(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法及び半導体基板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220729BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20220729BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220729BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220729BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220729BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220729BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20220729BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220729BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/02 C
H01L29/86 301D
H01L29/86 301P
H01L29/86 301M
H01L29/86 301E
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 652L
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 658K
H01L27/12 B
H01L21/28 301S
H01L21/28 301B
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2021127797
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2018540631の分割
【原出願日】2017-05-31
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016186154
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515353811
【氏名又は名称】株式会社テンシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光治
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/140229(WO,A1)
【文献】特開2012-146694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 29/872
H01L 21/329
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくとも一方の平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層
が成膜された第2の基板と、
前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面に接合された所定の厚さの第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層と、
前記第1単結晶層上に
成膜された第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層と、
前記第2単結晶層に
形成された半導体素子と、
前記表面薄膜層として
、前記第2の基板の前記一方の平面側に更に
形成された半導体材料からなるバッファ層
と、
を備えることを特徴とする半導体
基板。
【請求項2】
前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む半導体膜
が成膜
されている請求項1記載の半導体
基板。
【請求項3】
前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料であ
る請求項1又は2に記載の半導体
基板。
【請求項4】
前記第2の基板はサファイア又はSiCからなる基板である請求項1乃至
3のいずれかに記載の半導体
基板。
【請求項5】
前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、
前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである請求項1乃至
4のいずれかに記載の半導体
基板。
【請求項6】
第2の基板の少なくとも一方の平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層を成膜する第1成膜工程と、
第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板の一方の平面と前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面とを接合する接合工程と、
前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さにおいて前記第1の基板を分離することにより、前記第1の基板の前記一方の平面側を第1単結晶層として前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層上に残す分離工程と、
前記第1単結晶層上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層を成膜する第2成膜工程と、
前記第2単結晶層に半導体素子を形成する素子形成工程と、
を含み、
前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面側に更に半導体材料からなるバッファ層を成膜することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さに水素注入層を形成する水素層形成工程を含み、
前記分離工程において、前記第1の基板を前記水素注入層で分離することにより、前記第1単結晶層を前記第2の基板に形成された前記表面薄膜層上に残し、
前記第2成膜工程により、前記第2の基板上に前記表面薄膜層と前記第1単結晶層と前記第2単結晶層とが順に積層された複層基板が形成される請求項
6記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む半導体膜を成膜する請求項
6又は7に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料であ
る請求項
6乃至
8のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の基板はサファイア又はSiCからなる基板である請求項
6乃至
9のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、
前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである請求項
6乃至
10のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法及び半導体基板に関する。詳しくは、暫定的な基板を使用することにより厚さが薄く且つ高耐圧の半導体素子を製造する半導体素子の製造方法、及び高耐圧半導体素子が形成された半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧用途の半導体素子の基板として、バンドギャップ幅が大きい炭化ケイ素(SiC)半導体基板が着目されている。
図16(a)は、SiCからなる一般的な縦型構造のショットキーダイオード(91)の断面構造を示している。単結晶からなる支持基板901上に能動層902がエピタキシャル成長により形成されており、その能動層902の領域にガードリングとなるP型不純物層911、912、及びショットキー電極913が形成されている。電流iは、ショットキー電極913と支持基板901の底面に形成されている裏面電極903との間で流れる。
また、同図(b)は、SiCからなる一般的な縦型構造のMOSFET(92)の断面構造を示している。単結晶からなる支持基板901上に能動層902がエピタキシャル成長により形成されており、その能動層902の領域にソース921、ドレイン922及びゲート923が形成されている。ソース921、ドレイン922間の電流の導通と遮断はゲート923により制御される。導通時のドレイン電流iは、ドレイン922と支持基板901の底面に形成されている裏面電極903との間で流れる。
また、同図(c)は、エピタキシャル成長により能動層902を成膜する初期に、高い窒素濃度の単結晶バッファ層904を設けたMOSFET(94)の断面構造を示している。単結晶バッファ層904は、エピタキシャル層の結晶欠陥密度を支持基板901の結晶欠陥密度と比べて低くするために形成される。
上記支持基板901は、電流が縦方向(図の上下方向)に流れる領域であり、20mΩ・cm以下の低い抵抗率とされる。一方、上記能動層902は、高電圧の耐圧が必要であるため、支持基板901と比べて2~3桁高い抵抗率とされている。SiCを用いる半導体素子はバンドギャップ幅が大きいため、能動層902の厚さを5~10μm程度と薄くできることが特徴である。能動層902は、支持基板901の上にエピタキシャル成長によって形成されるため、その結晶性は下地となる支持基板901に依存する。このため、支持基板901のSiCの結晶品質が重要となる。支持基板901の厚さは、単結晶基板の取り扱い時の割れ防止等のため、6インチサイズの基板の場合、300μm程度が必要とされる。そして、基板の表面側に素子形成後、支持基板部の抵抗を低くするために、裏面を研削して厚さは100μm以下まで薄くされる。
【0003】
SiCは格子定数の異なる炭素とシリコンとからなる化合物であるので、素子基板には結晶欠陥が多く発生する。特にパワー素子用途では結晶欠陥は致命的となるため、結晶欠陥の低減に種々の工夫がなされているが、そのため素子基板のコストが高くなっている。このため、エピタキシャル成長される能動層902の下地である支持基板901の結晶欠陥の低減とコストの低減とを両立させることが課題となっている。また、
図16に示すような縦型構造の素子の場合には、支持基板901は抵抗率を低くするため高濃度の窒素が添加されてN型半導体とされている。その上で、素子形成後には、支持基板901を薄く加工することによって支持基板層の抵抗の更なる低減を図っている。
このように、半導体素子の基板として高価格な単結晶基板が使用され、その単結晶基板の厚さは、能動層のために厚くされるのではなく、素子形成工程における基板の取り扱いのために厚くされている。さらに、素子形成後には基板は薄く加工され、単結晶基板の多くの部分は、研削により除去されているのが現状である。
【0004】
また、SiCからなる半導体素子の基板としては、表層の能動層だけが単結晶であればよい。支持基板層は結晶性を問わず、単結晶でも多結晶でも非晶質でもよい。従来、単結晶の能動層と単結晶ではない支持基板層とを接合する基板製造方法がある。例えば、非晶質シリコンを多結晶SiC支持体上に蒸着し、その多結晶SiC支持体と単結晶SiC基板とを接合し、直接ボンディングにより一体化する基板製造方法がある(特許文献1を参照)。また、表面活性化手法により基板の貼り合せを行う例も開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2004-503942号
【文献】特開2002-280531号
【文献】特開2015-15401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、従来、高電圧用途の半導体素子の基板は、一定の厚さの支持基板(支持層)上に、単結晶からなる薄膜層が能動層として形成されている。能動層はエピタキシャル成長させることにより製造されている。この支持基板は単結晶でもよいし多結晶でもよいので、薄い単結晶層と安価な多結晶半導体基板とを接合技術により貼り合せする手法も提案されてきた(特許文献1、2、3等)。しかし、異種の材料からなる接合基板は熱膨張係数の違いや結晶の不均一さにより反りが大きくなってしまい、実用上は課題が多い。
