(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】吸光度測定装置および吸光度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20220729BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220729BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/27 Z
G01N21/59 Z
(21)【出願番号】P 2017182364
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭平
(72)【発明者】
【氏名】河野 元宏
(72)【発明者】
【氏名】高辻 茂
(72)【発明者】
【氏名】堀越 章
(72)【発明者】
【氏名】谷出 敦
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243632(JP,A)
【文献】特開2006-194775(JP,A)
【文献】特表2013-518278(JP,A)
【文献】特開昭54-071684(JP,A)
【文献】特開2015-020083(JP,A)
【文献】特開2015-184018(JP,A)
【文献】国際公開第2007/126389(WO,A1)
【文献】特開平11-190696(JP,A)
【文献】特開2006-234549(JP,A)
【文献】特開平08-313429(JP,A)
【文献】特開昭62-229064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる液体を一時的に貯留可能な貯留空間を内部に形成し、前記貯留空間に連通し外部から前記貯留空間へ前記液体を流入させる流入部、および前記貯留空間に連通し前記貯留空間から外部へ前記液体を流出させる流出部を有する容器本体と、
前記容器本体に光を供給する光源部と、
前記光源部から受け入れた光を前記容器本体内の前記液体に入射させ、前記液体内を通過した前記光を前記容器本体から外部へ出射させ、前記液体への前記光の複数の入射位置と前記液体からの前記光の複数の出射位置とを規定することで前記液体中を通過する前記光の光路を、前記液体中の光路長を互いに異ならせて複数設定する光路設定部と、
前記容器本体から出射される前記光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき前記液体中の物質の吸光度を求める演算部と
を備え、
前記光源部から前記光が前記複数の入射位置それぞれに入射され、
前記検出部は、前記複数の出射位置それぞれから出射される前記光を検出する、吸光度測定装置。
【請求項2】
前記光路設定部は、前記入射位置と、前記入射位置から入射した前記光の進路に当たる位置に設けられた前記出射位置との対を複数設定し、
前記入射位置から前記出射位置までの前記液体中の距離が、複数の前記対の間で互いに異なる請求項1に記載の吸光度測定装置。
【請求項3】
前記入射位置には前記光を前記液体に入射させる透明な入射窓が設けられ、前記出射位置には前記光を前記液体から出射させる透明な出射窓が設けられた請求項2に記載の吸光度測定装置。
【請求項4】
前記入射窓および前記出射窓の各々が、前記容器本体の壁面の一部に設けられている請求項3に記載の吸光度測定装置。
【請求項5】
前記容器本体の壁体が透明材料により形成され、前記壁体のうち前記液体を介して向かい合う平行な2面が前記入射窓および前記出射窓となる請求項3または4に記載の吸光度測定
装置。
【請求項6】
前記入射窓および前記出射窓の少なくとも1つが、前記容器本体の壁面から前記貯留空間に向けて突出する突出部位に設けられている請求項3に記載の吸光度測定装置。
【請求項7】
前記光路設定部は、前記複数の光路のうち少なくとも1つについて光路長を変更可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項8】
前記流入部は、前記貯留空間に臨んで開口し前記貯留空間に前記液体を吐出する液体導入口を有し、
前記光路設定部は、前記貯留空間内で前記液体導入口よりも鉛直下方に前記複数の光路を設定する請求項1ないし7のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項9】
前記液体から放出される気体を前記貯留空間の上部から外部へ排出する排気部を備える請求項1ないし8のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項10】
前記演算部は、互いに異なる前記光路を通過した複数の前記光の検出結果に基づき、互いに異なる複数種の物質それぞれの吸光度を求める請求項1ないし9のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項11】
前記光源部は、前記光を出射する光源を、前記複数の光路の各々に対応させて複数有する、請求項1ないし10のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項12】
前記光源部に設けられた単一の光源から出射される前記光が分岐されて前記複数の光路に入射される、請求項1ないし10のいずれかに記載の吸光度測定装置。
【請求項13】
測定対象となる液体を一時的に貯留可能な貯留空間を内部に形成し、前記貯留空間に連通し外部から前記貯留空間へ前記液体を流入させる流入部、および前記貯留空間に連通し前記貯留空間から外部へ前記液体を流出させる流出部を有する容器本体と、
光を前記容器本体内の前記液体に入射させ、前記液体内を通過した前記光を前記容器本体から外部へ出射させ、前記液体への前記光の複数の入射位置と前記液体からの前記光の複数の出射位置とを規定することで前記液体中を通過する前記光の光路を、前記液体中の光路長を互いに異ならせて複数設定する光路設定部と
を備える吸光度測定用容器の前記複数の入射位置それぞれに光源から前記光を入射させ、
前記吸光度測定用容器の前記複数の出射位置それぞれから出射される前記光を検出し、該光の検出結果に基づき前記液体中の物質の吸光度を求める、吸光度測定方法。
【請求項14】
互いに異なる前記光路を通過した複数の前記光の検出結果に基づき、互いに異なる複数種の物質それぞれの吸光度を求める請求項13に記載の吸光度測定方法。
