(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】荷重依存性を有するブレーキを備えている回転駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 35/00 20060101AFI20220729BHJP
F16D 59/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
F16H35/00 H
F16D59/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017152999
(22)【出願日】2017-08-08
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】10 2016 214 774.9
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・リッター
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・アレンツ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ヒレン
(72)【発明者】
【氏名】オレク・バトスキー
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262242(JP,A)
【文献】特開昭52-25949(JP,A)
【文献】特開2007-40424(JP,A)
【文献】実公昭37-32947(JP,Y1)
【文献】特開2014-211192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 35/00
F16D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング要素(12)と、
前記ハウジング要素(12)に回転可能に取り付けられている駆動シャフト(16)と、
前記ハウジング要素(12)に回転可能に取り付けられている従動シャフト(18)と、
前記駆動シャフト(16)から前記従動シャフト(18)にトルクを伝達させるための伝達装置(20)と、
を備えている回転駆動装置において、
前記伝達装置(20)が、制動力によって前記駆動シャフト(16)の回転を妨げるように構成されている制動装置(30)を備えており、
前記制動装置(30)が、
共に回転及び静止するように前記駆動シャフト(16)に接続されている入力要素(32)と、
共に回転するように前記ハウジング要素(12)に接続されている制動要素(34)と、
第1の位置と第2の位置との間において前記入力要素(32)に関して調整可能とされ
かつ共に回転するように前記従動シャフト(18)に接続されているカップリング要素(36)であって、前記カップリング要素(36)が前記第1の位置に位置している場合に、前記制動装置(30)によって作用される前記制動力が、前記カップリング要素(36)が前記第2の位置に位置している場合よりも大きい、前記カップリング要素(36)と、
を備えており、
前記第1の位置から前記第2の位置に至る前記カップリング要素(36)の調整が、前記駆動シャフト(16)と前記従動シャフト(18)との間におけるトルク差についての第1の閾値を超えることによって開始されるように、前記カップリング要素(36)が、前記従動シャフト(18)に配設されており、
前記カップリング要素(36)が前記第1の位置に位置している場合に、前記カップリング要素(36)を前記制動要素(34)に対して押圧することによって、前記従動シャフト(18)の回転を妨げる前記制動力を発生可能であり、前記制動要素(34)を前記入力要素(32)に対して押圧することによって、
前記駆動シャフト(16)の回転を妨げる前記制動力を発生可能であることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
前記制動装置(30)を介して所定の前記制動力を作用させるための複数の前記第2の位置が、前記カップリング要素(36)のために設けられており、
前記カップリング要素(36)が、前記駆動シャフト(16)と前記従動シャフト(18)との間におけるトルク差が大きくなった場合に前記制動力を小さくする第2の位置に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転駆動装置。
【請求項3】
複数の前記第2の位置が、前記制動力の勾配を有している連続的な領域によって形成されており、
前記カップリング要素(36)が、前記駆動シャフト(16)と前記従動シャフト(18)との間におけるトルク差が大きくなった場合に前記制動力を小さくする方向に向かって前記連続的な領域を貫通するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転駆動装置。