【0007】
また、従来、加工時の取り扱いのため350μm程度の厚い単結晶SiC基板を使用し、最終的には良好な素子特性を得るために支持層の厚さを100μm程度まで薄くしている。しかし、これでは高価な単結晶基板がフルに利用されないという問題がある。素子形成後に支持層を研削して薄くしていることを考慮すれば、素子基板としてそもそも薄い基板を使用することが考えられる。例えば、SiC素子用基板の場合には、バンドギャップ幅が大きい材料であるため、高電圧素子とするにも、基板の厚さは表層のエピタキシャル層の部分の厚さだけで十分であることに注目することができる。しかし、薄い基板は曲がり易く、反りも大きくなるという問題がある。
【0008】
また、
図16(c)のように単結晶バッファ層904を設けてエピタキシャル層902の結晶欠陥を低減しても、MOSFET素子動作中に少数キャリアの影響で結晶欠陥が増加するという現象が知られている。このため、素子形成後に単結晶バッファ層904を除去することが好ましいが、MOSFET素子が形成されたエピタキシャル層902の下地である単結晶バッファ層904を除去することは、一般的な構造では不可能である。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、暫定的な基板を使用することにより厚さが薄く且つ高耐圧の半導体素子を製造する半導体素子の製造方法、及び高耐圧半導体素子が形成された半導体基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の通りである。
1.その少なくとも一方の平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層が成膜された第2の基板と、前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面に接合された所定の厚さの第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層と、前記第1単結晶層上に成膜された第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層と、前記第2単結晶層に形成された半導体素子と、前記表面薄膜層として、前記第2の基板の前記一方の平面側に更に形成された半導体材料からなるバッファ層と、を備えることを特徴とする半導体基板。
2.前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む半導体膜が成膜されている前記1.記載の半導体基板。
3.前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料である前記1.又は2に記載の半導体基板。
4.前記第2の基板はサファイア又はSiCからなる基板である前記1.乃至3.のいずれかに記載の半導体基板。
5.前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである前記1.乃至4.のいずれかに記載の半導体基板。
6.第2の基板の少なくとも一方の平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層を成膜する第1成膜工程と、第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板の一方の平面と前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面とを接合する接合工程と、前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さにおいて前記第1の基板を分離することにより、前記第1の基板の前記一方の平面側を第1単結晶層として前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層上に残す分離工程と、前記第1単結晶層上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層を成膜する第2成膜工程と、前記第2単結晶層に半導体素子を形成する素子形成工程と、を含み、前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面側に更に半導体材料からなるバッファ層を成膜することを特徴とする半導体素子の製造方法。
7.前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さに水素注入層を形成する水素層形成工程を含み、前記分離工程において、前記第1の基板を前記水素注入層で分離することにより、前記第1単結晶層を前記第2の基板に形成された前記表面薄膜層上に残し、前記第2成膜工程により、前記第2の基板上に前記表面薄膜層と前記第1単結晶層と前記第2単結晶層とが順に積層された複層基板が形成される前記6.記載の半導体素子の製造方法。
8.前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む半導体膜を成膜する前記6.又は7.に記載の半導体素子の製造方法。
9.前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料である前記6.乃至8.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
10.前記第2の基板はサファイア又はSiCからなる基板である前記6.乃至9.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
11.前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである前記6.乃至10.のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
参考として、本開示の半導体素子の製造方法は以下のように構成することができる。
(1)仮支持基板とするための第2の基板の少なくとも一方の平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層を成膜する第1成膜工程と、第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板の一方の平面と前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面とを接合する接合工程と、前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さにおいて前記第1の基板を分離することにより、前記第1の基板の前記一方の平面側を第1単結晶層として前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層上に残す分離工程と、前記第1単結晶層上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層を成膜する第2成膜工程と、前記第2単結晶層に半導体素子を形成する素子形成工程と、前記半導体素子が形成された前記第2単結晶層上に第3の基板を接合する第2接合工程と、前記第3の基板を接合した後に前記第2の基板を除去する基板除去工程と、を含み、前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面側に更に半導体材料からなるバッファ層を成膜することを特徴とする半導体素子の製造方法。
(2)前記基板除去工程において更に前記表面薄膜層を除去し、前記第1単結晶層を更に除去する前記(1)記載の半導体素子の製造方法。
(3)前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さに水素注入層を形成する水素層形成工程を含み、前記分離工程において、前記第1の基板を前記水素注入層で分離することにより、前記第1単結晶層を前記第2の基板に形成された前記表面薄膜層上に残し、前記第2成膜工程により、前記第2の基板上に前記表面薄膜層と前記第1単結晶層と前記第2単結晶層とが順に積層された複層基板が形成される前記(1)又は(2)に記載の半導体素子の製造方法。
(4)前記第2成膜工程において、前記第2の半導体材料の単結晶からなる単結晶バッファ層を形成した後に前記第2単結晶層を成膜し、前記基板除去工程において、前記単結晶バッファ層を更に除去する前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(5)前記第1の基板の前記一方の平面上にシリサイド層を形成するシリサイド層形成工程を含む前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(6)前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む化合物半導体膜を成膜する前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(7)前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の他方の平面にSiCの多結晶からなる多結晶SiC膜を成膜する前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(8)前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料であり、前記基板除去工程において、前記第2の基板側からレーザ光を照射してGaを析出させることによって前記第2の基板を除去する前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(9)前記第2の基板はサファイア又はSiCからなる基板である前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(10)前記第2の基板はカーボンからなる基板であり、前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層は前記第2の基板の側面側を覆うように成膜される前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(11)前記第3の基板は金属基板である前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(12)前記第3の基板は、無アルカリガラス、サファイア及びSiのうちの1つからなる基板である前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(13)前記基板除去工程により露出された面上に、前記半導体素子の裏面電極層を形成する裏面電極形成工程を備える前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
(14)前記第2接合工程又は前記基板除去工程の後、前記第3の基板に前記半導体素子の電極部となる貫通孔を形成する開孔工程を備える前記(12)又は(13)に記載の半導体素子の製造方法。
(15)前記開孔工程において、前記貫通孔は前記第3の基板の表面側に向けて拡がるテーパ状に形成される前記(14)記載の半導体素子の製造方法。
(16)前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである前記(1)乃至(15)のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体素子の製造方法は、仮支持基板とするための第2の基板上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層を成膜する第2成膜工程と、前記第2単結晶層に半導体素子を形成する素子形成工程と、を備えている。このため、第2の基板を土台として第2単結晶層が成膜された複層基板が得られ、高温に耐えることができ且つ反りが少ない素子形成用の基板となすことができる。これにより、素子形成工程では、汎用のフォトリソグラフィ装置等を用いて、第2単結晶層内に半導体素子を形成することができる。特に、高電力用途に向いたSiC等の半導体は不純物拡散係数が小さいため、N型不純物、P型不純物共に熱拡散によるドーピングが困難である。また、Si半導体の製造プロセスのような熱拡散によるセルフアライメント処理が不可能である。そのため、N型不純物、P型不純物の添加位置を決めるにはステッパのように高精度の露光機が必要とされ、半導体基板の反りや曲がりは20μm程度以下に抑えることが求められる。前記複層基板は、第2の基板により反りや曲がりが小さく抑えられるため、ステッパを用いて第2単結晶層内に不純物領域等からなる半導体素子を形成することができる。
