IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田 量子の特許一覧

特許7113567減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法
<>
  • 特許-減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法 図1
  • 特許-減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法 図2
  • 特許-減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220729BHJP
【FI】
A23L27/00 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022008904
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519096024
【氏名又は名称】前田 量子
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】前田 量子
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132842(JP,A)
【文献】和食における煮汁の香りが塩味に及ぼす影響,日本調理科学会大会研究発表要旨集, 2021年,セッションID:P-44,p.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/40
A23L 27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法であって、
醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(1)、(2)及び(3)で求められる値とする製造方法。
=P×Q×R…(1)
=P×R…(2)
=3-V-V…(3)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値を示す。]
【請求項2】
及びRは、同一の値である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
は1.45であり、R及びRはいずれも0.75である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
醤油、みりん及び日本酒のみからなる請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
及びPを、1.2を超え1.4以下から選ばれる同一の値とする、濃口を嗜好する喫食者用の請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
及びPを、0.6以上0.8未満から選ばれる同一の値とする、薄口を嗜好する喫食者用の請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
及びPを、0.8~1.2の間から選ばれる同一の値とする、通常味覚を嗜好する喫食者用の請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(1)、(2)及び(3)で求められる値とし、
=P×Q×R…(1)
=P×R…(2)
=3-V-V…(3)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値を示す。]
容量比率がVのみりん、容量比率がVの醤油、及び容量比率がVの酒の全てを個別に食材に加えるか、これらの少なくとも2つを混合して合わせ調味料とした上で全てを食材に加える、調理方法。
【請求項9】
少なくとも0.6~1.4の数字が含まれるように目盛りが表示された直行する縦軸及び横軸を有し、縦軸及び横軸の一方が醤油の容積比率を、他方がみりんの容積比率を表しており、
比例係数1の正比例直線と、
正比例直線上の、(醤油、みりん)=(A、A)である基準点S [但し、Aは0.6~1.4の間の数値を意味する。]の少なくとも一つと、
各基準点に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×0.98)の点S Aa
減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×1.05)の点S Ab
減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.12)の点S Ac
減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.2)の点S Ad 、が表示されており、
更に、少なくとも、点S Aa と点S Ab の間、点S Aa と点S Ac の間、点S Ad と点S Ab の間、点S Ad と点S Ac の間を結ぶ線の少なくとも一つが表示されている、チャートを用いた、醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法であって、
基準点Sに該当する、減塩前の醤油とみりんの容量比率の組を選択し、
減塩後の醤油とみりんの容量比率の組を、点SAaと点SAbの間、点SAaと点SAcの間、点SAdと点SAbの間、及び、点SAdと点SAcの間を結ぶ線で囲まれる領域から選択し、
減塩後の日本酒の容量比率を、選択された減塩後の醤油とみりんの容量比率の合計を3から差し引いた容量比率とする、製造方法。
【請求項10】
