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  • 特許-口蹄疫ワクチン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】口蹄疫ワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/135 20060101AFI20220729BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220729BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220729BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61K39/135 ZNA
A61K39/39
A61P31/12 171
A61P37/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017556778
(86)(22)【出願日】2016-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-01-25
(86)【国際出願番号】 US2016013587
(87)【国際公開番号】W WO2016115456
(87)【国際公開日】2016-07-21
【審査請求日】2019-01-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】62/104,314
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】517249691
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ,アズ・レプレゼンテッド・バイ・ザ・セクレタリー・オブ・アグリカルチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ドミノウスキー,ポール・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハーダム,ジョン・モーガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ジェームズ・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ,サイリル・ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ルイス・リーンドロ
(72)【発明者】
【氏名】クラグ,ピーター・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】リーダー,アイダ・エリザベス
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504583(JP,A)
【文献】特表2002-534480(JP,A)
【文献】CAO YIMEI,ADJUVANTS FOR FOOT-AND-MOUTH DISEASE VIRUS VACCINES: RECENT PROGRESS,EXPERT REVIEW OF VACCINES,英国,EXPERT REVIEWS LTD,2014年11月 1日,VOL:13, NR:11,PAGE(S):1377 - 1385,URL,http://dx.doi.org/10.1586/14760584.2014.963562
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-51/12, A61P1/00-43/00
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物であって、
a)前記アジュバント成分が、油、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン、及び、CpGを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド、を含有するエマルションを含み、
b)前記抗原成分が、0.5~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルスを含む、
前記免疫原性組成物。
【請求項2】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、配列番号8の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記エマルションが油相を含み、そして、前記油相が、前記組成物の最大80v/v%の量で存在する、請求項1または2のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記エマルションが油相を含み、そして、前記油相が、前記組成物の50.01v/v%~55v/v%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
1つ以上の乳化剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記アジュバント成分が、配列番号8の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドと、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランとを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記DEAEデキストランが、6~200mg/用量の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、6~200μg/用量の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記FMDウイルスが、FMDウイルス A24 クルゼイロ株の調製物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記FMDウイルス A24 クルゼイロ株が、遺伝子操作されている、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記FMDウイルス A24 クルゼイロ株が、リーダーコード領域(LL)の欠損を含有する、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記FMDウイルス A24 クルゼイロ株が、非構造的3D pol タンパク質及び非構造的3Bタンパク質のうちの1つまたは両方において導入された陰性抗原マーカーを含有する、請求項10または11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記FMDウイルス A24 クルゼイロ株が、A24 クルゼイロ以外のFMDウイルスの株由来の異種カプシドタンパク質を含有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記A24 クルゼイロ以外のFMDウイルスの株が、Asia1、Turkey06、O1Campos、C3Indaial、及びA2001-Argentinaから選択される、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記抗原成分が、0.5~6μg/用量のFMDウイルスを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記抗原成分が、0.5~4μg/用量のFMDウイルスを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記抗原成分が、0.5~2μg/用量のFMDウイルスを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記抗原成分が、0.5~1.5μg/用量のFMDウイルスを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記FMDウイルスが、構造及び非構造FMDタンパク質の両方を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与することを含む、前記動物におけるFMDに誘発された病変を治療または予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
口蹄疫(FMD)は、家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及び他)及び多様な野生動物を含む偶蹄の有蹄動物において非常に伝染しやすいウイルス性疾患である。FMDVに感染したウシにおける最も顕著な疾患症状には、口、舌、乳頭、及び脚の上皮の水疱性病変が含まれる。一部の国々、特にアメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、及びヨーロッパの大部分では、FMDが認められないと考えられているが、本疾患は世界中に分布しており、輸出産業に大きな経済的影響を与えている。実際に、過去10年の間にほとんどすべての大陸で、経済的に壊滅的な被害をもたらす発症が起こっている。
【0002】
