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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ケーブル移動装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20220729BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220729BHJP
   B25J 9/02 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H02G11/00
B25J19/00 F
B25J9/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018029120
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019146386
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】工藤 有莉
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠司
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-004563(JP,A)
【文献】特開2017-175816(JP,A)
【文献】特開2016-201928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B25J 19/00
B25J 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のケーブルの往路部が台部に固定されて復路部が往復移動するスライダに固定されて往復移動し、且つ前記ケーブルの一部がU字状に折り返された折り返し部を有するケーブル移動装置であって、
前記ケーブルの復路部から前記折り返し部にかけた外周側に配設され、前記ケーブルの動きに即して前記ケーブルと共に往復移動するケーブルガイドを備え、
前記ケーブルガイドの復路側の端部は前記スライダに固定され、
前記ケーブルガイドの往路側には、前記ケーブルガイドが往路側に移動する際に、前記ケーブルガイドの往路側を収納する収納部が設けられ、
前記収納部は、前記ケーブルの折り返し部が最も往路側にある位置よりも往路側に設けられていること、
を特徴とするケーブル移動装置。
【請求項2】
前記ケーブルガイドは前記ケーブルを台部側に向けて押え付けること、
を特徴とする請求項1に記載のケーブル移動装置。
【請求項3】
前記収納部は、前記ケーブルの前記復路部の延長線上もしくは延長線上よりも前記台部側に配置されること、
を特徴とする請求項に記載のケーブル移動装置。
【請求項4】
前記収納部は、前記ケーブルガイドの往路側に設けられて前記ケーブルガイドを復路側に案内するガイド壁と、台部の下方に設けられた溝部である請求項1に記載のケーブル移動装置。
【請求項5】
前記収納部は、前記ケーブルの折り返し部が最も往路側にある位置よりも往路側に設けられ、前記ケーブルガイドの往路側の端部を巻き取る巻き軸である請求項1に記載のケーブル移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力又は制御信号を伝送するケーブルを走行させるケーブル移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直線上を移動する直動部(スライダ)に対して電力線及び各種信号線を引き込む場合、フラットケーブル型或いはリボンケーブル型と呼ばれるケーブルが引き回される。直動部は、例えばロボット分野においては作業ツール、作業ツールを他軸方向に移動させるアーム、作業ツールやアームが取り付けられるスライダ等である。フラットケーブル型或いはリボンケーブル型と呼ばれるケーブルは、電力線及び信号線を横一列に並べて融着して成る。
【0003】
図14は、このケーブル移動装置がカバー等のハウジング内に収容されている状態を示す側面図である。図14に示すように、ケーブル3は可撓性を有し、U字形状又はJ字形状に折り返されている。ケーブル3の一端は不動部分に固定されている。そして、ケーブル3は、この固定端から直動部の移動方向に沿って延設された往路部31と、途中でロール状に折り返される折り返し部32と、往路部31とは反対に戻って終端が直動部又は直動部と共に直線状に移動する箇所に取り付けられる復路部33とを備えている。即ち、ケーブル3の他端は可動部となっている。
【0004】
ケーブル3の折り返し部32は180度の弧を描く曲率を有する。復路部33の終端側は直線状に延びる。しかし、復路部33の前半には、折り返し部32の影響によりハウジングの一面側へ膨らみが残る。この膨らみは復路部33の終端に向けて終息していく。復路部33に発生している膨らみ箇所を膨出部34と呼ぶ。
【0005】
ケーブル3を収容しているハウジングの天板22と復路部33との距離が短くなると、折り返し部32の終端から復路部33の前半に生じている膨出部34がハウジングである天板22に届いてしまうことがある。すると、ケーブル3が走行するとき、復路部33が天板22に擦りながら走行してしまい、ケーブル3の損耗に繋がる。ケーブル3に損耗の虞があると、最悪の場合は断線や感電等が懸念されるため、ケーブル3の長寿命化を図ることができない。
【0006】
そこで、ケーブル3の復路部33にはグリース等の潤滑剤が塗布される。潤滑剤によってケーブル3と天板22との摩擦係数が低減される。また、復路部33と天板22との間に、該復路部33の走行方向に沿って複数のローラを配設することも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-60942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
