(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】異物除去工具
(51)【国際特許分類】
B08B 9/043 20060101AFI20220729BHJP
B08B 1/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B08B9/043 436
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2018056277
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 広之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 曜
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136532(JP,A)
【文献】特開平06-039358(JP,A)
【文献】実開平04-129555(JP,U)
【文献】特開平11-104945(JP,A)
【文献】特開2015-123399(JP,A)
【文献】実公昭05-002125(JP,Y1)
【文献】実開昭62-190685(JP,U)
【文献】実開昭54-163075(JP,U)
【文献】特開2013-078669(JP,A)
【文献】特開平05-031470(JP,A)
【文献】特開平05-208176(JP,A)
【文献】実開昭60-171592(JP,U)
【文献】実開平04-118965(JP,U)
【文献】特開2003-001210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/043
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に挿入されて前記管の内側に付着した切り屑を除去する異物除去工具であって、
2つの腕部と、
それぞれの前記腕部の先端に取り付けられ、前記管の内部に当接する除去部材と、
作業者が把持し当該異物除去工具を操作する支持体と、
前記支持体に設けられ2つの前記腕部の動きを制限するストッパー部材と、
2つの前記腕部に連結された弾性部と、を備え、
前記支持体は、
連結部において2つの前記腕部と連結され、
2つの前記腕部は、
前記除去部材が取り付けられている先端に対し反対側の端部である根元部が互いに回動自在に連結され、
前記連結部から当該異物除去工具の長手方向に延び、当該腕部が動く軌跡が形成する面に対し垂直方向から見たときに交差するように配置され、
前記除去部材を近接させた状態において、
前記弾性部によって前記除去部材が離反する方向に付勢され、
前記ストッパー部材は、
前記支持体に一体となって固定され、前記腕部が前記支持体に対し回転移動したときに前記腕部と当接し、2つの前記腕部が互いに離れる方向に動くことを制限
し、
かつ前記支持体に対する前記腕部の回転移動を2つの前記腕部が離れる方向において制限する、異物除去工具。
【請求項2】
2つの前記腕部は、
前記根元部が一体に構成され、
2つの前記除去部材の外側部の間隔である外形寸法は、
前記腕部が自然状態において、前記管の内径寸法よりも離れて位置する、請求項1に記載の異物除去工具。
【請求項3】
前記弾性部は、
前記腕部の先端と前記根元部との間において前記腕部と連結する、請求項
1又は2に記載の異物除去工具。
【請求項4】
前記除去部材を近接させた状態において、
前記除去部材は、
前記管の内部に挿抜自在に構成されている、請求項1~
3の何れか1項に記載の異物除去工具。
【請求項5】
前記管は、
長手方向に向かって内径が拡大しているテーパー管であり、
2つの前記腕部が成す角度は、
前記管の長手方向に沿った断面において前記管の内壁が成す角度以上である、請求項1~
4の何れか1項に記載の異物除去工具。
【請求項6】
前記除去部材は、
前記腕部に取り付けられる基部と、
前記基部に植えられた複数の毛により構成されたブラシ部と、を備え、
一方の前記腕部に取り付けられている前記ブラシ部は、
少なくとも他方の前記腕部と背反した方向に突出している、請求項1~
5の何れか1項に記載の異物除去工具。
【請求項7】
前記除去部材は、
前記腕部に取り付けられる基部と、
前記基部に植えられた複数の毛により構成されたブラシ部と、を備え、
前記基部は、ワイヤから構成され、
前記ブラシ部は、
前記ワイヤの側面の全方向に毛を突出させて構成されている、請求項1~
