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特許7113525センサ付き継手及びこれを用いた監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】センサ付き継手及びこれを用いた監視システム
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20220729BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20220729BHJP
   F16L 21/04 20060101ALI20220729BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
F16J15/00 E
F16J15/08 L
F16L21/04
F16L55/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019514516
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2018016551
(87)【国際公開番号】W WO2018199063
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017090552
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-286190(JP,A)
【文献】特開平10-176772(JP,A)
【文献】特開昭51-117104(JP,A)
【文献】特開2012-212854(JP,A)
【文献】特開2011-112065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00
F16J 15/08
F16L 21/04
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を形成する継手部材と、
前記継手部材に対向し、前記継手部材との間にシールを形成する金属製ガスケットと、
前記継手部材をねじ合わせにより締結する締結手段とを備え、
前記継手部材のガスケットとの対向面が、第一の平面と、前記第一の平面より突出した環状のシール突起と、前記第一の平面と比べ前記ガスケットとの距離が離れた位置に形成された第二の平面と、からなり、
前記第二の平面又は前記ガスケットの第二の平面との対向部の少なくとも何れか一方にセンサが設けられているシール構造。
【請求項2】
前記センサは、歪みセンサ又は圧力センサであることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第2の平面が前記環状のシール突起より外側にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール構造。
【請求項4】
流路を形成する継手部材と、
前記継手部材に対向する円板状の閉止板と、
前記継手部材と前記閉止板とをねじ合わせにより連結する締結手段を備えた閉止栓において、
前記継手部材の前記閉止板との対向面が、第一の平面と、前記第一の平面より突出した環状のシール突起と、前記第一の平面と比べ前記円盤状の閉止板との距離が離れた位置に形成された第二の平面と、からなり、
前記第二の平面及び前記ガスケットの前記第二の平面との対向位置の少なくとも何れか一方にセンサが設けられている閉止栓。
【請求項5】
前記センサは歪みセンサ又は圧力センサであることを特徴とする請求項に記載の閉止栓。
【請求項6】
前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第2の平面が前記環状のシール突起より外側にあることを特徴とする請求項又はに記載の閉止栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体流路をつなぐ継手等であって、継手等の緩みを検知することができるセンサ付き継手等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会に向け自動車用等の燃料電池の燃料である水素ガスを供給するための水素ステーションが普及しつつあり、ここで用いられる配管設備においてはたくさんの管継手などが用いられている。この配管設備を流れる水素ガスは-40℃で70MPa以上という超低温、超高圧の条件で使用されるので、配管設備に用いられる継手は、このような流体にも耐え得る性能を有していることが望まれている。
【0003】
このような水素ステーション向けに用いられる継手として、シール性能に対する信頼から、従来は半導体製造装置向けとして用いられてきた金属ガスケットを用いる継手の使用が検討されている。(特許文献1)