現在死滅した抗原のFMDVワクチンは、時には困難であり得る細胞の増殖に適合された大量(数千リットル)の伝染力の強いFMDVを増殖させることによって、高価な生物学的封じ込め施設において必然的に生成されている。このプロセスにより、家畜に費用のかかる発症をもたらす生産施設からの伝染力の強いウイルスの脱出が生じる(Cottam et al.2008.PLoS Pathogen 4:1-8を参照されたい)。増殖後、次に、調製された化学薬品及び抗原濃縮物を用いてウイルスを不活性化し、続いて、汚染タンパク質を除去するための精製ステップが必要とされる。血清学的診断検査を介してワクチン接種を受けた動物(DIVA)から感染したものを識別するのは困難である。保護を達成するためにワクチンと循環する野外株との間の適した適合を必要とする、血清型及び亜類型間の干渉効果は、ほとんどあるいは全くない。ワクチンのこうした欠点にもかかわらず、何十億もの用量が、毎年世界中で製造されている。その使用は、ヨーロッパからのFMDVの根絶、及び大規模なワクチン接種運動を介した世界の多数の地域での疾患の防除にその根拠を有している。骨格及び好適な制限部位を含有する遺伝子操作されたウイルスの生成により、制限部位が異なるFMD株のカプシドタンパク質の導入に対する遺伝子座を提供するため、不活性化されたワクチンの欠点が部分的に解消されている。それにもかかわらず、抗原の費用は、FMD及び大部分の他のワクチンの費用に対する最大の要因となっている。
【0003】
FMDの防除の問題は、ウイルス持続の現象によってさらに悪化する。簡潔に言えば、歴史的に、不活性化されたFMDワクチンは、持続または保菌状態(感染及び/または曝露に続いて28日を過ぎたウイルス出芽として定義される)を予防することが不可能であった。いずれのFMD症状も示さない出芽動物は、他の動物に対するFMD感染源であり続ける可能性がある。このように、一般に許容される疾患防除の実施には、疾患の臨床兆候が見られない場合であっても、ワクチン接種を植えた群のすべての動物の屠殺が必要となる。
【0004】
このように、効率を落とすことなく、かつ/またはFMD持続を低減もしくは除去することなく、低い抗原負荷を有するワクチンを生み出す方法及び組成物が、未だに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本発明は、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫性組成物を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及びポリカチオン性高分子、アルミニウム源のうちの少なくとも1つを含み、抗原成分は、0.5~8μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原組成物を含む。
【0006】
ある特定の実施形態において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを含有するCpGである。ある特定の実施形態において、ポリカチオン性高分子は、DEAEデキストランである。
【0007】
異なる実施形態において、抗原は、FMDウイルス組成物であり、0.5~4μg/用量、または0.5~2μg/用量、もしくは0.5~1μg/用量の量で、または約0.5μg/用量の量で存在する。
【0008】
FMDウイルスは、不活性化または弱毒化されている場合がある。ある特定の実施形態において、FMDウイルスは、不活性化されたFMD A24クルゼイロ株である。選択された実施形態において、不活性化された株は、リーダーコード領域(LL)の欠損を含有し、かつ任意に陰性抗原マーカーを含有する遺伝子操作された株である。
【0009】
ある特定の実施形態において、遺伝子操作されたウイルスは、異種株からのカプシドタンパク質を含有する。
別の態様において、本発明は、以前の態様の実施形態による免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与することを含む、動物におけるFMDを予防する方法を提供する。異なる実施形態において、動物は、ウシ亜科の動物、ヒツジ、ブタ、及びヤギから選択される。
【0010】
別の態様において、本発明は、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物を感染前の反芻動物に投与することを含む、FMDに感染した反芻動物のFMD持続の頻度を低減する方法を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分は、6~10μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含む。
【0011】
また別の態様において、本発明は、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物を群の動物に投与することを含む、群を管理する方法を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分は、6~10μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含み、FMD感染との接触が疑われる場合に、群のワクチン接種を受けたメンバーは、屠殺されない。
【0012】
本発明はまた、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物を群の動物に投与することを含む、群を管理する方法を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分は、6~10μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含み、FMD感染との接触が疑われる場合に、群のワクチン接種を受けたメンバーは、0~62日間検疫される。
【0013】
本発明はまた、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物を群の動物に投与することを含む、群を管理する方法を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分は、6~10μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含み、FMD感染との接触が疑われる場合に、群のワクチン接種を受けたメンバーは、感染領域の外に移動される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】PEG沈殿と中空糸濃縮抗原との間の質の差を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「約」または「およそ」は、測定可能な数値変数に関連して使用される場合、「約3週間」が17日~25日であり、約2週間~約4週間が10日~40日である週単位の時間間隔に関して「約」が使用されない限り、その変数の表示値と、表示値の実験誤差以内(例えば、平均の95%信頼区間以内)の変数値または表示値の10パーセント以内の変数値のいずれか大きい方のすべての変数値を指す。
【0016】
「アジュバント」とは、抗原に対する体液性または細胞性免疫応答を増強する任意の物質を意味する。アジュバントは、通常、注射部位からの抗原の放出の防除及び免疫系の刺激という2つの目的を達成するために使用される。
【0017】
「抗体」とは、特異抗原に対する免疫応答の結果としてその抗原に結合することのできる免疫グロブリン分子を指す。免疫グロブリンは、「定常」及び「可変」領域を有する「軽」及び「重」ポリペプチド鎖からなる血漿タンパク質であり、定常領域の組成物に基づいて複数のクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)に分けられる。
【0018】
「抗原」または「免疫原」とは、免疫系によって認識され、かつ免疫応答を生成する任意の物質を指す。この用語には、死滅した、不活性化された、弱毒化された、または修飾された生の細菌、ウイルス、または寄生虫が含まれる。抗原という用語はまた、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、組換えタンパク質、合成ペプチド、タンパク質抽出物、細胞(腫瘍細胞を含む)、組織、多糖、もしくは脂質、またはその断片が、単独で、またはそれらの任意の組み合わせで含まれる。抗原という用語にはまた、抗イディオタイプ抗体等の抗体またはその断片、及び抗原または抗原決定基(エピトープ)を模倣し得る合成ペプチドミモトープが含まれる。
【0019】
「緩衝液」とは、別の化学物質の濃度の変化を防ぐ化学系、例えば、水素イオン濃度(pH)の大きな変化を防ぐ緩衝液として作用するプロトンドナー系及び受容体系を意味する。緩衝液のさらなる例は、弱酸及びその塩(共役塩基)の混合物または弱塩基及びその塩(共役酸)の混合物を含有する溶液である。
【0020】
「~から本質的になる」とは、アジュバント製剤に適用される場合、列挙されていないさらなるアジュバント剤または免疫調節剤が測定可能なアジュバント効果または免疫調節効果を発揮する量でこれらの薬剤を含有しない製剤を指す。
【0021】
「用量」とは、対象に与えられるワクチンまたは免疫原性組成物を指す。「第1回用量」または「初回ワクチン」とは、0日目に与えられた組成物等の用量を指す。「第2回用量」または「第3回用量」または「年1回用量」とは、第1回用量と同じワクチンまたは免疫原性組成物であっても、そうなくてもよい、第1回用量の後に与えられた組成物の量を指す。
【0022】
「乳化剤」という用語は、本開示において広く使用される。それは、通常乳化剤として許容される物質、例えば、TWEEN(登録商標)またはSPAN(登録商標)の製品ラインの異なる製品(それぞれ、ポリエトキシ化ソルビトールの脂肪酸エステル及び脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤)、及びPEG-40ヒマシ油または別のペグ化硬化油等の異なる溶解度向上剤を含む。
【0023】
「体液性免疫応答」とは、抗体によって媒介される免疫応答を指す。
対象における「免疫応答」とは、抗原に対する体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または体液性及び細胞性免疫応答の発現を指す。免疫応答は、通常、当該技術分野において知られている標準的な免疫アッセイ及び中和アッセイを用いて判定され得る。
