IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

特許7113507活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置
<>
  • 特許-活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置 図1
  • 特許-活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置 図2
  • 特許-活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置 図3
  • 特許-活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】活性ガス供給システムとそれを用いた半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018186185
(22)【出願日】2018-09-29
(65)【公開番号】P2020057671
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】特許業務法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】北野 真史
(72)【発明者】
【氏名】饗庭 大輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0082826(US,A1)
【文献】国際公開第2007/072708(WO,A1)
【文献】特開2009-049305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を活性ガスで処理するチャンバへ該活性ガスを供給するシステムであって、
前記活性ガスの供給量を制御する質量流量制御装置と、該質量流量制御装置を制御するコントローラと、半導体基板の処理の際の前記活性ガスの前記チャンバの内壁との推定反応量を記憶する記憶装置とを含み、
前記コントローラは、半導体基板の処理の際、前記推定反応量に基づいて、前記供給量を補正するように前記質量流量制御装置を制御する、システム。
【請求項2】
前記推定反応量は、処理レシピごとに、かつ、処理ロットの最初の少なくとも所定枚数までは半導体基板ごとに設定され、前記供給量の補正を処理レシピごとに、かつ、半導体基板ごとに実施する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記推定反応量は、ガス封止テストと実流量テストの少なくとも一方から事前に求めたもので、
前記ガス封止テストは、前記チャンバ内を対象のガスで満たして密閉状態にし、所定時間放置したときのチャンバ内の圧力の低下量から前記推定反応量を求めるものであり、
前記実流量テストは、前記チャンバの下流側のバルブを閉じ、前記質量流量制御装置により対象のガスを所定の設定流量でチャンバに流入させたときに測定されるチャンバ内の単位時間あたりの圧力上昇から実流量を求め、前記設定流量と前記実流量との差から前記推定反応量を求めるものである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記チャンバの内部の圧力を測定する圧力計と、該チャンバの上流側と下流側を開閉するバルブとをさらに含み、
前記コントローラは、前記反応量を測定するために、前記圧力計を読み取りながら、前記質量流量制御装置と前記バルブを制御して、前記ガス封止テストと前記実流量テストの少なくとも一方を実施する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記活性ガスがフッ化水素ガスである、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のシステムを含む半導体製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で用いられるフッ化水素(以下HFという)等の活性のガス供給システム、詳しくは、半導体製造装置構成材料との活性ガスの反応量を考慮してガス流量を補正できる機能を有する活性ガス供給システムと、それを用いた半導体製造装置に関する。
尚、本明細書で「反応」とは、化学反応のみならず吸着や付着等も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
HFガス等の活性ガスは、様々な処理工程、例えば、半導体製造工程においてシリコン酸化膜のエッチング処理などに用いられている。このような処理工程においては、製品品質の均一化のために処理速度を均一にする必要があり、このため、処理チャンバへ流入させる活性ガスについては質量流量制御装置等を用いて精密な質量流量制御が行われている。
【0003】