前記チャートは紙面上、画面上又は映写面上に表示されたものである、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減塩合わせ調味料の製造方法、これに用いられるチャート及び調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本となる調味料を所定の容量比で組み合わせることで、料理の味付けが良くなることが知られており、このような容量比は黄金比と呼ばれることがある。黄金比の調味料としては、例えば、醤油、みりん及び日本酒を、容量比1:1:1で組み合わせたもの、みりん、醤油及び出汁を、容量比1:1:5で組み合わせたもの、みりん、醤油、酢及び出汁を、容量比1:1:2:4で組み合わせたもの等がある(例えば、非特許文献1及び2参照)。なお、醤油とみりんを用いる場合、黄金比においてはこれらの容量比を同一にするのが一般的である。
【0003】
上記のなかでも、醤油、みりん及び日本酒を、容量比1:1:1で組み合わせたものは、味つけの黄金比の基本となる組み合わせである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】笠原将弘著、「5つの味付け黄金比」学研プラス発行、2019年6月25日、p.11-31
【文献】オレンジページ編、「味付け黄金比率で基本の料理100」オレンジページ発行、2020年8月17日、p.12-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調味料を工夫して料理を美味しく仕上げるのは、食生活を豊かにできるものの、料理に含まれる成分に気を配らず嗜好が偏ってしまうと、生活習慣病に繋がることがある。近年特に注目されている生活習慣病としては高血圧症があり、これは日常的な塩分過多に起因するものと考えられている。そこで、日々の食品に含まれる塩分濃度を低減することが望ましい。
【0006】
醤油、みりん及び日本酒が容量比1:1:1で組み合わされた黄金比の調味料は、様々な食材の味つけに万能であるため多用されている。この組み合わせは、味覚の点では非常に優れてはいるが、塩分を20%弱含有する醤油が1/3の容量で含まれていることから低塩分量とは言い難い。
【0007】
そこで、減塩を目的として、黄金比から醤油の量だけを減らすと、調味料のバランスが壊れ、味が大きく変化して美味しい味つけができなくなる。また、黄金比から醤油の比率を下げた場合、美味しさを保つために、みりんや日本酒の量をどのように変化させるべきなのか、或いは、他の調味料で補完すべきか等については、知見がないのが現状である。
【0008】
本発明の目的は、醤油、みりん及び日本酒を含有する合わせ調味料であって、塩分含有量が黄金比の調味料よりも少ないにもかかわらず、黄金比と同等又はそれ以上の美味しい味つけが可能な、合わせ調味料の製造方法を提供することにある。本発明の目的はまた、この製造方法に使用されるチャート及び調理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法であって、
醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(1)、(2)及び(3)で求められる値とする製造方法、を提供するものである。
=P×Q×R…(1)
=P×R…(2)
=3-V-V…(3)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値を示す。]
なお、この製造方法は、減塩合わせ調味料の調合方法と言い換えることもできる。
【0010】
及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値であることから、みりんと醤油をP及びPの容量で含むものは、黄金比の調味料である。本発明の製造方法においては、醤油の容量比率(V)を、PのR倍し、Rは0.7~0.8の間から選ばれるため、合わせ調味料全体として、黄金比に比べ減塩となる。また、みりんの容量比率(V)と日本酒の容量比率(V)を、上記の式に従って決定することから味のバランスが取れ、黄金比と同等又はそれ以上に美味しい味つけが可能な合わせ調味料を製造することができるようになる。
【0011】
本発明者は、合わせ調味料を研究する中で、塩分を含む醤油の容量比率(V)と糖分を含むみりんの容量比率(V)を、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値とした基本調味料から出発して(この場合、日本酒の容量比率は3-V-Vとなる。)、醤油(塩分)の容量比率はそのままにし、みりん(糖分)の量を1.4~1.5倍にすると(この場合、日本酒の容量比率は、醤油とみりんの合計容量比率を3から差し引いた値となる。)、基本調味料に比べて塩味は変わらず甘くなるはずが、甘みがあまり変わらず塩味が増えたように感じることを見出した。
【0012】
例えば、基本調味料の容量比率を、醤油:みりん:日本酒=1.2:1.2:0.6とし、これを出発点として、みりんの容量比率を1.45倍して、醤油:みりん:日本酒=1.2:1.74:0.06とすると、基本調味料に比べて、甘みがあまり変わらず塩味が増えたように感じることが見いだされた。したがって、醤油の容量比率をこれから減少させることが可能であることが判明した。そこで、醤油=1.2、みりん=1.74に、それぞれ0.7~0.8の間から選ばれる値を掛け合わせることで、塩分量が低いにもかかわらず、黄金比と同様のバランスの取れた味覚を付与可能な合わせ調味料を得ることができるとの知見を得た。例えば、醤油=1.2、みりん=1.74を0.75倍することで、醤油:みりん:日本酒=0.9:1.305:0.795の合わせ調味料が得られ、これを使用することで、黄金比に匹敵する美味しい味つけが可能になる。
