(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための方法及び機器
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20220729BHJP
F16D 66/00 20060101ALI20220729BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
F16D66/00 Z
G01M17/007 E
(21)【出願番号】P 2020521475
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 DE2018100001
(87)【国際公開番号】W WO2019001605
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】102017114378.5
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520000674
【氏名又は名称】フェルクエスト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シュナアーゼ,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラウフ,イェンス
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020317(JP,A)
【文献】特開平06-201305(JP,A)
【文献】特開2009-092435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
F16D 49/00-71/04
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパシート(11)に対するブレーキディスク(30)の位置ずれを確認するための方法であって、前記ブレーキディスク(30)と前記キャリパシート(11)との間の平行からの角度ずれ(34)が測定され、その際、前記ブレーキディスク(30)の位置ずれを確認するための機器(1)は、前記キャリパシート(11)に接続され、前記キャリパシート(11)に対して静止している前記機器(1)の少なくとも2個の距離センサ(20、22、22’)は、前記ブレーキディスク(30)の第1平面の方向で測定を行い、前記距離センサ(20、22、22’)は、前記ブレーキディスク(30)の異なる半径(R、R’)で測定された、前記ブレーキディスク(30)の前記第1平面と前記距離センサ(20、22、22’)間の距離(A、A’)を評価装置(40)に送信し、前記ブレーキディスク(30)の前記角度ずれ(34)が、前記距離から、前記評価装置によって確認されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ブレーキディスク(30)は、前記測定中、前記ブレーキディスクの回転軸周りに回転され、角度ずれ(34)は、前記ブレーキディスク(30)の前記回転中に測定された前記ブレーキディスク(30)からの距離(A、A’)を通して、前記ブレーキディスク(30)の各回転角度に応じて確認され、軸垂直度とディスク振れは、前記回転に依存する角度ずれ(34)に基づいて、前記評価装置(40)において別々に確認される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1個の更なる距離センサ(24)が提供され、該更なる距離センサは、前記ブレーキディスク(30)の面平行度が確認できるように、前記ブレーキディスク(30)の第2平面に向けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1個の距離センサ(20、22、22’、24)は、レーザ測定センサとして提供される、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1個の距離センサ(20、22、22’、24)は、静電容量型近接センサとして提供される、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キャリパシート(11)に対するブレーキディスク(30)の位置ずれを確認するための機器であって、前記キャリパシート(11)に接続するよう構成された接続領域(12)、及び前記キャリパシート(11)に対して静止している少なくとも2個の距離センサ(20、22、22’)が提供され、前記距離センサ(20、22、22’)は、前記ブレーキディスク(30)の回転軸に関して異なる半径(R、R’)に配置され、前記ブレーキディスク(30)の第1平面と前記距離センサ(20、22、22’)間の距離(A、A’)を、前記ブレーキディスク(30)の前記第1平面の方向で測定するように構成され、評価装置(40)が提供され、該評価装置は、前記距離センサ(20、22、22’)に接続され、それにより測定された距離(A、A’)が、前記評価装置(40)に送信でき、前記ブレーキディスク(30)の前記角度ずれ(34)が、前記距離から確認できるようにすることを特徴とする、機器。
