(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ポリエステル及びポリエステルを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/16 20060101AFI20220729BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C08G63/16
C08G63/78
(21)【出願番号】P 2016556810
(86)(22)【出願日】2015-03-11
(86)【国際出願番号】 NL2015050152
(87)【国際公開番号】W WO2015137805
(87)【国際公開日】2015-09-17
【審査請求日】2018-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2014-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2014-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515337626
【氏名又は名称】フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジョン・コルスタッド
(72)【発明者】
【氏名】ビン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジョセフ・スキアヴォーネ
(72)【発明者】
【氏名】マリオン・エル・アンドリュース
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・イー・パスクク
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー・ガブリエル・ファン・ベルケル
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】土橋 敬介
【審判官】佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102050941(CN,A)
【文献】国際公開第2013/062408(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/032730(WO,A1)
【文献】特開2008-291243(JP,A)
【文献】特開2007-146153(JP,A)
【文献】特開2015-160871(JP,A)
【文献】飽和ポリエステル樹脂ハンドブック,日本,日刊工業社,1989年12月22日,p.145,146,162,163
【文献】Rutger J. I. Knoop et. al.,High Molecular Weight Poly(ethylene-2,5-furanoate);Critical Aspects in Synthesis and Mechanical Property Determination,JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A:POLYMER CHEMISTRY,2013年 7月 3日,Vol.51,p.4191-4199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/
CAPlus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルであって、ジエチレングリコール残基を更に含み、ジエチレングリコール残基の含有量が、2,5-フランジカルボキシレート部分1モルあたり0.045モル未満であり、400nmでジクロロメタン:ヘキサフルオロイソプロパノール 8:2(vol/vol)混合物中の30mg/mL溶液として測定される吸光度が、0.08以下であ
り、カルボン酸末端基の量が、15から122meq/kgの範囲内であり、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率が、0.10から0.70の範囲内である、ポリエステル。
【請求項2】
前記カルボン酸末端基の相対含有率が、0.14から0.65の範囲内である、請求項
1に記載のポリエステル。
【請求項3】
少なくとも0.45dL/gの固有粘度を有し、好ましくは1.0dL/g以下の固有粘度を有する、請求項1
または2に記載のポリエステル。
【請求項4】
1.9から2.6の範囲内の多分散指数を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項5】
示差走査熱量測定(DSC)によって測定される結晶化度が、少なくとも25J/gである、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項6】
少なくとも215℃の融点を有する、請求項1から
5のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項7】
ISO 15512に従って決定された水分含有量が、100ppmw以下である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のポリエステルを含む組成物。
【請求項8】
2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを
1:1.01から1:1.15の範囲のモル比で含
む出発混合物をエステル
化に供してエステル組成物を形成し、得られたエステル組成物を重縮合触媒の存在下、減圧下での重縮合に供して、重縮合物を得る、ポリエステルの調製のための方法であって、前記エステル
化が、ジエチレングリコールの形成を抑制することができる塩基性化合物及び/又はアンモニウム化合物の存在下で起こり、前記塩基性化合物又はアンモニウム化合物が、テトラアルキルアンモニウム化合物、鉱酸の塩基性アルカリ金属塩及びそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【請求項9】
前記テトラアルキルアンモニウム化合物が、水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物から、好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及びそれらの組合せから選択され、前記鉱酸の塩基性アルカリ金属塩が、Na
2HPO
4である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
2,5-フランジカルボン酸とエチレングリコールとの間のエステル化反応が、160から240℃の温度及び0.9から5barの圧力で、0.5から4時間の間行われる、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記重縮合が、20から700mbarの圧力で行われる前重縮合反応及び0.05から20mbarで行われる重縮合反応を含む、請求項
8から1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前重縮合及び重縮合反応の合わせた期間が、1.5から5時間の範囲内である、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記重縮合工程中に、形成されるエチレングリコールを前記エステル組成物から除去し、これを重縮合に供する、請求項
8から1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記重縮合触媒が、スズ、亜鉛、チタン及びアンチモンから選択される1種又は複数の元素を含む触媒から選択される、請求項
8から1
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記重縮合が、245から270℃の温度及び0.05から5mbarの圧力で行われる、請求項
8から1
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記重縮合物が、90から200℃の範囲内の温度で結晶化される、請求項
8から1
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
固相重合の工程を更に含む、請求項
8から1
6いずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記固相重合が、180℃から210℃の範囲内の温度で行われる、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
最大120時間の間、好ましくは2から60時間の範囲内の間行われる、請求項
16又は
