(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20220729BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220729BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220729BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220729BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L21/66 L
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/48 D
H01L29/48 F
H01L29/48 P
(21)【出願番号】P 2017155710
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】前山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一
【合議体】
【審判長】辻本 泰隆
【審判官】恩田 春香
【審判官】小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336
H01L27/04
H01L29/739
H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基体と、
前記半導体基体の一方の主面に形成された第一絶縁膜と、
前記半導体基体の他方の主面とオーミック接合を形成する第一電極と、
前記半導体基体のスクライブラインで画された複数の半導体素子領域の各々において、前記一方の主面が露出した開口部に形成され、前記半導体基体とショットキー接合を形成する接合部と、前記第一絶縁膜と接する周縁部と、を含む第二電極と、
前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体を前記一方の主面側から平面視したとき、前記開口部上では前記接合部が露出するように、かつ、前記スクライブライン上では前記第一絶縁膜が露出するように、前記第一絶縁膜を被覆する第二絶縁膜と、
を含み、
互いに隣接する二つの前記接合部を通過し該二つの前記接合部の間の前記スクライブラインに直交する平面で前記半導体基体を断面視したとき、該二つの前記接合部の間の二つの前記第二絶縁膜の幅の和と、該二つの前記第二絶縁膜の間隔との総和で与えられる第二電極間距離Xが、前記半導体素子領域に対して行われる耐圧検査において前記第一電極と前記第二電極の前記接合部との間に印加される逆バイアス電圧の上限値Vmaxとの関係で、
Vmax / (1.3×10
4
V/cm) > X > Vmax / (1.5×10
4 V/cm) を充たす、
半導体装置。
【請求項2】
前記第二絶縁膜が、ポリイミドで形成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一絶縁膜が、リンガラス又は二酸化珪素で形成される、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基体に、ガードリング領域が設けられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
炭化珪素からなる半導体基体を準備する、半導体基体準備工程と、
前記半導体基体の一方の主面に第一絶縁膜を形成する、第一絶縁膜形成工程と、
前記半導体基体の他方の主面に、前記半導体基体とオーミック接合を形成する第一電極を形成する、第一電極形成工程と、
前記半導体基体のスクライブラインで画された複数の半導体素子領域の各々において、前記第一絶縁膜の一部を除去して前記一方の主面が露出した開口部を形成する、開口部形成工程と、
前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体とショットキー接合を形成する接合部と、前記第一絶縁膜と接する周縁部と、を含む第二電極を前記開口部に形成する、第二電極形成工程と、
前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体を前記一方の主面側から平面視したとき、前記開口部上では前記接合部が露出するように、かつ、前記スクライブライン上では前記第一絶縁膜が露出するように、前記第一絶縁膜を被覆する第二絶縁膜を形成する、第二絶縁膜形成工程と、
前記半導体素子領域に対して、前記第一電極と前記第二電極の前記接合部との間に、上限値Vmaxの逆バイアス電圧を印加して耐圧検査を行う、耐圧検査工程と、
を含み、
前記第二絶縁膜形成工程において、互いに隣接する二つの前記接合部を通過し該二つの前記接合部の間の前記スクライブラインに直交する平面で前記半導体基体を断面視したとき、該二つの前記接合部の間の二つの前記第二絶縁膜の幅の和と、該二つの前記第二絶縁膜の間隔との総和で与えられる第二電極間距離Xが、
Vmax / (1.3×10
4
V/cm) > X > Vmax / (1.5×10