【0013】
従って、本発明は以下の態様をも含むものであるとも言える。すなわち、塩分含有量を増加させずに塩味を強める、醤油、みりん及び日本酒を含有する合わせ調味料の調合方法であって、
醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(10)、(20)及び(30)で求められる値とする調合方法。
=P×Q…(10)
=P…(20)
=3-V-V…(30)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値を示す。]
【0014】
減塩合わせ調味料の製造方法及び合わせ調味料の調合方法においては、R及びRを同一の値にすることができる。R及びRを同一の値にすることにより、みりんの容量比率を1.4~1.5倍した組成から、醤油とみりんを等しい割合で削減することになるため、合わせ調味料全体としてのバランスが取れ、味つけがさらに優れるようになる。
【0015】
減塩合わせ調味料の製造方法及び合わせ調味料の調合方法においてはまた、Qを1.45とし、R及びRをいずれも0.75とすることができる。これらの値はQ、R及びRの範囲の中央値であり、合わせ調味料全体としてのバランスがさらに優れるようになり、上述した効果がさらに発揮される。
【0016】
合わせ調味料は、醤油、みりん及び日本酒以外の成分を含有していてもよいが、基本調味料のみ、すなわち醤油、みりん及び日本酒のみからなるようにしてもよい。
【0017】
減塩合わせ調味料の製造方法は、喫食者の嗜好によって使い分けが可能である。濃口を好む喫食者は醤油及びみりんの容量比率が1.2を超えることが通常であり、薄口を好む喫食者は0.8未満、通常味覚の喫食者は0.8~1.2となることが本発明者により見出されている。したがって、(1)P及びPを、1.2を超え1.4以下から選ばれる同一の値とする、濃口を嗜好する喫食者用の製造方法、(2)P及びPを、0.6以上0.8未満から選ばれる同一の値とする、薄口を嗜好する喫食者用の製造方法、(3)P及びPを、0.8~1.2の間から選ばれる同一の値とする、通常味覚を嗜好する喫食者用の製造方法が提供可能になる。
【0018】
また、醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(1)、(2)及び(3)で求められる値とし、
=P×Q×R…(1)
=P×R…(2)
=3-V-V…(3)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値を示す。]
容量比率がVのみりん、容量比率がVの醤油、及び容量比率がVの酒の全てを個別に食材に加えるか、これらの少なくとも2つを混合して合わせ調味料とした上で全てを食材に加える、調理方法も提供される。
【0019】
本発明はさらに上記製造方法の実施に用いられるチャートを提供するものである。すなわち、少なくとも0.6~1.4の数字が含まれるように目盛りが表示された直行する縦軸及び横軸を有し、縦軸及び横軸の一方が醤油の容積比率を、他方がみりんの容積比率を表しており、
比例係数1の正比例直線と、
正比例直線上の、(醤油、みりん)=(A、A)である基準点S[但し、Aは0.6~1.4の間の数値を意味する。]の少なくとも一つと、
各基準点に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×0.98)の点SAa
減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×1.05)の点SAb
減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.12)の点SAc
減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.2)の点SAd、が表示されており、
更に、少なくとも、点SAaと点SAbの間、点SAaと点SAcの間、点SAdと点SAbの間、点SAdと点SAcの間を結ぶ線の少なくとも一つが表示されている、チャートを提供する。なお、目盛りは好ましくは等間隔に表示される。
【0020】
このチャートは紙面上、画面上又は映写面上に表示されたものであってもよい。
【0021】
上記に加え、本発明は、上述したチャートを用いた、醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法であって、
基準点Sに該当する、減塩前の醤油とみりんの容量比率の組を選択し、
減塩後の醤油とみりんの容量比率の組を、点SAaと点SAbの間、点SAaと点SAcの間、点SAdと点SAbの間、及び、点SAdと点SAcの間を結ぶ線で囲まれる領域から選択し、
減塩後の日本酒の容量比率を、選択された減塩後の醤油とみりんの容量比率の合計を3から差し引いた容量比率とする、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、醤油、みりん及び日本酒を含有する合わせ調味料であって、塩分含有量が黄金比の調味料よりも少ないにもかかわらず、黄金比と同等又はそれ以上の美味しい味つけが可能な、合わせ調味料の製造方法が提供される。また、この製造方法に使用されるチャート及び調理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第一実施形態を示す図である。
図2】醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第二実施形態を示す図である。
