(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】回収生型砂の粘結材含有率推定装置、回収生型砂調整装置および粘結材含有率推定方法
(51)【国際特許分類】
B22C 5/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
B22C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019530943
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2018024072
(87)【国際公開番号】W WO2019017156
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017142161
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】林 正憲
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039135(JP,A)
【文献】特開昭61-150740(JP,A)
【文献】特開昭60-234737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00,5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収生型砂の圧縮性値を測定する圧縮性値測定装置と、
前記回収生型砂の水分含有率を測定する水分含有率測定装置と、
基準含有率で粘結材を含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率基準関係と、前記粘結材の含有率が前記基準含有率から所定量変位した変位含有率で前記粘結材を含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率変位関係と、を記憶する圧縮性値-水分含有率記憶部と、
含有する前記粘結材の含有率を求める対象回収生型砂について、前記圧縮性値測定装置により圧縮性値を取得し、かつ前記水分含有率測定装置により水分含有率を取得する取得部と、
前記圧縮性値-水分含有率基準関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記基準回収生型砂の圧縮性値である基準圧縮性値を求める基準圧縮性値演算部と、
前記圧縮性値-水分含有率変位関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記変位回収生型砂の圧縮性値である変位圧縮性値を求める変位圧縮性値演算部と、
前記基準含有率、前記変位含有率、前記基準圧縮性値、前記変位圧縮性値および前記対象回収生型砂について測定された前記圧縮性値に基づいて、前記対象回収生型砂の前記粘結材の含有率を推定する粘結材含有率演算部と、
を備えた回収生型砂の粘結材含有率推定装置。
【請求項2】
前記回収生型砂の砂温度を測定する砂温度測定装置をさらに備え、
前記水分含有率測定装置は、電気抵抗式水分含有率測定装置であり、
前記対象回収生型砂の前記水分含有率は、前記砂温度測定装置により測定された前記対象回収生型砂の砂温度における水分含有率を前記対象回収生型砂が所定温度であるときの換算水分含有率に換算した水分含有率である請求項1に記載の回収生型砂の粘結材含有率推定装置。
【請求項3】
前記回収生型砂に水分が加えられ混練された混練終了後に圧縮性値が経時変化して安定化する圧縮性値経時安定変化を前記水分含有率別に記憶する圧縮性値経時安定変化記憶部をさらに備え、
前記対象回収生型砂の前記圧縮性値は、前記混練終了後の所定経過時間に前記圧縮性値測定装置により測定された圧縮性値を、前記対象回収生型砂の測定した前記水分含有率における前記圧縮性値経時安定変化に基づいて、前記混練終了後に圧縮性値の変化が安定化する安定時間経過後における安定圧縮性値に変換した圧縮性値であり、
前記圧縮性値-水分含有率基準関係は、前記基準回収生型砂における前記混練終了後の前記安定時間経過時の圧縮性値である安定時間経過時基準圧縮性値と前記基準回収生型砂における水分含有率との関係を表すものであり、
前記圧縮性値-水分含有率変位関係は、前記変位回収生型砂における前記混練終了後の前記安定時間経過時の圧縮性値である安定時間経過時変位圧縮性値と前記変位回収生型砂における水分含有率との関係を表すものである請求項1または2に記載の回収生型砂の粘結材含有率推定装置。
【請求項4】
前記圧縮性値-水分含有率基準関係は、前記基準回収生型砂に水分が加えられ混練された混練終了後の一定時間経過時の圧縮性値である一定時間経過時基準圧縮性値と前記基準回収生型砂における水分含有率との関係を表すものであり、
前記圧縮性値-水分含有率変位関係は、前記変位回収生型砂に水分が加えられ混練された混練終了後の前記一定時間経過時の圧縮性値である一定時間経過時変位圧縮性値と前記変位回収生型砂における水分含有率との関係を表すものであり、
前記対象回収生型砂の圧縮性値は、前記対象回収生型砂に水分が加えられ混練された混練終了後の前記一定時間経過時に測定された圧縮性値である、請求項1または2に記載の回収生型砂の粘結材含有率推定装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回収生型砂の粘結材含有率推定装置により推定された前記対象回収生型砂の前記粘結材の含有率に基づいて、前記対象回収生型砂を目標とする粘結材含有率とするために粘結材不足分を演算して添加する粘結材不足分添加装置をさらに備えた回収生型砂調整装置。
【請求項6】
前記圧縮性値-水分含有率基準関係に基づいて、目標とする圧縮性値に対応する目標とする目標水分含有率を演算し、前記対象回収生型砂を前記目標水分含有率とするために水分不足分を演算して注入する水分不足分注入装置をさらに備えた請求項5に記載の回収生型砂調整装置。
【請求項7】
基準含有率で粘結材を含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率基準関係と、前記粘結材の含有率が前記基準含有率から所定量変位した変位含有率で前記粘結材を含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率変位関係と、を記憶する圧縮性値-水分含有率記憶工程と、
圧縮性値測定装置により、含有する前記粘結材の含有率を求める対象回収生型砂の圧縮性値を測定する圧縮性値測定工程と、
水分含有率測定装置により、前記対象回収生型砂の水分含有率を測定する水分含有率測定工程と、
前記圧縮性値-水分含有率基準関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記基準回収生型砂の圧縮性値である基準圧縮性値を求める基準圧縮性値演算工程と、
前記圧縮性値-水分含有率変位関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記変位回収生型砂の圧縮性値である変位圧縮性値を求める変位圧縮性値演算工程と、
前記基準含有率、前記変位含有率、前記対象回収生型砂について測定された前記圧縮性値、前記基準圧縮性値および前記変位圧縮性値に基づいて、前記対象回収生型砂の前記粘結材の含有率を推定する粘結材含有率演算工程と、