上記継手に限らず、継手は、流体の輸送、振動等により時間の経過とともに緩みが発生し、特に水素ステーションにおいては大きな問題となっている。
【0004】
継手の緩みの問題に対して、通常は、定期的にトルクレンチ等を用い、増し締めを行ってメンテナンスを行っているが、これは人手を要し、緩みを生じていない継手も全てチェックが必要であるため、多大な時間を要する。
【0005】
緩みが生じた継手のみに対し増し締めを行うなら、緩みの有無を適宜把握できることが必要であり、例えば継手に緩みの有無を検知するためのセンサを設けることが考えられる。
【0006】
センサが設けられた継手としては、特許文献2に開示されたものがあり、いわゆる2圧縮リング継手と呼ばれるタイプの継手において、ネジ付き本体及びネジ付きナット、前部フェルール、後部フェルール及びネジ付き本体の首部分にセンサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3517719号公報
【文献】特許第6006446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、金属ガスケットを用いた継手等に対して、緩みを検知するためのセンサを設けたセンサ付き継手等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、流路を形成する継手部材と、前記継手部材に対向し、前記継手部材との間にシールを形成するガスケットとを備え、前記継手部材のガスケットとの対向面が、第一の平面と、前記第一の平面より突出した環状のシール突起と、前記第一の平面と比べ前記ガスケットとの距離が離れた位置に形成された第二の平面と、からなり、前記第二の平面又は前記ガスケットの第二の平面との対向部の少なくとも何れか一方にセンサが設けられているシール構造である。
【0010】
この第1の発明におけるシール構造では、第二の平面又は前記ガスケットの第二の平面との対向部の少なくとも何れか一方にセンサが設けられているので、例えば、継手等が緩み始めると備えられたセンサが面圧等の低下を感知することができる。流体のシール性に関与するシール部は、第一の平面と環状のシール突起部であるので、センサが面圧等の低下を検知した段階では、継手のシール性は健全な状態である。
【0011】
したがって、設けられたセンサがある一定値以下の面圧等を検知した場合に警報を発するようにしておけば、数多くの継手を使用している水素ステーション等において、警報が発せられた継手のみを増し締め等のメンテナンスをすればよく、従来のように定期的に全継手をチェックしてメンテナンスを行う必要がなくなるため、大幅なメンテナンス時間の削減をすることができる。
【0012】
第2の発明は、前記センサは、歪みセンサ又は圧力センサであることを特徴とする第1の発明に記載のシール構造である。
【0013】
シール構造が緩む原因は、継手部材とガスケットを締結する締結手段がねじの場合であれば、ねじの緩む方向への微小な回転又は温度変化による材料収縮であり、ねじが緩むとねじの締結時に発生した歪みや継手部材等の面圧の低下がおこり、この歪みや面圧の低下等をセンサで検出することによって継手の緩みを確実に検知することができる。
【0014】
第3の発明は、前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第二の平面が前記環状のシール突起より外側にあることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載のシール構造である。
【0015】
前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第二の平面が前記環状のシール突起より外側にあり、前記第二の平面又は前記ガスケットの第二の平面との対向部の少なくとも何れか一方にセンサが設けられているので、このセンサが緩み等を検知した段階では、前記第一の平面部分及び前記環状のシール突起部分によるシール部は健全な状態を維持している。
【0016】
第4の発明は、流路を形成する一対の継手部材と、前記一対の継手部材との間に介在する環状のガスケットと、前記一対の継手部材を連結する締結手段を備えた継手において、前記継手部材の前記ガスケットとの対向面が、第一の平面と、前記第一の平面より突出した環状のシール突起と、前記第一の平面と比べ前記ガスケットとの距離が離れた位置に形成された第二の平面と、からなり、前記第二の平面および前記ガスケットの前記第二の平面との対向位置の少なくとも何れか一方にセンサが設けられている継手である。
【0017】
第5の発明は、前記センサは歪みセンサ又は圧力センサであることを特徴とする第4の発明に記載の継手である。
【0018】