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル及びポリエステルの調製のための方法に関する。より具体的には、本発明は、2,5-フランジカルボキシレート部分及びエチレングリコール残基を含むポリエステル並びにそのようなポリエステルを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-フランジカルボン酸(FDCA)は、炭水化物等の天然源から生成することができる二酸である。Co及びMnを含む触媒を用いる、5-ヒドロキシメチルフルフラール又はそのエーテル等の2,5-二置換フランの空気酸化を使用するその調製のための経路は、例えば、WO2010/132740、WO2011/043660及びWO2011/043661において開示されている。
【0003】
US2551731は、グリコールをジカルボン酸と反応させることによる、ポリエステル及びポリエステル-アミドの調製であって、ジカルボン酸の少なくとも1種がヘテロ環式環を含有する、例えば、2,5-FDCAである、調製について記述している。溶融重合条件下、ナトリウム-及びマグネシウムメトキシドを触媒として使用して、FDCA及び2.5当量のエチレングリコール又はFDCAジメチルエステル及び1.6当量のエチレングリコールを、それぞれエステル化工程又はエステル交換工程において、周囲圧力にて、160から220℃の間で反応させ、その後、重縮合を、190から220℃の間、数mmHgの圧力下で行った。重縮合プロセスには、約5から7時間超を要した。生成物は、205~210℃の報告融点を有し、溶融物からフィラメントを容易に産出した。
【0004】
US2009/0124763において、ポリマー骨格内に2,5-フランジカルボキシレート部分を有し、185以上600以下の重合度を有するポリエステルについて記述されている。これらのポリマーは、2,5-FDCAのエステル化又はそのジエステルのジオールによるエステル交換、及び重縮合を伴う第2の工程、続いて、第3の工程としての固相重合を伴う、3工程プロセスで為される。
【0005】
第1の工程は、周囲圧力にて、150から180℃の範囲内の温度で行われるのに対し、重縮合工程は、真空下、180から230℃の範囲内の温度で行われる。次いで、生成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、再沈殿及び乾燥させ、続いて、第3の工程である、140から180℃の範囲内の温度での固相重合によって、これを精製する。ポリ(エチレンフランジカルボキシレート)の調製では、最初の2つの工程に11時間超を要した。
【0006】
WO2010/077133において、フランジカルボキシレート含有ポリエステルを調製するための方法が記述されており、ここでは、FDCAのジエステルをジオールとエステル交換し、このようにして得られたエステル組成物を重縮合に供する。重縮合は、最大5時間の間行われる。次いで、重縮合物を固相重合に供してよい。一例において、固相重合を60時間行った。得られたポリエステルの分子量は適度に高いが、固相重合の持続時間は長すぎるとみなされる。改善点はWO2013/062408において記述されており、ここでは、FDCAのジメチルエステルがエチレングリコールとエステル交換されるか、又はビス(2-ヒドロキシエチル)-2,5-フランジカルボキシレートが出発材料として使用される。次いで、エステル交換生成物又はこの出発材料を重縮合に供し、乾燥/結晶化工程の後、重縮合物を固相重合に供する。重縮合には3時間を要することが示された。一例において、固相重合には2日間を要する。
【0007】
WO2013/120989において、ポリ(エチレンフランジカルボキシレート)の調製のための連続プロセスが記述されており、ここでは、FDCA又はそのジエステルを、昇温でエチレングリコールと混合して、ペースト又は均一溶液を得て、このペースト又は溶液を、FDCA及びエチレングリコールのエステル化生成物に変換し、エステル化生成物を減圧下で重縮合し、ここで、重縮合は2段階で実施される。一例によれば、FDCAのジメチルエステルを、エチレングリコールと、1:1.7のモル比で反応させた。この例において、エステル化生成物の生成の後の段階には、5時間を要した。重縮合生成物を、所望ならば、固相化重合に供することができる。
【0008】
KR20140003167は、バイオマス起源のフランジカルボキシレートエステル化合物をエチレングリコールとともに使用することによって製造される、優れた透明度を持つポリエステルポリマーについて記述している。比較例においては、フランジカルボン酸も使用した。フランジカルボキシレートエステルのエチレングリコールに対するモル比は、1:1.1から1:4であってよい。フランジカルボン酸のエチレングリコールに対する比は、1:1.2から1:2の間で変動する。得られたポリエステルにおけるジエチレングリコールの含有量を低減させるための具体策がとられたという指示は提供されていない。
【0009】
US8420769において、FDCA又はそのジエステルから、エチレングリコール及びジエチレングリコールの混合物を用いて調製されたポリエステルが提示されている。ジエチレングリコールの量は、エチレングリコール及びジエチレングリコールの組合せに対して少なくとも50.1%molである。調製プロセスには、8.5時間もの長さを要し得る。得られるポリエステルは、衝撃強度が改善されていることが定められている。比較実験において、ジエチレングリコールがコモノマーとして添加されない場合、得られるポリエステルは、ジエチレングリコール部分を指示する約4.2及び4.8ppmのシフトで1H-NMRスペクトルにおける小ピークを依然として示すことが示された。ピークから、ジエチレングリコール部分の量は、フランジカルボキシレート部分の量に基づき、約0.05mol/molであることが推測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2010/132740
【文献】WO2011/043660
【文献】WO2011/043661
【文献】US2551731
【文献】US2009/0124763
【文献】WO2010/077133
【文献】WO2013/062408
【文献】WO2013/120989
【文献】KR20140003167
【文献】US8420769
【文献】US8366428
【非特許文献】
【0011】
【文献】A.T Jackson及びD.F. Robertson「Molecular Characterization and Analysis of Polymers」(J.M. Chalmers en R.J. Meier (編.)、「Comprehensive Analytical Chemistry」の第53巻、B. Barcelo (編)、(2008) Elsevier、171~203頁
【文献】Modern Polyesters: Chemistry and Technology of Polyesters and Copolyesters、J. Scheirs及びT.E. Long (編)、Wiley、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本特許文献は、FDCA及びエチレングリコールのエステル化生成物の形成中に、ジエチレングリコールが容易に形成され、これがその後、次の重縮合工程及び任意選択の固相工程中に得られたポリエステルに組み込まれるという、出願人らによる所見を裏付けるものである。
【0013】
出願人らは、ポリエステルへのジエチレングリコール部分の組み込みが、融点を低下させ、ガラス転移温度及び結晶化レベルを低下させることを見出した。結晶化レベルは、そのようなポリエステルから形成された物品の機械的特性に対して影響を与えることが公知であるため、ポリエステルへのジエチレングリコール部分の組み込みは、そのような物品の熱的安定性及び機械的特性を低下させると考えられている。ジエチレングリコール部分の含有量を低減させたポリエステルが生成される場合、融点、熱的安定性及び機械的特性に対する悪影響が低減されることが分かった。それ故、US8420769によって教示されていることとは対照的に、機械的特性が改善された熱的により安定なポリエステルは、ジエチレングリコール部分の量を増大させる代わりに、この量を低減させることによって、生成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルであって、ジエチレングリコール残基を更に含み、ジエチレングリコール残基の含有量が、2,5-フランジカルボキシレート部分1モルあたり0.045モル未満である、ポリエステルを提供する。
【0015】