図3】醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第三実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態に係る製造方法は、醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法に関するものであり、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)は、式(1)、(2)及び(3)で求められる。
【0025】
みりんの容量比率(V)については、V=P×Q×R…(1)の式で算出され、Pは、0.6~1.4の間から選ばれる値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、Rは、0.7~0.8の間から選ばれる値である。
【0026】
上述したように、本発明は、醤油(塩分)の容量比率はそのままにして、みりん(糖分)の量を1.4~1.5倍にすると、塩味は変わらず甘くなるはずが、甘みがあまり変わらず塩味が増えたように感じることを見出したことに基づくものであり、増強したように感じる塩味を利用して、醤油とみりんの容量比率を0.7~0.8倍に下げようとするものである。これに対応して上記式(1)を説明すると、Pは、減塩前の容量比率(初期容量比率であり、黄金比とも呼ばれる。)であり、Qはみりんの増量分に該当し、Rは、増強した塩味を利用してみりんの容量を減じる割合である。
【0027】
醤油の容量比率(V)については、V=P×R…(2)の式で算出され、Pは0.6~1.4の間から選ばれる値でありPと同一の値である。また、Rは、0.7~0.8の間から選ばれる値である。RはRと同一の値であっても相違する値であってもよいが味のバランスが優れることからRとRは同一の値であることが好ましい。なお、PとPが異なる値であった場合、出発点となる初期容量比率の合わせ調味料が、既に味のバランスを失っていることになり、みりんの容量比率(V)を上述のように増加させても塩味の増強効果は現れないか、現れてたとしても非常にわずかであり、みりんと醤油の容量比率を0.7~0.8倍したとしても、やはり味のバランスを失った合わせ調味料となってしまう。
【0028】
日本酒の容量比率(V)については、V=3-V-V…(3)の式で算出される。すなわち、みりんの容量比率(V)と醤油の容量比率(V)を算出した後に、これらの合計を3から差し引くことにより求める。
【0029】
及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値であるが、P及びPは、0.6~1.2の間、0.8~1.4の間、0.8~1.2の間から選ばれる同一の値であってもよい。P及びPが0.6未満であると味が薄くなりすぎ、1.4を超すと味が濃くなりすぎる傾向にある。R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値であるが、R及びRは、0.71~0.79、0.72~0.78、0.73~0.77、0.74~0.76であってもよい。また、R及びRは、0.75に固定してもよい。Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値であるが、Qは、1.41~1.49、1.42~1.48、1.43~1.47、1.44~1.46であってもよい。また、Qは1.45に固定してもよい。
【0030】
及びPの数値が1.2を超え大きいほど濃口を嗜好する喫食者向けとなり、この数値が0.8を下回り小さいほど薄口の嗜好する喫食者向けとなり、この数値が0.8~1.2の場合は通常味覚の喫食者用となる。すなわち、濃口を嗜好する喫食者向けとしては、P及びPは1.2超1.4以下となり、1.25~1.4、1.3~1.4であってもよい。一方、薄口を嗜好する喫食者向けとしては、P及びPは0.6以上0.8未満となり、0.6~0.75、0.6~0.7であってもよい。通常味覚の喫食者向けとしては、P及びPは0.85~1.15、0.9~1.1、0.95~1.05であってもよい。
【0031】
減塩合わせ調味料の製造方法に使用される醤油は、日本農林規格JAS1703:2021(2021年1月25日改正)に定めるしょうゆである。すなわち、日本農林規格に定めるしょうゆが採用でき、具体的には同規格に定める、こいくちしょうゆ(濃口醤油)、うすくちしょうゆ(薄口醤油)、たまりしょうゆ(溜醤油)、さいしこみしょうゆ(再仕込醤油)、しろしょうゆ(白醤油)のいずれが採用されてもよい。
【0032】
日本農林規格の概要を示すと、しょうゆとは、次に掲げるもの(これらに砂糖類,アルコール等を補助的に加えたものを含む。)をいう。
a)本醸造方式によるもの
もろみを発酵させ,及び熟成させて得られた清澄な液体調味料[製造工程においてセルラーゼ等の酵素を補助的に使用したものを含む。]
b)混合醸造方式によるもの
もろみにアミノ酸液,酵素分解調味液又は発酵分解調味液を加えて発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料
c)混合方式によるもの
a)、b)若しくは生揚げ又はこのうち2つ以上を混合したものにアミノ酸液,酵素分解調味液若しくは発酵分解調味液又はこのうち2つ以上を混合したものを加えたもの
【0033】
こいくちししょうゆは、しょうゆのうち,大豆にほぼ等量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類を加えたものをしょうゆこうじの原料とするものをいい、うすくちしょうゆは、しょうゆのうち、大豆にほぼ等量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類若しくは小麦グルテンを加えたものをしょうゆこうじの原料とし、かつ、もろみは米を蒸し、若しくは膨化したもの又はこれをこうじ菌によって糖化したものを加えたもの又は加えないものを使用するもので,製造工程において色沢の濃化を抑制したものをいう。