【0024】
「免疫学的に有効な量」または「免疫応答を生じさせるのに有効な量」は、受容者において免疫原性応答を誘発するのに有効な量である。免疫原性応答は、診断目的もしくは他の試験のために十分であり得るか、または疾患病原体の感染により生じる健康への悪影響もしくはその合併症を含む疾患の兆候もしくは症状を予防するために適し得る。体液性免疫または細胞媒介性免疫のいずれかまたはその両方が誘発すればよい。免疫原性組成物に対する動物の免疫原性応答は、例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、または、野生型株での攻撃の後の兆候及び症状のモニタリングを介して直接的に判断され得、一方、ワクチンがもたらした防御免疫は、例えば、対象の死亡率、罹患率、温度値、全身状態ならびに健康状態及び動作全体等の臨床的兆候の低減を測定することによって判断することができる。免疫応答は、細胞性免疫及び/または体液性免疫の誘発を含み得るが、これらに限定されない。
【0025】
「免疫原性」とは、免疫または抗原応答を引き起こすことを意味する。したがって、免疫原性組成物は、免疫応答を誘発する任意の組成物であり得る。
「感染構内」とは、検査結果、適合する臨床兆候、FMDの症例定義、及び国際標準に基づいて、推定される陽性事例または確認された陽性事例が存在する構内を指す。
【0026】
「感染領域」とは、推定または確認された感染構内の周辺を超えた3km以内の場所を指す。
「脂質」とは、水中で不溶性であるが、無極性有機溶剤中では溶解可能であり、手触りが油っぽく、かつ炭水化物及びタンパク質と共に生細胞の主要な構造材料を構成する、脂肪、油、ワックス、ステロール、及びトリグリセリドを含む、有機化合物群のいずれかを指す。
【0027】
「薬学的に許容される」とは、医学的な正しい判断の範囲内にある、不必要な毒性、刺激、アレルギー応答等を伴わずに対象の組織と接触させての使用に好適な、妥当な損益比に見合う、かつそれらの意図された使用にとって有効な物質を指す。
【0028】
「TCID50」とは、「細胞培養感染量」を指し、接種された細胞培養の所与のバッチの50%に感染させることが必要とされるウイルスの希釈として定義される。本明細書全体に渡って使用されるSpearman-Karber法を含む、多様な方法を用いて、TCID50を計算し得る。Spearman-Karber法の記載については、B.W.Mahy&H.O.Kangro,Virology Methods Manual,25~46頁(1996年)を参照されたい。
【0029】
持続的な感染または保菌動物とは、臨床疾患の感染または発病後28日を経過したFMDウイルスを出芽した動物である。
アジュバント製剤及び製造方法
本願は、本発明に好適ないくつかのアジュバント製剤を開示している。これらのアジュバントに共通する特徴は、油及び1つ以上の乳化剤の存在であり、油相は、本明細書で開示したアジュバント製剤を包含する少なくとも50%のワクチン組成物を含む。
【0030】
複数の油及びそれらの組み合わせは、本発明の使用に好適である。これらの油には、動物油、植物油、ならびに非代謝油が含まれるが、これらに限定されない。本発明に好適な植物油の非限定的な例は、トウモロコシ油、ピーナッツ油、大豆油、ココナツ油、及びオリーブ油である。動物油の非限定的な例は、スクアランである。非代謝油の好適な非限定的な例には、軽質鉱油、直鎖または分岐の飽和油等が含まれる。
【0031】
一連の実施形態において、本発明のアジュバント製剤で用いる油は、軽質鉱油である。本明細書で用いる場合、「鉱油」という用語は、蒸留技術によってペトロラタムから得られる液体炭化水素の混合物を指す。この用語は、「液体パラフィン」及び「液体ペトロラタム」、及び「白色鉱油」と同義である。この用語はまた、「軽質鉱油」、すなわち、ペトロラタムの蒸留により同様に得られるが、但し、白色鉱油よりもわずかに低い比重である油を含むことも、意図する。例えば、REmington’s PhARmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1990、788頁及び1323頁)を参照されたい。鉱油は、例えば、J.T.Baker(Phillipsburg,Pa.)、またはUSB Corporation(CLEveland,Ohio)等の種々の商業的供給源から得ることが可能である。好ましい鉱油は、DRAKEOL(登録商標)の名前で市販されている軽質鉱油である
FMD持続を予防または除去するのに特に好適な、ある特定の実施形態において、油相は、ワクチン組成物の50体積%~95体積%の量で、50体積%~85体積%の量で、より好ましくは50体積%~60体積%の量で、より好ましくは50~52v/v%を超える量で存在する。油相には、任意のかかる乳化剤が存在する場合、油及び乳化剤(例えば、SPAN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)80等)が含まれる。油相の体積は、油及び乳化剤の体積の合計として計算される。したがって、例えば、油の体積が組成物の40%であり、乳化剤の体積が組成物の12%である場合、油相は、組成物の52v/v%で存在し得る。同様に、油が組成物の約45%の量で存在し、かつ乳化剤が組成物の約6%の量で存在する場合、油相は、組成物の約51v/v%の量で存在する。
【0032】
本発明のアジュバントは本発明のワクチンの一部のみを構成するため、油相は、本発明のアジュバントの各々の50体積%~95体積%の量で、好ましくは50体積%~85体積%より大きい量で、より好ましくは50体積%~60体積%の量で、より好ましくは50~52v/v%の量で存在することも理解すべきである。
【0033】
実施形態のサブセットにおいて、油及び油溶性乳化剤を足し合わせた体積パ―セントは、少なくとも50%であり、例えば、50体積%~95体積%、好ましくは50体積%~85体積%より大きい量で、より好ましくは50体積%~60体積%の量で、より好ましくは50~52v/v%の量で存在する。したがって、例えば、油は45体積%の量で存在し得、脂溶性乳化剤は、5v/v%を超える量で存在し得るが、これらに限定されない。したがって、油及び油溶性乳化剤を足し合わせた体積パーセントは、少なくとも50体積%であり得る。
【0034】
本発明のすべてのワクチンに適用可能である、また別のサブセットにおいて、油の体積パーセントは、ワクチン組成物の40%を超え、例えば、40体積%~90体積%、40体積%~85体積%、43体積%~60体積%、44~50v/v%である。
【0035】
本発明のエマルションでの使用に好適な乳化剤には、天然の生物学的に適合性のある乳化剤及び非天然の合成界面活性剤が含まれる。生物学的に適合性のある乳化剤には、リン脂質化合物及びリン脂質の混合物が含まれる。好ましいリン脂質は、大豆レシチンまたは卵レシチン等のホスファチジルコリン(レシチン)である。レシチンは、粗植物油を水で洗浄し、得られた含水ゴムを分離及び乾燥することにより、ホスファチド及びトリグリセリドの混合物として得られ得る。精製された生成物は、トリグリセリド及び植物油をアセトン洗浄により除去した後に残留する、アセトン不溶性リン脂質及び糖脂質の混合物を分画することにより得られ得る。あるいは、レシチンは、種々の商業的供給源から得られ得る。他の好適なリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、及びホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。リン脂質は、天然源から単離されても、または慣用的に合成されてもよい。
【0036】
さらなる実施形態において、本明細書で使用される乳化剤は、レシチンを含まない、または免疫学的に有効ではない量でレシチンを使用する。
本発明のアジュバント製剤での使用に好適な非天然の合成乳化剤には、例えば、脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤(SPAN(登録商標)またはARLACEL(登録商標)の名前で市販されている)等のソルビタン系の非イオン性界面活性剤、ポリエトキシ化ソルビトールの脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標))、ヒマシ油等の源から得られる脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(EMULFOR(登録商標));ポリエトキシ化脂肪酸(例えば、SIMULSOL M-53の名前で入手可能なステアリン酸)、ポリエトキシ化イソオクチルフェノール/ホルムアルデヒド重合体(TYLOXAPOL(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(BRIJ(商標登録));ポリオキシエチレンノンフェニルエーテル(TRITON(商標登録)N)、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(TRITON(商標登録)X))が挙げられる。好ましい合成界面活性剤は、TWEEN-80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)及びSPAN(登録商標)-80(ソルビタンモノオレエート)等のSPAN(登録商標)及びTWEEN(登録商標)の名前で入手可能な界面活性剤である。
【0037】
一般的に言うと、乳化剤(複数を含む)は、0.01体積%~40体積%、好ましくは0.1体積%~15体積%、より好ましくは2体積%~10体積%の量でワクチン組成物内に存在し得る。
【0038】
