(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム
(51)【国際特許分類】
C01D 15/08 20060101AFI20220729BHJP
C01D 15/02 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C01D15/08
C01D15/02
(21)【出願番号】P 2021078635
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2020533260の分割
【原出願日】2019-05-16
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201910048646.X
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520207413
【氏名又は名称】チォンドウ チェムフィズ ケミカル インダストリー カンパニー リミティド
【氏名又は名称原語表記】Chengdu Chemphys Chemical Industry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Tower 3-1101,Yintai Center 1199 North Tianfu Ave Hi-Tech District Chengdu, Sichuan 610041 China
(73)【特許権者】
【識別番号】520207424
【氏名又は名称】サイノーリシーウム マテリアルズ リミティド
【氏名又は名称原語表記】Sinolithium Materials Limited.
【住所又は居所原語表記】Unit 212 Mirror Tower 61 Mody Road Tsim Sha Tsui East KL Hongkong, Hong kong 999077 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイ イーファ
(72)【発明者】
【氏名】ツァィ ロンフー
(72)【発明者】
【氏名】バン ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュンフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シンロン
(72)【発明者】
【氏名】リー ユンフォン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヤーリー
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン チュァンヨン
(72)【発明者】
【氏名】モン チィァン
(72)【発明者】
【氏名】ジィァン ホンジュン
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107298450(CN,A)
【文献】特開2018-035065(JP,A)
【文献】特表2018-502995(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108341420(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/00
C22B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムであって、生成順序に応じて配置された、精製リチウム塩溶液生成サブシステムと、バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムと、バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムとを備え、
前記精製リチウム塩溶液生成サブシステムは、フィルタモジュールと、リチウム抽出・吸着モジュールと、リチウムエンリッチ・濃縮モジュールと、化学的不純物除去モジュールと、リチウム沈殿反応モジュールと、酸分解・溶解モジュールと、浄化リチウム塩溶液精製モジュールとを備え、不純物除去処理において高不純度リチウム源に応じて前記モジュールの異なる組み合わせが選択され、前記浄化リチウム塩溶液精製モジュールが精製に用いられることで、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムの生産要件を満たす精製リチウム塩溶液が得られ、
前記バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、複合電気透析装置と、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置と、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備え、
前記高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、溶解タンクと、フィルタと、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備え、
前記高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、溶解タンクと、フィルタと、第1炭
酸化反応装置とを備え、
前記バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムは、第2炭
酸化反応装置と、エージングセルとを備えている、システム。
【請求項2】
前記フィルタモジュールは、第1フィルタと、第2フィルタと、第3フィルタとを備え、前記第1フィルタは、前記高不純度リチウム源のろ過に使用されるものであり、サンドフィルタ、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ及びPE微多孔管フィルタのいずれかであり、前記第2フィルタは、リチウム含有脱離液又は溶解液のろ過、又は、不純物除去済溶液の粗ろ過に使用されるものであり、板枠フィルタ、キャンドルフィルタ、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ及びPE微多孔管フィルタのいずれかであり、前記第3フィルタは、前記不純物除去済溶液の精密ろ過に使用されるものであり、ろ過精度0.1~0.2μmの微多孔フィルタ又はセラミックフィルタであることを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項3】
前記リチウム抽出・吸着モジュールは、リチウムイオン交換吸着剤が充填された吸着器であり、前記リチウムエンリッチ・濃縮モジュールは、三段ディスク管逆浸透ユニットと塩室及び濃縮塩室を備えた二室電気透析ユニットとを結合して構成される逆浸透・電気透析結合装置であることを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項4】
前記化学的不純物除去モジュールは、不純物除去反応装置であり、前記リチウム沈殿反応モジュールは、連続結晶化反応装置であり、前記連続結晶化反応装置は、ドラフト管及び増粘機を備えた反応結晶化装置を含み、前記ドラフト管の外側に供給口が整列して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項5】
前記酸分解・溶解モジュールは、攪拌容器であり、前記浄化リチウム塩溶液精製モジュールは、キレート樹脂が充填されたキレート樹脂イオン交換カラムであり、前記キレート樹脂イオン交換カラムは、トリプルカラム(A/B/C)モードを採用しており、前記カラムAと前記カラムBは直列に動作し、前記カラムCは非直結再生用であり、前記カラムAは一次カラムとして機能し、前記カラムBは二次カラムであってセキュアカラムとして機能し、前記カラムAが吸着により飽和すると、前記カラムBが上昇して前記一次カラムとして機能し、前記カラムCが前記カラムBと接続されて前記二次カラムとして機能し、前記キレート樹脂イオン交換カラムは、常にA→B、B→C、C→Aの直列動作モードを用いることを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項6】
前記複合電気透析装置は、三室バイポーラ膜電気透析ユニットと、耐アルカリ性電気透析ユニットと、耐酸性電気透析ユニットとを連結して形成されており、前記三室バイポーラ膜電気透析ユニットは、陽極室及び陰極室と、前記陽極室と前記陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室、酸室及び塩室と、を備えており、前記陽極室は電源の正極に接続され、前記陰極室は前記電源の負極に接続されており、前記積層膜は、交互に配置されたバイポーラ膜と陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えており、前記バイポーラ膜は、陽イオン交換膜と、陰イオン交換膜と、これらの間に介在された触媒層とで構成されており、前記アルカリ室は、前記陰イオン交換膜と、前記バイポーラ膜の前記陽イオン交換膜との間に形成されており、前記酸室は、前記陽イオン交換膜と、前記バイポーラ膜の前記陰イオン交換膜との間に形成されており、前記塩室は、前記陰イオン交換膜と、陽イオン交換膜との間に形成されており、前記三室バイポーラ膜電気透析ユニットの外部に、電極浸漬液タンク、アルカリ液タンク、酸液タンク及び供給液タンクが接続されており、前記電極浸漬液タンクは前記陽極室及び前記陰極室と連通し、前記アルカリ液タンクは前記アルカリ室と連通し、前記酸液タンクは前記酸室と連通し、前記供給液タンクは前記塩室と連通していることを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項7】
前記耐アルカリ性電気透析ユニットは、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、前記陽極室と前記陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室及び濃縮アルカリ室と、を備えており、前記陽極室は電源の正極に接続され、前記陰極室は前記電源の負極に接続されており、前記積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えており、前記アルカリ室は、前記陰イオン交換膜と前記陽イオン交換膜との間に形成されており、前記濃縮アルカリ室は、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に形成されており、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜は、耐アルカリ性の同種の膜であることを特徴とする、請求項6に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項8】
前記耐酸性電気透析ユニットは、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、前記陽極室と前記陰極室との間の積層膜によって隔てられた塩室及び濃縮塩室と、を備えており、前記陽極室は電源の正極に接続され、前記陰極室は前記電源の負極に接続されており、前記積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えており、前記塩室は、前記陰イオン交換膜と前記陽イオン交換膜との間に形成されており、前記濃縮塩室は、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に形成されており、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜は、耐酸性の同種の膜であることを特徴とする、請求項7に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【請求項9】
前記バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステム及び前記高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムの少なくとも一方に設けられた前記DTB冷却・結晶化装置又は前記OSLO冷却・結晶化装置のバックステージに真空フラッシュ室が追加されており、前記第1炭
酸化反応装置及び前記第2炭
酸化反応装置が、
溶液の供給速度を制御するためのPLC制御ユニットを備えており、前記PLC制御ユニットが、反応システムの導電率を変化させることにより
前記供給速度又は二酸化炭素
の速度を制御することにより、自動制御を実現することを特徴とする、請求項1に記載の高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム資源の抽出、精製、及び、リチウム塩の生成の分野に属するものであり、特に、高不純度リチウム源から不純物除去及び精製により水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成することに関し、具体的には、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウム資源の抽出技術の多くは、程度の差はあるが、高不純度リチウム原料から高純度グレード又はバッテリーグレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物を経済的に生成するのが困難である。
【0003】
a)現時点における、高不純度リチウム原料からバッテリーグレードの水酸化リチウムを生成する技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0004】
高不純度リチウム源の不純物除去及び精製を行い、その後、当該リチウム源を炭酸ナトリウムの化学沈殿により粗製炭酸リチウムに変換する。最後に、粗製炭酸リチウムを以下の技術手法によりバッテリーグレードの水酸化リチウムに変換する。
【0005】
<技術手法1>粗製炭酸リチウムを硫酸と反応させて硫酸リチウム溶液を生成し、その後、当該硫酸リチウム溶液について、不純物除去、精製、水酸化ナトリウムとの苛性化、及び、低温冷凍を行うことで、硫酸ナトリウム十水和物の結晶を分離させる。遠心分離後、上記結晶から、多量の水酸化リチウムと少量の硫酸ナトリウムとを含有する混合アルカリ溶液を得る。混合アルカリ溶液を蒸発及び結晶化させることで、精製水酸化リチウムを分離させ、その後、当該精製水酸化リチウムを浄化のため再結晶化させ、遠心分離、洗浄、及び乾燥させることで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得る。
【0006】
<技術手法2>粗製炭酸リチウムを硫酸リチウム溶液又は塩化リチウムに変換し、当該リチウム塩溶液について、化学的不純物除去、樹脂不純物徹底除去、又は、濃縮・結晶化を行うことで、高純度の硫酸リチウム又は塩化リチウムの溶液又は結晶を得る。硫酸リチウム又は塩化リチウムの溶液についてイオン交換膜電気透析を行うことで、水酸化リチウム溶液を得る。その後、当該水酸化リチウム溶液について濃縮・結晶化・再結晶化その他の処理を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウム結晶を得る。
【0007】
<技術手法3>粗製炭酸リチウムを石灰クリームと苛性化させることで、不溶性炭酸カルシウム及び水酸化リチウムの溶液を得る。その後、当該溶液をろ過することで、水酸化リチウム溶液を得る。そして、当該水酸化リチウム溶液の濃縮・結晶化により、粗製水酸化リチウムを得る。最後に、当該粗製水酸化リチウムの再結晶化及び浄化により、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得る。
【0008】
上記のような高不純度リチウム源からバッテリーグレードの水酸化リチウムを生成する技術手法は、作業工程が長いこと、多数の副生物が生成されること、回収率が低いこと、生産コストが高いこと等の、様々な問題を有している。
【0009】
b)現時点における、高不純度リチウム原料から高純度グレードの炭酸リチウムを生成する技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0010】
高不純度リチウム源から粗製炭酸リチウムを沈殿させ、当該粗製炭酸リチウムを、以下の技術手法により、バッテリーグレードの炭酸リチウム又は高純度グレードの炭酸リチウムに変換する。
【0011】
<技術手法1>粗製炭酸リチウムを化学反応によりバッテリーグレードの水酸化リチウムに変換し、その後、当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの再結晶化及び浄化を行うことで、高純度の水酸化リチウムを得る。最後に、高純度の水酸化リチウムを二酸化炭素と反応させることで、高純度の炭酸リチウムを得る。
【0012】
<技術手法2>粗製炭酸リチウムを二酸化炭素及び水と反応させることで、可溶性の重炭酸リチウム溶液を生成し、その後、当該重炭酸リチウム溶液をろ過することで、機械的不純物及び不溶物を除去し、ろ液を得る。ろ液についてイオン交換樹脂による不純物除去を行い、重炭酸リチウムを80~90°の高温で熱分解させ、炭酸リチウムの結晶を分離させることで、バッテリーグレード要件を満たす炭酸リチウムを得る。バッテリーグレードの炭酸リチウムを二酸化炭素及び水と反応させることで、重炭酸リチウム溶液を生成し、その後、当該重炭酸リチウム溶液を樹脂とキレート化することで、不純物の徹底除去を行う。最後に、重炭酸リチウム溶液を熱により分解・脱離させることで、高純度の炭酸リチウムを得る。
【0013】
上記のような高不純度リチウム源から高純度グレードの炭酸リチウムを生成する技術手法は、多くの中間浄化工程を要し、また、作業工程が長いこと、回収率が低いこと、生産コストが高いこと等の、様々な問題を有している。
【発明の概要】
【0014】
従来技術の上記問題を解決するため、本発明の目的は、バッテリーグレードの水酸化リチウム、高純度グレードの炭酸リチウム、及び、バッテリーグレードの炭酸リチウムを生成するシステムにおいて、高不純度リチウム原料を配合することで、全体的なリチウム回収率を高め、製品品質を向上させ、かつ、高不純度リチウム原料を用いて市場の需要を満たす低コストで、高品質の水酸化リチウム、高純度グレードの炭酸リチウム、及び、バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成物を生成することができる、システムを提供することにある。
【0015】
本発明の参考例は、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法であって、以下の工程を備えた方法を提供する。
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
(a)高不純度リチウム源の処理工程: 品質に差がある前記高不純度リチウム源について理化学的な複数の不純物除去方法の異なる組み合わせにより前処理を行い、Li+(7~24g/L)、K+(0.01~0.05g/L)、Na+(0.05~0.1g/L)、Ca2+(0.01~0.02g/L)、Mg2+(0.000~0.005g/L)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH9~11の浄化リチウム塩溶液を得る工程
前記高不純度リチウム源は、第1高不純度リチウム源、第2高不純度リチウム源、又は、高不純度固体リチウム塩であり、
前記第1高不純度リチウム源は、Li+(0.1~4g/L)、Na+(2~110g/L)、K+(0.5~50g/L)、Mg2+(0~100g/L)、Ca2+(0~20g/L)、B(0~5g/L)、SO4
2-(0~250g/L)、Cl-(0~200g/L)を含有しかつpH6~12の高不純度リチウム源、又は、Li+(1.5~2g/L)、Na+(60~100g/L)、SO4
2-(0~220g/L)、Cl-(0~200g/L)、CO3