【請求項4】
前記第2の位置から前記第1の位置に至る前記カップリング要素(36)の調整が、前記駆動シャフト(16)と前記従動シャフト(18)との間におけるトルク差についての第2の閾値を下回ることによって開始されるように、前記カップリング要素(36)が、前記従動シャフト(18)に配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回転駆動装置。
【請求項5】
前記伝達装置(20)が、前記駆動シャフト(16)に共に回転及び静止するように接続されている駆動伝達要素(22)と、前記従動シャフト(18)に共に回転及び静止するように接続されている従動伝達要素(26)とを備えており、これにより、前記駆動シャフト(16)が、前記従動シャフト(18)に沿って移動可能とされ、前記カップリング要素(36)が、前記従動伝達要素(26)に共に回転及び静止するように接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回転駆動装置。
【請求項6】
前記駆動伝達要素(22)と前記従動伝達要素(26)とが、少なくとも1組の協働斜面(22a,26a)を備えており、少なくとも1組の前記協働斜面(22a,26a)が、前記駆動伝達要素(22)と前記従動伝達要素(26)との相対的な回転を
前記従動シャフト(18)に沿った前記従動伝達要素(26)の移動に変換するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の回転駆動装置。
【請求項7】
前記駆動伝達要素(22)と前記従動伝達要素(26)との相対的な回転が、例えば前記駆動伝達要素(22)及び前記従動伝達要素(26)に配設されている少なくとも1組の前記協働斜面(22a,26a)によって、所定の角度に制限されることを特徴とする請求項6に記載の回転駆動装置。
【請求項8】
弾性要素(38)が、前記従動伝達要素(26)にプレストレスを前記駆動伝達要素(22)に向かって作用させるように設けられていることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の回転駆動装置。
【請求項9】
前記弾性要素(38)が、前記駆動シャフト(16)に配設されているサポート要素(24)と前記従動シャフト(18)に配設されている要素との両方に支持されていることを特徴とする請求項8に記載の回転駆動装置。
【請求項10】
前記制動装置(30)の前記入力要素(32)が、前記駆動シャフト(16)に配設されている前記サポート要素(24)に装着されていることを特徴とする請求項9に記載の回転駆動装置。
【請求項11】
前記駆動シャフト(16)を駆動するモータ(14)が、前記ハウジング要素(12)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の回転駆動装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の回転駆動装置と前記従動シャフト(18)の回転運動を長手方向運動に変換するための装置とを備えていることを特徴とする可変長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング要素と、ハウジング要素に回転可能に取り付けられている駆動シャフトと、ハウジング要素に回転可能に取り付けられている従動シャフトと、駆動シャフトから従動シャフトにトルクを伝達させるための伝達装置と、を備えている回転駆動装置に関する。
【0002】
このタイプの回転駆動装置は一般に知られている。当該回転駆動装置は、従動シャフトに回転トルクを付与することによって上位構成の他の構成部品を駆動するために利用可能とされるか、又は、例えばウォーム歯車等のような、従動シャフトの回転運動を長手方向運動に変換するための装置と協働して利用可能とされる。駆動シャフトの回転運動が従動シャフトによって変換される可変長ユニットと、可変長ユニットの長さを変化させるために回転運動を長手方向運動に変換するための装置とが、例えばエンジンボンネット、テールゲート、荷物室蓋、ドア、及び類似する回動可能とされる要素を開閉するために、特に自動車両において利用される。
【背景技術】
【0003】
しかしながら、一般に知られる装置には、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差に従って回転駆動装置の駆動シャフト又は従動シャフトの回転運動に対して制動力を付与する機構が設けられていない。しかしながら、特定の回転駆動装置に対してニーズが存在することが判明している。特定の回転駆動装置では、トルク差が増大する場合に、駆動シャフトと従動シャフトとの間における上述のトルク差に従って制動力が低減される。これにより、駆動シャフトと従動シャフトとの間における、すなわち、例えば駆動シャフトに設けられたモータと従動シャフトに設けられた被駆動部品との間における“応力(stress)”が小さい場合に、回転駆動が強く制動される一方、上述の部品同士の間における“応力”が大きい場合に、制動効果が低減されるか、又は完全に失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、このタイプの制動特性を有している回転駆動装置であって、単純且つ高信頼の構造を有していると共に良好なコスト効果で製造可能とされ、既知のモータ及び歯車装置組立体を変更することなく利用可能とされる回転駆動装置を提供することである。