本発明のアジュバント製剤内に存在するさらなる材料には、カチオン性担体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、モノホスホリピドA及びその類似物(MPL-A)、ポリイノシン:ポリシチジル酸(ポリI:C)、サポニン、第4級アンモニウム、ステロール、糖脂質、アルミニウム源(例えば、REHYDRAGEL(登録商標)またはVAC20(登録商標)湿潤ゲル)及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
好適なカチオン性担体には、デキストラン、デキストランDEAE(及びその誘導体)、PEG、グアーガム、キトサン誘導体、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)ポリエチレンイミン等のポリセルロース誘導体、ポリリジン等のポリアミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
好適な免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、ホスホロチオエート修飾、ハロゲン化、アルキル化(例えば、エチルまたはメチル修飾)、及びホスホジエステル修飾を含むが、これらに限定されない、修飾された骨格を有し得る、ODN(DNA系)、ORN(RNA系)オリゴヌクレオチド、またはキメラODN-ORN構造が含まれる。ある特定の実施形態において、ポリイノシンシチジル酸またはその誘導体(ポリI:C)を使用し得る。
【0041】
CpGオリゴヌクレオチドは、特異的な塩基配列の背景におけるメチル化されていないCGジヌクレオチドの存在を特徴とする(CpGモチーフ)、最近記載されたクラスの薬物療法剤である。(Hansel TT,BARnes PJ(eds):New Drugs FOr Asthma,AlLErgy and COPD.Prog REspir REs.Basel,KARger,2001,vol31,pp229-232であり、これは参照により本明細書に組み込まれる)。これらのCpGモチーフは、CGジヌクレオチドが抑制されており、かつ、存在する場合には通常はメチル化されている、真核細胞のDNAにおいては見られないが、細菌DNAには存在し、CpGモチーフは細菌DNAに対して免疫刺激特性を付与する。
【0042】
選択された実施形態において、本発明のアジュバントは、いわゆる、Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチド、より好ましくは、修飾Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチド、よりいっそう好ましくは、E修飾Pクラスオリゴヌクレオチドを用いる。Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、通常、6~20ヌクレオチド長のパリンドロームの存在を特徴とするCpGオリゴヌクレオチドである。Pクラスオリゴヌクレオチドは、インビトロ及び/またはインビボでコンカテマーに自発的に自己集合する能力を有する。これらのオリゴヌクレオチドは、厳密に言えば、一本鎖であるが、パリンドロームの存在により、コンカテマーの形成、または場合によりステムアンドループ構造の形成を可能にする。Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドの全体の長さは、19~100ヌクレオチドであり、例えば、19~30ヌクレオチド、30~40ヌクレオチド、40~50ヌクレオチド、50~60ヌクレオチド、60~70ヌクレオチド、70~80ヌクレオチド、80~90ヌクレオチド、90~100ヌクレオチドである。
【0043】
本発明の一態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、5’TLR活性化ドメイン、及び少なくとも2つのパリンドローム領域を含有し、1つのパリンドローム領域が、少なくとも6ヌクレオチド長の5’パリンドローム領域であり、少なくとも8ヌクレオチド長の3’パリンドローム領域に直接またはスペーサを介して接続される。
Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で知られている技術に従って修飾され得る。例えば、J修飾とは、ヨード修飾されたヌクレオチドを指す。E修飾とは、エチル修飾されたヌクレオチド(複数を含む)を指す。したがって、E修飾Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドはPクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドであり、少なくとも1つのヌクレオチド(好ましくは5’ヌクレオチド)がエチル化される。さらなる修飾には、6-ニトロ-ベンズイミダゾールの付着、O-メチル化、プロイニル-dUによる修飾、イノシン修飾、(好ましくは、ウリジンへの)2-ブロモビニルの付着が含まれる。
【0044】
Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合が含まれるが、これらに限定されない、修飾されたヌクレオチド間結合も含有し得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、合成されても、商業的供給源から得られてもよい。
【0045】
Pクラスオリゴヌクレオチド及び修飾Pクラスオリゴヌクレオチドは、2008年6月12日に公開された公開PCT出願第WO2008/068638号においてさらに開示されている。修飾Pクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドの好適な非限定的な例を、以下に提供する(「」は、ホスホロチオエート結合を指し、「-」は、ホスホジエステル結合を指す)。
【0046】
【表1】
【0047】
アジュバント組成物で用いるPクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、使用されるPクラス免疫刺激性オリゴヌクレオチド及びその対象とする種の性質に依存する。
油及び乳化剤(複数を含む)に加えて、アジュバント製剤はまた、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとポリカチオン性担体との組み合わせを含む(または、本質的にそれからなる、あるいは、それからなる)。これらのアジュバントは、「TXO」と称される。
【0048】
一連の実施形態において、TXOアジュバントはまた、Al(OH)ゲル等のアルミニウム源を含み得る。アルミニウムを含むTXOアジュバントは、「TXO-A」と称される。
【0049】
一連の実施形態において、アジュバントTXO及びTXO-Aは、任意に、例えば、コレステロール、ラノステロール、スチグマステロール等のステロールを含有し得る。ステロールを含有するTXO及びTXO-Aアジュバントは、それぞれ、TCXO及びTCXO-Aと称される。任意に存在するステロールは、最大約1000μg/用量(例えば、100~1000μg、200~1000μg、250~700μg、または約400~500μg)の量で存在し得る。
【0050】
一連の実施形態において、TXOアジュバント内に、好ましくは回文配列を含有し、かつ任意に修飾骨格を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド、好ましくはODNが、5~400μg/用量の量で存在し得、かつポリカチオン性担体が、5~400mg/用量の量で存在し得る。
【0051】
例えば、ある特定の実施形態において、一用量のTXOは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの約5~400μg/用量(例えば、6.25~200μg、または6.25~100μg、または6.25~50μg、または6.25~25μg、または6.25~10μg、または10~200μg、または25~200μg、または25~100μg、または25~50μg、または25~100μg、または50~100μg/用量)を含み得、かつポリカチオン性担体は、約5~約500mg/用量(例えば、6.25~200mg、または6.25~100mg、または6.25~50mg、または6.25~25mg、または6.25~10mg、または10~200mg、または25~200mg、または25~100mg、または25~50mg、または25~100mg、または50~100mg/用量)の量で存在し得る。
【0052】
ある特定の実施形態において、TXOアジュバントは、下記のように調整され、
a)ソルビタンモノオレエートが、軽質鉱油内に溶解される。得られた油剤は、除菌濾過され、
b)免疫刺激性オリゴヌクレオチド、デキストランDEAE及びポリエトキシ化(20)ソルビタンモノオレエートは、水相内に溶解され、よって水溶液を形成し、かつ
c)継続的な均質化の下で油剤に水溶液を加え、よってアジュバント製剤TXOを形成する。
【0053】
一連の実施形態において、TXO-Aアジュバント内に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、TXOアジュバントとして存在し、アルミニウム源が、最大40v/v%(例えば、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%)の量で存在する。一連の実施形態において、アルミニウム源が、ワクチン組成物の2v/v%~20v/v%、より好ましくは約5v/v%~約17v/v%で存在する。
【0054】
ある特定の実施形態において、TXO-Aアジュバントは、TXOアジュバントと同様に調製され、アルミニウム源が、水溶液に加えられる。
TCXO及びTCXO-Aアジュバントの調製において、コレステロールが油剤に溶解され、かつTCXO及びTCXO-Aを製造する他のステップは、それぞれ、TXO及びTXO-Aの調製において使用されたステップと同様である。