【請求項7】
前記ブレーキディスク(30)は、前記測定中、回転でき、前記ブレーキディスク(30)の該ブレーキディスクの回転軸周りの回転角度が、確認でき、その結果、前記ブレーキディスク(30)の前記角度ずれ(34)における回転角度に依存する変化は、前記ブレーキディスク(30)の前記回転中に測定された前記ブレーキディスク(30)からの距離(A、A’)を通して、確認でき、前記評価装置(40)は、前記回転角度に依存する角度ずれ(34)に基づいて、軸垂直度及びディスク振れを別々に確認するように適合される、請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記ブレーキディスク(30)の第2平面に向けられ、前記第2平面からの距離を測定する少なくとも1個の更なる距離センサ(24)を含み、それにより前記ブレーキディスク(30)の面平行度が、前記更なる距離センサの測定値から確認できるようにする、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
少なくとも3個の距離センサ(20、22、22’)が、前記第1平面上で作用するように提供され、少なくとも2個の距離センサ(24)が、前記ブレーキディスク(30)の前記第2平面上で作用するように提供される、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
少なくとも1個の距離センサ(20、22、22’、24)は、レーザ測定センサとして構成される、請求項7~9のうちいずれか一項に記載の機器。
【請求項11】
少なくとも1個の距離センサ(20、22、22’、24)は、静電容量型近接センサとして構成される、請求項7~10のうちいずれか一項に記載の機器。
【請求項12】
別個の実施形態が、連続した車軸を有する車軸組立体(36)用に、及び個別の車輪懸架装置のためのステアリング車軸組立体(38)用に、其々提供される、請求項7~11のうちいずれか一項に記載の機器。
【請求項13】
接続シート(48)、及び要求される公差限界に対して寸法精度が高く、前記接続シートに平行な向きにサレル平坦な標準面を含む親調整器(46)を備える、較正装置(44)であって、前記接続シート(48)は、請求項7~12のうちいずれか一項に記載の前記機器(1)に接続でき、前記距離センサ(20、22、22’、24)及び/又は前記接続された評価装置(40)は、前記標準面に合わせて調節できる、較正装置(44)。
【請求項14】
前記親調整器(46)は、請求項7~12のうちいずれか一項に記載の前記機器(1)に能動的に移動可能な方法で接続されて、前記標準面が、自動的に前記距離センサ(20、22、22’、24)の測定領域内に移動でき、その後前記機器(1)が較正できるような、請求項13に記載の較正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリパシートに対するブレーキディスクの位置ずれを確認するための方法及び機器に関する。ブレーキディスクは、回転軸周りに回転でき、2つの対向する回転面を有する平坦な回転体を構成し、回転面は、基準面、即ち、キャリパシートに平行に走るようになっている。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野における特別な課題は、組立てられた部品の様々な幾何公差や位置公差が、合わさって単一のエラーパターンになるが、原因は、それにもかかわらず、別々に確認及び分析されるべきであることにある。
【0003】
確認されるべき重要なエラーは、ブレーキディスクの回転軸とキャリパシート間の垂直からのずれであり、上記エラーは、キャリパシートとブレーキディスクの平行度の少なくとも平均のずれに対応する。より良好に区別するために、この位置ずれを、これ以降、軸垂直度と呼ぶ。
【0004】
更に、回転面と不動な基準面間の現在の角度は、回転面と回転軸間で垂直についてのずれがあれば、回転中に変化し得、その結果ディスク振れとなり得る。
【0005】