ポリエステルにおけるジエチレングリコール残基の含有量は、エチレングリコールからのジエチレングリコールの形成を抑制することができる化合物によって低減させることができる。したがって、本発明は、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを含む又は2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステル及びエチレングリコールを含む出発混合物をエステル化又はエステル交換に供してエステル組成物を形成し、得られたエステル組成物を重縮合触媒の存在下、減圧下での重縮合に供して重縮合物を得る、ポリエステルの調製のための方法であって、エステル化又はエステル交換が、ジエチレングリコールの形成を抑制することができる塩基性化合物及び/又はアンモニウム化合物の存在下で起こる、方法を更に提供する。この方法は、上記したポリエステルと同様に、ジエチレングリコール部分の量を低減させたポリエステルを生成する。
【0016】
好ましくは、本発明によるポリエステルにおけるジエチレングリコール残基の含有量は、0.040モル/モル未満、より好ましくは0.030モル/モル未満である。有利には、ジエチレングリコールの含有量は、可能な限り低い。好ましくは、ポリエステルは、いかなるジエチレングリコール残基も含有しない。しかしながら、0.005モル/モルのジエチレングリコール残基のレベルが許容可能であってよく、最低レベルを形成してよい。本発明によるポリエステルは、好適には、フランジカルボキシレート部分1モルあたり、0.955モルのエチレン部分を含む。より好ましくは、ポリエステルは、ジエチレングリコール残基を更に含むポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)からなり、ここで、ジエチレングリコール残基の量は、2,5-フランジカルボキシレート1モルあたり0.045モル以下となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
エステル化又はエステル交換反応は、アンモニウム化合物及び/又は塩基性化合物の存在下で起こる。そのような化合物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の調製から公知である。本発明について、非常に好適には、塩基性又はアンモニウム化合物は、テトラアルキルアンモニウム化合物、コリン、カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ土類金属塩、鉱酸の塩基性アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、及びそれらの組合せからなる群から選択されることが分かった。テトラアルキルアンモニウム化合物におけるアルキル基は、好ましくは1から6個、より好ましくは1から4個の炭素原子を有する。アルキル基は、好適には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ホルミル基、チオール基、ニトロ基及びそれらの組合せから選択される、1つ又は複数の置換基を含有していてよい。カルボン酸は、好適には、1から8個の炭素原子を有し、1つ又は複数は、酸素、硫黄又は窒素原子等のヘテロ原子によって置き換えられていてよい。カルボン酸は、脂肪族、脂環式又は芳香族であってよい。好適なカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸だけでなく、フロン酸、安息香酸、フランジカルボン酸及びそれらの組合せも含む。鉱酸の塩基性塩は、好適には、硫酸及びリン酸等の多塩基酸に由来する。鉱酸のそのような塩基性アルカリ金属塩の好適な例は、Na2SO4及びNa2HPO4であり、Na2HPO4がとりわけ好ましい。有利には、テトラアルキルアンモニウム化合物は、水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物から、好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及びそれらの組合せから選択される。他の好適な化合物は、コリン、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸カルシウム若しくはナトリウム等のカルボン酸の塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、又はFDCA中の残留カルシウム若しくはナトリウムを含む。
【0018】
塩基性又はアンモニウム化合物の量は、広範囲から選択することができる。好適には、範囲は、PETの調製において使用されるものと同様である。そのような好適な量は、フランジカルボキシレート1モルあたり0.01から1mmol、好ましくは0.02から0.5mmol/mol、より好ましくはフランジカルボキシレート1モルあたり0.03から0.30mmolである。より高レベルのこれらの化合物は、重合中の変色につながり得る。
【0019】
本発明の方法は、好ましくは、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを含む出発混合物を用いる。この出発混合物は、とりわけフランジカルボン酸及びエチレングリコールの間のモル比が1:1.01~1.15の範囲内である場合、ポリエステルのより迅速な形成を可能にすることが分かった。その上、非常に低過剰のエチレングリコールを伴うそのようなモル比の使用は、1:2等、1:1.5から1:3の範囲内のフランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比等、通常のより大きい過剰で調製されたポリエステルと比較して、より低レベルのジエチレングリコールにつながり得る。本発明によるポリエステル組成物は、したがって、好ましくは、フランジカルボン酸及びエチレングリコールの重合から得られたものである。
【0020】
ポリエステルが固相重合に供されるならば、ポリエステルは、好ましくは、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率が0.10から0.7の範囲内である。そのような含有量のカルボン酸末端基を有するポリエステルの固体粒子を固相重合に供する場合、固相重合の持続時間は大幅に短縮され得ることが分かった。ポリエステルが既に固相重合に供されているならば、より低い含有量のカルボン酸末端基が好ましい場合がある。5から30meq/kgの絶対レベルが好適となり得る。
【0021】
一般に、ポリエステルにおける末端基を決定するための複数の方法がある。そのような方法は、滴定、赤外線及び核磁気共鳴(NMR)法を含む。多くの場合、別個の方法を使用して、四つの主要な末端基:カルボン酸末端基、ヒドロキシル末端基、メチルエステル末端基等のアルキルエステル基(ポリエステルについては、ジカルボン酸のジアルキルエステルから)及び脱炭酸後に得られる末端基を定量化する。A.T Jackson及びD.F. Robertsonは、「Molecular Characterization and Analysis of Polymers」(J.M. Chalmers en R.J. Meier (編.)、「Comprehensive Analytical Chemistry」の第53巻、B. Barcelo (編)、(2008) Elsevier、171~203頁において、末端基決定のための1H-NMR法を公開した。この方法において、ヒドロキシル末端基は、ポリエチレンテレフタレート(PET)中、3-クロロフェノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、トリクロロ酢酸又はトリフルオロ酢酸等の刺激の強い溶媒の選択を使用することによって決定される。重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン(TCE-d2)を、ポリエステルのいかなる誘導体化もなく溶媒として使用することが好ましい。フランジカルボキシレート部分及びエチレングリコール残基を含むポリエステルに、同様の方法を行うことができる。後者ポリエステルについての末端基の測定は、室温で、溶液からのポリエステルの沈殿の過度のリスクなしに実施することができる。TCE-d2を使用するこの1H-NMR法は、ヒドロキシル末端基(HEG)、脱炭酸、及びジエチレングリコール(DEG)基の含有量を決定するために非常に好適である。ピーク割り当ては、TCEピークを使用して、6.04ppmの化学シフトに設定する。7.28ppmの化学シフトにおけるフランピークを積分し、積分をフラン環上の二つのプロトンについて2.000に設定する。HEGは、ヒドロキシル末端基の二つのメチレンプロトンから、4.0ppmで決定する。DEGの含有量は、四つのプロトンを表す3.82から3.92ppmのシフトの積分から決定する。脱炭酸末端基は、1つのプロトンを表す7.64~7.67ppmのシフトで見られる。ポリエステルがメチルエステル末端基も含む場合、3つのプロトンを表す3.97ppmでメチルシグナルが出現することになる。