潤滑剤を塗布する方式では、潤滑剤を補充するメインテナンス作業が必要となる。メインテナンス作業が入ると、ケーブル移動装置の稼働を停止させなくてはならず、ケーブル移動装置の稼働率が低下する。復路部33と天板22との間にローラを配設すると摩擦係数は減少するが、ゼロにはならない。そのため、ローラを配設したとしても、復路部33に潤滑剤を塗布する必要があり、メインテナンス作業の間隔は拡がるものの、メインテナンス作業自体を省くことは難しく、ケーブル移動装置の稼働率低下は避けられない。
【0009】
しかも、復路部33上にローラを配設する方式では、潤滑剤の定期的な補充間隔は延びるものの、ローラ配置分のスペースが嵩むため、ケーブル走行装置が大型化してしまう。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、潤滑剤を補充するメインテナンス作業の間隔を引き延ばし、或いは潤滑剤を補充するメインテナンス作業を不要としても、ケーブルの擦れによる損耗を抑制できるケーブル移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係るケーブル移動装置は、可撓性のケーブルの往路部が台部に固定されて復路部が往復移動するスライダに固定されて往復移動し、且つ前記ケーブルの一部がU字状に折り返された折り返し部を有するケーブル移動装置であって、前記ケーブルの復路部から前記折り返し部にかけた外周側に配設され、前記ケーブルの動きに即して前記ケーブルと共に往復移動するケーブルガイドを備えること、を特徴とする。
【0012】
前記ケーブルガイドは前記ケーブルを台部側に向けて押え付けるようにしてもよい。
【0013】
前記ケーブルガイドを収納する収納部を更に備えるようにしてもよい。
【0014】
前記収納部は、前記ケーブルの前記復路部の延長線上もしくは延長線上よりも前記台部側に配置されるようにしてもよい。
【0015】
前記ケーブルガイドは、前記スライダに固定されようにしてもよい。
【0016】
前記収納部には、前記ケーブルガイドを巻回する巻き軸を備えるようにしてもよい。
【0017】
前記収納部に、前記ケーブルガイドを収納するための前記巻き軸を駆動する駆動部を、さらに備えるようにしてもよい。
【0018】
前記収納部の前に、前記ケーブルガイドを前記収納部に収納する方向に移動させるための駆動部を、さらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケーブル移動装置が移動する際のケーブルをケーブルガイドが案内することで、移動の際の負荷等により折り返し部やその付近が膨らむなどのケーブルの変形を防止することができる。よって、ケーブル移動装置が移動しても、ケーブルとケーブル移動装置を収納するカバー等のハウジングが接触することはない。加えて、ケーブルガイドとケーブルとの相対的な位置関係は不変となるので、ケーブルガイドとケーブルとが擦れ合うこともない。したがって、潤滑剤を塗布しなくともケーブルの損耗を抑制可能であり、仮に潤滑剤を塗布したとしても、その潤滑剤の補充間隔を極めて長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ロボットの全体構成を示す斜視図である。
図2】Y軸アームの内部構造を示す正面側分解斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るY軸アームの内部構造を示す背面側斜視図である。
図4】第1の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。
図5】ケーブルガードの帯幅方向に沿った断面図である。
図6】第2の実施形態に係るY軸アームの内部構造を示す斜視図である。
図7】第2の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。
図8】第3の実施形態に係るY軸アームの内部構造を示す斜視図である。
図9】第3の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。
図10】第4の実施形態に係るY軸アームの内部構造を示す斜視図である。
図11】第4の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。
図12】変形例1に係り、Y軸アームの内部構造を背面側から見た背面側斜視図である。
図13】変形例2に係り、Y軸アームの内部構造を背面側から見た背面側斜視図である。
図14】ハウジング内に収容されたケーブルの従来の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るケーブル移動装置の各実施形態について、ロボットに本発明を適用した場合を例示して、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
(構成)
図1はロボットの全体構成を示す斜視図である。図1に示すように、ロボット1は、ベース11、X軸テーブル12、Y軸アーム2及びZ軸アーム13を備える。X軸は、ベース11が拡がる面と平行な一軸であり、例えばロボット1の前後方向である。Y軸は、ベース11が拡がる面と平行でX軸と直交する方向であり、例えばロボット1の左右方向である。Z軸は、X軸及びY軸と直交する方向であり、例えばロボット1の高さ方向である。
【0023】
X軸テーブル12はベース11上に配置され、X軸方向及びY軸方向に拡がる載置平面を有し、X軸方向に直線移動する。ベース11の隅には支柱14が立てられており、Y軸アーム2は支柱14に支持される。Y軸アーム2のハウジングはY軸方向に長い箱体形状を有する。このY軸アーム2は片側が支柱14に片持ち状に固定され、突端21が少なくともX軸テーブル12の上方を過ぎるまで、X軸テーブル12の載置平面と平行にY軸方向に延長されている。Z軸アーム13はY軸アーム2に支持され、X軸テーブル12に向かって、X軸テーブル12の載置平面と直交してZ軸方向に延長されている。
【0024】
処理対象のワークはX軸テーブル12に載置される。作業ツールはZ軸アーム13に着脱自在に取り付けられ、X軸テーブル12上のワークに向く。ワークと作業ツールはX軸テーブル12とY軸アーム2とZ軸アーム13によって移動し、位置合わせされる。そしてロボット1は、作業ツールに電力を供給し、また制御信号を送出し、作業ツールは制御信号に応答してワークを処理する。作業ツールは、典型的には、電動ドライバ、溶接機、ドリル、塗布装置、半田ゴテ、ハンドラ又はカメラである。塗布装置とカメラの両方がZ軸アーム13に設置される等、2種以上の作業ツールが併用されることもある。