振れに関係するエラーは、測定される平面の平坦度に関する公差によってだけではなく、ブレーキディスクの2平面の互いに対する平行度によっても発生し得るが、該エラーを、より良好に区別するために、これ以降、面平行度と呼ぶ。面平行度のずれの結果、周囲に沿って、回転物体の様々な半径で、異なる厚さになる。
【0006】
全ての前述した位置公差、即ち、軸垂直度、ディスク振れ及び面平行度は、密接に相関している。より良く理解するために、軸垂直度、ディスク振れ及び面平行度について其々模式的に図説する
図12a、
図12b及び
図12cを参照されたい。
【0007】
そのため、これらの位置公差の一つを別々に、特に、様々な公差が、組立てられたシステム全体で合わさった後に、確認するのは、困難である。しかしながら、キャリパシートに対するブレーキディスクの位置が重要であるため、公差の超過は極めて不利となる。さもなければ、制動中にキャリパ、キャリパシート、最終的に車軸へと発生する不均等な力の伝達は、結果的にシステム全体における不所望な振動を引起こしてしまう。
【0008】
様々な解決方法が、ブレーキディスクの測定に関する問題に対処する従来技術から知られている。例えば、独国特許発明第19853078号明細書(特許文献1)では、ディスク振れ及び同心度に関するブレーキディスクの点検を簡素化するための、測定装置及び方法について記載している。このために、シャフトは、ベアリングブロック上で回転可能に支持され、ブレーキディスクの支持体は、シャフトに設けられている。この様に取付けられることで、ブレーキディスクは、ディスク振れや同心度が、両平面及びシリンダ外面で、測定装置を使用してチェックされつつ、回転される。しかしながら、この点検から得られるのは、ブレーキディスク自体に関係する結果のみである。キャリパシート等の更なる表面に対する正確な同心度又は振れについては、提供されない。その上、同心度や振れ以外に、更なる値は、全く確認されない。
【0009】
独国特許出願公開第102011002924号明細書(特許文献2)は、同様に、制動中のブレーキディスクの振れを識別する方法に関する。この点において、この方法は、既に、上記方法よりブレーキディスクの実地の使用に近い。これは、ブレーキ圧、又はブレーキ圧に応じて変わる変数が、センサを用いて制動動作中に測定されるためである。得られたセンサ信号は、その後、ブレーキディスクに存在する振動に関して検査される。これらの振動は、その結果、ディスク振れに関する推定を可能にするが、該振動は、必ずしも、ブレーキディスク自体から生じたものとは限らない。また、エラーは、ブレーキディスクの取付けシステム全体に亘ることもある。回転系、即ちブレーキディスクに対して不動な表面を基準にすることは、そうして確立された。しかしながら、提案された方法では、如何なる更なる情報も確認できず、ディスク振れに関して、基本的に定性的な記述だけに限定されている。しかしながら、より重要には、識別された不具合の原因が、ブレーキディスクの機械的な位置異常であると、はっきりと突き止めることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許発明第19853078号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011002924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従って、位置ずれを確認するための方法及び機器を提案することであり、該位置ずれは少なくともキャリパに対するブレーキディスクの軸垂直度を含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、キャリパシートに対するブレーキディスクの位置ずれを確認するための方法によって達成される。本発明によると、ブレーキディスクとキャリパシート間の平行からの角度ずれが、測定され、その際、少なくとも軸垂直度及びディスク振れが、角度ずれの一因となる。上記測定は、ブレーキディスクの位置ずれを確認するための機器を、キャリパシートに接続することによって行われる。従って、軸垂直度及びディスク振れが、ブレーキディスクとキャリパシート間の平行からの角度ずれを介して、初めに、一緒に測定できる。このために、該機器は、少なくとも2個の距離センサを含み、該距離センサは、キャリパシートに対して静止しており、好適には、ブレーキディスクの第1平面に垂直に、第1平面の方向で測定を行う。距離センサは、ブレーキディスクの異なる半径で、即ち、ブレーキディスクの回転軸から複数の距離で、測定された、ブレーキディスクの第1平面と距離センサ間の距離を、評価装置に送信する。評価装置で、ブレーキディスクの角度ずれが、測定された距離から確認される。
【0013】
