(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】コンロ用バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
F23D14/06 Z
(21)【出願番号】P 2018073078
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-340518(JP,A)
【文献】特開2015-230144(JP,A)
【文献】特開2000-097409(JP,A)
【文献】特開2005-156099(JP,A)
【文献】特開平10-220714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に分布室が形成された平面視円形状の胴部と、該胴部に載置されて前記分布室の上方外周に沿って複数の炎口を形成する頭部と、前記胴部から外方に延び、燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成して前記分布室に案内する混合管部と、該混合管部に燃料ガスと共に一次空気を取り入れる一次空気取入部とを備え、前記混合管部の延設方向に沿った中心線が直線状に延び、前記胴部の外側に、前記炎口に点火する点火電極と、前記炎口の炎を検知する炎検知器とを備えるコンロ用バーナにおいて、
前記胴部は、上下が開口する中央筒部を備え、
前記混合管部は、前記中心線が前記胴部の中心の横方へ離間して延びる位置に設けられ、
前記分布室は、前記混合ガスが前記混合管部の前記中心線に沿って直線状に流れる直線流動部と、前記混合ガスが前記直線流動部から下流側に連続して前記胴部の外周壁に沿って円周形状に流れる周回流動部とを備え、
前記混合管部の中心線に直交し且つ前記胴部の中心を通って延びる直線を境界として、前記周回流動部を上流側と下流側との2つの領域に分けたとき、前記点火電極及び前記炎検知器は、前記周回流動部の前記下流側の領域に対応する位置に配置され、前記分布室の前記周回流動部の下流端に、前記中央筒部と該胴部の外周壁内面との間に亘る逆流防止壁を備
え、
前記分布室は、前記混合ガスが前記直線流動部と前記周回流動部との境界部分を通過するとき、当該混合ガスに通過抵抗を付与する抵抗付与部を備え、
前記抵抗付与部は、前記直線流動部と前記周回流動部との境界部分から前記周回流動部の上流部分にかけての最初のカーブとなる範囲における、前記分布室の上下方向高さの下半部に、前記周回流動部の内周壁である前記中央筒部の外周側に沿って延設されていることを特徴とするコンロ用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに設けられるコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンロ用バーナは、平面視円形状の胴部の周壁から外方に延びる混合管部を備えている。混合管部の上流端部には、燃料ガスと共に一次空気を取り入れる一次空気取入部が設けられている。
【0003】
一次空気取入部から取り入れられた一次空気は、混合管部に沿って流れつつ燃料ガスと混合される。混合管部で生成された混合ガスは、胴部の内部に形成されている環状の分布室に導入される。分布室の混合ガスは、胴部の上方に載置された頭部の炎口に供給されて火炎を形成し、コンロ用バーナが燃焼状態となる。
【0004】
従来のコンロ用バーナにおける混合管部は、その中心線が胴部の中心に向かって延びる位置に設けられている(例えば、特許文献1参照)。このため、混合管部から分布室に入った混合ガスは、胴部の内周壁面に突き当たって両側に分流され、混合管部の反対側の分布室に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、混合管部は、良好に燃焼する混合ガスを生成するために十分な長さが必要となることは周知である。このため、コンロ用バーナをコンパクトに形成しようとして混合管部の長さを短縮させると、一次空気の混合量が減少してしまい、良好な燃焼状態が得られる混合ガスを生成することができなくなる。
【0007】
また、上記従来のコンロ用バーナは、混合管部から分布室へ入った混合ガスが分流されるため、分布室の全周に混合ガスが行きわたる速度が比較的速い。これにより、火力調節に対する炎の応答が速い反面、火力調節時に火力を急激に変化させた場合に、混合ガスの供給量の変化に炎が追従できず、保炎性が低下する場合がある。このため、例えば、正確な炎検知が行えなくなるおそれがある。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、十分な一次空気を取り入れて良好な燃焼状態を得ながらコンパクトとし、しかも高い保炎性が得られるコンロ用バーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、内部に分布室が形成された平面視円形状の胴部と、該胴部に載置されて前記分布室の上方外周に沿って複数の炎口を形成する頭部と、前記胴部から外方に延び、燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成して前記分布室に案内する混合管部と、該混合管部に燃料ガスと共に一次空気を取り入れる一次空気取入部とを備え、前記混合管部の延設方向に沿った中心線が直線状に延び、前記胴部の外側に、前記炎口に点火する点火電極と、前記炎口の炎を検知する炎検知器とを備えるコンロ用バーナにおいて、前記胴部は、上下が開口する中央筒部を備え、前記混合管部は、前記中心線が前記胴部の中心の横方へ離間して延びる位置に設けられ、前記分布室は、前記混合ガスが前記混合管部の前記中心線に沿って直線状に流れる直線流動部と、前記混合ガスが前記直線流動部から下流側に連続して前記胴部の外周壁に沿って円周形状に流れる周回流動部とを備え、前記混合管部の中心線に直交し且つ前記胴部の中心を通って