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  • 特許-配膳車におけるカート搭載構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】配膳車におけるカート搭載構造
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A47B31/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018101449
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019205531
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195717(JP,A)
【文献】実開昭51-148189(JP,U)
【文献】西独国特許出願公開第02712928(DE,A1)
【文献】特開2002-321625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00-31/06
B62B 5/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトレイを多段に収容するトレイ収容室を有し、下部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部に前記カートを収容するカート収容室が設けられた配膳車本体を有する配膳車において、配膳車本体の外底面にその前後方向に伸びる左右一対の係合用凹所が設けられ、カートのトレイ収容室の下方にはカートを配膳車本体のトレイ収容室に収容する際に前記係合用凹所に差し込まれる左右一対の係合用アームが突設され、且つ係合用アームと係合用凹所との係合の際にカートを上昇させる上昇手段を有する、配膳車におけるカート搭載構造。
【請求項2】
上昇手段が、配膳車本体の係合用凹所の開口部分に形成された上り傾斜部と、該上り傾斜部の頂部から係合用凹所の最奥部まで伸びる水平部であり、係合用凹所に対してカートの係合用アームを差し込むことで、カートが前記係合用凹所の傾斜部に沿って上昇すると共に、該係合用凹所に係合用アームが係合して配膳車本体とカートが一体化するようになされている、請求項1記載の配膳車におけるカート搭載構造。
【請求項3】
配膳車本体における上昇手段の上り傾斜部またはカートの係合用アームの先端部のいずれかに前記係合用アームの差込を誘引する導入用回転体が設けられている、請求項2記載の配膳車におけるカート搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等で食事の提供を行う際に使用する配膳車におけるカート搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等においては、食事を提供する際には、主食、主菜、副菜、汁物等の食品が盛られた食器を載置してなるトレイを多段に収容する配膳車が使用される。
【0003】
より詳細には、病院等における調理加熱室で所定のメニューに基づいて前記食品が盛られた食器をトレイ上に配置し、該トレイを配膳車内に順次入れて、当該配膳車ごと病院等内の廊下を走行させて各部屋をまわり、前記配膳車内から前記食品が載ったトレイを取り出して配膳を行うのであるが、配膳数が多い場合には、前記トレイを多数収容し得る大型の配膳車が必要となる。
【0004】
しかしながら、大型の配膳車は病院等内での移動操作が難しく、全ての部屋をまわるのに時間と労力を要するという問題があった。
【0005】
そのため、このような問題に対処するために、配膳車を本体とカートとに分け、前記食品の冷蔵や加熱を行うための加熱・冷却設備を備えた重量のある配膳車本体については、移動させずに据え置きとし、配膳の際には前記トレイが多段に収容されたカートだけを移動するようにした配膳車も知られている。
【0006】
そして、前記カートと配膳車本体とからなる配膳車としては、第一車輪部を有し、内部にトレイを保持可能なインサートカートと、第二車輪部を有し、内部に前記インサートカートを収納する収納空間を備えた搬送車本体とを備える食品搬送車であって、前記搬送車本体には、前記インサートカートが前記収納空間内に収納されると、インサートカートを支持して前記第一車輪部を前記第二車輪部の走行面から離間させる載置部が設けられた食品搬送車が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-72738号公報
【文献】特開2012-65915号公報
【文献】特開2014-54487号公報
【文献】特開2016-195717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した配膳車本体とカートとに分割された配膳車の場合、配膳の際の移動はカートのみで済むため、配膳車全体を移動させる場合に比べて、操作性が向上する。しかしながら、前記カートを配膳車本体に接続したり、収納したりする際の構造が複雑であったり、配膳車本体に対してカートを正確に操作して一体化する必要があるため、毎日の朝食、昼食および夕食の際の繰り返し使用によって、故障や不具合が発生し易いという問題があった。
【0009】
また、カートを配膳車本体の前面に当接させてカート内の食品を冷却・加熱する配膳車の場合、カート自体が外気と直接的に接触するため、カート自体の十分な断熱性を確保するために、カートの構成壁を分厚くする必要があり、そのためカート自体の重量増加を招き、これに伴ってカートの操作性が低下するという欠点があった。
【0010】