本発明の好適な変形された実施形態によると、ブレーキディスクは、測定中、回転される。これにより、角度ずれに関する変化を、ブレーキディスクの回転角度に応じて確認できる。
【0014】
角度ずれは、ブレーキディスクの回転中における、不動な基準面、この場合キャリパシートの位置からの、回転面、この場合ブレーキディスクの現在又は平均のずれから成る。角度ずれは、ターゲット角に基づく。要求されるのが平行であるため、ターゲット角は0°でなる。
【0015】
回転角度に依存する角度ずれは、ブレーキディスクの回転中に測定されたブレーキディスクからの距離を評価することによって、決定される。回転角度に依存する角度ずれに基づいて、即ち、回転軸周りのブレーキディスクの各回転角度を検討することによって、評価装置は、平均の角度ずれから軸垂直度を、及び回転中の角度ずれに関する変化からディスク振れを、別々に計算し、出力できる。
【0016】
位置ずれ、特にブレーキディスクの軸垂直度及び基準面に対するディスク振れが、特定の公差内に留まり、これが、迅速且つ効果的な方法でチェックできることから、各用途に関する機能上の信頼性は、大幅に改善される。結局、ディスクブレーキの場合、キャリパシートに対する向きのずれが大き過ぎると、ブレーキが作動されて、ブレーキパッドがブレーキディスクに当接するとすぐに、不所望な振動が生じる。本発明による方法を用いることで、公差を超過したかについての確認が、ステアリングナックル組立体又は車軸組立体を設置する前に、既に行われる。かかる場合では、欠陥がある組立体は、設置さえされず、指定された公差が満されるまで、すぐに再加工される。完成された車両に対する高価な再加工や苦情は、従って、防止される。
【0017】
また、ブレーキディスクの第2平面に向けられる少なくとも1個のさらなる距離センサが、提供される。評価装置が、このセンサの測定値と、第1平面の方に指向されたセンサの測定値を合わせれば、ブレーキディスクの面平行度が、更に確認でき、厚みの変化が、決定できる。本発明の好適な用途によると、ステアリングナックル組立体又は車軸組立体に取付けられたディスクブレーキのブレーキディスクが、ブレーキディスクとして提供され、ブレーキディスクは、キャリパシートに対するブレーキディスクの軸垂直度、ディスク振れ、及び面平行度について検査される。本発明によると、キャリパシートの水平面は、従って基準面となり、回転軸に向かう傾斜ポイントへと突出される。
【0018】
従って、第1距離センサが、第1平面上で作用するように配置される、及び/又は第2距離センサが、ブレーキディスクの第2平面上で作用するように配置される構成は、有利である。有利な構成では、少なくとも3個の距離センサが提供され、ブレーキディスクの平面に作用するための該3距離センサのうち少なくとも2個のセンサは、キャリパシートに強固に取着可能であり、ブレーキディスクの回転中、測定結果を評価装置に提供できる。ブレーキディスクの回転中での測定は、最大の位置異常を確認する可能性を提供するが、それに対して、静止状態における従来の測定の場合では、ディスク振れが存在すれば、ブレーキディスクの各位置に存在する現在の角度ずれのみが、確認できる。3個と2個、従って合計5個のセンサを含む配置が、特に好ましい。
【0019】
本発明の、特にまた機器の有利な変形例によると、少なくとも1個の距離センサは、レーザ測定センサとして提供される。レーダビーム等の他の距離測定技術は、代替手段と見なされ得る。
【0020】
しかしながら、少なくとも1個の距離センサが、静電容量型近接センサとして提供される構成は、特に有利であると判明した。該構成は、例えば、セラミック製ブレーキディスクも測定可能である。また、該構成は、極めて高い精度をもたらし、最小10nmまでのずれを測定可能にする。加えて、静電容量型近接センサは、殆ど設置スペースを必要とせず、それにより機器全体の大きさを、大幅に減少できる。
【0021】
本発明の更なる態様は、キャリパシートに対するブレーキディスクの位置ずれを確認するための機器に関する。本発明によると、キャリパシートと接続されるよう構成された接続領域、及びキャリパシートに対して静止する少なくとも2個の距離センサが、提供される。距離センサは、ブレーキディスクの回転軸に対して異なる半径で配置され、ブレーキディスクの第1平面と距離センサ間の距離を、好適には、キャリパシートに垂直に、且つブレーキディスクの第1平面の方向で、測定するように構成される。更に、評価装置が提供され、該評価装置は、測定された距離が、評価装置に送信でき、ブレーキディスクの角度ずれが、上記距離から確認できるような方法で、距離センサに接続される。
【0022】
評価装置は、第3距離センサが、対向する第2平面上で使用されれば、ブレーキディスクの面平行度を更に確認できるように構成される。