しかし、活性ガス、特にHFガスは、様々な金属の表面に吸着したり、その金属と反応したりすることが知られている。HFガスが処理チャンバの内壁を構成する金属への吸着や反応に消費されると、処理チャンバへ流入させるHFガスの質量流量を精密に制御しても、本来の処理に用いられるHFガスの質量が減少して、処理速度が変動してしまうという問題があった。特に、半導体基板の枚葉処理において処理ロットの最初の数枚の処理速度が低下することがあった(例えば、特許文献1)。
この問題は、半導体製造工場のグレーティング床に設置できるように装置の軽量化が求められ、ステンレス鋼に代わってより軽い金属であるアルミ製等のチャンバも用いられるようになったことにより、特に顕在化してきている。
【0004】
この問題に対して、特許文献1は、Al製チャンバの内面にHFが付着することを低減するために、前記チャンバの内面のAlの表面酸化処理を廃止するともに、前記Alの表面粗度Raを6.4μm以下にすることを提案している。
これにより、チャンバ材料へのHFの吸着量が低減したことがHF封止テスト、実流量テスト等で確認され、半導体基板の処理速度(エッチング速度)の変動も低減できたことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4805948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、上記のように、処理チャンバの内壁を構成する金属材料へのHFガスの吸着等の問題を指摘し、その対策として金属材料の表面処理の改善を提示している点で注目すべき文献である。しかし、この対策を既存の半導体製造装置に適用するには、チャンバの交換等が必要で負荷が大きい。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、HF等の活性ガスがチャンバ内壁へ吸着又は反応する問題を考慮し、Use Pointで常に目標の活性ガス流量が得られるよう、チャンバへ供給する活性ガスの流量を補正するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシステムは、半導体基板を活性ガスで処理するチャンバへ該活性ガスを供給するシステムであって、
前記活性ガスの供給量を制御する質量流量制御装置と、該質量流量制御装置を制御するコントローラと、半導体基板の処理の際の前記活性ガスの前記チャンバの内壁との推定反応量を記憶する記憶装置とを含み、
前記コントローラは、半導体基板の処理の際、前記推定反応量に基づいて、前記供給量を補正するように前記質量流量制御装置を制御することを特徴とする。
【0009】
好適には、前記推定反応量は、処理レシピごとに、かつ、処理ロットの最初の少なくとも所定枚数までは半導体基板ごとに設定され、前記供給量の補正を処理レシピごとに、かつ、半導体基板ごとに実施する、構成を採用できる。
【0010】
好適には、前記推定反応量は、ガス封止テストと実流量テストの少なくとも一方により事前に求めたもので、
前記ガス封止テストは、前記チャンバ内を対象のガスで満たして密閉状態にし、所定時間放置したときのチャンバ内の圧力の低下量から前記推定反応量を求めるものであり、
前記実流量テストは、前記チャンバの下流側のバルブを閉じ、前記質量流量制御装置により対象のガスを所定の設定流量でチャンバに流入させたときに測定されるチャンバ内の単位時間あたりの圧力上昇から実流量を求め、前記設定流量と前記実流量との差から前記推定反応量を求めるものである、
構成を採用できる。
【0011】
好適には、前記システムは、前記チャンバの内部の圧力を測定する圧力計と、該チャンバの上流側と下流側を開閉するバルブとをさらに含み、
前記コントローラは、前記反応量を測定するために、前記圧力計を読み取りながら、前記質量流量制御装置と前記バルブを制御して、前記ガス封止テストと前記実流量テストの少なくとも一方を実施する、構成を採用できる。
【0012】
好適には、前記活性ガスがHFガスである、構成を採用できる。
【0013】
本発明の半導体製造装置は、上記のいずれかのシステムを含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コントローラは、半導体基板の処理の際、推定反応量に基づいて、供給量を補正するように質量流量制御装置を制御するので、Use pointで目標の活性ガスの流量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態の封止テストの結果を示す表とグラフであり、(a)はSUS、(b)は材質A、(c)は材質Bでのそれぞれの結果を示すグラフであり、(d)は結果をまとめた表である。
図3】本発明の第1の実施形態の実流量テストの結果を示す表である。
図4】本発明の第2の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本実施形態のシステムは、事前にオペレータが手動でチャンバの内壁との推定反応量を求めておき、半導体基板の処理の際、本システムがこの推定反応量に基づいて、活性ガスであるHFガスの供給量を補正するものである。
