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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】中敷
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A43B17/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017176750
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019051002
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591025901
【氏名又は名称】株式会社村井
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】村井 ▲隆▼
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0096745(US,A1)
【文献】米国特許第06604301(US,B1)
【文献】特開平09-168407(JP,A)
【文献】特開平06-007204(JP,A)
【文献】特開2006-198399(JP,A)
【文献】米国特許第06131311(US,A)
【文献】実開昭62-185503(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面には、足の裏側の母指球に対応する領域に、主に走行を補助する窪み(34)が形成され、さらに、横アーチサポート部(44)と内側縦アーチサポート部(28)とが形成された中敷であって、
前記窪み(34)は、
小円状の底面(38)を曲面状の周壁で囲んで上縁を円状にした擂鉢形状にされており、さらに、
足が載置された場合の、前記窪み(34)の周壁の母指球後ろ面が当接する周壁部分を延長した斜面(36a)を有する盛り上がり(36)を前記窪み(34)の後ろ直後に連設しており、
前記盛り上がり(36)が形成されている範囲は、
内側縁(22)と前記横アーチサポート部(44)との間で、かつ内側縦アーチサポート部(28)の頂点より前側となる、足が載置された場合の第1中足骨の骨頭と第1中足骨の中央付近との間となっており、さらに、
前記範囲に形成された盛り上がり(36)は、
上から見た場合の形状が前記斜面(36a)を有して略三角形状に形成されており、
蹴り出し時に、この斜面(36a)によって足の母指球の後ろ面に反発力を与えることを可能とする中敷。
【請求項2】
さらに、表面には外側縦アーチサポート部(30)が形成されており、
前記略三角形状の盛り上がり(36)の後端は、
前記範囲において、前記横アーチサポート部(44)の中央付近が対向する位置にされている、ことを特徴とする請求項1記載の中敷。
【請求項3】
前記斜面(36a)は三日月形状であり、
この斜面(36a)の頂点は、前記横アーチサポート部(44)の頂点以下の所定高さにされている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の中敷。
【請求項4】
踵部対応領域を囲むヒールカップ部(26)が形成されている、ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の中敷。
【請求項5】
裏面には、補強シェル(32)が圧着されており、
前足側となる先端縁は、
第1中足骨の骨底の前側付近、第2中足骨の骨頭の後ろ、第3中足骨の骨頭の後ろ、第4中足骨の中央付近を通り、第5中足骨の骨底の後ろを囲むように通って、外縁に至る曲線
形状にされている、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか一項に記載の中敷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の本底の上に敷かれる、後入れや取り外しが可能である中敷(インナーソール)、及び、本底と一体になった中敷(インソール)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴と足との間の相対移動、特に靴に対する足の前後方向への滑りを抑制することを可能とする中敷が提案されている(後記特許文献1参照)。この中敷は、足底の接触を受ける表面に足の母指球を受け入れる窪みを有する。窪みはこれに受け入れられた足の母指球の動きを拘束し、これにより歩行時又は走行時における中敷したがって靴に対する足の滑りが抑制される。その結果、地面に対する足の蹴り出しによって生じる運動エネルギの損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-198399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、足の蹴り出しによって生じる運動エネルギの損失のより一層の低減に寄与する中敷の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る中敷は、表面には、足の裏側の母指球に対応する領域に、主に走行を補助する窪み(34)が形成され、さらに、横アーチサポート部(44)と内側縦アーチサポート部(28)とが形成された中敷であって、
前記窪み(34)は、
小円状の底面(38)を曲面状の周壁で囲んで上縁を円状にした擂鉢形状にされており、さらに、
足が載置された場合の、前記窪み(34)の周壁の母指球後ろ面が当接する周壁部分を延長した斜面(36a)を有する盛り上がり(36)を前記窪み(34)の後ろ直後に連設しており、
前記盛り上がり(36)が形成されている範囲は、
内側縁(22)と前記横アーチサポート部(44)との間で、かつ内側縦アーチサポート部(28)の頂点より前側となる、足が載置された場合の第1中足骨の骨頭と第1中足骨の中央付近との間となっており、さらに、
前記範囲に形成された盛り上がり(36)は、