5の何れか1項に記載の異物除去工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の管内面に付着する異物を除去する際に使用する異物除去工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱等において鋼管等の金属製の管が用いられる。鋼管は、筒状に形成され、側面が穿孔される。穿孔は例えばドリル等の切削加工により行われるため、鋼管の内部に切り屑等の異物が発生する。切り屑等の異物は、穿孔された孔の周縁に付着し鋼管の内側に向かって突出している。鋼管は、穿孔された後に、例えばめっき工程などの工程を経る。異物が鋼管内部に付着したまま鋼管が次工程に流れると、異物がその工程において落下する場合がある。例えば、めっき工程においては、めっき槽内に異物が落下し、めっき層に浸漬した製品に異物が付着する不具合が発生する。
【0003】
鋼管の孔開け加工後の内部の異物除去は、従来においては手作業によりブラシを孔の周縁に当てて擦り落とす作業を行っていた。また、特許文献1には、円柱状のホルダに砥石が保持され、砥石を半径方向外側に向かって弾性的に付勢しているバリ取り工具が開示されている。バリ取り工具は、孔の内部に挿入され、砥石を孔の内面に押し付けながら回転し、孔の軸方向に移動し、孔の内部に発生したバリを取り除く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手作業による管内部の異物除去は、柄の長いブラシを管の一方の端面の開口部から挿入し、異物が付着している孔の周縁をブラシで擦る作業を行っていた。しかし、管の内部は、端面の開口部から視認しにくく、ブラシが確実に孔が設けられている部位に到達しているかを確認するのが困難であり、作業者に負担がかかっていた。また、鋼管内の切り屑が孔の端部から除去されたのを確認するのが困難であるため、ブラシによる手作業の不確実さと相俟って孔の周縁に付着した異物を除去できる確率が低くなるという課題があった。
【0006】
また、穿孔が行われる管は、内径の均一な円筒状の管だけでなく、管の長手方向に向かって徐々に内径が大きくなる(小さくなる)テーパー管も存在する。特許文献1に開示されているバリ取り工具は、内径の均一な管に対しては砥石が管の内面に追従するが、管の内径が長手方向に向かってテーパー状に形成されている場合には砥石が管の内面に追従しない。従って、電柱等に用いられる長手方向が長いテーパー管においては、1つのバリ取り工具によってテーパー管の長手方向に複数設けられた各孔全てに付着している異物を除去できないという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであって、管の内周側に発生する異物を除去できる異物除去工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る異物除去工具は、管の内部に挿入されて前記管の内側に付着した切り屑を除去する異物除去工具であって、2つの腕部と、それぞれの前記腕部の先端に取り付けられ、前記管の内部に当接する除去部材と、作業者が把持し当該異物除去工具を操作する支持体と、前記支持体に設けられ2つの前記腕部の動きを制限するストッパー部材と、2つの前記腕部に連結された弾性部と、を備え、前記支持体は、連結部において2つの前記腕部と連結され、2つの前記腕部は、前記除去部材が取り付けられている先端に対し反対側の端部である根元部が互いに回動自在に連結され、前記連結部から当該異物除去工具の長手方向に延び、当該腕部が動く軌跡が形成する面に対し垂直方向から見たときに交差するように配置され、前記除去部材を近接させた状態において、前記弾性部によって前記除去部材が離反する方向に付勢され、前記ストッパー部材は、前記支持体に一体となって固定され、前記腕部が前記支持体に対し回転移動したときに前記腕部と当接し、2つの前記腕部が互いに離れる方向に動くことを制限し、かつ前記支持体に対する前記腕部の回転移動を2つの前記腕部が離れる方向において制限する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る異物除去工具によれば、上記の構成により、異物除去工具の異物除去部を管の内壁に安定的に接触させることができるため、長手方向に複数配置された孔に付着する異物を除去することが可能となる。異物除去工具により、管内部に付着した異物が除去されるため、次の工程へ異物が付着したままの管が流れるのを抑制することができ、作業の効率化及び製品の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る異物除去工具の側面図である。
【
図3】
図1の異物除去工具の腕部同士を近接させた状態を示す図である。
【
図4】
図1の異物除去工具を管内に挿入した状態を示す図である。
【
図5】実施の形態2に係る異物除去工具を示す側面図である。
【
図6】実施の形態2に係る異物除去工具を示す側面図である。
【