【0025】
即ち、X軸テーブル12とY軸アーム2とZ軸アーム13は、各々がワーク、連結されるアーム又は作業ツールを直動させる直動部(スライダ)を備える。そして、Y軸アーム2は、作業ツールとともに、Z軸アーム13も直動させる。つまり、Z軸アーム13を駆動させるための電源ケーブルや信号ケーブルも含めて直動させる必要がある。したがって、図2に示すように、本実施例において、Y軸アーム2内にケーブル移動装置26が収容されている。図2は、Y軸アーム2の内部構造を示し、正面側から見た分解斜視図である。ケーブル移動装置26は、ハウジングである正面カバー234、サイドカバー235、天面カバー236によって覆わる。ベースプレート231は、Y軸方向に長い底面232と該底面232から立ち上がる支柱側端面とを一体化して成り、ケーブルの一端を固定している台部233を備えており、ケーブル移動装置26の基台(ベース)である。正面カバー234はY軸方向に長く、Y軸アーム2の正面を覆う。サイドカバー235は突端21となる面を担う。天面カバー236は、Y軸方向に長い天板22と背面237とが一体化されて成る。
【0026】
ベースプレート231の底面232には、同径の一対のプーリ241が両端面に分かれて設置されている。両プーリ241はY軸方向に離間し、X軸方向及びZ軸方向の位置は一致している。プーリ241のリング中心を通る軸はZ軸方向に沿う。片側のプーリ241は回転モータ242の軸に固着している。回転モータ242の本体は支柱14内に収容され、支柱14上面から回転軸をY軸アーム2内に突出させている。片側のプーリ241は、この回転軸に嵌っている。
【0027】
一対のプーリ241間には無端ベルト243が架設されている。無端ベルト243にはスライダ25が固着している。スライダ25は、Y軸方向に動く直動部である。回転モータ242の駆動により無端ベルト243がプーリ241間の軌道を走行し、スライダ25はY軸方向に移動する。ベースプレート231には、無端ベルト243と平行なレール251が敷設されている。スライダ25はレール251に摺動可能に嵌合し、無端ベルト243に従ってレール251に沿って摺動する。
【0028】
正面カバー234のZ軸方向の長さ、即ち正面カバー234の全高は、Y軸アーム2の全高よりも低い。そのため、正面カバー234とベースプレート231との間、及び正面カバー234と天面カバー236との間には、Y軸方向に延在するスリットが開口する。スライダ25は、両端が両スリットから突出するように屈曲し、更にY軸アーム2から突き出た端部は、フランジ状に直角に屈曲している。このフランジにZ軸アーム13が固定される。そのため、スライダ25のY軸方向の移動によって、Z軸アーム13もY軸方向に移動する。
【0029】
図3は、天面カバー236とサイドカバー235と正面カバー234を外して、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図である。ただし、突端21と天板22は説明のため点線を用いて図3上に図示している。図3に示すように、Y軸アーム2内にはケーブル3が配設されている。ケーブル3はフラットケーブル型或いはリボンケーブル型であり、作業ツール及びZ軸アーム13に至る電力供給線及び信号伝送線のうちのY軸アーム2の区間を内包し、これら電力供給線及び信号線を横一列に並べて融着して成る。
【0030】
Y軸アーム2内において、ケーブル3の始端は、ベースプレート231の底面232から一段高いY軸方向に長い台部233に、固定側締結具35で固定されており、不動である。ケーブル3は可撓性を有してU字形状又はJ字形状に折り返されている。詳細には、ケーブル3は、支柱14側からY軸アーム2の突端21側へ向けてベースプレート231の台部233に沿って延設された往路部31と、スライダ25の下方を通り過ぎてから途中で天板22側に膨らむようにロール状に折り返された折り返し部32と、折り返し部32から支柱14側へ戻って終端がスライダ25に至る復路部33とにより成る。
【0031】
復路部33の終端は固定具36によってスライダ25に直接又は間接的に固定されており、スライダ25と共にY軸方向に移動する。即ち、前述したようにY軸アーム2はケーブル3を内部に収容し、ケーブル3を内部で取り回すケーブル移動装置でもある。固定具36はベースブラケット361と移動側締結具362により構成される。ベースブラケット361は、一辺がスライダ25に固定され、対向辺がケーブル3の配設位置まで延在する。移動側締結具362は、螺子留め等により、ベースブラケット361に至るケーブル3をベースブラケット361に締め付ける。
【0032】
Y軸アーム2のハウジング内にはケーブルガイド4が設けられている。ケーブルガイド4は、長尺の帯状の板であり、例えばケーブル3と同幅で可撓性を有する。このケーブルガイド4は、復路部33と天板22との間に介在し、復路部33に沿って平行に延びる。ケーブルガイド4の先端は移動側締結具362と一体となっており、ケーブルガイド4の先端はスライダ25に固定されている。ケーブルガイド4の他端は、折り返し部32の終端、つまり折り返し部32と復路部33との境目を通り越して突端21側へ延設される。このケーブルガイド4は、ケーブル3の復路部33の膨出部34(図14参照)が天板22に接触することを阻止するものである。
【0033】
また、Y軸アーム2のハウジング内には更にガイド壁7が設けられている。ガイド壁7は、折り返し部32が突端21に最大限接近した場合よりも更に突端21側に位置し、例えばサイドカバー235と一体である。このガイド壁7は、半円状の板面を有し、凹面側をスライダ25側に向けて設置されている。半円状の板面は、復路部33の延び平面を始端として、ケーブル3の台部233まで滑らかに湾曲している。ケーブルガイド4は、スライダ25からガイド壁7に向かって延び、このガイド壁7に沿って半円状に曲げ込まれて支柱14側へ折り返されている。したがって、このガイド壁7と台部233の下方に設けられた溝部238が本実施例における収納部あたる。