図1は、本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
本実施形態のシステム100は、質量流量制御装置1と、コントローラ2と、記憶装置3とを含む。
【0018】
質量流量制御装置1は、HF供給源4にガス供給系5を通して接続され、下流のチャンバ6に供給されるHFガスの質量流量を制御するものである。
コントローラ2は、質量流量制御装置1の動作を制御するものである。コントローラ2は、本システム専用のものである必要はなく、半導体製造装置の一部又は全体を制御するものであってもよく、複数の半導体製造装置を統括するホストコンピュータであってもよい。
記憶装置3は、事前に手動で求めた前記活性ガスの前記チャンバ6の内壁との推定反応量を記憶するものである。記憶装置3も、本システム専用のものである必要はなく、半導体製造装置の記憶装置でよく、コントローラ2に内蔵されていてもよい。
【0019】
推定反応量は、単位時間あたりにチャンバ6の内壁に吸着等によって消費されるガスの量で、単位は質量流量と同じくsccmである。推定反応量は、処理レシピごとに、かつ、処理ロット内の少なくとも最初の5枚の半導体基板については、1枚目用、2枚目用、などと基板ごとに設定され、例えば推定反応量テーブルとして保存される。その理由は、後述するように、HFガスのチャンバ6内壁との反応量が、ロット処理開始直後に最大で、その後急激に減少する傾向があるため、各基板処理時の前記反応量は、その基板がロットの何番目に処理されるかによって変わるからである。また、反応量は基板処理時の処理条件(HFガス流量、圧力、温度、処理時間等)によって変動しうるからである。
【0020】
推定反応量は、本実施形態では、事前にオペレータが手動で、後述するガス封止テストと実流量テストの少なくとも一方を事前に実施して求め、前記記憶装置3に保存しておく。保存する操作は、コントローラ2の操作パネル(図示省略)から行っても良く、通信回線(図示省略)を通して行ってもよい。
【0021】
(実施例)
次に、ガス封止テストと実流量テストの実施例を以下に示す。
本実施形態では、比較のために、ステンレス鋼(SUS316L-EP)、材質A、材質Bの3種類のチャンバ材質についてテストを行った。また、妥当性検証のために、Nガスでの比較テストも行った(N供給ラインは図示省略)。
尚、材質A、Bについては、実際にその材質でチャンバを製作する代わりに、HFガスと反応しないと考えられるステンレス鋼(以下、単に「SUS」という)のチャンバ6の中に材質A,Bの試験片を入れて、模擬的にテストを行った。
【0022】
(1)ガス封止テスト
(1.1)手順
チャンバ6内にHFガスを導入し、圧力設定を20Torrにし(温度設定は25℃)、チャンバ6内を圧力20TorrのHFガスで満たされた状態にして、チャンバ上流側バルブV1及び下流側バルブV2を閉じて2時間放置し、圧力計Pでチャンバ内部の圧力をモニターした。
尚、この圧力及び温度は、処理レシピに指定された圧力及び温度と同じにするのが好ましい。これにより、テスト時も基板処理時と同様の反応量が想定されるからである。
【0023】
(1.2)結果
ガス封止テストの結果を図2(a)~(d)に示す。
まず、SUS(チャンバ6に試験片なし)では、Nガス封止テスト及びHFガス封止テストにおいて、チャンバ6内圧力20Torrで2時間放置しても、チャンバ6内圧力の低下は最大でも0.11Torrとほとんど見られなかった(図2(a))。これは、Nガス及びHFガスが、SUSチャンバ6の内壁に殆ど反応しなかったことを示している。
一方、材質Aと材質Bでは、Nガス封止テストでは、殆ど低下がみられなかったが、HF封止テストでは、材質Aで18.1Torrと顕著な圧力低下がみられ、材質Bでも1.89Torrの圧力低下がみられた(図2(b)(c))。これは、封止テスト中に、材質A,Bの表面に反応したHFガスの量が多く、その結果チャンバ6内にガスとして存在するHFの量が減少したためと考えられる。尚、図2(b)の圧力曲線が当初急激に低下し、その後落ち着いていることから、HFガスの材質Aとの時間当たりの反応量は、テスト開始時が最大で、その後急激に減少したと考えられる。
【0024】
(1.3)推定反応量の算出
ガスの変化量Δn(単位はmol)と所定時間Δt(単位は分)とその間の圧力の低下量ΔP(単位は1気圧に対する割合)とチャンバ6内の体積V(単位はcc)とチャンバ6の絶対温度T(単位はK)から、流量換算した時間当たりの推定反応量Q(単位はsccm)を以下の式で求める。
Q1=(Δn/Δt)・V=ΔP・V・273/(T・Δt)
前記所定時間Δtは、処理レシピに指定された各半導体基板のHF処理の処理時間と同じにすることが好ましい。例えば、処理時間が1分であるとき、前記所定時間Δtを1分とし、封止テストの開始から開始後1分までの反応量Q1を1枚目の基板処理時の推定反応量、開始後1分から2分までの反応量Q1を2枚目の基板処理時の推定反応量とする。これにより、ロットの処理開始直後に最大でその後急激に低下すると考えられる推定反応量を、各半導体基板の処理に適切に適用することができる。