図7】実施の形態2に係る異物除去工具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図において各部分に付された符号について、添え字(a、b等)を付していない場合は、添え字が付された符号を総称しているものとする。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る異物除去工具100の側面図である。異物除去工具100は、電柱として用いられる金属製の管1、特に管1の長手方向に向かって内径が徐々に拡大するテーパー管の内壁7に付着する異物2を除去するものである。異物2は、特に管1の側面に穿孔を行った際にできるものであり、穿孔された孔3の周縁4に付着し、管1の内周方向に突出している。異物除去工具100は、長手方向に延びる2つの腕部10と、それぞれの腕部10の先端に取り付けられた除去部材20とを備える。
【0013】
(除去部材20)
図2は、
図1の除去部材20の側面図である。除去部材20は、管の内壁7に当接し、管の内壁7に付着した異物2を内壁7から落とし、除去する。除去部材20は、少なくとも管1の内壁7に当接する部分がブラシ部21になっている。ブラシ部21は、複数の毛22を基部23から突出させて配置して構成されている。毛22は、金属製の細い線材であり、例えば真鍮から構成される。
【0014】
基部23は、例えばワイヤから構成されている。除去部材20は、ワイヤの側面の全方向に毛22が突出して構成されている。基部23がワイヤで構成されることにより、基部23は可撓性を有し、除去部材20が管1の内壁7に当接したときに追従し易く、耐久性も高い。なお、基部23から突出している毛22は、全周に突出していなくとも良い。一方の腕部10に取り付けられているブラシ部21は、少なくとも他方の腕部10と背反した方向に毛22突出させていればよい。
【0015】
除去部材20は、上記のように構成されることにより、管1の内壁7に追従し易く、確実に管1の内壁7に当接するため、管1の内壁7に付着した異物2の除去性能が高まる。また、除去部材20は、ブラシ部21が撓み易いため、管1の内壁7に過剰に力を加えることが無く、管1の内壁7を過剰に傷つけることがない。ブラシ部21の毛22の剛性は、毛22の材質及び太さを変更することにより適宜調整できる。
【0016】
(腕部10)
2つの腕部10は、根元部11が互いに連結されている。それぞれの腕部10の長手方向の先端に除去部材20が取り付けられている。腕部10は、例えば鋼材で構成されており、棒状、板状、又は管状に形成されている。
【0017】
2つの腕部10の根元部11は、連結されて連結部12を構成している。連結部12は、回動軸13を中心に一方の腕部10が他方の腕部10に対し回動自在に構成されている。
【0018】
(弾性部30)
2つの腕部10の先端と根元部11との間には、弾性部30が取り付けられている。弾性部30は、例えばコイルばね、板ばね、又はねじりばねで構成される。2つの腕部が互いに近接する方向に動くと、弾性部30は圧縮されて2つの腕部10が離反する方向に腕部10を付勢する。
【0019】
(支持体40)
支持体40は、1本の長い鋼材により構成されており、その鋼材は、棒状、板状、又は管状の各形態をとり得る。2つの腕部10の根元部11は、支持体40に連結されている。
【0020】
支持体40の腕部10が連結されている側と反対側の端部は、管1の内部に除去部材20を挿入する際、及び挿入後に作業者が把持する把持部となる。
【0021】
図1に示されるように、2つの腕部10を支持体40に固定された回動軸13に回動自在に取り付け、支持体40に2つの腕部10の回動を規制するストッパー部材41を設けても良い。ストッパー部材41を設けることにより、2つの腕部10がある所定の範囲において互いに回動でき、作業者が支持体40を持って異物除去工具100を操作する際に除去部材20側に力を伝え易くなる。また、2つの腕部10がある所定の範囲において互いに回動することができるため、管1の内部に挿入された際に腕部10の動きの自由度が得られ、管1の内壁7に除去部材20が当接しやすくなるという利点がある。ストッパー部材41は、
図2に示されている形態に限定されるものではなく、支持体40に対し腕部10の回動範囲を規制できれば他の形態であっても良い。
【0022】
また、
図1のストッパー部材41は、設けなくともよい。ストッパー部材41が無い場合は、作業者が把持する支持体40から力を加えた場合に、2つの腕部10と支持体40とが相対的に回転する。異物除去工具100の長手方向に沿った方向、つまり異物除去工具100を管1に挿入した場合に、作業者が管1の奥方向に押し込む力が加えにくい場合がある。ただし、異物除去工具100を管1に挿入し、奥まで押し込んだ後、異物除去工具100を引き出す作業においては、ストッパー部材41が無いことによる影響は無い。
【0023】