【0034】
(作用)
以上のY軸アーム2内の動きは次の通りである。Y軸アーム2に回転軸を突入させた回転モータ242が駆動すると、回転軸に固着したプーリ241が軸回転し、無端ベルト243が軌道に沿って旋回する。無端ベルト243の旋回により、無端ベルト243に固着したスライダ25はY軸方向に移動する。スライダ25が移動すると、スライダ25に固定されたケーブル3の終端がY軸方向に移動する。ケーブル3の終端が移動すると、ケーブル3の復路部33もY軸方向に移動する。
【0035】
このとき、ケーブルガイド4はケーブル3のY軸方向の移動を案内する。つまりケーブルガイド4はケーブル3の復路部33に対して天板22側から当接することで、ケーブル3が移動するときに膨出部34(図14参照)が発生することを防止、即ち規制する。即ち、ケーブル3の復路部33はケーブルガイド4によって阻まれて天板22に接触しない。従って、ケーブル3の復路部33はケーブルガイド4の介在により天板22と擦れ合うことはない。
【0036】
ここで、ケーブルガイド4の先端はスライダ25に固定されており、折り返し部32の終端、つまり折り返し部32と復路部33との境目を越えて延びている。即ち、ケーブルガイド4は、復路部33の全範囲に被さっており、復路部33の移動に関わらず、天板22との接触を阻止している。
【0037】
図4は、天面カバー236とサイドカバー235と正面カバー234を外して、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た側面図である。ただし突端21と天板22は、説明のため図4上に図示している。更に、図4(a)のスライダ位置に対し、距離A1だけスライダが動いた時のケーブル3やケーブルガイド4の位置関係の変化を(b)に示している。図4に示すように、ケーブルガイド4の先端はスライダ25に固定されているため、ケーブルガイド4は、スライダ25と同時に同方向に同量の距離A1だけ移動する。即ち、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4との相対的な位置関係は不変となっている。したがって、ケーブル3の復路部3はケーブルガイド4によりY軸方向に案内され、膨出部34(図14参照)が発生することはなく、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4は擦れ合う関係にはならない。従ってケーブル3の損耗は阻止される。
【0038】
ここで、図5はケーブルガイド4の帯幅方向に沿った断面図である。図5に示すように、ケーブルガイド4は、帯長手方向に延びる両長辺が反るように湾曲している。この反り形状によって、ケーブルガイド4の不撓性が向上し、スライダ25に固定されている片端にのみ、ケーブルガイド4の推進力を与えてもケーブルガイド4の撓みが抑制される。そのため、ケーブルガイド4は直線性を保ち続け、ケーブルガイド4の全範囲が、より確実にスライダ25と同時に同方向に同量の距離A1だけ移動する。即ち、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4とがより確実に相対的な位置関係不変を保ち易くなっており、ケーブル3の損耗はより確実に阻止されることとなる。
【0039】
また、ガイド壁7に目を向けると、ケーブル3の復路部33がY軸アーム2の突端21に向けて距離A1だけ進むと、ケーブルガイド4は、ケーブル3の復路部33と同量の距離A1だけ、ガイド壁7によって折り返されて支柱14側へ逃げる。反対に、ケーブル3の復路部33がY軸アーム2の突端21とは反対に距離A1だけ進むと、ケーブルガイド4は、ケーブル3の復路部33と同量の距離A1だけガイド壁7から脱してY軸アーム2の突端21とは反対側に距離A1だけ移動する。
【0040】
つまり、スライダ25側が距離A1移動すると、ケーブルガード4も距離A1移動する。図4(b)に示すように、移動したケーブルガード4の非固定端は、ガイド壁7により円弧状に折り返され、スライダの移動方向とは逆向きにA1移動し、台部233下部に設けられている溝部238(図3に記載)に収納される。したがって、ケーブルガイド4が突端21側に進行しても、Y軸アーム2のハウジングから突き出ることはないし、ケーブルガイド4がハウジング内に収まるようにY軸アーム2を大型化する必要もない。
【0041】
尚、ケーブル3の膨出部34が天板22に届くと、ケーブル3と天板22が擦り合い、ケーブル3の損耗に繋がるものであるから、ケーブルガイド4は、少なくとも天板22側へ膨らんでいる折り返し部32から復路部33の前半の領域に発生する膨出部34に対して天板22側から当接していればよい。膨出部34を潰すように押さえ付けて直線化すること、折り返し部32と復路部33の全域を押さえ込むことは必須ではない。
【0042】
(第2の実施形態)
ケーブル移動装置の第2の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
(構成)
図6は、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図であり、ケーブルガイド4に係る他の態様を示している。図6に示すように、ケーブルガイド4が復路部33と天板22との間に介在し、復路部33に沿って平行に延びる。ケーブルガイド4の先端は移動側締結具362と一体となっており、ケーブルガイド4の先端はスライダ25に固定されている。一方、折り返し部32がY軸アーム2の突端21側へ最大限進んだ位置よりも更に突端21側に、収納部として巻き軸62が設置されている。巻き軸62は図示しないコイルばねにより軸中心の回転駆動力を与えられ、ケーブルガイド4の他端はこの巻き軸62に固定されることにより、ケーブルガイド4の一部は巻き軸62に巻回される。
【0044】
ケーブルガイド4にはエンボス加工により一定間隔で凹部が形成されている。そして、Y軸アーム2内には、ケーブルガイド4の上面に周面で当接するローラ8が備えられている。ローラ8は、折り返し部32が突端21に最大限近寄る位置よりも更に突端21側に設置され、巻き軸62よりも支柱14寄りに位置している。このローラ8の胴部には、凹部と同じ間隔で凸部が形成されており、この凸部はケーブルガイド4の凹部と噛合している。