を備えた回収生型砂の粘結材含有率推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生型造型法で再生して使用される回収生型砂の粘結材の含有率を推定する装置、回収生型砂を調整する装置および回収生型砂の粘結材の含有率を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造鋳物の造型に使用される生型砂は、注湯後に型バラシされ、冷却を経て回収生型砂として回収されて、繰り返し使用される。生型砂は、注湯により加熱され粘結力が失われ、さらに元々粘結力の乏しい中子砂が回収の際に混入するので回収生型砂に占める粘結力は低下している。そのため、回収された生型砂(回収生型砂)を繰り返し使用するためには、回収生型砂に混練する粘結材、水分、添加剤の調整が必要となる。
【0003】
特許文献1には、混練前の回収生型砂の性状を分析して、ベントナイト(粘結材)、石炭粉、水分等を添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、鋳造ラインを離れた実験室に相当するところで、回収生型砂の性状を分析しているため、鋳造ラインを流れる回収生型砂の性状をリアルタイムで分析して、鋳造ラインに調整した回収生型砂を投入できるものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、鋳造ラインを流れる回収生型砂の性状をリアルタイムで分析して、回収生型砂の粘結材含有率を推定する回収生型砂の粘結材含有率推定装置、推定された粘結材の含有率に基づいて、回収生型砂に目標とする粘結材の含有率とするために粘結材を添加する回収生型砂調整装置および回収生型砂に含まれる粘結材の含有率を推定する粘結材含有率推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回収生型砂の粘結材含有率推定装置は、回収生型砂の圧縮性値を測定する圧縮性値測定装置と、前記回収生型砂の水分含有率を測定する水分含有率測定装置と、基準含有率で粘結材を含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率基準関係と、前記粘結材の含有率が前記基準含有率から所定量変位した変位含有率で前記粘結材を含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分含有率との関係を表した圧縮性値-水分含有率変位関係と、を記憶する圧縮性値-水分含有率記憶部と、含有する前記粘結材の含有率を求める対象回収生型砂について、前記圧縮性値測定装置により圧縮性値を測定し、かつ前記水分含有率測定装置により水分含有率を測定する測定部と、前記圧縮性値-水分含有率基準関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記基準回収生型砂の圧縮性値である基準圧縮性値を求める基準圧縮性値演算部と、前記圧縮性値-水分含有率変位関係に基づいて、測定した前記水分含有率に対応する前記変位回収生型砂の圧縮性値である変位圧縮性値を求める変位圧縮性値演算部と、前記基準含有率、前記変位含有率、前記基準圧縮性値、前記変位圧縮性値および前記対象回収生型砂について測定された前記圧縮性値に基づいて、前記対象回収生型砂の前記粘結材の含有率を推定する粘結材含有率演算部と、を備えた。
本明細書において、「圧縮性値」とは、コンパクタビリティを表す値(CB値)であり、圧縮率をパーセントで表したり、圧縮された長さで表したりするものを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
これによると、圧縮性値が圧縮性値測定装置により測定され、水分含有率が水分含有率測定装置によって測定される。予め記憶された圧縮性値-水分含有率基準関係に基づいて、基準回収生型砂の測定した水分含有率に対応する基準圧縮性値を求める。予め記憶された圧縮性値-水分含有率変位関係に基づいて、変位回収生型砂の測定した水分含有率に対応する変位圧縮性値を求める。基準含有率、変位含有率、基準圧縮性値、変位圧縮性値および対象回収生型砂の圧縮性値に基づいて、対象回収生型砂の粘結材含有率を推定することができる。
このように実際に回収された生型砂の粘結材含有率を、造型ラインにおける回収生型砂の調整前に推定することができるので、造型ラインで使用される回収生型砂の粘結材の含有率をリアルタイムで正確に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態の回収生型砂の粘結材含有率推定装置を利用して回収した生型砂の再生を行う設備の概要を示す図である。
【
図2】回収生型砂の粘結材含有率推定装置を含む回収生型砂調整装置の概要を示すブロック図である。
【
図3】圧縮性値-水分測定値基準関係、圧縮性値-水分測定値変位関係および測定された圧縮性値を表すグラフである。
【
図4】実際の砂温度で測定した水分測定値と、砂温度を20℃時に換算した場合の水分測定値とを示すグラフである。
【
図5】異なった3つの水分含有率の回収生型砂において、水分一定のときの圧縮性値の経時変化を示すグラフである。
【
図6】砂性状測定装置の外観および仕様を示す図である。
【
図8】砂性状測定装置に回収生型砂をセットし、砂温度を測定した状態を示す図である。
【
図9】砂性状測定装置の上部をスライドさせ、計測筒の上部からはみ出した回収生型砂をカットした状態を示す図である。
【
図10】計測筒内でピストン部を上昇させ圧縮性値を測定する状態を示す図である。
【
図11】砂性状測定装置の上部をさらにスライドさせ、水分測定値測定装置で回収生型砂の水分測定値を測定する状態を示す図である。
【
図12】回収生型砂の粘結材含有率を推定する手順を示すフローチャートである。
【
図13】第二実施形態における回収生型砂の再生を行う設備の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本件発明にかかる回収生型砂の粘結材含有率推定装置および回収生型砂調整装置を含む回収生型砂再生設備の第一実施形態について、
図1~
図12に基づいて以下に説明する。
粘結材含有率推定装置1を含む回収生型砂再生設備RP1は、
図1に示すように、回収生型砂MSが搬送される上流側より、計量フィーダ2、サンドビン3、バケットエレベータ4、回収砂ホッパ5、回収砂計量フィーダ6、砂計量ホッパ7、粘結材計量装置8、粘結材計量ホッパ9、注水計量タンク10、砂混練機11、砂性状測定装置12、圧縮性値制御装置13、混練砂ホッパ14、ライン送砂コンベヤ15、粘結材含有率制御装置16、生型砂制御装置17を備えている。
【0011】
(計量フィーダ)
計量フィーダ2は、例えば、回収された生型砂(回収生型砂)MSを定重量(或いは定容量)で供給するものであり、図略の電動モータで駆動するベルト2aによる搬送機能を有する。例えば、計量フィーダ2からサンドビン3に回収生型砂MSを搬出する図略の砂出口の開口寸法を可変とするとともに、ベルト2aを一定速度で回収生型砂MSを搬送するものとする。そして、砂出口の開口寸法を調節することで、回収生型砂MSの搬送量(搬送重量)を制御する。また、別例として、砂出口の開口寸法を一定とするとともに、ベルト2aの搬送速度を可変とする。この場合、ベルト2aの搬送速度を変えることで、回収生型砂MSの搬送量を制御する。回収生型砂MSを搬出する砂出口の開口寸法や回収生型砂MSを搬送するベルト2aの搬送速度は、後述する生型砂制御装置17によって制御される。
【0012】
計量フィーダ2は、例えば、前工程に設けられた図略の回収生型砂冷却装置によって、所定温度以下に冷却された回収生型砂MSを、目標搬送重量に一致させてサンドビン3に搬入する。回収生型砂冷却装置では、高温の回収生型砂MSの砂温度、水分含有率(或いは水分測定値)が測定され、冷却のための散水及び回収生型砂MSの撹拌が行われる。
【0013】
(サンドビン)