【請求項15】
前記液体中の一の種類の物質について、当該物質の種類に応じた光路長を有する前記光路を通過した前記光の検出結果に基づき吸光度を求める請求項13または14に記載の吸光度測定方法。
【請求項16】
前記貯留空間に貯留された前記液体の液面よりも下方に設定された前記光路を通過した前記光を検出する請求項13ないし15のいずれかに記載の吸光度測定方法。
【請求項17】
前記光の検出に先立って、前記光路上にある前記液体に含まれる気泡を脱泡する請求項13ないし15のいずれかに記載の吸光度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中に含まれる物質による吸光度を測定するための技術に関し、特に、液体中に含まれる複数種の物質の吸光度を個別に測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に含まれる物質の種類を同定したり、液中の濃度を調べたりする目的のために、吸光度計(もしくは吸光光度計)が用いられる。これは、液体中の物質が特定の波長の光を吸収する性質を有することを利用して、液体中を通過した光の減衰量から液体中の物質の種類や量を求めるものである。この技術においては、高精度な吸光度測定を可能とするために、液体中を通過させる光の光路長を適切に設定することが求められる。というのは、液体を通過することによる光の減衰量が小さすぎたり大きすぎたりすると、検出器の感度との兼ね合いで減衰量の正確な測定が困難となる場合があるからである。
【0003】
この問題に関して、例えば特許文献1に記載の技術では、被測定液が収容される容器の一方壁面に設けられた光入射窓から容器内の液体を介して他方壁面に設けられた光出射窓へ至る光路が設定されている。そして、該光路に対し透明な光路長変更ブロックを必要に応じて挿抜することにより、光路のうち液体中を通過する光路の長さが変更可能となっている。このような構成により、種々の濃度の被測定液について高精度な吸光度測定が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、特定波長の光に対する吸光度の測定結果から液体のCOD(化学的酸素消費量)を求めようとするものであり、液体の濃度に応じて光路長が設定される。つまり、液体中の検出対象物の種類は予め一義的に決まっている。一方、この種の測定においては、液体中に含まれる複数種の物質を個別に検出したいという要求もある。物質の種類により吸光係数が異なることから、検出すべき物質の種類によっても最適な光路長は異なっている。しかしながら、上記従来技術は、光路長の異なる複数の光路を同時に実現することはできず、このような要求に応えることのできるものとはなっていなかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液体中に含まれる複数種の物質の吸光度を個別に、かつ精度よく測定することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の態様は、上記目的を達成するため、測定対象となる液体を一時的に貯留可能な貯留空間を内部に形成し、前記貯留空間に連通し外部から前記貯留空間へ前記液体を流入させる流入部、および前記貯留空間に連通し前記貯留空間から外部へ前記液体を流出させる流出部を有する容器本体と、前記容器本体に光を供給する光源部と、前記光源部から受け入れた光を前記容器本体内の前記液体に入射させ、前記液体内を通過した前記光を前記容器本体から外部へ出射させ、前記液体への前記光の複数の入射位置と前記液体からの前記光の複数の出射位置とを規定することで前記液体中を通過する前記光の光路を、前記液体中の光路長を互いに異ならせて複数設定する光路設定部と、前記容器本体から出射される前記光を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき前記液体中の物質の吸光度を求める演算部とを備え、前記光源部から前記光が前記複数の入射位置それぞれに入射され、前記検出部は、前記複数の出射位置それぞれから出射される前記光を検出する、吸光度測定装置である。
【0008】
このように構成された発明では、貯留空間内の液体を通過する光の進路として、互いに光路長の異なる複数の光路が設定される。このため、複数の光路のそれぞれを通過した光を個別に取り出すことが可能である。したがって、測定対象である液体中の複数種の物質の間で最適な光路長が異なる場合でも、その種類に応じた光路長の光路を選択することで、適切な光路長の光路を通過した光を吸光度測定用容器から出射させ、検出に供することが可能となる。すなわち、本発明に係る吸光度測定用容器を用いることで、液体中に含まれる複数種の物質の吸光度を個別に、かつ精度よく測定することが可能になる。
【0009】
また、それぞれ貯留空間に連通する流入部および流出部が設けられており、測定対象である液体を継続的に貯留空間へ流入させまた流出させつつ、測定を行うことができる。このため、例えば液体の流通経路に本発明に係る吸光度測定用容器を介挿することにより、流通経路を流通する液体における吸光度をリアルタイムで測定する、いわゆるインライン型の吸光度測定システムを構築することが可能である。
【0010】
また、この発明の他の態様は、測定対象となる液体を一時的に貯留可能な貯留空間を内部に形成し、前記貯留空間に連通し外部から前記貯留空間へ前記液体を流入させる流入部、および前記貯留空間に連通し前記貯留空間から外部へ前記液体を流出させる流出部を有する容器本体と、光を前記容器本体内の前記液体に入射させ、前記液体内を通過した前記光を前記容器本体から外部へ出射させ、前記液体への前記光の複数の入射位置と前記液体からの前記光の複数の出射位置とを規定することで前記液体中を通過する前記光の光路を、前記液体中の光路長を互いに異ならせて複数設定する光路設定部とを備える吸光度測定用容器の前記複数の入射位置それぞれに光源から前記光を入射させ、前記吸光度測定用容器の前記複数の出射位置それぞれから出射される前記光を検出し、該光の検出結果に基づき前記液体中の物質の吸光度を求める吸光度測定方法である。
【0011】