【0034】
たまりしょしょうは、しょうゆのうち、大豆若しくは大豆に少量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類を加えたものをしょうゆこうじの原料とするものをいい、さいしこみしょうゆは、しょうゆのうち,大豆にほぼ等量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類を加えたものをしょうゆこうじの原料とし、かつ、もろみは食塩水の代わりに生揚げを加えたものを使用するものをいう。また、しろしょうしょうゆとは、しょうゆのうち、少量の大豆に麦を加えたもの又はこれに小麦グルテンを加えたものをしょうゆこうじの原料とし、かつ、製造工程において色沢の濃化を強く抑制したものをいう。
【0035】
なお、こいくちしょうゆ(濃口醤油)、うすくちしょうゆ(薄口醤油)、たまりしょうゆ(溜醤油)、さいしこみしょうゆ(再仕込醤油)、しろしょうゆ(白醤油)の塩分濃度は、それぞれ、約16~17%、約18~19%、約16~17%、約12~14%、約17~18%と言われている。
【0036】
減塩合わせ調味料の製造方法に使用されるみりんは、酒税法3条11号に定めるみりんである。すなわち、みりんは、以下の(i)~(iv)に記載の酒類で、アルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)をいう。
【0037】
(i)米及び米こうじに焼酎又はアルコールを加えて、こしたもの、
(ii)米、米こうじ及び焼酎又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの、
(iii)みりんに焼酎又はアルコールを加えたもの、
(iv)みりんにみりんかすを加えて、こしたもの。
【0038】
みりんは、例えば、蒸したもち米、米こうじ、焼酎又はアルコールを原料とし、40~60日程度熟成させて製造することができ、本みりんとも呼ばれる。みりんは14%程度のアルコールを含有しているのが一般的である。本発明において、みりんには、みりん風調味料(水あめ等の糖類、米や米こうじ、うま味調味料、食塩等から得られアルコール含有量が1.0%未満の調味料等)は含まれない。みりんの製造工程においては、こうじ菌由来のアミラーゼの作用により、もち米のデンプンがマルトースなどに分解され、甘味を呈するようになる。したがって、みりんは減塩合わせ調味料に甘さを付与する役割がある。
【0039】
減塩合わせ調味料の製造方法に使用される日本酒は、酒税法3条7号に定める清酒である。すなわち日本酒は、以下の(i)~(iii)に記載の酒類でアルコール分が22度未満のものをいう。
(i)米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
(ii)米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)
(iii)清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
【0040】
日本酒は、普通酒であっても特定名称酒(本醸造酒、特別本醸造酒、純米酒、特別純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、純米大吟醸酒)であってもよいが、料理酒は塩分を含有しており、本発明における日本酒に含まれない。
【0041】
減塩合わせ調味料は、上述した醤油、みりん及び日本酒を、式(1)、(2)及び(3)で計算した比率で混ぜ合わせることで得ることができる。減塩合わせ調味料は、醤油、みりん及び日本酒を含有していればよく、これら以外の調味料(食塩を除く)を含有していてもよい。醤油、みりん及び日本酒以外に添加可能な成分としては、食塩を含まない調味料(例えば、うま味調味料、出汁)又は水を選択するのがよい。醤油、みりん及び日本酒の合計の含有量は、減塩合わせ調味料の全質量に対して95~100質量%、96~100質量%97~100質量%、98~100質量%、99~100質量%、99.5~100質量%とすることができる。成分比を調整することで減塩であるにもかかわらず黄金比に匹敵する味つけを可能にするものであるため各調味料のバランスが重要になることから、減塩合わせ調味料は、醤油、みりん及び日本酒のみからなることが好ましい。
【0042】
減塩合わせ調味料は、食材や調理法に適した量を使用すればよい。減塩合わせ調味料を使用する食材には制限はなく、食材としては、野菜、穀類、海藻、肉、魚介及び野菜が例示可能である。野菜としては、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ、レンコン等の根菜;キャベツ、ハクサイ、タマネギ、ネギ、ホウレンソウ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ミズナ、コマツナ、セロリ、シュンギク、アスパラガス等の葉菜;トマト、ピーマン、ナス、カボチャ、エダマメ、インゲン、オクラ等の果菜が挙げられる。
【0043】
穀類としては、米、麦、大豆、アワ、ヒエ、ソバ等が挙げられ、海藻としては、ワカメ、昆布、ヒジキ、モズク、メカブ、アオサ等が挙げられる。肉としては、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、猪肉、鹿肉等があり、魚介としては、マグロ、サンマ、イワシ、サバ、ブリ、ホッケ等の魚類;シジミ、アサリ、ホタテ、アカガイ、ミルガイ、ムールガイ等の貝類;タコ、イカなどの頭足類;ウニ、ナマコ等の棘皮動物;エビ、カニ等の甲殻類が含まれる。また、果物としては、リンゴ、ミカン、モモ、ナシ等がある。