サンドビン3は、筒状本体3aと、回転テーブル3bと、回転テーブル3bに相対回転不能に立設され筒状本体3aを支持する支持中心軸(図略)とを、備えている。筒状本体3a、支持中心軸および回転テーブル3bは、一体となって回転テーブル3bの軸心を中心に回転する。筒状本体3aの上端部を封止するように天板部(図略)が設けられ、天板部には回収生型砂MSを搬入する搬入口(図略)が設けられている。筒状本体3aの下端と回転テーブル3bとの間には、回収生型砂MSを搬出する搬出口3cが設けられている。
【0014】
サンドビン3は、冷却された回収生型砂MSを貯留する装置であり、一般に円筒状の容器(筒状本体3a)に回収生型砂MSを入れ、先入れ先出しの順番を維持し、回収生型砂MSをサンドビン3内でゆっくりと回転させながら所定時間貯留することで、回収生型砂MSを熟成させる。このように回収生型砂MSを熟成させることで、造型時に模型がきれいに抜けるとか、練り易い生型砂になる等の効果を生じさせる。
【0015】
搬出口3cには図略の砂切り出し装置が設けられ、砂切り出し装置は、必要に応じてサンドビン3に貯留された回収生型砂MSを搬出口3cより掻き出し、バケットエレベータ4に送り出す。回転テーブル3bの回転、砂切り出し装置による掻き出しタイミングは、生型砂制御装置17により制御される。
【0016】
(バケットエレベータ)
バケットエレベータ4は、複数のバケツ(図略)が装着されたエンドレスベルト(図略)を上下方向に回転循環させることで、回収生型砂MSを上方位置へ垂直搬送する。垂直搬送された回収生型砂MSは、回収砂ホッパ5に搬入される。バケットエレベータ4は、公知技術であるので、説明を省略する。バケットエレベータとして、例えば特開2002-35889号公報に記載されたバケットエレベータを挙げることができる。バケットエレベータ4が搬送する回収生型砂MSの量は生型砂制御装置17によって制御される。
【0017】
(回収砂ホッパ)
回収砂ホッパ5は、例えばステンレス鋼板製部材により、上部が長方形に開口する筒状に形成され、下方に向って内壁の開口が漸減される漏斗状に形成されている。回収砂ホッパ5の下方には、回収砂計量フィーダ6が配設されている。回収砂計量フィーダ6は、計量フィーダ2と同様のものである。生型砂制御装置17は、回収砂計量フィーダ6における砂計量ホッパ7への回収生型砂MSの搬送量を制御する。
【0018】
(砂計量ホッパ)
砂計量ホッパ7は、ロードセルによる自動計量機能を備え、砂混練機11の上方に設けられている。生型砂制御装置17は、砂計量ホッパ7において、所定重量が貯留されるまで一時回収生型砂MSを貯留し、所定重量が貯留された場合に、回収砂計量フィーダ6による搬入を停止させる。生型砂制御装置17は、砂計量ホッパ7から必要に応じて砂混練機11に所定重量の回収生型砂MS(対象回収生型砂TMS)を搬入する。ここで、対象回収生型砂TMSとは、砂性状が測定対象になった回収生型砂MSをいうものとする。
【0019】
(粘結材計量装置・粘結材計量ホッパ)
粘結材計量装置8および粘結材計量ホッパ9は、粘結材含有率制御装置16によって制御させる。粘結材含有率制御装置16には、後述する砂性状測定装置12で測定された対象回収生型砂TMSの圧縮性値(CB値)および水分測定値が送信され、対象回収生型砂TMSの粘結材含有率を推定して、回収生型砂MSが目標粘結材含有率となるように制御する。
粘結材計量装置8は、スクリュウコンベヤ8aを備えており、粘結材BD(本実施形態ではベントナイト)が目標とする搬入量となるよう粘結材計量ホッパ9に搬入する。粘結材計量ホッパ9は、ロードセルを備え、粘結材計量装置8により搬入された粘結材BDを一旦貯留し、粘結材計量ホッパ9内の粘結材BDの重量を測定する。粘結材計量ホッパ9は、目標とする重量の粘結材BDが貯留されると、粘結材含有率制御装置16にその旨を送信し、粘結材含有率制御装置16は、粘結材計量装置8のスクリュウコンベヤ8aを停止させる。粘結材含有率制御装置16は、粘結材計量ホッパ9から目標とする重量の粘結材BDを砂混練機11に添加させる。
粘結材計量装置8と粘結材計量ホッパ9とにより、粘結材不足分添加装置19が構成される。
【0020】
(注水計量タンク)
注水計量タンク10は、貯留タンク10aと図略の電磁開閉弁を備えた注入パイプ10bと貯留タンク10a内の水分の重量を計測するロードセル(図略)とを備えている。圧縮性値制御装置13は、例えば、貯留タンク10a内から減量した水の重量に基づいて水分量を制御して、注水計量タンク10から砂混練機11内に注水させる。また、圧縮性値制御装置13が行う圧縮性値制御によって水分が砂混練機11に注入される。注水計量タンク10と圧縮性値制御装置13とによって、水分不足分注入装置が構成される。
【0021】
(砂混練機)
砂混練機11は、回収生型砂MSに粘結材BD(ベントナイト)、水分、添加剤を加えて混練する装置であり、回収された生型砂(回収生型砂MS)を再生して繰り返し造型に使用するためのメイン作業を担う。本実施形態では、例えば、回収生型砂MSをローラによって混練するタイプの砂混練機11を使用する。ローラによって混練するタイプの砂混練機11は、公知技術であるため、その説明を省略する。
【0022】
第一実施形態では、砂混練機11に搬入された回収生型砂MSについて、後述する砂性状測定装置12によって、圧縮性値(本実施形態ではCB値)の測定、水分測定値の測定が行われる。本実施形態では、後述するように水分含有率に換算される。これらの水分測定値および圧縮性値に基づいて、回収生型砂の粘結材含有率が推定される。推定された粘結材含有率に基づいて、粘結材BDの添加量が演算される。さらに目標圧縮性値から演算された目標水分測定値に基づき、目標水分測定値に不足する水分量を演算して、水分不足分を注入する。
本実施形態における砂混練機11内の回収生型砂MSは、砂性状測定装置12によって砂性状が測定される対象回収生型砂TMSである。
【0023】
(砂性状測定装置)
図6に示す砂性状測定装置12は、例えば、
図7に示すように、漏斗状に形成され篩12a1を備え対象回収生型砂TMSを搬入する搬入部12aと、対象回収生型砂TMSを充填させて計測する計測筒12bと、計測筒12bの内壁に沿って図略の駆動機構によって上下動するピストン部12b1と、仕切り片12cと、砂温度測定装置12dと、水分測定値測定装置(水分含有率測定装置)12eと、通気機構12fと、ロードセル12g1を有する圧縮機構12gとを、備えている。砂性状測定装置12は、対象回収生型砂TMSの砂温度、圧縮性値(CB値)、水分測定値、通気度および圧縮強さを鋳造ラインに並行して自動計測できる装置である。
【0024】
砂温度を計測する砂温度測定装置12dは、例えば、熱電対温度計であり、対象回収生型砂TMSに接する測温接点と基準接点との温度差により生じる起電力の強さで対象回収生型砂TMSの温度を測定する。
【0025】
圧縮性値(本実施形態ではCB値)の測定は、搬入部12aから搬入させた対象回収生型砂TMSを計測筒12bに充填させ、計測筒12b内の対象回収生型砂TMSをピストン部12b1で圧縮して圧縮量から算定する。主に計測筒12bおよびピストン部12b1により圧縮性値測定装置が構成される。なお、計測筒12b内に充填された対象回収生型砂TMSは、篩12a1によって計測の誤差を生じさせる砂の固まり等が除去されている。求められた圧縮性値(CB値・測定された圧縮性値)は、後述する粘結材含有率制御装置16に送信される。粘結材含有率制御装置16は、送信された圧縮性値を対象回収生型砂TMSの粘結材含有率の推定に使用する。
【0026】