2-(13~17g/L)を含有しかつpH11~12のリチウム塩溶液であり、
前記第2高不純度リチウム源は、Li+(14~40g/L)、Na+(20~80g/L)、K+(0~30g/L)、Mg2+(0~20g/L)、Ca2+(0~10g/L)、B(0~15g/L)を含有する高塩度・高不純度のリチウム溶液、又は、粗製硫酸リチウムと塩化リチウムとを溶解させて指定の範囲にすることで得られる高塩度・高不純度のリチウム溶液であり、
前記高不純度固体リチウム塩は、Na(0.5~1質量%)、K(0.1~0.5質量%)、Ca(0.5~3質量%)、Mg(0.3~5質量%)を含有する、高不純度の炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、又は、硫酸リチウムと塩化リチウムとの複合塩であり、
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程: 前記浄化リチウム塩溶液のpHを8~9に調整し、イオン交換キレート樹脂による前記浄化リチウム塩溶液の不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(7~24g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、Zn2+(1ppm以下)、Al3+(1ppm以下)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8~9の精製リチウム塩溶液を得る工程
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
(a)複合電気透析工程: 前記精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度0.5~2mol/Lの希酸溶液とを得る工程
(b)濃縮・結晶化工程: 前記LiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させることで水酸化リチウム懸濁液を得、さらに前記水酸化リチウム懸濁液を冷却・結晶化させ、液体から固体を分離させることで、水酸化リチウム湿潤細粒と、許容外の高不純度母液とを得、そして、前記水酸化リチウム湿潤細粒を後処理することで、前記バッテリーグレードの水酸化リチウムを得る工程
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
前記水酸化リチウム湿潤細粒を溶解させることで80~100℃の飽和水酸化リチウム溶液を生成し、前記飽和水酸化リチウム溶液をろ過することでろ液を得、その後、前記ろ液を冷却し結晶化させることで、液体から固体を分離させ、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と、結晶化母液とを得、そして、前記高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を後処理することで、前記高純度グレードの水酸化リチウムを得る工程
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
前記高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を純水で溶解させることで水酸化リチウム溶液を生成し、前記水酸化リチウム溶液をろ過することでろ液を得、その後、前記ろ液に二酸化炭素を導入して炭酸化反応を生じさせ、当該炭酸化反応の後、液体から固体を分離させ、高純度グレードの炭酸リチウム湿潤体と、炭酸化母液とを得、そして、前記高純度グレードの炭酸リチウム湿潤体を後処理することで、前記高純度グレードの炭酸リチウムを得る工程
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
バッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を基液に添加して均一に混合し、二酸化炭素、及び、前記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と前記工程(D)で得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液を導入し、化学反応を生じさせ、前記化学反応により得られた炭酸リチウムスラリーをエージングし、液体から固体を分離させることで、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得、最後に、前記バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体を後処理することで、前記バッテリーグレードの炭酸リチウムを得る工程
【0016】
さらに、本発明の参考例では、前記工程(A)で得られた精製リチウム塩溶液と、炭酸ナトリウム溶液との化学反応により、バッテリーグレードの炭酸リチウムを生成することができる。
【0017】
本発明は、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムを提供する。前記システムは、生成順序に応じて配置された、精製リチウム塩溶液生成サブシステムと、バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムと、バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムとを備えている。
前記精製リチウム塩溶液生成サブシステムは、フィルタモジュールと、リチウム抽出・吸着モジュールと、リチウムエンリッチ・濃縮モジュールと、化学的不純物除去モジュールと、リチウム沈殿反応モジュールと、酸分解・溶解モジュールと、浄化リチウム塩溶液精製モジュールとを備え、不純物除去処理において高不純度リチウム源に応じて前記モジュールの異なる組み合わせが選択され、前記浄化リチウム塩溶液精製モジュールが精製に用いられることで、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムの生産要件を満たす精製リチウム塩溶液が得られる。
前記バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、複合電気透析装置と、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置と、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備えている。
前記高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、溶解タンクと、フィルタと、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備えている。
前記高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、溶解タンクと、フィルタと、第1炭酸化反応装置とを備えている。
前記バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムは、第2炭酸化反応装置と、エージングセルとを備えている。
【0018】
本発明及び本発明の参考例は、従来技術に比べ、以下の利点を有する。
【0019】
1)前記高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法は、より広範囲の原料をリチウム原料として適用できる。前記方法は、高不純度のリチウム含有溶液(例えば、塩湖かん水や、リチウム沈殿母液)、又は、その他の高不純度・低リチウム含有の溶液から、迅速かつ効率的に、リチウムを抽出するのに用いられ、リチウムイオンをカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びホウ素イオンから効率よく分離できる。さらに、前記方法は、複数のリチウム鉱から硫酸リチウム溶液又は塩化リチウム溶液を生成するのに用いることができる。
【0020】
2)本発明は、リチウム含有量や不純物の種類及び含有量が様々な高不純度リチウム源を処理するため、高不純度リチウム源の品質に応じて理化学的処理方法が異なる別々の組み合わせを提供することで、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物の品質要件を満たすことができる。
【0021】
3)本発明は、従来技術と比較して、排ガス・廃水・残渣という3つの廃棄物や、再利用可能な水や、作業過程で副産物として生成される酸性の母液を低減でき、環境保護に有効であるという明らかな利点を有する。
【0022】
4)本発明は、低コストかつ高品質に、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の参考例に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法のフローチャートであり、第1高不純度リチウム源の処理フローに関する図である。
【
図2】本発明の参考例に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法のフローチャートであり、第2高不純度リチウム源の処理フローに関する図である。
【
図3】本発明の参考例に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法のフローチャートであり、高不純度固体リチウム塩の処理フローに関する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムの構造を示す図である。
【
図5】本発明に係る逆浸透・電気透析結合装置の構造を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る複合電気透析装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示されている全ての方法および手順における全ての特徴又は工程は、相互に排他的な特徴及び/又は工程を除いて、任意の方法で組み合わせることができる。
【0025】
本明細書に開示されている任意の特徴は、別段の記載がない限り、他の同等又は類似の特徴に置き換えることができ、即ち、各特徴は、別段の記載がない限り、一連の同等又は類似の特徴の例に過ぎない。
【0026】
本発明の参考例に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法について、詳細に説明する。
【0027】
本発明は、主に以下の種類の高不純度リチウム源からの生成及び製造に適している。
【0028】
第1高不純度リチウム源は、Li+(0.1~4g/L)、Na+(2~110g/L)、K+(0.5~50g/L)、Mg2+(0~100g/L)、Ca2+(0~20g/L)、B(0~5g/L)、SO4
2-(0~250g/L)、Cl-(0~200g/L)を含有しかつpH6~12の高不純度リチウム源、又は、Li+(1.5~2g/L)、Na+(60~100g/L)、SO4
2-(0~220g/L)、Cl-(0~200g/L)、CO3
2-(13~17g/L)を含有しかつpH11~12のリチウム塩溶液である。
【0029】
第2高不純度リチウム源は、Li+(14~40g/L)、Na+(20~80g/L)、K+(0~30g/L)、Mg2+(0~20g/L)、Ca2+(0~10g/L)、B(0~15g/L)を含有する高塩度・高不純度のリチウム溶液、又は、粗製硫酸リチウムと塩化リチウムとを溶解させて指定の範囲にすることで得られる高塩度・高不純度のリチウム溶液である。
【0030】
高不純度固体リチウム塩は、Na(0.5~1質量%)、K(0.1~0.5質量%)、Ca(0.5~3質量%)、Mg(0.3~5質量%)を含有する、高不純度の炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、又は、硫酸リチウムと塩化リチウムとの複合塩である。
【0031】
リチウム含有量や不純物の含有量及び種類が様々な高不純度リチウム源に対し、本発明は、リチウム含有溶液の性質に応じて様々なモジュールを組み合わせることで高不純度リチウム源から浄化リチウム塩溶液を生成し、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物の生産要件を満たす精製リチウム塩溶液を得る。本発明において「含有する」とは、「含む」を意味し、即ち、記載されたイオン又は成分以外のイオン又は成分があることを意味する。
【0032】
図1~
図3は、互いに異なる高不純度リチウム源のそれぞれからバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法を示すフローチャートである。
図1~
図3に示すように、高純度グレード及びバッテリーグレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物の品質要件が満たされるよう、高不純度リチウム源に応じて異なる工程及びモジュールが組み合わされる。
【0033】
本発明の参考例によると、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する方法は、以下の工程を備えている。
【0034】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0035】
(a)高不純度リチウム源の処理工程: 品質に差がある高不純度リチウム源について理化学的な複数の不純物除去方法の異なる組み合わせにより前処理を行い、Li+(7~24g/L)、K+(0.01~0.05g/L)、Na+(0.05~0.1g/L)、Ca2+(0.01~0.02g/L)、Mg2+(0.000~0.005g/L)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH9~11の浄化リチウム塩溶液を得る工程
【0036】
1)第1高不純度リチウム源(即ち、Li
+(0.1~4g/L)、Na
+(2~110g/L)、K
+(0.5~50g/L)、Mg
2+(0~100g/L)、Ca
2+(0~20g/L)、B(0~5g/L)、SO
4
2-(0~250g/L)、Cl
-(0~200g/L)を含有しかつpH6~12の、Li
+を含有する高不純度リチウム源、又は、Li
+(1.5~2g/L)、Na
+(60~100g/L)、SO
4
2-(0~220g/L)、Cl
-(0~200g/L)、CO
3
2-(13~17g/L)を含有しかつpH11~12の、リチウム塩溶液)についての作業工程は、
図1に示されている。
【0037】
pH6~8に調整された第1高不純度リチウム源をろ過してろ液を得、当該ろ液にリチウムイオン交換吸着剤を添加してリチウムを選択的に吸着させる。そして、吸着により飽和したリチウムイオン交換吸着剤を水で洗浄し、希酸で周期的に脱離させることで、リチウム含有脱離液を得る。当該リチウム含有脱離液のpHを7~9に調整して30~60分間反応させた後、当該脱離液をろ過してろ液を得る。当該ろ液をエンリッチ・濃縮することで、リチウムリッチ溶液を得る。そして、当該溶液について化学的な不純物除去を行うことで、浄化リチウム塩溶液を得る。
【0038】
具体的には、第1高不純度リチウム源を、サンドフィルタ、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ、PE微多孔管フィルタのいずれかでろ過し、ろ液を得る。その後、第1高不純度リチウム源のろ液を、リチウムイオン交換吸着剤が充填された吸着器に圧送し、リチウムを選択的に吸着させることで、リチウムイオンをカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びホウ素イオンから効率よく分離できる。
【0039】
リチウムイオン交換吸着剤は、リチウムイオンを記憶可能で、かつ、格子間で水素イオンと交換してリチウムイオンを選択的に吸着可能な、リチウムイオンシーブである。例えば、H2Mn2O4又はH2TiO3がリチウムイオン交換吸着剤として適用可能である。飽和したリチウムイオン交換吸着剤を水で洗浄し、洗浄水を排出した後、吸着により飽和したリチウムイオン交換吸着剤を希酸で脱離させることで、リチウム含有脱離液を得る。
【0040】
好ましくは、リチウムイオン交換吸着剤の3~5倍の体積の洗浄水を用いて、リチウムイオン交換吸着剤と高不純度リチウム源の残渣とを吸着器中で洗浄する。純水の利用率を向上させるため、リチウムイオン交換吸着剤含有量の1~2倍の体積の最初の洗浄水は、不純物の含有量が比較的多いため、直接排水し、残りの2~3倍の体積の洗浄水は、次の吸着器において、リチウムイオン交換吸着剤含有量の1~2倍の体積の最初の洗浄水として回収し、洗浄後は吸着器内の洗浄水を全て排水する。
【0041】
吸着により飽和したリチウムイオン交換吸着剤を洗浄して洗浄水を排出した後、希酸を用いてリチウムイオンシーブで吸着したリチウムを脱離させる。具体的には、リチウムイオン交換吸着剤を、H+濃度0.2~0.5mol/Lの希酸で0.5~1時間脱離させることで、リチウム含有脱離液を得る。希酸は、好ましくは硫酸及び塩酸の少なくとも1つであり、希酸のH+濃度は0.2~0.5mol/Lであり、脱離が0.5~1時間持続する。脱離液のH+は脱離過程でリチウムイオン交換吸着剤のLi+と交換されるため、脱離液のH+濃度は脱離効率に伴い減少する。効率的な脱離を維持するには、脱離液のH+濃度が0.2~0.5mol/Lに維持されるよう、希酸を添加する必要がある。リチウムイオン交換吸着剤を希酸で脱離させた後、リチウムイオン交換吸着剤の1~2倍の体積の水でリチウムイオン交換吸着剤を洗浄し、当該水を吸着器内の脱離液と共に排出する。そして、脱離液を洗浄水と混合してリチウム含有脱離液を得る。その後、洗浄された吸着器を用いて別のサイクルでリチウムを選択的に吸着させる。
【0042】
希硫酸を用いて脱離させて硫酸リチウム脱離液を得た後、希塩酸を用いて脱離させて塩化リチウム脱離液を得る。得られたリチウム含有脱離液は、Li+(1~3g/L)、Na+(0.005~0.05g/L)、K+(0.000~0.005g/L)、Ca2+(0.0010~0.01g/L)、Mg2+(0.000~0.005g/L)、B(0.000~0.005g/L)を含有しかつpH1~4である。
【0043】
具体的には、リチウム含有脱離液をエンリッチ・濃縮し、リチウムリッチ溶液を得る。エンリッチ・濃縮は、逆浸透・電気透析結合のエンリッチ・濃縮である。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム又は類似のアルカリを用いてリチウム含有脱離液のpHを7~9に調整し、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ及びPE微多孔管フィルタのいずれかを用いて、30~60分間の反応後にリチウム含有脱離液をろ過し、リチウム含有脱離液の処理ろ液を得る。そして、リチウム含有脱離液の処理ろ液について逆浸透・電気透析結合のエンリッチ・濃縮を行い、リチウムリッチ溶液と脱塩生産水とを得る。
【0044】
具体的には、リチウム含有脱離液を逆浸透・電気透析結合装置で処理してろ液を得、当該ろ液をエンリッチ・濃縮することで、リチウムリッチ溶液及び脱塩生産水を得る。
図5は、本発明に係る逆浸透・電気透析結合装置の構造を示す模式図である。
図5に示すように、本発明に係る逆浸透・電気透析結合装置は、三段ディスク管逆浸透(DTRO)ユニット1と、塩室及び濃縮塩室を備えた二室電気透析ユニット2とを結合して構成される。リチウム含有脱離液を処理して得られたろ液を三段ディスク管逆浸透ユニット1内で濃縮し、逆浸透濃縮物と脱塩生産水とを得る。そして、逆浸透濃縮物を二室電気透析ユニット2の塩室に供給し、電界の存在下でリチウムイオンを濃縮塩室に移動させ、濃縮塩室からリチウムリッチ溶液を得る。塩室内のリチウム含有量は低下する。そして、塩室から得られた低リチウム含有塩溶液と、リチウム含有脱離液を処理して得られたろ液とを、三段ディスク管逆浸透ユニット1に供給し、濃縮処理を行う。そして、当該システムが結合動作を行う。上記得られた逆浸透濃縮物は、Li