【0044】
みりん、醤油、日本酒の容量比率は、式(1)、(2)及び(3)で計算して得られるが、実際の調理を行う場合、醤油、みりん及び日本酒の全てを混ぜて合わせ調味料として使用しても、求めた容積比率で、醤油、みりん及び日本酒を個別に使用してもよい。更には、醤油、みりん及び日本酒のうち少なくとも2つを混合して合わせ調味料とし、この合わせ調味料と、混合しなかった調味料を併用してもよい。なお、全てを混ぜて合わせ調味料としない場合は、最終的にみりん、醤油、日本酒の全容量を使用する必要がある。
【0045】
みりん、醤油、日本酒の容量比率を計算するために以下のようなチャートを用いることができる。すなわち、少なくとも0.6~1.4の数字が含まれるように等間隔に目盛りが表示された直行する縦軸及び横軸を有し、縦軸がみりんの及び横軸の一方が醤油の容積比率を、他方がみりんの容積比率を表しており、
比例係数1の正比例直線と、
正比例直線上の、(醤油、みりん)=(A、A)である基準点S[但し、Aは0.6~1.4の間の数値を意味する。]の少なくとも一つと、
各基準点に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×0.98)の点SAa
減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.7、A×1.05)の点SAb
減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.12)の点SAc
減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(A×0.8、A×1.2)の点SAd、が表示されており、
更に、少なくとも、点SAaと点SAbの間、点SAaと点SAcの間、点SAdと点SAbの間、点SAdと点SAcの間を結ぶ線の少なくとも一つが表示されている、チャートを使用できる。
【0046】
図1は、醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第一実施形態を示す図である。
【0047】
図1に示す第一実施形態のチャートは、0.6~1.4の数字が含まれるように0.1間隔に目盛りが表示された直行する縦軸及び横軸を有しており、縦軸がみりんの比率を、横軸が醤油の容積比率を表している。また、第一実施形態のチャートには、S0.6とS1.4を端点とする比例係数1の正比例直線が表示されている。
【0048】
そして、正比例直線上に、(醤油、みりん)=(0.6、0.6)である基準点S0.6、(醤油、みりん)=(0.7、0.7)である基準点S0.7、(醤油、みりん)=(0.8、0.8)である基準点S0.8、(醤油、みりん)=(0.9、0.9)である基準点S0.9、(醤油、みりん)=(1.0、1.0)である基準点S1.0、(醤油、みりん)=(1.1、1.1)である基準点S1.1、(醤油、みりん)=(1.2、1.2)である基準点S1.2、(醤油、みりん)=(1.3、1.3)である基準点S1.3、及び(醤油、みりん)=(1.4、1.4)である基準点S1.4が表示されている。
【0049】
正比例直線は、(醤油、みりん)=(0.6、0.6)と(醤油、みりん)=(1.4、1.4)を結ぶ直線の他、(醤油、みりん)=(0.6、0.6)と(醤油、みりん)=(1.2、1.2)を結ぶ直線、(醤油、みりん)=(0.8、0.8)と(醤油、みりん)=(1.4、1.4)を結ぶ直線、(醤油、みりん)=(0.8、0.8)と(醤油、みりん)=(1.2、1.2)を結ぶ直線等であってもよい。
【0050】
図1に示す第一実施形態のチャートには、また、基準点S0.6に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(0.42、0.588)の点S0.6a、減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(0.42、0.63)の点S0.6b、減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(0.48、0.672)の点S0.6c、減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(0.48、0.72)の点S0.6d
基準点S1.0に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(0.7、0.98)の点S1.0a、減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(0.7、1.05)の点S1.0b、減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(0.8、1.12)の点S1.0c、減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(0.8、1.2)の点S1.0d
基準点S1.4に対応するものとして、
減塩最大且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(0.98、1.372)の点S1.4a、減塩最大且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(0.98、1.47)の点S1.4b、減塩最小且つ甘さ最小の点として、(醤油、みりん)=(1.12、1.568)の点S1.4c、減塩最小且つ甘さ最大の点として、(醤油、みりん)=(1.12、1.68)の点S1.4d、が表示されている。