参考として、本半導体素子の製造方法は、半導体素子が形成された前記第2単結晶層上に第3の基板を接合する第2接合工程と、前記第2の基板を除去する基板除去工程と、を備えることができる。このため、半導体素子の最終的な支持基板となる第3の基板を接合した後、半導体素子を形成するために使用した第2の基板を除去することができる。これによって露出した裏面上に半導体素子の裏面電極を設けることが可能になる。
【0012】
第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板の一方の平面と前記第2の基板とを接合する接合工程と、前記第2の基板との接合面から所定の深さにおいて前記第1の基板を分離することにより、前記第1の基板の前記一方の平面側を第1単結晶層として前記第2の基板上に残す分離工程と、を含み、前記第2成膜工程において、前記第2単結晶層は前記第2の基板上に形成された前記第1単結晶層上に成膜される場合には、第2の基板を土台として薄い第1単結晶層及び第2単結晶層が積層された複層基板が得られ、第1の半導体材料(例えば、SiC)の単結晶からなる第1の基板の使用量を必要最小限とすることが可能となる。従来、一般的な高電力用途の半導体基板として、高濃度N型とされた厚さ350μm程度の単結晶SiC基板が支持層として用いられており、その上にエピタキシャル成長により厚さ5μm程度の単結晶SiC層(低濃度のN型層)が形成されている。そして、その単結晶SiC層に半導体素子を形成した後、支持層部分の抵抗値を小さくするために基板を研磨して厚さ100μm程度まで薄肉化した上で基板裏面に電極加工をしている。本発明の半導体素子の製造方法によれば、第1単結晶層によりN型層が構成され、その厚さを0.5μm程度と薄くすることができる。その上に、半導体素子の耐圧の面から必要な厚さ及び必要な不純物濃度の第2単結晶層を、エピタキシャル成長或いはMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって形成することができる。
前記基板除去工程において、前記第1単結晶層を更に除去する場合には、露出した前記第2単結晶層の表面上に半導体素子の裏面電極を設けることができる。
【0013】
前記第1の基板の前記一方の平面から所定の深さに水素注入層を形成する水素層形成工程と、前記第2の基板の少なくとも1つの平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層を成膜する第1成膜工程と、を含み、前記接合工程において、前記第1の基板の前記一方の平面と前記第2の基板上に形成された前記表面薄膜層の表面とを接合し、前記分離工程において、前記第1の基板を前記水素注入層で分離することにより、前記第1単結晶層を前記第2の基板に形成された前記表面薄膜層上に残し、前記第2成膜工程により、前記第2の基板上に前記表面薄膜層と前記第1単結晶層と前記第2単結晶層とが順に積層された複層基板が形成される場合には、第1の基板を表面薄膜層が形成された第2の基板に容易に接合することができる。また、水素注入層において第1の基板を容易に分離することができ、厚さの薄い第1単結晶層を第2の基板上に残すことができる。参考として、基板除去工程において表面薄膜層は除去することができ、それによって露出した第1単結晶層の表面上に半導体素子の裏面電極を設けることができる。
【0014】
参考として、前記第2成膜工程において、前記第2の半導体材料の単結晶からなる単結晶バッファ層を形成した後に前記第2単結晶層を成膜し、前記基板除去工程において、前記単結晶バッファ層を更に除去する場合には、単結晶バッファ層上に形成される第2単結晶層の結晶欠陥密度を低くすることができる。そして、半導体素子の支持基板となる第3の基板を接合した後、半導体素子を形成するために使用した第2の基板が除去され、単結晶バッファ層も除去されるため、半導体素子の動作時にPN接合部に順方向電流が流れても、少数キャリアの再結合により欠陥が増加することを抑制することができる。
【0015】
参考として、前記第1の基板の前記一方の平面上にシリサイド層を形成するシリサイド層形成工程を含む場合には、後に金属により半導体素子の裏面電極層を形成する際のシリサイド化処理を不要とすることができ、裏面電極形成時の熱処理を簡素化することができる。
【0016】
前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の一方の平面にシリコン酸化膜又はGaを含む化合物半導体膜を成膜する場合には、前記接合工程における第1の基板との接合、基板除去工程における第2の基板の除去、及び第2の基板除去後の表面薄膜層の除去を容易にすることができる。また、表面薄膜層とその上に積層される第2単結晶層とを合わせて、複層基板として高温度に耐えることができ且つ反りが少ない素子用の基板となすことができる。
【0017】
前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の前記一方の平面側に更に半導体材料からなるバッファ層が成膜されるため、シリコン酸化膜又はGaを含む半導体膜を第1層とし、バッファ層を第2層とする2層からなる表面薄膜層を形成することができる。
【0018】
参考として、前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層として前記第2の基板の他方の平面にSiCの多結晶からなる多結晶SiC膜を成膜する場合には、表面薄膜層により第2の基板の表面を全て覆うことが可能になり、半導体素子形成時の高温処理等から第2の基板を保護することができる。また、多結晶SiC層の膜厚を調整することによって、第2の基板の厚さを薄くしてもその両面での応力のバランスがとれるため、反りが少なく薄い複層基板とすることができる。
以上のような第1成膜工程において、第2の基板の端部の面取りをしておけば、第2の基板の平面上において厚さが板端まで均一となるように表面薄膜層を成膜することができ、その表面を研磨することなく前記第1の基板と接合させることができる。
【0019】
前記第2の基板は光を透過する基板であり、前記表面薄膜層はGaを含む半導体材料である場合には、前記基板除去工程において、前記第2の基板側からレーザ光を照射してGaを析出させることによって容易に第2の基板を除去することができる。除去された第2の基板は、Gaを含む材料の残渣を除去した後に再利用することが可能である。
【0020】
前記第2の基板がサファイア又はSiCからなる基板である場合には、前記複層基板の土台として、高温に耐えることができ且つ反りが少ない素子形成用の基板となすことができる。
参考として、前記第2の基板はカーボンからなる基板であり、前記第1成膜工程において、前記表面薄膜層は前記第2の基板の側面側を覆うように成膜される場合には、カーボン基板の全表面が表面薄膜層により覆われるため、高温で酸素が存在する環境において焼損が生じるカーボンを保護することができる。これにより、素子形成工程において高温の熱処理や高密度の酸素を含有する成膜等が可能になる。また、カーボン基板の厚さを薄くしても両面での応力のバランスがとれるため、反りが少ない薄い複層基板とすることができる。
【0021】
参考として、前記第3の基板が金属基板である場合には、半導体素子の支持基板となる金属基板をそのまま外部接続用の電極端子とすることができる。例えば、半導体素子がショットキーダイオードである場合には、金属基板をアノ-ド電極とし、第2の基板を除去した面にカソード電極を形成することができる。また、半導体素子がMOSFETである場合には、金属基板をそのままソース電極とすることができる。これらの場合、素子分割後に金属基板を実装基板に搭載することが容易となる。
【0022】
参考として、前記第3の基板は無アルカリガラス、サファイア及びSiのうちの1つからなる基板である場合には、接合が容易であると共に、半導体素子の支持基板として好適である。
また、前記基板除去工程により露出された面上に、前記半導体素子の裏面電極層を形成する裏面電極形成工程を備える場合には、第2の基板を除去した後に露出した面(第1単結晶層、バッファ層又は第2単結晶層)上に裏面電極層を設けることができる。
【0023】
参考として、前記第2接合工程又は前記基板除去工程の後、前記第3の基板に前記半導体素子の電極部となる貫通孔を形成する開孔工程を備える場合には、半導体素子を実装する際の電極配線を容易にすることができる。
また、前記開孔工程において、前記貫通孔は前記第3の基板の表面側に向けて拡がるテーパ状に形成される場合には、斜面となった貫通孔の壁面にアルミ等の配線を形成することができ、第3の基板の表面に電気配線を形成することが可能になる。
【0024】
前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである場合には、バンドギャップの大きい第1単結晶層上に、バンドギャップの大きい材料である第2の半導体材料からなる第2単結晶層が成膜されるため、高電力用途に適したSiC素子、GaN素子、酸化ガリウム素子等を製造することができる。例えば、第1の半導体材料及び第2の半導体材料がSiCであれば、単結晶SiC層が積層されることになるため、より好適である。
【0025】
参考として、本発明の半導体基板によれば、絶縁材料、半導体材料及び金属のうちの1つからなる支持基板と、前記支持基板上に接合層を挟んで積層された第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層を備え、前記第2単結晶層に半導体素子が形成されており、前記第2単結晶層の上に前記半導体素子の裏面電極層を備えることができる。半導体素子の裏面電極層が第2単結晶層上に直接形成されているため、導電性に優れる。また、高窒素濃度を含む多結晶層によりバッファ層が形成されていれば、一層低いオーミックコンタクトを得ることができる。
【0026】
本発明の半導体基板によれば、前記第2単結晶層上に第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層を備えるため、第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層の厚さを必要最小限とし、低コストの半導体基板とすることができる。また、半導体素子の耐圧の面から必要な厚さ及び必要な不純物濃度の第2単結晶層が形成されており、半導体基板の恒久的な支持層である支持基板は任意の厚さとすることができる。そして、前記裏面電極層は、第1単結晶層の上に、又は第1単結晶層上に設けられた半導体材料からなるバッファ層の上に備えることができるため、縦方向の電気伝導性及び熱伝導性に優れ、高電力用途の半導体素子に好適である。
前記第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つであり、前記第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つである場合には、バンドギャップの大きい第1単結晶層上に、バンドギャップの大きい材料である第2の半導体材料からなる第2単結晶層が成膜されているため、高電力用途に適したSiC素子、GaN素子、酸化ガリウム素子等が形成された半導体基板となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1の基板及び第2の基板を示す模式的な上面図及び側面図
【
図2】素子形成用の複層基板の構成を表す模式的断面図
【
図3】表面薄膜層で被覆された第2の基板(カーボン基板)の端部の断面画像
【
図4】両面に表面薄膜層が形成された第2の基板を土台として複層基板を形成する工程を示す模式的断面図
【
