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  • 特許-毛細血管血採取装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】毛細血管血採取装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A61B5/151 400
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020564690
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2018020094
(87)【国際公開番号】W WO2019224991
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510028914
【氏名又は名称】株式会社AIKIリオテック
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】青柳 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松本 一
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/100273(WO,A1)
【文献】特開2013-215238(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204584(WO,A1)
【文献】特表2007-516421(JP,A)
【文献】特許第5908195(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326412(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0148940(US,A1)
【文献】中国実用新案第204521979(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15~5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧源と、毛細血管血採取のための鋭利なカニュレ部および空洞を有する取り換え可能な採取チューブと組み合わせて使用する装置であって、
軸に沿って延びるボアを画する本体と、
前記ボアに嵌合して前記軸周りに両方向に回転可能なロータと、
前記流体圧源に流体連通する第1の流路であって、前記ロータにより少なくとも部分的に画されて前記採取チューブに向けて軸方向に延びる第1の流路と、
前記軸に沿って延び、前記採取チューブを前記軸に同軸に回転可能に支持して前記カニュレ部を外部に露出するべく寸法付けられた、ボス部と、
前記採取チューブを前記ロータに結合して、前記採取チューブを前記軸と同心に回転せしめ、前記採取チューブの前記空洞を前記第1の流路に流体連通せしめる、着脱可能な留め具と、
を備えた装置。
【請求項2】
前記ボス部と前記採取チューブとの間に介在し、2以上の軸方向に互いに離れたベアリングをさらに備え、以って前記採取チューブの偏心回転を防止する、
請求項1の装置。
【請求項3】
前記ロータ内であって少なくとも部分的に前記軸に沿って延び、前記空洞と前記第1の流路とを流体連通する、第2の流路を、
さらに備えた請求項1の装置。
【請求項4】
前記留め具と前記ロータとの間に介在して前記空洞と前記第2の流路との間の流体密性および流体連通を確立するシールを、
さらに備えた請求項の装置。
【請求項5】
前記シールは前記ロータと前記採取チューブの両方に圧を加えるべく寸法付けられたテーパスリーブよりなる、請求項4の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、概して血液採取のための装置に関し、特に毛細血管から少量の血液を採取するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者のごとき血液関連の病気に罹患した患者は、時々の血液の状態を知りインシュリンのごとき適切な薬物を使用して管理するために、日常的に自身の血液をサンプリングして試験をすることを要する。そのような試験は今日ではごく少量の血液を必要とするに過ぎず、血液は静脈や動脈からではなく、指先の毛細血管から採取している。患者はランセットによって自ら指の皮膚を、毛細血管床にまで刺し、血液の小滴を試験紙ないしチューブへ抽出する。そして採取された血液は血液試験に供される。かかる手順は多分に煩わしいものである。