これらの発明によれば、上記したように液体内をそれぞれ異なる光路長で通過した光を吸光度測定容器から取り出すことが可能であるので、その検出結果に基づき、液体中の複数種の物質の吸光度を個別に、かつ精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、液体中で光路長の異なる複数の光路を経由した光を検出することができるので、液体中に含まれる複数種の物質の吸光度を個別に、かつそれぞれ精度よく測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る吸光度測定装置の一実施形態を装備した液体処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】吸光度測定部のより詳細な構成を示すブロック図である。
【
図3】吸光度測定部における測定処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1の態様の測定容器の構造を示す図である。
【
図5】実働状態における測定容器の内部を示す断面図である。
【
図6】第2および第3の態様の測定容器の構造を示す図である。
【
図7】第4の態様の測定容器の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る吸光度測定装置の一実施形態を装備した液体処理装置の構成例を示す図である。この液体処理装置1は、貯留槽2に貯留されている水に活性種を溶解させた処理液を生成する装置であり、活性種を生成するためにプラズマ発生部3において水中プラズマを発生させている。また、水中に溶け込んだ活性種の濃度を測定するために、本発明に係る吸光度測定装置の一実施形態である吸光度測定部10が、処理液の循環経路に介挿されている。
【0015】
液体処理装置1は、貯留槽2への液体の供給および貯留槽2からの液体の送出を含む装置内での液体の流通を担う送液系6と、送液系6により形成される液体の流路中に介挿されたプラズマ発生部3とを備えている。具体的には、送液系6に含まれる配管61の一方端が、貯留槽2の側面のうち内部の液体LQの液面よりも下方位置に接続され、配管61の他方端がプラズマ発生部3の下部に設けられた後述の液体導入口に接続される。配管61にはポンプ60が介挿されており、装置全体を制御する制御部7からの動作指令に応じてポンプ60が作動することで、貯留槽2に貯留されている液体が配管61を介してプラズマ発生部3に供給される。
【0016】
プラズマ発生部3は液中プラズマ処理によって液体中に活性種を含有させる装置である。具体的には、プラズマ発生部3は、ポンプ6により配管61を介して送り込まれる液体に気体導入部8からの気体を混合させ、交流電源4からの高電圧により該気体中でプラズマを発生させて、生じた活性種を液体に溶け込ませる機能を有する。このように、プラズマ発生部3は、外部から供給される液体を被処理液として受け入れ、該被処理液にプラズマ発生により生じた活性種を溶け込ませた液体を処理済み液として出力する。
【0017】
プラズマ発生部3の上部には配管63の一方端が接続され、配管63の他方端は貯留槽2に接続されている。したがって、プラズマ発生部3から出力される液体、つまりプラズマ発生部3で液中プラズマ処理を受けた液体を貯留槽2に戻すことが可能となっている。配管63の途中には、後に詳述する吸光度測定部10が介挿されている。以下では、配管63のうちプラズマ発生部3から吸光度測定部10までを符号631により、また吸光度測定装置10から貯留槽2までを符号632により表す。液体処理装置1では、破線矢印で示すように貯留槽2に貯留された液体は配管61、63を経由して循環しており、当該循環を行いながらプラズマ発生部3で液中プラズマを発生させることで液体に含まれる活性種の濃度を高めることができる。
【0018】
こうして活性種を含有する液体、つまり処理液が生成されると、当該処理液を適当なタイミングで貯留槽2から外部に送出する必要がある。このために、貯留槽2の下方側面に配管64が接続されている。この配管64には、開閉弁65が介挿されており、制御部7からの開指令に応じて開閉弁65が開くと、貯留槽2に貯留されている処理液(=液体+活性種)を外部に取り出し可能となる。また、貯留槽2の上方側面に配管66が接続されており、当該配管66によって貯留槽2は液体供給源(図示省略)と接続されている。この配管66には、開閉弁67が介挿されており、制御部7からの開指令に応じて開閉弁67が開くと、処理前の液体、つまり活性種を含有しない液体が貯留槽2に補充される。さらに、貯留槽2の天井面に配管68が接続されており、当該配管68によって貯留槽2の内部空間が液体処理装置1の周辺雰囲気と接続されている。この配管68には、開閉弁69が介挿されており、制御部7からの開指令に応じて開閉弁69が開くと、貯留槽2の内部空間を液体処理装置1の周辺雰囲気と連通させて貯留槽2の内部を大気圧に戻すことができ、開閉弁69はいわゆるリーク弁として機能する。
【0019】
プラズマ発生部3には気体導入部8の配管83が接続されている。気体導入部8は、上記配管83を介して気体を供給する気体供給源81と、配管83に介挿された開閉弁82とを有している。開閉弁82は制御部7からの開閉指令に応じて開閉することで、プラズマ発生部3に供給される気体の導入量を時間的に変化させる。すなわち、制御部7からの開指令に応じて開閉弁82が開くと、開成されている間、気体供給源81から気体が開閉弁82および配管83を介して圧送され、プラズマ発生部3へ供給される。
【0020】
吸光度測定部10は、測定対象の液体中を通過させた光の減衰量の検出結果に基づき、液体中に溶け込んだ物質の濃度を測定するものである。吸光度測定部10は、光源部11、測定容器12、検出部13および演算部14を備えている。この吸光度測定部10では、配管631を介して流入する液体が測定容器12の内部に一時的に貯留され、該液体に光源部11からの光が入射される。そして、液体を通過した光の光量が検出部13により検出され、その検出結果から、演算部14が液中の物質濃度を算出する。
【0021】
この吸光度測定部10では、複数種の物質の濃度測定を同時に行うことができるようにするため、光源部11から出射され液中を通過して検出器13に至る光の光路が複数設けられる。すなわち、複数種の物質の濃度が、それぞれ互いに異なる光路を通過した光の検出結果に基づいて算出される。複数の光路を実現するに当たっては、次のような考え方が成立し得る。以下、一例として互いに異なる3つの光路を実現するための構成例について説明するが、光路の数はこれに限定されず任意である。