4 V/cm) を充たすように前記第二絶縁膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基体準備工程と前記第一絶縁膜形成工程との間に、前記半導体基体の一方の主面に、前記半導体基体とは逆の導電型の不純物イオンを注入する、不純物イオン注入工程をさらに含む、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧半導体デバイスの製造工程において、ウェハ状態で耐圧検査を行う際、ウェハ表面で放電が生じるという問題がある。
【0003】
耐圧検査を行う半導体素子領域の電極と、該半導体素子領域を取り巻くスクライブラインとの間での放電については、スクライブライン上に絶縁膜を設けることにより、対処がなされてきた(例えば、特許文献1-3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-267032号公報
【文献】特開2013-187438号公報
【文献】特開2013-191632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐圧検査における逆バイアス電圧の上限値が上昇するにつれ、耐圧検査を行う電極とスクライブラインとの間ではなく、スクライブラインを越えて、隣接する電極との間で、確率的に放電が起こってしまうことがわかった。
【0006】
この問題は、耐圧検査において、逆バイアス電圧値の上昇につれ、隣接電極における電位が付随的にランダムに変動することが避けられないために生じる。このため、信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することが難しい。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供するための半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基体と、前記半導体基体の一方の主面に形成された第一絶縁膜と、前記半導体基体の他方の主面とオーミック接合を形成する第一電極と、前記半導体基体のスクライブラインで画された複数の半導体素子領域の各々において、前記一方の主面が露出した開口部に形成され、前記半導体基体とショットキー接合を形成する接合部と、前記第一絶縁膜と接する周縁部と、を含む第二電極と、前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体を前記一方の主面側から平面視したとき、前記開口部上では前記接合部が露出するように、かつ、前記スクライブライン上では前記第一絶縁膜が露出するように、前記第一絶縁膜を被覆する第二絶縁膜と、を含み、互いに隣接する二つの前記接合部を通過し該二つの前記接合部の間の前記スクライブラインに直交する平面で前記半導体基体を断面視したとき、該二つの前記接合部の間の二つの前記第二絶縁膜の幅の和と、該二つの前記第二絶縁膜の間隔との総和で与えられる第二電極間距離Xが、前記半導体素子領域に対して行われる耐圧検査において前記第一電極と前記第二電極の前記接合部との間に印加される逆バイアス電圧の上限値Vmaxとの関係で、Vmax / (1.3×10
4
V/cm) > X > Vmax / (1.5×104 V/cm) を充たす。
【0009】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、炭化珪素からなる半導体基体を準備する、半導体基体準備工程と、前記半導体基体の一方の主面に第一絶縁膜を形成する、第一絶縁膜形成工程と、前記半導体基体の他方の主面に、前記半導体基体とオーミック接合を形成する第一電極を形成する、第一電極形成工程と、前記半導体基体のスクライブラインで画された複数の半導体素子領域の各々において、前記第一絶縁膜の一部を除去して前記一方の主面が露出した開口部を形成する、開口部形成工程と、前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体とショットキー接合を形成する接合部と、前記第一絶縁膜と接する周縁部と、を含む第二電極を前記開口部に形成する、第二電極形成工程と、前記半導体素子領域の各々において、前記半導体基体を前記一方の主面側から平面視したとき、前記開口部上では前記接合部が露出するように、かつ、前記スクライブライン上では前記第一絶縁膜が露出するように、前記第一絶縁膜を被覆する第二絶縁膜を形成する、第二絶縁膜形成工程と、前記半導体素子領域に対して、前記第一電極と前記第二電極の前記接合部との間に、上限値Vmaxの逆バイアス電圧を印加して耐圧検査を行う、耐圧検査工程と、を含み、前記第二絶縁膜形成工程において、互いに隣接する二つの前記接合部を通過し該二つの前記接合部の間の前記スクライブラインに直交する平面で前記半導体基体を断面視したとき、該二つの前記接合部の間の二つの前記第二絶縁膜の幅の和と、該二つの前記第二絶縁膜の間隔との総和で与えられる第二電極間距離Xが、Vmax / (1.3×10
4
V/cm) > X > Vmax / (1.5×104 V/cm) を充たすように前記第二絶縁膜を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、隣接電極間の放電発生率を3%以下に抑制することができる。したがって、信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態に係る半導体装置の構成を示す平面図である。
【