【0022】
カルボン酸末端基は、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)に適しているASTM D7409に従う滴定法を使用することによって、決定される。このように修正されたその方法は、エタノール中の0.01M KOHをその当量点まで滴定剤として用い、0.1mlのエタノール中の0.5mgのブロモクレゾールグリーン(2,6-ジブロモ-4-[7-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-2-メチル-フェニル)-9,9-ジオキソ-8-オキサ-9λ6-チアビシクロ[4.3.0]ノナ-1,3,5-トリエン-7-イル]-3-メチル-フェノール)を指示薬として使用する、オルトクレゾール中のポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)の4%w/w溶液の滴定を伴う。
【0023】
本出願の目的のために、HEG及び脱炭酸末端基についての値はTCE-d2を使用する1H-NMRによって得られるのに対し、CEGについての値は上記した滴定法によって決定される。
【0024】
本発明によるポリエステルの分子量は、好適には固有粘度として表される。そのようなポリエステルのこの分子量は、本発明のポリエステルを固相重合に供することによって増大し得る。それにもかかわらず、例えば少なくとも0.45dL/gの比較的低い分子量を有する本発明によるポリエステルは、数種の目的に使用することができる。そのような目的は、融解紡糸/引き抜きプロセスで生成されたもの及びメルトブロープロセスで生成されたものを含む繊維の生成、包装用のフィルム若しくはシート等の生成、射出成形品の生成、ボトルの生成、又は固定用の配向テープの生成を含む。本発明のポリエステルの分子量は、1つ又は2つのフランジカルボキシレート基を持つジオール及びFDCAのエステルよりも高い。分子量は、固有粘度で表される。最初に、相対粘度(ηrel)を、フェノール及びテトラクロロエタンの60/40w/w混合物において、30℃及び0.4g/dLの濃度(c)で決定する。この手順は、ポリ(エチレンテレフタレート)についての固有粘度の決定のためのASTM D4603標準と同様である。次いで、ビルマイヤー(Billmyer)式:
固有粘度(IV) = {ηrel -1+3*ln(ηrel)}/(4*c)
を使用して、固有粘度を算出する。
【0025】
固有粘度は、好適には0.45dL/gより大きく、より好ましくは0.45から1.0dL/gの範囲内である。組成物が、固相化の追加工程を経たならば、固有粘度としての分子量は、好ましくは0.65から1.2dL/g、好ましくは少なくとも0.75dL/gまでの範囲内、より好ましくは0.75dL/gから1.0dL/gの範囲内である。組成物が、固相化の追加工程なしで使用される場合、分子量は、好ましくは、所望の最終用途への適用に好ましい範囲内、例えば、ボトルの最終用途への適用に好適な分子量である、0.65から1.0dl/gの範囲内である。
【0026】
種々の末端基の含有量は、他の末端基と相対的に表され得る。上記で示した通り、カルボン酸末端基の相対含有率は、好適には、ヒドロキシル及びカルボン酸末端基の和に対して0.10から0.7の範囲内である。より好適には、カルボン酸末端基の相対含有率は、ヒドロキシル及びカルボン酸末端基の和に基づき、0.14から0.65の範囲内である。末端基の量を、ポリエステルの質量単位あたりの絶対値として表すことも可能である。絶対的特長として表されると、カルボン酸末端基の量は、有利には、あらゆる固相化工程の前、15から122meq/kgの範囲内である。カルボン酸末端基(CEG)の絶対量は、滴定から直接得られる。ヒドロキシル末端基(HEG)、脱炭酸末端基(DecarbEG)及びジエチレングリコール(DEG)部分の量の決定は、下記の通りに行われる。
【0027】
約10mgのポリエステルを秤量し、8mlガラスバイアルに入れる。バイアルに、0.7mlのTCE-d2を添加し、バイアル内で混合物をかき混ぜながら、ポリエステルを室温で溶解する。溶解した混合物を1H-NMRに供し、一方で、TCE-d2のピークを6.04ppmに設定する。フランピークの中心は7.28ppmにあり、これを積分し、積分を2.000に設定して、フラン環上の2つのプロトンを表す。1H-NMRシグナルを積分し、末端基の量を下記の通りに算出する:
ヒドロキシル末端基(HEG)、meq/kg = 5494 * 4.0ppmでの積分/2;
脱炭酸末端基(DecarbEG)、meq/kg = 5494 * 7.65ppmでの積分。
【0028】
ポリエステルがメチルエステル末端基も含む場合、メチルシグナルは3.97ppmで出現することになり、次いで、エステル末端基の含有量を:
エステル末端基(EEG)、meq/kg = 5494 * 3.97ppmでの積分/3
として算出する。
【0029】
フランジカルボキシレートに対するDEG含有量は、3.82~3.92ppmでの積分を2で割ったものから決定することができる。
【0030】
フランジカルボキシレート基を含有する多くの先行技術ポリエステルが、灰色、褐色又は黄色であるのに対し、本発明によるポリエステルは、好適には、ほとんど無色である。色は、吸光度で表される。ポリエステルは、好適には、400nmのジクロロメタン:ヘキサフルオロイソプロパノール 8:2(vol/vol)混合物中の30mg/mL溶液として測定される吸光度が、0.08以下、好ましくは0.05以下であるので、透明である。
【0031】
本発明によるポリエステルは、有利には、少なくとも0.45dl/gの固有粘度として表される分子量を有する。固有粘度は、質量平均分子量Mwと密接に関係している尺度である。質量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の使用を介して決定することもできる。GPC測定は、好適には、25℃で実施される。算出には、ポリスチレン標準が使用される。溶離液として、好適には、クロロホルム:2-クロロフェノール 6:4(vol/vol)の溶媒混合物を使用することができる。実験部において、GPC測定は、これらの条件下、二つのPLゲル5μm MIXED-C (300×7.5mm)カラムが装備されているMerck-Hitachi社LaChrom HPLCシステムで行った。分子量の算出は、Cirrus (商標) PL DataStreamソフトウェアによって行った。質量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを本発明によるポリエステルについても決定する場合、多分散指数(Mw/Mn)は、好適には、1.9から2.6の範囲内である。
【0032】
本発明によるポリエステルは、非晶質であってよい。そのような非晶質生成物は、通常、重縮合から直接的に得られる。しかしながら、本発明によるポリエステルは、好ましくは半結晶性である。ポリマーの結晶化度は、その密度及び溶融温度等、その物理的特性に影響を及ぼす傾向がある。ポリマー結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)を用い、ポリマーの溶融に関連する熱を定量化することによって、決定することができる。結晶化度は、多くの場合、正味の溶融エンタルピーとして、DSC技術によって導出される1グラムあたりのジュール数で表される。本発明によるポリエステルは、好ましくは、DSCによって測定される結晶化度が少なくとも25J/gである。1グラムあたりのジュール数での最大エンタルピーは、典型的には80J/gである。ある程度の結晶化度を有する本発明によるポリエステルは、このとき、融点も有する。ポリマーの融点はDSCによって簡単に決定され、吸熱ピークの頂点で測定される。ISO11357-3標準は、溶融決定について記述している。この決定に従い、本発明によるポリエステルは、好適には、少なくとも215℃の融点を有する。高度に結晶性のポリエステルにおいて、融点は、230℃を超えてよく、更には245℃の高さであってもよい。
【0033】
ポリエステルを含む組成物がいくらかの水分を含有することは、とりわけポリマーを大気に曝露した場合にいくらかの水分捕捉が一般的であることから、一般的である。本発明によるポリエステル組成物の安定性は、ポリエステル組成物が実現可能な限り少ない水分を含有する場合に改善されるため、本発明によるポリエステルを含む組成物は、好ましくは、ISO 15512に従って決定される水分含有量が、100ppmw以下、より好ましくは50ppmw以下である。
【0034】