抗原
発明者らは、驚くべきことに、本発明のアジュバントが、抗原の用量をFMDウイルスの10μg~0.5μg低減したときであっても、口蹄疫からの十分な保護をもたらすことが可能であることを発見した。したがって、本発明の異なる実施形態において、FMDウイルスの量が、0.5μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、または約10μgであり得る。抗原の量が、FMDウイルスの0.5~1μg、1~2μg、2~3μg、3~4μg、4~5μg、5~6μg、6~8μg、8~10μg(140個のS粒子)であり得る。
【0055】
現在、FMDの7つの血清型が単離されている。このウイルスの7つの血清型のうち、A、C、O、Asia1及びSAT3には、はっきりした系統があるように映り、SAT1及びSAT2は、分解されていない分岐群である。各血清型内に、複数の株が存在する。例えば、A24クルゼイロは、血清型Aに属し、O1Camposは、血清型Oに属する。
【0056】
任意の血清型のFMDウイルスは、かかるウイルスが病原性でないという条件で、本発明の抗原として使用され得る。病原性は、ウイルスの不活性化、例えば、ホルムアルデヒドまたはBEIによる治療によって低減される場合がある。
【0057】
ある特定の実施形態において、ウイルスは、培養継代によって、または遺伝子組み換え手段を介して弱毒化される場合がある。例えば、リーダータンパク質Lproコード領域の欠損が、ウシ及びブタにおいて弱毒化されたFMDウイルスをもたらすことが、これまでに証明されている。例えば、米国特許第US5,824,316号、米国特許第US8,765,141号、ウイルス学1997 227(1):96-102,J.Virol 2012 86:11675-11685を参照されたい。Lタンパク質のSAPドメイン内の位置55及び58での点突然変異がまた、細胞培養内の軽度に弱毒化された表現型を発現した生存ウイルスをもたらし、かつブタのFMDモデルにおいて保護的であった。米国特許第US8,846,057号を参照されたい。
【0058】
ある特定の実施形態において、ウイルスはまた、DIVA(ワクチン接種を受けた動物から感染したものを識別する)アッセイを可能にする陰性抗原マーカーを含有する。ある特定の実施形態において、陰性抗原マーカーが、3D及び/または3Bタンパク質に導入される。例えば、配列番号19、20、21、22を参照されたい。
【0059】
他のウイルスと同様に、FMDウイルスは、継続的に進化し、かつ突然変異するため、それに対してワクチン接種する際の困難の1つは、血清型間で、かつ血清型内であっても大きなばらつきがあることである。血清型間に干渉効果がなく(1つの血清型に対するワクチンは、必ずしも、任意の他のワクチンに効果があるわけではない)、加えて、所与の血清型内の2つの株は、所与の遺伝子に対して30%も異なるヌクレオチド配列を有し得る。これは、FMDワクチンが関連する株に高度に特異的でなければならないことを意味している。
【0060】
したがって、ある特定の実施形態において、エンドヌクレアーゼ制限部位が、ウイルスのゲノムに導入され、ここでは異種FMD株からのタンパク質の導入(例えば、外側カプシドを形成するタンパク質)を可能にする。
【0061】
ある特定の実施形態において、抗原成分は、リーダータンパク質の欠損、3B及び/または3Dタンパク質の陰性マーカー突然変異によって、かつ異種株からの抗原(例えば、カプシドタンパク質)の配列のより容易な導入のための制限エンドヌクレアーゼ部位の導入によって、任意に修飾され得るFMD株A24クルゼイロを含む。抗原の好適な非制限的な例は、米国特許第US8,765,141号に記載されている。遺伝的に修飾されたFMDVのRNAゲノムに対応するDNA配列がまた、配列番号15(A24LL3DYR)及び配列番号17(A24LL3BPVKV3DYR)に提供される。したがって、例えば、配列番号15に記載されたDNA配列と相補的なDNA配列は、FMDVウイルスのRNAゲノム(すなわち、FMDVをコードするRNA)に対する鋳型であり、すなわち、それと相補的であり、またはそれを「コードする」。ある特定の実施形態において、ウイルスは、異種FMD株(すなわち、系統C、O、Asia1、SAT3、SAT1及びSAT2、Turkey06の株、及び系統Aの他の株を含むが、これらに限定されない、A24クルゼイロ以外のFMDの株)のカプシドタンパク質を含む。かかる異種抗原の非制限的な例を、配列番号23(Asia1-A24LL3BPVKV3DYR)及び配列番号24(A/Turkey/06-A24LL3BPVKV3DYR)に図示している。さらに、O1Campos-A24LL3BPVKV3DYR(全ゲノム、O1camposとも称される)、C3Indaial-A24LL3BPVKV3DYR(全ゲノム)、及びカプシドArgentina2001イソ93(カプシド及び2A部分的配列)が、それぞれ、配列番号25、26、及び27に提供される。
【0062】
かかる抗原の変異型がまた、想定される。変異型は、標準パラメータを用いて記載された整列プログラムのうちの1つを用いた基準配列と少なくとも80%一致し(例えば、85%一致する)、90%一致し、95%一致し、96%一致し、97%一致し、98%一致し、または99%一致する。BLAST、CLUSTAL、またはPHILIPを含むが、これらに限定されない、配列同一性を判定するための複数の整列ツールが入手可能である。
【0063】
当業者であれば、これらの値が、コドンの縮退、アミノ酸類似性、読取枠の位置付け等を考慮することによって、2つのヌクレオチド配列によりコードしたタンパク質の対応する同一性を判定するために適切に調節され得ることを理解するだろう。
【0064】
ある特定の実施形態において、変異型は、特異的で例示的なヌクレオチドまたはアミノ酸配列を超えるものを包含し、かつその機能的等価物を含む。所与の部位に化学的に等価なアミノ酸の生成を生じるが、コードしたポリペプチドの機能的特性に影響を与えない核酸の断片の変更例が、当該技術分野において知られている。したがって、アミノ酸アラニン、疎水性アミノ酸に対するコドンは、グリシン等の別の疎水性の低い残基、またはバリン、ロイシン、またはイソロイシン等の疎水性の高い残基をコードするコドンによって置換され得る。同様に、グルタミン酸に対する別のアスパラギン酸等に対する1つの陰電荷を持つ残基、またはアルギニンに対する別のリジン等に対する1つの陽電荷を持つ残基の置換をもたらす変化はまた、機能的に等価な製品を生成することが期待できる。ポリペプチド分子のN末端及びC末端部の変更を生じるヌクレオチドの変化はまた、ポリペプチドのアッセイを変更することが期待されないだろう。提案された修飾の各々は、コードした製品の生物学的活性の保持の判定のように、当該技術分野の所定の技術内にある。
【0065】
本発明のポリペプチドはまた、アミノ酸置換、欠損、切断、及び挿入を含む多様な方法で変更され得る。本発明のタンパク質の要素及び断片を組み合わせることによって、かつ他のタンパク質を用いて、関心の特性を有する新規のタンパク質が生成される。かかる操作の方法は、通常、当該技術分野において知られている。したがって、本発明の遺伝子及びヌクレオチド配列には、自然に発生した配列及び突然変異の形態の両方が含まれる。同様に、本発明のタンパク質には、自然に発生したタンパク質ならびに変形例、及びその修飾形態が含まれる。かかる変異型は、親FMDウイルスの所望の修飾活性を保持し続けるだろう。変異型をコードしたDNAにおいて生じ得る突然変異は、読取枠の配列を配置してはならず、好ましくは、二次的なmRNA構造を生成し得る相補的な領域を生成しないだろう。
【0066】
本発明に好適な抗原を増殖及び精製する方法が、当該技術分野において知られており、中空糸濾過及びPEG沈殿を含むが、これらに限定されない。これらの方法は、いくらか異なる抗原組成物を生み出す。例えば、PEG沈殿では、抗原組成物は、非構造的なタンパク質が枯渇している。例えば、中空糸濾過等の他の方法では、抗原組成物は、構造的及び非構造的FMDタンパク質の両方を含有している。したがって、ある特定の実施形態において、FMD抗原は、構造的タンパク質を含む。例えば、FMD抗原が中空糸濾過によって調製される、他の実施形態において、FMD抗原は、構造的及び非構造的タンパク質の両方、具体的には3Dタンパク質を含む。
【0067】
感染動物からワクチン接種を受けたものを識別するための固有の抗原マーカーを欠いている、現在のワクチンプラットフォームを使用すると、非構造的タンパク質に対する抗体の存在が感染動物を特定するという事実に起因して、これが未だ望ましいため、非構造的タンパク質の除去が望ましい。しかしながら、FMDLL3B3Dプラットフォームとの関連において、抗原調製における非構造的タンパク質の存在は、ワクチン接種を受けたもとと感染動物との識別を妨げるものではない。非構造的タンパク質及びアジュバントを含む本発明の抗原製剤が、精製された抗原製剤より少ない用量で臨床疾患に対する保護を提供し、また、反芻動物における持続感染のより有用な構築を防止するのは、このような関連においてである。
【0068】
組成物
本発明の組成物は、標準的な緩衝液、安定剤、賦形剤、保存剤及び/または溶解剤等の、ヒトを含む動物に対する許容される担体を含む許容される慣例に従って製剤化され得、また、持続的な放出を促進するように製剤化され得る。賦形剤には、水、生理食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリコール等が含まれる。等張性に対する添加剤には、特に、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが含まれる。安定剤には、特に、アルブミンが含まれる。修飾された生ワクチンを製剤化するのに特に有用であるものを含む、他の好適な賦形剤及び添加剤が知られており、または当業者に明らかであるだろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、REmington’s PhARmaceutical Science,18th ed.,1990年,Mack Publishingを参照されたい。