【0045】
ローラ8の軸方向の長さは、ケーブルガイド4の帯幅長さよりも長い。ローラ8の周面のうち、引き出し部52と当接していない箇所には、ロッド81が当接している。ロッド81は、ローラ8と直交して底面232から立ち上げられており、ローラ8とロッド81は互いに周面で当接し、当接箇所には互いに歯が刻設されている。このローラ8とロッド81は所謂ねじ歯車を構成している。ロッド81の他端は、突端21側のプーリ241と共通軸を有して接続されている。
【0046】
(作用)
図7は、第2の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。図7の(a)に示すスライダ位置に対し、距離A1だけスライダが動いた時の変化を(b)に示している。図7(a)及び(b)に示すように、スライダ25を走行させる回転モータ242が回転すると、無端ベルト243及びプーリ241を介して回転力がロッド81に伝達され、ローラ8が回転する。ローラ8の凸部とケーブルガイド4の凹部が噛み合い、ローラ8は、ケーブルガイド4の片側をY軸方向に移動させる。ローラ8は、スライダ25が突端21側へ距離A1だけ移動すると、スライダ25の移動量と同じ量の距離A1だけケーブルガイド4を走行させる。
【0047】
このように、ローラ8は、スライダ25がケーブルガイド4の一端を移動させると、ケーブルガイド4の他端をケーブルガイド4の一端の移動と同時同方向に同量だけ移動させる駆動部となっている。このローラ8によって、ケーブルガイド4には、復路部33を挟んで両側に推進力が付与される。そのため、ケーブルガイド4は撓み無く張り続けられる。そうすると、ケーブルガイド4は、直線性を維持してケーブル3の復路部33を押さえ付けることになり、ケーブル3の復路部33に発生する膨出部34が解消される。
【0048】
膨出部34が解消されると、スライダ25がY軸アーム2の突端21に向けて距離A1だけ進んだとき、復路部33全体もY軸アーム2の突端21に向けて、同時に同方向に同量である距離A1だけ進む。従って、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4との相対的な位置関係もより確実に不変となる。
【0049】
また、巻き軸62に目を向けると、巻き軸62は、ケーブルガイド4が突端21側へ進んだ分だけ、ケーブルガイド4を巻き取る。反対に、巻き軸62は、ケーブルガイド4がY軸アーム2の突端21から離れる方向に進むと、その進行距離と同量のケーブルガイド4を引き出す。換言すると、ケーブルガイド4は、Y軸アーム2の突端21へ向けて進んだ分だけ、先が巻き軸62に曲げ込まれて収納させられる。即ち、巻き軸62は、ケーブルガイド4を収納する収納部の他の例となる。
【0050】
尚、この第2の実施形態によると、駆動部であるローラ8を設けることで、収納部に起因するケーブルガイド4の剛性のトレードオフも解消できる。即ち、ケーブルガイド4にはケーブル3を天板22との接触から保護するために、ケーブル3の変形によりケーブルガイド4に生じる付勢力によって変形しないだけの剛性(厚み方向の剛性)が必要となる。
【0051】
一方、収納部によりケーブルガイド4を厚み方向に巻回可能にするためには、ケーブルガイド4の厚み方向の剛性を低くする必要がある。このトレードオフを解消するため、収納部よりもケーブル側にケーブルガイド4を収納するための駆動部を設け、駆動部と直動部が同期して動くことにより、駆動部と直動部間のケーブルガイド4は撓むことがなく、剛性が飛躍的に向上する。一方、駆動部を超え、収納部側に進んだケーブルガイド4は、巻き軸62からみると巻き軸62以外には支持されていないため、収納部による巻回が可能な低い剛性となる。
【0052】
(第3の実施形態)
ケーブル移動装置の第3の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1又は第2の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
(構成)
図8は、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図である。図8に示すように、Y軸アーム2内には、X軸方向に回転軸を延ばした回転モータ61が備えられる。回転モータ61は、折り返し部32がY軸アーム2の突端21側へ最大限進んだ位置よりも更に突端21側に設置されている。回転モータ61には巻き軸62が軸支されている。巻き軸62にはケーブルガイド4が巻回されている。尚、ケーブルガイド4の巻き出された先端はスライダ25に固定されている。
【0054】
(作用)
図9は、第3の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。図9の(a)に示すスライダ位置に対し、距離A1だけスライダが動いた時の変化を(b)に示している。この回転モータ61と巻き軸62は、ケーブルガイド4を収納する収納部、及びケーブルガイド4を収納方向に移動させる駆動部の他の態様である。図9の(a)及び(b)に示すように、巻き軸62は、ケーブル3の復路部33がY軸アーム2の突端21に向けて距離A1だけ進んだとき、回転モータ61の駆動によりケーブルガイド4を巻き込む方向に回転して、ケーブルガイド4を同量の距離A1だけ巻き取る。また、ケーブル3の復路部33がY軸アーム2の突端21から離れる方向に距離A1だけ進んだとき、ケーブルガイド4を引き出す方向に回転して、ケーブルガイド4を同量の距離A1だけ引き出す。このように、回転モータ61の回転量はケーブルの動き、つまりはスライダ25の動きに応じて制御されている。
【0055】
このため、ケーブルガイド4は、緩まずに直線性を保ち、ケーブルガイド4全体がスライダ25に応答して同時に同方向に同量移動する。また、ケーブルガイド4は、緩まずに直線性を保つことで、ケーブル3の膨出部34を解消し、ケーブル3の復路部33全体がスライダ25に応答して同時に同方向同量移動する。従って、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4の相対的な位置関係は変わらない。