本発明のポリエステルが0.10から0.70のカルボン酸末端基含有量を有し、固相重合に供される場合、固相重合中の重合速度は、ポリエステルの粒径に応じて、より低い含有量のカルボン酸末端基を持つポリエステルよりも遅い。このような状況であれば、最も実現可能な粒径のポリエステルを固相重合に供するために、当業者がこのポリエステルを選択することが可能である。好適には、粒径は、1グラムあたり40から350個の粒子が存在するように選択される。典型的には、そのような粒径を、2.8から25mgの質量を持つポリエステル粒子に煮詰める。そのような粒子は、簡単に扱うことができ、固相重合に供した場合に依然として良好な重合速度を提供することができる。これらの粒径は、空気輸送スキームを介する加工にも適しており、現存の乾燥機、ホッパー及び押出スクリューにおいて好適に加工される。小さすぎる粒子は、粉塵による危険性増大及び種々の表面に貼り付く又は「ハングアップする」傾向の増大による加工困難につながり得る。
【0035】
そのようなポリエステルは、同様のポリエステルを作製するための先行技術の方法から逸脱することによって調製できることが更に分かった。一般的に言えば、フランジカルボン酸ベースのポリエステルに関する先行技術における多くの文書は、好ましい出発材料として二酸のジエステルから出発することを指示してきた。例えば、ジメチルフランジカルボキシレートの使用について記述されてきた。本発明によるポリエステルは、そのような出発材料から作製することができる。しかしながら、そのような場合において、カルボン酸末端基の含有量は、そのような調製物中では概して低くなる。そのような生成物が意図されているならば、ジエステル及びエチレングリコールの混合物に水を添加することが可能となり得る。これを実現する1つの手法は、湿式エチレングリコールの使用を介して為され得る。添加された水は、ジエステルの一部の鹸化を引き起こし得、それにより、カルボン酸基を産出する。別の可能性は、FDCA及びそのジエステルの混合物を使用することである。そのような混合物は、エチレングリコールによるFDCAのジエステルのエステル交換中にFDCA二酸を添加してFDCAのエチレンジエステルを産出することによって、得てもよい。特に、エステル交換段階中の、より具体的には、この段階の終わりに向けた、FDCAの添加により、得られたポリエステルに酸末端基を添加する機会が生じる。このようにして、本発明の好ましい実施形態によるポリエステルに従う複数のカルボン酸末端基が得られる。FDCAから出発する場合、水及びエチレングリコールの混合物を使用することも可能である。これは、例えば、FDCAの最初の混合を改善させて、エチレングリコール含有量を、望ましい範囲を超えて増大させることなくスラリーを形成し、それにより、好ましいポリエステルに従う複数のカルボン酸末端基を実現するために、有用となり得る。溶融重縮合後に得られるポリエステルが本発明の好ましい実施形態によるポリエステルに従う複数のカルボン酸末端基を有するようにカルボン酸末端基の数を調整するために、エステル化期間の後半に又は前重縮合期間中にFDCA二酸を添加することも可能である。
【0036】
ポリエチレンフランジカルボキシレートの調製が二酸のジメチルエステルから出発する場合、得られるポリマーにおけるカルボン酸末端基の含有量は、約10meq/kg未満であり、また、カルボン酸末端基とヒドロキシル末端基の和に対するカルボン酸末端基の割合として表される場合、0.1未満であることも分かった。先行技術はフランジカルボン酸に対してかなり過剰のジオールを指示しているのに対し、ジオールの過剰がかなり小さければ好適なポリエステルが得られることも分かった。エチレングリコールの過剰の低減は、エチレングリコールの量の低減がジエチレングリコール形成の影響を受けやすいという有益な効果も有する。
【0037】
2,5-フランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比が1:1.01から1:1.15である出発混合物からの重合から得られた重縮合物は、より大きい過剰のエチレングリコールを含有する同様の出発混合物から調製された重縮合物よりもより高い含有量のカルボン酸末端基を含む。
【0038】
フランジカルボン酸及びエチレングリコールのエステル化反応は、当技術分野において公知である。それ故、当業者であれば、エステル化触媒を使用する必要はないが、そのような触媒の使用が企図されていてよいことに気付くであろう。それ故、一実施形態において、2,5-フランジカルボン酸(furandicarboxyic acid)及びエチレングリコールは、エステル化触媒の存在下で好適に反応する。エステル化触媒は有利には酸性であり、反応物質の1つは酸であるため、エステル化触媒を使用する必要性に欠けている。しかしながら、そのような触媒が使用される場合、好適にはブレンステッド酸又はルイス酸である。ブレンステッド酸は、硫酸、硝酸又は塩酸等の強鉱酸であってよい。好適なルイス酸は、チタン、亜鉛、スズ、カルシウム及びそれらの混合物からなる群から選択される金属の、塩化物、臭化物、トシレート、アルコキシド及びトリフレート等、金属の化合物を含む。チタン酸、スズ酸等のアルキルエステル等、金属酸の有機エステルを使用することも可能である。それ故、エステル化触媒は、好ましくは、チタン、スズ、カルシウム及びアンチモンからなる群から選択される1種又は複数の金属を含有する触媒から選択される。触媒は、使用されるならば、エステル化反応の開始から添加されてよい。しかしながら、エステル化は、エステル化触媒の使用なしに簡単に進行するため、エステル化は、好ましくは、エステル化反応専用のエステル化触媒の非存在下で行われる。
【0039】
エステル化反応において、水が形成されている。2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールの反応中に形成された水を除去することが有利であると分かった。このようにして、平衡反応であるエステル化反応は、完了に導かれ得る。エステル化混合物からの水の除去は、任意の公知の方式で行ってよい。蒸気相において形成されたあらゆる水を冷却器に通過させ、液化した水を含む縮合物を除去することが好適である。蒸気相は、いくらかのエチレングリコールも含み得る。したがって、蒸気相を、有利には、蒸留システムに通過させ、ここで、水及びエチレングリコールを分離する。エチレングリコールは、好適には、少なくとも部分的に、しかし好ましくは実質的に完全に、エステル化混合物に再生利用される。このようにして分離された水は、排出される。それ故、本発明による方法は、好ましくは、水が蒸留システムにおいて除去されるように行われ、ここで、水とともに除去されるエチレングリコールの大半が水から分離され、少なくとも部分的に再生利用される。
【0040】
形成された水の蒸気相にエチレングリコールが同伴している程度は、エステル化が行われる温度及び他の条件に依存することが明白になるであろう。先行技術において使用される条件は、約180から280℃の範囲内の温度及び約周囲圧力を含む。これらの条件を約4時間の間維持した。本発明による方法において、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールの間のエステル化反応は、好ましくは、160から240℃の温度で行われる。圧力は、好適には、0.9から5barの範囲内であり、反応は、有利には、0.5から4時間の間続けられる。反応は、好都合なことに、窒素、ネオン、ヘリウム又はアルゴン下等の不活性雰囲気中で行われる。出発混合物は、水等の希釈剤を含んでよく、これは、好適には反応中に排出される。
【0041】
エステル交換反応も周知である。その点に関しては、WO2010/077133及びWO2013/120989を参照し、これらの内容は参照により組み込まれる。
【0042】
エステル化がバッチプロセスで行われている場合、生成される水の量を決定し、それを100%エステル化での化学量論的に決定された理論水量と比較することにより、反応進行をモニターすることが可能である。理論量の水の少なくとも70%が除去された場合、エステル化は停止され、圧力が低減されて重縮合段階を開始する。減圧中に、反応混合物からの気化によって未反応のエチレングリコールを除去する。エステル化の終了の正確なタイミングは試行によって決定され、その後の減圧速度及び水除去の効率に依存するが、典型的には、バッチプロセスにおいて、水除去の程度は、好適には少なくとも70%であり、事実上100%の高さであってよい。好ましくは、水除去の程度は、70から96%の範囲内である。エステル化段階は、好ましくは、96%の点を超えて続けるべきではなく、又は得られた生成物はカルボン酸末端基が欠損していてよい。エチレングリコール除去が下限に到達する前に短すぎる期間エステル化段階を続けた場合、生成物は概してカルボン酸末端基が多すぎるものとなる。エステル化程度が、70%未満で行われる、すなわち、理論量の水の70%未満、例えば40%が除去されるならば、多くのエチレングリコールが減圧中に混合物から揮発し(volatize)得るため、得られるエステル組成物はカルボン酸末端基が多いものとなる。