【0003】
かかる手順を容易に、ないし部分的に自動化するべく、幾つかの装置が提案されている。以下の特許文献は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,012,104B2
【文献】米国特許第8,333,715B1
【文献】米国特許第9,782,114B2
【発明の概要】
【0005】
患者はこれらの装置の何れかを使用して、自然な出血が起こる程度の傷ないし切り込みを指に入れる。患者は血液採取の後には、なお次第に出血するであろう指の手当てをせねばならない。それゆえ、これらの装置によっても、血液採取の手順はなお煩わしいものであり、またしばしば患者に若干の痛みを与えてしまう。
【0006】
非常に細い(例えば直径200ミクロン程度)医療用針を利用すれば、痛みが軽減されるようだが、期待ほどには効果的でないことが知られている。本発明者は、刺した針周辺の皮膚組織に起こる微視的現象を研究し、非常に細い針による穿刺であっても皮膚および皮下組織を変形させ、かかる変形が痛みの要因であると共に、毛細血管を圧迫することにより血流を阻害することを見出した。本発明者はさらに、往復ないし間欠的回転のごとき何らかの特定の動きを伴うカニュレを利用すれば、これらの課題を解決しうることを見出した。ここに開示する装置は、これらの発見の観点から創出されたものである。
【0007】
以下に開示するものは、流体圧源と、毛細血管血採取のための鋭利なカニュレ部および空洞を有する取り換え可能な採取チューブと組み合わせて使用する装置である。かかる装置は、軸に沿って延びるボアを画する本体と、前記ボアに嵌合して前記軸周りに両方向に回転可能なロータと、前記流体圧源に流体連通する第1の流路であって、前記ロータにより少なくとも部分的に画されて前記採取チューブに向けて軸方向に延びる第1の流路と、前記軸に沿って延び、前記採取チューブを前記軸に同軸に回転可能に支持して前記カニュレ部を外部に露出するべく寸法付けられた、ボス部と、前記採取チューブを前記ロータに結合して、前記採取チューブを前記軸と同心に回転せしめ、前記採取チューブの前記空洞を前記第1の流路に流体連通せしめる、着脱可能な留め具と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態による、支持体に固定された血液採取装置の立面図である。
図2図2は、血液採取装置の断面図である。
図3図3は、ロータおよび流路付近の血液採取装置の断面図である。
図4A図4Aは、図3のIVA-IVA線から取られた血液採取装置の横断面図である。
図4B図4Bは、変形された実施形態による、血液採取装置の横断面図である。
図4C図4Cは、他の変形された実施形態による、血液採取装置の断面図である。
図5図5は、さらに他の変形された実施形態による、血液採取装置の断面図である。
図6図6は、装置と組み合わせて使用する採取チューブの断面図である。
図7A図7Aは、採取チューブの拡大平面図であって、チューブ先端のカニュレ部を主に示す図である。
図7B図7Bは、採取チューブの拡大平面図であって、図7Aに示す平面とは直交する図である。
図8図8は、変形例に基づくカニュレ部の斜め平面図である。
図9図9は、バルブ部を有する採取チューブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して以下に幾つかの例示的な実施形態を説明する。
【0010】
以下の明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、特段の異なる説明がない限り、「軸」の語は採取チューブの回転軸の意味に定義して使用されている。それゆえ、「軸方向の」「軸方向に」の語は、かかる定義による軸の方向に関連して定義して使用されている。
【0011】
ここに開示される何れかの実施形態による装置1は、概して、毛細血管から少量の血液を採取するために使用できるが、静脈ないし動脈からの血液採取、他の体液ないし体組織の採取、薬物の注入ないし輸液、あるいは体の上ないし中への小さな装置の配置のごとき、他の目的に使用できるだろう。
【0012】
手持ち操作も可能だが、好ましくは装置1は図1に示すごとく安定した支持体3に固定されて使用される。図1に例示された支持体3は、台座5と、台座5に直立して固定された支柱7とを備える。使用の際には台座5は机、テーブルないしいずれかの安定した物体上に置かれる。台座5は、例えば台座上の窪みの形状である指置き5Aを備えてもよい。
【0013】