図2】第一の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図3】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【
図4】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図6】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図7】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図8】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図9】耐圧検査工程で、隣接電極間に放電が起きた状態の写真である。
【
図10】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施例1~3を、比較例とともに示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一の実施形態]
以下、
図1から
図9を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0013】
(半導体装置の構成)
本実施形態に係る半導体装置は、縦型ショットキーバリアダイオード素子(半導体素子)を複数製造するための、スクライブラインが設けられた半導体装置である。以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。
【0014】
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、平面視において、縦方向及び横方向に延びる複数のスクライブラインLを覆うように、第一絶縁膜11が設けられている。スクライブラインLは、半導体装置1を切断する位置を示すラインであり、第一絶縁膜11は、スクライブラインL上で露出している。半導体装置1は、スクライブラインLに沿って、例えばダイアモンドカッターを用いて切削される。これにより、複数の半導体素子(チップ)が製造される。
【0016】
スクライブラインLで画された複数の半導体素子領域の各々において、第二絶縁膜17が、環状に設けられている。第二絶縁膜17の内側には、第二電極14の一部である接合部14aが露出している。
【0017】
図2は、
図1の破線で囲まれた領域において、半導体装置1を、互いに隣接する二つの接合部14a,14aを通過し該二つの接合部14a,14aの間のスクライブラインLに直交する平面で断面視した断面図(A-A矢視断面図)である。
図2に示すように、半導体装置1は、半導体基体10と、第一絶縁膜11と、第一電極15と、第二電極14と、第二絶縁膜17と、を含む。半導体装置1は、ガードリング領域12と、第三絶縁膜16と、を、さらに含む。
【0018】
半導体基体10は、炭化珪素(SiC)からなる。半導体基体10は、高濃度の不純物を含むn+型炭化珪素からなる半導体基板10aと、低濃度の不純物を含むn-型炭化珪素からなるドリフト層10bと、を含む。
【0019】
n+型炭化珪素からなる半導体基板10aとしては、n型不純物濃度が5×1017cm-3~5×1019cm-3,厚さが30μm~400μmのものを用いることができる。n+型炭化珪素の結晶多形としては、例えば4Hのものを用いることができる。ドリフト層10bとしては、n型不純物濃度が1×1015cm-3~1×1018cm-3,厚さが3μm~20μmのものを用いることができる。ドリフト層10bは、半導体基体10の一方の主面F1を構成する。半導体基板10aは、半導体基体10の他方の主面F2を構成する。
【0020】
第一絶縁膜11は、スクライブラインLを覆うように、半導体基体10の一方の主面F1に形成される。第一絶縁膜11は、リンガラス(PSG)で形成される。第一絶縁膜を形成する材料はPSGに限定されない。例えば、下地に熱酸化膜を追加した熱酸化膜/PSG積層膜であっても構わない。
【0021】
第一電極15は、半導体基体10の他方の主面F2に形成される。第一電極15は、他方の主面F2とオーミック接合を形成している。第一電極15は、例えば、ニッケル(Ni)で形成される。
【0022】
後述するように、半導体基体10の一方の主面F1のうち第一絶縁膜11で覆われていない部分は、一方の主面F1が露出した開口部13となる。開口部13は、スクライブラインLで画された複数の半導体素子領域の各々に存在する。すなわち、第一絶縁膜11には、複数の開口部13が形成されている。
【0023】
第二電極14は、スクライブラインLで画された複数の半導体素子領域の各々において、開口部13を覆うように、形成される。第二電極14は、接合部14aと、周縁部14bと、を含む。第二電極14は、半導体基体10とショットキー接合を形成する。第二電極14は、例えば、チタン(Ti)で形成される。
【0024】
接合部14aは、開口部13に形成される。半導体基体10の一方の主面F1では、第二電極14の接合部14aにおいてショットキー接合が形成される。前述したように、半導体基体10の他方の主面F2では、第一電極15においてオーミック接合が形成される。このため、スクライブラインLで画された複数の半導体素子領域の各々は、ショットキーバリアダイオードとして機能する。
【0025】