第6の発明は、前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第2の平面が前記環状のシール突起より外側にあることを特徴とする第4の発明又は第5の発明に記載の継手である。
【0019】
第7の発明は、流路を形成する継手部材と、前記継手部材に対向する円板状の閉止板と、前記継手部材と前記閉止板とを連結する締結手段を備えた閉止栓において、前記継手部材の前記閉止板との対向面が、第一の平面と、前記第一の平面より突出した環状のシール突起と、前記第一の平面と比べ前記円板状の閉止板との距離が離れた位置に形成された第二の平面と、からなり、前記第二の平面および前記閉止板の前記第二の平面との対向位置の少なくとも何れか一方にセンサが設けられている閉止栓である。
【0020】
第8の発明は、前記センサは歪みセンサ又は圧力センサであることを特徴とする請求項7に記載の閉止栓である。
【0021】
第9の発明は、前記第一の平面が前記環状のシール突起より内側にあり、前記第2の平面が前記環状のシール突起より外側にあることを特徴とする請求項7又は8に記載の閉止栓である。
【0022】
第10の発明は、第4の発明乃至第6の発明の継手を有する流体供給設備の前記継手の緩みを監視する監視システムであって、前記センサからの信号を受信する通信部と、前記センサから受信した信号を所定の値と比較し継手の締め付け状態の合否を判定する判定部と、を有することを特徴とする監視システムである。
【0023】
第10の発明によると、第4の発明乃至第6の発明に記載の継手に取り付けられたセンサで検知された信号を有線又は無線によって、継手に関連付けられた回路又は継手から離れた外部の回路で信号を受信することによって、水素ステーション等に多数使用されている継手の緩みの管理を集中して行うことができる。
【0024】
この第10の発明によれば、特定の識別番号で識別されたセンサ付き継手に備えられたセンサが検知した面圧や歪みの値を信号として有線又は無線でセンサの識別番号付きでサーバ等に送られるので、サーバ等内でその信号を処理することによって、流体供給設備などのどの継手の面圧又は歪みがどのような値であり、現在メンテナンスが必要かどうかを監視者に自動で伝えることができる。この自動化により、これまで全ての継手を定期的に全数検査していた手間を大幅に削減することができ、かつ、流体漏れが発生する前に確実に増し締め等のメンテナンスを行うことができる。
【0025】
第11の発明は、締め付け状態が不合格である場合、警告 を行うことを特徴とする第10の発明に記載の監視システムである。
【0026】
監視システムが自動的に警告を発するので、監視者はモニター等の監視を常に行う必要がなくなる。
【0027】
第12の発明は、第11の発明の監視システムを有する流体供給装置であって、警告を行うと共に前記継手を含む流路に設けられたバルブの閉止又は開放を行うことを特徴とする流体供給装置である。
【0028】
第12の発明によれば、流体供給装置に備えられている継手のうち特定の継手が緩んだ場合、警告を行った場合において、監視者が夜間等のために不在であっても、流路に設けられたバルブの閉止又は開放を行うことによって流体供給装置から流体が漏れることを自動的に防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明のセンサ付き継手等によると、数多くの継手に対して、継手の緩みを確実に流体の漏洩前に検知し、容易に手間がかからないメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、この発明によるセンサ付き継手の第1実施例の全体構成を示す縦断面図である。
図2図2は、第1実施例の要部の締付け前の形状を示す拡大縦断面図である。
図3図3は、第1実施例の要部の締付け後の形状を示す拡大縦断面図である。
図4図4は、第1実施例のセンサ付き継手を締め付けた時のナットの回転角度と締め付けトルクの関係を示すグラフである。
図5図5は、この発明によるセンサ付き継手の第2実施例の全体構成を示す縦断面図である。
図6図6は、第2実施例の要部の締付け前の形状を示す拡大縦断面図である。
図7図7は、この発明によるセンサ付き継手の第3実施例の全体構成を示す縦断面図である。
図8図8は、センサ付き継手を備える流体供給設備の継手の緩みを監視するシステム図である。
図9図9は、監視システムのステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等及び各種製造条件は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0032】
図1から図3までは、この発明によるセンサ付き継手の第1実施例である管継手タイプを示している。なお、図1及び図2は、センサ付き継手の締め付け前の状態を示し、図3は、締め付けた後における形状を示している。