支持体3は、指置き5A上の指に装置1を自動的かつ制御的に接近および離反させるアクチュエータ9を備えてもよい。アクチュエータ9は、電動モータと、ボールねじやラック・ピニオン機構のごとき、直線運動機構と、よりなってもよい。あるいはリニアモータシステムが利用できる。何れにせよ、制御ないし自動化の目的で、モータはコントローラないしコンピュータシステムに有線ないし無線ネットワークを通して電気的に接続される。
【0014】
血液採取のための鋭利なカニュレ部51Tを有する採取チューブ51は、装置1の本体11内に収容されており、鋭利なカニュレ部51Tが本体11の頭部から露出している。採取チューブ51は概して少量の血液を吸引し保持する毛細管だが、その詳細は後に述べる。
【0015】
装置1は、採取チューブ51に回転軸周りの往復ないし間欠的な回転運動をさせる回転装置と、採取チューブ内の空洞に負圧を及ぼす流体圧源とを備える。その何れかまたは両方は、装置1に内蔵されるが、あるいは外部の付加装置であってもよい。モータ31は採取チューブ51を回転させる内蔵アクチュエータである。図1に例示されたアダプタチューブ71は、外部の圧力源と結合するためのものだが、圧力源が装置1に内蔵されるのであれば省略することができる。
【0016】
図1に組み合わせて図2,3を参照するに、装置1は概して、ボア13を画する本体11と、ボア13に嵌入して軸周りに回転可能なロータ17と、採取チューブ51と圧力源とを流体連通する媒介として流路61,63,65,67および19と、を備える。
【0017】
ボア13は概して、軸に沿って延びる円筒形の開口である。ロータ17は少なくとも部分的にボア13に嵌入するよう構造づけられており、軸周りに両方向に回転できるようになっている。液密を確保するべく、Oリング25のごときシール部材が本体11とロータ17との間に介在してもよい。
【0018】
ロータ17は、採取チューブ51に向けて軸方向に延びる流路63を画する。またロータ17は、流路63と流体連通し、概して径方向に延びる流路65を画する。径方向流路65はロータ17の側壁に開口する。本体11中の流路19は、実質的に、しかし必然的にでなく、流路65の開口と同一面上に開口する。
【0019】
図1-3に組み合わせて図4Aを参照するに、実質的にしかし必然的でなくこれらの開口と同一面上に、本体11とロータ17との間に流路67を形成するべく、周溝65Gが形成されている。かかる構造は、ロータ17がどのように回転しても、定常的に流路19と65との間の流体連通を可能にする。図中ではロータ17が溝65Gを有するが、これに代えてあるいは加えて、本体11も対応する溝を備えてもよい。
【0020】
流体連通を確保するべく、他の構造を利用してもよい。図4Bはそのような構造を例示しており、柔軟なチューブ19Tが流路19と65とを結合しており、本体11とロータ17との間には、柔軟なチューブ19Tがそこで曲がりくねることができるよう、室15が保持されている。
【0021】
さらにあるいは、流路は必然的に本体11を通って導かれていなくてもよく、直接に外部に導かれていてもよい。図4Cはそのような構造を例示しており、径方向流路65は省かれて軸方向流路63が頂点にまで延長されて直立したアダプタチューブ73に接続されている。かかる例に典型的に、Oリング25は必要がなく、代わりに円滑な回転を容易にするべくボールベアリング27を利用してもよい。上述の中実モータ31に代えて、中空モータを利用してもよく、アダプタチューブ73はその空洞を通って引き出されてもよい。
【0022】
ロータ17は軸方向に不動でなくてもよく、図5に示すごとく、軸方向に比較的短い距離だけ可動なように構造づけられていてもよい。軸方向運動の間、流体連通を確保するべく、周方向流路67は軸方向に僅かに幅広に形成されていてもよい。さらに装置1は、ピエゾ素子アクチュエータのごときアクチュエータを備えてロータ17に振動ないし往復軸方向運動を起こさせてもよい。かかる運動の移動距離は0から0.1mmの範囲にすることができ、周波数は1から20Hzの範囲にすることができるが、これらの例に限定されない。かかる運動はカニュレ部51に伝達されてこれに振動ないし往復運動をさせる。かかる運動がもたらす利益については後述する。
【0023】
図2に戻って参照するに、モータ31はカップリング33を介してロータ17と駆動的に結合している。モータ31には、DCモータ、サーボモータないしステッピングモータを適用することができる。モータ31ないしカップリング33は上述のピエゾ素子アクチュエータを備えることができる。
【0024】