水分測定値を測定する水分測定値測定装置12eは、例えば、電気抵抗式水分測定装置(電気抵抗式水分含有率測定装置に対応)である。電気抵抗式の水分測定値測定装置12eは、対象回収生型砂TMS中に配置した二枚の電極板(図略)の間に電圧を加え、砂中の水分量によって変化する抵抗値を、電流量から求めることで、水分測定値を求めるものである。測定に際して、水分量を示す電流の流れ方は、対象回収生型砂TMSの温度が上昇すると、多く流れる(抵抗が小さくなる)。具体的には、
図4に示すように、4.9℃~37.2℃の実際の砂温度で測定した黒丸で示す水分測定値(電気抵抗式水分測定装置で測定)が、砂温度に影響を受けないで測定できる赤外線式水分含有率測定装置で測定した水分含有率の値に対して、比例関係になく分散した状態となっている。
そのため、対象回収生型砂TMSの温度を同じにする必要があるが、対象回収生型砂TMSを全て同じ温度にして水分測定値を測定することは不可能である。そこで、粘結材含有率制御装置16の水分測定値所定温度換算部16d(後述)は、測定したときの水分測定値を、所定温度(例えば、20℃)の水分測定値に換算した換算水分測定値(換算水分含有率)とする。
図4に示すように、×印で示す20℃に換算した水分測定値が、赤外線式水分含有率測定装置で測定した水分含有率の値に対して比例関係にあることが確認されている。
(数1)20℃に換算後の水分測定値(mV)
=水分測定値(mV)-K×(測定砂温度-20℃)
(なお、Kは係数)
によって換算することができる。
【0027】
測定された水分測定値(換算水分測定値)の値は、圧縮性値制御装置13と粘結材含有率制御装置16とに送信される。
【0028】
回収生型砂再生設備RP1の圧縮性値制御装置13は、鋳型を造型する造型ラインMLに混練砂MMSを供給するための砂性状を制御する。造型ラインMLには、目標圧縮性値(本実施形態では基準CB値)が設定されている。目標圧縮性値に対応する目標水分測定値から目標水分含有率を求める。対象回収生型砂TMSの水分測定値から水分含有率を演算する。対象回収生型砂TMSを目標水分含有率するため、不足する水分を演算し、砂混練機11に水分不足分を注入する。
【0029】
粘結材含有率制御装置16は、対象回収生型砂TMSで測定された水分測定値の値を対象回収生型砂TMSの粘結材含有率の推定に使用する。
【0030】
通気度は、計測筒12bに充填した対象回収生型砂TMSに圧縮エアを送って通気度を測定する。圧縮強さは、計測筒12bに充填した対象回収生型砂に圧縮力を負荷し、圧縮破壊した値をロードセルで計測する。
なお、本実施形態では、通気度および圧縮強さの値は使用しないため、詳しい説明を省略する。
【0031】
(混練砂ホッパ・ライン送砂コンベヤ)
混練砂ホッパ14は、例えばステンレス鋼板製部材により、上部が長方形に開口する筒状に形成され、下方に向って内壁の開口が漸減される漏斗状に形成されている。混練砂ホッパ14は、砂混練機11に入れられた対象回収生型砂TMSが混練されて搬出された混練砂MMSを受け取る。
【0032】
ライン送砂コンベヤ15は、混練砂ホッパ14で受け取られた混練砂MMSを図略の造型機に投入する計量ホッパに搬送する。
【0033】
(粘結材含有率制御装置)
粘結材含有率制御装置16は、対象回収生型砂TMSの粘結材含有率を推定する作用を有する。粘結材含有率制御装置16は、
図2に示すように、圧縮性値-水分測定値記憶部16a、圧縮性値経時安定変化記憶部16b、圧縮性値取得部16c、水分測定値所定温度換算部16d、水分測定値取得部16e、基準圧縮性値演算部16f、変位圧縮性値演算部16g、目標粘結材含有率演算部16h、対象回収生型砂粘結材含有率演算部16i、粘結材含有率比較演算部16jおよび粘結材不足分演算部16kを備えている。
【0034】
(圧縮性値-水分測定値記憶部)
図3は、圧縮性値-水分測定値基準関係、圧縮性値-水分測定値変位関係および測定された圧縮性値を表すグラフである。
圧縮性値-水分測定値記憶部16aは、基準含有率(本実施形態では、4.8%)で粘結材BD(本実施形態では、ベントナイト)を含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)と、粘結材BDの含有率が基準含有率から所定量変位した変位含有率(本実施形態では、-0.8%)で粘結材BDを含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)とを、記憶する。
【0035】
また、水分測定値測定装置12eで検出された対象回収生型砂TMSの換算水分測定値は、電圧mVで表示されているが、電圧で表される水分測定値mVは、重量%で表される水分含有率に対応して変る。そして、粘結材含有率制御装置16は、換算水分測定値mVを対象回収生型砂TMSの重量%である水分含有率%に換算することが可能である。そこで、本実施形態では、電圧で表される水分測定値mV、換算水分測定値mVを、そのまま対象回収生型砂のTMSの水分含有率として取り扱っている。従って、圧縮性値-水分測定値記憶部16aが、圧縮性値-水分含有率記憶部として取り扱われる。
回収生型砂MSに含まれる水分含有率は、公知の赤外線式水分含有率測定装置によって直接測定することができる。
水分含有率の異なる基準回収生型砂について、縦軸に赤外線式水分含有率測定装置で測定した水分含有率Y1(%)、横軸に電気抵抗式水分測定値測定装置で測定した水分測定値X1(mV)をとって表示すると、(数2)のように直線状の実験式で表示することができる。
(数2)水分含有率Y1(%)
=0.0007418×水分測定値X1(mV)+1.0455
また、粘結材変位含有率(-0.8%)の変位回収生型砂についても縦軸に赤外線式水分含有率測定装置で測定した水分含有率Y2(%)、横軸に電気抵抗式水分測定値測定装置で測定した水分測定値X2(mV)をとって表示すると、(数3)のように直線状の実験式で表示することができる。
(数3)水分含有率Y2(%)
=0.0009392×水分測定値X2(mV)+0.5580
同様に、粘結材変位含有率(-1.65%、+1.0%)等の複数の変位回収生型砂について、水分含有率と水分測定値との関係を直線状の実験式で表示することができる。
また、対象回収生型砂のTMSの水分含有率Wxは、例えば、粘結材変位含有率が異なり対象回収生型砂TMSの粘結材変位含有率を間に挟んで隣接する二つの変位回収生型砂(基準回収生型砂を含む)の水分含有率と水分測定値とにより、対象回収生型砂TMSの水分含有率と水分測定値との関係の近似式を求め、水分測定値を水分含有率に換算することが可能である。
【0036】
なお、
図3のグラフにおける圧縮性値-水分測定値基準関係は、例えば、基準含有率4.8%の粘結材BDを含有した回収生型砂MSの圧縮性値と水分測定値との関係を、予め複数点を検出し、検出した値をグラフ上にプロットし、複数の検出した値の傾向を直線で表して基準回帰線SRG(基準回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係)を形成する。この基準回帰線SRGで表される圧縮性値-水分測定値基準関係が、圧縮性値-水分含有率基準関係に相当する。
【0037】
圧縮性値-水分測定値変位関係は、基準含有率4.8%の粘結材が含有した回収生型砂より、例えば粘結材BDが-0.80%変位(所定量変位)した変位含有率で、粘結材BDを含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分測定値(電圧mVで表示)との関係を、予め複数点を検出し、検出した値をグラフ上にプロットし、複数の検出した値の傾向を直線で表して変位回帰線DRGを形成する。この変位回帰線DRGが表す圧縮性値-水分測定値変位関係が、圧縮性値-水分含有率変位関係に相当する。
【0038】
変位回帰線DRGは、