+(4~7g/L)、Ca
2+(0.005~0.01g/L)、Mg
2+(0.000~0.002g/L)を含有しかつpH7~9である。上記得られた脱塩生産水は、リチウムイオン交換吸着剤の洗浄水として使用することができる。また、上記得られたリチウムリッチ溶液は、Li
+(7~24g/L)、Ca
2+(0.01~0.02g/L)、Mg
2+(0.01~0.02g/L)、Mn
2+(0.000~0.002g/L)、Fe
2+(0.000~0.002g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH7~9である。
【0045】
化学的不純物除去を行った後、リチウムリッチ溶液をろ過することで、浄化リチウム塩溶液を得る。
【0046】
具体的には、濃度200~300g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウムリッチ溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3~0.5g/Lに制御して、80~90℃の温度で10~30分間リチウムリッチ溶液と反応させ、さらに、アルカリでリチウムリッチ溶液のpHを9~11に調整した後、上記温度で30~60分間反応させる。その後、リチウムリッチ溶液を、板枠フィルタ、キャンドルフィルタ及び微多孔フィルタのいずれかで粗ろ過してろ液を得る。その後、ろ過精度0.1~0.2μmの微多孔フィルタ又はセラミックフィルタを用いて当該ろ液を精密ろ過することで、Li+(7~24g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH9~11の浄化リチウム塩溶液を得る。
【0047】
2)第2高不純度リチウム源(即ち、Li
+(14~40g/L)、Na
+(20~80g/L)、K
+(0~30g/L)、Mg
2+(0~20g/L)、Ca
2+(0~10g/L)、B(0~15g/L)を含有する高塩度・高不純度のリチウム溶液、又は、粗製硫酸リチウムと塩化リチウムとを溶解させて指定の範囲にすることで得られる高塩度・高不純度のリチウム溶液)については、以下の前処理工程が実行され、第2高不純度リチウム源を前処理することで浄化リチウム塩溶液を得、当該浄化リチウム塩溶液をバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムの生成に用いる。当該作業工程は、
図2に示されている。
【0048】
具体的な前処理工程は、以下のとおりである。
【0049】
(1)第2高不純度リチウム源について化学的不純物除去を行うことで、Li+(14~40g/L)、Na+(20~80g/L)、K+(0~30g/L)、Mg2+(1ppm以下)、Ca2+(10ppm以下)、B(0~5g/L)を含有しかつpH9~11のリチウム含有不純物除去済溶液を得る。
【0050】
具体的には、濃度200~300g/Lの炭酸ナトリウム溶液を第2高不純度リチウム源に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3~0.5g/Lに制御して、80~90℃の温度で10~30分間第2高不純度リチウム源と反応させ、さらに、アルカリで第2高不純度リチウム源のpHを9~11に調整した後、上記温度で30~60分間反応させる。そして、第2高不純度リチウム源を、板枠フィルタ、キャンドルフィルタ及び微多孔フィルタのいずれかで粗ろ過してろ液を得る。そして、ろ過精度0.1~0.2μmの微多孔フィルタ又はセラミックフィルタを用いて当該ろ液を精密ろ過することで、Li+(14~40g/L)、Na2+(20~90g/L)、K+(0~30g/L)、Mg2+(1ppm以下)、Ca2+(10ppm以下)、B(0~5g/L)を含有しかつpH9~11のリチウム含有不純物除去済溶液を得る。
【0051】
(2)リチウム含有不純物除去済溶液を炭酸ナトリウム溶液で沈殿させ、連続供給及び連続分離により得られた炭酸リチウムスラリーについて、固形分濃度20~40%になるように増させた後、固液分離を行うことで、炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得る。ここで、当該リチウム沈殿母液は、Li+(1.5~2g/L)、Na+(60~100g/L)、SO4
2-(0~220g/L)、Cl-(0~200g/L)、CO3
2-(13~17g/L)を含有しかつpH11~12の第1高不純度リチウム源である。当該リチウム沈殿母液を戻して第1高不純度固体リチウム塩の処理工程を行い、浄化リチウム塩溶液を得る。
【0052】
具体的には、リチウム含有不純物除去済溶液と、濃度200~300g/Lの炭酸ナトリウム溶液とを、沈殿反応のため、連続結晶化反応装置に同時に添加する。反応システムの温度を85~95℃に制御し、かつ、反応システムに入るときの瞬間Li濃度が3~7g/Lに維持されかつ炭酸ナトリウム濃度が30~65g/Lに維持されるように炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液の供給速度を制御する。連続供給において、炭酸リチウムスラリーは、連続して分離されて増粘機に送られ、固形分濃度20~40%となる。当該炭酸リチウムスラリーについて遠心分離機で固液分離を行うことで、炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得る。
【0053】
本発明は、連続動作モードを採用し、連続結晶化反応装置に炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液を連続的に添加して、炭酸リチウムスラリーを連続的に得る。炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液の供給速度を制御することで、炭酸リチウムの反応性結晶化の過飽和度を制御し、爆発的な核生成を回避する。これにより、結晶性の高い大粒の炭酸リチウムを得ることができ、固液分離・洗浄が容易になり、炭酸リチウムの純度を向上させることができる。連続結晶化反応装置の起動時において、基液は、純水であってもよいし、得られたリチウム沈殿母液であってもよい。
【0054】
使用される連続結晶化反応装置は、ドラフト管及び増粘機を備えた反応結晶化装置を含み、リチウム含有不純物除去済溶液及び炭酸ナトリウム溶液の供給口が、ドラフト管の外側に整列して配置されている。増粘機から得られた上清の一部を、ポンプで強制的に反応結晶化装置に戻す。そして、リチウム含有不純物除去済溶液を、単独で又は増粘機から戻された上清と混合した後に、瞬間Li濃度が3~7g/Lとなるよう維持し、その後、反応結晶化装置のドラフト管に送って炭酸ナトリウム溶液と反応させて沈殿させる。そして、連続反応結晶化装置に炭酸ナトリウム溶液を添加し、炭酸ナトリウム濃度が30~65g/Lになるように維持されるように混合する。反応結晶化装置の攪拌により、ドラフト管内の液体が上方に移動し、上下に循環する流れ場を形成する。これにより、リチウム含有不純物除去済溶液と炭酸ナトリウム溶液とが、反応システム内の溶液と予め混合され、ドラフト管に供給されて反応する前に濃度が低下する。このようにして、反応の過飽和度を制御し、炭酸リチウムの反応結晶化率、結晶形態及び粒度を制御できる。不純物の混入を低減し、固液分離及び洗浄を容易にして、得られる炭酸リチウム湿潤細粒の純度を高めることができる。
【0055】
(3)得られた炭酸リチウム湿潤細粒を、硫酸、塩酸、又は、H+濃度2~3mol/Lの塩酸と硫酸の混合物と反応させ、反応終点のpHを4~6に制御して、液体を得る。上記液体にアルカリを添加することでpHを9~11に調整し、その後当該液体をろ過し、Li+(7~24g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、SO4
2-(0~200g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH9~11の浄化リチウム塩溶液を得る。
【0056】
さらに、上記前処理工程で得られた炭酸リチウム湿潤細粒について、さらに処理をすることで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得ることもできる。具体的には、炭酸リチウム湿潤細粒を、60℃~80℃の純水に1:3~5の固液比で添加し、30~60分間攪拌洗浄する。その後、炭酸リチウム湿潤細粒について固液分離、乾燥、粉砕、除鉄を行い、バッテリーグレードの炭酸リチウム生成物を得る。上記攪拌洗浄用の水は、炭酸ナトリウムの生成で再利用されたものである。
【0057】
3)高不純度固体リチウム塩(即ち、Na(0.5~1質量%)、K(0.1~0.5質量%)、Ca(0.5~3質量%)、Mg(0.3~5質量%)を含有する、高不純度の炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、又は、硫酸リチウムと塩化リチウムとの複合塩)については、高不純度固体リチウム塩を希酸又は純水に溶解させてリチウム塩溶液を生成する。当該リチウム塩溶液をろ過して不溶性不純物のないろ液を得、当該ろ液について化学的不純物除去を行うことで浄化リチウム塩溶液を得る。そして得られた浄化リチウム塩溶液を用いて、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成する。当該作業工程は、
図3に示されている。
【0058】
具体的には、高不純度の炭酸リチウムを、硫酸、塩酸、又は、H+濃度2~3mol/Lの塩酸と硫酸の混合物と反応させ、反応終点のpHを4~6に制御して、液体を得る。当該液体をろ過し、リチウム塩溶液を得る。そして、高不純度の硫酸リチウム、塩化リチウム、又は、硫酸リチウムと塩化リチウムとの複合塩を、純水で溶解させることで、Li+(7~24g/L)を含有するリチウム塩溶液を得る。
【0059】
具体的には、濃度200~300g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウム塩溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3~0.5g/Lに制御して、80~90℃の温度で10~30分間リチウム塩溶液と反応させ、さらに、アルカリでリチウム塩溶液のpHを9~11に調整した後、上記温度で30~60分間反応させる。その後、リチウム塩溶液を、板枠フィルタ、キャンドルフィルタ及び微多孔フィルタのいずれかで粗ろ過してろ液を得る。その後、ろ過精度0.1~0.2μmの微多孔フィルタ又はセラミックフィルタを用いて当該ろ液を精密ろ過することで、Li+(7~24g/L)、K+(0.01~0.05g/L)、Na2+(0.01~0.02g/L)、Ca2+(0.001~0.02g/L)、Mg2+(0.000~0.005g/L)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(0.01~0.06g/L)を含有しかつpH9~11の浄化リチウム塩溶液を得る。
【0060】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程: 上記工程(a)で得られた浄化リチウム塩溶液のpHを8~9に調整し、イオン交換キレート樹脂による浄化リチウム塩溶液の不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(7~24g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、Zn2+(1ppm以下)、Al3+(1ppm以下)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(0~200g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8~9の精製リチウム塩溶液を得る。
【0061】
浄化リチウム塩溶液を、50℃~60℃かつpH8~9に制御して、キレート樹脂が充填されたキレート樹脂イオン交換カラムに投入し、不純物徹底除去処理を行う。キレート樹脂は、カチオンキレート樹脂、好ましくはイミノジ酢酸キレート樹脂である。本発明のキレート樹脂イオン交換カラムは、トリプルカラム(A/B/C)モードを採用しており、カラムAとカラムBは直列に動作し、カラムCは非直結再生用であり、カラムAは一次カラムとして機能し、カラムBは二次カラムであってセキュアカラムとして機能する。カラムAが吸着により飽和すると、カラムBが上昇して一次カラムとして機能し、カラムCがカラムBと接続されて二次カラムとして機能する。キレート樹脂イオン交換カラムは、常にA→B、B→C、C→Aの直列動作モードを用い、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、Zn2+(1ppm以下)、Al3+(1ppm以下)を含有する、不純物除去処理の対象となるリチウム塩溶液を確保する。
【0062】
吸着によりキレート樹脂を飽和させた後、キレート樹脂について、塩酸又は硫酸を用いた酸再生工程を行い、その後、水酸化リチウム溶液を用いたアルカリ再生工程を行う。上記再生工程で生成されたリチウム含有溶液を、戻し、第1高不純度リチウム源の処理工程を行うことで、浄化リチウム塩溶液を得る。
【0063】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0064】
(a)複合電気透析工程: 上記工程(A)で得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度0.5~2mol/Lの希酸溶液とを得る。複合電気透析で生成された希酸溶液は、上記工程(A)において吸着・脱離、pH調整及び/又は樹脂再生、又は炭酸リチウム溶解に使用することができる。水酸化リチウム溶液は、次の工程で処理される。
【0065】
具体的には、上記精製リチウム塩溶液を複合電気透析装置に圧送し、複合電気透析を行う。
図6は、本発明に係る複合電気透析装置の構造を示す模式図である。
図6に示すように、本発明に係る複合電気透析装置は、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3と、耐アルカリ性電気透析ユニット4と、耐酸性電気透析ユニット5とを連結して形成されており、1~4mol/Lの濃度の水酸化リチウム溶液を得るのに用いられる。複合電気透析を用いることで、三室バイポーラ膜電気透析ユニットで生成された少量の塩溶液からリチウムを効果的に回収することができ、回収率を向上させることができる。
【0066】
本発明に係る三室バイポーラ膜電気透析ユニット3は、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室31、酸室32及び塩室33と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置されたバイポーラ膜と陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。バイポーラ膜は、陽イオン交換膜と、陰イオン交換膜と、これらの間に介在された触媒層とで構成される。アルカリ室31は、陰イオン交換膜と、バイポーラ膜の陽イオン交換膜との間に形成されている。酸室32は、陽イオン交換膜と、バイポーラ膜の陰イオン交換膜との間に形成されている。塩室33は、陰イオン交換膜と、陽イオン交換膜との間に形成されている。
【0067】
運転中、アルカリ室31に水酸化リチウム溶液又は純水を導入し、酸室32に希酸又は純水を導入し、塩室33に上記工程(A)で得られた精製リチウム塩溶液を導入し、陽極室及び陰極室に電極浸漬液を同時に導入する。電極浸漬液は、電気伝導の役割を担う。直流電界の存在下において、塩室33内のLi+が陽イオン交換膜を介してアルカリ室31に供給され、バイポーラ膜表面の水分子がバイポーラ膜の触媒層の触媒作用下で電気分解されてH+とOH-が生成される。電界の存在下で、OH-がバイポーラ膜の陰イオン交換膜を介してアルカリ室31に供給され、陽イオン交換膜を介してアルカリ室31に供給されるLi+を有するLiOHを生成する。LiOHが循環を続けることで、水酸化リチウム溶液を得る。塩室33内のSO4
2-やCl-等のアニオンは、陰イオン交換膜を介して、酸室32に供給される。バイポーラ膜により生成されたH+は、電界の存在下においてバイポーラ膜の陽イオン交換膜を介して酸室32に供給される。そして、SO4
2-やCl-等のアニオンを有する対応する酸溶液が生成され、アルカリ室31から水酸化リチウム溶液を得、酸室32から希酸溶液を得、塩室33からリチウム塩溶液を得る。
【0068】
耐アルカリ性電気透析ユニット4は、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室41及び濃縮アルカリ室42と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。アルカリ室41は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜との間に形成されている。濃縮アルカリ室42は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間に形成されている。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、耐アルカリ性の同種の膜である。
【0069】
三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室31から得られた水酸化リチウム溶液を、耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室41に導入する。直流電界の存在下において、濃縮アルカリ室42からLiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液を得る。そして、アルカリ室41内の濃度が低下した水酸化リチウム溶液を、三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室に戻し、循環処理を行う。
【0070】
耐酸性電気透析ユニット5は、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられた塩室51及び濃縮塩室52と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。塩室51は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜との間に形成されている。濃縮塩室52は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間に形成されている。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、耐酸性の同種の膜である。
【0071】
三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33から得られたリチウム塩溶液を、塩室51に導入する。そして、直流電界の存在下で、濃縮塩室52から得られた濃縮リチウム塩溶液を、精製リチウム塩溶液と共に三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33に導入し、循環処理を行う。また、塩室51内の濃度が低下したリチウム塩溶液を、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の酸室32に戻し、循環処理を行う。
【0072】