【0051】
また、図1には、点S0.6aと点S0.6bの間、点S0.6aと点S0.6cの間、点S0.6dと点S0.6bの間、及び点S0.6dと点S0.6cの間を結ぶ線、
点S1.0aと点S1.0bの間、点S1.0aと点S1.0cの間、点S1.0dと点S1.0bの間、及び点S1.0dと点S1.0cの間を結ぶ線、並びに
点S1.4aと点S1.4bの間、点S1.4aと点S1.4cの間、点S1.4dと点S1.4bの間、及び点S1.4dと点S1.4cの間を結ぶ線、が表示されている。
【0052】
図1には、基準点が9つ示され、そのうちの3つの基準点に対応する減塩の組成の点4つ(すなわち、減塩最大且つ甘さ最小の点、減塩最大且つ甘さ最大の点、減塩最小且つ甘さ最小の点、減塩最小且つ甘さ最大の点)が示されているが、基準点は少なくとも1つ示されていればよく、その位置は正比例直線の任意の点である。また、減塩の組成の点4つの組は少なくとも1組示されていればよい。
【0053】
図1には、減塩の組成の点4つを結ぶ直線が4本記載されているが、この直線は少なくとも1つ記載されていればよい。また、減塩の組成の点の対角線が記載されていてもよく、減塩の組成の点4つで囲まれる領域で、任意の方向に直線が引かれていてもよい。
【0054】
図2は、醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第二実施形態を示す図である。
【0055】
図2に示す第二実施形態のチャートは、S0.6に対応するS0.6a、S0.6b、S0.6c及びS0.6d、で囲まれる内部、S1.0に対応するS1.0a、S1.0b、S1.0c及びS1.0dで囲まれる内部、並びに、S1.4に対応するS1.4a、S1.4b、S1.4c及びS1.4dで囲まれる内部が、模様で塗りつぶされている他は、第一実施形態のチャートと同様である。
【0056】
実施形態のチャートはいずれも、これを用いて、醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法が実施可能である。すなわち、基準点Sに該当する、減塩前の醤油とみりんの容量比率の組を選択し、減塩後の醤油とみりんの容量比率の組を、点SAaと点SAbの間、点SAaと点SAcの間、点SAdと点SAbの間、及び、点SAdと点SAcの間を結ぶ線で囲まれる領域から選択し、減塩後の日本酒の容量比率を、選択された減塩後の醤油とみりんの容量比率の合計を3から差し引いた容量比率とする製造方法が提供されるが、第二実施形態のチャートを使用する場合、減塩後の醤油とみりんの容量比率の組は、模様で塗りつぶされた領域から選べばよいことになる。
【0057】
図3は、醤油、みりん及び日本酒の容量比率を計算するために用いられるチャートの第三実施形態を示す図である。
【0058】
図3に示す第三実施形態のチャートは、以下の点の他は第一実施形態のチャートと同様である。
(i)S0.6a及びS0.6b、S0.6c及びS0.6d、S1.0a及びS1.0b、S1.0c及びS1.0d、S1.4a及びS1.4b、並びに、S1.4c及びS1.4dが縦線で結ばれている。
(ii)S0.6a及びS0.6c、S0.6b及びS0.6d、S1.0a及びS1.0c、S1.0b及びS1.0d、S1.4a及びS1.4c、並びに、S1.4b及びS1.4dが線で結ばれていない。
(iii)S0.6aとS0.6cの中点、S0.6bとS0.6dの中点が表示され、これらを結ぶ縦線が表示されている。
(iv)S1.0aとS1.0cの中点、S1.0bとS1.0dの中点が表示され、これらを結ぶ縦線が表示されている。
・(v)S1.4aとS1.4cの中点、S1.4bとS1.4dの中点が表示され、これらを結ぶ縦線が表示されている。
・(vi)各縦線の中点が表示されている。
【0059】
0.6aとS0.6bを結ぶ縦線、S0.6cとS0.6dを結ぶ縦線、及び(iii)記載の縦線を用いて説明すると、一番左の縦線が減塩最大の組成を示す線(左縦線)となり、一番右の縦線が減塩最小の組成を示す線(右縦線)となり、(iii)記載の縦線は中程度の減塩の組成を示す線(中央縦線)となる。また、縦線が下から上になるにしたがって甘さが増加する。これは、S1.0aとS1.0bを結ぶ縦線、S1.0cとS1.0dを結ぶ縦線、及び(iv)記載の縦線についても、S1.4aとS1.4bを結ぶ縦線、S1.4cとS1.4dを結ぶ縦線、及び(v)記載の縦線についても同様である。
【0060】
例えば、S0.6を減塩前の醤油とみりんの容量比率の組として選んだ場合、最も減塩を進めたい場合は、上記左縦線上のいずれかの点を、減塩後の醤油とみりんの容量比率の組として選べばよく、減塩を最低限にしたい場合は、上記右縦線上のいずれかの点を、減塩後の醤油とみりんの容量比率の組として選べばよい。また、減塩を中程度にしたい場合は、上記中央縦線上のいずれかの点を、減塩後の醤油とみりんの容量比率の組として選べばよい。
【0061】
なお上記チャートで減塩後の醤油とみりんの容量比率を選んだ場合、減塩後の日本酒の容量比率は、減塩後の醤油とみりんの容量比率の合計を3から差し引いた容量比率にすればよい。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0063】
(実施例1)
以下の、組成1~3に示す容量比率で合わせ調味料を作成した。
[容量比率]
組成1:(醤油、みりん、日本酒)=(1.2、1.2、0.6)
組成2:(醤油、みりん、日本酒)=(1.2、1.74、0.06)
組成3:(醤油、みりん、日本酒)=(0.9、1.305、0.795)
これを重量比率に直すと、以下の通りになる。