上から見た場合の形状が前記斜面(36a)を有して略三角形状に形成されており、
蹴り出し時に、この斜面(36a)によって足の母指球の後ろ面に反発力を与えることを可能とする、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の中敷は、さらに、表面には外側縦アーチサポート部(30)が形成されており、
前記略三角形状の盛り上がり(36)の後端は、
前記範囲において、前記横アーチサポート部(44)の中央付近が対向する位置にされている、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の中敷は、前記斜面(36a)は三日月形状であり、
この斜面(36a)の頂点は、前記横アーチサポート部(44)の頂点以下の所定高さにされている、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の中敷は、踵部対応領域を囲むヒールカップ部(26)が形成されている。
【0009】
また、裏面には、補強シェル(32)が圧着されており、
前足側となる先端縁は、
第1中足骨の骨底の前側付近、第2中足骨の骨頭の後ろ、第3中足骨の骨頭の後ろ、第4中足骨の中央付近を通り、第5中足骨の骨底の後ろを囲むように通って、外縁に至る曲線形状にされている、ことを特徴とする。
【0010】
この補強シェル(32)は、中敷の一部を補強し、また、保形する働きをなす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る中敷の斜視図である。
図2図1に示す中敷の一部を切り欠いて示す斜視図である。
図3】中敷の平面図である。
図4】中敷の底面図である。
図5】中敷をその内側から見た側面図である。
図6】中敷をその外側から見た側面図である。
図7図3の線7-7に沿って得た断面図である。
図8図3の線8-8に沿って得た断面図である。
図9図3の線9-9に沿って得た断面図である。
図10】足の骨格と共に示す、中敷をその内側から見た側面図である。
図11】足の骨格と共に示す、中敷の底面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る中敷の図2に示すと同様の一部切欠き斜視図である。
図13図12に示す中敷の図3に示すと同様の平面図である。
図14】本発明のさらに他の実施形態に係る中敷についての分解斜視図である。
図15図14に示す中敷の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る中敷が全体に符号10で示されている。中敷10は、靴の本底(図示せず)の上に取り外し可能に敷かれ、あるいは、前記靴の本底と一体になった状態で使用に供される。中敷10は、全体に板状を呈する接足部12を有する。
【0013】
接足部12は、前記靴に足A(図10参照)を入れたときに足底Bが接触する面である表面14と、表面14に相対する裏面(底面)16とを有する。接足部12は、また、その周囲の外形を規定する周縁を有する。前記周縁は、連続して伸びる前縁18、後縁20、内側縁22及び外側縁24からなる(図3及び図4参照)。
【0014】
図示の例において、中敷10は、さらに、接足部12の表面14の後側の部分14a(図1)において取り囲みかつ末広がりに立ち上がる板状のヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30を備える。
【0015】
ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30は、接足部12の後縁20、内側縁22及び外側縁24に沿ってそれぞれ伸び、また、互いに連なっている。したがって、ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30は、接足部12と共に、接足部12の表面14を含む中敷10の内面と、接足部12の裏面16を含む中敷10の外面とを形成する。接足部12、ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30は、ウレタンのような軟質の合成樹脂材料で一体に成形されている。
【0016】
ヒールカップ部26は歩行時や走行時における足の踵の横滑りを抑制する働きをなす。内側縦アーチサポート部28は、歩行時や走行時における両足の内方側への足の踵の倒れ込みを抑制する働きをなす。また、外側縦アーチサポート部30は、歩行時や走行時に接地する足の踵から爪先への体重移動を安定にする働きをなす。図示の例において、ヒールカップ部26は、足骨格の踵骨E(図10)の周囲をこれに沿って伸びるように形状付けられている。なお、中敷10は、ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30を有しないものであってもよい。
【0017】
さらに、図示の例において、中敷10は、接足部12の裏面16に接着され、裏面16を足底の踵B2から土踏まずB3(図10参照)下に至るアーチ状の領域を覆う補強シェル32を備える。より詳細には、補強シェル32は、接足部12、ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28及び外側縦アーチサポート部30の成形時に設けられた、中敷10の外面16に開放する凹所33(図7及び図9参照)に、補強シェル32を構成する板状体が凹所33に嵌め込まれかつ接着されている。前記板状体は、厚さ1.0~3.0mmで曲げ弾性率が150~3,000Mpaのプラスチック又は強化繊維からなる。
【0018】
補強シェル32を構成する前記成形体は、接足部12、ヒールカップ部26、内側縦アーチサポート部28又は外側縦アーチサポート部30が外力を受けたとき、これに対抗して、あるいは、弾性変形をして、当該部位の外形を保持する働きをなす。なお、中敷10は、図示の例に代えて、補強シェル32を有しないものとすることが可能である。
【0019】