複合電気透析処理後、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3のアルカリ室31及び耐アルカリ性電気透析ユニット4のアルカリ室41内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は0.5~2mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33及び耐酸性電気透析ユニット5の濃縮塩室52内のリチウム塩溶液のLi+濃度は7~17g/L、耐酸性電気透析ユニット5の塩室51から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は0.5~3mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の酸室32から排出された希酸溶液のH+濃度は0.5~2mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は3~5g/Lである。
【0073】
三室バイポーラ膜電気透析ユニット3及び耐アルカリ性電気透析ユニット4の電極浸漬液として、LiOH濃度0.8~1.5mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いる。耐酸性電気透析ユニット5の電極浸漬液として、Li+濃度0.8~1.5mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いる。
【0074】
(b)濃縮・結晶化工程: 複合電気透析で得られたLiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させることで、水酸化リチウム懸濁液を得る。さらに、当該水酸化リチウム懸濁液を冷却・結晶化装置で冷却・結晶化させた後、固液分離・洗浄を行うことで、水酸化リチウム湿潤細粒を得る。そして、当該水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁等の後処理を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得る。
【0075】
具体的には、蒸発室を75~80℃に制御した機械的蒸気再圧縮(MVR)連続蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、LiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮し、結晶成長・保持時間を3~5時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得る。得られた水酸化リチウム懸濁液を冷却・結晶化装置に供給し、再結晶を行う。MVR濃縮・結晶化の過程で、母液中の不純物が徐々に濃縮される。母液中の不純物が、K(10g/L以上)、Na(20g/L以上)又はSO4(40g/L以上)を含有する場合、許容外の高不純度母液は、その後のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成用に戻す必要がある。
【0076】
具体的には、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて水酸化リチウムを分離し、水酸化リチウム懸濁液の温度を60~80℃に維持する。より均一な粒径の水酸化リチウム粒子を得るため、また、低温の遠心分離工程での過小サイズの水酸化リチウム粒子の発生を回避するために、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液をDTB冷又はOSLOに供給し、結晶化温度を35~40℃に制御し、かつ、結晶成長・保持時間を2~4時間として、連続冷却結晶化を行う。これにより、粒径が大きく、均一な粒度分布を有し、かつ、ろ過・洗浄・乾燥が容易な水酸化リチウムを得ることができ、高純度の生成物を得ることができる。
【0077】
本発明により生成されるバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1よりも優れた水酸化リチウムの品質要件を満たし得る。
【0078】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0079】
水酸化リチウム湿潤細粒を溶解させることで80~100℃の飽和水酸化リチウム溶液を生成し、当該飽和水酸化リチウム溶液をろ過することでろ液を得る。その後、当該ろ液を冷却し結晶化させることで、固液分離を行い、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と、結晶化母液とを得る。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について洗浄・乾燥・スクリーニング等の後処理を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウムを得る。水酸化リチウム湿潤細粒は、加熱された純水、上記工程(B)で得られた蒸発凝縮水、又は、上記工程(C)で得られた結晶化母液に、溶解させることができる。
【0080】
具体的には、ステンレス製の微多孔スティックフィルタ、チタン製の微多孔フィルタ及びキャンドルフィルタのいずれか1つを用いて、飽和水酸化リチウム溶液をろ過する。
【0081】
冷却・結晶化には、DTB結晶化装置又はOSLO結晶化装置を用い、結晶化温度を30~40℃、結晶成長・保持時間を3~5時間として、ろ過された飽和水酸化リチウム溶液を連続的に冷却・結晶化するのが好ましい。また、DTB結晶化装置又はOSLO結晶化装置のバックステージに真空フラッシュ室を追加し、真空ポンプにより真空フラッシュ室の真空度を-0.084~-0.06MPaに制御する。80~100℃のろ過された飽和水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室に供給して真空フラッシングを行いかつ65~75℃に予冷した後、DTB結晶化装置又はOSLO結晶化装置に供給して冷却・結晶化を行う。その後、真空フラッシュ室内の蒸気を、真空ポンプの存在下で熱交換器に供給し、冷却水と熱交換させる。蒸気が冷却・凝縮されて水に変換され、冷却水が加熱されて熱交換後のシステム熱を奪うことで、当該フラッシュシステムに供給された供給液が冷却される。バックステージに真空フラッシュ室を追加したことで、冷却水が直接材料と熱交換されず、熱交換器でのスケーリングを避けることができる。また、バックステージの真空フラッシュ室を用いることで、温度を65~75℃に下げ、後端のDTB又はOSLO冷却・結晶化装置の熱負荷を緩和できる。これにより、DTB又はOSLO冷却・結晶化装置の熱交換器でのスケーリングやブロッキングのリスクを低減でき、装置を長時間安定して連続運転させることができる。フラッシュシステムの蒸気凝縮水は、当該システムの状況に応じて、真空フラッシュ室から排出したり、真空フラッシュ室に戻したりすることができる。
【0082】
本発明により生成される高純度グレードの水酸化リチウムの純度は、99.99%を超える。
【0083】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0084】
上記工程(C)で得られた高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を溶解させることで水酸化リチウム溶液を生成し、当該水酸化リチウム溶液をろ過することでろ液を得る。その後、当該ろ液に二酸化炭素を導入して炭酸化反応を生じさせ、炭酸リチウム沈殿物を得る。炭酸化反応の後、固液分離を行い、高純度グレードの炭酸リチウム湿潤体と、炭酸化母液とを得る。そして、高純度グレードの炭酸リチウム湿潤体について洗浄・乾燥・スクリーニング等の後処理を行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得る。
【0085】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、純水、蒸発濃縮水、又は、工程(D)で得られる許容内の炭酸化母液に溶解させる。許容内の炭酸化母液とは、Na(20ppm以下)、K(20ppm以下)、Mg(2ppm以下)又はCa(5ppm以下)を含有する炭酸化母液をいう。
【0086】
具体的には、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を溶解させ、導電率300~380ms/cmの水酸化リチウム溶液を得る。そして、導電率300~380ms/cmの水酸化リチウム溶液をバッグフィルタ、キャンドルフィルタ、ステンレス製微多孔フィルタ等でろ過し、ろ液を得る。当該ろ液を第1炭酸化反応装置に加え、速度を30~80rpmに制御して攪拌する。攪拌しながら、二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入し、炭酸化反応を生じさせる。PLCユニットを用いて、導電率計からフィードバックされた導電率データに応じて二酸化炭素の導入率を判定し、二酸化炭素制御弁アクチュエータに指示を出力する。アクチュエータは、二酸化炭素制御弁の開度を制御することで二酸化炭素の導入流量を制御し、さらに、炭酸化反応システムの導電率の低下率を毎分2~7ms/cmに制御する。当該導電率が100~150ms/cmに低下したとき、制御弁が自動的にオフになり、二酸化炭素の導入が停止される。20~30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行い、高純度グレードの炭酸リチウムを得る。
【0087】
本発明により生成される高純度グレードの炭酸リチウムの純度は、99.99%を超える。
【0088】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0089】
バッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を基液に添加して均一な混合物を得、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と前記工程(D)で得られた許容外の炭酸化母液とを含有する許容外の水酸化リチウム溶液を導入し、混合物に連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させる。当該炭酸リチウムスラリーをエージングし、固液分離を行うことで、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得る。そして、バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体を洗浄・乾燥・粉砕させることで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得る。純水、上記工程(D)で得られた許容外の炭酸化母液、又は、上記工程(E)で得られた炭酸化母液を、基液として用いることができる。
【0090】
具体的には、純水、工程(D)で得られた許容外の炭酸化母液、又は、工程(E)で得られた炭酸化母液を、基液として第2炭酸化反応装置に添加し、60~80℃に加熱する。そして、当該基液に、粒径20~40μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、1~5%の体積濃度で添加する。反応システムの導電率の変化に応じて、PLC制御システムを用いて二酸化炭素制御弁の開度と許容外の水酸化リチウム溶液の充電弁の開度とを制御し、反応システムの導電率を60~90ms/cmに維持し、反応温度を60~80℃に維持する。炭酸リチウムスラリーを連続供給下で連続的に分離し、エージングセルに添加して30~60分間連続的に反応させる。反応したスラリーを固液分離して炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得る。バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について洗浄・乾燥・粉砕・除鉄等の後処理を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得る。固液分離により得られた炭酸化母液は、上記工程(A)においてpH調整に用いることができる。
【0091】
さらに、本発明では、上記工程(A)で得られた精製リチウム塩溶液を炭酸ナトリウム溶液と反応させることで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを生成することができる。
【0092】
具体的な工程は、以下のとおりである。精製リチウム塩溶液を炭酸ナトリウム溶液で連続的に沈殿させ、炭酸リチウムスラリーを連続的に得る。そして、炭酸リチウムスラリーを増粘させた後、固液分離及び洗浄を行い、炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得る。リチウム沈殿母液は、Li+(1.5~2g/L)、Na+(60~100g/L)、SO4
2-(0~220g/L)、Cl-(0~200g/L)、CO3
2-(13~17g/L)を含有しかつpH11~12の第1高不純度リチウム源である。リチウム沈殿母液を戻して第1高不純度固体リチウム塩の処理工程を行い、浄化リチウム塩溶液を得る。得られた炭酸リチウム湿潤細粒について、攪拌洗浄・固液分離・洗浄・乾燥・破砕・減磁等の処理工程を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得ることができる。攪拌洗浄用の水は、炭酸ナトリウムの溶解に再利用することができる。
【0093】
具体的には、精製リチウム塩溶液と、濃度250~300g/Lの炭酸ナトリウム溶液とを、沈殿反応のため、連続結晶化反応装置に同時に添加する。反応システムの温度を85~95℃に制御し、かつ、反応システムに入るときの瞬間Li濃度が3~7g/Lに維持されかつ炭酸ナトリウム濃度が30~65g/Lに維持されるように炭酸ナトリウム溶液及び精製リチウム塩溶液の供給速度を制御する。連続供給において、炭酸リチウムスラリーは、連続的に分離されて増粘機に送られ、固形分濃度20~40%となる。当該炭酸リチウムスラリーを遠心分離することで、炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得る。炭酸リチウム湿潤細粒を洗浄した後、60~80℃の純水又は蒸発凝縮水を1:3~5の固液比で添加して10~30分間攪拌洗浄する。そして固液分離・洗浄・乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得る。得られたリチウム沈殿母液は、リチウムの吸着・抽出のために戻すことができる。
【0094】
本発明で用いられる炭酸ナトリウム溶液は、濃度200~300g/Lの溶液を得るため、炭酸ナトリウムを、純水、攪拌洗浄用水、及び、蒸発凝縮水のいずれかと混合し、その後、溶液1立方メートル当たり1~3kgの水酸化ナトリウムを添加して10~30分間不純物を除去した後、当該溶液をろ過することにより得られたろ液である。水酸化ナトリウム溶液又は水酸化リチウム溶液を、アルカリとして用いることができる。
【0095】
本発明により生成されるバッテリーグレードの炭酸リチウムは、バッテリーグレードの炭酸リチウムの業界標準であるYS/T582-2013の要件を満たすことができる。具体的には、本発明により生成されるバッテリーグレードの炭酸リチウムは、Li2CO3(99.5%以上)、Na(0.025%以下)、K(0.001%以下)、Mg(0.008%以下)、Ca(0.005%以下)、Fe(0.001%以下)、Zn(0.0003%以下)、Cu(0.0003%以下)、Pb(0.0003%以下)、Si(0.003%以下)、Al(0.001%以下)、Mn(0.0003%以下)、Ni(0.001%以下)、SO4
2-(0.008%以下)、Cl-(0.003%以下)、及び、磁性物質(3ppm以下)を含有する。
【0096】
また、本発明は、高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するためのシステムを提供する。
図4は、本発明の一実施形態に係る高不純度リチウム源からバッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウムを生成するシステムの構造を示す図である。
図4に示すように、本発明に係るシステムは、生成順序に応じて配置された、精製リチウム塩溶液生成サブシステムと、バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムと、高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムと、バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムとを備えている。
【0097】
精製リチウム塩溶液生成サブシステムは、フィルタモジュールと、リチウム抽出・吸着モジュールと、リチウムエンリッチ・濃縮モジュールと、化学的不純物除去モジュールと、リチウム沈殿反応モジュールと、酸分解・溶解モジュールと、浄化リチウム塩溶液精製モジュールとを備えている。これらモジュールは、不純物除去処理において、リチウムや不純物の含有量が様々な高不純度リチウム源に応じて、異なる態様で組み合わせられる。浄化リチウム塩溶液精製モジュールを用いることで、次工程の要求を満たす精製リチウム塩溶液が得られる。
【0098】
具体的には、フィルタモジュールは、第1フィルタと、第2フィルタと、第3フィルタとから構成される。第1フィルタは、高不純度リチウム源のろ過に使用されるものであり、サンドフィルタ、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ及びPE微多孔管フィルタのいずれかであってよい。第2フィルタは、リチウム含有脱離液又は溶解液のろ過、又は、不純物除去済溶液の粗ろ過に使用されるものであり、板枠フィルタ、キャンドルフィルタ、セラミックフィルタ、PA微多孔管フィルタ及びPE微多孔管フィルタのいずれかであってよい。第3フィルタは、不純物除去済溶液の精密ろ過に使用されるものであり、ろ過精度0.1~0.2μmの微多孔フィルタ又はセラミックフィルタであってよい。
【0099】
リチウム抽出・吸着モジュールは、吸着器を主に備え、高不純度リチウム源溶液からリチウムを選択的に吸着するために使用される。上記吸着器には、リチウムイオン交換吸着剤が充填されている。
【0100】
リチウムエンリッチ・濃縮モジュールは、リチウム抽出吸着モジュールで得られたリチウム含有脱離液を濃縮・塩リッチするために主に使用され、特に、三段ディスク管逆浸透ユニット1と、塩室及び濃縮塩室を備えた二室電気透析ユニット2とを結合して構成される逆浸透・電気透析結合装置に使用される。
【0101】
化学的不純物除去モジュールは、リチウムリッチ溶液、第2高不純度リチウム源又はリチウム塩溶液から不純物を除去するために使用され、特に、不純物除去反応装置に使用される。
【0102】
リチウム沈殿反応モジュールは、特に連続結晶化反応装置であり、炭酸リチウムスラリーを生成するために使用される。リチウム沈殿反応モジュールは、ドラフト管及び増粘機を備えた反応結晶化装置を含み、ドラフト管の外側に供給口が配置されている。炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液/精製リチウム塩溶液を、供給口から反応結晶化装置に供給し、当該システムの反応結晶化装置内の溶液と混合して濃度の低下した混合物を得た後、当該混合物をドラフト管に供給して反応させる。このようにして、炭酸リチウムの反応過飽和度及び反応結晶化速度を制御する。
【0103】
酸分解・溶解モジュールは、特に攪拌容器であり、高不純度炭酸リチウム又は炭酸リチウム湿潤細粒の酸分解や、高不純度の塩化リチウム、硫酸リチウム、又は、硫酸リチウムと塩化リチウムとの複合塩の溶解に使用される。
【0104】