【0069】
本発明の組成物は、例えば、特に、追加のアジュバント、またはサイトカイン等の1つ以上の追加の免疫調節性成分をさらに含み得る。本発明のワクチンにおいて使用され得るかかる追加のアジュバントの非制限的な例には、RIBIアジュバント系(RIBi社、モントリオールハミルトン)、フロイント完全及び不完全アジュバント、ブロック共重合体(CytRx、ジョージア州アトランタ)、QS-21(CambRIdge Biotech社、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、SAF-M(Chiron、カルフォルニア州エメリービル)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil Aまたは他のサポニン画分、モノホスホリルリピドA、及びアブリジンリピド-アミンアジュバントが含まれる。ワクチンに含まれ得る他の免疫調整剤には、例えば、1つ以上のインターロイキン、インターフェロン、または他の既知のサイトカインが含まれる。
【0070】
アジュバント組成物の投与の経路には、非経口、経口、口鼻、経鼻、気管内、局所、皮下、筋肉内、経皮、皮内、腹腔内、眼球内、静脈内、舌投与が含まれる。注射器、ドロッパー、無針注射デバイス、パッチ等を含む、任意の好適なデバイスが、組成物を投与するために用いられ得る。使用のために選択された経路及びデバイスは、アジュバントの組成物、抗原、及び対象に依存し、当業者は周知である。
【0071】
FMDの高い感染性に鑑みて、FMDの発症を含有し、かつ/または除去するために行う必要がある対策は、例えば、アメリカ合衆国農務省等の規制当局によって規制され、かつOIE(国際獣疫事務局)等の国際機関によって承認されている。対策は、動物の移動の停止、乳、肉、皮等を含む動物製品の移動に対する有用な防除、抜き打ち政策(罹患した群の動物、及び適切な場合、動物間の直接接触により、または病原体との関節接触により感染を被った他の群の動物の屠殺)を含み得るが、これらに限定さない。隣接する群の動物は、ワクチン接種を受けた後に屠殺されることが多い。
【0072】
発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載した一定の免疫原性組成物が、感染後28日より長期間、FMDの存在または出芽として定義される持続を防ぐことを発見した。ある特定の実施形態において、かかる免疫原性組成物が、抗原成分及びアジュバント成分を含み、アジュバント成分が、油相を含有するエマルションを含み(または、それから本質的になる、またはそれからなる)、かかる油相が、少なくとも50v/v%の免疫性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分が、少なくとも6μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含む。。
【0073】
ある特定の実施形態において、抗原は、6~20μg/用量のFMDウイルス、例えば、8~20、10~20、12~20、14~20、16~20、18~20、6~10、6~12、6~18、8~12、または8~10μg/用量のFMDウイルスに相当する量で存在し得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150μg/用量であり得る。ポリカチオン性高分子は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150mg/用量の量で存在し得る。
【0074】
したがって、本発明はまた、抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物を感染前の反芻動物に投与することを含む、FMDに感染した反芻動物のFMD持続の頻度を低減する方法を提供し、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み(または、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる)、油相は、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量の量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分は、少なくとも6μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD(口蹄疫)抗原を含む。
【0075】
異なる実施形態において、抗原の量は、6~20μg/用量のFMDウイルス、例えば、8~20、10~20、12~20、14~20、16~20、18~20、6~10、6~12、6~18、8~12、または8~10μg/用量のFMDウイルスに相当し得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150μg/用量であり得る。ポリカチオン性高分子は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150mg/用量の量で存在し得る。
【0076】
免疫原性組成物の反芻動物への投与(例えば、ウシ、ヒツジ、ラクダ等)は、群管理の実施の変更を可能にする。ある特定に実施形態において、群のワクチン接種を受けたメンバーは、FMDウイルスとの接触が疑われた後に屠殺されない。
【0077】
代替的な(またはさらなる)実施形態において、ワクチン接種を受けた動物が、より短時間、隔離状態にされる。したがって、ある特定の実施形態において、FMDとの接触が疑われる動物が、30日未満、例えば、28日間または29日間、隔離状態にされる場合がある。
【0078】
さらに、封じ込め領域としてのエリアの指定は、通常、30日以上の封じ込め領域からの動物または動物製品の移動の禁止という厳しい制限を意味している。したがって、ある特定の実施形態において、FMDとの接触が疑われる動物は、FMDとの接触が疑われるものから30日未満以内に、例えば、28日または29日以内に、封じ込め領域から移動される場合がある。
【0079】
抗原成分が、例えば、上に記載したように、遺伝子操作されたFMD抗原を必要とする実施形態において、感染動物からワクチン接種を受けたものを識別することが可能である。したがって、さらなる実施形態において、群を管理する方法(または、FMDに感染した反芻動物のFMD持続の頻度を低減する方法)。
【0080】
つまり、ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、抗原成分及びアジュバント成分を含み、アジュバント成分は、油相を含有するエマルションを含み(または、本質的にそれからなる、もしくはそれからなる)、油相が、少なくとも50v/v%の免疫原性組成物、75~200μg/用量の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び75~200mg/用量のポリカチオン性高分子を含み、抗原成分が、少なくとも6μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含み、抗原成分が、群管理に使用され得る、少なくとも6μg/用量のFMDウイルスに相当する量のFMD抗原を含み、FMDとの接触が疑われる場合に、群のワクチン接種を受けたメンバーは、接触が疑われた後0~30日間屠殺されず、かつ/または検疫され、かつ/または接触が疑われる30日以内に感染構内の外に移動される。
【0081】
異なる実施形態において、抗原の量は、6~20μg/用量のFMDウイルス、例えば、8~20、10~20、12~20、14~20、16~20、18~20、6~10、6~12、6~18、8~12、または8~10μg/用量のFMDウイルスに相当し得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150μg/用量であり得る。ポリカチオン性高分子は、例えば、75~100、75~125、75~150、75~150、100~200、100~150、125~200、125~175、または125~150mg/用量の量で存在し得る。
【0082】
本発明は、以下の非限定的な例においてさらに説明されるであろう。
【実施例
【0083】
実施例1.抗原の調製
2つの方法を使用して中空糸濾過及びPEG沈殿を調製した。
PEG(ポリエチレングリコール)沈殿の方法は、当該技術分野において知られている。簡潔に言えば、BHK-21細胞をFMDウイルスに感染させた。次に(24~36時間後)、凍結溶解によって細胞を溶解させ、低速遠心分離(500xg)によって細胞溶解物を細胞残骸から浄化させた。構造的及び非構造的タンパク質の両方を含有する上澄みに、PEG(8w/v%)を加えた。混合物を4℃で12~18時間培養した。この培養中、FMDV粒子をPEGと関連付けた。16,000xgの遠心分離、ならびにPEG及びウイルスを含有した沈殿ペレットの採取によって、抗原を回収した。細胞及びウイルスの非構造タンパク質を含有した上澄みを捨てた。次に、ウイルス粒子が結合したペレットを少量の緩衝液で洗浄してPEGからFMDV粒子を溶出させた。
【0084】
本明細書に記載したさらなる方法は、FMDV培養の上澄みの中空糸濃度に基づいている。本方法のステップは、まず、細胞残骸及び大きい材料を培養(FMDウイルスに感染し、かつ凍結溶解によって溶解したBHK-21細胞)から除去する。培養材料を、10μmのカプセルフィルタ、4.5μmのカプセルフィルタを通して、次に最後に0.8μm/0.2μmのフィルタを通して連続的に圧送した。次に、0.01μm未満の粒子が膜を通って流動することを可能にする中空糸限外濾過カートリッジを用いて、この濾液を濃縮した。FMDV粒子及び多数の非構造的タンパク質がカラム回路内に残っていると同時に、液体及びより小さいタンパク質は、膜を通して廃棄物へと流れる。濃縮物が所望の体積、通常、10倍の濃度に達するまで、カラム回路を走行させた。