図5】複層基板を構成する第2単結晶層に形成された半導体素子を示す模式的断面図
【
図6】半導体素子形成後に第3の基板を接合し、貫通孔を形成する工程を示す模式的断面図
【
図7】複層基板を構成する第2単結晶層に形成された別の半導体素子を示す模式的断面図
【
図8】別の半導体素子形成後に第3の基板を接合し、テーパ形状の貫通孔を形成する工程を示す模式的断面図
【
図9】第3の基板を接合した複層基板から第2の基板を除去し、裏面電極となる裏面電極層を形成する工程を示す模式的断面図
【
図10】第3の基板を接合した複層基板から第2の基板及び表面薄膜層の第1層を除去し、バッファ層上に裏面電極層を形成する工程を示す模式的断面図
【
図11】ショットキーダイオードの製造工程を示す模式的断面図
【
図12】MOSFETの製造工程を示す模式的断面図
【
図13】金属の支持基板を用いる半導体基板(MOSFET素子)の製造工程を示す模式的断面図
【
図16】一般的な縦型構造の半導体素子の構造を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態に係る半導体素子の製造方法は、例えば、カーボン基板、SiC基板等を暫定的な支持基板(第2の基板(2))として使用することによって、高電力用途に適した半導体素子を製造するものである。カーボン基板やSiC基板は、反りが少なく高温まで耐えられるという特徴がある。本実施形態においては、そのカーボン基板(2)等を暫定的な支持層として、その一方の表面にシリコン酸化膜等(41)を介してSiC等の単結晶層(第1単結晶層(11))を接合し、更に半導体素子を形成するためのSiC等の単結晶からなる薄膜層(第2単結晶層(5))を形成する(
図2(a)、(b)参照)。また、カーボン基板(2)の他方の面には、SiC等からなる多結晶膜(多結晶SiC膜(42))を形成することができる。このようにカーボン基板(2)等を土台として形成される複層基板(6)を用いて、第2単結晶層(5)に半導体素子を形成することができる。そして、半導体素子形成後に、最終的な支持層となる基板(第3の基板(3))を接合し、暫定的な基板であったカーボン基板(2)等が除去される。これによって、上記第3の基板(3)を恒久的な支持層とし、それに積層された第2単結晶層(5)に半導体素子が形成された半導体基板を製造することができる。更に、この半導体素子の裏面(カーボン基板等が除去され、更にシリコン酸化膜が除去された面)には、半導体素子の裏面電極となる裏面電極層を形成することができる。これによって、高電力用途に適した半導体素子及び半導体基板を製造することが可能になる。
カーボン基板(2)は、その熱膨張係数をSiCからなる上記第2単結晶層(5)及びSiCからなる上記多結晶SiC膜(42)の熱膨張係数とほぼ同じにすることができる。また、カーボン基板(2)の厚さを数mmとすれば、剛性が高く、反りの無い複層基板(6)を得ることができる。更に、カーボン基板(2)の一方の面に積層するSiCからなる第2単結晶層(5)の厚さと、他方の面に形成する多結晶SiC膜(42)の厚さとをほぼ同じにすれば、カーボン基板(2)の厚さが1mm以下であっても、反りの少ない複層基板(6)を得ることができる。
【0029】
カーボン基板(2)は、シリコン酸化膜等(41)の成膜、多結晶SiC膜(42)の成膜から、第1単結晶層(11)の接合、第2単結晶層(5)の成膜、上記半導体素子の形成に至るまでの土台の役割を果たす。そして、複層基板(6)に第3の基板(3)を張り合わせた後には、カーボン基板(2)及びシリコン酸化膜等(41)を除去することにより、複層基板(6)の裏面には第1単結晶層(11)が露出し、半導体素子の裏面電極を形成することができる。これ以降、土台である支持基板の役割は第3の基板(3)が担うこととなる。従来の構造(
図16参照)においては、単結晶からなる厚い支持基板上に半導体素子を形成するための単結晶層が設けられ、更に支持基板の厚さを薄くする加工が施されていた。本発明の製造方法によれば、従来の支持基板を無くすことができ、薄肉化工程も不要とすることができる。また、結晶性の良い単結晶からなる第1単結晶層(11)上に、半導体素子の能動層となる高品質な第2単結晶層(5)を成膜することができる。このように各層の特徴を活かすことによって、半導体素子の形成を容易にすると共に、コスト低減を図ることが可能になる。
【0030】
カーボン基板(2)等を土台として形成された第1単結晶層(11)上に、高濃度窒素を含む単結晶の単結晶バッファ層(52)を形成し、その後に第2単結晶層(5)を形成してもよい。単結晶バッファ層(52)により、第2単結晶層(5)内の結晶欠陥を第1単結晶層(11)内の結晶欠陥より低減することができる。このように形成された複層基板(6)に第3の基板(3)を張り合わせた後には、カーボン基板(2)及びシリコン酸化膜等(41)等を除去し、更に第1単結晶層(11)及び単結晶バッファ層(52)を除去することにより、複層基板(6)の裏面には第2単結晶(5)が露出し、その裏面上に半導体素子の裏面電極を形成することができる。
【0031】
半導体素子形成後に、半導体素子の最終的な支持層となる第3の基板(3)が接合され、暫定的な基板であった第2の基板(2)が除去される。第3の基板(3)が金属基板である場合には、第3の基板(3)を半導体素子の外部接続用の電極端子とすることができる。例えば、半導体素子がショットキーダイオードである場合には、そのアノ-ド電極とすることができる。また、MOSFETである場合には、そのソース電極とすることができる。
【0032】
第2の基板(2)として、例えば、SiC基板(25)やサファイア基板(26)のように、レーザ光を透過する基板を用いることができる。その場合、Gaを含む半導体材料で表面薄膜層(例えば、GaN膜(413))を形成することが好ましい。そのようにすれば、レーザ光を照射することによりGaを析出させ、容易に第2基板(2)を除去することができる。SiC基板やサファイア基板は、Ga系薄膜を除去した後に、繰り返し第2の基板(2)として利用することができる。
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る半導体素子の製造方法を説明する。
本実施形態に係る半導体素子の製造方法は、
図1、2、4、6等に示すように、第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板1の一方の平面101から所定の深さに水素注入層15を形成する水素層形成工程と、第2の基板2の少なくとも1つの平面上に絶縁材料又は半導体材料の1層以上の薄膜からなる表面薄膜層4を成膜する第1成膜工程と、第1の基板1の一方の平面101と第2の基板2上に形成された表面薄膜層4の表面とを接合する接合工程と、第1の基板1を水素注入層15で分離することにより、分離された第1の基板1の一方の平面101側を第1単結晶層11として第2の基板2に形成された表面薄膜層4上に残す分離工程と、を備えている。そして、第1単結晶層11の表面上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層5を成膜することにより、第2の基板2上に表面薄膜層4と第1単結晶層11と第2単結晶層5とが順に積層された複層基板6を得る第2成膜工程と、複層基板6の第2単結晶層5に半導体素子を形成する素子形成工程と、を備えている。更に、前記半導体素子が形成された複層基板6の表面に第3の基板3を接合する第2接合工程と、第2の基板2を除去する基板除去工程と、を備えている。
前記第1成膜工程においては、第2の基板2の一方の平面201に表面薄膜層41を成膜するようにすることができる。また、第2の基板2の他方の平面202に、表面薄膜層42を成膜するようにすることができる。
【0034】
前記第2成膜工程は、第1単結晶層11の表面上に第2の半導体材料の単結晶からなる単結晶バッファ層52を形成した後に第2単結晶層5を成膜し、前記基板除去工程は、第2の基板2を除去した後に単結晶バッファ層52を除去するようにすることができる。単結晶バッファ層52は、例えば、窒素を高濃度に含む第2の半導体材料の単結晶により形成することができる。
【0035】
以下では、第1の半導体材料及び第2の半導体材料として、SiCを例として説明する。すなわち、第1の基板1は単結晶SiC基板とする。また、第2の基板2としてカーボン基板を使用し、その一方の面201に成膜する表面薄膜層41はシリコン酸化膜(SiO
2)とする。また、他方の面202に成膜する表面薄膜層42の材料は第2の半導体材料と同じであることが好ましく、その結晶性は問わない。以下では、表面薄膜層42は、SiCの多結晶からなる多結晶SiC膜であるとする。
図1(a)は、カーボン基板2、シリコン酸化膜41、多結晶SiC膜42及び第1単結晶層11の母材となる単結晶SiC基板1の例を示す上面図及び側面図である。カーボン基板2の一方の平面を上面201、他方の平面を下面(又は裏面)202、その側面全体を側面203とする。本図では、シリコン酸化膜41がカーボン基板2の上面201と側面203に形成され(側面203部は図示せず)、多結晶SiC膜42がカーボン基板1の下面202と側面203に形成されており(側面203部は図示せず)、単結晶SiC基板1の下面101から所定の深さに水素注入層15が形成された状態を表している。カーボン基板2及び単結晶SiC基板1の形状は問わないが、好ましくは円板状又は円柱状の基板である。また、カーボン基板2及び単結晶SiC基板1のサイズも限定されないが、取扱性の上でカーボン基板2が単結晶SiC基板1より一回り大きくされている。カーボン基板2の直径が、単結晶SiC基板1の直径よりも1~10mm程度大きいことが好ましい。例えば、単結晶SiC基板1が外径6インチ(約150mm)である場合には、カーボン基板2は外径160mm程度とすればよい。
前記接合工程において、カーボン基板2の表面201上に設けられたシリコン酸化膜41の表面と、単結晶SiC基板1の下面101とが接合される。
【0036】
図1(b)は、第2の基板としてSiC基板(又はサファイア基板)25を使用し、その一方の面201に表面薄膜層としてGaN膜413を成膜する例を示している。SiCは、酸素等の雰囲気において安定であるため、下面202に表面薄膜層を形成する必要はない。前記接合工程において、SiC基板25上に形成されたGaN膜413の表面と単結晶SiC基板1の下面101とが接合されることとなる。SiC基板25の直径は、単結晶SiC基板1の直径よりも1mm程度大きいことが好ましい。
【0037】
図2(a)及び(b)は、カーボン基板2の一方の面201上に表面薄膜層41と第1単結晶層(単結晶SiC層)11と第2単結晶層(単結晶SiC層)5とが順に積層された複層基板6を表す模式的な断面図である。
図2(a)に示す複層基板6(6a)は、カーボン基板2の上面201上に、表面薄膜層としてシリコン酸化膜41と、第1単結晶層11と第2単結晶層5とが順に形成され、カーボン基板2の他方の面(下面)202に多結晶SiC膜42が形成されて構成されている。この複層基板6の製造工程においては、先ずカーボン基板2の上面201及び側面203にシリコン酸化膜41が成膜され、次にカーボン基板2の下面202及び側面203に多結晶SiC膜42が成膜される。そして、シリコン酸化膜41を介してカーボン基板2と第1単結晶層11(単結晶SiC基板1)とが接合され、更にカーボン基板2の上面201側及び側面203側を覆うようにSiC層(5、51)が成膜されて、複層基板6aが構成される。SiCからなる第2単結晶層5を成膜する際に、第1の基板1の径はカーボン基板2の径よりも小さいため、第1単結晶層11の上面には単結晶からなる第2単結晶層5が成膜されるが、第1単結晶層11の径(即ち第1の基板1の径)を超える外周部及びカーボン基板2の側面203側には、多結晶からなる層(第2多結晶層)51が形成される。
【0038】
第2の基板2の一方の面201上に成膜する表面薄膜層は、2層の薄膜により構成することができる。
図2(b)に示す複層基板6(6b)は、カーボン基板2の上面201上に形成する表面薄膜層が2層からなる点で、同図(a)に示した複層基板6aと異なる。複層基板6bは、カーボン基板2の上面201上に第1層としてシリコン酸化膜41が成膜され、その上に第2層(半導体材料からなるバッファ層)としてSiC層が成膜されている。このSiC層は多結晶からなる。バッファ層を設けた複層基板6bは、カーボン基板2の上面201上に、表面薄膜層としてシリコン酸化膜41及びSiC多結晶からなるバッファ層412と、第1単結晶層11と第2単結晶層5とが順に形成され、カーボン基板2の他方の面(下面)202に多結晶SiC膜42が形成されて構成されている。カーボン基板2の側面203側は、シリコン酸化膜41、SiC多結晶からなるバッファ層412及び多結晶SiC膜42により覆われる。