浄化リチウム塩溶液精製モジュールは、キレート樹脂イオン交換カラムを備え、浄化リチウム塩溶液を精製するために使用される。キレート樹脂イオン交換カラムには、キレート樹脂が充填されている。キレート樹脂イオン交換カラムは、トリプルカラム(A/B/C)モードを採用しており、カラムAとカラムBは直列に動作し、カラムCは非直結再生用であり、カラムAは一次カラム、カラムBは二次カラムであってセキュアカラムとして機能する。カラムAが吸着により飽和すると、カラムBが上昇して一次カラムとして機能し、カラムCがカラムBと接続されて二次カラムとして機能する。キレート樹脂イオン交換カラムは、常にA→B、B→C、C→Aの直列動作モードを用い、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、Zn2+(1ppm以下)、Al3+(1ppm以下)を含有する、不純物が除去されて精製されたリチウム塩溶液を確保する。
【0105】
バッテリーグレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、複合電気透析装置と、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置と、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備えている。
【0106】
具体的には、複合電気透析装置は、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3と、耐アルカリ性電気透析ユニット4と、耐酸性電気透析ユニット5とを連結して形成されており、1~4mol/Lの濃度の水酸化リチウム溶液を生成することができる。
【0107】
複合電気透析装置の三室バイポーラ膜電気透析ユニット3は、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室31、酸室32及び塩室33と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置されたバイポーラ膜と陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。バイポーラ膜は、陽イオン交換膜と、陰イオン交換膜と、これらの間に介在された触媒層とで構成される。アルカリ室は、陰イオン交換膜と、バイポーラ膜の陽イオン交換膜との間に形成されている。酸室は、陽イオン交換膜と、バイポーラ膜の陰イオン交換膜との間に形成されている。塩室は、陰イオン交換膜と、陽イオン交換膜との間に形成されている。三室バイポーラ膜電気透析ユニットの外部には、電極浸漬液タンク、アルカリ液タンク、酸液タンク及び供給液タンクが、パイプラインで接続されている。電極浸漬液タンクは陽極室及び陰極室と連通し、アルカリ液タンクはアルカリ室31と連通し、酸液タンクは酸室32と連通し、供給液タンクは塩室33と連通している。
【0108】
運転中、アルカリ室31に水酸化リチウム溶液又は純水を導入し、酸室32に希酸又は純水を導入し、塩室33に上記工程(C)で得られた精製リチウム塩溶液を導入し、陽極室及び陰極室に電極浸漬液を同時に導入する。電界の存在下において、アルカリ室31から水酸化リチウム溶液を得、酸室32から希酸溶液を得、塩室33からリチウム塩溶液を得る。
【0109】
複合電気透析装置の耐アルカリ性電気透析ユニット4は、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられたアルカリ室41及び濃縮アルカリ室42と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。アルカリ室41は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜との間に形成されている。濃縮アルカリ室42は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間に形成されている。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、耐アルカリ性の同種の膜である。
【0110】
三室バイポーラ膜電気透析ユニット3のアルカリ室31から得られた水酸化リチウム溶液を、耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室41に導入する。電界の存在下において、濃縮アルカリ室42からLiOH濃度1~4mol/Lの水酸化リチウム溶液を得る。そして、アルカリ室41内の濃度が低下した水酸化リチウム溶液を、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3のアルカリ室31に戻し、循環処理を行う。
【0111】
複合電気透析装置の耐酸性電気透析ユニット5は、二室式の電気透析装置であり、陽極室及び陰極室と、陽極室と陰極室との間の積層膜によって隔てられた塩室51及び濃縮塩室52と、を備えている。陽極室は電源の正極に接続され、陰極室は電源の負極に接続されている。積層膜は、交互に配置された陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを備えている。塩室51は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜との間に形成されている。濃縮塩室52は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間に形成されている。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、耐酸性の同種の膜である。
【0112】
三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33から得られたリチウム塩溶液を、塩室51に導入する。そして、直流電界の存在下で、濃縮塩室52から得られた濃縮リチウム塩溶液を、精製リチウム塩溶液と共に三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の塩室33に導入し、循環処理を行う。また、塩室51内の濃度が低下したリチウム塩溶液を、三室バイポーラ膜電気透析ユニット3の酸室32に戻し、循環処理を行う。
【0113】
MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、水酸化リチウム溶液から水酸化リチウム結晶を蒸発・濃縮・分離して水酸化リチウム結晶粒子を含む懸濁液を得るために使用される。DTB結晶化装置又はOSLO結晶化装置は、水酸化リチウム懸濁液を連続的に冷却・結晶化させるために使用され、MVR蒸発・濃縮・結晶化装置と組み合わせて使用される。これにより、粒径が大きく、均一な粒度分布を有し、かつ、ろ過・洗浄・乾燥が容易な水酸化リチウムを得ることができ、高純度の生成物を得ることができる。
【0114】
高純度グレード水酸化リチウム生成サブシステムは、順番に接続された、溶解タンクと、フィルタと、DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置とを備えている。フィルタは、ステンレス製の微多孔スティックフィルタ、チタン製の微多孔フィルタ及びキャンドルフィルタのいずれかであってよい。DTB冷却・結晶化装置又はOSLO冷却・結晶化装置は、飽和水酸化リチウム溶液のろ液を冷却・結晶化するために使用される。DTB結晶化装置又はOSLO結晶化装置のバックステージに真空フラッシュ室を追加し、予冷・結晶化を行うことで、結晶化装置の熱交換器のスケーリングを効果的に低減し、装置を長時間安定して連続運転させることができる。
【0115】
高純度グレード炭酸リチウム生成サブシステムは、溶解タンクと、フィルタと、第1炭酸化反応装置とを備えている。溶解及びろ過により得られた水酸化リチウム溶液を第1炭酸化反応装置で二酸化炭素と反応させることで、高純度グレードの炭酸リチウムを得る。
【0116】
バッテリーグレード炭酸リチウム生成サブシステムは、第2炭酸化反応装置と、エージングセルとを備えている。第2炭酸化反応装置は、バッテリーグレード炭酸リチウムの反応及び生成に使用される。エージングセルは、エージング反応に使用される。
【0117】
本発明に係る第1炭酸化反応装置及び第2炭酸化反応装置は、それぞれ、供給速度を制御するためのPLC制御ユニットを備えて構成されている。PLC制御ユニットは、反応工程において反応システムの導電率を監視する。導電率計は、反応システム内の溶液のイオン濃度を検出する。導電率と、溶液のリチウムイオン濃度とは、線形の相関関係を持っている。PLCは、導電率計のフィードバックに応じて制御弁の開度を制御することで、全原料の供給速度を調整し、反応システムの導電率を維持し、自動制御及び監視を実現し、反応の瞬間濃度を確保する。さらに、PLCは、過飽和度を制御し、炭酸リチウムの反応性結晶化を制御することで、完全な結晶形態を有する炭酸リチウム粒子が得られるようにし、生成物の生理化学的特性をさらに確保する。
【0118】
本発明の参考例に係る方法を組み合わせることで、また、本発明に係る装置の組み合わせにより形成されたシステムにより、高不純度リチウム原料から高純度グレード及びバッテリーグレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物を低コストで生成しかつ市場の需要に対応するという目的を実現することができる。
【0119】
本発明の参考例に係る方法を組み合わせるにあたり、当業者は、高純度グレード及びバッテリーグレードの水酸化リチウムと炭酸リチウムとの複合生成を実現できる限り、上記システムの装置を調整し最適化することができる。
【0120】
上述の実施形態および後述の実施例は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の説明にしたがって当業者によってなされた任意の非本質的な改良及び調整は、本発明の保護範囲に属する。以下の実施例における特定のパラメータは、適用範囲内の一例に過ぎない。即ち、当業者であれば、本発明の説明にしたがって適切な範囲内で選択することができ、以下の実施例における特定の値及び工程に限定されない。
【0121】
以下、本発明について、本発明の目的、技術的解決手段及び効果の明確な理解のため、具体的な実施例と組み合わせてさらに詳細に説明する。
【0122】
<実施例1>
実施例1で用いた高不純度リチウム源は、第1高不純度リチウム源に属する塩湖かん水である。原料かん水は、以下の表1-1に示す仕様を有する。
【0123】
【0124】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0125】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0126】
表1-1に示す原料かん水をセラミックフィルタでろ過し、浮遊物やシルトを除去してろ液を得た。当該ろ液をH2Mn2O4イオン交換吸着剤を含む吸着器に圧送し、リチウムを選択的に吸着させた。イオン交換吸着剤を吸着させてリチウムを飽和させた後、かん水を吸着剤の4倍の体積の水で洗い流し、含まれる液体を排出した。濃度0.3mol/Lかつ吸着剤の2倍の体積の希硫酸を用いて0.5時間周期的に脱離を行うことで、Li+(1.2g/L)、Na+(0.035g/L)、K+(0.0015g/L)、Ca2+(0.01g/L)、Mg2+(0.0011g/L)、B(0.0013g/L)を含有しかつpH2.5の硫酸リチウム脱離液を得た。
【0127】
水酸化リチウムを添加してpHを8に調整した硫酸リチウム脱離液を、PA微多孔管フィルタでろ過し、ろ液を得た。当該ろ液を三段逆浸透・電気透析結合エンリッチ・濃縮装置でエンリッチ・濃縮し、リチウムリッチ溶液と脱塩生産水とを得た。リチウムリッチ溶液は、Li+(14g/L)、Ca2+(0.02g/L)、Mg2+(0.01g/L)、Mn2+(0.001g/L)、Fe2+(0.001g/L)、B(0.011g/L)を含有しかつpH8であった。脱塩生産水を再利用し、吸着器の洗浄を行った。濃度250g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウムリッチ溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、不純物を除去し、60℃の温度で30分間リチウムリッチ溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウムリッチ溶液のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、ろ過精度0.2μmの微多孔フィルタでリチウムリッチ溶液をろ過することで、Li+(13.5g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、SO4
2-(91.58g/L)、Cl-(1.1g/L)、B(0.01g/L)を含有しかつpH11の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0128】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0129】
得られた浄化リチウム塩溶液に硫酸を添加してpHを8に調整し、イミノジ酢酸キレート樹脂を添加して不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(13.5g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe2+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、Zn2+(1ppm以下)、Al3+(1ppm以下)、SO4
2-(91.58g/L)、Cl-(1.10g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液を得た。
【0130】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0131】
(a)複合電気透析工程
【0132】
精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度1.5mol/L
の水酸化リチウム溶液と、H+濃度0.5mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は0.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室及び耐酸性電気透析ユニットの濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は10g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は1.6g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は0.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は4g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度0.8mol/Lの硫酸リチウム溶液を用いた。
【0133】
(b)濃縮・結晶化工程
【0134】
蒸発室を75℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度1.5mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を4時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を35℃、結晶成長・保持時間を3時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表1-2を参照されたい。
【0135】
【0136】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0137】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱して純水に溶解させ、95℃の飽和水酸化リチウム溶液を得た。飽和水酸化リチウム溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.074MPaに制御した真空フラッシュ室に供給して65℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は12%であった。当該懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0138】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0139】
上記工程(C)で得られた高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を純水に溶解させ、導電率380ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をキャンドルフィルタでろ過してろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を60rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分4ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が150ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0140】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0141】
実施例1で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表1-3に示す。
【0142】
【0143】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0144】
純水を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、60℃に加熱した。当該基液に、粒径30μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、3.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率90ms/s、反応温度60℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、60分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例1で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表1-4に示す。
【0145】
【0146】
<実施例2>
実施例2で用いた高不純度リチウム源は、表2-1に示す仕様を有し、第1高不純度リチウム源に属する。
【0147】
【0148】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0149】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0150】