モータ31に交流が印加された時には、そのシャフトは往復回転運動を起こす。脈流が印加された時には、シャフトは間欠回転運動を起こす。あるいは、間欠的ないし往復回転運動を引き起こすべく、リンク、クランク、ラチェットないしカム機構をモータ31と組み合わせることができる。何れにせよ、かかる運動はロータ17を介して採取チューブ51およびカニュレ部51Tに伝達される。
【0025】
図2に組み合わせて主に図3,4Cまたは5を参照するに、装置1は、さらにナット45のごとき締結具を備え、またロータ17は対応してナット45を受容するべく構造づけられたスカート41を備えてもよい。締結具は採取チューブ51をロータ17へ結合する。
【0026】
その中心に開口61があるが閉じた底を有するテーパスリーブ43のごときシール部材が、その底をロータ17に向け、開口61が流路63と揃うような状態で、ロータ17と締結具の間に保持されていてもよい。締結具を締めると、テーパスリーブ43はロータ17,採取チューブ51およびナット45に面接触して外部に対する液密を確保し、一方採取チューブ51内の空洞53と流路61,63,65および19とは流体連通を確保する。
【0027】
テーパスリーブ43のごときシール部材は、採取チューブ51の組み込みないし交換を容易にする点でも利益がある。なぜなら、採取チューブ51が一旦シール部材に挿入されると、使用者はかかる結合体を一体に扱うことができ、締結されれば流路のアライメントおよび液密性は自動的に確保されるからである。
【0028】
主に図2を参照するに、本体11はボス部21を一体にまたは脱着可能な別体として備える。ボス部21は、採取チューブ51を囲むように、しかしカニュレ部51Tをボス部21外に露出するように、軸方向に延びている。かかる構造は、採取チューブ51を実質的にその全長にわたって支持するよう構成され、それゆえ採取チューブ51を首尾よく支持してその偏心回転を防ぐ。円滑な回転を実現するべく、ボス部21は2以上のボールベアリング23、あるいはそれと均等な摩擦低減要素を有してもよく、また好ましくはベアリング23は偏心運動を防ぐべく互いに軸方向に離れている。
【0029】
ボス部21は好ましくはガラス,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンのごとき透明ないし半透明の素材よりなり、採取チューブ51内に採取された血液,体液ないし体組織を目視検査できるようになっている。
【0030】
あるいは、または加えて、装置1は採取チューブ51内のそのような物質を検出するセンサS1を備えてもよい。利用可能な例は、光学センサ,光電子センサ,フォトカプラないし誘導センサだが、かかるリストは網羅的ではない。
【0031】
採取チューブ51内に採取された血液の量が所望のレベルに達したか否かを判別できる特別な位置に、センサS1を配置することは好ましいだろう。かかる観点から、センサS1は、ボス部21内であって、採取チューブ51の後端に比較的に近い適当な位置に配置することができる。さらには装置1は、血液採取の開始を検出するべく、採取チューブ51またはカニュレ部51Tの先端付近に他のセンサS2を備えてもよい。もちろん装置1はさらに他のセンサを備えていてもよい。何れにせよ、これらのセンサは有線ないし無線ネットワークを介してコントローラないしコンピュータシステムに接続され、これらからの信号は血液採取の開始および終了のトリガとして利用できる。
【0032】
図2に組み合わせて図6を参照するに、採取チューブ51は概して細長い円筒チューブと、チューブの先端に一体ないし脱着可能に装着されたカニュレ部51Tとよりなる。採取チューブ51は、目視検査ないし光学検出を許容するよう、少なくとも部分的には、ガラス,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンのごとき透明ないし半透明の素材よりなっていてもよい。しかしながらカニュレ部51Tは、ガラスないし鋼のごとき剛直ないし硬質な材料であってもよい。あるいは、環境適合性の観点から、ポリ乳酸ないしポリグリコール酸のごとき生分解性材料が適用可能である。
【0033】
図6に組み合わせて図7Aを参照するに、カニュレ部51Tはチューブ部よりずっと細径であって、その先端には穿刺のための針先51Pを有する。概して、カニュレ部51Tの径Dが小さいほど患者が感じる痛みは小さい。しかしながら、あまりに細いカニュレ部は座屈ないし損傷し易いだろう。そこで径Dは、180ミクロン以下にすることができ、あるいは好ましくは数十から120ミクロンの範囲にすることができる。
【0034】