【0039】
バッファ層412は、高窒素濃度の多結晶SiC層であってもよい。高窒素濃度の多結晶SiC層とすることにより、後の裏面電極形成時にオーミックコントクト性を良くすることができる。尚、高窒素濃度の多結晶SiC層と第1単結晶層11との間では、バンド幅の違いにより電位障壁が生じてオーミック接続の障害となる可能性がある。その場合には、接合前に第1単結晶層11の極く薄い表層を高窒素濃度にしておいてもよい。
【0040】
図2(c)は、第2の基板としてSiC基板(又はサファイア基板)25を使用し、その一方の面201に表面薄膜層としてGaN膜413を成膜した場合の複層基板6(6c)を示している。複層基板6cは、SiC基板25の上面201上に、GaN膜413と第1単結晶層11と第2単結晶層5とが順に形成されて構成されている。図示されていないが、第2単結晶層5を成膜する際に周縁部には第2多結晶層51が形成される。
上記複層基板6(6a、6b、6c)において、SiCからなる第2単結晶層5を成膜する前に、窒素を高濃度に含むSiCの単結晶からなる単結晶バッファ層52が形成されてもよい。
図2(d)は、第1単結晶層11の表面上に第2の半導体材料の単結晶からなる単結晶バッファ層52が形成され、その後に第2単結晶層5が成膜された複層基板6(6d)を示している。
図2(e)は、SiC基板25の上面201上に、GaN膜413と、バッファ層として高窒素濃度の多結晶SiC層53と、第1単結晶層11と、第2単結晶層5とが順に形成されて構成された複層基板6(6e)を示している。高窒素濃度の多結晶SiC層53を形成することにより、後の裏面電極形成時にオーミックコントクト性を良くすることができる。尚、高窒素濃度の多結晶SiC層53と第1単結晶層11との間では、バンド幅の違いにより電位障壁が生じてオーミック接続の障害となる可能性がある。その場合には、接合前に第1単結晶層11の極く薄い表層を高窒素濃度にしておいてもよい。
【0041】
(水素層形成工程)
第1の基板1は、第1の半導体材料の単結晶からなる。第1の半導体材料はSiCに限定されず、例えば、SiC、GaN、酸化ガリウム等を採用することができる。後の工程において、第1の基板1から分離された第1単結晶層11上に第2単結晶層5が形成されるため、第1の半導体材料は、第2単結晶層5の材料である第2の半導体材料と同じか又はSiCとすることが好ましい。
前記水素層形成工程は、第1の基板1の下面101から所定の深さに水素注入層15を形成する工程である。水素注入層15は、上記所定の深さ(例えば、0.2~1.5μm、好ましくは0.5μm程度の深さ)に水素イオンを注入することにより形成することができる。
【0042】
(シリサイド層形成工程)
図2に示した複層基板6(6a、6b、6c、6d、6e)において、第2の基板側となる第1単結晶層11の表面に予めシリサイド層を形成しておくことができる。例えば、第2の基板と接合する前に、第1の基板1の下面101にシリサイド層を形成する。このようにすれば、後に第2の基板を除去して半導体素子の裏面電極層を形成する際のシリサイド化処理を省略することができる。
【0043】
(第1成膜工程)
前記第1成膜工程は、第2の基板2の少なくとも1つの平面上に絶縁材料又は半導体材料の薄膜からなる表面薄膜層4を成膜する工程である。使用する絶縁材料又は半導体材料は、第1の基板1との接合性や第2の基板2の保護の必要性等に応じて適宜選択されればよく、例えば、シリコン酸化物(SiO2)、SiC、GaN等を挙げることができる。
第2の基板2にカーボン基板を用いる場合には、表面薄膜層4として、カーボン基板2の一方の平面201に、シリコン酸化膜41、又はシリコン酸化膜41及びSiCからなるバッファ層412を成膜するようにすることができる。また、それに加えて、カーボン基板2の他方の平面202に多結晶SiC膜(42)を成膜するようにすることができる。表面薄膜層41、412及び42の成膜は、いずれを先に行ってもよい。表面薄膜層(41、412、42)を成膜する際には、第2の基板2の側面203側にも同じ薄膜層(41、412、41)が形成される。
第2の基板2にサファイア基板を用いる場合には、表面薄膜層4として、一方の平面201にGaN膜又はシリコン酸化膜を成膜するようにすることができる。サファイア基板は素子形成工程の熱処理から保護する必要はないため、他方の平面202及び側面203には、表面薄膜層4を形成する必要はない。
【0044】
第2の基板2として光透過性のあるSiC基板25を用いる場合も同様である。SiC基板25の一方の平面201に表面薄膜層4としてGaを含む半導体層(例えば、GaN膜、酸化Ga膜)を成膜することができる。SiC基板25もまた素子形成工程の熱処理から保護する必要はないため、他方の平面202及び側面203に表面薄膜層4を形成する必要はない。また、サファイア基板やSiC基板は剛性があり、反りも抑制される。
【0045】
高電力用途の半導体素子を形成するには、窒素、リン、アルミニウム等の不純物の活性化のために1700℃程度の高温とする工程が必要である。その半導体素子を形成する土台となる第2の基板2として、カーボン基板を使用することができる。カーボンは、不活性ガス中においては上記のような高温に耐える材料である。しかし、カーボンは、酸素が存在する場合には400℃以上で焼損する。このようなカーボンを保護するために、カーボン基板2の全表面を被覆する方法を採用することができる。具体的には、第1成膜工程において、カーボン基板2の上面201及び側面203をシリコン酸化膜41で覆い、カーボン基板2の下面202及び側面203側を覆うように多結晶SiC膜42を成膜することが好ましい。更に、後の工程において、カーボン基板2の上面201側及び側面203側は、第2の半導体材料からなる薄膜層(第2単結晶層5及び第2多結晶層51)により覆われる。このようにすれば、カーボン基板2の全ての表面が多結晶SiC膜42、第2単結晶層5、第2多結晶層51等により被覆され、カーボン基板2が外部に露出しないので、酸素が存在する高温での加工を行うことができる。また、カーボン基板2の両面に形成されるこれら各薄膜の厚さのバランスをとることにより、カーボン基板2の反りを極めて小さくすることができる。カーボン基板2の裏面202に形成される多結晶SiC膜42の厚さは、カーボン基板2を覆うこと及び複層基板6の反りを減らすことを目的として、カーボン基板2の上面201側に形成されるシリコン酸化膜41等、第1単結晶層11及び第2単結晶層5の各厚さに対応して、反りが生じないようバランスさせるのに必要な厚さ(例えば、1~10μm程度)とすることが可能である。その場合、カーボン基板2の厚さは、反りを抑制しハンドリングを容易にするために最低限必要な厚さ(例えば、250~1000μm程度)とすることが可能である。
【0046】
図3は、カーボン基板2をシリコン酸化膜41及び多結晶SiC膜42で被覆したときの基板端部の断面画像である。カーボン基板2の上面201に熱CVD装置を用いてシリコン酸化膜41を形成すると、カーボン基板2の側面203側にもシリコン酸化膜41が成膜される。その後、シリコン酸化膜41面を下にして、上方からカーボン基板2の下面202に多結晶SiC膜42を成膜すると、カーボン基板2の側面203側にも多結晶SiC膜42が形成される。
図3において、多結晶SiC膜42とシリコン酸化膜41の境界部43を破線にて示している。このように、カーボン基板2の端部においては不均一が発生し、膜厚が一定とはならないため、カーボン基板2の板端の角部は、面取り処理(べベル処理)がされている。面取りの形状や大きさを適宜定めることにより、カーボン基板2の板端に至るまでシリコン酸化膜41及び多結晶SiC膜42の厚さが均一となるようにすることが好ましい。
【0047】
(接合工程)
前記接合工程は、第1の基板(単結晶SiC基板)1の下面101と第2の基板(カーボン基板)2上に形成された表面薄膜層4(シリコン酸化膜41)の表面とを接合する工程である。接合方法は特に問わず、例えば、両表面をアルゴンビーム等で活性化して接合することが可能である。カーボン基板2上に2層からなる表面薄膜層4(シリコン酸化膜41及びSiCからなるバッファ層412)が形成されている場合も、同様に接合することができる。
【0048】
第2の基板がSiC基板25(又はサファイア基板)であり、表面薄膜層4としてGaN膜413が形成されている場合には、接合工程において、第1の基板1の下面101とSiC基板25上に形成されたGaN膜413の表面とが接合される。接合方法は特に問わず、例えば、両表面をアルゴンビーム等で活性化して接合することが可能である。
【0049】
(分離工程)
前記分離工程は、第2の基板との接合面、即ち第1の基板の下面101から所定の深さにおいて第1の基板を分離することにより、第1の基板の下面側を第1単結晶層として第2の基板上に残す工程である。すなわち、第2の基板上に、前記所定の深さに相当する厚さの第1単結晶層が残される。
例えば、第1の基板(単結晶SiC基板)1を水素注入層15で分離することができる。これにより、第2の基板(カーボン基板)2に形成された表面薄膜層4(シリコン酸化膜41)上に、分離された第1の基板1の下面101側を第1単結晶層11として残すことができる。水素注入層15における分離は、接合された基板を高温とすることによって可能である。例えば、第1の基板1が単結晶SiC基板である場合には、900~1000℃で水素注入層15にてブリスタが発生し、水素注入層15を境界として単結晶SiC基板1が分離される。
第2の基板がSiC基板25(又はサファイア基板)であり、表面薄膜層4としてGaN膜413が形成されている場合も同様である。
【0050】
(第2成膜工程)
前記第2成膜工程は、仮支持基板である第2の基板上に第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層5を成膜する工程である。具体的には、第2の基板2(25)上に形成された第1単結晶層11の表面上に、第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層5を成膜することができる。第2の半導体材料は特に限定されず、例えば、SiC、GaN、酸化ガリウム等のうち1つを採用することができる。第2成膜工程により、例えば、カーボン基板(第2の基板)2上にシリコン酸化膜41と単結晶SiC層(第1単結晶層)11と成膜された単結晶SiC層(第2単結晶層)5とが順に積層された複層基板6を得ることができる。第2成膜工程においては、第1単結晶層11上には第2の半導体材料の単結晶層5が成膜され、第1単結晶層11が存在しない部分(即ち、第2の基板2の上面201側において第1単結晶層11が無い外周部分、及び第2の基板2の側面203側)には、第2の半導体材料の多結晶層51が形成される。
結晶性の良い第1単結晶層11は、その上に形成される第2単結晶層5の下地として好適である。第2単結晶層5の具体的な成膜方法は特に限定されない。例えば、第1単結晶層11上に、エピタキシャル成長により第2単結晶層5を成膜することができる。第2の半導体材料の種類によっては、MOCVD手法により成膜することも可能である。第2単結晶層5は、結晶性の良い第1単結晶層11上に成膜されるため高品質な単結晶層とすることができ、半導体素子を形成するために好適である。第2単結晶層5の厚さは、半導体素子の能動層とするために必要な厚さ(第2の半導体材料がSiCである場合、5~10μm程度)だけがあればよい。
以上の工程によって、
図2に示した複層基板6が形成される。
【0051】
第2成膜工程においては、第1単結晶層11上に窒素を高濃度に含む単結晶の単結晶バッファ層52を形成して、その後に窒素濃度の低い第2単結晶層5をエピタキシャル成長させることもできる。
【0052】
(素子形成工程)
前記素子形成工程は、第2成膜工程によって得られた複層基板6の表層である第2単結晶層5に半導体素子7を形成する工程である。半導体素子を形成する工程は、ショットキーダイオード、MOSFET、JFET等、目的とする半導体素子7を構成するために必要な不純物領域、絶縁物領域、表面の電気的配線領域等を形成する工程である(