【0043】
プロセスが連続方式で行われている場合、エステル化反応進行は、温度、エチレングリコール送給率及び平均滞留時間の使用を介して制御されることになる。システムから除去されている水の量は、ここでも、エステル化反応の程度の指標となるであろう。また、連続プロセスにおいて、除去される水の量は制御され、エステル化反応は、FDCA送給の100%エステル化に対して化学量論量の水の少なくとも70%が除去されるまで、持続する。書籍Modern Polyesters: Chemistry and Technology of Polyesters and Copolyesters、J. Scheirs及びT.E. Long (編)、Wiley、2003において記述されているもの等のポリ(エチレンテレフタレート)の生成のための反応器、機器及び制御装置を使用して、本発明のポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)ポリエステルの生成に有利とすることもできる。
【0044】
減圧により、過剰量のエチレングリコールが除去される。バッチプロセスにおいて、圧力は低減される。実際には、減圧はいくらかの時間を要し得る。圧力を低減させるプロセスは、0.1から1.8時間を要し得る。比較的低い分子量のエステルの真空システムへのキャリーオーバーを防止するために、ゆっくりと圧力を低減させることが有利である。したがって、エステル組成物は、圧力が20から700mbarの範囲内である段階を通過する。この圧力で、前重縮合が起こる。最終的な重縮合は、0.05から20mbarの領域内の減圧下で起こる。
【0045】
連続プロセスの場合において、エステル組成物の温度は、好適には、エステル化の出発温度と比較して上昇する。その後、更に加熱したエステル組成物を減圧に供する。減圧により、組成物からエチレングリコールが枯渇する。減圧後、生成物を減圧下で維持し、場合により、さらなるエチレングリコールの蒸発時に前重縮合段階が起こるように更に加熱して、エチレンフランジカルボキシレートのオリゴマーを産出する。この前重縮合は、連続攪拌槽型反応器又は有孔回転ディスクで操作する水平反応器内で起こり得る。この前重縮合反応における圧力は、20から700mbarであってよい。さらなる減圧のために、前重縮合生成物をさらなる反応器に通し、ここでさらなる重縮合に導く。そのような重縮合反応には、ディスク型又はケージ型反応器を使用してよい。重縮合反応における圧力は、0.05から20、好適には0.05から5mbarが好適である。
【0046】
2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応はかなり高速であり、結果として、ポリエステル組成物中の不十分な量のカルボン酸末端基を「過エステル化」して残すことが最も一般的であることが分かった。エステル化反応のポテンシャル程度は、本明細書において定義されている無次元パラメーターを使用することにより、幾分制御することができる:
エステル化ポテンシャル(EsPo) = (MR-1)2 * PH20(T)、式中、MRは、エチレングリコールの2,5-フランジカルボン酸に対するモル比を表し、MRは1より大きく;
PH2O(T)は、温度Tにおける水の純粋成分蒸気圧(単位bar)を表し、この温度は、圧力が低減されて前重縮合段階に入る前のエステル化混合物における最終反応温度である。PH2Oは、純水の蒸気圧について確立された式に従って決定される。アントワン式
log10 P = A - B/(C + T)、式中、Tは、℃で表されるエステル化の終了時の温度であり、A = 5.2594、B = 1810.94及びC = 244.485は、純水の所要蒸気圧をbarで記す。重縮合物についての最良の結果は、エステル化ポテンシャルが、0.8以下、好ましくは0.05から0.5である場合に得られることが分かった。
【0047】
この時点で、エステル組成物を前重縮合の工程に供する。それに加えて、圧力を低減させ、場合により、重縮合触媒を添加する。前重縮合工程を使用して、過剰の又は未反応のエチレングリコールを除去し、圧力を低減させて、過度の発泡又は真空ラインへのキャリーオーバーを回避しながら、他の揮発物のほとんどを除去する。温度が上昇し、重縮合反応が起こり始め、反応を介して発生するエチレングリコールの遊離及び除去が伴う。エステル化反応も水を発生させながら継続し、この水はまた、反応混合物から除去されることに留意することが重要である。非常に小さいバッチ機器において、反応の全段階に同じ反応器を使用してよい。反応がより大規模のバッチ機器で実施される場合、この段階はエステル化反応と同じ機器で完了させてよく、この段階の後、次いで、反応物質混合物を、良好な質量移動のために特別設計された容器に移して、重縮合反応を促進してよい。代替として、反応物質混合物を異なる容器に移動させた後、圧力降下及び前重縮合を開始し、次いで、単一容器内で重縮合を行う。重縮合触媒の添加はエステル化反応の開始時に既に行われている場合があるため、エステル化生成物への触媒のさらなる添加はこの時点では必要ない。
【0048】
安定化剤等の他の化合物を、エステル化生成物に添加してもよい。安定化剤は、抗酸化剤を含んでよい。好ましい抗酸化剤は、ホスファイト含有化合物、リン酸化合物、ホスホン酸化合物及びヒンダードフェノール系化合物である。抗酸化剤は、トリアルキルホスファイト、混合アルキル/アリールホスファイト、アルキル化アリールホスファイト、立体障害アリールホスファイト、脂肪族スピロ環式ホスファイト、アルキルホスフェート、アリールホスフェート、混合アルキル/アリールホスフェート、アルキルホスホノアセテート、立体障害フェニルスピロ環、立体障害ビスホスホナイト、ヒドロキシフェニルプロピオネート、ヒドロキシベンジル、アルキルフェノール、芳香族アミン、ヒンダードアミン、ハイドロキノン及びそれらの混合物等の化合物を含む。そのような他の化合物を、バッチ又は任意の他の種類の操作で添加してもよい。
【0049】
それ故、本発明によるポリエステルを含む組成物は、そのような化合物を含んでよい。
【0050】
ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)は、静止条件下でゆっくりと結晶化するポリエステルである。核形成剤をポリエステル組成物に添加して、核生成密度を増大させ、それにより、静止条件下で全体的な結晶化速度を増大させることができる。
【0051】
本発明によるポリエステルの結晶化のために、典型的にはSSPプロセスの前に、結晶化を、溶融物から(インサイチュ結晶化を用いる水中ペレタイザーで行われ得るものとして)又はガラス状態から(ポリマー顆粒の冷却後に)、行ってよい。この目的のために、重縮合後に、典型的には溶融相のままで、核形成剤をポリエステルに添加することが望ましい場合がある。典型的な添加レベルは、全ポリエステルに対して、0.05~2wt%、又はより好ましくは0.1から1wt%となる。無機鉱物を、所望ならば、最大5又は更には10wt%等のより高レベルで添加してよい。
【0052】
核形成剤は、無機鉱物、有機塩、高溶融ワックス又は他のポリマーを含み得る。無機鉱物の例は、タルク、二酸化チタン、溶融石英、窒化ホウ素、マイカ及び炭酸カルシウムを含む。有機塩のいくつかの例は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、他のステアリン酸塩、他の脂肪酸の塩、FDCA二ナトリウム塩、サッカリンのナトリウム塩、安息香酸の塩、芳香族ホスホン酸塩、イソフタル酸のスルホン酸エステル塩、並びに、Milliken Chemicals社からMillad(登録商標)NX88として入手可能なビス(4-プロピルベンジリデン)プロピルソルビトール及びMillad(登録商標)3988として入手可能な3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール、NA-11、メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩又はNA-21、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,2"-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)-ホスフェートとして入手可能なリン酸塩及びエステル等の、市販材料である。高溶融ワックスは、ステアラミド及びエルカミド、又はビス-アミド等の材料を含む。ポリマーは、アイオノマー、例えば、Du Pont社製サーリンアイオノマー、Rohm and Haas社製アキュリンアイオノマー、PEG2000(ポリエチレングリコール)、PET、PBT他等の材料を含み得る。ポリマー結晶化は、様々な理由で行われてよく、そのそれぞれは、異なる条件下で実施されてよい。例えば、射出成形機における半結晶部分を作成するために、溶融から冷却中にポリマーの急速な結晶化を有することが必要とされるであろう。その一方で、再生屑の乾燥前の材料の結晶化のために、ポリマーをガラス状態から又は昇温時に(on the up-heat)急速に結晶化することが望ましいであろう。
