(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ロック装置を装着可能な開閉式構造体のロック機構
(51)【国際特許分類】
A45C 13/00 20060101AFI20220729BHJP
A45C 5/03 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A45C13/00 B
A45C13/00 Z
A45C5/03
(21)【出願番号】P 2016123250
(22)【出願日】2016-06-22
【審査請求日】2019-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】516186304
【氏名又は名称】株式会社錦原ラゲッジジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【氏名又は名称】本夛 伸介
(74)【代理人】
【識別番号】100115303
【氏名又は名称】岩永 和久
(72)【発明者】
【氏名】田中 知美
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】長馬 望
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-52100(JP,U)
【文献】実開平6-29428(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0193631(US,A1)
【文献】登録実用新案第3192182(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/00
A45C 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体とそれに対向する対向体とを所定箇所で位置決めして開閉する開閉式構造体のロック機構であって、
前記基体又は前記対向体の一方に固設された掛止体と、
前記基体又は前記対向体の他方に形成された掛止孔と、
前記掛止孔に挿通された前記掛止体の可動を規制する規制体と、
で構成され、
前記規制体は、
前記掛止体に当接する当接部と、
ロック装置を装着
して、前記基体と前記対向体との開閉を規制する装着部を有する押圧部と、
が一体形成されて
おり、
前記規制体は、前記押圧部の押圧による押上操作及び押下操作によって前記押圧部及び前記装着部の埋没及び表出を可能とし、前記押圧部の押下状態において前記装着部は埋没し、前記押圧部の押上状態において前記装着部は表出していることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。
【請求項2】
前記規制体は、前記押圧部の押下状態において前記当接部の前記掛止孔への進入がなく、前記押圧部の押上状態において前記当接部の前記掛止孔への進入があることを特徴とする請求項1記載の開閉式構造体のロック機構。
【請求項3】
前記基体は本体ケース、前記対向体は蓋ケースであり、前記本体ケースと前記蓋ケースとがヒンジ部を介して開閉自在とされ、TSAロックが備えられたスーツケースに用いることを特徴とする請求項
1又は2記載の開閉式構造体のロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な構造を持つ開閉式構造体にロック装置を装着可能に構成したロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツケース等の開閉式構造体では、予め組み付けられたメインのロック機構とは別に、スーツケースの外周に帯状のバンドを巻いて締め付けバックルで固定した上に鍵を取り付けたり、メインロックとは別にサブの補助ロック機構が予め組み付けられていたりする。これは、メインのロック機構がTSAロックであり、空港内での荷物検査の際にメインのTSAロックを解除して保安検査官による荷物検査が行われることから、この際には補助ロックを使用しないのが普通である。
【0003】
一方、メインのTSAロックに合わせて補助ロックも同時に使用する場合があり、意図しないTSAロックの解除が発生しても、補助ロックによってスーツケースの開放を阻止して、閉状態を保持することができる。
【0004】
特許文献1に記載のスーツケース用ロック装置は、メインロック機構とは別に補助ロック機構を組み付け、補助ロック機構として押しボタン式ロック機構とした例が開示されており、メインロック機構が破壊されても、補助ロック機構によってスーツケースの閉状態を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3135779号公報(段落[0015])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のスーツケース用ロック装置は、押しボタンの押圧操作によりスーツケースの閉状態を保持しているに過ぎず、意図しない押圧操作があった場合には簡単に閉状態を解除されてしまう。特に、予め組み付けられたメインのロック機構の信頼性が疑われると、そこに予め組み付けられた補助ロックの信頼性も疑わざるを得なくなることから、ユーザの選択に応じたオリジナルの補助ロックによる方が安心感は高まる。
【0007】