【0005】
当該目的は、伝達装置が、制動力によって駆動シャフトの回転を妨げるように構成されている制動装置を備えており、制動装置が、駆動シャフトに設けられている入力要素であって、回転駆動可能とされる入力要素と、共に回転するようにハウジング要素に接続されている制動要素と、第1の位置と第2の位置との間において入力要素に関して調整可能とされるカップリング要素であって、カップリング要素が第1の位置に位置している場合に、制動装置によって作用される制動力が、カップリング要素が第2の位置に位置している場合よりも大きい、カップリング要素と、を備えており、第1の位置から第2の位置に至るカップリング要素の調整が、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差についての第1の閾値より大きくなることによって開始されるように、カップリング要素が、従動シャフトに配設されている、上述のタイプの回転駆動装置によって達成される。
【0006】
上述の単純な構成とされる制動装置を伝達装置に設けることによって、僅かに数個の構成部品のみから成る単純な構造で回転駆動装置の上述の制動特性を実現することができる。既知の一般的な回転駆動装置と比較して、回転駆動装置のモータ組立体及び歯車装置のいずれも改良する必要がないからである。
【0007】
この場合には、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が第1の閾値を下回る限り、とりわけ、駆動シャフトが動作不能である場合であっても、第1の制動力が回転駆動装置に作用する。また、第1の閾値を上回る場合には、第1の位置から第2の位置に至るカップリング要素の調整が開始される。この場合には、第1の閾値が特に零であることに留意すべきである。このことは、特に以下に説明する、制動力を低減させる連続的な領域が設けられた実施例において重要である。
この場合には、トルク差が最小であっても、当該連続的な領域のスイープを開始することができる。
【0008】
本発明では、所定の制動力が制動装置によって作用される複数の第2の位置がカップリング要素のために設けられている。さらに、カップリング要素は、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が大きくなった場合に制動力を低減させる第2の位置に移行するように構成されている。このために、第1の位置に加えて、対応する第1の閾値が、(最小の制動力を有する第2の位置を除いて)第2の位置それぞれにも割り当てられている。カップリング要素は、第1の閾値を超えた場合に、2番目に小さい制動力の値を有する第2の位置に移動する。このようにして、回転駆動装置の制動特性を徐々に大きくすることができ、制動力は、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が大きくなった場合に、より小さい値に移行する。この場合には、第2の位置同士の間における制動力の増加量を、例えば直線に従って又は漸進的に若しくは徐々に減少するように自在に選択可能とされる。
【0009】
付加的又は代替的には、複数の第2の位置が、制動力の勾配を有している連続的な領域によって少なくとも部分的に形成されており、カップリング要素は、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が大きくなった場合に連続的な領域を通過するように構成されている。当該発展形態では、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が大きくなった場合に制動力を連続的に小さくすることによって、滑らかな制動特性を発生させ、これにより、従動シャフトのぎくしゃくした回転特性の発生を防止することができる。
【0010】
従って、このタイプの回転駆動装置の特徴は、特に静粛性に優れた動作と特に俊敏な応答性である。
【0011】
制動力を小さくするための連続的な領域についての一の例示的な実施例は、トルク差が大きくなった場合に制動要素とカップリング要素との間における接触圧力が連続的に小さくなるように形成されている。制動要素とカップリング要素とは、初期に互いに対して最小限度に限り変位されるので、弾性変形に起因する接触を維持することができる。当該実施例では、トルク差が特定の値より大きくなると、制動要素とカップリング要素とはもはや接触しなくなる。その結果として、制動装置が解放され、制動力が減少し、零に至る。この場合には、制動力を小さくするための連続的な領域と、制動要素とカップリング要素とが全く接触していない構成との両方が、それぞれ第2の位置に対応している。
