IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソ−キナカタの特許一覧

<>
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図1
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図2
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図3
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図4
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図5
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図6
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図7
  • 特許-バームクーヘンの製造装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】バームクーヘンの製造装置
(51)【国際特許分類】
   A21B 5/04 20060101AFI20220729BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A21B5/04
A47J37/06 371
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018164190
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020036668
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月12日~15日に開催された、FOOMA JAPAN2018国際食品工業展にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】306027530
【氏名又は名称】株式会社ソ-キナカタ
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】青島 良雄
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-175381(JP,U)
【文献】特開2012-125192(JP,A)
【文献】特開昭62-248443(JP,A)
【文献】特開2006-129781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
A21B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成室と、前記焼成室の内部に1つの円周に沿って水平方向に互いに間隔をあけながら並べられ、自転しながら公転する複数の麺棒と、前記公転軌道に下側で被さる生地皿と、前記公転軌道の上半部に複数配置されて前記複数の麺棒に同軸状に外側から対向する赤外線ヒーターと、前記複数の赤外線ヒーターに相似状に配置されて外側から凹状に囲むヒーターガイドフードと、前記ヒーターガイドフードの内面に沿って前記複数の赤外線ヒーター側に水蒸気の流れを誘導する水蒸気誘導手段とを備え、
前記赤外線ヒーターを焼成用ヒーターとして利用し、前記ヒーターガイドフードの内面を水蒸気の流れ経路のガイド面として利用することで、前記焼成用ヒーターの周囲に水蒸気を充満させることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、
水蒸気誘導手段は、半円弧状に並べられた複数の焼成用ヒーターのいずれか一方の下端の下方に配置され、複数の蒸気噴出口が下側を向いた蒸気パイプと、前記蒸気噴出口から噴出した水蒸気を下側から受け止める蒸気パンとを備え、前記蒸気パン側から水蒸気が上昇してヒーターガイドフードの内面側に誘導されることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、
水蒸気誘導手段の蒸気パンと、その直上の焼成用ヒーターとの間に、前記蒸気パン上に滴下した水滴の蒸発を促進させる蒸発促進手段を備えることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、
複数の赤外線ヒーターが半円弧状の一方側から下方に延長して、全体として逆J字形状配列になっており、この延長部分にもヒーターガイドフードが連なっていると共に、麺棒に対向する側はヒーターガードでガードされており、