そこで、本発明は、ユーザの選択に応じたオリジナルのロック装置を装着可能に構成した開閉式構造体のロック機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 基体とそれに対向する対向体とを所定箇所で位置決めして開閉する開閉式構造体のロック機構であって、前記基体又は前記対向体の一方に固設された掛止体と、前記基体又は前記対向体の他方に形成された掛止孔と、前記掛止孔に挿通された前記掛止体の可動を規制する規制体と、で構成され、前記規制体は、前記掛止体に当接する当接部と、ロック装置を装着する装着部を有する押圧部と、が一体形成されていることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。
【0010】
本発明によれば、掛止体に当接する当接部とロック装置を装着する装着部を有する押圧部とが一体形成されている規制体は、その当接部と掛止体とが当接して掛止することによりロック機能を発揮し、さらに装着部にロック装置を装着することによりロック装置による確実なロック機能が発揮されて閉状態を保持できることから、ユーザの所望するロック装置によって安心かつ確実なロック機能を実現することができる。
【0011】
(2) 前記規制体は、前記押圧部の押下状態において前記当接部の前記掛止孔への進入がなく、前記押圧部の押上状態において前記当接部の前記掛止孔への進入があることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。
【0012】
本発明によれば、押圧部の押下状態においては当接部の掛止孔への進入がないことから、掛止体は掛止孔に自在に挿通でき、ひいては基体と対向体との開閉を自在に行うことができる。一方で、押圧部の押上状態においては当接部の掛止孔への進入があることから、掛止体は掛止孔への挿通を阻害され、或いは、掛止孔に挿通された掛止体の可動を規制するストッパー機能を発揮し、ひいては基体と対向体との開閉が制限される。このように、押圧部の押上及び押下によってロック機能を実現することができる。
【0013】
(3) 前記規制体は、前記押圧部の押下状態において前記装着部は埋没し、前記押圧部の押上状態において前記装着部は表出していることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。
【0014】
本発明によれば、押圧部の押下状態において装着部は埋没していることから、装着部にロック装置を装着することができない。また、押圧部の押下状態においては、掛止体は掛止孔に自在に挿通でき、基体と対向体との開閉を自在に行うことができる状態であり、装着部にロック装置を装着する必要性がない。一方、押圧部の押上状態において装着部は表出していることから、装着部にロック装置を装着することができる。また、押圧部の押上状態においては、掛止体は掛止孔への挿通を阻害され、或いは、掛止孔に挿通された掛止体の可動を規制するストッパー機能を発揮し、基体と対向体との開閉が制限される状態であり、装着部にロック装置を装着する必要性がある。このように、ロック機能の実現とロック装置の装着とが相俟った押圧部の機能を提供することができる。
【0015】
(4) 前記基体は本体ケース、前記対向体は蓋ケースであり、前記本体ケースと前記蓋ケースとがヒンジ部を介して開閉自在とされ、TSAロックが備えられたスーツケースに用いることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。
【0016】
本発明によれば、TSAロックが備えられたスーツケースに上述したロック機構を用いることにより、意図しないTSAロックの解除があった場合でも、掛止体と掛止孔と規制体とで構成された補助的なロック機構によって安心かつ確実なロック機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の開閉式構造体のロック機構は、ロック機能の実現とロック装置の装着とが相俟った押圧部の機能を提供し、ユーザの所望するロック装置によって安心かつ確実なロック機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】TSAロックが備えられたスーツケースを示す図である。
【
図3】サブロック機構にロック装置を装着した例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るロック機構の動作を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るロック機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。なお、以下は
図1に示すようなスーツケースの例に基づいて説明するが、本発明はこれに限らず、金庫、扉、鞄など開閉自在とされる構造体であれば何れにも適用可能である。
【0020】
図1は、TSAロックが備えられたスーツケース1を示す図である。スーツケース1は、基体としての本体ケース1Aと、対向体としての蓋ケース1Bと、がヒンジ部1Cを介して連結され開閉自在になっている。本体ケース1Aの長手方向中央には把手11が設置され、本体ケース1Aの短手方向の一方の側壁に移動用キャスタ12が設置される。把手11の両側にはTSAロック10が組み付けられて、閉鎖状態にロックするためのメインロック用掛止体B1,B2が蓋ケース1Bの所定位置に固設される。なお、メインロック機構としてのTSAロックは既知のものである。
【0021】