周縁部14bは、接合部14aの周囲に位置し、かつ、第一絶縁膜11と接している。周縁部14bは、平面視したとき、第一絶縁膜11の縁部を覆うように、環状に形成されている。
【0026】
半導体基体10を平面視したとき、ドリフト層10bのうち接合部14aの外側に位置する領域には、p型半導体からなるガードリング領域12が環状に形成されている。ガードリング領域12は、例えば、アルミニウム(Al)や硼素(B)を不純物として含む。ガードリング領域12の内縁部は、平面視において、接合部14aと接している。ガードリング領域12の外縁部は、平面視において、第一絶縁膜11と接している。
【0027】
ガードリング領域12は、高濃度ガードリング領域12aと、低濃度ガードリング領域12bと、を含む。高濃度ガードリング領域12aは、ガードリング領域12を平面視したとき、その内側に環状に設けられる。高濃度ガードリング領域12aは、相対的に不純物濃度の高い層である(p型不純物濃度が1×1018cm-3~1×1019cm-3)。高濃度ガードリング領域12aは、平面視において、周縁部14bと重なるように設けられている。図示例においては、高濃度ガードリング領域12aの一部が第一絶縁膜11に覆われているが、これに限ることはない。低濃度ガードリング領域12bは、ガードリング領域12を平面視したとき、その外側に環状に設けられる。低濃度ガードリング領域12bは、相対的に不純物濃度の低い層である(p型不純物濃度が1×1017cm-3~1×1018cm-3)。低濃度ガードリング領域12bは、平面視において、第二絶縁膜17に覆われている。
【0028】
第一絶縁膜11の上には、第三絶縁膜16が、平面視において環状に設けられている。第三絶縁膜16は、第一絶縁膜11上において、第二電極14の周縁部14bを囲むように形成されている。第三絶縁膜16は、例えば、窒化珪素(SiN)で形成される。
【0029】
第二絶縁膜17は、第二電極14の接合部14aの外周部と、第一絶縁膜11のうち開口部13の周縁部分と、を覆うように、平面視において環状に設けられている。第二絶縁膜17は、周縁部14bの全部と、第三絶縁膜16の全部と、を覆うように設けられる。第二絶縁膜17は、例えばポリイミドで形成される。
【0030】
図2のように、互いに隣接する二つの接合部14a,14aを通過し該二つの接合部14a,14aの間のスクライブラインLに直交する平面で半導体基体10を断面視したとき、該二つの接合部14a,14aの間の二つの第二絶縁膜17,17の幅D1,D2の和と、該二つの第二絶縁膜17,17の間隔D3との総和を、第二電極間距離Xと定義する。また、半導体素子領域に対して行われる耐圧検査において、第一電極15と第二電極14の接合部14aとの間に印加される逆バイアス電圧の上限値を、Vmaxとする。
【0031】
第二絶縁膜17は、第二電極間距離Xが、Vmaxとの関係で、X > Vmax / (1.8×104 V/cm) を充たすように設けられる。これにより、耐圧検査において、隣接電極間の放電発生率を抑制することができる。したがって、信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することができる。
【0032】
第二絶縁膜17は、第二電極間距離Xが、Vmaxとの関係で、X > Vmax / (1.5×104 V/cm) を充たすように設けられることが望ましい。これにより、耐圧検査において、隣接電極間の放電発生率をさらに抑制することができる。したがって、より信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することができる。
【0033】
(半導体装置の製造方法)
以下、
図3から
図8を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0034】
図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基体準備工程S1と、第一絶縁膜形成工程S3と、第一電極形成工程S5と、開口部形成工程S6と、第二電極形成工程S7と、第二絶縁膜形成工程S8と、耐圧検査工程S9と、を含む。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、不純物イオン注入工程S2と、第三絶縁膜形成工程S4と、をさらに含む。
【0035】
以下、
図4から
図8を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を説明する。
図4から
図7では、一つの半導体素子領域における断面図を示している。
【0036】
(S1:半導体基体準備工程)
まず、
図4(a)に示す半導体基体準備工程S1を行う。半導体基体準備工程S1では、n
+型炭化珪素単結晶基板(半導体基板)10a(厚さ:350μm,不純物濃度:1×10
19cm
-3)の上面に、n
-型炭化珪素エピタキシャル層(ドリフト層)10b(厚さ:13.5μm,不純物濃度:5×10
15cm
-3)を、化学的気相成長法(CVD)により形成することで、半導体基体10を準備する。
【0037】
(S2:不純物イオン注入工程)
次に、