【0053】
さらなる連続操作において、前重縮合反応は、専用容器内で行われてよく、典型的には、塔頂蒸気は、エステル化段階中に発生した蒸気から別個に収集される。このプロセス段階中に、圧力は、典型的には、エステル化中に使用されるおよそ1bar以上から、約20から700mbarまで、より好ましくは約20から100mbarまで、低減される。前重縮合の持続時間は、好適には、0.5から2時間の範囲内である。
【0054】
この時点で、エステル組成物を重縮合の工程に供する。先行技術から公知の通り、この工程における圧力は更に低減される。約5mbar未満、好ましくは約3mbar未満の圧力が印加されてよい。重縮合及びエステル化反応それぞれにおいて遊離されるエチレングリコール及び水の良好な質量移動及び除去のために、より低い圧力が好ましい。先行技術による重縮合温度は、約180から280℃である。本発明による重縮合は、好ましくは、245から270℃の温度及び好適には0.05から5mbarの圧力で行われる。これらの条件下で、エステル組成物及び形成された重縮合物が溶融段階にあることを確実にする。重縮合は、好適には、1から3時間の範囲の間続けられる。好ましくは、前重縮合及び重縮合段階を合わせた期間は、1.5から4時間の範囲内である。
【0055】
重縮合は、所望の固有粘度に到達したら終了させてよい。これは、重縮合が行われている反応器内に設けられた攪拌子のトルクを測定することによって、モニターすることができる。これは、例えば、連続プロセス配置の反応器の出口における溶融粘度計によってモニターすることもできる。粘度が十分に高い場合、重縮合は停止され、生成物が排出されて、重縮合物を産出する。
【0056】
上記で示した通り、重縮合は、好ましくは、重縮合触媒の存在下で行われる。多くの重縮合触媒を使用してよい。そのような触媒は、スズ、チタン、亜鉛、アンチモン、カルシウム、マンガン、コバルト、ハフニウム、鉛、マグネシウム、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム及びそれらの混合物から選択される1種又は複数の元素を含む触媒を含む。これらの化合物は、これらの金属の酢酸塩又は炭酸塩であってよい。代替として、金属アルコキシド、アルキル金属化合物又は他の有機金属化合物も可能である。他の好適な触媒は、言及されている元素の酸化物及びハロゲン化物を含む。好ましい触媒は、チタンアルコキシド、酢酸アンチモン、酸化アンチモン、並びにグリコール酸アンチモン、すなわち、酸化アンチモン及びエチレングリコールの反応生成物を含む。重縮合触媒の量は、典型的には、出発混合物中の2,5-フランジカルボン酸のモル数に対して、0.005mol%から0.2mol%の範囲内、好ましくは、0.01から0.10mol%の範囲内である。
【0057】
エステル組成物が形成されたら、重縮合触媒をエステル組成物に添加してよい。場合によりエステル化触媒の存在下で、重縮合触媒を2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールの出発混合物に添加することも可能である。エステル化触媒は、存在するならば、好適には、2,5-フランジカルボン酸のモル数に対して、0.005mol%から0.2mol%の量で存在する。重縮合触媒を、出発混合物中に又はエステル化プロセスの中間点で添加する場合、形成されたエステル組成物を、好適には単離しない。バッチプロセスにおいて、エステル組成物の形成後、得られた生成物を、好ましくは反応帯内に保ち、ここで、エステル化が起こり、そのままの生成物を、前重縮合工程における減圧に供する。連続プロセスにおいて、エステル組成物の形成後、得られた生成物を次の反応容器に輸送し、減圧に供して、エチレングリコール過剰の蒸発を遂行し、前重縮合工程を開始する。
【0058】
粘度が十分に高い場合、重縮合は停止され、生成物が排出されて、重縮合物を産出する。排出操作は、重縮合プロセスの性質に応じて、種々の形態をとることができる。例えば、重縮合がバッチ式で行われるならば、排出は、有利には、真空を遮断し、反応容器を窒素又は他の不活性ガスで加圧することによって行われてよい。加圧下又は真空下のいずれかで、ギアポンプの使用を介して排出することもできる。重縮合が連続方式で行われるならば、排出も、有利には、連続方式で、例えば、反応容器から重縮合物を除去するためのギアポンプの使用を介して、行われる。
【0059】
重縮合物を溶融形態であっても更に加工することができる。例えば、ポンプ及び又は押出機を介し、溶融濾過装置を経由して紡糸口金アセンブリに向けてよく、ここで、直接的に溶融紡糸繊維に形成し、引き抜き操作に供してフィラメント束を形成し、任意選択のさらなる操作に供してマルチフィラメント糸を形成する。代わりに、ダイス型に通過させてシートを形成し、一連のローラー上で冷却して、例えば熱成形操作における使用に好適なシート又はフィルムを作製することもできる。そのようにして得られた重縮合物溶融物を、固体粒子が得られるようなペレット化工程で処理することが非常に有利であることが分かった。それに加えて、溶融物をダイス型に通過させてストランドを産出してよく、これを水中で冷却し、次いで、小粒子に切断する。そのような粒子は、典型的には、均一なサイズ及び円筒形状のものである。溶融物を、「水中ペレット化」又は「ダイス面切断」として公知のプロセスに供してもよく、ここで、水等の冷却媒体と片側で接触している、多数の穴を持つダイス型に溶融物を通過させ、カッターの回転ハブを使用して、新たに出現した溶融物を切断してペレットを形成する。そのような粒子は、典型的には、均一なサイズ及びほぼ球状のものである。他の方法を使用することもできる。例として、重縮合物の固体チップを小粒子に粉砕してよい。粒子は、好適には、1グラムあたりの粒子の平均数が1グラムあたり40から350個の粒子の範囲内であるようなものである。典型的には、そのような粒径を、粒子あたり2.8から25mgの質量を持つポリエステル粒子に煮詰める。重縮合工程が、0.45より大きい、より好ましくは0.50より大きい、例えば約0.52dl/gより大きい固有粘度を持つ重縮合物を得るために行われる場合、重縮合物溶融物を粒子に変換する工程は、ストランド切断によるより少ないプロセスアップセット及び粒径のより均等な分布及びより少ない粉塵又は微粉により、より効率的になることが分かった。これは、重縮合物粒子のさらなる加工に望ましい。
【0060】
重縮合物が重縮合工程から固体材料として回収される場合、重縮合物はかなり非晶質である。重縮合物をより結晶性の材料にするために、重縮合物を、好ましくは、90から200℃の範囲内の温度で結晶化する。それに加えて、重縮合物を、固体状態のまま、示されている温度で、加熱工程に供する。ある特定の配置において、加熱工程は、最終ペレット温度が、結晶化が起こる範囲内であるように、ペレット化中のペレットの温度を制御することを必要とし得る。追加の加熱の任意の工程の前に、ペレット化工程からのあらゆる付着水が除去される。この手順は、好適には、重縮合物の温度を、90から200℃の範囲内の所望の温度にすることによって行われる。ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)について、最も急速な結晶化は、およそ170℃で起こることが分かった。粒子がおよそ1時間90から120℃で保持されるならば、その後の170℃での結晶化は高速になることも分かった。加熱工程は、好適には、大気圧又は真空下で行われ得る。熱は、好適には、水浴によって提供され得る。最適温度プログラムは、結晶化に使用される特定の配置によって決まることになる。典型的には、重縮合物を、90から140℃の範囲内の温度で0.2から2.5時間の間保持し、続いて、1から48時間120から200℃の範囲内の温度で結晶化工程を行う。重縮合物中のポリエステル鎖は、これらの条件下で結晶化して、半結晶性ポリエステルを産出することが分かった。このようにして得られたポリエステルは、好適には、DSCによって測定される結晶化度が少なくとも25J/gである。このポリエステルは、好適には、少なくとも215℃の融点を有する。重縮合物はまた、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率が0.10から0.7の範囲内である。
【0061】