【0025】
(2)実流量テスト(ビルドアップ法)
(2.1)手順
チャンバ6の下流側バルブV2を閉じ、質量流量制御装置1の設定流量Q2を300sccm(set point 100%)にしてHFをチャンバ6に流入させ、圧力の上昇を圧力計Pでモニターした。ガスの変化量Δn(単位はmol)と所定時間Δt(単位は分)とその間の圧力の上昇ΔP(単位は1気圧に対する割合)とチャンバ6内の体積V(単位はcc)とチャンバ6の絶対温度T(単位はK)から、実流量Q3(単位はsccm)を以下の式で求めた。
Q3=(Δn/Δt)・V=ΔP・V・273/(T・Δt)
この測定を、チャンバ6内を大気圧解放せずに5回繰り返して行った。
なお、この時の設定流量Q2及び初期圧力は、処理レシピに指定されたHFガスの流量及び圧力と各々同じにすることが好ましい。これにより、テスト時も基板処理時と同様の反応量が想定されるからである。
【0026】
(2.2)結果
実流量テストの結果を図3に示す。
SUS(チャンバ6に試験片なし)では、Nガス実流量テスト及びHFガス実流量テストにおいても、設定流量Q2に対する実流量Q3のずれは、5回とも小さかった(Nガス実流量テストで最大0.02%、HFガス実流量テストで最大0.03%のずれ)。
一方、材質Aと材質Bでは、Nガス実流量テストでは、流量設定値に対する流量実測値のずれは最大0.07%と小さかったが、HFガス実流量テストでは、条件Aでマイナス側に最大48.65%最小でも12.56%と極めて大きなずれが見られ、条件Bでもマイナス側に最大0.77%のずれがみられた。
これは、HFガスは材質A,Bの表面に反応又は付着して消費されたため、その結果チャンバ6内にガスとし存在するHFの量が減少したためと考えられる。
なお、HFガス実流量テストの特に材質Aでは、5回の繰り返し測定のうち第1回目の測定ではマイナス側に48.65%と極めて大きなずれが見られたが、回数を重ねるにつれて、ずれ幅は縮小した。この原因は、おそらく第1回目の測定時に反応又は付着してHFが材質A表面に残存し、第2回目以降の測定時には新たなHFの反応や吸着を妨げたためと考えられる。
【0027】
(2.3)推定反応量の算出
実流量Q3と設定流量Q2との差Q2-Q3を推定反応量Q4とする。
したがって、図3の表の「誤差」の符号反転した値が、推定反応量Q4になる。
前記所定時間Δtは、各半導体基板のHF処理の処理時間と同じにすることが好ましい。その場合、第1回目の測定結果から求めた推定反応量Q4を1枚目の基板処理時の推定反応量、第2回目の測定結果から求めた推定反応量Q4を2枚目の基板処理時の推定反応量とするとこができる。これにより、ロットの処理開始直後に最大でその後急激に低下すると考えられる推定反応量を、各半導体基板の処理に適切に適用することができる。
【0028】
(3)半導体基板処理時の動作
コントローラ2は、記憶装置に3に記憶された推定反応量テーブルから、実行するレシピ及び処理する半導体基板に関連付けられた推定反応量を読み取り、質量流量制御装置1に、レシピ指定の設定流量にこの推定反応量を加算した流量を新たな流量設定値として指示する。質量流量制御装置1は、この新たな流量設定値に基づいて、HFガスをチャンバ6に供給する。
【0029】
(第2の実施形態)
本実施形態のシステムは、チャンバ6の内壁との推定反応量を事前にシステムが自動で求め、半導体基板の処理の際、この推定反応量に基づいて、HFガスの供給量を補正するものである。
【0030】
図4は、本発明の第2の実施形態のシステムを示すブロック図である。尚、第1の実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図4に示すように、本システム200は、質量流量制御装置1と、コントローラ2と、記憶装置3と、圧力計Pと、バルブV1及びV2と、排気量調整バルブV3を含む。
【0031】
質量流量制御装置1、コントローラ2及び記憶装置3は、第1の実施形態と同様であるが、コントローラ2は、さらに圧力計Pの圧力をモニターするとともに、バルブV1及びV2並びに排気量調整バルブV3の動作を制御する。
圧力計Pは、チャンバ6内部の圧力を測定するもので、測定した圧力を前記コントローラ2が読み取り可能なデータとして出力するようになっている。
バルブV1及びV2は、各々チャンバ6の上流側及び下流側に設けられ、供給ライン、排気ラインを開閉するものである。
排気量調整バルブV3は、チャンバ6内の圧力を調整するために、チャンバ6と排気系7との間に設けられ、チャンバ6からの排気量を調整するものである。但し、バルブV2が排気量調整機能を持っている場合、この排気量調整バルブV3は必ずしも必要ない。
なお、上記各構成要素やそれらを繋ぐ信号線も、既に半導体製造装置に設けられていて、通常の半導体基板処理に用いられるものであってよい。