【0022】
図2は吸光度測定部のより詳細な構成を示すブロック図である。吸光度測定部10の最も基本的な構成は
図2(a)に示す通りのものである。測定容器12は内部に液体を貯留可能な貯留空間SPを有しており、配管631を介して流入する液体が貯留空間SPに一時的に貯留され、最終的には配管632を介して排出される。配管631から流入する液体の流量と配管632から流出する液体の流量とが同じであれば、貯留空間SPには常時一定量の液体が貯留されていることになる。貯留空間SP内の液体を通過するように、3つの光路L1,L2,L3が設定される。詳しい構成については後述するが、光路L1,L2,L3上に該当する測定容器12の壁面には、光を透過させる透光窓が設けられている。
【0023】
光源部11は、3つの光路に対応して3つの光源111,112,113を備えている。これらの光源としては、種々の物質について測定を可能とするために、広帯域の波長成分を含むものが用いられる。例えば、ハロゲンランプ、タングステンランプ、重水素ランプ等の広帯域光源のいずれかまたはそれらの出射光を適宜混合し出力するための構成を有するものを、光源111,112,113として用いることができる。各光源111,112,113の構成は互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0024】
光源111から出射された光は測定容器12の一方の透光窓から貯留空間SPに入射し、液中の光路L1を通って他方の透光窓から出射される。さらに、この光は検出部13に設けられた分光器131に入射し、各波長成分に分光される。分光された光は光検出器132に受光される。光検出器132は、波長成分ごとに、受光した光量に対応する信号を出力する。
【0025】
同様に、光源112から出射された光は液中の光路L2を通って分光器133に入射し、光検出器134に受光される。光検出器134は、波長成分ごとの受光光量に対応する信号を出力する。また、光源113から出射された光は液中の光路L3を通って分光器135に入射し、光検出器136に受光される。光検出器136は、波長成分ごとの受光光量に対応する信号を出力する。
【0026】
演算部14は、各光検出器132,134,136から出力される信号に基づき、最大3種類の物質について、その液中濃度を算出する。具体的には、光検出器により検出された信号から、測定すべき1つの物質の種類に応じて選択された特定の波長成分の液中での減衰量が求められ、それに基づき当該物質による吸光度が算出される。そして、予め準備されている吸光度と液中濃度との関係を表す検量線を参照することで、液中での当該物質の濃度が算出される。このような吸光度測定の原理は公知であるので、詳しい説明を省略する。3つの光路それぞれを用いて、異なる物質の濃度を個別に算出することが可能である。なお、演算部14については、その機能を液体処理装置1の動作を制御する制御部7に担わせるようにすれば省くことも可能である。
【0027】
図2(a)の例では、3つの光路L1,L2,L3に対応して3つの光源111,112,113が設けられている。これにより、各光路を通過する光に含まれる波長成分については互いに独立して設定することが可能である。一方、光のスペクトルが同一であってよい場合には、
図2(b)に示すように、光源部11は単一の光源114を有し、光源114から発せられる光を例えば光ファイバやビームスプリッタ等の光分岐手段によって3つの光束に分岐させ、それぞれが光路L1,L2,L3を通過するように構成されてもよい。
【0028】
また、
図2(c)に示すように、3つの光路L1,L2,L3を通過した光について1組の分光器137および光検出器138により受光、検出が可能な場合がある。例えば測定すべき複数種の物質が全く異なる波長において光吸収特性を示すために、光源111,112,113それぞれが出力する光のスペクトルが互いに重複しない場合には、このような構成を採ることも可能である。このように、光源の数と検出器の数とは必ずしも同数でなくてもよい。
【0029】
図3は吸光度測定部における測定処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部7が予め準備された制御プログラムを実行し、吸光度測定部10を含む液体処理装置1の各部に所定の動作を行わせることにより実現される。まず、送液系6による液体の流通が開始され(ステップS101)、吸光度測定部10の測定容器12に一定量の液体が配管631から流入するとともに、同量の液体が配管632を介して流出する。これにより、測定容器12内の貯留空間SPには常時一定量の液体が貯留される。
【0030】
貯留空間SP内に貯留された液体に対し、光源部11からの光が入射される(ステップS102)。そして、液中を透過して測定容器12外に出射した光は検出部13により検出される(ステップS103)。演算部14は、測定対象の物質に応じて予め定められた波長の光について、検出された光量から減衰量を算出し(ステップS104)、さらに吸光度を算出する(ステップS105)。こうして求められた吸光度と、予め準備された検量線とに基づき、液中における物質濃度が算出される(ステップS106)。
【0031】
このようにして液中の吸光度および物質濃度を求める処理においては、検出の際に着目される光の波長が測定対象となる複数種の物質の間で相互に分離可能であれば、原理的には単一光路を通過した光の検出結果からでも物質ごとの吸光度を個別に求めることは可能である。しかしながら、以下に示す理由により、この方法では必ずしも十分な検出精度を得ることができない。
【0032】
液中での物質の吸光度は、その定義から、測定対象物質に固有の物性値である吸光係数と、液中での光路長と、液中の物質濃度とをパラメータとして決まる値を取る。吸光度に基づく物質濃度の算出を精度よく行うためには、液中を通過して光検出器に入射する光の強度およびその検出結果から求められる吸光度の値が予め想定された適切な範囲に収まっていることが望ましい。この目的のために、液中を通過する光の光路長が適切に設定される必要がある。一方、吸光係数の大きさは物質の種類により大きく異なっている。このため、光路長の好ましい設定値についても、物質の種類ごとに異なる。したがって、単一光路で検出された光から、それら複数種の物質のいずれについても吸光度を精度よく求めることは困難である。