【0012】
本発明における回転駆動装置の一の発展形態では、カップリング要素が、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が第2の閾値を下回ることによって第2の位置から第1の位置に至るカップリング要素の調整が開始されるように、従動シャフトに設けられている。
【0013】
このようにして、カップリング要素が第2の位置を占めた後に、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差が上述の第2の閾値を下回るまで、カップリング要素が第1の位置に位置する場合における上述の第1の制動力より小さい、一定の第2の制動力が作用される。このようにして、トルク差が第1の閾値の近傍で僅かに変化した場合に、カップリング要素が繰り返し第1の位置から第2の位置に移動し第1の位置に戻ることが防止される。これにより、回転駆動装置の不連続なすなわちぎくしゃくした制動特性となり、ひいては従動シャフトの運動特性における衝撃が大きくなる。
【0014】
さらに、任意には、同様に第2の閾値が、所定の制動力を有している特定の第2の位置に到達した場合に、第2の閾値を下回った後に限り、より大きい制動力を有している隣り合う位置に戻ることが実現するように、複数の第2の位置にそれぞれ割り当てられている。これにより、複数の第2の位置それぞれにおける隣り合う位置同士の間において時々跳ぶことによって、不連続な制動特性を回避するという上述の利点を確実に発揮させることができる。
【0015】
一の実施例では、伝達装置が、駆動シャフトに共に回転及び静止するように接続されている駆動伝達要素と、従動シャフトに共に回転するように且つ従動シャフトに沿って変位するように接続されている従動伝達要素とをさらに備えており、カップリング要素が、従動伝達要素に共に回転及び静止するように接続されている。このような構成は、カップリング要素を相違する位置同士の間で変位させる従動伝達要素を相違する位置同士の間で平易させるという、ひいては、回転駆動装置の所望の制動特性を実現するという特に単純なオプションを提示している。
【0016】
一の発展形態では、駆動伝達要素と従動伝達要素とが、駆動伝達要素及び従動伝達要素の相対的回転を従動シャフトに沿った従動伝達要素の変位に変換するように構成されている少なくとも1組の対応する傾斜面を備えている。このようにして、駆動シャフトと従動シャフトとの間におけるトルク差によって開始される互いに対する傾斜面の滑動によって、従動シャフトに沿った従動伝達要素の変位、ひいては制動要素に対するカップリング要素の変位が実現される。
【0017】
この場合には、駆動伝達要素と従動伝達要素との相対的な回転が、例えば少なくとも1組の駆動伝達要素及び従動伝達要素に設けられた協働ストッパによって、所定の最大角度に制限される。このようにして、最初に、制動要素に対するカップリング要素の変位についての終端位置が設けられ、第二に、駆動伝達要素と従動伝達要素との間における滑動ひいては駆動シャフトと従動シャフトとの間における滑動が防止される。
【0018】
従動伝達要素と駆動伝達要素とは、休止状態において、互いに対して所定の位置関係にあり、回転駆動装置の動作が停止した場合に、所定の位置関係に戻る。第二に、最大作動制動力を決定するために、従動伝達要素に駆動伝達要素に向かってプレストレスを作用させる、例えばコイルバネのような弾性要素が設けられている。
【0019】
このために、特に弾性要素は、駆動シャフトに設けられたサポート要素と従動シャフトに設けられた要素、特にカップリング要素との両方に支持されている。さらに、特に制動装置の入力要素が、駆動シャフトに設けられたサポート要素に装着されている。このような構成によって、本発明における回転駆動装置のための制動装置を備えている伝達装置は、最小数の必須構成部品を備えている。
【0020】
さらに、本発明における回転駆動装置の一の発展形態では、駆動シャフトを駆動するモータと任意には歯車装置、特に遊星歯車装置とが、同様にハウジング要素の内側に配置されている。この場合には、歯車装置が駆動シャフト及び従動シャフトの両方に設けられており、本発明における制動装置は、従動シャフトに設けられた歯車装置と組み合わせされると特に優位である。
【0021】
最後に、本発明は、本発明における回転駆動装置を備えている可変長装置に、及び、従動シャフトの回転運動を長手方向運動に変換するための装置に関する。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び優位点については、添付図面を参照しつつ以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明における回転駆動装置の一の実施例についての長手方向断面図である。