一方の腕部10のみが支持体40に回動自在に取り付けられている場合は、一方の腕部10の動きを規制するストッパー部材41を設けても良いし、ストッパー部材41が無くとも良い。例えば、回動軸13が支持体40に固定され、その回動軸13に少なくとも一方の腕部10が回動自在に取り付けられていて、他方の腕部10は、支持体40に対し回動しなくともよい。又は、他方の腕部10は、支持体40と一体に形成されていても良い。一方の腕部10のみが回動すれば、腕部10同士を近接させることができるため、除去部材20を管1に挿入することは可能である。
【0024】
(管1内部の異物除去動作)
図3は、
図1の異物除去工具100の腕部10同士を近接させた状態を示す図である。
図4は、
図1の異物除去工具100を管1内に挿入した状態を示す図である。
【0025】
図3に示される異物除去工具100の状態は、腕部10同士を近接させた状態であり、腕部10の先端に取り付けられている除去部材20も近接させた状態になっている。2つの腕部10の間は弾性部30により連結されているため、腕部10同士を近接させると、弾性部30が腕部10を離反させる方向に付勢する。異物除去工具100は、
図3に示される状態で管1の内部に小径側端面5から挿入される。このとき、異物除去工具100の先端の外形寸法Bは、望ましくは管1の小径側端面5の内径寸法A以下になっている。外形寸法Bは、言い換えると2つ除去部材20の先端の外側部分同士の間隔である。なお、実施の形態1においては、除去部材20の外周部分はブラシ部21になっているので、基部23の先端部同士の間隔が内径寸法Aよりも小さければ管1に挿入することができる。しかし、この場合ブラシ部21を変形させながら管1に挿入することになり、ブラシ部21を損傷する可能性がある。従って、ブラシ部21の変形量が小さくなるように、外形寸法Bを調整することが望ましい。
【0026】
図4に示される様に異物除去工具100は、先端部の除去部材20が小径側端面5に挿入された後、管1の奥に向かって押し込まれる。そして、異物除去工具100の先端部の除去部材20を、少なくとも異物2が付着している孔3がある位置まで移動させる。作業者は、支持体40を把持して除去部材20と孔3の位置とを合わせる。作業者は、支持体40を管1の長手方向に沿った向きに力を加えたり、管1の円周方向に支持体40を回転させることにより除去部材20の位置を調整する。
【0027】
除去部材20と孔3の位置とを合わせた後は、作業者は異物除去工具100を管1から引き出す。除去部材20は、管1に挿入された状態においては、管1の内壁7に常に当接しているため、除去部材20が移動することにより管1の内壁7がブラシ部21に擦られ、内壁7に付着した異物2が内壁7から除去される。なお、実施の形態1においては、異物2は、穿孔した際に発生した切り屑であり、孔3の周縁4に付着したものであるが、その他の内壁7に付着した異物2も除去することができる。
【0028】
(実施の形態1の効果)
実施の形態1に係る異物除去工具100によれば、2つの腕部10と、それぞれの腕部の先端に取り付けられ、管1の内部に当接する除去部材20と、を備える。2つの腕部10は、除去部材20を近接させた状態において、除去部材20が離反する方向に付勢される。この構成により、除去部材20は、管1の内壁7に当接した状態が維持されるため、作業者は、支持体40を把持して管1の長手方向に移動させるだけで内壁7に付着した異物2を除去することができる。また、2つの腕部10は近接させることができるため、異物除去工具100を除去部材20から管1内に容易に挿入することができる。また、異物除去工具100は、腕部10が2股に分かれて形成され、それぞれに除去部材20が取り付けられているため、管1の円周方向において、管1の中心について略対称な位置にある孔3に同時に除去部材20を当接させることができる。従って、
図4に示されるような、円周上の対称な位置にある孔3の周縁4に付着している異物2を効率良く除去できる。
【0029】
また、腕部10は、除去部材20が取り付けられている先端に対し反対側の端部である根元部11が互いに連結されているため、2つの腕部10を根元部11を基準として開閉できるため、除去部材20同士の距離を自由に変更することができる。さらに、異物除去工具100は、腕部10を連結する弾性部30を備えるため、2つの腕部10を閉じる側に移動させると、腕部10及び除去部材20が互いに離反する方向に付勢される。これにより、異物除去工具100が管1内に挿入された状態において、除去部材20が常に内壁7に当接し、除去部材20が内壁7を押しつけられる方向に力がかかる。
【0030】