前記延長部分の赤外線ヒーターを蒸発促進用ヒーターとして利用して、これらで蒸発促進手段を構成したことを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、
生地皿が、蒸発促進用ヒーターとは公転軌道を挟んで反対側の待機位置と斜め方向に上昇して公転軌道に被さる付着位置との間で昇降するように構成されており、
更に、前記蒸発促進用ヒーターと前記生地皿との間に、前記生地皿の上昇に合わせて上昇して仕切ることで前記蒸発促進用ヒーターからの熱を遮断する遮熱プレートを備えることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用の熱源として電気を利用したバームクーヘンの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バームクーヘンを自動的に製造する装置は、既に提案されており、複数本のバームクーヘンを同時に製造する場合に利用する典型的なものは、焼成室の中に複数の麺棒が1つの円周に沿って水平方向に互いに間隔をあけながら並べられており、これらの麺棒がそれぞれ自転しながら公転する仕組みになっており、麺棒が下降するとその外周面にバームクーヘンの生地が付着され、上昇するとその付着された生地が焼き上げられていくようになっている。
特許文献1では、このタイプの構造の製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-224951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バームクーヘンはドイツを発祥とする菓子であるが、日本に根をおろし進化して今では日本の菓子の定番になっている。最近では、この日本で長年親しまれているバームクーヘンに海外からも好意的な反応が寄せられており、その製造装置の購入に関する問い合わせもきている。
而して、特許文献1のものを含めて、既存の製造装置はいずれも焼成用の熱源はガスになっている。
【0005】
そのため、安全上の制約から海外では利用できない場合がある。
一方、ガス燃焼に伴って水蒸気が発生し、この水蒸気がバームクーヘンの食感や味覚に良い影響を与えていると考えられることから、海外用に熱源を電気式に単純に変更するわけにはいかない。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、焼成用の熱源として電気を利用しながら、既存のガスを利用した装置と比べても食感や味覚の点で遜色のないバームクーヘンを製造できる、新規且つ有用なバームクーヘンの製造装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1の発明は、焼成室と、前記焼成室の内部に1つの円周に沿って水平方向に互いに間隔をあけながら並べられ、自転しながら公転する複数の麺棒と、前記公転軌道に下側で被さる生地皿と、前記公転軌道の上半部に複数配置されて前記複数の麺棒に同軸状に外側から対向する赤外線ヒーターと、前記複数の赤外線ヒーターに相似状に配置されて外側から凹状に囲むヒーターガイドフードと、前記ヒーターガイドフードの内面に沿って前記複数の赤外線ヒーター側に水蒸気の流れを誘導する水蒸気誘導手段とを備え、前記赤外線ヒーターを焼成用ヒーターとして利用し、前記ヒーターガイドフードの内面を水蒸気の流れ経路のガイド面として利用することで、前記焼成用ヒーターの周囲に水蒸気を充満させることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、水蒸気誘導手段は、半円弧状に並べられた複数の焼成用ヒーターのいずれか一方の下端の下方に配置され、複数の蒸気噴出口が下側を向いた蒸気パイプと、前記蒸気噴出口から噴出した水蒸気を下側から受け止める蒸気パンとを備え、前記蒸気パン側から水蒸気が上昇してヒーターガイドフードの内面側に誘導されることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、水蒸気誘導手段の蒸気パンと、その直上の焼成用ヒーターとの間に、前記蒸気パン上に滴下した水滴の蒸発を促進させる蒸発促進手段を備えることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、複数の赤外線ヒーターが半円弧状の一方側から下方に延長して、全体として逆J字形状配列になっており、この延長部分にもヒーターガイドフードが連なっていると共に、麺棒に対向する側はヒーターガードでガードされており、前記延長部分の赤外線ヒーターを蒸発促進用ヒーターとして利用して、これらで蒸発促進手段を構成したことを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