図4(b)に示す不純物イオン注入工程S2を行う。不純物イオン注入工程S2では、まず、半導体基体10の一方の主面F1を清浄化する。次いで、一方の主面F1に、酸化膜を形成し、この酸化膜上にレジストをスピンコートにより塗布する。その後、フォトリソグラフィにより、高濃度ガードリング領域12aや低濃度ガードリング領域12bに対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。この状態において、半導体基体10の一方の主面F1に、半導体基体10とは逆の導電型のp型不純物イオン(例えば、アルミニウムイオン)を、イオン注入を用いて導入する。イオン注入後、マスクを除去する。これにより、高濃度ガードリング領域12aと、低濃度ガードリング領域12bと、を含む、ガードリング領域12が形成される。不純物イオン注入工程S2において、高濃度ガードリング領域12a、低濃度ガードリング領域12bは、例えば個別に形成されてよい。その後、1500℃以上の高温で加熱し不純物を電気的に活性化する。
【0038】
(S3:第一絶縁膜形成工程)
次に、
図5(a)に示す第一絶縁膜形成工程S3を行う。第一絶縁膜形成工程S3では、まず、半導体基体10の一方の主面F1に、化学的気相成長法(CVD)によりリンガラス(PSG)を積層し、絶縁膜層110を形成する。絶縁膜層110を形成した後、熱処理を行う。第一絶縁膜を熱酸化膜/PSG積層膜とする場合、半導体基体10を酸素ガス中、1000℃以上の雰囲気で熱酸化した後、化学的気相成長法(CVD)によりリンガラス(PSG)を積層し、絶縁膜層110を形成することもできる。リンガラス(PSG)の焼き締め処理として、700℃以上の雰囲気で追加熱処理を行っても構わない。
【0039】
(S4:第三絶縁膜形成工程)
次に、
図5(b)に示す第三絶縁膜形成工程S4を行う。第三絶縁膜形成工程S4では、まず、第一絶縁膜11の表面に、化学的気相成長法(CVD)により窒化珪素(SiN)を積層する。次いで、レジストをスピンコートにより塗布する。次いで、フォトリソグラフィにより、第三絶縁膜16に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。その後、ドライエッチング等で、開口部の窒化珪素(SiN)を除去する。
【0040】
(S5:第一電極形成工程)
次に、
図6(a)に示す第一電極形成工程S5を行う。第一電極形成工程S5では、まず、半導体基体10の他方の主面F2に、金属(例えば、ニッケル(Ni))をスパッタリングして、金属膜を形成する。その後、熱処理により、金属と炭化珪素との合金化を行い、第一電極15を形成する。
【0041】
(S6:開口部形成工程)
次に、
図6(b)に示す開口部形成工程S6を行う。開口部形成工程S6では、まず、絶縁膜層110の表面に、レジストをスピンコートにより塗布する。次いで、フォトリソグラフィにより、開口部13に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。開口部13は、平面視において、その周縁が高濃度ガードリング領域12aに重なるように設けられる。マスク形成の後、バッファードフッ酸を用いて絶縁膜層110のエッチングを行い、半導体基体10の一方の主面F1を露出させる。これにより、開口部13及び第一絶縁膜11が形成される。開口部13及び第一絶縁膜11の形成後、レジストを除去する。
【0042】
(S7:第二電極形成工程)
次に、
図7(a)に示す第二電極形成工程S6を行う。第二電極形成工程S6では、まず、主面F1に、金属例えば、チタン(Ti)をスパッタリング又は蒸着して、金属膜を形成する。レジストをスピンコートにより塗布する。次いで、フォトリソグラフィとエッチングにより、第二電極14を形成する。その後、熱処理により、金属と炭化珪素との合金化を行い、第二電極14が完成する。
【0043】
(S8:第二絶縁膜形成工程)
次に、
図7(b)に示す第二絶縁膜形成工程S8を行う。第二絶縁膜形成工程S8では、まず、第二電極14及び第一絶縁膜11の表面に、ポリイミドをスピンコートにより塗布する。フォトリソグラフィにより、第二絶縁膜17を形成する。これにより、半導体装置1が形成される。
【0044】
(S9:耐圧検査工程)
最後に、
図8に示す耐圧検査工程S9を行う。耐圧検査工程S9では、まず、ウェーハプローバステージPSの上に、半導体装置1を載置する。半導体装置1において、スクライブラインLで画された複数の半導体素子領域のうち一つを選び、検査領域ATとする。検査領域ATの接合部14aに、プローブPRの先端を接触させる。ウェーハプローバステージPSとプローブPRの間に逆バイアス電圧Vを印加し、検査領域ATの耐圧検査を行う。
【0045】
逆バイアス電圧Vが高くなると、検査領域ATに隣接する別の半導体素子領域(隣接領域AN)の接合部14aにおける電位が、付随的にランダムに変動することが避けられない。これにより、耐圧検査工程S9における逆バイアス電圧Vの上限値Vmaxが上昇するにつれ、
図8の太矢印で示すように、スクライブラインLを越えて、隣接する二つの接合部14a,14aの間で、確率的に放電が起こる。
図9は、検査領域ATと、隣接領域ANとの間で、放電が起こる瞬間を捉えた写真である。
【0046】
第二絶縁膜形成工程S8において、第二絶縁膜17は、互いに隣接する二つの接合部14a,14aを通過し該二つの接合部14a,14aの間のスクライブラインLに直交する平面で半導体基体10を断面視したとき、該二つの接合部14a,14aの間の二つの第二絶縁膜17,17の幅D1,D2の和と、該二つの第二絶縁膜17,17の間隔D3との総和で与えられる第二電極間距離Xが、Vmaxとの関係で、X > Vmax / (1.8×104 V/cm) を充たすように設けられる。これにより、耐圧検査工程S9において、隣接する二つの接合部14a,14a間の放電発生率を抑制することができる。したがって、信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することができる。