弾性部30は、腕部10の先端と根元部11との間において2つの腕部10を連結している。これにより、2つの腕部10同士の相対移動は弾性部30により規制される。つまり、2つの腕部10は、離反又は近接するのに弾性部30を変形させるだけの力が必要となるため、腕部10が自然状態においては、2つの除去部材20の位置関係が変化しにくい。そのため、作業者は、意図通りに腕部10及び除去部材20の位置を操作しやすくなっている。そして、作業者が腕部10を操作することにより、除去部材20同士の距離を変更することができ、異物除去工具100の先端の外形寸法Bを操作により小さくして管1内に挿入することができる。つまり、除去部材20を近接させた状態において、除去部材20は、管1の内部に挿抜自在に構成されている。なお、除去部材20のブラシ部21は、作業者の力により管1に挿入できる程度に可撓性を有するか、除去部材20を近接させた状態において管1の小径側端面5の内径寸法Aよりも外形寸法Bが小さくなるように構成されると良い。
【0031】
除去部材20は、腕部10に取り付けられる基部23と、基部23に植えられた複数の毛22により構成されたブラシ部21と、を備える。そして、一方の腕部10に取り付けられているブラシ部21は、少なくとも他方の腕部10と背反した方向に突出している。そのため、除去部材20は、確実に管1の内壁7に当接される。
【0032】
また、2つの腕部10は、当該腕部10が動く軌跡が形成する面に対し垂直方向から見て交差しているため、その交差した部分に連結部12に回動軸13を配置することにより、腕部10が回動する構造を構成し易くなっている。異物除去工具100は、簡易な構造であるため、製作にかかるコストも低減できる。
【0033】
なお、2つの腕部10が成す角度は、管1の長手方向に沿った断面において管1の内壁7が成す角度以上であることが望ましい。2つの腕部10が成す角度が内壁7が成す角度より小さい場合、管1の小径側端面5の内径に腕部10が接触し、除去部材20が十分に内壁7に接触出来ない場合があるが、上記の構成によれば、確実に除去部材20が内壁7に当接する。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2に係る異物除去工具200A、200B、200Cは、実施の形態1の異物除去工具100の腕部10の連結部12の構造を変更したものである。なお、以下の実施の形態においては、実施の形態1に対する変更点を中心に説明する。
【0035】
図5は、実施の形態2に係る異物除去工具200Aを示す側面図である。異物除去工具200Aは、2つの腕部210が一体に形成されている。つまり、腕部210の根元部211同士がつながっており連結部212が形成されている。異物除去工具200Aは、連結部212がU字形に形成されており、腕部210を近接させた状態における除去部材20を離反させる方向の付勢は、連結部212を構成する材料の弾性により行われる。従って、実施の形態1に係る異物除去工具100に設けられている弾性部30を設けなくとも、腕部210を近接させた時に除去部材20を離反させる方向に付勢力を持たせることができる。
【0036】
図6は、実施の形態2に係る異物除去工具200Bを示す側面図である。異物除去工具200Bは、連結部212を腕部210とは別の部材により構成している。腕部210の根元部211は、連結部212と溶接等の手段により接合されている。連結部212は、ばね用鋼材等で形成されることにより、腕部210を近接させた時に除去部材20を離反させる方向に付勢力を持たせることができる。
【0037】
図7は、実施の形態2に係る異物除去工具200Cを示す側面図である。異物除去工具200Cは、連結部212が腕部210の根元部211同士を接合させて構成されている。腕部210は、例えば板状のばね用鋼材で構成される。腕部210自体の弾性力により、腕部210を近接させた時に除去部材20を離反させる方向に付勢力を持たせることができる。なお、異物除去工具200A、200B、200Cは、実施の形態1に係る異物除去工具100と同様に弾性部30を設けてもよい。
【0038】
(実施の形態2の効果)
実施の形態2に係る異物除去工具200A、200B、200Cによれば、2つの腕部210A、210B、210Cは、根元部211A、211B、211Cが一体に構成され、除去部材20は、腕部210A、210B、210Cが自然状態において、管1の内径寸法Aよりも離れて位置する。これにより、異物除去工具200A、200B、200Cは、連結部212の弾性力により腕部210を近接させた時の除去部材20を離反させる方向の付勢力を持たせることができる。そのため、実施の形態1の異物除去工具100よりも簡易な構成で異物除去工具200A、200B、200Cを構成できる。
【符号の説明】
【0039】
1 管、2 異物、3 孔、4 周縁、5 小径側端面、7 内壁、10 腕部、11 根元部、12 連結部、13 回動軸、20 除去部材、21 ブラシ部、22 毛、23 基部、30 弾性部、40 支持体、41 ストッパー部材、100 異物除去工具、200A 異物除去工具、200B 異物除去工具、200C 異物除去工具、210 腕部、210A 腕部、210B 腕部、210C 腕部、211 根元部、211A 根元部、211B 根元部、211C 根元部、212 連結部、A 内径寸法、B 外形寸法。