把手11の内側には、ロック装置を装着可能な補助的なロック機構が組み付けられて、閉鎖状態にロックするための補助ロック用掛止体B3が蓋ケース1Bの所定位置に固設部31で固設される。以下、
図2~
図5を用いて補助ロック機構の構成及び動作について説明する。
【0022】
図2は、補助ロック機構の構成を示す概略図である。把手11の内側に位置し、把手11の回転操作を容易にする回転機構が組み付けられた本体ケース1Aの把手取付部13は、規制体20を内部に収容するための空隙が形成されている。この空隙から把手11側の外方向に向かって形成された表出窓に装着部23を有する押圧部21を位置させ、押圧部21の押圧による押上操作及び押下操作によって押圧部21及び装着部23の埋没及び表出を可能としている。また、空隙には当接部22を位置させて対向する補助ロック用掛止体B3を挿通可能な掛止孔14を形成しており、当接部22の位置によって掛止孔14の空隙領域の大小が変化する。補助ロック用掛止体B3は、掛止孔14への進入及び掛止孔14に進入して挿通された可動を空隙領域の大小によって規制される。
【0023】
図3は、補助ロック機構にロック装置3を装着した例を示す図であり、補助ロック用掛止体B3が掛止孔に挿通されて規制体により補助ロック用掛止体B3の可動が規制された状態において、装着部23にロック装置4を装着している。ロック装置4が装着部23に装着されていることから、押圧部21の押下ができないストッパーとしての機能が発揮され、補助ロック用掛止体B3の可動が規制された状態を維持することができる。すなわち、本体ケース1Aと蓋ケース1Bとを閉鎖した状態にロックすることができる。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態に係るロック機構の動作を説明するための図であり、(a)はロック前の状態、(b)はロック途中の状態、(c)はロック後の状態である。
【0025】
図4(a)において、規制体20の押圧部21の押下状態では当接部22の掛止孔14への進入がないことから、補助ロック用掛止体B3のハサミ部32は掛止孔14に挿通可能である。次に、
図4(b)において、掛止体B3が掛止孔14に挿通された状態で押圧部21を押圧すると、
把手取付部13に埋没していた押圧部21及び装着部23が表出して押上げられるとともに、当接部22が掛止孔14内に押上げられて、ハサミ部32と当接部22とが当接して掛合する。図4(c)において、把手取付部13に埋没していた押圧部21及び装着部23が表出して押上げられるとともに、当接部22が掛止孔14内に押上げられて、ハサミ部32と当接部22とが当接して掛合する。
図4(c)の状態においては、押圧部21を押下げてハサミ部32と当接部22との掛合を解除しなければ本体ケース1Aと蓋ケース1Bとを開放することができず、さらに
図3に示すようにロック装置4を装着部23に装着してロックことで開放不能にすることができる。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態に係るロック機構の動作を説明するための図であり、(a)はロック前の状態、(b)はロック後の状態である。
【0027】
図5(a)において、規制体20の押圧部21の押下状態では当接部22の掛止孔14への進入がないことから、補助ロック用掛止体B3のハサミ部32は掛止孔14に挿通可能である。
図5(b)において、掛止体B3が掛止孔14に挿通された状態で押圧部21を押圧すると、把手取付部13に埋没していた押圧部21及び装着部23が表出して押上げられるとともに、当接部22が掛止孔14内に押上げられて、ハサミ部32と当接部22とが当接して掛合する。
図5(b)の状態においては、押圧部21を押下げてハサミ部32と当接部22との掛合を解除しなければ本体ケース1Aと蓋ケース1Bとを開放することができず、さらに
図3に示すようにロック装置4を装着部23に装着してロックことで開放不能にすることができる。
【0028】
なお、
図1から
図5においては、押圧部21と装着部23とは物理的に分離して一体形成されている例を示しているが、これに限らず、押圧部21の直下に貫通孔を設けて装着部としたものや、押上状態において装着部が表出する一方、押下状態において装着部が押圧部21内に収容されるものなど、物理的に一体となっていてもよい。
【0029】
また、
図1から
図5においては、補助ロック用掛止体B3のハサミ部32の開放側壁と当接部22とが当接して掛合する例を示しているが、これに限らず、掛止体B3に閉鎖孔を形成して、かかる閉鎖孔に棒状の当接部が挿通されて掛合されるものなどでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る開閉式構造体のロック機構は、簡易的かつ視覚的に容易にロック機能の実現とロック装置の装着とが相俟った押圧部の機能を提供し、ユーザの所望するロック装置によって安心かつ確実なロック機能を実現するものとして産業上有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 スーツケース(開閉式構造体)
1A 本体ケース(基体)
1B 蓋ケース(対向体)
1C ヒンジ部
11 把手
12 移動用キャスタ
13 把手取付部
14 掛止孔
B1,B2 メインロック用掛止体
B3 補助ロック用掛止体
20 規制体
21 押圧部
22 当接部
23 装着部
31 固設部
32 ハサミ部
4 ロック装置