【0085】
図1は、PEG沈殿抗原と中空糸濃縮抗原との間の質の差を図示しているウェスタンブロットである。中空糸濃縮抗原は、3Dタンパク質、最大FMDV非構造的タンパク質、及びカプシドタンパク質(構造的タンパク質)に対する特異的な抗体を用いたウェスタンブロット染色によって本図に示すように、大量の構造的及び非構造的タンパク質を含有する。対照的に、PEG沈殿抗原(レーン9)は、構造的タンパク質を含有するが、検出可能なレベルの3Dタンパク質は含有していなかった。
実施例2.TXOでアジュバントされたFMDワクチンの効果
動物及び試料の採取
180~230kgの体重の生後6~8カ月のホルスタイン種去勢ウシを本研究に使用した。動物は、0日で採取した血清試料から後に判定されたように、ワクチン接種の前に、3D ELISA検査によって判定されたように、FMDV-反応性抗体を含まなかった。BSL-3-Ag動物検査施設の1つの部屋に、28匹すべての動物を集めた。完全な食糧ペレットまたはアルファルファキューブを、適宜入手可能な水及び塩ブロックと共に動物に給餌した。0日の前に5日間、動物を施設に順応させた。Bovi-Shield GOLD(登録商標)5、Micotil(登録商標)300、Liquamycin(登録商標)LA-200(登録商標)、及びDectomax(登録商標)により、動物を予め治療した。連続した耳タグ番号を有する動物の群(各々、n=4)を治療群に割り当てた。
【0086】
ワクチン接種後、有害事象は報告されなかった。
0日(ワクチン接種前)、4日、7日、14日、21日(攻撃前)、24日、28日、31及び42日で、血清試料を得るための血清分離装置の血液チューブをすべての動物から回収した。血清中和法でFMDVに対する中和抗体の存在について検査するまで(源泉の50%で同族FMDVの100TCID50を中和させるために最後の血清希釈の逆数として報告される)、または抗3Dpol反応を研究するために(競合する酵素結合免疫吸着検査法により)、血清試料を凍結状態にした。
【0087】
OIE(「Manual of Diagnostic Tests and Vaccines FOr TerREstRIal Animals」)が推奨するように、ワクチン接種を受けたウシのワクチンの有効性に対する攻撃は、皮内舌(IDL)経路による針注射によるものであった。ワクチン接種後21日で、すべてのワクチン接種済み及び未接種の動物に、2,500BTID50/0.1mlを有する0.1ml/各の4回の接種として分割された同族のFMDV A24クルゼイロの10,000BTID50(50%のウシ亜科の動物の舌の感染用量)を有するIDLを接種した。すべての動物が、攻撃後10日間従わされ、熱、鼻汁、唾液分泌、食欲減退、及び/または歩行困難が発現する臨床疾患の発症を検証した。21日(接種前)及び24日、28日ならびに31日で鎮静剤(工程の持続時間に対して胸を地面につけて腹ばいになる姿勢を維持するように、0.22mg/kgでキシラジンを与えられたIM)により、蹄の小嚢の存在に対する臨床評価を行った。鎮痛剤を、2mg/kgの用量で、トラゾリン、IVと入れ替えた。
ワクチン
実施例1に記載するように、抗原を調整した。抗原貯蔵液は、中空糸濾過(プレップA)によって調製された5.51μg/mlの抗原、またはPEG沈殿(プレップB)によって調製された10.26μg/mlの抗原を含有した。
【0088】
動物に投与された免疫原性組成物の詳細を、表1に提供する。各群は、4匹の動物を含有した。
【0089】
【表2】
【0090】
群T02~T06の免疫原性組成物が、ワクチン接種の日に均質化され、0日の動物に投与された。
ウイルスの単離及び定量的なrRT-PCRの両方を用いて判定されたウイルス(FMDVウイルスRNA及び/または感染FMDVのいずれか)の存在または不存在として、持続を測定した。定量的なrRT-PCRに対して使用されたプライマは、次の通りであった。
正方向(配列番号28):GACAAAGGTTTTGTTCTTGGTCA
逆方向(配列番号29):TGCGAGTCCTGCCACGGA
Taqmanプローブ:(FAMレポータ、TAMRA消光剤、配列番号30)TCCTTTGCACGCCGTGGGAC
FMDVに対する血清中和価を表2に要約する。
【0091】
【表3】
【0092】
a,b,c各日内の同じ文字を有する治療群は、アルファ=0.05で有意に異ならない。
蹄の小嚢の存在(1)または不存在(0)として、FMDVの兆候を採点し、すなわち、1個の蹄に対する小嚢の存在が、点数1を生じ、2個のみの蹄に対する小嚢の存在が、点数2を生じ、すべての4個の蹄に対する小嚢が、点数4を生じた。いったん動物が点数4を得ると、研究の持続時間の間、点数4を有するものとみなされた。
【0093】
各蹄に対する、かつ試験の各日に対する個々の動物の点数を表3に示している。表4では、任意の蹄が陽性であるかどうかに従った各動物の点数の要約を示している。
【0094】
【表4-1】
【0095】
【表4-2】
【0096】
*この動物に対する全ての蹄が、すべての4個の蹄について小嚢を予め有したため、「1」として自動的に点数化した。
【0097】
【表5】
【0098】
*この動物に対する全ての蹄が、すべての4個の蹄について小嚢を予め有したため、「はい」として自動的に点数化した。
T01(陰性対照)のすべての動物が、24日に始まる蹄の小嚢を示した。28日及び31日に、小嚢を有するすべてのT01動物にすべての蹄が発見された。対照的に、T03(PEGによる2μg用量のFMDV)を除くすべての群に対して完全な保護(すなわち、蹄の小嚢がない)が観察され、1匹の動物(R14-77)が24日、28日、及び31日に点数1を得た。検査された免疫原性組成物の持続感染に対する効果を表5及び表6に図示している。攻撃後28日後(表5及び表6で示すように、ワクチン接種後49日)の食道咽頭音流体内の感染ウイルスまたはウイルスRNAの存在として、持続が定義された。表5では、プロパング試料からのmL当たりFMDV RNA複製番号の個々の動物及び治療群の逆変換された最小二乗手段に対する定量的なrRT-PCRの結果を示している。表6では、プロパング試料ウイルス単離検査の結果を陽性または陰性のいずれかとして報告した。表5の1.87未満の値を、アッセイの検出の制限に起因した「陰性」として点数化した。
【0099】
【表6-1】
【0100】
【表6-2】
【0101】
【表7】
【0102】
1群(生理食塩水の対照)に対して、3匹の動物が、rRT-PCRによるFMDVに対して少なくとも1回陽性であり、2匹の動物が、ウイルス単離に対して常に陽性であった。
【0103】
T02群では、rRT-PCRによってFMDVを保有する動物は発見されなかったが、単一の時点のみで(42日、攻撃後21日)ウイルス単離アッセイによって陽性であるが、その後(持続感染の不存在を示す49日及び52日)陰性である1匹の動物(R14-74)が発見された。T02の他の動物は、38日以上で、rRT-PCRによって、またはウイルス単離アッセイによってのいずれでも検出可能なFMDVを保有しなかった。
【0104】
T03群では、1匹の動物(R14-79)が、FMDV感染から完全に保護され、2匹の動物が、検査日の3日または4日にFMDVの存在を示し(rRT-PCRによって、またはウイルス単離アッセイによってのいずれでも)、1匹の動物(R14-77)が、38日及び42日に検査の両方によってFMDVの存在を示したが、その後は示さなかった。
【0105】
T04群では、すべての4匹の動物が、52日に渡る1つまたは両方の検査によってFMDVの持続を示した。
T05群では、1匹の動物(R14-62)は、rRT-PCRによってだがウイルス単離によってではなく38日にのみウイルスの存在を示し、その後の検査によってはいずれもウイルスは検出されなかった。FMDVは、T05群の他の3匹の動物に対する任意の時間でのrRT-PCRによって、またはウイルス単離アッセイによってのいずれでも検出されなかった。
【0106】
T06群では、2匹の動物が、持続から完全に保護されると同時に、他の2匹は、試験されたすべての時点で陽性のrRT-PCRまたはウイルス単離であった。
T07群では、4匹の動物のうちの3匹が、完全に保護されると同時に、1匹の動物(R14-71)は、各時点でrRT-PCR及びウイルス単離の両方に対して陽性であった。
【0107】
表7は、持続実験の結果を要約する。動物は、neiTherrRT-PCRまたはウイルス単離アッセイが49日(攻撃後28日)及び52日(攻撃後31日)の両方についてFMDVを検出した場合に、非持続とみなされた。
【0108】
【表8】
【0109】
8μgの抗原を投与された8匹の動物(群T02及びT05)のうちの2匹のみが、これまでウイルスの存在を示し、それは1日のみ(各々37日及び42日についての1日)についてであった。これらの群の他の動物は、完全に保護された。感染後28日及び31日の両方についてウイルスの存在が検出されなかったことを鑑み、8μgの抗原を投与された動物のいずれも、持続的に感染したものとみなされた。2μgの抗原を投与された8匹の動物(群T03及びT06)のうちの5匹が、ウイルス持続を示した。0.5μgの抗原を投与された8匹の動物(群T04及びT07)のうちの4匹が、持続を示した。
【0110】
総合すれば、これらの結果は、8μgの抗原を投与された動物のFMDVウイルス持続からの保護を示しており、中空糸濾過による抗原の精製がPEG沈殿と比較して有益であるようである。2つの抗原製剤間の主な差は、中空糸濾過製剤内の構造的タンパク質に加えて非構造的タンパク質が存在していることである。したがって、理論によって束縛されるものではないが、表8で図示するように、抗原が構造的及び非構造的タンパク質の両方、具体的には3Dタンパク質を含有するワクチンによって誘発された免疫応答の質は、予防的なFMDV持続においてより有用であるようである。