表2-1に示す高不純度リチウム源について、水酸化ナトリウムでpHを8に調整し、PE微多孔管フィルタでろ過してろ液を得た。当該ろ液を、H2TiO3イオン交換吸着剤を含む吸着器に圧送し、リチウムを選択的に吸着させた。イオン交換吸着剤を吸着させてリチウムを飽和させた後、含まれるかん水を吸着剤の3倍の体積の純水で洗浄し、含まれる液体を排出した。そして、高不純度リチウム源を、濃度0.5mol/Lかつ吸着剤と同じ体積の希硫酸で1時間周期的に脱離させることで、Li+(1.5g/L)、Na+(0.05g/L)、K+(0.001g/L)、Ca2+(0.001g/L)、Mg2+(0.001g/L),B(0.0001g/L)を含有しかつpH2の硫酸リチウム脱離液を得た。当該硫酸リチウム脱離液に水酸化リチウムを添加してpH値を8.9に調整したものを、PE微多孔管フィルタでろ過してろ液を得た。当該ろ液を三段逆浸透・電気透析結合エンリッチ・濃縮装置でエンリッチ・濃縮し、リチウムリッチ溶液及び脱塩生産水を得た。当該リチウムリッチ溶液は、Li+(17g/L)、Ca2+(0.012g/L)、Mg2+(0.012g/L)、Mn2+(0.001g/)L、Fe3+(0.001g/L)、B(0.001g/L)を含有しかつpH8.9であった。濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウムリッチ溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、カルシウムを除去し、70℃の温度で30分間リチウムリッチ溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウムリッチ溶液のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、ろ過精度0.2μmの微多孔フィルタを用いてリチウムリッチ溶液をろ過することで、Li+(17g/L)、Ca2+(10ppm)、Mg2+(1ppm)、Mn2+(5ppm)、Fe3+(1ppm)、SO4
2-(0~200g/L)、Cl-(120g/L)、B(0.001g/L)を含有しかつpH11の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0151】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0152】
得られた浄化リチウム塩溶液に希硫酸を添加してpH値を9に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(17g/L)、Ca2+(1ppm)、Mg2+(1ppm)、Fe3+(1ppm)、Mn2+(1ppm)、Zn2+(1ppm)、Al2+(1ppm)、SO4
2-(120g/L)、Cl-(0.3g/L)、B(5ppm)を含有しかつpH9の精製リチウム塩溶液を得た。
【0153】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0154】
(a)複合電気透析工程
【0155】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1.5mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析装置の塩室及び耐酸性電気透析装置の濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は15g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は2g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は5g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.2mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの硫酸リチウム溶液を用いた。
【0156】
(b)濃縮・結晶化工程
【0157】
蒸発室を80℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3.5時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、DTB結晶化装置に供給し、結晶化温度を35℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。得られた水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表2-2を参照されたい。
【0158】
【0159】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0160】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱して蒸発濃縮水に溶解させ、90℃の飽和水酸化リチウム溶液を得た。飽和水酸化リチウム溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.084MPaに制御した真空フラッシュ室に供給し、予冷・結晶化を行った。フラッシュ蒸発により生成された凝縮水は、システムに戻した。水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室で70℃まで予冷した後、DTB結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は17%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0161】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0162】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、上記工程で得られた許容内の炭酸化母液に溶解させることで、導電率300ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をバッグフィルタでろ過することでろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を40rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分7ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が150ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。20分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0163】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0164】
実施例2で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表1-3に示す。
【0165】
【0166】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0167】
直近の工程で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、80℃に加熱した。当該基液に、粒径40μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、1.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率70ms/s、反応温度80℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、30分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例2で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表2-4に示す。
【0168】
【0169】
<実施例3>
実施例3で用いた高不純度リチウム源は、表3-1に示す仕様を有し、第1高不純度リチウム源に属する。
【0170】
【0171】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0172】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0173】
表3-1に示す高不純度リチウム源について、塩酸の添加によりpH値を6.5に調整し、PE微多孔管フィルタでろ過してろ液を得た。当該ろ液を、H2Mn2O4イオン交換吸着剤を含む吸着器に圧送し、リチウムを選択的に吸着させた。イオン交換吸着剤を吸着させてリチウムを飽和させた後、含まれるかん水を吸着剤の4倍の体積の水で洗浄し、含まれる液体を排出した。そして、高不純度リチウム源を、濃度0.4mol/Lかつ吸着剤の1.5倍の体積の希塩酸で0.5時間周期的に脱離させることで、Li+(2.5g/L)、Na+(0.05g/L)、K+(0.005g/L)、Ca2+(0.008g/L)、Mg2+(0.005g/L),B(0.005g/L)を含有しかつpH2の塩化リチウム脱離液を得た。当該塩化リチウム脱離液に水酸化ナトリウムを添加してpH値を9に調整したものを、セラミックフィルタでろ過してろ液を得た。当該ろ液を三段逆浸透・電気透析結合エンリッチ・濃縮装置でエンリッチ・濃縮し、リチウムリッチ溶液及び脱塩生産水を得た。当該リチウムリッチ溶液は、Li+(20g/L)、Ca2+(0.016g/L)、Mg2+(0.01g/L)、Mn2+(0.002g/)L、Fe3+(0.001g/L)、B(0.001g/L)を含有しかつpH9であった。脱塩生産水を再利用し、吸着器の洗浄を行った。濃度280g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウムリッチ溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.35g/Lに制御して、カルシウムを除去し、50℃の温度で30分間リチウムリッチ溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウムリッチ溶液のpHを10.5に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、ろ過精度0.1μmの微多孔フィルタでリチウムリッチ溶液をろ過することで、Li+(20g/L)、Ca2+(10ppm)、Mg2+(1ppm)、Mn2+(5ppm)、Fe3+(1ppm)、SO4
2-(0.9g/L)、Cl-(103g/L)、B(0.001g/L)を含有しかつpH10.5の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0174】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0175】
得られた浄化リチウム塩溶液に塩酸を添加してpH値を8に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(20g/L)、Ca2+(1ppm)、Mg(1ppm)、Fe3+(1ppm)、Mn2+(1ppm)、Zn2+(1ppm)、Al2+(1ppm)、SO4
2-(0.85g/L)、Cl-(103g/L)、B(5ppm)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液を得た。
【0176】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0177】
(a)複合電気透析工程
【0178】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度3.5mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度2mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は2mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室及び耐酸性電気透析ユニットの濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は17g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は3g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は2mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は5g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0179】
(b)濃縮・結晶化工程
【0180】
蒸発室を80℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度3.5mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表3-2を参照されたい。
【0181】
【0182】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0183】
工程(B)で得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱し、上記工程で得られた結晶化母液に溶解させ、95℃の飽和溶液を生成した。当該飽和溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.08MPaに制御した真空フラッシュ室に供給し、結晶化を行った。フラッシュ蒸発により生成された凝縮水は、システムに戻した。水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室で70℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を33℃、結晶成長・保持時間を5時間として冷却・結晶化を行い、水酸化リチウム懸濁液を得た。当該懸濁液の固液比は12%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0184】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0185】
得られた高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を純水に溶解させ、導電率330ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をバッグフィルタでろ過してろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を60rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分3ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が120ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。20分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0186】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0187】
実施例3で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表3-3に示す。
【0188】
【0189】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0190】
上記工程で固液分離により得られた炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、60℃に加熱した。当該基液に、粒径30μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、3.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率90ms/s、反応温度60℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、60分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例3で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表3-4に示す。
【0191】
【0192】
<実施例4>
実施例4で用いた高不純度リチウム源は、表4-1に示す仕様を有し、第1高不純度リチウム源に属する。
【0193】
【0194】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0195】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0196】
表4-1に示す高不純度リチウム源をセラミックフィルタでろ過し、浮遊物やシルトを除去してろ液を得た。当該ろ液をH2TiO3イオン交換吸着剤を含む吸着器に圧送し、リチウムを選択的に吸着させた。イオン交換吸着剤を吸着させてリチウムを飽和させた後、含まれる高不純度リチウム源を吸着剤の5倍の体積の水を導入することにより置換し、含まれる液体を排出した。当該高不純度リチウム源について、濃度0.5mol/Lかつ吸着剤の2倍の体積の硫酸と塩酸との混合物を用いて0.8時間周期的に脱離を行うことで、Li+(1.0g/L)、Na+(0.005g/L)、K+(0.001g/L)、Ca2+(0.001g/L)、Mg2+(0.003g/L)、B(0.005g/L)を含有しかつpH2.3のリチウム含有脱離液を得た。
【0197】
水酸化リチウム溶液を添加してpH値を9に調整したリチウム含有脱離液を、PE微多孔管フィルタでろ過し、ろ液を得た。当該ろ液を三段逆浸透・電気透析結合エンリッチ・濃縮装置でエンリッチ・濃縮し、リチウムリッチ溶液と脱塩生産水とを得た。リチウムリッチ溶液は、Li+(10g/L)、Ca2+(0.01g/L)、Mg2+(0.01g/L)、Mn2+(0.001g/L)、Fe3+(0.001g/L)、B(0.05g/L)を含有しかつpH9であった。脱塩生産水を再利用し、吸着器の洗浄を行った。濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液をリチウムリッチ溶液に添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、不純物を除去し、60℃の温度で30分間リチウムリッチ溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウムリッチ溶液のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、ろ過精度0.1μmの微多孔フィルタでリチウムリッチ溶液をろ過することで、Li+(10g/L)、Ca2+(10ppm)、Mg2+(1ppm)、Mn2+(5ppm)、Fe3+(1ppm)、SO4
2-(30g/L)、Cl-(29g/L)、B(0.005g/L)を含有しかつpH11の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0198】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0199】
得られた浄化リチウム塩溶液に塩酸を添加してpHを8.5に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(10g/L)、Ca2+(1ppm)、Mg2+(1ppm)、Fe3+(1ppm)、Mn2+(1ppm)、Zn2+(1ppm)、Al3+(1ppm)、SO4
2-(30g/L)、Cl-(29.5g/L)、B(5ppm)を含有しかつpH8.5の精製リチウム塩溶液を得た。
【0200】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0201】
(a)複合電気透析工程
【0202】
精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度1.8mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室及び耐酸性電気透析ユニットの濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は10g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は1.5g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は3g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0203】