載した電熱式バームクーヘン製造装置において、生地皿が、蒸発促進用ヒーターとは公転軌道を挟んで反対側の待機位置と斜め方向に上昇して公転軌道に被さる付着位置との間で昇降するように構成されており、更に、前記蒸発促進用ヒーターと前記生地皿との間に、前記生地皿の上昇に合わせて上昇して仕切ることで前記蒸発促進用ヒーターからの熱を遮断する遮熱プレートを備えることを特徴とする電熱式バームクーヘン製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造装置によれば、焼成用の熱源として電気を利用しながら、既存のガスを利用した装置と比べても食感や味覚の点で遜色のないバームクーヘンを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る電熱式バームクーヘン製造装置の一部透明化した正面図である。
図2図1の装置の側面図である。
図3図1の装置の一部透明化した側面図と、水蒸気誘導作用のイメージ図である。
図4図1の装置の一部透明化した斜視図である。
図5図4の装置とは別の方向から見た一部透明化した斜視図である。
図6図4、5とは別の方向から見た一部透明化した斜視図である。
図7図4、5、6とは別の方向から見た一部透明化した斜視図である。
図8図3の生地皿と遮熱プレートの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るバームクーヘン製造装置1について、図面にしたがって説明する。
図1図2に示すように、このバームクーヘン製造装置1は長方形状の筐体3で外面が構成されている。筐体3は下段側5と上段側7では背面側に段差が設けられており、上段側7がその分だけ小さくなっている。筐体3の底面には四隅にそれぞれ支持柱9、9、……と、車輪11、11、……が取り付けられており、設置固定時には支持柱9、9、……に持ち上げ支持され、移動時には車輪11、11、……が転動するようになっている。
【0015】
上段側筐体7の内部が焼成室になっている。上段側筐体7の下半部は扉(図示省略)によって開閉可能になっており、図1では、扉とその上側の正面筐体が一部透明化されて焼成室の内部が示されており、図3では、焼成室の内部が側面方向から示されている。
焼成室では、一対の円形のホルダー板13、13がそれぞれの板面を左右方向に向けて平行に対向配置されており、それらの中心部には(ホルダー板用)回転軸15が貫通固定されている。この回転軸15の軸方向は水平方向に沿っており、回転軸15の軸周りの回転により、ホルダー板13、13が回転する。
図1に示すように、このホルダー板13、13には複数の麺棒17、17、……が水平方向に沿って脱着自在に架設されている。各麺棒17の軸方向両端側には(麺棒用)回転軸19、19が取り付けられており、各麺棒17はその回転軸19の軸周りの回転により、ホルダー板13、13の回転とは独立して回転するようになっている。
【0016】
図3に示すように、合計で6本の麺棒17、17、……は、ホルダー板13、13の周縁寄りに架設されており、左右方向から見ると、一つの円周に沿って互いに一定の間隔をあけながら並べられた状態になる。各麺棒17は、上記した回転機構により、矢印に示すように、当該一つの円周を軌道として時計回りに公転すると共に、時計回りに自転する。
公転は間欠的になっており、図3には回転停止時の位置に麺棒17、17、……が示されている。
【0017】
回転軸15の上半部には3つの帯板状の反射板21、21、21が被せられている。各反射板21は左右方向の断面が外方に向かって凹曲面状に湾曲しており、長手方向側が回転軸15の軸方向に平行に延びている。反射板21、21、21は長辺縁どうしが連結されて一体となっており、軸周りに回転する回転軸15上に設置されているが、フリー状態になっているため回転に追従せずにほぼ定位置を保持する。
【0018】
焼成室内の加熱手段として、図4に詳細に示すように、赤外線ヒーター23が利用されている。この赤外線ヒーター23は円柱状をしており、その軸方向は麺棒17の軸方向と平行に複数配設されている。
図3に示すように、左右方向から見ると、複数の赤外線ヒーター23、23、……が逆J字形をなすように互いに一定の間隔をあけながら並べられており、1つの上半円の円弧にほぼ沿って配列された部分と、1つの直線にほぼ沿って配列された部分とからなっており、後者の部分は焼成室の奥側に位置している。
【0019】
図3のヒーター部分の抽出拡大図に示すように、この上半円の円弧は、麺棒17、17、……の円弧と同軸状で半径が大きくなっており、この円弧に沿って配列された赤外線ヒーター23、23、……が焼成用ヒーター群25として利用されて、麺棒17、17、……に外側から対向している。焼成用ヒーター群25は、麺棒17、17、……と同軸状に配設されており、麺棒17、17、……を外側から間隔をあけて囲んでいる。