【0023】
特に有利な実施形態によると、少なくとも3個の距離センサは、第1平面上で、例えば内面上で作用するように配置され、2個の距離センサは、第2平面上で、例えば、ブレーキディスクの外面上で作用するように配置される。5個の距離センサで、様々な直径を有するブレーキディスクが、評価装置によって、各ブレーキディスクの縁部に最も近く配設されたセンサを、起動又はサンプリングすることによって、1つの測定装置上で、点検できる。縁部に最も近い距離センサは、好適には、ブレーキディスクの縁部から10mmの距離を有する。更に、測定方向がキャリパシートに垂直に走る構成は、有益であると判明した。
【0024】
有利には、少なくとも1個の距離センサは、レーザ測定センサとして、又はレーダビーム発光器として構成される。少なくとも1個の距離センサが静電容量型近接センサとして構成される構成は、特に有利である。該構成は、セラミック製ブレーキディスクも測定可能にする。また、該構成は、極めて高い精度をもたらし、最小10nmまで測定可能にする。加えて、静電容量型近接センサは、殆ど設置スペースを必要とせず、それにより機器全体の大きさを、大幅に減少できる。
【0025】
更なる利点は、複数の距離センサが、内面上で作用するように提供され、複数の距離センサが、ブレーキディスクの外面上で作用するように提供される構成から、生じる。
【0026】
また、別個の実施形態が、連続した車軸、即ち車軸組立体用に、及び個別の車輪懸架装置、即ちステアリングナックル組立体用に、其々提供される構成は、有利であると判明した。連続した車軸、特に後車軸の場合では、車軸ユニット全体が、本発明による機器に挿入されるが、個別の車輪懸架装置の場合では、車両の各側面のステアリングナックル組立体が、機器に挿入され、距離センサを保持するハウジングに別々に接続される。別個の機器、即ち別個のハウジングが、好適には、車両の各側面に提供され、別個の機器が、其々、右又は左側のステアリングナックル組立体又は車軸組立体用に提供される。
【0027】
本発明による目的を達成する際の貢献が、較正装置によって更に成され、該較正装置は、要求される公差限界に対して寸法精度が高く、ブレーキディスクの向きに平行な平坦な表面を備える親調整器を含み、該較正装置は、上記機器に接続できる。これは、距離センサ及び/又は接続された評価装置の調整を可能にする。寸法精度が高いブレーキディスクとして、又は異なる大きさのブレーキディスクをシミュレートするための変更可能な装置として構成された測定基準器は、親調整器及び機器全体を検査するのに役立つ。
【0028】
親調整器が、能動的に移動可能な方法で上記機器に接続されて、該親調整器がその測定基準面で自動的に測定領域に枢動でき、機器を較正できるような構成は、特に有益なことが判明した。これは、例えば、規則的な時間間隔、及び/又は、衝撃又は温度変化等の外部要因に応じて、行われる。かかる自動化可能な較正機能は、本機器が、連続生産における殆ど自動化された生産環境内で、採用される場合に、特に重要である。
【0029】
従って、本発明の更なる態様は、上記の本発明による機器を較正するための、従って、確実に絶えず正しい測定結果にするための較正方法に関する。
【0030】
典型的で例示的な検査手順は以下の通りである。
1.オペレータは、「左測定ユニット」として構成された機器を、キャリパの受容面上に置き、該機器を受容面に螺着する。
2.測定プログラムで、オペレータは、スクリーン上で「角度位置測定」を選択する。評価装置上で実行する測定プログラムは、レーザセンサからの値を読出して、2角度位置を計算する。角度は、スクリーン上に任意に出力される。
3.その後、オペレータは、「面平行度測定」を選択する。オペレータは、360度の範囲でブレーキディスクを手動で回転させるが、この回転は、代わりに、ドライブによっても行い得る。読出しは、例えば、イニシエータを介して行われる。回転が360度完了すると、結果が、スクリーン上に出力される。測定プログラムは、最小値と最大値の差を示す。これは、内面の2カ所で、及び外面の2カ所で行われる。
4.オペレータは、測定ユニットを取外して、該ユニットを、その休止位置でトロリ上に置く。
【0031】
その後、検査手順は、右側で繰返される。
【0032】
2平面の未知の固有の振れ又は面平行度を有するブレーキディスクを使用する代わりに、振れ公差が小さい、又はその振れに関する回転角度に依存する寸法ずれが既知の標準化されたブレーキディスクが使用されれば、測定精度は、高められ得る。各平面に対する振れにおける回転角度に依存する寸法ずれは、適用可能であれば、面平行度も、評価装置に保存されて、計算に含まれる。
【0033】