【0056】
そして、ケーブルガイド4は、Y軸アーム2の突端21へ向けて進んだ分だけ、先が回転モータ61と巻き軸62に曲げ込まれて収納させられるため、ケーブルガイド4の延在範囲のうち突端21側は、ケーブルガイド4の走行方向、走行量に関わらず、回転モータ61と巻き軸62の位置に止められる。
【0057】
更に、この回転モータ61は、スライダ25が突端21から離れて支柱14側へ移動するとき、スライダ25の移動方向及び移動量に倣って稼働させることができる。そのため、スライダ25及びケーブル3の終端を移動させる回転モータ242に対して回転方向とは逆の負荷がケーブルガイド4を介してかかることはない。従って、スライダ25、ケーブル3の終端及びケーブルガイド4を精度良く移動させることができる。
【0058】
尚、この第3の実施形態では、収納部と駆動部を一つの構成(巻き軸62と回転モータ61)で実現している。ケーブルガイド4の他端を巻き軸62に巻回し、回転モータ61によりその巻回量を直動部の移動量に合わせ制御することで、収納部の機能はもとより、駆動部の機能を持たせることができる。つまり、収納部と駆動部を一つの構成(巻き軸62と回転モータ61)で実現することができ、より簡易な構成で発明を実現することを実現した。
【0059】
(第4の実施形態)
ロボット1が備えるケーブル移動装置の第4の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1乃至第3の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
(構成)
図10は、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図である。図10に示すように、Y軸アーム2のハウジング内には定荷重バネ5が設置されている。定荷重バネ5は巻回部51と引き出し部52と巻き軸62により構成される。定荷重バネ5は、全長にわたって一定の曲率を持ち密着して巻き軸62に巻かれた板ばねの一種である。そして、巻回部51に巻かれた板ばねを引き出すと、その引き出された引き出し部52は、板バネの曲率が持つ復元力により、巻き取られる、つまり収納される方向に付勢力を持つ。そして巻き軸62に対する付勢力は引き出された引き出し部52の長さに比例せず一定であることから一般的に定荷重バネと呼ばれている。
【0061】
巻回部51の上端はケーブル3の復路部33の高さと一致する。この巻回部51は、折り返し部32がY軸アーム2の突端21側へ最大限進んだ位置よりも更に突端21側に設置されている。引き出し部52は巻回部51の上端から引き出され、折り返し部32を通り越して延設される。そして、引き出し部52は、復路部33と天板22との間に介在し、復路部33に沿って平行に延び、復路部33の膨出部34が天板22に接触することを阻止するケーブルガイド4となる。即ち、引き出し部52の先端は移動側締結具362と一体となっており、引き出し部52の先端はスライダ25に固定されている。
【0062】
前述したようにこの定荷重バネ5は、引き出し長に依らず一定の巻き戻し力を有する。そのため、引き出し部52は、スライダ25に接続された端部と巻回部51との間で張力がかけられ、撓むこと無く張られた状態でケーブル3を案内し膨出部33を押さえ付けて膨出部34を解消している。但し、巻き戻し力はスライダ25及びケーブル3を移動させる力に及ばない。
【0063】
(作用)
Y軸アーム2に回転軸を突入させた回転モータ242が駆動すると、回転軸に固着したプーリ241が軸回転し、無端ベルト243が軌道に沿って旋回する。無端ベルト243の旋回により、無端ベルト243に固着したスライダ25はY軸方向に移動する。スライダ25が移動すると、スライダ25に固定されたケーブル3の終端がY軸方向に移動する。ケーブル3の終端が移動すると、ケーブル3の復路部33もY軸方向に移動する。
【0064】
このとき、引き出し部52は、天板22と復路部33との間に介在することで、ケーブル3の復路部33に対して天板22側から当接し、ケーブル3と天板22との接触を防止するケーブルガイド4となっている。ケーブル3の復路部33は引き出し部52によって阻まれて天板22に接触しない。そのため、ケーブル3の復路部33は引き出し部52の介在により天板22と擦れ合うことはない。
【0065】
図11は、第4の実施形態に係り、Y軸アーム内の動きを示す模式図である。図11の(a)に示すスライダ位置に対し、距離A1だけスライダが動いた時の変化を(b)に示している。図11(a)及び(b)に示すように、引き出し部52の先端はスライダ25に固定されているため、引き出し部52の先端は、スライダ25と同時に同方向に同量の距離A1だけ移動する。そして、巻回部51は、例えばスライダ25が突端21側へ距離A1だけ移動すると、スライダ25の移動量と同じ量の距離A1だけ引き出し部52を巻き取る。即ち、巻回部51がスライダ25の移動に合わせて引き出し部52を巻き取り及び引き出すことで、引き出し部52はスライダ25の走行によっても撓むこと無く張り続けられる。そのため、引き出し部52は、ケーブル3の復路部33を押さえ付けて、ケーブル3の復路部33に発生する膨出部34を解消する。
【0066】
そのため、スライダ25がY軸アーム2の突端21に向けて距離A1だけ進むと、復路部33もY軸アーム2の突端21に向けて、同時に同方向に同量である距離A1だけ進むことになる。そのため、ケーブル3の復路部33とケーブルガイド4である引き出し部52との相対的な位置関係は不変である。従って、ケーブル3の復路部33はケーブルガイド4の介在により天板22と擦れ合うことはないし、ケーブル3の復路部33と引き出し部52は擦れ合う関係にはならないため、ケーブル3の損耗は阻止される。
【0067】
巻回部51に目を向けると、巻回部51は、引き出し部52が突端21側へ進んだ分だけ巻き込む。また、巻回部51は、引き出し部52がY軸アーム2の突端21から離れる方向に進むと、その進行距離と同量の引き出し部52を引き出す。換言すると、引き出し部52は、Y軸アーム2の突端21へ向けて進んだ分だけ、先が巻回部51に曲げ込まれて収納させられる。
