していることが必要となる。従って、蹴込み板30を一枚の板として構成した場合、いずれかの方向に傾けるだけでは、段板10A,10Bの間、及び、側板40A,40Bの間のスペースに挿入することはできない。
【0030】
本実施形態においては、上下の段板10A,10Bの間隔寸法よりも大きい高さ寸法を有し、かつ、左右の側板40A,40Bの間隔寸法よりも大きい横幅寸法を有する板を左右に二分割し、これを蹴込み板30の下地板31,32として使用しており、また、縦溝42が、下地板31,32の横幅寸法(合計値)との関係で、十分な深さ寸法に設定されている(即ち、側板40A,40Bの縦溝42のうち少なくとも一方の深さ寸法が、下地板31,32の横幅寸法(合計値)と側板40A,40Bの間隔寸法との差よりも大きい寸法、又は、同一の寸法に設定されている)。
【0031】
このため、先に取り付けた下地板31を端に寄せて、十分な深さ寸法を有する縦溝42の奥まで進入させることにより、下地板31と反対側の側板40Bとの間に、もう一方の下地板32の横幅寸法よりも大きな開口寸法を確保することができ、下地板32を問題なく取り付けることができる。そして、下地板31,32を取り付けた後、左右方向の位置を適宜調整することにより、両者間に隙間が形成されず、かつ、下地板31,32の外側の側縁が側板40A,40Bの縦溝42内にそれぞれ嵌合した状態を実現することができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る階段の施工方法によれば、段板10、くさび材20、及び、蹴込み板30を、階段の表側から取り付けることができる。尚、一つの階段の全体に対して本実施形態に係る施工方法を適用することにより、当該階段を構成するすべての段板、くさび材、及び、蹴込み板を、階段の表側から取り付けることもできるが、一つの階段に対し必要に応じて(例えば、構造上の理由から、階段の裏側から取り付けることができない段板等に限定して)、本実施形態に係る施工方法を部分的に適用し、一部の段板、くさび材、及び、蹴込み板を階段の表側から取り付け、他の段板等については、従来方法によって階段の裏側から取り付けることもできる。
【0033】
尚、上記実施形態においては、蹴込み板30が、二枚の下地板31,32と、化粧板33とによって構成されているが、蹴込み板を一枚の板によって構成することもできる(図示せず)。この場合、蹴込み板の高さ寸法を、上下の段板10A,10Bの間隔と同じ寸法に設定し、横幅寸法を、左右の側板40A,40Bの間隔よりも少し(例えば、12~20mm程度)大きい寸法に設定し、更に、可撓性が得られるように、厚さ寸法を小さく(例えば、5~6mm程度に)設定する。
【0034】
そして、左右の両側縁が奥側、中央部付近が手前側となるように円弧状に撓ませて、左右の両側縁を、側板40A,40Bの各縦溝42内に嵌合させて取り付ける。最後に、蹴込み板の表面側から隠し釘を打ち込んで(或いは、その他の固定手段を使用して)、上縁部を、上段側の段板10Aの下向き凸条部14に固定し、下縁部を、下段側の段板10Bの上向き凸条部16に固定する。
【0035】
尚、蹴込み板の高さ寸法を、上下の段板10A,10Bの間隔と同じ寸法に設定した場合において、取り付ける際に、蹴込み板の下縁を、下段側の段板10Bの後端部の上面に形成されている第二嵌合溝17(
図1参照)内に嵌合させると、蹴込み板の上縁と上段側の段板10Aの段鼻部12との間に隙間が形成されてしまうため、
図1に示すような第二嵌合溝17を有する段板10を使用する場合には、間詰材を装着して第二嵌合溝17を埋める(本体11の上面と同じ高さとする)ことが好ましく、或いは、第二嵌合溝17が形成されていない段板を使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10,10A,10B,50:段板、
11:本体、
12,52:段鼻部、
13:第一嵌合溝、
14:下向き凸条部、
15,55:後端縁、
16:上向き凸条部、
17:第二嵌合溝、
20,60:くさび材、
21,22:側部、
23:下穴、
30,70:蹴込み板、
31,32:下地板、
33:化粧板、
34:ビス、
40,40A,40B,80:側板、
41,81:横溝、
42,82:縦溝