【
図2a】第1の位置における伝達装置の領域についての、
図1表わす実施例の拡大図である。
【
図2b】第2の位置における伝達装置の領域についての、
図1表わす実施例の拡大図である。
【
図3a】
図1、
図2a、及び
図2bに表わす実施例における駆動伝達要素及び従動伝達要素の拡大図である。
【
図3b】
図1、
図2a、及び
図2bに表わす実施例における駆動伝達要素及び従動伝達要素の拡大図である。
【
図4】伝達装置の領域についての、
図1に表わす長手方向断面を別角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明における回転駆動装置10の一の実施例を表わす。回転駆動装置10は、ラジアル方向R及び長手方向Lを有している円筒状のハウジング要素12を備えており、ハウジング要素12は、モータ組立体14と、モータ組立体14によって駆動可能とされる駆動シャフト16と、従動シャフト18と、駆動シャフト16から従動シャフト18にトルクを伝達するための伝達装置20とを内蔵している。この場合には、モータ組立体14は、既知の電動式回転モータとされるが、必要であれば、モータ組立体14と駆動シャフト16との間に他の歯車装置ユニットを設けることもできる。
【0025】
駆動伝達要素22が、駆動シャフト16に配置されており、駆動シャフト16と共に回転及び静止するように取り付けられている。駆動シャフト16から見て、サポート要素24は、さらにラジアル方向外方において駆動シャフト16に配置されており、同様に駆動シャフト16と共に回転及び静止するように駆動シャフト16に接続されている。窪み状の凹所Aは、ラジアル方向R及び長手方向Lにおいて延在しており、駆動伝達要素22とサポート要素24との間に形成されている。
【0026】
駆動伝達要素22の相補的な部品として、従動伝達要素26が、従動シャフト18に配設されており、凹所Aに収容されており、従動シャフト18と共に回転されるが、長手方向Lにおいて従動シャフト18に対して所定距離だけ変位可能とされるように保持されている。このような変位を実現するための機構については、以下に詳述する。従動伝達要素26は、例えば協働する舌部及び溝部から成る少なくとも1つの組によって、回転不能であるが長手方向に変位可能に従動シャフト18に収容されている。
【0027】
同時に、従動シャフト18が、伝達装置20から遠位の側において、遊星歯車装置28のための入力シャフトとして利用される。これにより、既知の方法によって従動シャフト18の回転が減速されるので、出力シャフト28bが従動シャフト18と比較して低い速度及び大きいトルクで駆動される。さらに、制動装置30は伝達装置20に設けられているが、これについては、
図2a及び
図2bを参照しつつ説明する。
【0028】
この場合、
図2aは制動装置30の第1の位置を表わし、
図2bは制動装置30の第2の位置を表わす。第一に、制動装置30は、駆動シャフト16に設けられており、これにより回転駆動可能とされる入力要素32と、共に回転するようにハウジング要素12に接続されている制動要素34と、従動伝達要素26に設けられているカップリング要素36とを備えている。この場合、カップリング要素36は、従動伝達要素26と共に回転及び静止するように従動伝達要素26に保持されている。さらに、制動装置30は、突起24bを介してカップリング要素36及びサポート要素24の両方に支持されているコイルバネ38を備えている。本発明では、コイルバネ38は弾性要素を形成している。
【0029】
図2aに表わす構成では、駆動シャフト16と従動シャフト18との間におけるトルク差は非常に小さい。また、特に
図2aは、回転駆動装置10のアイドル状態を表わす。この場合、コイルバネ38によって、カップリング要素36は制動要素34に対して押圧されており、その結果として、カップリング要素36から遠位の制動要素34の側部が入力要素32を押圧する一方、コイルバネ38によって、従動伝達要素26は駆動伝達要素22に対して押圧されている。
【0030】
駆動伝達要素22と従動伝達要素26とが、
図3a及び
図3bを参照して以下に説明する傾斜面を有しているので、
図2aに表わす位置において、トルクが、駆動伝達要素22及び従動伝達要素26を介して、駆動シャフト16と従動シャフト18との間において伝達される。しかしながら、この場合には、カップリング要素36を制動要素34に対して、ひいては制動要素34を入力要素32に対して押圧することによって、入力シャフト16の回転を妨げる制動力が発生する。特にモータ組立体14がアイドル状態にある場合には、従動シャフト19の回転が、上述の制動力によって妨げられるので、回転駆動装置10は、制動装置30によって自動的にロックされる。