図11、12参照)。複層基板6は、カーボン基板2の厚みやその両面に形成された薄膜のバランスにより曲がりや反りが抑制されるため、汎用のフォトリソグラフィ装置を使用して半導体素子7を形成することができる。
第2の基板がSiC基板又はサファイア基板である場合には、SiC基板又はサファイア基板自体の剛性により複層基板6の曲がりや反りが抑制される。
【0053】
(第2接合工程)
前記第2接合工程は、素子形成工程により半導体素子7が形成された複層基板6の第2単結晶層5側表面に第3の基板3を接合する工程である。第3の基板3の接合方法は特に問わず、例えば、第3の基板3と、半導体素子7が形成された第2単結晶層5の表面とを、適宜選択される接着層34等を介して接合することができる(
図6、8参照)。
第3の基板3としては、無アルカリガラスやサファイアのように絶縁材料からなる基板(31)を用いることができる。また、第3の基板3として、Si基板(32)等のような半導体材料を用いた基板を用いることもできる。無アルカリガラス、サファイア等の非半導体材料を用いる場合には、例えば、素子形成工程が完了した第2単結晶層5の表面に光硬化型接着剤をコートした接着層34を設け、その上に第3の基板31を貼り合せ、紫外線硬化により接合することが可能である。Si基板等を用いる場合には、例えば、素子形成工程が完了した第2単結晶層5の表面上にTEOS酸化膜(Tetra Ethyl Ortho Silicate酸化膜)を形成し、平坦化した後にSi基板32と接合することができる。接合はプラズマ活性化等により可能である。
【0054】
第3の基板3として金属基板33を用いる場合には、半導体素子7が形成された第2単結晶層5の表面に接合層34、金属接合層38を設け、その上に金属基板33を接合することができる(
図6(c)、
図8(c)参照)。金属接合層38は、Ni等の金属をスパッタで形成した上に厚膜のメッキ層を形成し、厚膜のメッキ層を平坦化した後に金属基板33と金属間接合をしてもよい。金属基板33を用いる場合には、下記開孔工程は不要である。
【0055】
(開孔工程)
前記第2接合工程の後、又は基板除去工程の後、第3の基板3に半導体素子7の電極部となる貫通孔を形成する開孔工程を備えることができる。開孔工程は、第2接合工程により複層基板6と第3の基板3(31、32)とを接合した後に、第3の基板3に貫通孔(36、37)を形成する工程である(
図6、8参照)。第3の基板3が無アルカリガラス、サファイア等の場合には、フォトリソグラフィにより電極部として必要な部分に貫通孔を設けることができる。また、第3の基板3がSi等の半導体材料の場合にも、フォトリソグラフィにより貫通孔を設けることができる。その場合、Siの面方位を100面とし、エッチングをKOH液で行うことにより、54度の角度を持つテーパを形成することができる。このテーパを利用し、後にSi基板の表面に電極を形成すれば、半導体素子の電極をSi基板表面に導くことが可能となる。この開孔工程は、複層基板6から第2の基板2を除去した後に行うようにすることもできる。
【0056】
(基板除去工程)
前記基板除去工程は、第3の基板3と接合された複層基板6から第2の基板(カーボン基板)2を除去する工程である(
図9、10参照)。具体的な基板の除去方法は特に問わない。例えば、カーボン基板2の下面202が多結晶SiC膜42により覆われている場合、先ず、複層基板6の周縁部(少なくともカーボン基板2の側面203側に形成されている第2多結晶層51、シリコン酸化膜41及び多結晶SiC膜42)を切断除去して、カーボン基板2の側面部203’を露出させる。その後、焼却等によりカーボン基板2を除去する。カーボンは、500℃程度の高温とすることによって容易に焼却することができる。カーボン基板2を除去した後、残存する表面薄膜層(シリコン酸化膜)41は、酸により又はドライエッチング等により、除去することができる。
【0057】
基板除去工程においては、第2の基板2がサファイア基板又はSiC基板25であり、表面薄膜層がGaN膜413である場合には、第2の基板2側からレーザ光を照射することによりGaN膜413からGaを析出させ、第2の基板2を容易に除去することができる。除去された第2の基板2は、表面薄膜層をエッチング等により除去した後に第2の基板2として再利用が可能である。
また、基板除去工程においては、第2の基板2(カーボン基板、SiC基板等)の除去後に残存する表面薄膜層4を除去し、更に第1単結晶層11を除去してもよい。
また、第2単結晶層5を成膜する前に単結晶バッファ層52が形成されている場合(
図2(d)参照)には、第2の基板2及び表面薄膜層41が除去されると、半導体素子7の裏面側には第1単結晶層11が露出する。この場合、第1単結晶層11と単結晶バッファ層52を除去してもよい。具体的な除去方法は特に問わず、例えばCMP等研磨により除去することができる。
【0058】
(裏面電極形成工程)
裏面電極形成工程は、半導体素子7の裏面、即ち第2の基板2及び表面薄膜層41が除去された面に、裏面電極層8(81、82)を形成する工程である(
図9参照)。基板除去工程により第2の基板2及び表面薄膜層41が除去されると、半導体素子7の裏面側には第1単結晶層11が露出することとなる。裏面電極形成工程においては、この半導体素子7の裏面にNi等のシリサイド用金属薄膜を形成し、その後、高温で第1単結晶層11とNi等の金属との界面にシリサイド化処理を行うことにより、シリサイド層81を形成することができる。シリサイド化処理は、レーザアニールのように表層だけを高温度にする手法を用いることが望ましい。その上で銅メッキや銀メッキにより金属層82を形成することが可能である。シリサイド層81の形成や金属層82の形成は、基板に反りが生じていても可能である。なお、第2の基板2の表面薄膜層にバッファ層412を設けた場合(
図2(b)参照)、基板除去工程により第2の基板2及び表面薄膜層41が除去されると、半導体素子7の裏面側にはバッファ層412が露出することとなる。この場合の裏面電極層8の形成については後述する。
【0059】
シリサイド化処理は、素子形成工程の前に行うようにすることも可能である(前記シリサイド層形成工程)。即ち、第2の基板2と接合する前に、第1の基板1の一方の表面101上に極薄のNi薄膜を形成する。そして熱処理をして第1の基板1の一方の表面101にシリサイド層を形成し、その後Ni薄膜層を除去する。その後、表面がシリサイド化された第1の基板1の一方の表面101と第2の基板2とが接合される。その後の工程を経て、第3の基板3の接合後に第2の基板2及び表面薄膜層41が除去された状態で、第1の基板1の一方の表面101のシリサイド層が露出する。露出したシリサイド層上に、裏面電極形成工程において銅メッキや銀メッキにより金属層82を成膜することができる。
【0060】
前記基板除去工程において、第1単結晶層11及び単結晶バッファ層52が除去されている場合には、裏面電極層8は、単結晶バッファ層52が除去されて露出した第2単結晶層5の面に形成される。
【0061】
以下、本実施形態に係る半導体素子の製造工程を具体的に説明する。本例では第2の基板として厚さ約0.5mmのカーボン基板2を使用し、その熱膨張係数は多結晶SiCの熱膨張係数と同程度となるように合わせてある。カーボンは、その密度、焼成温度を調整することにより熱膨張係数を調整することが可能である。また、カーボン基板2は、不純物となる金属の密度が1010/cm3以下と少なく、純度の高い素材である。また、本例において第1の基板は単結晶SiC基板1とする。
【0062】
(複層基板6の製造工程)
図4は、
図2で示した複層基板6の製造工程を示している。第1の基板1は単結晶SiCからなり、第2単結晶層5もSiCからなる。
図4(a)は、シリコン酸化膜41がカーボン基板2の上面201及び側面203に形成され、多結晶SiC膜42がカーボン基板2の下面202及び側面203側に形成されている基板61を表している。同図(b)は、単結晶SiC基板1の下面101から0.5μmの深さに水素イオンを注入することによって水素注入層15が形成された状態を表している。水素イオンの量は、1×10
17/cm
2程度であり、水素注入層15の水素密度は1×10
22/cm
3程度の高濃度となる。水素注入層15から平面101側が、単結晶SiCからなる第1単結晶層11になる。
同図(c)は、上記基板61と上記単結晶SiC基板1とを接合した状態を表している。カーボン基板2の表面に形成されたシリコン酸化膜41の表面と単結晶SiC基板1の平面101とを、両表面を活性化した後に接合する。
同図(d)は、上記接合された基板を約1000℃の高温にすることにより、単結晶SiC基板1が水素注入層15を境界として分離された状態を表している(分離された単結晶SiC基板1の母材側は図示せず)。カーボン基板2に形成されたシリコン酸化膜41の表面上に第1単結晶層11が積層されて、基板62が構成されている。
同図(e)に示す複層基板6は、上記基板62の第1単結晶層11の表面上に単結晶SiCをエピタキシャル成長させることによって、第2単結晶層5が形成されている。第2単結晶層5の成膜と同時に、第1単結晶層11が存在しないシリコン酸化膜41上の周縁部やカーボン基板2の側面側(多結晶SiC膜42上)には多結晶が成長し、第2単結晶層5と同じ厚さの第2多結晶層51が成膜される。複層基板6において、第2単結晶層5の厚さはその材料及び用途により異なり、SiCの場合には概ね5μm(耐圧600Vの場合)から10μm(耐圧1500Vの場合)の程度である。
同図(d)に示した基板62を形成した後、第2単結晶5をエピタキシャル成長させる前に、単結晶バッファ層52が形成されてもよい(
図2(d)参照)。
【0063】
(半導体素子の形成工程)
複層基板6に成膜された第2単結晶層5には、
図5及び7に示すように、目的とする半導体素子7を形成することができる。
図5は、第2単結晶層5に半導体素子7としてショットキーダイオード71を形成した例を示している。同図(a)は、複層基板6に形成された1つの素子部(A部)のみを示しており、同図(b)はその1つの素子部を拡大して描いた図である。
また、
図7は、第2単結晶層5に半導体素子7としてMOSFET75を形成した例を示している。同図(a)は、複層基板6に形成された1つの素子部(A部)のみを示しており、同図(b)はその1つの素子部を拡大して描いた図である。
なお、
図5及び7では素子部の詳細構造は省略している。
【0064】
図5(a)、(b)は、第2の基板としてカーボン基板2を使用し、表面薄膜層41、42が形成されている例を表している。
図5(c)は、第2の基板としてSiC基板25を使用し、表面薄膜層をGaN膜413としてショットキーダイオード71を形成した例を示している。
図7(a)、(b)は、第2の基板としてカーボン基板2を使用し、表面薄膜層41、42が形成されている例を表している。
図7(c)は、第2の基板としてSiC基板25を使用し、表面薄膜層をGaN膜413としてMOSFET75を形成した例を示している。図示されている貫通電極85については後述する。
【0065】
(第3の基板の接合工程)
半導体素子7の形成後、第2接合工程において、複層基板6の第2単結晶層5側の表面に、半導体素子7の恒久的な支持基板となる第3の基板3が接合される。第3の基板3の材料として、無アルカリガラスやサファイア等の絶縁材料、Si等の半導体材料を用いることができる。この第3の基板3の接合後、第3の基板3に半導体素子7の電極部を形成するための貫通孔を形成する開孔工程を行うことができる。
図6は、第3の基板3として無アルカリガラス基板31を用いる場合の第2接合工程と開孔工程を示している。同図(a)は、A部にショットキーダイオード71を形成した複層基板6(
図5参照)の第2単結晶層5側の表面に、接合層として光硬化型接着層34をコートし、その接合層を介して無アルカリガラス基板31を接着した状態を示す。光硬化型接着層34は、紫外光の照射により硬化がなされる。
同図(b)は、無アルカリガラス基板31に半導体素子の電極部を形成するための貫通孔36を設けた状態を表している。貫通孔36は、フォトリソグラフィにより形成することができる。半導体素子の実装時に、この貫通孔36を通して、ワイアボンディング等によりショットキーダイオード71の表面電極を外部のパッケージに電気的に接続することができる。