図3に示すように、例えば、-0.8%(圧縮性値-水分測定値第一変位関係)第一変位回帰線DRG1に相当、-1.65%(圧縮性値-水分測定値第二変位関係)第二変位回帰線DRG2に相当、+1.0%(圧縮性値-水分測定値第三変位関係)第三変位回帰線DRG3に相当、というように基準回帰線SRGに対して複数の異なった変位量で表してもよい。複数求めることで、対象回収生型砂TMSの測定された値から粘結材BDの変位量を求めるのに最も都合の良い変位回帰線DRG1~DRG3を選定することができる(変位量や変位量のプラスマイナスに応じて選定する)。都合の良い変位回帰線DRGを選定することで、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率を高い精度で推定することができる。
【0039】
(圧縮性値経時安定変化記憶部)
圧縮性値経時安定変化記憶部16bは、
図5に示すように、回収生型砂MSに水分が加えられ混練された混練終了後に圧縮性値が経時変化して安定化する圧縮性値経時安定変化を水分含有率別に記憶する。
水分の含有率が一定であっても、経時変化により生じる圧縮性値の誤差を是正するものである。
図5は、例えば、水分含有率2.56%、水分含有率2.58%、水分含有率2.60%の回収生型砂MSにさらに水分を添加して混練した場合の圧縮性値の経時変化を示している。追加する水分が多いほど経時変化量は多くなる傾向があり、約120分で安定化することが示されている。追加前の回収生型砂MSの水分含有率および追加する水分量の幾つかのケースについて求めておき、比例配分等によって、求められていないケースについても換算することができる。
本実施形態では、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)および圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG1~DRG3)において、圧縮性値は、全て安定時間経過後の基準圧縮性値であり、安定時間経過後の変位圧縮性値とする。
測定された対象回収生型砂TMSの圧縮性値は、水分が加えられ混練された後の経過時間に関わらず、安定時間経過後の安定圧縮性値に変換して粘結材の含有率の推定に使用されるので、高い精度の粘結材含有率の推定が可能となる。また、測定する対象回収生型砂TMSの測定を安定時間経過まで待つ必要がないので、迅速な粘結材含有率の推定作業を行なうことができる。
【0040】
(圧縮性値取得部)
圧縮性値取得部16cは、含有する粘結材BDの含有率を求める対象回収生型砂TMSについて、圧縮性値測定装置(計測筒12b、ピストン部12b1等)が測定した圧縮性値を取得し、圧縮性値-水分測定値記憶部16aに記憶された基準回帰線SRGおよび変位回帰線DRGのデータを取得する。圧縮性値経時安定変化記憶部16bから圧縮性値経時安定変化のデータを取得する。
【0041】
(水分含有率所定温度換算部)
水分測定値所定温度換算部16dは、砂温度測定装置12dにより測定された砂温度と圧縮性値測定装置(計測筒12b)により測定された圧縮性値とにより、測定された圧縮性値を20℃の砂温度の圧縮性値に換算する。
【0042】
水分測定値取得部16eは、含有する粘結材BDの含有率を求める対象回収生型砂TMSについて、水分測定値測定装置12eが測定し、水分測定値所定温度換算部16dが換算した換算水分測定値を取得する。
【0043】
(基準圧縮性値演算部)
基準圧縮性値演算部16fは、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて、測定した水分測定値に対応する基準回収生型砂の圧縮性値である基準圧縮性値を求める。具体的には、
図3に示すように、対象回収生型砂TMSについて測定した、例えば、E点(圧縮性値E(mm))の水分測定値2491(mV)において、基準回帰線SRG上で対応する圧縮性値(CB値)を求め、これを基準圧縮性値Eo(mm)とする。
【0044】
(変位圧縮性値演算部)
変位圧縮性値演算部16gは、圧縮性値-水分測定値変位関係(第一変位回帰線DRG1)に基づいて、測定した水分測定値に対応する変位回収生型砂の圧縮性値である変位圧縮性値を求める。具体的には、
図3に示すように、対象回収生型砂TMSについて測定したE点の水分測定値2491mVにおいて、変位回帰線DRG上で対応する圧縮性値(CB値)を求め、これを変位圧縮性値Ed(mm)とする。
【0045】
(目標粘結材含有率演算部)
目標粘結材含有率演算部16hは、対象回収生型砂TMSが含有すべき粘結材BDの目標粘結材含有率を求める。目標粘結材含有率は、造型ラインによって異なるが、一般的に4%~9%の範囲で設定される。本実施形態では、例えば基準含有率と同じ4.8(%)とした。
【0046】
(対象回収生型砂粘結材含有率演算部)
対象回収生型砂粘結材含有率演算部16iは、基準含有率、変位含有率、基準圧縮性値、変位圧縮性値および対象回収生型砂TMSについて測定された圧縮性値に基づいて、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率Vxを推定する。
【0047】
具体的には、基準圧縮性値に対する測定された圧縮性値の差分を基準圧縮性値に対する変位圧縮性値の差分で除した値に、変位含有率を乗じ、基準含有率を加算する。
例えば、基準含有率を4.8(%)、基準含有率に対する変位含有率(所定量変位)を-0.8(%)、対象回収生型砂TMSについて測定されたE点における圧縮性値E(mm)、E点における水分測定値2491(mV)、基準圧縮性値Eo(mm)、変位圧縮性値Ed(mm)とした場合、以下の式で対象回収生型砂TMSの粘結材BD(ベントナイト)の含有率を推定することができる。
(数4)対象回収生型砂の粘結材含有率Vx
=4.8+(-0.8)×{(Eo-E)/(Eo-Ed)}
【0048】
(粘結材比較演算部・粘結材不足分演算部)
粘結材含有率比較演算部16jは、推定された対象回収生型砂TMSの粘結材含有率と目標粘結材含有率(4.8(%))とを比較し、推定された粘結材含有率が、目標粘結材含有率未満である場合には、粘結材不足分演算部16kで粘結材BDの不足分を演算する。
ここで、対象回収生型砂TMSの重さをM(kg)、対象回収生型砂TMSにおける粘結材BDの含有率をVx(%)、追加する水分の重さをA(kg)、追加する粘結材BDの重さをB(kg)、目標粘結材含有率をVT(%)とした場合、
(数5)VT/100=(M×Vx/100+B)/(M+A+B)
の関係式で表される。ここから追加する粘結材BDの重さB(kg)を算定する。
粘結材含有率制御装置16は、目標粘結材含有率となるように、添加すべき重さB(kg)の粘結材BDを粘結材不足分添加装置19から砂混練機11に添加する。
なお、圧縮性値(CB値)測定装置(計測筒12b、ピストン部12b1等)、水分測定値測定装置12e、および粘結材含有率制御装置16によって、粘結材含有率推定装置1が構成される。
主に粘結材含有率推定装置1と粘結材不足分添加装置19とによって、回収生型砂調整装置20が構成される。
また、粘結材含有率制御装置16および生型砂制御装置17は、回収生型砂再生設備RP1の全体を制御するホスト制御装置21によって制御される。
【0049】
(圧縮性値制御装置)
圧縮性値制御装置13は、圧縮性値を制御するものであり、
図2に示すように、目標水分含有率演算部13aと、対象回収生型砂水分含有率演算部13bと、水分含有率比較演算部13cと、水分不足分演算部13dと、圧縮性値-水分測定値記憶部16aとを主に備えている。