【0033】
そこで、本実施形態の吸光度測定部10では、貯留空間SPに設定される複数の光路それぞれが異なる光路長となるように、測定容器12が構成されている。このような機能を実現するための測定容器12の構造としてはいくつかの態様が考えられ、以下、それらの態様について順に説明する。
【0034】
図4は第1の態様の測定容器の構造を示す図である。より具体的には、
図4(a)は第1の態様の測定容器12Aの外観を示す斜視図である。また
図4(b)は、
図4(a)に示す一点鎖線を切断線とする測定容器12Aの内部構造を示す断面図である。
図4(a)に示すように、測定容器12Aの容器本体は概ね直方体の外形を有している。直方体の各辺の延びる方向を、
図4(a)に示すようにそれぞれX、Y、Z方向とする。測定容器12Aの内部は中空となっており、該中空部分が貯留空間SPとして機能する。貯留空間SPを形成する測定容器12Aの内壁面は直方体をなしており、互いに対向する壁面間の間隔は、X方向、Y方向およびZ方向の間で互いに異なっている。
【0035】
測定容器12A本体の(+Z)側の面には、3つの管201,202,203が貯留空間SPと連通して設けられている。このうち1つの管201は、送液系6の配管632と接続されて、貯留空間SPに貯留された液体を外部へ排出する排出管として機能する。また管202は、配管631と接続されて、液体を貯留空間SPに導入する導入管として機能する。また、管203は、後述するように、液体中から放出されて貯留空間SP上部に溜まる気体を外部へ排気する排気管として機能する。排気管203にはリーク弁が別途設けられてもよい。これらのうち導入管202および排気管203の下端は測定容器12Aの(+Z)側内壁面の位置に留まる一方、排出管201は、測定容器12Aの(+Z)側内壁面から貯留空間SPの奥部まで(-Z)方向に長く延びている。
【0036】
測定容器12Aの(+Z)側壁面には貫通孔204が設けられている。貫通孔204は光源部11から発せられる光に対し高い透明度を示す材料、例えば石英ガラスで平板に形成された透光窓214で塞がれている。一方、測定容器12Aの(-Z)側壁面で透光窓214と正対する位置には貫通孔205が設けられている。貫通孔205は、透孔窓214と同じ材料で形成された透光窓215で塞がれている。透光窓214と透光窓215とは互いに平行である。また、測定容器12Aの(+Z)側壁面において、排気管203と透光窓214とはY方向に距離を離して配置される。
【0037】
同様に、測定容器12Aの(-Y)側壁面にも貫通孔206が設けられ、貫通孔206には透光窓216がはめ込まれている。また、測定容器12Aの(+Y)側壁面で貫通孔206と正対する位置に貫通孔207が設けられ、貫通孔207には透光窓217がはめ込まれている。また、また、測定容器12Aの(+X)側壁面には貫通孔208が設けられ、貫通孔208には透光窓218がはめ込まれている。また図には現れないが、測定容器12Aの(-X)側壁面で貫通孔208と正対する位置にも貫通孔およびこれを塞ぐ透光窓が設けられている。
【0038】
このように構成された測定容器12Aでは、光源部11から発せられる光を透光窓214および透光窓215の一方に入射させると、光は貯留空間SPをZ方向に直進して他方の透光窓から出射される。X方向、Y方向についても同様のことが言える。すなわち、貯留空間SPをX方向、Y方向およびZ方向からそれぞれ横切るように、3つの光路が設けられている。ここで、互いに正対する透光窓間の距離は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれで互いに異なっている。したがって、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに設定された光路の光路長は互いに異なる。
【0039】
光源部11から出射される3つの光が、空間または例えば光ファイバのような適宜の導光部材を介して、X方向、Y方向およびZ方向に設けられた光路のそれぞれに入射される。例えば、(+X)側壁面に設けられた透光窓218に対し、光源部11の光源111からの光が入射される。同様に、光源112から発せられる光が(-Y)側壁面に設けられた透光窓216に、光源113から発せられる光が(+Z)側壁面に設けられた透光窓214に、それぞれ入射される。この場合、透光窓214,216,218が光源部131からの光を受け入れて液中に入射させる「入射窓」として機能し、これらと正対する位置にある透光窓215,217等が、測定容器12Aから外部へ光を出射させる「出射窓」として機能する。各出射窓215等から出射される光はそれぞれ検出部13に案内される。なお、光の入射、出射方向は上記とは逆であってもよい。
【0040】
このように、光源部11から出射される光が、1つの入射窓を介して液体LQに入射し、液中を通過して正対する1つの出射窓から外部へ出射される。したがって、入射窓のうち貯留空間SPに臨み液体LQと接する一方面の位置が、外部から液中への光の入射位置となる。一方、出射窓のうち貯留空間SPに臨み液体LQと接する一方面の位置が、液中から外部への光の出射位置となる。入射窓および出射窓の配設位置により、入射位置から出射位置に至る光路が規定される。
【0041】
このようにして、X方向に貯留空間SPを横切る光路L1、Y方向に貯留空間SPを横切る光路L2、およびZ方向に貯留空間SPを横切る光路L3がそれぞれ設けられることになる。なお、これらの光路L1,L2,L3については、各透光窓の配設位置を調整することで、貯留空間SPにおいて互いに交わらないようにすることができる。
【0042】
図5は実働状態における測定容器の内部を示す断面図である。測定容器12Aが吸光度測定部10に実装され液体処理装置1に組み込まれた実働状態では、
図5に示すように、測定容器12Aの1つの辺に沿うZ方向を鉛直方向(紙面において上下方向)に対して少し傾けた状態で、測定容器12Aが保持される。より具体的には、測定容器12Aの(+Z)側壁面において、透光窓214よりも排気管203のための開口位置の方が鉛直方向において上方となるように、測定容器12Aが傾けられる。このようにする理由は以下の通りである。
【0043】