【0068】
即ち、巻回部51は、スライダ25と共に、膨出部34を解消させるための引き出し部52の駆動部である他、引き出し部52、つまりケーブルガード4を収納する収納ともなっている。引き出し部52の延在範囲のうち突端21側は、引き出し部52の走行方向、走行量に関わらず、巻回部51の位置に止められる。そのため、引き出し部52がY軸アーム2のハウジングから突き出ることはないし、引き出し部52が突端21側へ進行してもハウジング内に収まるようにY軸アーム2を長大化する必要もない。
【0069】
尚、この第4の実施形態では、収納部と駆動部とケーブルガイド4を一つの構成(定荷重バネ5)で実現している。ケーブルガイド4となっている引き出し部52の他端を巻回部51に巻回し、付勢部材である巻回部51によりその巻回量をスライダ25の移動量に合わせることで、収納部の機能はもとより、駆動部の機能も持たせることができる。
【0070】
付勢部材はコイルバネやゼンマイ等であってもかまわないが、本実施例では定荷重バネ5を用い、さらに、定荷重バネ5の引き出し部52をケーブルガイド4とすることで、ケーブルガイド4と収納部と駆動部を一つの構成で実現することができ、さらに簡易な構成で発明を実現することを可能となる。
【0071】
(変形例1)
図12は、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図である。図12に示すように、定荷重バネ5の巻回部51は、ケーブル3の復路部33が延在する平面よりも天板22とは反対側、つまり台部233側に設けてもよい。換言すると巻回部51はケーブル3の往路部31と復路部33との間の高さに設けてもよい。巻回部51がこの位置に設けられると、引き出し部52は、折り返し部32を支点に天板22とは反対方向に湾曲して下方のケーブル3側に傾斜するように引き下げられる。
【0072】
巻回部51を往路部31と復路部33との間に位置させると、巻回部51が常態的に発揮している巻き取り力は、スライダ25及びケーブル3の終端の直動方向と斜交する。従って、巻き取り力の直動方向成分は、巻回部51が引き出し部52と同じ高さに設置される場合と比べて小さくなる。従って、回転モータ242が巻き取り力に抗してスライダ25及びケーブル3の終端を直動させるためのトルクは小さくなる。
【0073】
また、巻き取り力がスライダ25及びケーブル3の終端の直動方向と斜交すると、巻き取り力には直動方向との直交成分が生まれる。この直交成分は引き出し部52を復路部33に更に強く押し付ける。そのため、引き出し部52を薄厚化しても復路部33の膨らみを押さえ付けて膨出部34を解消することが容易となり、ケーブルガイド4は効率良くケーブル3を案内することができる。
【0074】
(変形例2)
図13は、Y軸アーム2の内部構造を背面237側から見た斜視図であり、定荷重バネ5の更に他の態様を示している。図13に示すように、巻回部51の上端は復路部33の高さと一致するが、引き出し部52は巻回部51の下端から引き出される。そのため、引き出し部52は、復路部33に沿って延びるが、折り返し部32を支点に下方に引き下ろされる。
【0075】
このように、巻回部51の高さを往路部31と復路部33の間に設定しなくとも、引き出し部52を引き下ろすこともでき、回転モータ242のトルクは小さくて済み、また引き出し部52を薄厚化しても復路部33の膨らみを押さえ付けることが容易となる。
【0076】
(効果)
以上のように、ケーブル移動装置は、復路部33と対面する天板22と復路部33との間にケーブルガイド4を介在させるようにした。ケーブルガイド4は、ケーブル3の移動を案内し、折り返し部32を復路部33側から押さえて、当該折り返し部32の膨らみが天板22に接触するのを阻止する。更にケーブルガイド4は、復路部33の走行と同時に同方向に同量移動して、ケーブル3との相対的な移動量をゼロに保つ。
【0077】
これにより、ケーブル3が天板22に接触して擦りながら移動してしまうことがケーブルガイド4によって阻止され、またケーブルガイド4とケーブル3とが擦り合うこともないため、ケーブル3の損耗を防止できる。従って、潤滑剤をケーブル3の復路部33に塗布する必要がなくメインテナンスフリーを達成でき、或いは潤滑剤をケーブル3の復路部33に補充する頻度を極めて少なくでき、メインテナンス作業を少なくすることができる。
【0078】
尚、各実施形態及び変形例では、ケーブル3が擦る虞のある箇所として天板22を例に挙げた。これに限らず、ケーブル3が膨らむ方向に構造物がある場合、その構造物とケーブル3との間にケーブルガイド4を介在させればよい。例えば、ケーブル3がY軸アーム2内で寝かされて配置され、ハウジングの背面237に向けて折り返されているものとする。このとき、ケーブル3がハウジングの背面237に届くまで膨らもうとするならば、この背面237とケーブル3との間にケーブルガイド4を介在させればよい。
【0079】
また、ケーブル3が擦る箇所はカバーであるハウジングの一面に限らない。ハウジング内には、例えばセンサ等の他の部材を設置するブラケットが設置されることもある。ケーブル3の取り回し方によっては、ケーブル3は、このブラケットと擦り合う虞もある。このように、ケーブル3と擦れ合う虞があるハウジングの一面やブラケット等の構造物へのケーブル3の膨らみの到達を押さえるべく、構造物とケーブル3との間にケーブルガイド4を介在させてもよい。
【0080】
また、各実施形態及び変形例の他、ケーブル移動装置26としては、ボール螺旋をY軸アーム2内に設置し、ボール螺旋に嵌合する螺旋部にスライダ25、ケーブルガイド4及びケーブル3を取り付けてもよく、スライダ25、ケーブルガイド4及びケーブル3を移動させることができれば何れでも採用できる。
【0081】