本発明によれば、本発明によるポリマーのペレットを、その中で結晶化プロセスを自己開始するために十分に熱い状態で生成し、最終的に、得られたポリエステルペレットが、結晶化を経るために別個の加熱工程を必要としないような、十分に結晶性の特徴を提供する、水中ペレット化システムを使用することができる。この昇熱条件は、結晶化プロセスがペレットの内側から開始されるように、乾燥段階中にポリエステルペレット内に十分な熱を残すために、水スラリー中におけるペレットの滞留時間を低減させることによって遂行され得る。これを行うために、ペレットを水から可能な限り早く分離し、水中ペレタイザーの出口から乾燥機に入って通過するペレット流の速度を有意に増大させることが望ましい。次いで、乾燥機から出た熱いペレットを、従来の振動コンベヤー又は他の振動若しくは取扱機器に、所望の結晶化度を実現し凝集を回避するために十分な時間持ち込むことができる。熱いペレットを、断熱コンテナ内等の熱保持条件で貯蔵して、所望の結晶化プロセスを完了させることもできる。例えば、被覆鋼又はプラスチックのコンテナが許容可能であり、又はポリエチレンテレフタレート用に従来使用されているステンレス鋼ボックスでもよい。このシステムは、US8366428においてポリエチレンテレフタレートについて記述されているものと同様である。
【0062】
重縮合物を、その後の固相化工程に供してよい。そのような工程は、好適には、180℃から210℃の範囲内の温度で起こるが、すべての場合において重縮合物の融点未満である。圧力を上昇させてよいが、好適には不活性ガス流により周囲圧力であるか、又は100mbar未満等の大気圧未満であってよい。固相化工程は、最終所望分子量に到達するために必要とされ得るため、最大120時間の間、好適には2から60時間の範囲内で行われ得る。
【0063】
下記の実施例を利用して、本発明を更に例証する。
【実施例】
【0064】
下記の実施例において、ヒドロキシル末端基(HEG)及びジエチレングリコール残基(DEG)の量は、1H-NMRにより、上記の説明において記述されている通りの手順を使用して決定した。実験において、1H (逆ゲーテッドデカップリング)核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、クライオプラットフォーム付きのBruker社Avance 500デジタルNMRで、残留溶媒を内部標準として使用して記録した。NMR分析は、試料が調製された後数時間以内に為された。カルボン酸末端基含有量は、滴定によって決定した。
【0065】
これらの決定の結果は、meq/kgで表されるそれぞれの末端基の量である。カルボン酸末端基及びヒドロキシル末端基の和に対するカルボン酸末端基の相対含有量については、下記の式を使用する: CEG/(CEG + HEG)。
【0066】
(実施例1)
FDCAのエチレングリコールとの重合中のDEGの形成に対する水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)の影響に関して、実験を行った。10g充填のFDCAを各実験に使用した。エチレングリコールのFDCAに対する送給率は、およそ1.3/1であった(混合はより低い率では不良であるが、実験はTEAOH及びTMAOHの効能を依然として実証している)。触媒は、FDCAに対して0.04mol%のモル比の、アンチモンであった。エステル化は、エステル化を実質的に完了させるための必要に応じて、220℃及び90から160分の時間で行った。圧力を低減させ、重縮合を240~260℃の温度で90~120分間行った。以下の表1は、添加のレベル及び生成物におけるDEGの得られたレベルを示す。
【0067】
【0068】
(実施例2)
本発明によるポリエステルの調製を示すために、複数の重合を行った。
【0069】
エチレングリコール(MEG)及び2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を、1.15又は1.30のMEG:FDCAモル比で、触媒としてのSb2O3とともに、314ppmのアンチモンの存在下で混合した。実験1及び3における反応混合物は、42ppmのTEAOH (0.04mmol/molのMEG)を更に含有しており、実験2における反応混合物は、80ppm (0.09mmol/mol)のTEAOHを含有していた。混合物を、エステル化触媒の添加なしに、時間(te)の間昇温でエステル化に供した。形成された水を蒸発させ、蒸留カラムに入れた。凝縮水を除去し、同伴している又は蒸発したあらゆるMEGを、反応混合物に戻して再生利用した。フランジカルボン酸送給に対して理論水の85%が収集されるまで、反応を大気圧で続けた。そのときの温度は240℃であり、反応時間は270分であった。圧力を低減させ、前重縮合を開始し、圧力はおよそ70分で20mbarに到達した。蒸留カラムに通過させることなく、あらゆる追加のエチレングリコールを除去できるように、この時点で真空テイクオフ点(vacuum take-off point)を切り替えた。圧力を更に低減させて、5mbar未満とした。エステル組成物を触媒とともに、表2において示される通り、245又は251℃の温度で重縮合に供した。重縮合を、固有粘度(IV)が約0.5dl/gになるまで期間tpにわたって続けた。重縮合速度(P速度)をIV増大の速度(*1000)として1分間あたりのdl/gで算出した。相対CEGをCEG/(CEG + HEG)として決定し、CEG及びHEGはmeq/kgで表した。ジエチレングリコール含有量(DEG)は、1H NMRを用いて決定された、フランジカルボキシレート1モルあたりのモルで表される。反応条件及び結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
結果は、TEAOHの使用が0.045mol/mol未満のDEG含有量を持つポリエステルをもたらすことを示す。実験番号1及び3の結果の比較も、出発混合物における過剰のエチレングリコールが増大すると、得られるポリエステルにおけるDEG残基のレベルも増大することを示す。
【0072】
(実施例3)
実施例2の手順を、異なるMEG/FDCA比及び異なる温度を用いて繰り返した。各反応混合物は、80ppmのTEAOH (0.09mmol/molのMEG)も含んでいた。実施例2よりも幾分高いIVが得られるまで、重縮合反応を続けた。相対CEGをCEG/(CEG + HEG)として決定した。DEG含有量も決定した。条件及び結果を表3に示す。
【0073】
【0074】
結果は、異なるエステル化及び重縮合温度において、又は様々な比の出発材料において、ジエチレングリコールの形成がTEAOHの添加によって抑制され得ることを示す。
【0075】
400nmのジクロロメタン:ヘキサフルオロイソプロパノール 8:2 (vol/vol)混合物中の30mg/mL溶液として測定される、実験6及び7のポリエステルの吸光度特性を決定し、それぞれ0.023及び0.035であることが分かった。
【0076】
(実施例4)
様々なレベルのDEGを用いて、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシレート)の試料を調製した。第一連の実行において、試料をDSCパンに入れ、溶融の最初の段階、続いて、170℃で73分間溶融物からの等温結晶化に供した。次いで、得られた半結晶性ポリエステルの融点(Tm)を、DSCによって決定した。得られた融点を以下の表4に示す。第二連の実行において、同じポリマーのうち2つを、170℃で1時間溶融物からの等温結晶化、続いて、195℃又は205℃で1時間の等温加熱という追加のアニーリング工程によって処理した。アニーリング後、ポリマーをDSCによって試験して、ピーク溶融温度及び正味の結晶化度(正味エンタルピー(Hm)としてJ/gで表される)を決定した。これらの結果を以下の表4にも示す。
【0077】
【0078】
これらのデータは、融点の低減及び結晶化の程度の低減につながるDEGレベルの増大の悪影響を示す。融点を増大させるために195℃又は205℃等のより高温でアニールしようと試みた場合、結晶化度を増大させる代わりに、より高いDEG含有量の試料が実際に溶融した。より低レベルのDEGを持つ試料は、Hmによって測定される通り、より高いTm及び結晶化度のレベル増大を有していた。より高いDEG含有量の試料のガラス転移温度も、より低いDEG含有量を持つ試料に対して低減していた。これは、形成された物品の熱的安定性及び機械的特性に対して有害な影響を有し得る。
【0079】
(実施例5)
FDCAのエチレングリコールとの重合中のDEGの形成に対するNa2SO4及びNa2HPO4の影響について、実験を行った。10g充填のFDCAを各実験に使用した。エチレングリコールのFDCAに対する送給率は、およそ1.25/1であった。触媒は、FDCAに対して0.03mol%のモル比の、アンチモンであった。エステル化は、エステル化を実質的に完了させるための必要に応じて、220℃及び155から165分の時間で行った。圧力を低減させ、重縮合を245℃の温度で90分間行った。以下の表5は、添加のレベル及び生成物におけるDEGの得られたレベルを示す。
【0080】