図7Aおよび7Bを参照するに、採取チューブ51内の空洞53は針先51Pに向けて延びてこれに達し、針先51P付近に開口53Tを有する。針先51Pはそれ自体が中空であってもよく、あるいは開口53Tは針先51Pに近い側壁にあってもよく、後者の場合には針先51Pは中実であってもよい。あるいはカニュレ部51Tは、図8に示す医療用針におけるような他の形態をとることができ、またランセットの形態をとるべく横方向に鋭く切り取られた斜面51Lを有してもよい。
【0035】
カニュレ部51Tを除き、採取チューブ51は均一な径にすることができる。これはボールベアリング23への組み込みが容易な点で有利である。しかしながら、図9に示すごとく、チューブ部は部分的に太くなってバルブ55を有してもよく、これはより大きなキャビティ57を画する。これは容量を増大するのに有利である。
【0036】
採取チューブ51は、チューブ51とカニュレ部51Tとを通して延びた空洞53を有する。中空53は、圧力源による負圧の媒体として、また採取された血液,体液ないし体組織の容器として作用する。空洞53は採取チューブ51の先端と後端との両方に開口するが、後端は通気性フィルタ59に占められていてもよく、これは流路との流体連通を許しながら漏れ防止をするに有利である。
【0037】
装置1は、通常は空気である流体を利用して負圧ないし正圧を印加する、外部の、または内蔵された圧力源と組み合わせて使用される。適用可能な例は、ゴムバルブのごとき柔軟な中空バルブ、ベローズポンプ、またはそのような手動ポンプ、予圧された又は予減圧されたエア容器、および電動エアポンプだが、このリストは網羅的ではない。装置1の外部に圧力源が配置された場合には、アダプタチューブ71ないし73に接続される。圧力源が流路に負圧を及ぼすと、血液,体液ないし体組織がカニュレ部51Tを通って空洞53へ吸引され採取される。装置1は、あるいは、正圧を印加して体に医療用薬物を注入ないし輸液するために利用することができる。
【0038】
血液採取の手順を以下に例示的に説明する。この手順は手動で行えるが、部分的ないし全面的に、以下の開示に従う適当なアルゴリズムを有するコントローラないしコンピュータシステムにより実行可能である。
【0039】
圧力源が手動の場合には、使用者(患者)は予め負圧をこれに与え、その弁を閉じておく。使用者は、まず安定した物体に置かれた支持体3へ、装置1を固定し、指置き5Aへ指を置く。あるいは、使用者は一方の手の指で装置1を直接に挟み、他方の手の指へ尖ったカニュレ部51Tを近づける。
【0040】
使用者は、次いで採取チューブ51を駆動するべく、モータ31を始動し、また備えられている場合にはピエゾ素子アクチュエータも始動し、さらに装置1を指に向けて下降してカニュレ部51Tが皮膚を穿刺するようにする。
【0041】
針先51Pが毛細血管の何れかを捉えることに成功すると、毛細管力が作用するために血液はカニュレ部51Tを上がり始める。すると使用者は目視により、あるいはカニュレ部51T中のフラッシュ血を検査するセンサS2により、それを検出することができる。
【0042】
次いで使用者は、モータ31を停止し、圧力源を作動させて流路を通して採取チューブ51に負圧を及ぼし、採取チューブ51へ血液を取り出す。採取された血液量が所望のレベルに達したら、使用者は目視検査により、あるいはセンサS1からの信号により、即座にそれを検出することができる。
【0043】
すると使用者は弁を閉じるか又は圧力源をシャットダウンすることにより、吸引を停止する。使用者は装置1を指から遠ざけ、採取チューブ51を取り外す。新たなチューブが装着されれば、装置1は再び使用可能となる。
【0044】
カニュレ部51Tが往復または間欠的回転をすること、および/または、もし印加されるならば軸方向の振動的ないし往復運動も、カニュレが皮膚及び皮下組織へ侵入することを促すとともにその変形を抑制する。このような穿刺は、毛細血管を圧迫しないので、毛細血管中の血流を阻害しない。使用者は、血液採取の目的で出血させるために皮膚を過度に切る必要がない。流路を通した負圧は自動的に血液を採取チューブへ取り出して採取する。これらの要素は、痛みを軽減し、血液採取を容易にする点で有利である。
【0045】
幾つかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正ないし変形をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
血液採取を容易にし、痛みを軽減する装置が提供される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9