(b)濃縮・結晶化工程
【0204】
蒸発室を80℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度1.8mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3.5時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表4-2を参照されたい。
【0205】
【0206】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0207】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱し、上記工程で得られた結晶化母液に溶解させ、95℃の飽和溶液を生成した。当該飽和溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-74MPaに制御した真空フラッシュ室に供給し、予冷を行った。フラッシュ凝縮水は、溶解のためにシステムに戻した。水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室で75℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を0℃、結晶成長・保持時間を3時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は10%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0208】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0209】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、上記工程で分離により得られた許容内の炭酸化母液に溶解させることで、導電率350ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をステンレス製微多孔フィルタでろ過してろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を60rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分7ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が100ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。20分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0210】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0211】
実施例4で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表4-3に示す。
【0212】
【0213】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0214】
上記工程(D)で生成された許容外の炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、60℃に加熱した。当該基液に、粒径20μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、1%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率60ms/s、反応温度60℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、30分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例4で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表4-4に示す。
【0215】
【0216】
<実施例5>
実施例5で用いた高不純度リチウム源は、表5-1に示す仕様を有し、第2高不純度リチウム源に属する。
【0217】
【0218】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0219】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0220】
表5-1に示す高不純度リチウム源を反応装置に圧送して85℃に加熱し、これに濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、カルシウムを除去し、上記温度で10分間高不純度リチウム源と反応させ、さらに、水酸化ナトリウムで高不純度リチウム源のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、高不純度リチウム源を、板枠フィルタに圧送して粗ろ過し、さらに微多孔フィルタに圧送して精密ろ過することで、Li+(16g/L)、Na+(78g/L)、K+(13.8g/L)、Mg2+(1ppm以下)、Ca2+(10ppm以下)、B(1.3g/L)を含有しかつpH11のリチウム含有不純物除去済溶液を得た。
【0221】
リチウム含有不純物除去済溶液と、濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液とを、沈殿反応のため、連続結晶化反応装置に同時に添加した。反応システムの温度を95℃に制御し、かつ、反応システムに入るときの瞬間Li濃度が5g/Lに維持されかつ炭酸ナトリウム濃度が41g/Lに維持されるように炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液の供給速度を制御した。連続供給において、炭酸リチウムスラリーは、連続して分離されて増粘機に送られ、固形分濃度20%となった。当該炭酸リチウムスラリーについて遠心分離機での固液分離及び洗浄を行うことで、Li+(1.5g/L)、Na+(65g/L)、SO4
2-(3.6g/L)、Cl-(90g/L)、CO3
2-(13g/L)を含有しかつpH12の炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得た。
【0222】
H+濃度3mol/Lの塩酸を添加して炭酸リチウム湿潤細粒と反応させ、反応終点のpHを4に制御して、液体を得た。当該液体をろ過することで、Li+(20g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe4+(1ppm以下)、SO4
2-(3.6g/L)、Cl-(95g/L)、B(0.002g/L)を含有しかつpH4の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0223】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0224】
得られた浄化リチウム塩溶液に水酸化リチウムを添加してpH値を8に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(16g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(3.5g/L)、Cl-(92g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液を得た。
【0225】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0226】
(a)複合電気透析工程
【0227】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1.8mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1.8mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室及び耐酸性電気透析ユニットの濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は17g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は3g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1.8mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は5g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0228】
(b)濃縮・結晶化工程
【0229】
蒸発室を80℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を4時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を35℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表5-2を参照されたい。
【0230】
【0231】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0232】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱して蒸発凝縮水に溶解させ、95℃の飽和溶液を得た。飽和溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.06MPaに制御した真空フラッシュ室に供給して予冷を行った。フラッシュ凝縮水は、フラッシュシステムに戻した。水酸化リチウム溶液をフラッシュ室内で75℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は15%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0233】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0234】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、上記工程で得られた許容内の炭酸化母液に溶解させ、導電率300ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をバッグフィルタでろ過してろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を50rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分5ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が100ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0235】
実施例5で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表5-3に示す。
【0236】
【0237】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0238】
上記工程で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、80℃に加熱した。当該基液に、粒径20μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、3.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率90ms/s、反応温度80℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、60分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例5で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表5-4に示す。
【0239】
【0240】
<実施例6>
実施例6で用いた高不純度リチウム源は、表6-1に示す仕様を有し、第2高不純度リチウム源に属する。
【0241】
【0242】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0243】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0244】
表6-1に示す高不純度リチウム源を反応装置に圧送して85℃に加熱し、これに濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.35g/Lに制御して、カルシウムを除去し、上記温度で30分間高不純度リチウム源と反応させ、さらに、濃度3mol/Lの水酸化リチウム溶液で高不純度リチウム源のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、高不純度リチウム源を、板枠フィルタに圧送して粗ろ過し、さらにセラミック微多孔フィルタに圧送して精密ろ過することで、Li+(38g/L)、Na+(27g/L)、K+(4.9g/L)、Mg2+(1ppm以下)、Ca2+(10ppm以下)、B(4.1g/L)を含有しかつpH11のリチウム含有不純物除去済溶液を得た。
【0245】
リチウム含有不純物除去済溶液と、濃度200g/Lの炭酸ナトリウム溶液とを、沈殿反応のため、連続結晶化反応装置に同時に添加した。反応システムの温度を95℃に制御し、かつ、反応システムに入るときの瞬間Li濃度が3g/Lに維持されかつ炭酸ナトリウム濃度が30g/Lに維持されるように炭酸ナトリウム溶液及びリチウム含有不純物除去済溶液の供給速度を制御した。連続供給において、炭酸リチウムスラリーは、連続して分離されて増粘機に送られ、固形分濃度30%となった。当該炭酸リチウムスラリーについて遠心分離機での固液分離及び洗浄を行うことで、Li+(1.5g/L)、Na+(50g/L)、SO4
2-(1.2g/L)、Cl-(69g/L)、CO3
2-(15g/L)を含有しかつpH12の炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得た。
【0246】
H+濃度2.3mol/Lの硫酸を添加して炭酸リチウム湿潤細粒と反応させ、反応終点のpHを5に制御して、液体を得た。当該液体をろ過することで、Li+(14g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、SO4
2-(95g/L)、Cl-(0.3g/L)、B(0.002g/L)を含有しかつpH5の浄化硫酸リチウム溶液を得た。
【0247】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0248】
得られた浄化リチウム塩溶液に水酸化リチウムを添加してpH値を8に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(14g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(92g/L)、Cl-(0.2g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH5の精硫酸リチウム溶液を得た。
【0249】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0250】
(a)複合電気透析工程
【0251】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度3.3mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1.8mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1.8mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室及び耐酸性電気透析ユニットの濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は12g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は3g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1.8mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は4g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.2mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.2mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0252】
(b)濃縮・結晶化工程
【0253】
蒸発室を75℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度3.3mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表6-2を参照されたい。
【0254】
【0255】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0256】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱し、上記工程で得られた結晶化母液に溶解させ、95℃の飽和溶液を得た。飽和溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.068MPaに制御した真空フラッシュ室に供給して予冷を行った。フラッシュ蒸発により生成された凝縮水は、システムに戻した。水酸化リチウムをフラッシュ室内で80℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は20%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0257】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0258】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、上記工程で得られた許容内の炭酸化母液に溶解させ、導電率380ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をバッグフィルタでろ過してろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を50rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分4ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が100ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。20~30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0259】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0260】