【0066】
また、
図6(c)に示すように、第3の基板3として金属基板33を用いることができる。本図は、第2の基板としてSiC基板25(又はサファイア基板)を使用し、表面薄膜層をGaN膜413とした例を示しているが、カーボン基板2を使用し、表面薄膜層41、42が形成されていてもよい。ショットキーダイオード71の素子表面をシリコン酸化膜により保護し、フォトリソグラフィによりアノ-ド電極部を開孔して、全面にニッケル薄膜を形成し、必要に応じてメッキで増膜して金属接合層38を形成する。その金属接合層38に金属基板33を直接接合することにより、金属基板33を外部接続用のアノ-ド電極とすることができる。
【0067】
図8は、第3の基板3としてSi基板32を用いる場合の第2接合工程と開孔工程を示している。同図(a)は、A部にMOSFET75を形成した複層基板6(
図7参照)の第2単結晶層5側の表面に、接合層としてTEOS酸化膜35を成膜し、その上にSi基板32を接合した状態を示す。TEOS酸化膜35とSi基板32とは、接合する両面を平坦化し、プラズマ照射により活性化した後に接合することができる。
同図(b)は、Si基板32に半導体素子の電極部を形成するための貫通孔37を設けた状態を表している。貫通孔37は、フォトリソグラフィにより形成することができる。本例においては、貫通孔37は54度のテーパ角をつけて形成されている。面方位(100)のSi基板32を用いてテーパエッチングすることにより、貫通孔37の壁面は54度の傾斜角でなだらかな斜面とすることができる。この斜面にアルミ配線を形成することにより、Si基板32の表面に電極を形成することが可能である。また、Si基板32の上面にヒートシンクを設けることも可能である。
【0068】
また、
図8(c)に示すように、第3の基板3として金属基板33を用いることができる。本図は、第2の基板としてSiC基板(又はサファイア基板)25を使用し、表面薄膜層をGaN膜413とした例を示しているが、
図8(a)、(b)に表されているように、カーボン基板2を使用し、表面薄膜層41、42が形成されていてもよい。MOSFET75の素子表面上に必要な電気配線を行う相互配線層36が形成されている。相互配線層36は接合層34を兼ねている。相互配線層36の表面にはMOSFET75のソースと電気的に接続された金属接合層38が形成されている。この金属接合層38に金属基板33を直接接合することにより、金属基板33を外部接続用のソース電極とすることができる。
【0069】
(裏面電極の形成)
図9は、複層基板6に半導体素子7を形成し、第3の基板3を接合した後に、半導体素子7の裏面電極となる裏面電極層8(81、82)を形成する工程を示している。
図9(a)は、
図6(b)と同じ図であり、A部は1つの半導体素子に当たる部分を示す。
図9(a)において、上面視で円形の単結晶層11及び5の外周を境界z1-z1’及びz2-z2’で表わしており、この境界に沿ってサークルカットをすることによって、境界を超える基板の外周部を除去する。
図9(b)は、上記境界に沿ってサークルカットすることにより外周部を除去した状態を示す。この状態で、切断されたカーボン基板2の側面203’が露出する。カーボン基板2を酸素雰囲気中で焼却により除去し、シリコン酸化膜41をエッチングにより除去すれば、第1単結晶層(単結晶SiC層)11の裏面が露出する。そこで、同図(c)に示すように、単結晶SiC層11の露出した面にNiを極薄に成膜し、レーザアニールによりNiと単結晶SiC層との界面をシリサイド化することによってシリサイド層81を形成する。そして、シリサイド層81上にメッキにより裏面電極となる金属層82を成膜することができる。また、予め第2の基板2側の第1単結晶層11の表面にシリサイド層81が形成されている場合には、直接メッキにより裏面電極となる金属層82を成膜することができる。
【0070】
図10は、
図2(b)に示した複層基板6(6b)から第2の基板2及び表面薄膜層の第1層41を除去し、バッファ層412上に裏面電極層8(81,82)を形成する工程を示す。本例においては、カーボン2の上面に表面薄膜層としてシリコン酸化膜41及びSiCからなるバッファ層412が形成されている。
図10(a)は、複層基板6(6b)に半導体素子7を形成し、第3の基板3を接合した後に、前図同様に外周を境界z1-z1’及びz2-z2’に沿ってサークルカットをすることによって、境界を超える基板の外周部を除去した状態を示している。A部は1つの半導体素子に当たる部分である。この状態で、切断されたカーボン基板2の側面203’が露出する。そして、カーボン基板2を酸素雰囲気中で焼却により除去し、シリコン酸化膜41をエッチングにより除去すれば、SiC多結晶からなるバッファ層412が露出する。そこで、同図(b)に示すように、露出したバッファ層412上にNiを極薄に成膜し、レーザアニールによりNiと単結晶SiC層11との間をシリサイド化することによってシリサイド層81を形成する。そして、シリサイド層81の上にメッキにより裏面電極となる金属層82を成膜することができる。表面薄膜層として形成したSiC多結晶からなるバッファ層412は、レーザアニールで電極界面が高温度になる場合に、半導体素子7のアルミ電極への熱的なバッファ層となる。
【0071】
以上において、単結晶SiC層11上に単結晶バッファ層52が形成されている場合には、それらを除去した後に露出する第2単結晶層5の面にNiを極薄に成膜し、Niと第2単結晶層5との界面をシリサイド化することによってシリサイド層81を形成することができる。
以上のように、複層基板6の構成(
図2(a)~(e))に関わらず、シリサイド層81及び裏面電極となる金属層82を形成することができる。また、第3の基板3として金属基板33を使用する場合(例えば
図6(c)参照)も、同様にシリサイド層81及び裏面電極となる金属層82を形成することができる。シリサイド化する単結晶SiC層11の表面には、その直前に高窒素濃度とするためのイオン注入をしてもよい。または、予め表層に極く薄い高窒素濃度層を設けておいてもよい。例えば、接合工程において第2の基板2と接合する前に、第1の基板1の下面101に極く薄い高窒素濃度層を形成しておくことができる。
【0072】
高電力用途の縦型素子を形成するための半導体基板においては、縦方向の電気伝導性と熱伝導性が重要である。本実施形態において、半導体基板としての電気伝導性については、第1単結晶層11と裏面電極となる金属層82との間の抵抗が重要になるが、この抵抗はシリサイド化により解消されている。また、支持層の電気抵抗は、カーボン基板2が除去されているので、実質的には極小化されている。熱伝導性についても同様であり、カーボン基板2が除去されて金属層82だけとされているため、熱伝導を妨げない。
【0073】
(ショットキーダイオード素子の形成)
図11は、複層基板6の表層に形成されている第2単結晶層5にショットキーダイオード素子71を形成する工程を示している。第1の基板1は単結晶SiCである。
図11(a)は、
図2に示した複層基板6を簡略化して表しており、第1単結晶層11及び多結晶SiC層51は図示していない。図中のA部は、複層基板6において1つの半導体素子に相当する領域である。以下の図(b)~(g)においては、そのA部を拡大して図示しており、1つの素子の形成工程を表している。
先ず、図(b)に示すように、N型とした第2単結晶層5の表面にSiO
2膜を形成し、フォトリソグラフィにより必要な部分を開口させてマスク701を形成する。そして、約500℃に加熱をした状態でマスク701の開口部にP型不純物をイオン注入し、その後マスク701を除去する。これにより、同図(c)に示すように、第2単結晶層5の表層部にP型不純物領域711が形成される。
次に、同図(d)に示すように、第2単結晶層5の表面にSiO
2膜を形成し、フォトリソグラフィにより必要な部分を開口させてマスク702を形成する。そして、約500℃に加熱をした状態でマスク702の開口部に別の濃度のP型不純物をイオン注入し、その後マスク702を除去する。これにより、同図(e)に示すように、第2単結晶層5の表層部に別のP型不純物領域712が形成される。P型不純物領域711及び別のP型不純物領域712が形成された後、これらの不純物の活性化のために高温にてアニール処理がされる。第2単結晶層5がSiCである場合には、約1700℃にてアニール処理がされる。
その後、熱CVDにより第2単結晶層5の表面上に厚さ1μm程度のSiO
2膜を形成し、電極となる部分をエッチングにより除去して開口させる。これにより、同図(f)に示すように、第2単結晶層5上にSiO
2の層間絶縁膜713が形成される。
そして、同図(g)に示すように、ニッケルなどの金属を蒸着した後、パターニングすることによって電極膜714を形成する。この状態でランプアニール等により瞬間的に1000℃を越える高温とすることによって、ショットキー界面が形成される。電極膜714は、更にアルミニウム等を用いて増膜することも可能である。以上の工程によって、ショットキーダイオード71の主要部を形成した複層基板が得られる。
引き続き、第3の基板を接合した後、
図9に示した例と同様にして、カーボン基板2及びシリコン酸化膜41を除去することによって露出される第1単結晶層11の面に、裏面電極層8を形成することによって、縦型構造のショットキーダイオード71を形成することができる。
【0074】
また、第3の基板3として金属基板33を用いる場合には、
図6(c)に示したように、半導体素子71が形成された第2単結晶層5の表面に接合層34、金属接合層38を設け、その上に金属基板33を接合することができる。金属接合層38は、Ni等の金属をスパッタで形成した上に厚膜のメッキ層を形成し、そのメッキ層の表面を平坦化して形成することができる。金属接合層38と金属基板33とは、金属間接合により直接に接合することができる。
【0075】
(MOSFET素子の形成)
図12は、複層基板6の表層に形成されている第2単結晶層5にMOSFET素子75を形成する工程を示している。第1の基板1は単結晶SiCである。
図12(a)は、
図2に示した複層基板6を簡略化して表しており、第1単結晶層11及び多結晶SiC層51は図示していない。図中のA部は、複層基板6において1つの半導体素子に相当する領域である。以下の図(b)~(e)においては、そのA部を拡大して図示しており、1つの素子の形成工程を表している。
先ず、N型とした第2単結晶層5の表面にSiO
2膜を形成し、フォトリソグラフィにより必要な部分を開口させてマスクを形成する。そして、約500℃に加熱をした状態で前記マスクの開口部にP型不純物をイオン注入し、その後マスクを除去する。これにより、同図(b)に示すように、第2単結晶層5の表層部にPウェル751が形成される。続いて、同様にSiO
2膜のパターンをマスクとして不純物を注入することにより、N+領域を形成することができる。これによって、ソース部、ドレイン部等が形成される。同図(b)は、Pウェル751、ソース部752、ドレイン部753等が形成された状態を示している。P型不純物からなるPウェル、N+不純物からなるソース、ドレインが形成された後に、これらの不純物の活性化のために高温にてアニール処理がされる。第2単結晶層5がSiCである場合には、約1700℃にてアニール処理がされる。
その後、熱CVDにより第2単結晶層5の表面に厚さ1μm程度のSiO
2膜を形成し、電極となる部分をエッチングにより除去して開口させる。続いて、ゲート部755を中心として部分的に絶縁膜をエッチングにより除去する。これにより、同図(c)に示すように、第2単結晶層5上に層間絶縁膜754が形成される。図はゲート酸化膜生成前の状態を示している。次に、同図(d)に示すように、ゲート酸化膜756を形成する。ゲート酸化膜756は、カーボン基板2が多結晶SiC層42及び51で完全に被覆されているため、酸素雰囲気で成膜できる。ゲート酸化膜756を形成した後に、コンタクト部が開口される。尚、ソース部752とドレイン部753の間のゲート酸化膜756上がゲート部755となる領域で、ゲート金属が形成されている(図示せず)。
同図(e)は、更に電極膜758、配線層759等を形成した構造を示している。以上によってMOSFET75の主要部を形成した複層基板が得られる。引き続き、