更に、ケーブル3は、Z軸アーム13内やX軸テーブル12が設置されるベース11内にも設置され得る。例えばZ軸アーム13では、下部プレートにワークに対する作業を行うための電動ドライバや半田ごてなどの作業ツールが備えられ、この下部プレートがZ軸アーム13に対し上下動し、ワークに対し作業を行う。したがって、この作業ツールに電力を供給するケーブルがZ軸アーム13内に配設され、ケーブル3はZ軸アーム13内でU字又はJ字に折り返されていることもある。この場合、Z軸アーム13は、スライダが上下に往復運動するケーブル移動装置となり、ケーブルガイド4はケーブル3を側面方向に押さえ付けることになる。このように、Z軸アーム13やベース11もケーブル移動装置となり、これらZ軸アーム13やベース11においてもケーブルガイド4を配置するようにしてもよい。
【0082】
また、ケーブルガイド4は、一端がスライダ25と共に移動する箇所に固定され、折り返し部32を通り越して延ばされているようにした。これにより、ケーブルガイド4を復路部33と共に走行させるための動力源は不要となり、部品点数の削減及び稼働コストの削減を達成できる。もちろん、例えばケーブルガイド4の側部にラックを刻設し、Y軸アーム2内にラックアンドピニオン機構を配置して、ケーブル3とは別の走行機構によってケーブルガイド4を移動させるようにしてもよい。
【0083】
また、サイドカバー235等のケーブルガイド4の延び先にある構造物に未達の位置に、巻回部51、回転モータ61及び巻き軸62、並びにガイド壁7等の収納部を更に備えるようにした。この収納部は、ケーブルガイド4が当該収納部に向けて進んだ距離だけ、ケーブルガイド4を曲げ込んで当該ケーブルガイド4を収納し、ケーブルガイド4の延在範囲をサイドカバー235に未達である収納部の位置で止める。
【0084】
収納部は、第1の実施形態においてはガイド壁7及び溝部238であり、ケーブルガイド4がガイド壁7に向けて進んだ距離だけ、ガイド壁7に当たって方向転換し、溝部に収納される。第2の実施形態においては、ばねにより回転力を持った巻き軸62であり、スライダ25の移動に合わせてケーブルガイド4を巻き取り、また引き出す。第3の実施形態においては巻き軸62と該巻き軸62を回転させる回転モータ61であり、スライダ25の移動に合わせてケーブルガイド4の他端を巻き軸62に巻回しつつ、また巻き軸62から引き出す。第4の実施形態においては巻回部51であり、スライダ25の移動に合わせて引き出し部52を巻き取り、また引き出す。
【0085】
これにより、潤滑剤に関するメインテナンスフリー又はメインテナンス作業の頻度軽減に加え、ケーブルガイド4がサイドカバー235に向けて進行しても、ケーブルガイド4がY軸アーム2のハウジングから突き出ることはないし、ケーブルガイド4が突端21側へ進行してもハウジング内に収まるようにY軸アーム2を大型化する必要もない。
【0086】
また、ケーブルガイド4のうちの折り返し部32を通り越して延ばされた先に駆動力を与え、当該延ばされた先をスライダ25に合わせて走行させる駆動部を備えるようにした。
【0087】
これにより、ケーブルガイド4は、両端が同時に同方向に同量動くため、撓むことが無く張られた状態となる。そのため、ケーブル3の移動はケーブルガイド4によって確実に案内され、復路部33上の膨出部34は解消される。従って、潤滑剤に関するメインテナンスフリー又はメインテナンス作業の頻度軽減に加え、ケーブル3の復路部33は、スライダ25と同時に同方向に同量移動でき、ケーブルガイド4を復路部33と同時に同方向に同量移動させることが簡便になるとともに、精度が向上する。
【0088】
この駆動部は、第2の実施形態においてはローラ8であり、ケーブルガイド4の前記折り返し部32を通り越して伸ばされた先と係合し、スライダ25の移動に合わせて回転する。第3の実施形態においては巻き軸62と該巻き軸62を回転させる回転モータ61であり、スライダ25の移動に合わせてケーブルガイド4の他端を巻き軸62に巻回しつつ、また巻き軸62から引き出す。第4の実施形態においては巻回部51であり、スライダ25の移動に合わせて引き出し部52を巻き取り、また引き出す。
【0089】
即ち、実施形態3においては巻き軸62と回転モータ61が収納部であり、また駆動部でもある。実施形態4においては定荷重バネ5の巻回部51が収納部であり、また駆動部でもある。このうち、第4の実施形態では、ケーブルガイド4の引き出しや巻き取りをソフトウェア制御する必要はなく、ケーブルガイド4でケーブル3の移動を案内することができ、膨出部34を解消してケーブルガイド4を簡便にケーブル3と同時に同方向に同量移動させることができる。
【0090】
更に、定荷重バネ5の巻回部51、回転モータ61及び巻き軸62並びにローラ8は、復路部33の延在高さよりも天板22とは反対側である下方に位置し、ケーブルガイド4は、ケーブル3の折り返しを支点に下方へ引き下ろされているようにした。また押さえ付け方法としては、帯形状を有するケーブルガイド4の両長手辺が反るように湾曲させた。
【0091】
これにより、ケーブルガイド4を更に強力に張ることができ、ケーブルガイド4の撓みがなくなってケーブル3の膨出部34がより確実に解消することができ、ケーブルガイド4を復路部33と同時に同方向に同量移動させる精度が更に向上する。また、回転モータ242が巻回部51の巻き取り力に抗してスライダ25及びケーブル3の終端を直動させるトルクは小さくて済むし、引き出し部52を薄厚化しても復路部33の膨らみを押さえ付けることが容易となる。
【0092】
(他の実施形態)
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 ロボット
11 ベース
12 X軸テーブル
13 Z軸アーム
14 支柱
2 Y軸アーム
21 突端
22 天板
231 ベースプレート
232 底面
233 台部
234 正面カバー(ハウジング)
235 サイドカバー(ハウジング)
236 天面カバー(ハウジング)
237 背面
238 溝部
241 プーリ
242 回転モータ
243 無端ベルト
25 スライダ
251 レール
26 ケーブル移動装置
3 ケーブル
31 往路部
32 折り返し部
33 復路部
34 膨出部
35 固定側締結具
36 固定具
361 ベースブラケット
362 移動側締結具
4 ケーブルガイド
5 定荷重バネ
51 巻回部
52 引き出し部
61 回転モータ
62 巻き軸
7 ガイド壁
8 ローラ
81 ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14