実施例6で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表6-3に示す。
【0261】
【0262】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0263】
上記工程で固液分離により得られた炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、60℃に加熱した。当該基液に、粒径30μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、3%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率60ms/s、反応温度60℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、30分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例6で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表6-4に示す。
【0264】
【0265】
<実施例7>
実施例7で用いた高不純度リチウム源は、表7-1に示す仕様を有し、高不純度固体リチウム源に属する。
【0266】
【0267】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0268】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0269】
純水を添加して表7-1に示す高不純度リチウム源を溶解させ、Li+(24g/L)を含有するリチウム塩溶液を生成した。リチウム塩溶液を不純物除去反応装置に送り、攪拌により90℃まで加熱した後、これに濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、不純物を除去し、上記温度で30分間リチウム塩溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウム塩溶液のpHを11に調整した後、上記温度で30分間反応させた。その後、リチウム塩溶液を、板枠フィルタに圧送して粗ろ過してろ液を得、さらに、ろ過精度0.1μmの微多孔フィルタで当該ろ液を精密ろ過することで、Li+(23g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe(1ppm以下)、SO4
2-(0.8g/L)、Cl-(120g/L)、B(0.001g/L)を含有しかつpH11の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0270】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0271】
得られた浄化リチウム塩溶液に塩酸を添加してpH値を8に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(23g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(0.7g/L)、Cl-(120g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液を得た。
【0272】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0273】
(a)複合電気透析工程
【0274】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1.5mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析装置の塩室及び耐酸性電気透析装置の濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は17g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は2.5g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1.5mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は4.5g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0275】
(b)濃縮・結晶化工程
【0276】
蒸発室を80℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度3.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を40℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。得られた水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表7-2を参照されたい。
【0277】
【0278】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0279】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱し、上記工程で得られた結晶化母液に溶解させ、95℃の飽和水酸化リチウム溶液を得た。飽和水酸化リチウム溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.064MPaに制御した真空フラッシュ室に供給し、予冷・結晶化を行った。フラッシュ凝縮水は、フラッシュシステムに戻した。水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室で75℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を34℃、結晶成長・保持時間を3.5時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は10%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0280】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0281】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を、上記工程で得られた許容内の炭酸化母液に溶解させることで、導電率330ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をステンレス製微多孔フィルタでろ過することでろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を80rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分7ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が120ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0282】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0283】
実施例7で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表7-3に示す。
【0284】
【0285】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0286】
上記工程(D)で得られた許容外の炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、70℃に加熱した。当該基液に、粒径40μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、2.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素、及び、上記工程(B)で得られた許容外の高不純度母液と上記工程(D)で固液分離により得られた許容外の炭酸化母液とから構成される許容外の水酸化リチウム溶液の、供給速度を制御した。反応システムを、導電率70ms/s、反応温度70℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、30分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例7で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表7-4に示す。
【0287】
【0288】
<実施例8>
実施例8で用いた高不純度リチウム源は、表8-1に示す仕様を有し、高不純度固体リチウム源に属する。
【0289】
【0290】
(A)精製リチウム塩溶液の生成工程
【0291】
(a)高不純度リチウム源の処理工程
【0292】
H+濃度3mol/Lの硫酸を添加して表8-1に示す高不純度炭酸リチウムと反応させ、反応終点のpHを4~6に制御して、液体を得た。当該液体をろ過することで、リチウム塩溶液を得た。リチウム塩溶液を不純物除去反応装置に送り、攪拌により80℃まで加熱した後、これに濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液を添加し、炭酸ナトリウム過剰量を0.3g/Lに制御して、不純物を除去し、上記温度で30分間リチウム塩溶液と反応させ、さらに、水酸化リチウムでリチウム塩溶液のpHを11に調整した後、上記温度で60分間反応させた。その後、リチウム塩溶液を、板枠フィルタに圧送して粗ろ過してろ液を得、さらに、ろ過精度0.1μmの微多孔フィルタで当該ろ液を精密ろ過することで、Li+(22g/L)、Ca2+(10ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Mn2+(5ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、SO4
2-(153g/L)、Cl-(0.3g/L)、B(0.0001g/L)を含有しかつpH11の浄化リチウム塩溶液を得た。
【0293】
(b)浄化リチウム塩溶液の精製工程
【0294】
得られた浄化リチウム塩溶液に硫酸を添加してpH値を8.5に調整したものについて、イミノジ酢酸キレート樹脂による不純物徹底除去処理を行うことで、Li+(21.2g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(150g/L)、Cl-(0.3g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8.5の精製リチウム塩溶液を得た。
【0295】
(B)バッテリーグレードの水酸化リチウムの生成工程
【0296】
(a)複合電気透析工程
【0297】
得られた精製リチウム塩溶液を複合電気透析により処理することで、LiOH濃度2mol/Lの水酸化リチウム溶液と、H+濃度1mol/Lの希酸溶液とを得た。三室バイポーラ膜電気透析ユニットのアルカリ室及び耐アルカリ性電気透析ユニットのアルカリ室内の水酸化リチウム溶液のLiOH濃度は1mol/L、三室バイポーラ膜電気透析装置の塩室及び耐酸性電気透析装置の濃縮塩室内のリチウム塩溶液のLi+濃度は14g/L、耐酸性電気透析ユニットの塩室から排出されて濃度が低下したリチウム塩溶液のLi+濃度は2g/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの酸室から排出された希酸溶液のH+濃度は1mol/L、三室バイポーラ膜電気透析ユニットの塩室から排出されたリチウム塩溶液のLi+濃度は3g/Lであった。三室バイポーラ膜電気透析ユニット及び耐アルカリ性電気透析ユニットの電極浸漬液として、濃度1.0mol/Lの水酸化リチウム溶液を用いた。耐酸性電気透析ユニットの電極浸漬液として、Li+濃度1.0mol/Lの対応するリチウム塩溶液を用いた。
【0298】
(b)濃縮・結晶化工程
【0299】
蒸発室を75℃に制御したMVR蒸発・濃縮・結晶化装置を用いて、濃度2mol/Lの水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮・結晶化させ、結晶成長・保持時間を3時間として結晶を分離させることで、水酸化リチウム懸濁液を得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置から排出された水酸化リチウム懸濁液を、OSLO結晶化装置に供給し、結晶化温度を35℃、結晶成長・保持時間を4時間に制御して、連続的に冷却・結晶化を行い、固液分離・洗浄をして水酸化リチウム湿潤細粒を得た。得られた水酸化リチウム湿潤細粒について乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの水酸化リチウムを得た。MVR蒸発・濃縮・結晶化装置は、後続のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成のため、許容外の高不純度母液を排出した。得られたバッテリーグレードの水酸化リチウムは、GB/T8766-2013におけるLiOH・H2O-D1の要件を満たすものであった。当該バッテリーグレードの水酸化リチウムの質量については、表8-2を参照されたい。
【0300】
【0301】
(C)高純度グレードの水酸化リチウムの生成工程
【0302】
得られた水酸化リチウム湿潤細粒を加熱し、上記工程で得られた結晶化母液に溶解させ、93℃の飽和水酸化リチウム溶液を得た。飽和水酸化リチウム溶液をろ過してろ液を得、当該ろ液を真空度-0.074MPaに制御した真空フラッシュ室に供給し、予冷・結晶化を行った。フラッシュ凝縮水は、フラッシュシステムに戻した。水酸化リチウム溶液を、真空フラッシュ室で70℃まで予冷した後、OSLO結晶化装置に供給し、冷却・結晶化温度を38℃、結晶成長・保持時間を4時間として冷却・結晶化を行い、懸濁液を得た。懸濁液の固液比は12%であった。得られた水酸化リチウム懸濁液について固液分離及び純水洗浄を行うことで、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体と結晶化母液とを得た。そして、高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体について乾燥・スクリーニングを行うことで、純度99.99%を超える高純度グレードの水酸化リチウムを得た。
【0303】
(D)高純度グレードの炭酸リチウムの生成工程
【0304】
高純度グレードの水酸化リチウム湿潤体を蒸発凝縮水に溶解させることで、導電率380ms/cmの水酸化リチウム溶液を生成した。そして、当該水酸化リチウム溶液をキャンドルフィルタでろ過することでろ液を得、当該ろ液を第1炭酸化反応装置に供給し、速度を80rpmに制御して攪拌した。攪拌しながら二酸化炭素を第1炭酸化反応装置に導入して炭酸化反応を生じさせ、反応システムの導電率が毎分3ms/cmの速度で低下するように二酸化炭素の流量を制御した。導電率が150ms/cmまで低下したときに、対応する制御弁を自動的にオフにし、二酸化炭素の導入を停止させた。30分間の連続攪拌により反応させて液体を得た後、当該液体について固液分離、純水洗浄、乾燥、スクリーニング、パッケージングを行うことで、高純度グレードの炭酸リチウムを得た。
【0305】
分離により得られた許容内の炭酸化母液は、水酸化リチウム湿潤細粒の溶解のために戻し、許容外の炭酸化母液は、次のバッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程に進めた。
【0306】
実施例8で得られた高純度グレードの炭酸リチウムの質量を表8-3に示す。
【0307】
【0308】
(E)バッテリーグレードの炭酸リチウムの生成工程
【0309】
上記工程で固液分離により得られた炭酸化母液を基液として第2炭酸化反応装置に供給し、65℃に加熱した。当該基液に、粒径20μmのバッテリーグレードの炭酸リチウムの種晶を、2.5%の体積濃度で添加した。PLCシステムを用いて、二酸化炭素及び上記許容外の水酸化リチウム溶液の供給速度を制御した。反応システムを、導電率80ms/s、反応温度65℃に維持した。二酸化炭素と水酸化リチウム溶液とを連続的に導入し、炭酸リチウムスラリーを連続的に分離させた。当該炭酸リチウムスラリーをエージングセルに添加し、30分間連続反応させた。反応したスラリーを固液分離し、炭酸化母液とバッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体とを得た。当該バッテリーグレードの炭酸リチウム湿潤体について、洗浄、乾燥、粉砕及び減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。実施例8で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表8-4に示す。
【0310】
【0311】
<実施例9>
実施例1と同様の工程を行うことで、Li+(20g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(0.85g/L)、Cl-(103g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液を得た。当該精製リチウム塩溶液から直接的に、バッテリーグレードの炭酸リチウムを生成した。
【0312】
Li+(20g/L)、Ca2+(1ppm以下)、Mg2+(1ppm以下)、Fe3+(1ppm以下)、Mn2+(1ppm以下)、SO4
2-(0.85g/L)、Cl-(103g/L)、B(5ppm以下)を含有しかつpH8の精製リチウム塩溶液と、濃度300g/Lの炭酸ナトリウム溶液とを、沈殿反応のため、連続結晶化反応装置に同時に添加した。反応システムの温度を95℃に制御した。反応システムに入るときの瞬間Li濃度が7g/Lに維持されかつ炭酸ナトリウム濃度が65g/Lに維持されるように、炭酸ナトリウム溶液及び精製リチウム塩溶液の供給速度を制御した。連続供給において、炭酸リチウムスラリーは、連続して分離されて増粘機に送られ、固形分濃度20%となった。当該炭酸リチウムスラリーについて遠心分離機での分離及び洗浄を行うことで、炭酸リチウム湿潤細粒及びリチウム沈殿母液を得た。得られた炭酸リチウム湿潤細粒を、60℃の純水に1:3の固液比で添加して調整・攪拌洗浄を行った後、固液分離・乾燥・粉砕・減磁を行うことで、バッテリーグレードの炭酸リチウムを得た。攪拌洗浄用の水は、炭酸ナトリウムの溶解に再利用した。実施例9で得られたバッテリーグレードの炭酸リチウムは、GB/T8766-2013の要件を満たしており、その質量を表9-1に示す。
【0313】
【0314】
本発明は、リチウム含有量や不純物の種類及び含有量が様々な高不純度リチウム源を処理するため、高不純度リチウム源の品質に応じて理化学的処理方法が異なる別々の組み合わせを提供することで、バッテリーグレード及び高純度グレードの水酸化リチウム及び炭酸リチウム生成物の品質要件を満たし、かつ、リチウム原料のより高い適応性を提供するものである。
【0315】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明は、本明細書に開示された任意の新規な特徴又は任意の新規な組み合わせや、本明細書に開示された任意の新規な方法又は手順における工程又は任意の新規な組み合わせにまで拡張される。
【符号の説明】
【0316】
1 三段ディスク管逆浸透ユニット
2 二室電気透析ユニット
3 三室バイポーラ膜電気透析ユニット
31 アルカリ室
32 酸室
33 塩室
4 耐アルカリ性電気透析ユニット
41 アルカリ室
42 濃縮アルカリ室
5 耐酸性電気透析ユニット
51 塩室
52 濃縮塩室