或いは、各ブレーキディスクは、製造後に測定され得、該ブレーキディスクの個々の表面図を保存され得る。この場合、個々の表面図が、ブレーキディスクを識別するのにだけでなく、各回転角度を明確に割当てるのにも、適するため、回転角度依存測定用の印を付ける必要はない。
【0034】
更に、また、個々の表面図の登録は、個々の表面図がブレーキディスクに関して提供された他のデータと一致しないときに、偽造品の識別も可能にする。
【0035】
位置ずれを確認するための機器の較正は、以下のステップを伴う例示的な手順を含む。すなわち
1.オペレータは、ブレーキディスクの位置ずれを確認するための機器の接続領域を、親調整器上に置き、該機器を螺着する。
2.評価装置の測定プログラムで、オペレータは、スクリーン上で「較正」を選択する。測定プログラムが、距離センサを較正する。
3.オペレータは、測定ユニットを取外して、該ユニットを、その休止位置でトロリ上に置く。
【0036】
本発明は、例示的な実施形態の記載及び対応する図面における該実施形態の図説として、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略側面図を示しており、キャリパシートに対する回転軸周りに回転可能なブレーキディスクの位置を図説している。
【
図2】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略正面図を示している。
【
図3】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略斜視図を示している。
【
図4】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の機能に関する略図を示している。
【
図5】ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略正面図を示しており、評価装置及び較正装置を含んでいる。
【
図6】車軸組立体上で使用中にブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略斜視図を示している。
【
図7】車軸組立体上で使用中にブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略斜視図を示している。
【
図8】カバーを閉じた状態で、ステアリングナックル組立体でのブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略斜視図を示している。
【
図9】カバーを開いた状態で、ステアリングナックル組立体でのブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器の一実施形態の概略斜視図を示している。
【
図10】本発明による機器の一実施形態を伴う車軸組立体36を示している。
【
図11】本発明による機器の一実施形態を伴う車軸組立体36を示している。
【
図12a】本発明の意味における位置公差:軸垂直度に関する略図を示している。
【
図12b】本発明の意味における位置公差:ディスク振れに関する略図を示している。
【
図12c】本発明の意味における位置公差:面平行度に関する略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、ブレーキディスク30の位置ずれを確認するための本発明による機器1の一実施形態の概略側面図を示している。また、ハウジング10に接続された基準面、即ちキャリパシート11に対する回転軸周りに回転可能なブレーキディスク30、及びキャリパシート11自体の位置も、示されている。ブレーキディスク30とキャリパシート11の両方は、ハウジング10によって被覆されるため、視認できない縁部として、点線を使用して図説されている。機器1のハウジング10は、接続領域12を介して、好適には、ねじ接続によって又は振止め手段を使用した振止めによって、不動且つ解除可能な方法でキャリパシート11に接続される。
【0039】
ブレーキディスク30上の測定ポイントMP1、MP2及びMP3は、距離センサ20、22及び24によって測定される。距離センサ20、22及び24は、各センサホルダ14を使用して、其々ハウジング10に固定的に接続される。
【0040】
距離センサ22に加えて、距離センサ22’が提供され、両センサは、ブレーキディスク30の第1平面上に作用する。測定ポイントMP2での測定が、外周付近、例えば、縁部から10mmの距離で行われるべきであるため、特定の場合に、2距離センサのどちらを使用するかは、ブレーキディスク30の直径によって決まる。測定された値は、評価装置40に送信される(
図5を参照)。
【0041】