【0033】
図1に示すように、センサ付き継手は、第1管状継手部材(1)及び第2管状継手部材(2)と、第1管状継手部材(1)の右端面と第2管状継手部材(2)の左端面との間に介在させられる環状ガスケット(3)と、環状ガスケット(3)を保持しかつ第1管状継手部材(1)に保持されるリテーナ(5)とを備えており、第2継手部材(2)側から第1継手部材(1)にねじはめられたナット(4)により、第2継手部材(2)が第1継手部材(1)に固定されている。各継手部材(1)(2)の突合わせ端面の半径方向略中央部には、環状のシール突起(7)(8)がそれぞれ形成され、同外周部には、環状の締過ぎ防止用突起(9)(10)がそれぞれ形成されている。
【0034】
ガスケット(3)の両端面は、軸方向に対して直角な平坦面とされている。ガスケット(3)の外周面には、外向きフランジよりなる抜止め部(3b)が設けられている。
【0035】
両継手部材(1)(2)及びガスケット(3)は、SUS316L製である。両継手部材(1)(2)の内径とガスケット(3)の内径とは、等しくなされている。両継手部材(1)(2)及びガスケット(3)の材質としては、SUS316L以外のステンレス鋼やその他の金属が適宜採用される。
【0036】
ナット(4)の右端部には内向きフランジ(11)が形成されており、このフランジ(11)の部分が第2継手部材(2)の周囲にはめられている。ナット(4)の左端部の内周にはめねじ(12)が形成されており、これが第1継手部材(1)の右側に形成されたおねじ(14)にねじはめられている。第2継手部材(2)の左端部外周には外向きフランジ(13)が形成されており、これとナット(4)の内向きフランジ(11)との間に共回り防止用のスラスト玉軸受(6)が介在させられている。
【0037】
本実施例では、センサ(S)が、第1管状継手部材(1)の右端面に1個、環状ガスケット(3)の右端面に1個埋め込まれている。
【0038】
センサを設ける方法は、センサを取り付ける継手部材やガスケットに凹所を設け、その中にセンサを設置して接着剤等を用いて埋め込む方法、凹所にセンサを圧入嵌合する方法、ロウ付けによる方法、粉末冶金焼結による方法などの種々の方法によっておこなうことができるが、それらに限定されることはない。
【0039】
センサからの信号を有線でセンサ付き継手の外部へ取り出す場合は、図面には図示していないが、継手部材やガスケットに信号線を通す貫通孔があけられている。
【0040】
図2は、この発明による管継手の第1実施例の要部を詳しく示すもので、各シール突起(7)(8)は、断面が円弧状であり、各突合わせ端面におけるシール突起(7)(8)の内外両側には、内側平坦面(15)(16)及び外側平坦面(17)(18)が形成されている。内側平坦面(15)(16)は、外側平坦面(17)(18)より左右方向ガスケット(3)側に突出させられている。
【0041】
図2における内側平坦面(15)(16)が前記第一の平面に相当し、外側平坦面(17)(18)が前記第二の平面に相当する。
【0042】
各締過ぎ防止用環状突起(9)(10)は、シール突起(7)(8)よりも左右方向ガスケット(3)側に突出させられており、適正な締付けよりもさらに締付けようとしたさいに、リテーナ(5)をその両面から押圧するようになされている。各締過ぎ防止用環状突起(9)(10)は組立て前の各継手部材(1)(2)のシール突起(7)(8)を保護しており、これにより、シール性に重要な影響を及ぼすシール突起(7)(8)が傷付くことが防止されている。
【0043】
図2は、ナット(4)を手で締め付けた状態を拡大して示すものであるが、同図に示すように、ナット(4)が締付けられていくと、シール突起(7)(8)の最突出端がガスケット(3)の端面にまず当接するが、このときには各継手部材(1)(2)の内側平坦面(15)(16)とガスケット(3)の左右端面との間には、それぞれ第1隙間(G1)が存在しており、各継手部材(1)(2)の外側平坦面(17)(18)とガスケット(3)の左右端面との間には、これよりも大きい第2隙間(G2)がそれぞれ存在している。また、締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との間には、さらに大きい第3隙間(G3)が存在している。すなわち、G1<G2<G3となっている。手で締め付けた状態からスパナ等によりさらにナット(4)を締付けていくと、ガスケット(3)が変形し、まず第1隙間(G1)が0となる。このとき、第2隙間(G2)は0ではない。そして、適正な締付け時には、図3に示すように、第2隙間(G2)も0となって、内側平坦面(15)(16)がガスケット(3)の左右端面の内縁部に密接して、各継手部材(1)(2)の内周(1a)(2a)とガスケット(3)の内周(3a)とがほぼ面一となる。すなわち液だまりとなる凹所は存在しなくなる。なお、締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との間の第3隙間(G3)は、このときでも0にはなっていない。そして、これよりさらに締付けると、締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との間の第3隙間(G3)が0となり、締付けに対する抵抗力が非常に大きくなり、締過ぎが防止される。