圧縮性値制御装置13は、対象回収生型砂TMSで計測された圧縮性値(本実施形態ではCB値)を、造型ライン上で目標とする目標圧縮性値(例えば、45(mm))にするため、目標圧縮性値に対応する目標水分測定値(例えば、2491(mV))を圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて算定する。
また、基準回収生型砂の水分含有率、変位回収生型砂の水分含有率、および対象回収生型砂TMSの水分含有率は、段落0035で既に記載したように求めることができる。
【0050】
また、注入される水分不足分は以下の式から求めることができる。
ここで、対象回収生型砂TMSの重さをM(kg)、対象回収生型砂TMSにおける水分含有率をWx(%)、追加する水分の重さをA(kg)、追加する粘結材BDの重さをB(kg)、目標水分含有率をWT(%)とすると、
(数6)WT/100=(M×Wx/100+A)/(M+A+B)
で表される。ここから追加する水分の重さA(kg)を算定する。
圧縮性値制御装置13は、算定された水分不足分A(kg)を注水計量タンク10より砂混練機11内に注水する。
【0051】
(作動)
次に、本発明の回収生型砂の粘結材含有率推定装置1および回収生型砂調整装置20の作動について、
図12のフローチャートに基づき以下に説明する。
粘結材含有率推定装置1が、粘結材含有率推定サイクルを開始する。
粘結材含有率制御装置16は、圧縮性値-水分測定値記憶部16aに、基準含有率(4.8%)で粘結材BDを含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)と、粘結材BDの含有率が基準含有率(4.8%)から所定量(-0.8%)変位した変位含有率で粘結材BDを含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)とを予め記憶する(ステップ101(以下、ステップをSと略記する。)・圧縮性値-水分測定値記憶工程(圧縮性値-水分含有率記憶工程に対応))。
圧縮性値-水分測定値の関係を表す変位回帰線DRGは、例えば、-0.8%(圧縮性値-水分測定値第一変位関係)第一変位回帰線DRG1に相当、-1.65%(圧縮性値-水分測定値第二変位関係)第二変位回帰線DRG2に相当、+1.0%(圧縮性値-水分測定値第三変位関係)第三変位回帰線DRG3に相当、というように三つのデータを記憶する。
【0052】
砂混練機11には、生型砂制御装置17によって、砂計量ホッパ7で計量された所定量の対象回収生型砂TMSが搬入される。
粘結材含有率制御装置16は、砂性状測定装置12に対象回収生型砂TMSの砂温度の測定を実行させる。計測筒12b内に搬入された対象回収生型砂TMSについて、砂温度測定装置12dにより砂温度が測定される(S102)。測定された砂温度の値は、水分測定値所定温度換算部16dに送信される。
【0053】
粘結材含有率制御装置16は、砂性状測定装置12に対象回収生型砂TMSの圧縮性値の測定を実行させる(S103・圧縮性値測定工程)。
具体的には、
図8に示すように、砂混練機11より搬入部12aを介して計測筒12bに対象回収生型砂TMSを搬入する。搬入された対象回収生型砂TMSは、
図9に示すように、計測筒12bの上部を仕切り片12cで仕切られて封止される。
図10に示すように、ピストン部12b1により計測筒12bの下方から押圧することで、圧縮性値(測定された圧縮性値E(mm))を求める。圧縮性値取得部16cは、対象回収生型砂TMSの圧縮性値を取得する。
【0054】
次に粘結材含有率制御装置16は、砂性状測定装置12に水分測定値の測定を実行させる(S104・水分測定工程(水分含有率測定工程に対応))。(本実施形態においては、砂性状測定装置12に組み込まれた機能により、
図11に示すように、上部がスライドして水分測定値測定装置12eによって、水分測定値の測定が実行される)。
【0055】
水分測定値所定温度換算部16dは、測定された水分測定値を、測定された水分測定値が測定された砂温度に基づいて、20℃の砂温度の水分測定値に換算する(S105)。換算された換算水分測定値は、水分測定値取得部16eに取得される。
【0056】
次に粘結材含有率制御装置16の基準圧縮性値演算部16fは、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて、測定した水分測定値(2491(mV))、これは換算水分測定値である。この換算水分測定値に対応する基準回収生型砂の圧縮性値(基準圧縮性値Eo(mm))を演算する(S106・基準圧縮性値演算工程)。
【0057】
次に粘結材含有率制御装置16は、測定された圧縮性値E(mm)の値より第一変位回帰線DRG1を選択する。変位圧縮性値演算部16gは、圧縮性値-水分測定値変位関係(第一変位回帰線DRG1)に基づいて、測定した水分測定値(2491(mV))に対応する変位回収生型砂の圧縮性値(変位圧縮性値Ed(mm))を演算する(S107・変位圧縮性値演算工程)。
【0058】
次に粘結材含有率制御装置16の対象回収生型砂粘結材含有率演算部16iは、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率を演算(推定)する(S108・粘結材含有率推定工程(粘結材含有率演算工程に対応))。
【0059】
次に粘結材含有率制御装置16の粘結材含有率比較演算部16jは、目標粘結材含有率演算部16hで求められた目標粘結材含有率VT(%)と、推定された対象回収生型砂TMSの粘結材含有率Vx(%)とを比較する(S109)。
【0060】
推定された対象回収生型砂TMSの粘結材含有率Vx(%)が目標粘結材含有率VT(%)未満である場合には、ステップ110へ移行する。
【0061】
粘結材不足分演算部16kは、対象回収生型砂TMSの重さをM(kg)、対象回収生型砂TMSにおける粘結材BDの含有率をVx(%)、追加する水分の重さをA(kg)、追加する粘結材BDの重さをB(kg)、目標粘結材含有率をVT(%)とした場合、追加するべき粘結材BDの量B(kg)を、前述のように以下の関係式により演算する(S110)。
VT/100=(M×Vx/100+B)/(M+A+B)よりBを演算する。
回収生型砂調整装置20は、粘結材不足分添加装置19より粘結材不足分を添加し、粘結材含有率推定サイクルを終了する(S111)。
【0062】
ステップ109において、推定された対象回収生型砂TMSの粘結材含有率Vx(%)が目標粘結材含有率VT(%)以上である場合には、粘結材含有率推定サイクルを終了する。
【0063】
ステップ104で対象回収生型砂TMSの水分測定値が測定された際、並行して圧縮性値(CB値)制御サイクルを行うため、ステップ112へ移行する。
【0064】
ステップ112では、造型ラインに設定されている目標圧縮性値(例えば、45(mm))に基づいて、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)より、目標水分測定値(2,666(mV))が求められる。
目標水分測定値は、段落0035に記載したように目標水分含有率WTに換算され、対象回収生型砂TMSの測定された水分測定値は、水分含有率Wxに換算される。
【0065】
ステップ113では、目標水分含有率WTと測定された対象回収生型砂TMSの水分含有率Wxとが比較される。
【0066】
測定された水分含有率Wxが目標水分含有率WT未満である場合(本実施形態は未満の場合に該当)には、ステップ114に移行する。
ステップ114では、対象回収生型砂TMSの重さをM(kg)、対象回収生型砂TMSにおける水分含有率をWx(%)、追加する水分の重さをA(kg)、追加する粘結材BDの重さをB(kg)、目標水分含有率をWT(%)とした場合、追加すべき水分不足分A(kg)は前述のように、以下の関係式により演算することができる。