【0032】
次に、このように構成された本実施形態のシステム200の動作について説明する。
本実施形態のシステム200の動作は、ガス封止テスト及び実流量テストの少なくとも一方を手動の代わりにコントローラ2が自動で実施することを除いて、第1の実施形態のシステム100(図1参照)の動作と同じである。
【0033】
(1)ガス封止テスト
コントローラ2は各構成要素を制御して以下の動作を実行する。
(1.1)手順
チャンバ6内にHFガスを導入し、圧力設定を20Torrにし(温度設定は25℃)、チャンバ6内を圧力20TorrのHFで満たされた状態にして、チャンバ上流側バルブV1及び下流側バルブV2を閉じて2時間放置し、圧力計Pでチャンバ6内部の圧力をモニターする。
このとき、圧力及び温度は、処理レシピに指定された基板処理時の圧力及び温度と同じ設定する。
【0034】
(1.2)推定反応量の算出
ガスの変化量Δn(単位はmol)と所定時間Δt(単位は分)とその間の圧力の低下量ΔP(単位は1気圧に対する割合)とチャンバ6内の体積V(単位はcc)とチャンバ6の絶対温度T(単位は度)から、流量換算した時間当たりの推定反応量Q(単位はsccm)を以下の式で求める。
Q1=(Δn/Δt)・V=ΔP・V・273/(T・t)
前記所定時間Δtは、処理レシピに指定された各半導体基板のHF処理の処理時間と同じに設定され。封止テストの開始から開始後tまでの反応量Q1を1枚目の基板処理時の推定反応量、開始後tから2tまでの反応量Q1を2枚目の基板処理時の推定反応量とする。以下同様に、各基板処理時の推定反応量を求め、処理レシピと関連付けて、記憶装置3に記憶する。
【0035】
(2)実流量テスト(ビルドアップ法)
コントローラ2は各構成要素を制御して以下の動作を実行する。
(2.1)手順
チャンバ6の下流側バルブV2を閉じ、質量流量制御装置1の設定流量Q2を300sccm(set point 100%)にしてHFをチャンバ6に流入させ、圧力の上昇を圧力計Pでモニターする。ガスの変化量Δn(単位はmol)と所定時間Δt(単位は分)とその間の圧力の上昇ΔP(単位は1気圧に対する割合)とチャンバ6内の体積V(単位はcc)とチャンバ6の絶対温度T(単位はK)から、実流量Q3(単位はsccm)を以下の式で求める。
Q3=(Δn/Δt)・V=ΔP・V・273/(T・Δt)
この測定を、チャンバ6内を大気圧解放せずに5回繰り返して行なう。
【0036】
(2.2)推定反応量の算出
実流量Q3と設定流量Q2との差Q2-Q3を推定反応量Q4とする。
前記所定時間Δtは、各半導体基板のHF処理の処理時間と同じに設定される。そして、第1回目の測定結果から求めた推定反応量Q4を1枚目の基板処理時の推定反応量、第2回目の測定結果から求めた推定反応量Q4を2枚目の基板処理時の推定反応量とする。
以下同様に、各基板処理時の推定反応量を求め、処理レシピと関連付けて、記憶装置3に記憶する。
【0037】
(3)半導体基板処理時の動作
第1の実施形態と同様に、コントローラ2は、記憶装置に3に記憶された推定反応量テーブルから、実行するレシピ及び処理する半導体基板に関連付けられた推定反応量を読み取り、質量流量制御装置1に、レシピ指定の設定流量にこの推定反応量を加算した流量を新たな流量設定値として指示する。質量流量制御装置1は、この新たな流量設定値に基づいて、HFガスをチャンバ6に供給する。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
例えば、上記各実施形態では、処理レシピごとに、かつ、ロット内の半導体基板ごとに推定反応量を設定しているが、これに限定されず、処理レシピごとにロット内全基板に共通の推定反応量を設定してもよく、ロット内の基板ごとに全レシピ共通の推定反応量を設定してもよく、全レシピ全基板に共通の推定反応量を設定してもよい。
【0039】
また、上記第2の実施形態のシステムでは、封止テストと実流量テストの両方ができるようになっているが、これに限定されず、どちらか1つだけを行えるシステムでもよい。
【0040】
また、上記各実施形態では、封止テストと実流量テスト時の圧力、温度、測定時間等を処理レシピに指定された処理条件に合わせて設定したが、これに限定されず、他の適切な条件で行ってもよい。
【0041】
また、上記各実施形態では、半導体基板処理時に推定反応量をそのまま補正量としているが、これに限定されず、例えば、推定反応量に適切な係数を掛けたものを補正量としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 :質量流量制御装置
2 :コントローラ
3 :記憶装置
4 :HF供給源
5 :ガス供給系
6 :チャンバ
7 :排気系
100:第1の実施形態のシステム
200:第2の実施形態のシステム
P :圧力計
T :温度計
V1~V2:バルブ
V3 :排気量調整バルブ
図1
図2
図3
図4