【0044】
上記第1実施例において、各継手部材(1)(2)のシール突起(7)(8)は、シール突起(7)(8)の基端部の外周面が、軸方向にのびるようにしたものである。各シール突起(7)(8)の断面の輪郭形状は、各継手部材(1)(2)の突き合わせ端面から半径方向外側にのびる円弧部(7b)( 8b)と、同端面から軸方向にのびかつ円弧部(7b)(8b)の先端に連なる直線部(7a)(8a)とよりなる。
【0045】
図4は、第1実施例のものについて、ナット(4)の回転角度を縦軸に取り、締付トルクを横軸に取って両者の関係を調べたものである。第1実施例のセンサ付き継手は、手で締付けたときの各締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との距離を0.15mmとしたものである。したがって、外側平坦面(17)(18)がガスケット(3)に当接したときの締過ぎ防止突起(9)(10)とリテーナ(5)との距離が、計算上0.03mmとなっている。そして、手で締付けた状態を基準として約85°ナットを回転させたときに、締過ぎ防止突起(9)(10)とリテーナ(5)とが接触し、これによりグラフの傾きがより水平に近くなっている。したがって、約85°ナット(4)を回転させたときの締付けトルクの手応えは非常に大きく、これにより、締付けの作業を行っているものは、締付け終了を感知することができる。
【0046】
図4のグラフを詳しく見ると、ナット回転角度と締め付けトルクをプロットしたグラフが3つの領域に分かれているのがわかる。回転角度0°からθ°で締め付けトルクが0からTの範囲の領域であるAゾーン、回転角度θ°からθ°で締め付けトルクがTからTの範囲の領域であるBゾーン及び回転角度θ°からθ°で締め付けトルクがTからTの範囲の領域であるCゾーンである。
【0047】
Aゾーンは、ナット(4)を手で閉めシール突起(7)(8)の最突出端がガスケット(3)の端面にまず当接したナットの回転角度を原点として、スパナ等によりさらにナット(4)を締付けていくと、ガスケット(3)が変形し、まず第1隙間(G1)が0となるナットの回転角度θ°までの区間である。
【0048】
ナットの回転角度θ°からさらに締め付けると、第2隙間(G2)も0となり、その時のナットの回転角度θ°となる。このナットの回転角度θ°~θ°の区間がBゾーンである。
【0049】
ナットの回転角度θ°からさらに締め付けると、締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との間の第3隙間(G3)が0となり、締付けに対する抵抗力が非常に大きくなる。このときのナットの回転角度をθ°とすると、ナットの回転角度θ°~θ°の区間がCゾーンである。
【0050】
AゾーンからBゾーンへ、さらに、BゾーンからCゾーンへナットを回転するにつれて、図4のプロットした点をつなぐ直線の傾きは小さくなっているのがわかる。これは、AゾーンからBゾーンへ、さらに、BゾーンからCゾーンへと移行するにつれて、少しの回転角度でより大きな締め付けトルクが発生していることを意味している。
【0051】
継手が緩む原因は、実施例1ではナットの緩み又は材料の収縮が原因であり、トルクは図4のグラフの右から左に移行していき、最終的に流体の漏れを発生させることとなる。
【0052】
実施例1で設けられているセンサは、第二の平面である外側平坦面(17)(18)及び/又はガスケット(3)の半径方向における外側平坦面(17)(18)の対向位置にあるので、Cゾーンのナット回転角度と締め付けトルクの関係となり、わずかの緩み角度で締め付けトルクは大きく低下することになり、センサが検知する面圧や歪みも感度良く検知することができる。したがって、半径方向において第2隙間(G2)の位置にセンサを設けておけば感度よく緩みの検知を緩みの初期段階で可能となる。
【0053】
図5は、実施例1のような管状継手ではなく、ブロック継手にセンサを備えた実施例2を示している。同図に示すように、ブロック継手(1)は、互いに連通する流体通路(31a)(32a)を有している第1及び第2のブロック状継手部材(31)(32)と、継手部材(31)(32)同士を結合する締結手段としてのボルト(33)と、ガスケット(3)と、リテーナ(図示せず)と、センサ(S)備えている。