WT/100=(M×Wx/100+A)/(M+A+B)よりAを演算する。
【0067】
ステップ115では、注水計量タンク10より水分不足分を注入し、圧縮性値(CB値)制御サイクルを終了する。
【0068】
ステップ113で測定された水分含有率Wxが目標水分含有率WT以上である場合には、圧縮性値(CB値)制御サイクルを終了する。
【0069】
上記の説明で明らかなように、第一実施形態の回収生型砂の粘結材含有率推定装置1は、回収生型砂MSの圧縮性値を測定する圧縮性値測定装置12bと、回収生型砂MSの水分測定値を測定する水分測定値測定装置12eと、を備えている。
基準含有率で粘結材BDを含有する基準回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)と、粘結材BDの含有率が基準含有率から所定量変位した変位含有率で粘結材BDを含有する変位回収生型砂における圧縮性値と水分測定値との関係を表した圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)と、を記憶する圧縮性値-水分測定値記憶部16aと、を備えている。
含有する粘結材BDの含有率を求める対象回収生型砂TMSについて、圧縮性値測定装置12bにより圧縮性値Eを測定し、かつ水分測定値測定装置12eにより測定された水分測定値を取得する水分測定値取得部16eと、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて、測定した水分測定値に対応する基準回収生型砂の圧縮性値である基準圧縮性値Eoを求める基準圧縮性値演算部16fと、圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)に基づいて、測定した水分測定値に対応する変位回収生型砂の圧縮性値である変位圧縮性値Edを求める変位圧縮性値演算部16gと、基準含有率(4.8%)、変位含有率(-0.8%)、対象回収生型砂TMSについて測定された圧縮性値E、基準圧縮性値Eoおよび変位圧縮性値Edに基づいて、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率を推定する対象回収生型砂粘結材含有率演算部16iと、を備えている。
【0070】
これによると、圧縮性値が圧縮性値測定装置(計測筒12b)により測定され、水分測定値が水分測定値測定装置12eによって測定される。予め記憶された圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて、基準回収生型砂の測定した水分測定値に対応する基準圧縮性値Eoを求める。予め記憶された圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)に基づいて、変位回収生型砂の測定した水分測定値に対応する変位圧縮性値Edを求める。基準含有率(4.8%)、変位含有率(-0.8%)、対象回収生型砂TMSの圧縮性値E、基準圧縮性値Eoおよび変位圧縮性値Edに基づいて、対象回収生型砂TMSの粘結材含有率Vxを推定することができる。
【0071】
このように実際に回収された生型砂の粘結材含有率Vxを、造型ラインにおける回収生型砂MSの調整前に推定することができるので、造型ラインで使用される回収生型砂MSの粘結材の含有率をリアルタイムで正確に調整することができる。
【0072】
また、回収生型砂MSの砂温度を測定する砂温度測定装置12dをさらに備え、水分測定値測定装置12eは、電気抵抗式水分測定装置(電気抵抗式水分含有率測定装置に対応)であり、対象回収生型砂TMSの水分測定値は、砂温度測定装置12dにより測定された対象回収生型砂TMSの砂温度における水分測定値を対象回収生型砂TMSが所定温度(例えば、20℃)であるときの換算水分測定値に換算した水分測定値である。
【0073】
これによると、砂温度に幅のある対象回収生型砂TMSの水分測定値を、対象回収生型砂TMSが所定温度であるときの水分測定値に換算することで、使い勝手は良いが砂温度に水分測定値が影響される電気抵抗式水分測定装置を使って、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率を容易に推定することができる。
【0074】
また、回収生型砂MSに水分が加えられ混練された混練終了後に圧縮性値が経時変化して安定化する圧縮性値経時安定変化を水分含有率別に記憶する圧縮性値経時安定変化記憶部16bをさらに備える。
対象回収生型砂TMSの圧縮性値は、混練終了後の所定経過時間に圧縮性値測定装置(計測筒12b)により測定された圧縮性値を、対象回収生型砂TMSの測定した水分測定値における圧縮性値経時安定変化に基づいて、混練終了後に圧縮性値の変化が安定化する安定時間(例えば2時間)経過後における安定圧縮性値に変換した圧縮性値である。
圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)は、基準回収生型砂における混練終了後の安定時間(例えば2時間)経過時の圧縮性値である安定時間経過時基準圧縮性値と基準回収生型砂における水分測定値との関係を表すものであり、圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)は、変位回収生型砂における混練終了後の安定時間(例えば2時間)経過時の圧縮性値である安定時間経過時変位圧縮性値と変位回収生型砂における水分測定値との関係を表すものである。
【0075】
これによると、測定された圧縮性値を安定時間経過時のものに換算しており、圧縮性値-水分測定値基準関係は、安定時間経過時基準圧縮性値を使用し、圧縮性値-水分測定値変位関係は、安定時間経過時変位圧縮性値を使用している。そのため、測定された圧縮性値が水分測定値の変化が安定する前の途中状態であったとしても、安定時間経過時の圧縮性値に換算するので、測定時のばらつきによって生じる経時変化の影響を受けることなく、対象回収生型砂TMSの正確な粘結材BDの含有率を推定することができる。
【0076】
また、回収生型砂MSの粘結材含有率推定装置1に、対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率Vxに基づいて、対象回収生型砂TMSを目標とする粘結材含有率VTとするために粘結材BD不足分を演算して添加する粘結材不足分添加装置19をさらに備えて回収生型砂調整装置20とした。
【0077】
これによると、回収生型砂MSの粘結材含有率推定装置1により推定された対象回収生型砂TMSの粘結材BDの含有率Vxに基づいて、目標とする粘結材含有率VTとするために粘結材BDを演算して適切に添加することができる。
【0078】
また、回収生型砂調整装置20において、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)に基づいて、目標とする圧縮性値に対応する目標水分含有率を演算し、対象回収生型砂TMSを目標水分含有率とするために水分不足分を演算して注入する水分不足分注入装置(注水計量タンク10・圧縮性値制御装置13)をさらに備えた。
【0079】
これによると、目標とする水分測定値とするために水分不足分を演算して注入することで、目標とする圧縮性値を得ることができる。
【0080】
(第二実施形態)
本件発明にかかる回収生型砂の粘結材含有率推定装置101および回収生型砂調整装置120を含む回収生型砂再生設備RP2の第二実施形態について、
図13に基づいて以下に説明する。
【0081】