この他、搬送車本体内にインサートカートを収納可能とし、その収納空間内にインサートカートの載置部を設けて、インサートカートの第一車輪部を搬送車本体の第二車輪部の走行面から離間させるようにした食品搬送車の場合、該食品搬送車の走行性が向上するものの、インサートカートを搬送車本体の載置部に乗り上げさせるのに、かなりの労力が必要であるため、配膳作業を行う主に女性の職員にとっては、負担が大きいという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、配膳車本体とカートとで構成される配膳車において、カートの操作性および断熱性を確保し、しかも機動性に優れた配膳を可能とする配膳車におけるカート搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明は、内部にトレイを多段に収容するトレイ収容室を有し、下部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部に前記カートを収容するカート収容室が設けられた配膳車本体を有する配膳車において、配膳車本体の外底面にその前後方向に伸びる左右一対の係合用凹所が設けられ、カートのトレイ収容室の下方にはカートを配膳車本体のトレイ収容室に収容する際に前記係合用凹所に差し込まれる係合用アームが突設され、且つ係合用アームと係合用凹所との係合の際にカートを上昇させる上昇手段を有する、配膳車におけるカート搭載構造である。
【0013】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の配膳車におけるカート搭載構造について、上昇手段が、配膳車本体の係合用凹所の開口部分に形成された上り傾斜部と、該上り傾斜部の頂部から係合用凹所の最奥部まで伸びる水平部であり、係合用凹所に対してカートの係合用アームを差し込むことで、カートが前記係合用凹部の傾斜部に沿って上昇すると共に、該係合用凹部に係合用アームが進入係合して配膳車本体とカートが一体化するようになされていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3記載の本発明は、前記請求項2記載の配膳車におけるカート搭載構造について、配膳車本体における上昇手段の上り傾斜部またはカートの係合用アームの先端部のいずれかに前記係合用アームの差込を誘引する導入用回転体が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る配膳車におけるカート搭載構造によれば、配膳車本体の外底部という床面に近い位置に設けられた係合用凹所に、カートのトレイ収容室の下方に設けられた係合用アームを差込だけで、カートが配膳車本体に一体に搭載され、しかも前記床面に近い位置での前記係合用アームの差込であるため、女性の職員であっても、カートの搭載作業が容易に行えるという実用的利点を有する。
【0016】
また、本発明によれば、配膳車本体の外底面に前述したカート搭載構造が組み込まれているため、配膳車本体のカート収容室自体は、何ら設計変更する必要がないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る配膳車の下部の拡大斜視図である。
図2】同実施形態に係る配膳車の本体にカートを収容する前の状態を示す側面図である。
図3】同実施形態に係る配膳車の本体にカートを収容する途中の状態を示す側面図である。
図4】同実施形態に係る配膳車の本体にカートを完全に収容した状態の側面図である。
図5】実施形態に係る配膳車本体の下部の拡大斜視図である。
図6】同実施形態の配膳車本体の下部におけるカート上昇手段の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1図4に示すように、本発明のカート搭載構造を組込んだ配膳車1は、内部に後述するカート3を収容するカート収容室4が形成され、下部には車輪8が取り付けられた配膳車本体2と、下部にキャスター12を有し、内部にはトレイ(図示せず)を多段に支持するための仕切り壁6が立設されたトレイ収容室7を有する前記カート3とで構成されている。
【0020】
なお、図中11は、前記仕切り壁6を構成する仕切り壁部材であって、前後方向に一対ずつ多段に列設されたものである。
【0021】
そして、図1図5および図6に示すように、前記配膳車本体2の外底面2aには、その両側寄り部分に前後方向に伸びる左右一対の対向する係合用凹所9が設けられ、前記カート3のトレイ収容室4の下方にはカート3を配膳車本体2のトレイ収容室4に収容する際に前記係合用凹所9に差し込まれる係合用アーム13が突設され、且つ係合用アーム13と係合用凹所9との係合の際にカート3を上昇させる後述の上昇手段が設けられている。
【0022】
すなわち、本実施形態における上昇手段としては、配膳車本体2の係合用凹所9の開口部分に上り傾斜部14と、該上り傾斜部14から配膳車本体の奥側(後側)に向かって前記上り傾斜部14の頂部から係合用凹所9の最奥部まで伸びる水平部15を有する凸条5が設けられており、前記係合用凹所9に対してカート3の係合用アーム13を差し込むことで、カート3が前記係合用凹部9の凸条5における上り傾斜部14に沿って上昇すると共に、前記係合用アーム13が凸条5の奥側(後側)へ進入して、配膳車本体2とカート3が一体化するようになされている。
【0023】
その結果、図4に示すように、カート3のキャスター12は、床面FRから僅かに上昇した状態で配膳車本体2内に一体に収容された状態となり、配膳にあたって、当該配膳車1を配膳場所まで移動させる際には、カート3のキャスター12が床面から浮いた状態で当該配膳車1の車輪8のみによって、走行が行われることとなる。
以上述べた実施形態においては、カート3の上昇手段として、配膳車本体2の係合用凹所9内の凸条5における上り傾斜面14と、これに続く水平部15を設けたが、本発明はこれに限定されず、前記係合用凹所9並びに、その上り傾斜部14および水平部15を有する凸条5をカート3側に設け、係合用アーム13を配膳車本体2側に設けても良い(すなわち、前記実施形態と逆の構成の上昇手段とすることもある。
【0024】
更に、前記実施形態において、例えば上り傾斜部14の最低部に係合用アーム13の差込を誘引するローラ状の導入用回転体を設けても良いし、或いは前記係合用アーム13の先端側部分等に前記ローラ状の導入用回転体を設けることもある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る配膳車によれば、配膳車本体に対してカートを低位に収容させることができ、しかも配膳場所への移動もスムーズに行えることから、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0026】
1 配膳車
2 配膳車本体
3 カート
4 カート収容室
5 凸条
6 仕切り壁
7 トレイ収容室
8 車輪
9 係合用凹所
12 キャスター
13 係合用アーム
14 凸条の傾斜部
15 凸条の水平部
図1
図2
図3
図4
図5
図6