図2は、ブレーキディスクの位置ずれを確認するための、本発明による機器1の一実施形態の概略正面図を示しており、センサ20、22及び22’其々が、ハウジング10上に示されている。機器1を設置箇所に運搬し易くするために、ハウジング10は、更に取っ手16を備えている。機器1が、設置箇所、特にステアリングナックル組立体又は車軸組立体及び該組立体のキャリパシートに位置決めされると、キャリパシートと機器1間の接続が、少なくとも1つの接続領域12を介して確立される。このプロセス中、キャリパシートの向きは、接続領域12及びハウジング10を介して、距離センサ20、22及び24に送信され、キャリパシートに対する該センサの向きが決定される。
【0042】
図から分かるように、接続領域12は、多数の穿孔を有する。従って、接続領域12は、異なる車軸組立体又はステアリングナックル、特にそこに其々提供されるキャリパシートと共に使用するのに適する。
【0043】
図3は、
図2のものと対応する図説された実施形態で、ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器1の一実施形態の概略斜視図を示している。この斜視図でも、取っ手16を有するハウジング10の他、距離センサ22、22’及び24を有するセンサホルダ14を示している。接続領域12は、キャリパシート11に、この場合では、ステアリングナックル組立体又は車軸組立体のキャリパシートに接続する役割を果たす。
【0044】
図4は、ブレーキディスク30の位置ずれを確認するための本発明による機器1の機能に関する略図を示している。この図は、ブレーキディスクの断面のみを示しており、ブレーキディスクの回転軸を含んでいない。ブレーキディスク30は、キャリパシートと平行に走り、標準位置を表すゼロ線32に対して、角度ずれ34分だけ傾斜している。角度ずれ34の大きさを確認するために、及び、提供された公差範囲を超えたかを決定するために、ブレーキディスク30の第1平面からの距離A、A’が、2つの異なる測定ポイントMP1及びMP2にある距離センサ20及び22によって確認される。この確認は、ブレーキディスク30の方に指向された、距離センサ20、22及び22’から其々発したセンサ信号26及び26’其々を使用して、行われる。このために凹部15を備えるハウジング10を通過すると、センサ信号26、26’は、測定ポイントMP1及びMP2で、ブレーキディスク30に達する。ハウジング10は、接続領域12を通してキャリパシート11に接続される。距離センサ20及び22、又は測定ポイントMP1及びMP2は、異なる距離で、即ちブレーキディスク30の回転軸からの半径R、R’で、配置される。
【0045】
確認された角度ずれ34を、キャリパシート11(ゼロ線32)に対する垂線からの回転軸の実際の角度ずれと明確に関係付けるのに、2つの別個の測定ポイントMP1、MP2だけで角度ずれを確認するのでは、不十分である。これを考慮すると、ブレーキディスク30は、測定中に、ブレーキディスクの回転軸周りに、少なくとも1回、及び好適には複数回回転される。このプロセス中、評価装置40(
図5を参照)は、距離センサ20、22及び22’其々から測定値だけでなく、例えば、ブレーキディスク30の駆動装置又は回転角度センサから送信される距離測定時点における現在の回転角度も受信する。使用される回転角度センサは、例えば、車輪リムが後に車両に設置される位置で、ブレーキディスク上に設置されるダミーの車輪リムであり得る。このために、ダミーの車輪リムは、回転角度センサによって読出できる適当な周囲目印を備える。最も単純な場合、5本のねじが、目印として使用され得る。
【0046】
評価装置40で実行される測定プログラムは、センサ20、22及び22’其々を介して、及び利用可能であれば、センサ24を介して、ブレーキディスクからの各距離の測定値を読出し、該測定値に基づいて、及び回転データ、即ち、別の測定値であるブレーキディスクの回転角度に基づいて、キャリパシート11に対するブレーキディスクの角度ずれ、及びディスク振れ、即ち、ブレーキディスク30の回転軸に対するブレーキディスク30の角度的な位置合せ不良を計算する。この様に、ステアリングナックル組立体38又は車軸組立体36のキャリパシート11に対する軸垂直度、ディスク振れ、及び面平行度に関する、ブレーキディスク30の状態について総合的な情報が、回転角度に依存する角度ずれ34の確認を通して得られる。
【0047】