配管631を介して導入管202から貯留空間SPに流入する液体LQは、プラズマ発生部3において液中に混合された気体の気泡を含んでいる。このような気泡は液体に入射する光を散乱させ、吸光度測定における誤差要因となる。液体LQを貯留空間SPに一時的に貯留することで、気泡は液中を上昇し貯留空間SPの上部に気体として溜まる。この気体は、プラズマにより生成された活性種が液中に溶け込んだ後には不要なものである。このような気体を排気管203を介して外部へ排出することで、貯留空間SP内に気体が充満することが防止される。なお、排気管203から排出される気体は図示しない気体回収部によって回収されることが望ましい。
【0044】
そして、測定容器12Aを傾けておくことで、貯留空間SPの上部にある程度の気体が溜まっても、その気体の層が光路L3に現れることが回避される。すなわち、光路L3を安定的に液密状態に維持することが可能になる。光路L3に沿った光が気体の層を通過すると、液中での光路長を正確に知ることが困難となり、また液面での反射による光の減衰が生じるおそれがある。これらは吸光度測定における誤差要因となる。測定容器12Aを傾けて光路L3を液密状態に維持することで、このような問題は回避される。なお、光路L1および光路L2については、貯留空間SPに貯留される液体LQの液面よりも十分低い位置に設定されていれば上記のような問題は生じない。
【0045】
また、液体を外部へ排出する排出管101の下端が液面よりも十分に下方まで延びていることにより、排出される液体は貯留空間SPの底部に近い部分から取り出されることになる。上記したように、液中の気泡は上昇して貯留空間SPの上部に溜まるから、貯留空間SPの下部から排出される液体では気泡の含有量が大きく低減されている。すなわち、測定容器12Aが液体の脱泡装置としての機能も有している。なお、排出管101は測定容器12Aの底面から液体を取り出すように構成されてもよい。
【0046】
このようにして、液中における光路長が互いに異なる3つの光路L1,L2,L3が測定容器12Aの貯留空間SP内に実現される。複数種の物質について同時に吸光度測定を行うことが必要であるとき、演算部14は、光路長が測定に適したものとなるように3つの光路を測定対象物質のそれぞれに割り当てる。例えば3種類の物質について測定を行うとき、それらのうち最も長い光路長を必要とするものに対し、3つの光路L1,L2,L3のうち最も光路長の長いものを割り当てる。こうすることで、それぞれの光路を通過した光の検出結果からに基づき求められる吸光度の測定精度を高めることができる。
【0047】
また、測定対象物質が1種類である場合でも、例えば当該物質の想定される濃度範囲が広い場合には、測定に用いられる光路の光路長を物質濃度に応じて変えることが好ましい。このような場合にも、複数の光路のうち最適な光路長を有するものを選択して測定を行うことにより、測定精度の向上を図ることが可能である。
【0048】
演算部14が最適な光路長を選択可能とするための具体的構成としては、例えば、想定される物質の種類および濃度の組み合わせと光路長とを関連付けたテーブルを予め作成しておき、測定対象となる物質の種類と濃度範囲とをユーザからの指示入力として受け付けて、それらの情報からテーブルを参照して適切な光路長を導出するようにすることができる。
【0049】
図6は第2および第3の態様の測定容器の構造を示す図である。より具体的には、
図6(a)は第2の態様の測定容器12Bの内部構造を示す断面図であり、
図6(b)は第3の態様の測定容器12Cの内部構造を示す断面図である。これらの態様の測定容器は上記した第1の態様の測定容器12Aに対し、容器本体の形状および排出管の配置が異なっているが、基本的な構成は共通である。そこで、共通する構成については上記した第1の態様における説明を参照することとして詳しい説明を省略する。
【0050】
図6(a)に示す第2の態様の測定容器12Bでは、容器本体の(+Y)側壁面が階段状になっており、対向する(-Y)側壁面との距離が下方、つまり(-Z)側に行くにつれて段階的に小さくなっている。このように相互の距離が段階的に変化する測定容器12Bの(-Y)側壁面および(+Y)側壁面に、透光窓が設けられている。具体的には、測定容器12Bの(-Y)側壁面に3つの貫通孔304,306,308が設けられ、それぞれに対し透光窓314,316,318が設けられる。
【0051】
そして、透光窓314と正対する(+Y)側壁面に貫通孔305が、透光窓316と正対する(+Y)側壁面に貫通孔307が、透光窓316と正対する(+Y)側壁面に貫通孔309がそれぞれ設けられて、それぞれの貫通孔305,307,309に対し透光窓315,317,319がそれぞれ設けられる。貫通孔305,307,309は、階段状に形成された測定容器12Bの(+Y)側壁面において互いに異なる段に設けられている。したがって、透光窓314から透光窓315に至る光路L1、透光窓316から透光窓317に至る光路L2、および透光窓318から透光窓319に至る光路L3の間では、互いに光路長が異なっている。
【0052】
測定容器12Bの(+Z)側壁面には液体LQを貯留空間SPに導入する導入管302と、貯留空間SPの上部に溜まる気体を排出するための排気管303とが設けられる。一方、液体LQを外部へ排出する排出管301は測定容器12Bの(-Z)側壁面に設けられているが、排出管301が光路を遮らない限りにおいて、第1の態様と同様に(+Z)側壁面に設けられてもよい。また、(-X)側壁面あるいは(+X)側壁面に設けられてもよい。
【0053】
この測定容器12Bでは、各光路が貯留空間SPの上部にできる気体の層が光路を横切ることがないため、容器を傾ける必要はない。また、貯留空間SPへ液体LQを供給する導入管302の開口、すなわち液体導入口が貯留空間SPの上部に配置されている。導入された液体LQ中に含まれる気泡は液中を上向きに移動し、液面まで浮上して消滅する。このため、気泡が貯留空間SPの下部まで到達する確率は低い。そして、各光路L1,L2,L3は液面よりも十分低い位置に設定されているため、各光路を通過する光が気泡により散乱されることで生じる測定誤差を抑制することが可能である。
【0054】