図1及び図3に示すように、接足部12は、その表面14に、足底B(図10参照)の母指球B1を受け入れる窪み34と、盛り上がり36とを有する。
【0020】
窪み34は、底38と該底に連なる側壁40(図1図3及び図8)とを有する。図示の例において、窪み34の底38は楕円形状を呈する平坦な面からなる。窪み34は、前記楕円形の長径で見て、接足部12の内側縁22から外側縁24に向けて伸びている。窪み34の側壁40は、底38からすり鉢状に末広がりに伸びている。窪み34に足底Bの母指球B1(図10参照)が受入られるとき、母指球B1は窪み34の底38上に載り、また、側壁40によりその周囲を部分的に取り囲まれ、側壁40に接する。これにより、母指球B1は窪み34内に拘束される。これによれば、中敷10が入れられ又は本底と一体となった靴を履いての歩行時や走行時、足Aの蹴り出しに際して、母指球B1の移動が制限され、これにより、接足部12の表面14上における足底Bの特に前後方向(歩行又は走行の進行方向)への相対移動が抑制される。窪み34は、他の例として、図3に示す例に比べてより小さい表面積を有する底38と、より大きい表面積を有する側壁40とを有するものとすることができる(図13参照)。
【0021】
盛り上がり36は、窪み34に対して接足部12の後縁20の側にあって窪み34の側壁40に連なる斜面36aを有する(図1図3)。これによれば、盛り上がり36は、歩行時や走行時の足Aの蹴り出しの際、足底Bの母指球B1に対して、母指球ロックにより中敷10に対する母指球B1の前後方向への移動を制限する働きをなす。盛り上がり36の斜面36aは、窪み34の側壁40の高さ及び面積を実質的に増大する働きをなし、これが、足Aの蹴り出しの際に接する母指球B1の後方へ向けての滑り又はその傾向をより効果的に抑制する働きをなす。その結果、足Aの蹴り出しによって生じる運動エネルギの損失がより一層低減される。また、これにより、歩行や走行によって生じる疲労がより軽減される。
【0022】
盛り上がり36は、一例として、接足部12の後縁20の側に向けて伸び、また、後縁20の側に向けて漸減する高さを有し、また、三日月形の横断面形状を有するものとすることができる。さらに、盛り上がり36は、その平面で見て、接部12の前縁18から後縁20に向けて先細に伸びるものとすることができる。窪み34の側壁40と、これに連なる盛り上がり36の斜面36aとの高さ寸法h(図2)についてはこれを4~5mmに設定し、窪み34の側壁40の高さについてはこれを2~3mmに設定することができる。また、盛り上がり36の長さa及び幅b(図3)は、接足部12の前縁18及び後縁20間の長さに応じて、それぞれ、a=13~17mm及びb=26~32mmの範囲内の値に設定することができる。例えば、接足部12の前縁18及び後縁20間の長さが2 5.0~26.0cmのときはa=15.3mm及びb=28.7mmに設定することが できる。
【0023】
内側縦アーチサポート部28は、なだらかな山形を呈する上縁42(図5)を備える。上縁42は足骨格C(図10)の載距突起C1下に対応する位置42aにおいて最大の高さを有する。これによれば、内側縦アーチサポート部28が足首の内側靭帯部(図10に示す丸Dで囲まれた範囲にある複数の靭帯)を持ち上げ、これにより、特に走行時における着地の際、踵B2が内側により倒れ込みにくくすることができる。これは、また、比較的大きい着地衝撃を伴うオーバープロネーションの発生及びランニング障害の発生の未然防止に役立つ。また、外側縦アーチサポート部30は、ヒールカップ部26から足骨格Cの第5中足骨C2(図11)の骨底C2aの対応する位置の近傍まで伸びるものとすることができる。
【0024】
中敷10は、また、接足部12の表面14の一部を規定する横アーチサポート部44(図3図7図9)を有する。横アーチサポート部44は、足骨格の第2~4中足骨C3、C4、C5(図11)の中央部下の対応する領域に位置し、接足部12の外側縁24から内側縁22に向けて伸びる盛り上がりである。横アーチサポート部44はその盛り上がりにより歩行時又は走行時に低下することがある足Aの横アーチを支える働きをなす。図示の横アーチサポート部44は、接足部12の前縁18から後縁20に向けて伸びている。横アーチサポート部44は、全体に楕円形を呈する輪郭を有し、前記楕円形の長軸が中底中心線L(図3)とほぼ平行に伸びている。横アーチサポート部44は、図3に示すように、前記楕円形の長軸が中底中心線Lからわずかに接足部12の外側縁24寄りに位置するように配置し、あるいは、この位置よりもさらに接足部12の外側縁24寄りにあるように(図13)配置することができる。
【0025】
図14及び図15に示すように、中敷10は、好ましくは、接足部12の表面14に接着された板状の柔らかい緩衝材50を備える。図示の柔らかい緩衝材50は円板状を呈し、その両面のうちの一方の面において、窪み34の底38及び側壁40と盛り上がり36の斜面36aとに接着され、これらの底38、側壁40及び斜面36aを覆っている。また、円板状の柔らかい緩衝材50の他方の面は、わずかに窪んだ状態にある。柔らかい緩衝材50は該柔らかい緩衝材上に載せられる足の母指球B1が歩行時又は走行時に受ける衝撃を和らげる働きをなす。さらに、接足部12の表面14に接着され、接足部12の表面14および柔らかい緩衝材50を覆う表層部材(図示せず)を備えるものとすることができる。前記表層部材は、好ましくは、ウレタン、ジェル等からなり、約2~3mmの厚さ寸法を有する。
【符号の説明】
【0026】
10 中敷
12 接足部
14 表面
16 裏面
18 前縁
20 後縁
22 内側縁
24 外側縁
26 ヒールカップ部
28 内側縦アーチサポート部
30 外側縦アーチサポート部
32 補強シェル
34 窪み
36 盛り上がり
36a 盛り上がりの斜面
38 窪みの底
40 窪みの側壁
42、42a 内側縦アーチサポート部の上縁及びその最大高さ位置
44 横アーチサポート部
46 溝
48 波形の溝
50 柔らかい緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15