[重量比率]
組成1:(醤油、みりん、日本酒)=(144g、144g、60g)
組成2:(醤油、みりん、日本酒)=(144g、208.8g、6g)
組成3:(醤油、みりん、日本酒)=(108g、156.6g、79.5g)
なお、醤油としては、キッコーマン社製「特選丸大豆しょうゆ」、みりんとしては、タカラ社製「本みりん 純米」、日本酒としては、月桂冠社製「月」を用いた。
【0064】
組成1~3の合わせ調味料を用い、以下の「レシピ」に従って調理を行った。
[レシピ]
豚肉を焼いたもの:
豚肩ロース100gに対して合わせ調味料を大さじ1加えた。
肉じゃが:
豚バラ60g、じゃがいも150g、玉ねぎ60g及び人参30gの合計300gに対して合わせ調味料を大さじ3、出汁を120ml加えた。
煮びたし:
小松菜170g及び油揚げ30gに対して、合わせ調味料を大さじ2.6、出汁を100ml加えた。
きんぴら:
しらたき200gに対して合わせ調味を大さじ3を加えた。
【0065】
組成1は濃い味を好む人の割合で、どれもご飯が進む味だった。組成2は、塩分はそのままに、糖分のみ1.45倍に増やしたものである。組成1に比べ塩味は変わらず甘くなるはずが、甘みはあまり変わらず塩味が増えたようになった。それを受けて組成3は、組成2の塩分と糖分の割合はそのままに、醤油とみりんを75%にしたものであり、組成3で試食を行ったところ、組成1とほぼ遜色なく塩分の物足りなさも感じないという結果が得られた。減塩というと、塩分が感じられず物足りないと感じ、結局挫折してしまうことが多いが、塩分を増やさず、配合を変えることでみりんが塩分のかわりになるポイントがあることが分かった。
【0066】
(比較例1)
以下の組成4の合わせ調味料を作製した。
組成4:(醤油、みりん、日本酒)=(1.2、1.2、0.3)の容量比率を保ちこれに砂糖を加えたもの。重量比率としては、以下の通りとなる。組成4:(醤油、みりん、日本酒、砂糖)=(144g、144g、30g、21.6g)
【0067】
組成4はみりんでなく砂糖だとどうなるのかの実証をするべく作製したものであり、みりん:砂糖=1:0.3で同じ糖分になるように計算して行った。組成3よりも糖分が感じられ、塩分は感じられなかった。
【0068】
(実施例2)
以下の容量比率(これに相当する重量比率)で合わせ調味料を作成した他は、実施例1と同様に調理を行い、味を評価した。
[容量比率]
組成5:(醤油、みりん、日本酒)=(1.0、1.0、1.0)
組成6:(醤油、みりん、日本酒)=(1.0、1.45、0.55)
組成7:(醤油、みりん、日本酒)=(0.75、1.0875、1.1625)
[重量比率]
組成5:(醤油、みりん、日本酒)=(120g、120g、100g)
組成6:(醤油、みりん、日本酒)=(120g、174g、55g)
組成7:(醤油、みりん、日本酒)=(90g、130.5g、116.25g)
【0069】
組成5は誰もが無難な味付けであった。薄いわけではなくしっかりした味付けになっていた。組成6は、塩分はそのままに、糖分のみ1.45倍に増やしたものである。意外なことに、組成5に比べやはり塩味が強くなる傾向にあった。それを受けて組成7は、組成6の塩分と糖分の割合はそのままに、醤油とみりんを75%にしたものであり、組成7で試食を行ったところ、組成5とほぼ遜色なく塩分の物足りなさもあまり感じないという結果が得られた。また、素材の味がしっかりと感じられるようになる傾向にあった。なお、もともと組成3が美味しいと感じていた人も、組成7で違和感なく食べることができ、毎日の食事にこの味でも大丈夫という結果が得られた。
【0070】
(実施例3)
以下の容量比率(これに相当する重量比率)で合わせ調味料を作成した他は、実施例1と同様に調理を行い、味を評価した。
[容量比率]
組成8:(醤油、みりん、日本酒)=(0.8、0.8、1.4)
組成9:(醤油、みりん、日本酒)=(0.8、1.16、1.04)
組成10:(醤油、みりん、日本酒)=(0.6、0.87、1.53)
[重量比率]
組成8:(醤油、みりん、日本酒)=(96g、96g、140g)
組成9:(醤油、みりん、日本酒)=(96g、139.2g、104g)
組成10:(醤油、みりん、日本酒)=(72g、104.4g、153g)
【0071】
組成8は、薄味な印象だが誰もが無難な味付けの範囲内であるという意見にまとまり、薄すぎるわけではなかった。組成9は、塩分はそのままに、糖分のみ1.45倍に増やしたものである。意外なことに、組成8に比べやはり塩味が強くなる傾向にあった。それを受けて組成10は、組成9の塩分と糖分の割合はそのままに、醤油とみりんを75%にしたものであり、組成10で試食を行ったところ、十分に受け入れられる味であった。なお、もともと組成3が美味しいと感じていた人も、組成10で違和感なく食べることができ、毎日の食事にこの味でも大丈夫という結果が得られた。
【要約】
【課題】 醤油、みりん及び日本酒を含有する合わせ調味料であって、塩分含有量が黄金比の調味料よりも少ないにもかかわらず、黄金比と同等又はそれ以上の美味しい味つけが可能な、合わせ調味料の製造方法を提供すること。
【解決手段】 醤油、みりん及び日本酒を含有する減塩合わせ調味料の製造方法であって、醤油、みりん及び日本酒の全容量を基準とした、みりんの容量比率(V)、醤油の容量比率(V)及び日本酒の容量比率(V)を、下記式(1)、(2)及び(3)で求められる値とする製造方法。
=P×Q×R…(1)
=P×R…(2)
=3-V-V…(3)
[式中、P及びPは、0.6~1.4の間から選ばれる同一の値、Qは、1.4~1.5の間から選ばれる値、R及びRは、0.7~0.8の間から選ばれる同一又は異なる値を示す。]
【選択図】なし
図1
図2
図3