【0047】
第二絶縁膜形成工程S8において、第二絶縁膜17は、第二電極間距離Xが、Vmaxとの関係で、X > Vmax / (1.5×104 V/cm) を充たすように設けられることが望ましい。これにより、耐圧検査工程S9において、隣接する二つの接合部14a,14a間の放電発生率をより抑制することができる。したがって、より信頼性の高い高耐圧半導体デバイスを提供することができる。
【0048】
[第二の実施形態]
以下、主に
図10を参照して、本発明の第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する部分は、説明を省略する。
【0049】
(半導体装置の構成)
本実施形態の半導体装置は、第一絶縁膜11が、二酸化珪素(SiO
2)で形成される(
図2参照)ことを除き、第一の実施形態と同様に構成される。本実施形態の半導体装置は、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一実施形態と同様の半導体基体準備工程S1と、第一絶縁膜形成工程S3と、第一電極形成工程S5と、開口部形成工程S6と、第二電極形成工程S7と、第二絶縁膜形成工程S8と、耐圧検査工程S9と、を含む。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、不純物イオン注入工程S2と、第三絶縁膜形成工程S4と、をさらに含む。
【0051】
ただし、本実施形態では、
図10に示すように、第一絶縁膜形成工程S3(
図3参照)において、半導体基体10の一方の主面F1を、酸素雰囲気下で熱酸化処理をすることで、二酸化珪素(SiO
2)からなる絶縁膜層111を成長させる。
【0052】
また、開口部工程S6(
図3参照)において、レジストをスピンコートにより塗布する。フォトリソグラフィにより、開口部13に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。マスク形成の後、バッファードフッ酸を用いて絶縁膜層111のエッチングを行い、半導体基体10の一方の主面F1を露出させる。これにより、開口部13及び第一絶縁膜11が形成される(
図6(b)参照)。
【0053】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。例えば、第二絶縁膜17はポリイミドで形成されるとしたが、他の絶縁性材料を用いることもできる。また、第一絶縁膜11はリンガラス又は二酸化珪素で形成されるとしたが、他の絶縁性材料を用いることもできる。また、半導体基体10にガードリング領域12が設けられるとしたが、ガードリング領域12を設けないこともできる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で、種々の設計変更を施すことが可能である。
【0055】
[実施例]
以下、本発明の実施例を示す。
【0056】
実施例1~3、及び、比較例において用いた半導体装置は、上述の第一の実施形態に示す半導体装置の構造(
図2参照)において、電極間距離Xを変えたものである。電極間距離Xは、各々以下のとおりである。
(実施例1)X=1310μm (Vmax / X≒1.3×10
4 V/cm)
(実施例2)X=1110μm (Vmax / X≒1.5×10
4 V/cm)
(実施例3)X=943μm (Vmax / X≒1.8×10
4 V/cm)
(比較例)X=776μm (Vmax / X≒2.2×10
4 V/cm)
【0057】
これらの各半導体装置につき、上述の第一の実施形態に示す半導体装置の製造方法における耐圧検査工程S9(
図3,8参照)を、最大電圧値約Vmax=1700 V,パルス幅50msの矩形波を印加して行った。
【0058】
結果を、
図11のグラフに示す。グラフの下側の第一の横軸はX[μm]、縦軸は隣接電極間の放電率[%]である。グラフの上側の第二の横軸は、第一の横軸のXに対応する、Vmax / X [V/cm]の値を示す。
【0059】
図11に示した結果によれば、比較例の放電率が約28%であったのと比べて、実施例1では放電率が約3%、実施例2,3では放電率がほぼ0%であった。すなわち、本発明の実施例の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、隣接電極間の放電発生率を、約3%以下に抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1…半導体装置
10…半導体基体
11…第一絶縁膜
12…ガードリング領域
13…開口部
14a…接合部
14b…周縁部
14…第二電極
15…第一電極
17…第二絶縁膜
L…スクライブライン
F1…一方の主面
F2…他方の主面
S1…半導体基体準備工程
S2…不純物イオン注入工程
S3…第一絶縁膜形成工程
S5…第一電極形成工程
S6…開口部形成工程
S7…第二電極形成工程
S8…第二絶縁膜形成工程
S9…耐圧検査工程