【0054】
実施例2においても実施例1と同じく、図5の要部を拡大した図6に示すように、ボルト(33)を手で締め付けた状態を拡大して示すものであるが、同図に示すように、ボルト(33)を締付けていくと、シール突起(7)(8)の最突出端がガスケット(3)の端面にまず当接する。このときには各ブロック状継手部材(31)(32)の内側平坦面(符号なし)とガスケット(3)の上下端面との間には、それぞれ第1隙間(G1)が存在しており、各ブロック状継手部材(31)(32)の外側平坦面(符号なし)とガスケット(3)の上下端面との間には、これよりも大きい第2隙間(G2)がそれぞれ存在している。また、ブロック状継手部材(31)と(32)との間には、第2隙間(G2)の2倍より大きい隙間が存在している。手で締め付けた状態からレンチ等によりさらにボルト(33)を締付けていくと、ガスケット(3)が変形し、まず第1隙間(G1)が0となる。このとき、第2隙間(G2)は0ではない。そして、適正な締付け時には、図示はしないが、第2隙間(G2)も0となって、内側平坦面(符号なし)がガスケット(3)の上下端面の内縁部に密接して、各ブロック状継手部材(31)(32)の内周とガスケット(3)の内周とがほぼ面一となる。すなわち液だまりとなる凹所は存在しなくなる。なお、ブロック状継手部材(31)と(32)との間の隙間は、このときでも0にはなっていない。そして、これよりさらに締付けると、この隙間が0となり、締付けに対する抵抗力が非常に大きくなり、締過ぎが防止される。
【0055】
図7は、図1に示す第2管状継手部材(2)の代わりに閉止栓本体(20)と閉止板(21)と抜け止め防止部材(22)に置き換えられた閉止栓の全体構成を示している。シール構造は図1に示す継手と同じであり説明を省略する。
【0056】
この閉止栓においては、閉止板(21)および閉止栓本体(20)によって流路はこの部分で閉ざされているが、第1管状継手部材(1)までは流体は流れているため、このような構造の閉止栓であっても、第1管状継手部材(1)は流路を形成する継手部材であることに変わりはない。
【0057】
図8は、センサ付き継手を有する流体供給設備のセンサ付き継手の緩みを監視するサーバ等を含む監視システムを示している。
【0058】
センサ付き継手のセンサから有線又は無線で検知した信号が情報としてサーバの通信部に送られる。サーバの入力部には、予め、流体の漏れが発生する際の信号の大きさに安全係数をかけた信号の大きさの値を入力し、その情報は記憶部に保持されている。センサから受信した信号の大きさの値と記憶部に記憶された値とが判定部で比較され、センサから受信した信号の大きさの値の方が記憶部に記憶された値よりも小さい場合に面圧等が小さくなって緩み始めていると判定されるので、警告を含む判定部からの情報が表示部に送られてセンサ付き継手を有する流体供給設備のセンサ付き継手の緩みを監視することができる。
【0059】
判定部からの情報は、個々のセンサ付き継手の識別番号と関連付けられているので、どの継手がメンテナンスを必要とするかの情報を自動的に得ることができる。
【0060】
図8に示すシステムでは、サーバの通信部には、警告を含む判定部からの情報を発信する発信回路がさらに備えられているので、その情報を、インターネットネットワークを用いて外部端末に送ることができる。これによって、流体供給設備がある現場や、サーバが置いてある部屋でない外部にいても流体供給設備の監視を常時行うことができる。
【0061】
判定部からの情報のうちの警告情報は、具体的には、サーバに備えられている表示部や外部端末の表示部へのアラーム画面表示情報、サーバに備えられているスピーカや外部端末のスピーカへの音声警告情報、その他、監視室に備えられているモニター画面への警告表示情報、プラント全域に発せられるスピーカ等による警告音声情報等の種々の警告情報である。
【0062】
図9は監視システムの監視開始から監視終了または警告発信までの流れを示す図であり、図9-Aは、監視システムに監視者が命令信号を発したときの流れ(S10~S17)を示し、図9-Bは、ルーティンで行う監視の流れ(S20~S25)を示している。
【符号の説明】
【0063】
1 :第1管状継手部材
2 :第2管状継手部材
3 :ガスケット
3b:抜止め部
4 :ナット
5 :リテーナ
6 :玉軸受
7,8:シール突起
7a,8a:直線部
7b,8b:円弧部
9,10:締過ぎ防止用突起
11:フランジ
12:めねじ
S :センサ
15,16:内側平坦面(第一の平面)
17,18:外側平坦面(第二の平面)
G1:第1隙間
G2:第2隙間
G3:第3隙間
21:閉止板
31,32:ブロック状継手部材
31a,32a:流体通路
33:ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9