図6(b)に示す第3の態様の測定容器12Cでは、第2の態様と同様に、容器本体の(-Y)側壁面に3つの貫通孔404,406,408が設けられ、それぞれに対し透光窓414,416,418が設けられる。一方、測定容器12Cの(+Y)側壁面が部分的に貯留空間SPに向かって大きく突出している。具体的には、測定容器12Cの(+Y)側壁面のうち透光窓416と正対する部分が貯留空間SP側に突出し、該突出部位407の先端に設けられた貫通孔に透光窓417がはめ込まれている。また、測定容器12Cの(+Y)側壁面のうち透光窓418と正対する部分は貯留空間SP側に向けてさらに大きく突出し、該突出部位409の先端に透光窓419がはめ込まれている。そして、測定容器12Cの(+Y)側壁面のうち透光窓414と正対する部分には、貫通孔405が設けられて透光窓415がはめ込まれている。
【0055】
第2の態様と同様に、測定容器12Cの容器本体の(+Z)側壁面には液体LQを貯留空間SPに導入する導入管402と、貯留空間SPの上部に溜まる気体を排出するための排気管403とが設けられる。一方、液体LQを外部へ排出する排出管401は測定容器12Cの(-Z)側壁面に設けられる。このような構成によっても、透光窓414から透光窓415に至る光路L1、透光窓416から透光窓417に至る光路L2、および透光窓418から透光窓419に至る光路L3の間で互いに光路長を異ならせることができる。
【0056】
図7は第4の態様の測定容器の構造を示す図である。第4の態様の測定容器12Dでは、容器本体の(-Y)側壁面の3つの貫通孔504,506,508が設けられており、各貫通孔504,506,508に、例えばOリングのようなシール部材524,526,528を介して導光部材514,516,518がそれぞれ挿通されている。導光部材514,516,518としては、例えば石英や透明樹脂により形成された棒状部材、あるいは光ファイバを用いることができる。
【0057】
そして、測定容器12Dの容器本体の(+Y)側壁面のうち貫通孔504,506,508とそれぞれ正対する位置に、貫通孔505,507,509が設けられ、それぞれの貫通孔505,507,509には透光窓515,517,519がはめ込まれている。また、第2および第3の態様と同様に、容器本体の(+Z)側壁面には液体LQを貯留空間SPに導入する導入管502と、貯留空間SPの上部に溜まる気体を排出するための排気管503とが設けられる。一方、液体LQを外部へ排出する排出管501は測定容器12Dの(-Z)側壁面に設けられている。
【0058】
このような構成では、光源部11から発せられた光が導光部材514,516,518を介して貯留空間SPに案内され、導光部材514,516,518の先端から液体LQ中に入射される。液体LQを通過した光は透光窓515,517,519を介して外部へ取り出される。ここで、導光部材514,516,518の貯留空間SPへの突出量を異ならせることで、導光部材514から透光窓515に至る光路L1、導光部材516から透光窓517に至る光路L2、および導光部材518から透光窓519に至る光路L3の間で、光路長を互いに異ならせることができる。
【0059】
さらに、
図7に点線矢印で示すように、導光部材514,516,518の少なくとも1つを、測定容器12Dに対しY方向に挿抜可能な構成としておけば、形成される光路の光路長を必要に応じて変更することが可能となる。これにより、測定に用いられる光路を、目的に応じてより適切な光路長を有するものに調整することができる。なお、測定容器12Dの(+Y)側壁面にも、透光窓に代えて導光部材が設けられてもよい。
【0060】
上記した第2ないし第3の態様のいずれによっても、第1の態様の測定容器12Aを用いた場合と同様に、測定対象物質ごとに光路長の異なる光路を用いて測定を行うことが可能である。そのため、物質ごとの吸光係数が大きく異なる場合でも、それに応じた光路長の光路を選択することで、各物質の吸光度およびそれに基づく液中濃度の算出を個別に、かつ精度よく行うことが可能である。
【0061】
なお、上記した第2ないし第4の態様の測定容器においては、3つの光路L1,L2,L3が上下方向に離隔して、かつ互いに平行に配置されるが、これに限定されるものではない。例えば、3つの光路L1,L2,L3が水平方向に配置されてもよい。また例えば3つの光路のうち少なくとも1つがX方向に沿って設定されていてもよい。また、例えば
図7に示す導光部材と透光窓との対(あるいは導光部材と導光部材との対)により構成される光路と、例えば
図6に示す互いに正対する透光窓との対により構成される光路とが混在していてもよい。また、光の進行方向は図示したものに限定されず、逆向きであってもよい。
【0062】
以上のように、上記実施形態の吸光度測定部10は、1つの測定容器12A等の内部の貯留空間SPに複数の光路を同時に設定可能であり、それら複数の光路の間で光路長を互いに異ならせることが可能である。このため、吸光係数が互いに異なるために吸光度測定において最適な光路長が異なる複数種の物質を含む液体についても、それらの物質の濃度を個別に、かつ精度よく測定することが可能となる。
【0063】
特に、現に配管を流通する液体を処理対象として吸光度測定を行う、いわゆるインライン型の吸光度測定装置においては、複数種の物質ごとの吸光度をリアルタイムで測定する必要があり、光路長を順次変更しながら測定を行うことは事実上不可能である。本実施形態の吸光度測定部10は、このような複数種の物質についての同時測定が可能である。このため、例えば液中プラズマを発生させて液中にプラズマにより生成される活性種を溶け込ませる液体処理装置1においては、吸光度測定部10により測定される液中の物質濃度検出結果に基づきプラズマ発生部3を制御することが可能となる。これにより、所望濃度の活性種を含む処理液を安定的に生成することが可能である。
【0064】
以上説明したように、上記実施形態においては、測定容器12A~12Dが本発明の「吸光度測定用容器」に相当しており、「入射窓」として機能する透光窓214,216,218等、および「出射窓」として機能する透光窓215,217等が一体として、本発明の「光路設定部」に相当している。また、上記実施形態では、導入管202,302,402,502が本発明の「流入部」に相当する一方、排出管201,301,401,501が本発明の「流出部」に相当している。また、排気管203,303,403,503が本発明の「排気部」に相当している。