そして、残りの直線状に配列された赤外線ヒーター23、23、……が蒸発促進用ヒーター群27として利用される。
【0020】
赤外線ヒーター23、23、……の逆J字形の列には、ヒーターガイドフード29が被せられている。このヒーターガイドフード29は断面が凹形になっており、麺棒17、17、……を向く側が開放されて、赤外線ヒーター23、23、……が露出している。
ヒーターガイドフード29の凹底面31は、赤外線ヒーター23、23、……の逆J字形の列に沿って左右方向から見ると相似形になっており、焼成用ヒーター群25側では湾曲し、蒸発促進用ヒーター群27側ではほぼ平らになっている。ヒーターガイドフード29の凹側面33、33は、凹底面31の両側から垂直に立ち上がっている。
【0021】
赤外線ヒーター23、23、……は、この凹側面33、33の間に架設されており、赤外線ヒーター23、23、……は外側を凹底面31で、前後方向を凹側面33、33で囲まれている。
蒸発促進用ヒーター群27側には長方形で平板状のヒーターガード35が設けられている。このヒーターガード35は、パンチングメタルで構成されている。ヒーターガード35はヒーターガイドフード29の開口側を塞ぐように配置されており、その下縁部は下端の赤外線ヒーター23よりも下方にある。ヒーターガード35は前後方向の縁がヒーターガイドフード29の凹底面31に向けて直角に折り曲げられ、そこに上下に間隔をあけて掛止用切欠き37、37が設けられている。これら掛止用切欠き37、37に対応して、ヒーターガイドフード29の凹側面33、33には上下に間隔をあけて支持軸39、39が架設されている。支持軸39、39が掛止用切欠き37、37に入り込み、掛止されることで、ヒーターガード35が蒸発促進用ヒーター群27の所定箇所に配置されている。
【0022】
図5の拡大図に示すように、蒸発促進用ヒーター群27の下端の赤外線ヒーター23の下方にはヒーターガイドフード29が更に延長されており、蒸気パイプ41がこの延長部分の凹側面33、33を貫通して軸方向を水平にして前後に延びている。図3に示すように、この蒸気パイプ41は下端の赤外線ヒーター23と鉛直方向の向きはほぼそろっている。但し、下端の赤外線ヒーター23とは、赤外線ヒーター23、23どうしの並列間隔よりも離れている。
【0023】
この蒸気パイプ41の下面側には、図6の拡大図に示すように、複数の蒸気噴射孔43、43、……が一定の間隔をあけて複数設けられている。この蒸気パイプ41には、蒸気ジェネレータ45で生成した水蒸気が供給されるようになっている。この蒸気ジェネレータ45は背面側の段差面に設置されている。
【0024】
そして、蒸気パイプ41を下側から囲むように、上側が開口した蒸気パン47が配設されている。この蒸気パン47は前後方向に垂直な断面が凹状になっており、凹底面49が蒸気噴射孔43、43、……に僅かな間隔をあけて対向している。また、凹側面51、53はテーパ状になって上側開口側が広がっている。
ヒーターガイドフード29の延長部分はこの蒸気パン47に入り込んでおり、その下端縁が凹底面49や凹側面53に近接している。従って、蒸気パン47の左右方向の端部はヒーターガイドフード29の凹側面33、33で閉塞されている。
【0025】
符号55は生地皿を示し、この生地皿55は上方に大きく開いている。生地皿55は昇降動作によって移動するようになっており、上昇位置にあるときには、図8に示すように、下端の麺棒17が入り込んで生地が付着するようになっている。
このとき、生地皿55と蒸発促進用ヒーター群27との間を遮熱プレート57が仕切るようになっている。図4に示すように、この遮熱プレート57は長方形の平板状になっており、その対向する短辺縁部がそれぞれ一対のガイド59、59にガイドされて、その板面がホルダー板13の板面と直交する向きに配置されている。
この遮熱プレート57は生地皿55と蒸発促進用ヒーター群27との間から斜め方向に上昇して、その上昇端の位置では、麺棒17、17、……の間に入り込むようになっている。
【0026】
電熱式バームクーヘン製造装置1の焼成室は、上記のように構成されており、回転軸15、19、生地皿55、遮熱プレート57はモーター等の適宜な駆動手段により動作するようになっている。
焼成室内では、麺棒17が公転により下降すると生地皿55に入れられたバームクーヘンの生地がその外周面に付着され、上昇するとその付着された生地が麺棒17の自転により焼成用ヒーター群25に万遍なく当てられて焼き上げられていくようになっている。