第二実施形態の回収生型砂の粘結材含有率推定装置101および回収生型砂調整装置120を含む回収生型砂再生設備101は、回収生型砂MSの水分含有率が砂性状を測定可能とする閾値(例えば、2.5%)未満の場合に水分を注入して予備混練を行う点、砂計量ホッパ7から測定用の対象回収生型砂TMSが砂性状測定装置12に送られる点、圧縮性値制御装置13のみが、砂混練機11内の対象回収生型砂TMSを用いて制御する点、混練砂ホッパ14の後工程に圧縮性値をチェックする圧縮性値チェック装置123が設けられている点において、第一実施形態と相違する。その他の構成は、第一実施形態と同様なので、同じ符号を付与して説明を省略する。
以下に、主に相違点について説明する。
【0082】
サンドビン3の上方には、予備混練機111が設けられ、予備混練機111の上部には予備混練用砂計量ホッパ112と予備混練用注水計量タンク113とが設けられている。予備混練用砂計量ホッパ112には、予備混練前回収砂ホッパ114から計量フィーダ2を介して回収生型砂MSが搬入される。予備混練用注水計量タンク113からは、一定量の水が予備混練機111に注入される。
【0083】
このように予備混練を実施することで、砂性状測定装置12の測定可能な水分量の閾値未満の回収生型砂MSであっても、一定量の水を注入することで測定を可能にすることができる。
【0084】
砂性状測定装置12は、砂計量ホッパ7に隣接させて設けられている。砂計量ホッパ7から対象回収生型砂TMSが抽出され、砂性状測定装置12によって砂性状が測定される。砂混練機11に回収生型砂MSが搬入される前に測定を開始できるので、調整作業をより迅速に実施することができる。
【0085】
また、圧縮性値制御装置13のみが、砂混練機11に隣接されている。この圧縮性値制御装置13には図略の水分測定装置が付設され、砂混練機11内の実際の対象回収生型砂TMSの水分含有率から注水計量タンク10に必要な量の水分を正確に指示することができる。混練砂ホッパ14の後工程に圧縮性値をチェックする圧縮性値チェック装置123が設けられることで、圧縮性値の基準に合致する混練砂MMSのみを鋳造ラインに供給することができる。
【0086】
なお、上記実施形態において、圧縮性値をコントロールするため、粘結材含有率推定装置1に目標水分含有率演算部13a、対象回収生型砂水分含有率演算部13b、水分含有率比較演算部13cおよび水分不足分演算部13dを含めるものとしたが、これに限定されない。例えば、目標水分含有率演算部および水分含有率比較演算部がなくても良く、この場合、圧縮性値をコントロールする別の装置を設けることができる。
また、圧縮性値は、例えば、コンパクタビリティを表す(CB値)であり、圧縮率をパーセントで表したり、圧縮された長さで表したりするものを含むものである。
【0087】
また、回収生型砂MSは、注湯等の高熱によって粘結材BDが焼失するため、一般に粘結材BDは不足した状態となっている。そのため、本実施形態では、粘結材BDが不足し、粘結材BDを追加するものとしたが、これに限定されない。例えば、回収生型砂に目標粘結材含有率よりも多く粘結材が含まれていても良く、この場合でも、回収生型砂の含有率を本件発明の粘結材含有率推定装置および粘結材含有率推定方法によって推定することができる。回収生型砂の粘結材含有率を減少させる方法として、例えば、水洗いした生型砂、新砂、乾式で摩擦再生した砂、焙焼後摩擦再生した砂等を注入することが挙げられる。
【0088】
また、回収生型砂MSの砂温度を換算する所定温度を20℃としたが、これに限定されず、例えば30℃でもよい。
【0089】
また、第一実施形態において、測定された圧縮性値Eを安定時間経過時のものに換算しており、圧縮性値-水分測定値基準関係(基準回帰線SRG)は、安定時間経過時基準圧縮性値を使用し、圧縮性値-水分測定値変位関係(変位回帰線DRG)は、安定時間経過時変位圧縮性値を使用している。しかし、これに限定されない。
例えば、圧縮性値-水分測定値基準関係は、基準回収生型砂(例えば粘結材含有率4.8(%))に水分が加えられ混練された混練終了後の一定時間経過時(例えば、10分経過時)の圧縮性値である一定時間経過時基準圧縮性値と基準回収生型砂における水分測定値との関係を表すものであり、圧縮性値-水分測定値変位関係は、変位回収生型砂(例えば、-0.8%変位)に水分が加えられ混練された混練終了後の一定時間経過時(例えば、10分経過時)の圧縮性値である一定時間経過時変位圧縮性値と変位回収生型砂における水分測定値との関係を表すものであり、対象回収生型砂の圧縮性値(例えばE(mm))は、対象回収生型砂TMSに水分が加えられ混練された混練終了後の一定時間経過時(例えば、10分経過時)に測定された圧縮性値であるものでもよい。
このように、対象回収生型砂TMSの圧縮性値を混練終了後の一定経過時間に測定することで、すべての比較対象が一定経過時間に統一される。そのため、測定された圧縮性値を経時変化に応じて変換することなく、測定された圧縮性値をそのまま使用して対象回収生型砂の正確な粘結材の含有率を推定することができる。また、一定経過時間を比較的短い時間に設定しておくことで、対象回収生型砂TMSの砂性状測定を短く設定することができ、迅速な調整作業とすることが可能である。
【0090】
また、粘結材含有率制御装置16および粘結材含有率推定装置1において、粘結材含有率比較演算部16jおよび粘結材不足分演算部16kを設けるものとしたが、これに限定されない。例えば、粘結材含有率比較演算部16jおよび粘結材不足分演算部16kに相当する演算を作業者が別個にディスプレイ上で行うものでも良い。
【0091】
また、粘結材BDをベントナイトとしたが、これに限定されず、粘結力を持つ粘土分でよく、例えば、カオリナイト、イライト等の粘土鉱物でもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、散布図と単回帰式によりベントナイト含有率の推定をしたが、例えば、通気圧、水分量、圧縮変位を粘結材含有率推定の要因となる説明変数として表した重回帰式を使用し、粘結材含有率を推定することができる。
【0093】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
鋳造ラインを流れる回収生型砂の性状をリアルタイムで分析して、目標とする粘結材の含有率とするために、必要な粘結材を添加する技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…粘結材含有率推定装置、8…粘結材計量装置(粘結材不足分添加装置)、9…粘結材計量ホッパ(粘結材不足分添加装置)、10…注水計量タンク(水分不足分注入装置)、12…砂性状測定装置、12b…計測筒(圧縮性値測定装置・粘結材含有率推定装置)、12b1…ピストン部(圧縮性値測定装置・粘結材含有率推定装置)、12d…砂温度測定装置、12e…水分測定値測定装置(粘結材含有率推定装置)、13…圧縮性値制御装置(水分不足分注入装置)、16…粘結材含有率制御装置(粘結材含有率推定装置)、16a…圧縮性値-水分測定値記憶部(圧縮性値-水分含有率記憶部)、16b…圧縮性値経時安定変化記憶部、16c…圧縮性値取得部(取得部)、16e…水分測定値取得部(取得部)、16f…基準圧縮性値演算部、16g…変位圧縮性値演算部、16i…対象回収生型砂粘結材含有率演算部(粘結材含有率演算部)、19…粘結材不足分添加装置、20…回収生型砂調整装置、101…粘結材含有率推定装置、120…回収生型砂調整装置、BD…粘結材、E…測定された圧縮性値、Eo…基準圧縮性値、Ed…変位圧縮性値、MS…回収生型砂、DRG…変位回帰線(圧縮性値-水分測定値変位関係、圧縮性値-水分含有率変位関係)、SRG…基準回帰線(圧縮性値-水分測定値基準関係、圧縮性値-水分含有率基準関係)、TMS…対象回収生型砂。