【0065】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の測定容器の各態様においては、容器本体の壁面に設けられた透明な透光窓を介して光の入射および出射が行われる。しかしながら、例えば容器本体の向かい合う壁面を透明な材料で形成することにより、該壁面を透光窓として機能させることも可能である。吸光度測定用のパーツとして全体が透明な材料で形成されたセルまたはキュベットと呼ばれる製品が実用化されているが、それらは互いに光路長の異なる複数の光路を同時に実現するように構成されたものではない。
【0066】
また例えば、上記実施形態では測定容器の壁面に透明な平板状の透光窓が設けられているが、使用する光源の出力特性に応じて、例えば透光窓にコリメータレンズや集光レンズを使用したものが用いられてもよい。また設定される光路の数や経路についても上記に限定されず任意である。例えば測定容器内で直進する光路以外に、反射鏡等を用いて折り曲げられた光路が実現されていてもよい。
【0067】
また例えば、状実施形態の吸光度測定部10は、検出部13の検出結果に基づき物質ごとの吸光度および液中濃度を算出する演算部14を備えるものであるが、演算部14の機能は、汎用のコンピュータ装置に所定の演算プログラムを実行することにより実現されてよい。また、光源部11や検出部13の動作についても、このコンピュータ装置により制御されるようにしてもよい。また、測定容器に対する光の入出力に関して規格化されたインターフェースを採用することで、光源や検出部についても外部の装置を利用するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態は、本発明に係る吸光度測定装置が液中プラズマ処理装置における活性種の液中濃度をインライン測定するために用いられているが、測定対象はこれに限定されるものではなく、液中に溶け込んだ種々の物質の吸光度および濃度を測定する目的に、本発明を適用することが可能である。
【0069】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る吸光度測定用容器において、例えば光路設定部は、入射位置と、入射位置から入射した光の進路に当たる位置に設けられた出射位置との対を複数設定し、入射位置から出射位置までの液体中の距離が、複数の対の間で互いに異なっていてもよい。このような構成によれば、入射位置から出射位置までの距離が光路長となるので、複数の光路の間で互いに光路長を異ならせることができる。
【0070】
この場合、入射位置には光を液体に入射させる透明な入射窓が設けられ、出射位置には光を液体から出射させる透明な出射窓が設けられてもよい。さらにこの場合、入射窓および出射窓の各々が、容器本体の壁面の一部に設けられていてもよい。このような構成によれば、外部からの光を入射窓を介して液中に入射させることができ、液中からの光を出射窓を介して外部へ取り出すことができる。容器本体の壁面の他の部分については光透過性を必要としないので容器本体の材料選択の自由度も高くなる。
【0071】
また例えば、容器本体の壁体が透明材料により形成され、壁体のうち液体を介して向かい合う平行な2面が入射窓および出射窓となった構成であってもよい。このような構成によっても同様に、貯留空間内の液体に光を入射させ、また液中を通過した光を外部へ取り出すことが可能である。
【0072】
また例えば、入射窓および出射窓の少なくとも1つが、容器本体の壁面から貯留空間に向けて突出する突出部位に設けられてもよい。このような構成によれば、突出部位の貯留空間側への突出量によって光路長を設定することが可能である。
【0073】
また例えば、光路設定部は、複数の光路のうち少なくとも1つについて光路長を変更可能に構成されてもよい。このような構成によれば、測定対象である物質の種類に応じて、測定に用いられる光路の光路長をより最適な条件に近づけることが可能になる。
【0074】
また例えば、流入部は、貯留空間に臨んで開口し貯留空間に液体を吐出する液体導入口を有し、光路設定部は、貯留空間内で液体導入口よりも鉛直下方に複数の光路を設定するように構成されてもよい。貯留空間に流入する液体が気泡を含んでいる場合があり、このような気泡は入射する光を散乱させるため、測定誤差の原因となる。貯留空間に貯留された液体中では気泡は上向きに移動するから、液体導入口よりも下方に光路を設けることで、光路中に気泡が入り込む確率を低下させ、測定誤差を抑制することができる。
【0075】
同様の理由から、例えば、液体から放出される気体を貯留空間の上部から外部へ排出する排気部が設けられてもよい。このような構成によれば、液体から放出され貯留空間の上部に溜まる気体を排出することができるので、貯留空間における液面の低下を抑制し、光路中に気泡が入り込む確率を低くすることができる。
【0076】
また、本発明に係る吸光度測定装置および吸光度測定方法においては、互いに異なる光路を通過した複数の光の検出結果に基づき、互いに異なる複数種の物質それぞれの吸光度が求められてもよい。より具体的には、液体中の一の種類の物質について、当該物質の種類に応じた光路長を有する光路を通過した光の検出結果に基づき吸光度が求められてもよい。本発明によれば、光路長の異なる複数の光路を同時に実現することが可能であり、測定対象物質の種類に応じた光路長を有する光路を通過した光の検出結果から当該物質の吸光度を求めることで、複数種の物質それぞれの吸光度を精度よく求めることが可能である。
【0077】
また例えば、光の検出に先立って、光路上にある液体に含まれる気泡の脱泡が行われてもよい。上記したように、液中の気泡による光の散乱は測定誤差の原因となるから、光路上の気泡を除くことで、測定精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、例えば液中に含まれる物質の濃度を求めるための吸光度測定に好適なものであり、特に特に複数種の物質の吸光度をそれぞれ精度よく求めることを必要とされる用途に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10 吸光度測定部(吸光度測定装置)
11 光源部
12,12A~12D 測定容器(吸光度測定容器、容器本体)
13 検出部
14 演算部
111~113 光源
201,301,401,501 排出管(流出部)
202,302,402,502 導入管(流入部)
203,303,403,503 排気管(排気部)
214~218,314~319,414~419,514~519 透光窓(入射窓、出射窓、光路設定部)
L1~L3 光路
LQ 液体
SP 貯留空間