【0031】
図1に表わす図にも対応する
図2bに表わす状態を明確にするために、駆動伝達要素22及び従動伝達要素26それぞれを表わす
図3a及び
図3bを先行して参照する。
図3a及び
図3bそれぞれに表わす駆動伝達要素22及び従動伝達要素26それぞれの態様は、斜めから見た駆動伝達要素22と従動伝達要素26との接触領域に対応する斜視図である。
【0032】
駆動伝達要素22と従動伝達要素26とはそれぞれ、傾斜面22a,26aを備えており、トルクが、傾斜面22a,26aを介して、駆動伝達要素22と従動伝達要素26との間において、ひいては駆動シャフト16と従動シャフト18との間において伝達可能とされる一方、傾斜面22a,26aは、駆動伝達要素22及び従動伝達要素26を長手方向Lにおいて互いに対して相対的に移動させることができる。さらに、駆動伝達要素22及び従動伝達要素26は、協働ストッパ22b,26bを備えており、
図4を参照して後述するように、協働ストッパ22b,26bが共に、駆動伝達要素22と従動伝達要素26との間における相対的な回転角度を規定しており、当該相対的な回転角度が最大となった場合に、トルクが、駆動伝達要素22と従動伝達要素26との間において伝達される。
【0033】
コイルバネ38によって駆動伝達要素22と従動伝達要素26が互いに対して押圧される、
図2aに表わす位置において、駆動伝達要素22の斜面22aの突出領域22a1が、従動伝達要素26の傾斜面26aの凹状領域26a2に高精度で挿入される一方、従動伝達要素26の傾斜面26aの突出領域26a1は、駆動伝達要素22の斜面22aの凹状領域22a2に挿入される。上述のように、この場合には駆動シャフト16と従動シャフト18との間におけるトルク差が小さいので、コイルバネ38による押圧の影響を受けて、協働する傾斜面22a,26aを介してトルクを伝達させることができる。
【0034】
しかしながら、トルク差が、とりわけコイルバネ38の剛性によって決定される第1の閾値より大きくなった場合には、協働する傾斜面22a,26aが、コイルバネ38の押圧の反対方向である回転方向において互いに対して滑動する。その結果として、駆動伝達要素22と従動伝達要素26とが互いに対して相対的に軸線方向に移動され、従動伝達要素26は長手方向Lにおいて駆動シャフト16から離隔するように従動シャフト18に沿って移動する。このような移動は、上述の舌部(突出領域)及び溝部(凹状領域)から成るシステムによって実現される。この場合には、カップリング要素36と制動要素34との間における接触圧力が初めて小さくなるとすぐに、従動伝達要素26は、従動伝達要素26に堅固に接続されているカップリング要素36に沿って輸送される。このプロセスの際に、制動装置30によって作用される制動力は連続的に低減される。
図2bは、カップリング要素36と制動要素34とがもはや接触していない状態を表す。
【0035】
図2a及び
図2bはそれぞれ、従動伝達要素26を良好に表すために、同一の角度方向から見た図である。
図2a及び
図2bでは、駆動伝達要素22及び従動伝達要素26の協働ストッパ22b,26bが接触し、且つ、トルクが駆動シャフト16と従動シャフト18との間において略完全に伝達されるように、駆動伝達要素22が従動伝達要素26に対して相対的に回転される。
図4は、明確にするために、2つの協働ストッパ22b,26bの互いに対するこのような当接を表す。この場合には、駆動シャフト16が時計回りに回転するので、その結果として、協働ストッパ22bが協働ストッパ26bを押圧し、これにより駆動シャフト16の駆動トルクが、駆動シャフト16に堅固に接続されている駆動伝達要素22を介して、従動伝達要素26ひいては従動シャフト18に伝達される。
【0036】
駆動シャフト16と従動シャフト18との間におけるトルク差が再び十分に小さくなるとすぐに、例えば駆動プロセスの最後において、コイルばね38の効果によって、再び駆動伝達要素22及び従動伝達要素26が、協働する斜面22a,26aに沿って滑動し、
図2aに表す位置に復帰する。
【符号の説明】
【0037】
10 回転駆動装置
12 ハウジング要素
14 モータ組立体
16 駆動シャフト
18 従動シャフト
20 伝達装置
22 駆動伝達要素
22a (駆動伝達要素の)斜面
22a1 (駆動伝達要素の斜面の)突出領域
22a2 (駆動伝達要素の斜面の)凹状領域
22b (駆動伝達要素の)協働ストッパ
24 サポート要素
26 従動伝達要素
26a (従動伝達要素の)斜面
26a1 (従動伝達要素の斜面の)突出領域
26a2 (従動伝達要素の斜面の)凹状領域
26b (従動伝達要素の)協働ストッパ
28 遊星歯車装置
28b 出力シャフト
30 制動装置
32 入力要素
34 制動要素
36 カップリング要素
38 コイルバネ
L (回転駆動装置10に関する)長手方向
R (回転駆動装置10に関する)ラジアル方向
A 凹所