また、ブレーキディスク30の面平行度についての情報を得るために、測定ポイントMP3を測定する、本明細書では図説されない距離センサ24が、ブレーキディスク30の反対側平面に提供される。このセンサは、例えば、測定ポイントMP2の正反対に配置され、このセンサもまた、評価装置40が、面平行度、すなわちブレーキディスクの厚さを、少なくとも測定ポイントの領域で全周に沿って決定できるような方法で、測定ポイントMP2及びMP3から測定された値を評価できるようにする。有利には、測定ポイントMP2用の2個の距離センサは、測定ポイントMP3用の2個の対応する距離センサによって、それらに合わせて対向される。追加の距離センサは、面平行度の一層正確な実態を提供するであろう。
【0048】
図5は、評価装置40及び較正装置44を含む、ブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器1の一実施形態の概略正面図を示している。また、全く測定が行われていないときに、機器1を安全に置くことができる休止位置42も示されている。
【0049】
評価装置40の主な機能については、前図面に関連して既に記載された。しかしながら、これに加えて、有利な実施形態では、評価装置40は、機器1の較正も実行する。較正は、常に正確な測定結果を提供できるようにするために、一定の間隔で要求される。このために、ブレーキディスクは、親調整器46と置換えられ、該親調整器46は、ゼロ線32(
図4を参照)からのずれ無し又は既知のずれのどちらかを示す標準面を含み、親調整器46は、機器1によって挿入され、測定される。距離センサ20、22及び22’其々、及び距離センサ24から得られた測定値は、機器1を較正するのに使用される。
【0050】
図6及び
図7は、車軸組立体36での使用中にブレーキディスクの位置ずれを確認するための、本発明による機器1の一実施形態の概略斜視図を示している。
図6は、ハウジング10を開放状態で図説しており、従って、距離センサ20、22及び22’だけでなく、車軸組立体36も示している。車軸組立体36は、キャリパシート11を含み、該キャリパシート11は、
図6では視認できないが、該キャリパシート11にハウジング10が螺着される。ブレーキディスク30を構成する、設置されたブレーキディスクは、次に、ブレーキディスクの軸周りに規定された方法で回転され、その間距離センサ20、22及び22’によって測定された値は、評価装置に送信される。評価装置における評価時に、キャリパシートに対するブレーキディスクの軸垂直度、ディスク振れ、及び面平行度が決定され、確認された値は、適当な方法で、保存され、更なる処理のために、出力又は転送され得る。
【0051】
図7は、同じ状況だが、閉じたカバー18と共に示している。異なる方向から見たため、この図は、アンカプレート13、キャリパシート11、及びキャリパシートに接続されるハウジング10の接続領域12を示している。
【0052】
図8及び
図9は、其々カバーを閉じた状態及び開いた状態で、ステアリングナックル組立体38でのブレーキディスクの位置ずれを確認するための本発明による機器1の一実施形態の概略斜視図を示している。ステアリングナックル組立体38は、同様に、取っ手16を使用してキャリパシートをハウジング上に位置決めした後に、機器1のハウジング10を取着するためのキャリパシートを含む。取着次第、ブレーキディスク、即ち、ブレーキディスク30の測定が、開始できる。
図9は、更に、距離センサ20、22及び22’を示している。
【0053】
図10及び
図11は、ブレーキディスク30としてブレーキディスクの他、機器1の位置決めされ取着されたハウジング10を伴う、車軸組立体36を示している。また、アンカプレート13、キャリパシート11及び接続領域12も示されている。
【0054】
図12a~
図12cは、本発明により確認される様々な位置公差に関する略図を示している。
図12aは、ブレーキディスク30の回転軸が、(延伸された)キャリパシート11に垂直に走る状態で、軸垂直度を示している。
図12bは、ディスク振れを示している、即ち、求められるのは、ブレーキディスク30、又はブレーキディスク30の平面と、ブレーキディスク30の回転軸との間の垂直度であり、ずれの結果、ディスク振れが生じる。
図12cは、ブレーキディスク30の面平行度、即ち、2平面の平行配向を示している。
【符号の説明】
【0055】
1 機器
10 ハウジング
11 キャリパシート
12 接続領域
13 アンカプレート
14 センサホルダ
15 凹部
16 取っ手
18 カバー
20 距離センサ1
22、22’距離センサ2
24 距離センサ3
26、26’センサ信号
30 ブレーキディスク
32 ゼロ線
34 角度ずれ
36 車軸組立体
38 ステアリングナックル組立体
40 評価装置
42 休止位置
44 較正装置
46 親調整器
48 接続シート
A、A’ 距離
MP1 測定ポイント1
MP2 測定ポイント2
MP3 測定ポイント3
R、R’ 半径