【0111】
【表9】
【0112】
本明細書で引用されるすべての刊行物(特許刊行物及び非特許刊行物の両方)は、本発明が関連する当業者の技術の水準を示す。これらの刊行物はすべて、個々の刊行物が各々参照により組み込まれたものとして明確かつ個別に示された場合と同じ程度に参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0113】
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
抗原成分及びアジュバント成分を含む免疫原性組成物であって、
a)前記アジュバント成分が、油、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及び
i)ポリカチオン性高分子、若しくは
ii)アルミニウム源、のうちの少なくとも1つ、を含有するエマルションを含み、
b)前記抗原成分が、0.5~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルス組成物を含む、
前記免疫原性組成物。
[態様2]
a)前記アジュバント成分が、前記ポリカチオン性高分子を含み、
b)前記ポリカチオン性高分子が、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランである、
態様1に記載の免疫原性組成物。
[態様3]
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、CpGを含む、態様1または態様2に記載の免疫原性組成物。
[態様4]
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、配列番号8の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、態様1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様5]
前記油相が、前記組成物の最大80v/v%の量で存在する、態様1~4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様6]
前記油相が、前記組成物の50.01v/v%~55v/v%を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様7]
1つ以上の乳化剤をさらに含む、態様1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様8]
前記アジュバント成分が、配列番号8と、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランとを含む、態様1~7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様9]
前記DEAEデキストランが、6~200mg/用量の量で存在する、態様1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様10]
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、6~200μg/用量の量で存在する、態様1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様11]
前記FMDウイルス組成物が、FMDウイルス クルゼイロ株の調製物である、態様1~10のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様12]
前記FMDウイルス クルゼイロ株が、遺伝子操作されている、態様11に記載の免疫原性組成物。
[態様13]
前記FMDウイルス クルゼイロ株が、リーダーコード領域(LL)の欠損を含有する、態様12に記載の免疫原性組成物。
[態様14]
前記FMDウイルス クルゼイロ株が、ウイルス非構造3Dpol及び3Bタンパク質のうちの1つまたは両方において導入された陰性抗原マーカーを含有する、態様12または13に記載の免疫原性組成物。
[態様15]
前記FMDウイルス クルゼイロ株が、異種カプシドタンパク質を含有する、態様12~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様16]
クルゼイロ以外の株が、Asia1、Turkey06、O1Campos、C3Indaial、及びA2001-Argentinaから選択される、態様15に記載の免疫原性組成物。
[態様17]
前記抗原成分が、0.5~6μg/用量のFMDウイルスを含む、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様18]
前記抗原成分が、0.5~4μg/用量のFMDウイルスを含む、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様19]
前記抗原成分が、0.5~2μg/用量のFMDウイルスを含む、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様20]
前記抗原成分が、0.5~1.5μg/用量のFMDウイルスを含む、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様21]
前記FMDウイルス組成物が、構造及び非構造FMDタンパク質の両方を含む、態様1~20のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様22]
態様1~21のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与することを含む、前記動物におけるFMDを治療または予防する方法。
[態様23]
群を管理する方法であって、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を前記群の各メンバーに投与することを含み、前記組成物において、
a)前記抗原成分が、6~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルス組成物を含み、
b)前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、75~200μg/用量を含み、
c)前記ポリカチオン性担体が、75~200mg/用量を含み、
さらに、FMD感染との接触が疑われる場合に、前記群の前記ワクチン接種を受けたメンバーが屠殺されない、方法。
[態様24]
群を管理する方法であって、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を前記群の各メンバーに投与することを含み、前記組成物において、
a)前記抗原成分が、6~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルス組成物を含み、
b)前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、75~200μg/用量を含み、
c)前記ポリカチオン性担体が、75~200mg/用量を含み、
さらに、FMD感染との接触が疑われる場合に、前記群の前記ワクチン接種を受けたメンバーが、0~30日間検疫される、方法。
[態様25]
群を管理する方法であって、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を前記群の各メンバーに投与することを含み、前記組成物において、
a)前記抗原成分が、6~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルス組成物を含み、
b)前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、75~200μg/用量を含み、
c)前記ポリカチオン性担体が、75~200mg/用量を含み、
さらに、FMD感染との接触が疑われる場合に、前記群の前記ワクチン接種を受けたメンバーが、前記感染構内の外に移動される、方法。
[態様26]
FMDに感染した反芻動物のFMD持続の頻度を低減する方法であって、態様1~16のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を前記感染前の前記反芻動物に投与することを含み、前記組成物において、
a)前記抗原成分が、6~10μg/用量のFMD(口蹄疫)ウイルス組成物を含み、
b)前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、75~200μg/用量を含み、
c)前記ポリカチオン性担体が、75~200mg/用量を含む、方法。
[態様27]
前記群の前記ワクチン接種を受けたメンバーが、屠殺されず、かつ0~30日間検疫される、態様23~26のいずれか一項に記載の方法。
[態様28]
前記群が、ウシ亜科の動物の群である、態様23~27のいずれか一項に記載の方法。
[態様29]
前記FMDウイルス組成物が、中空糸濾過によって調製される、態様22~28のいずれか一項に記載の方法。
本明細書において本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態が本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、例示の実施形態に多くの修正を加えることができ、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の構成を考案することができることを理解されたい。
図1