図9に示した例と同様にして、カーボン基板2及びシリコン酸化膜41を除去することによって露出される第1単結晶層11の面に、裏面電極層8を形成することによって、縦型構造のMOSFET75を形成することができる。
なお、
図12においてはプレーナ構造のMOSFETの構造例を示したが、トレンチ構造のMOSFETも、以上に説明した素子形成工程を変形することにより形成することが可能である。
【0076】
図13は、複層基板6の表層に形成されている第2単結晶層5にMOSFET素子76を形成する工程を示している。同図(e)に示す半導体基板66(MOSFET素子76)は、第3の基板(支持基板)3として金属基板33を使用し、金属基板33上に順に積層された第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層5と、を備え、第2単結晶層5に半導体素子が形成されており、第2単結晶層5の上側に裏面電極層82を備えている(
図13は、金属基板33を上側、裏面電極層82を下側にして描いてある。)。裏面電極層82は、第2単結晶層5上に設けられた第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層11上に形成されていてもよいし、更に、第1単結晶層11上に設けられた半導体材料からなるバッファ層の上に形成されていてもよい。すなわち、MOSFET素子76を形成する複層基板6の構成は、
図2に示した複層基板6a、6b、6c、6d、6eのいずれであってもよい。
図13においては、第2の基板2としてSiC基板25を使用し、第2の半導体材料(及び第1の半導体材料)はSiCである例を示している。
図13の各図は、1つの半導体素子に相当する領域を表しており、単結晶バッファ層52、第1単結晶層11、バッファ層(41、412、413)等は省略している。
同図(a)は、
図12に示したMOSFET素子75の場合と同様の工程によって、第2単結晶層5にPウェル751、ソース部752、ドレイン部753、層間絶縁膜754、ゲート酸化膜756、電極膜758、配線層759等が形成された状態を表している。SiC基板25は多結晶SiC層42等によって被覆される必要はない。尚、ソース部752とドレイン部753の間のゲート酸化膜756上がゲート部755となる領域で、ゲート金属が形成されている(図示せず)。
図13(b)は、第2単結晶層5を貫通する貫通孔851を形成した状態を表す。貫通孔851はトレンチ構造により形成することができる。そして、同図(c)に示すように、貫通孔851の内壁面を絶縁膜852で覆い、金属を蒸着する等して貫通電極85を形成する。金属層の接続性を高めるために貫通孔851をテーパ状とすることもできる。
同図(d)は、素子上に相互配線層36及び金属接合層38を設け、金属接合層38の上に支持基板として金属基板33を接合した状態を表している。相互配線層36において、ゲート酸化膜上の金属膜部であるゲート部755と貫通電極85とが電気的に接続される。また、相互配線層36により金属接合層38はソース部752と電気的に接続されており、金属基板33は外部接続用のソース電極Sとなる。金属接合層38は、Ni等の金属をスパッタで形成した上に厚膜のメッキ層を形成し、そのメッキ層の表面を平坦化して形成することができる。金属接合層38と金属基板33とは、金属間接合により直接に接合することができる。
そして、第2単結晶層5の下面側に接合されていたSiC基板25を除去する。前記のとおり、SiC基板25の表面にGaN膜413が形成されている場合には、レーザ光を照射することによりSiC基板25を除去することができる。また、前記のとおり、第1単結晶層11や単結晶バッファ層52等は、研磨等により除去することができる。
同図(e)は、SiC基板25等を除去して露出された第2単結晶層5の面に、選択的に裏面絶縁層83を形成し、更に、選択的に裏面電極層82を形成した状態を示している。これにより、第2単結晶層5の下面側(裏面ドレイン部)に接する裏面電極層82部は外部接続用のドレイン電極Dとなり、貫通電極85と接する裏面電極層82部は外部接続用のゲート電極Gとなる。以上のような工程により、MOSFET素子76が形成されている半導体基板66を得ることができる。
【0077】
上記構造において、素子の発熱が生じるチャンネル部であるソース部752とドレイン部753部の間の表面部は、熱伝導のために金属基板33に近いことが好ましい。そのため相互配線層36の厚さは薄いことが好ましい。相互配線層36の厚さを薄くするために、相互配線層36内のゲート配線部の下の第2単結晶層5の領域は、ゲート電位に近いソース又はPウェルの電位となるように配置することが好ましい。また、チャンネル部から金属基板33に至る熱伝導を良くするために、ソース部、Pウェル部が存在する第2単結晶層5の表面から金属基板33へ至る長さが短く、配線面積を大きくすることが好ましい。そのため、ゲート配線部をできるだけ小さくすることが好ましい。
なお、本例においては、金属基板33を接合する前に貫通電極85を形成しているが、金属基板33の接合後に、裏面側からトレンチ加工を行うことにより貫通電極85を形成することも可能である。また、本例のMOSFETの製造工程は、素子形成工程を変形することによりトレンチ構造のMOSFETに適用することができる。
【0078】
以上の実施形態においては、第2の基板2がカーボン基板であり、第1の半導体材料及び第2の半導体材料がSiCである場合を主として説明した。第2の基板2がカーボンである場合には、その密度や結晶粒の大きさなどにより熱膨張係数を調整することができる。それにより、第1の半導体材料及び第2の半導体材料の熱膨張係数に応じて、カーボン基板の熱膨張係数を合わせることができる。これにより、第1単結晶層11上に成膜する第2単結晶層5の結晶欠陥の低減を図ることができる。第2の半導体材料がGaN、酸化ガリウム、酸化ガリウム等であっても同様である。
第2の基板2の材料がサファイア又はSiCである場合には、表面薄膜層4として、Gaを含む化合物半導体膜を成膜することが好ましい。Gaを含む化合物半導体膜としては、GaN、酸化ガリウム、GaAs等が挙げられる。GaN膜を成膜した場合には、第3の基板3を接合後に第2の基板2の面よりレーザ光を照射することによってGaNからGaを析出させ、GaN膜で第2の基板2を分離すること(所謂レーザリフトオフ)も容易である。
【0079】
以上の実施形態において、第1の半導体材料及び第2の半導体材料がGaN、酸化ガリウム等である場合も同様である。また、第1の半導体材料及び第2の半導体材料がSiCであり、縦型構造の半導体素子を形成する場合を説明したが、GaN等を用いて横型構造の半導体素子を形成する場合においても、同様に製造することができる。具体的には、第2の基板2にシリコン酸化膜41を形成し、その上に第1の基板1を接合し、第2単結晶層5としてGaN層を成膜して横型の素子を形成し、第3の基板3を接合した後に第2の基板2を除去することができる。この場合、圧電性の材料であるGaN層を成膜するために、下地となる第2の基板2であるカーボン基板の熱膨張係数をGaNに合わせることにより、GaN層の内部応力を極小化することが可能である。カーボン基板は、その密度や結晶粒の大きさなどにより熱膨張係数を調整することができるからである。
【0080】
図2に示した複層基板6(6a、6b、6c、6d、6e)は、高電力用途の素子を形成するための半導体基板として好適である。以上のような半導体素子の製造方法を適用すれば、複層基板6を基にして、半導体素子が形成された半導体基板を構成することができる。
図14及び15は、複層基板6を使用し、支持基板3(前記第3の基板3)として、絶縁材料、半導体材料及び金属のうちの1つからなる基板を使用した半導体基板65を表している。半導体基板65には、半導体素子7が形成されている。(
図14及び15は、支持基板3を下側、裏面電極層8を上側にして描いてある。)
図14に示す半導体基板65は、絶縁材料、半導体材料及び金属のうちの1つからなる支持基板3(31、32又は33)と、支持基板3上に接合層34(35、36)を挟んで積層された第2の半導体材料の単結晶からなる第2単結晶層5を備えている。そして、第2単結晶層5に半導体素子7が形成されており、第2単結晶層5の上に半導体素子7の裏面電極層8(81、82)を備えている。半導体素子7の種類は問わず、例えば、前述のショットキーダイオード71、MOSFET75、76等を挙げることができる。
【0081】
図15は、半導体基板65の別の形態(65a、65b、65c)を表している。半導体基板(65a、65b、65c)においては、第2単結晶層5上に第1の半導体材料の単結晶からなる第1単結晶層11を備え、裏面電極層8(81、82)は、第1単結晶層11の上に、又は第1単結晶層11上に設けられた半導体材料からなるバッファ層412の上に備えている。すなわち、支持基板3(31、32又は33)上に接合層34(35、36)を挟んで第2単結晶層5及び第1単結晶層11が備えられており、第2単結晶層5に半導体素子7が形成されている。
同図(a)は、第1単結晶層11の上に半導体素子7の裏面電極層8を備える半導体基板65aの例を示している。裏面電極層8は、同図(b)に示すように、第1単結晶層11上に、半導体材料からなるバッファ層412を介して設けられていてもよい。支持基板3としては、無アルカリガラス、サファイア、Si等からなる基板を用いることができる。また、支持基板3には半導体素子7の電極部となる貫通孔3(36,37)が形成されていてもよい。
同図(c)は、支持基板3として金属基板33を、金属接合層38を介して接合した半導体基板65cを表している。金属基板33を使用すれば、熱伝導性に優れたパワー半導体とすることができる。
上記半導体基板に使用する第1の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つとし、第2の半導体材料はSiC、GaN及び酸化ガリウムのうちの1つとすることが好ましい。
半導体基板(65a、65b、65c)は、第1単結晶層11の厚さが薄くてよい(0.5~1μm程度)ため、第1の半導体材料の単結晶からなる第1の基板1の使用量はわずかで済む。また、第2の基板2がサファイア基板又はSiC基板25であり、レーザリフトオフにより除去すれば、第2の基板2として繰り返し使用することができる。このように製造工程においても消耗する部材が極めて少ないため、本形態の半導体基板65は極めて低コストとすることが可能である。
【0082】
尚、本発明は以上で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
SiC等を用いたパワー系化合物半導体素子は、車においてはハイブリッド車、電気自動車等の普及に伴ってますます重要度が増している。また、家庭においてはスマートグリッドの普及に伴って家電製品の制御やエネルギー管理のためにパワー系化合物半導体装置の役割が重要になってくる。本発明により、高価な材料であるSiC単結晶の使用量を大幅に減らすことができ、安価なパワー半導体素子を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1;第1の基板、11;第1単結晶層、15;水素注入層、101;第1の基板の下面、2;第2の基板(カーボン基板)、201;第2の基板の上面、202;第2の基板の下面、203;第2の基板の側面、25;第2の基板(SiC基板)、3;第3の基板、31;無アルカリガラス基板、32:Si基板、33;金属基板、34、35;接合層、36;相互配線層、37;貫通孔、38;金属接合層、4;表面薄膜層、41;シリコン酸化膜、412;バッファ層(多結晶SiC層)、413;GaN膜、42;多結晶SiC膜、5;第2単結晶層、51;第2多結晶層、52;単結晶バッファ層、53;高窒素濃度の多結晶SiC層、6、6a、6b、6c、6d、6e;複層基板、65、65a、65b、65c、65d;半導体基板、7;半導体素子、71;ショットキーダイオード、701、702;マスク、711、712;P型不純物領域、713;層間絶縁膜、714;電極膜、75、76;MOSFET、751;Pウエル、752;ソース部、753;ドレイン部、754;層間絶縁膜、755;ゲート部、756;ゲート酸化膜、757;コンタクト、758;電極膜、759;配線層、8;裏面電極層、81;シリサイド層、82;金属層、83;裏面絶縁層、85;貫通電極、91;ショットキーダイオード、92;MOSFET。