赤外線ヒーター23は輻射熱で加熱するようになっており、赤外線ヒーター23から放射された熱線が、生地に当たらないで通過した場合には、反射板21に当たって反射され、生地に向けて放射される。そのため、生地皿55の上方に位置する赤外線ヒーター23からの熱線の一部が、生地皿55に入れられた生地に当たってしまい、生地に悪影響を及ぼすようなことが阻止される。
【0027】
この焼成中には、蒸気ジェネレータ43で生成した水蒸気が蒸気パイプ41で供給され、図7の拡大図に示すように、蒸気噴射孔43、43、……から噴射される。この水蒸気Mは、図3のイメージ図の矢印に示すように、先ず、蒸気パン47に衝突し、そこから、ヒーターガイドフード29と、ヒーターガード35で囲まれた部分を蒸気流通経路として上昇していきながら、ヒーターガイドフード29の凹底面31に沿って周回する流れを形成していく。従って、赤外線ヒーター23の周囲は水蒸気Mで優先的に充満されていき、赤外線ヒーター23、23、……が露出して焼成用ヒーター群25に到達すると、そこから麺棒17、17、……に向かって水蒸気Mが拡散移送される。
【0028】
従って、焼成室内では、麺棒17に付着した生地の周囲にはガス燃焼の場合と同様に水蒸気が適度に拡散した状態となる。蒸気噴射孔43からは水蒸気Mが勢いを有して噴射されているため、これが麺棒17に付着した生地に直接衝突すると、生地が水分過剰になってべたついた状態になり、焼き上がりの口どけの良さと適度な弾力感のバランスが崩れてしまうが、本発明では上記のように水蒸気Mが直接生地側に向かわない。
【0029】
蒸気噴射孔43からは、図3のイメージ図に示すように、水滴Sも落下するが、蒸発促進用ヒーター群27が蒸気パン47の直上に設けられているので、速やかに蒸発して水蒸気Mとなり、上昇しながら適度に乾燥していくので、水滴Sも水蒸気Mとして利用される。
ヒーターガード35は、麺棒17に付着した生地が剥離して落下したときに、その落下した生地が直接赤外線ヒーター23に当たらないように、赤外線ヒーター23の保護用に設けられているが、ヒーターガイドフード29の開口側が閉じられるので、水蒸気Mを蒸気流通経路側に寄せるガイド作用も期待されている。
【0030】
生地の付着については、図8に示すように、最下位置にきて停止した麺棒17に生地皿55が接近するようになっているが、この生地皿55の接近動作に連動して、生地の付着時には、遮熱プレート57が上昇して、生地皿55と蒸発促進用ヒーター群27の赤外線ヒーター23との間の熱移動を遮断する。図8では遮熱プレート57の待機時と伸長遮熱時の位置関係が示されている。
蒸発促進用ヒーター群27のヒーターガード35は掛止用切欠き37、37が支持軸39から外して脱着させるようになっており、その脱着に必要な移動を確保するために、蒸気パン47との間には少し隙間が設けられており、そこから赤外線ヒーター23が少し露出しているが、遮熱プレート57が遮断するので、生地皿55が接近しても、生地に悪影響を及ぼすことが阻止される。また、遮熱プレート57が最大伸長すると、麺棒17、17どうしの間に入り込み、ヒーターガード35の上側縁と、反射板21との間から、生地皿55方向に向かう赤外線ヒーター23の熱線を遮断できる。
【0031】
また、作業者が扉をあけて焼成室内に手を伸ばして作業する場合もあるが、その場合にも、この遮熱プレート57の伸長による熱線の遮断により、作業者への熱に対する負担も減らすことができる。
【0032】
電熱式バームクーヘン製造装置1では、熱量をコントロールし易く、ガス燃焼式よりも、むしろしっとりと生地を焼き上げることができる。
また、水蒸気Mを蒸気ジェネレータ45の作動により機械的に生成しており、その量は容易に変更可能であることから、乾燥焼きも可能となっている。
更に、水滴Sも焼成室内に結果的に供給されることになるが、速やかに蒸発するので、排水構造が不要となっている。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…バームクーヘン製造装置 3…筐体 5…下段側筐体
7…上段側筐体 9…支持柱 11…車輪 13…ホルダー板
15…(ホルダー板用)回転軸 17…麺棒 19…(麺棒用)回転軸
21…反射板 23…赤外線ヒーター 25…焼成用ヒーター群
27…蒸発促進用ヒーター群 29…ヒーターガイドフード
31…凹底面 33…凹側面 35…ヒーターガード
37…掛止用切欠き 39…支持軸 41…蒸気パイプ 43…蒸気噴射孔
45…蒸気ジェネレータ 47…蒸気パン 49…凹底面
51、53…凹側面 55…生地皿 57…遮熱プレート 59…ガイド
M…水蒸気 S…水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8