延びる直線を境界として、前記周回流動部を上流側と下流側との2つの領域に分けたとき、前記点火電極及び前記炎検知器は、前記周回流動部の前記下流側の領域に対応する位置に配置され、前記分布室の前記周回流動部の下流端に、前記中央筒部と該胴部の外周壁内面との間に亘る逆流防止壁を備え、前記分布室は、前記混合ガスが前記直線流動部と前記周回流動部との境界部分を通過するとき、当該混合ガスに通過抵抗を付与する抵抗付与部を備え、前記抵抗付与部は、前記直線流動部と前記周回流動部との境界部分から前記周回流動部の上流部分にかけての最初のカーブとなる範囲における、前記分布室の上下方向高さの下半部に、前記周回流動部の内周壁である前記中央筒部の外周側に沿って延設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンロ用バーナは、混合管部の中心線が胴部の中心の横方に離間して延びる。従って、混合管部は、胴部の中心から横方にずれた位置に連結されている。そして、混合管部の中心線の延長線は、環状の分布室の中心部の内周壁に突き当たることなく分布室の外周壁まで延びる。従って、混合管部の長さが従来のコンロ用バーナと同じであっても、混合管部に胴部を含めたコンロ用バーナ全体の長さは、従来のコンロ用バーナと比べて短くなる。
【0011】
これにより、コンパクトに構成してしかも、十分な一次空気を取り入れることができ、良好な燃焼状態を得ることができる。
【0012】
また、分布室の中心の横方から導入された混合ガスは、環状の分布室の形状に沿って内部を流動する。このとき、混合ガスが導入される上流側の分布室内における混合ガスの圧力変化(上昇や低下)に比べて、環状の分布室を周回流動した後の下流側の分布室内の混合ガスの圧力変化が遅れる。このため、例えば、使用者によって、強火から弱火に急激に変化させる操作が行われて、上流側の分布室内における混合ガスの圧力が急激に低下しても、下流側の分布室における混合ガスの圧力は緩やかに低下するので、高い保炎性を得ることができる。
【0013】
更に、点火電極及び前記炎検知器が、周回流動部の下流側の領域に対応する位置(即ち、周回流動部の略下流側半部の領域)に配置されていることにより、混合管部の延設側と反対側に点火電極や炎検知器を設けた場合に比べてコンロ用バーナ全体の長さを短くすることができる。しかも、分布室のうちの下流側となる周回流動部の外側に炎検知器を配置すると、保炎性の高い位置で炎を検知することができるので、炎の検知精度を向上させることができる。
【0015】
分布室においては、直線流動部と周回流動部との境界部分(混合管部から導入される混合ガスが上流側の直線流動部を越えて周回流動部に入ったところ)で混合ガスの圧力が比較的高くなる。そこで、抵抗付与部を設けて直線流動部と周回流動部との境界部分を通過する混合ガスに通過抵抗を付与する。これにより、分布室における混合ガスの部分的な圧力上昇を抑えることができ、一定の火力で燃焼させるとき、分布室の全長にわたって混合ガスの圧力を略均等として、炎口で形成される火炎による熱分布を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態のコンロ用バーナを示す説明的斜視図。
【
図3】混合管部及び分布室の上半部を取り除いて示す説明的斜視図。
【
図4】分布室における混合ガスの圧力差を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のコンロ用バーナ1は、図示しないガスコンロに設けられるものであり、
図1及び
図2に示すように、胴部2と、胴部2上に載置して周方向に複数の炎口3を形成する頭部4と、胴部2に燃料ガスと一次空気との混合ガスを供給する混合管部5とを備えている。
【0018】
混合管部5の上流端には一次空気取入部6が設けられている。混合管部5は、図示しないガスノズルから噴出する燃料ガスを一次空気と共に一次空気取入部6から取り入れることにより燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する。
【0019】
混合管部5の下流端には、胴部2が連設されている。胴部2には、上下が開口する中央筒部7(
図3に下半部を示す)が設けられている。中央筒部7には、鍋底温度センサ8が貫通して設けられている。
【0020】
胴部2は、胴部本体部9と、胴部本体部9上に連結されて図示しないコンロ天板の上面側に露出する露出環状部10とを備えている。露出環状部10の上面には、環状の頭部載置面11が形成されている。頭部4は周縁部に垂下壁12を備え、垂下壁12には、露出環状部10の頭部載置面11に載置することにより炎口3となる複数の溝が形成されている。
【0021】
図3に示すように、胴部本体部9の内部には、混合管部5に連通する環状の分布室13が形成されている。分布室13は、直線流動部14と周回流動部15とを備えている。直線流動部14は、混合管部5から導入される混合ガスが直線状に流れる部分である。周回流動部15は、直線流動部14から連続して胴部2の外周壁16内面に沿って円周形状に形成されている。
【0022】
また、
図2及び
図3に示すように、混合管部5は、胴部2に対して一側方に偏った位置に設けられている。
図3に示すように、混合管部5は、その中心線xが直線状に延びる形状とされている。更に、混合管部5は、その中心線xが、胴部2の中心sの横方に離間して延びる位置で(即ち、混合管部5の中心線xの延長線x´が胴部2の中心sを通らない位置で)直線流動部14内に延びる。このため、混合管部5から分布室13に導入された混合ガスは、分布室13の直線流動部14を流れている間は、混合管部5と同じ流動方向を維持する。従って、分布室13の直線流動部14は、混合管部5の延長された一部として機能する。
【0023】
混合管部5は、その長さを短縮させると一次空気の混合量が十分に得られなくなるおそれがあが、分布室13の直線流動部14が混合管部5の下流に連続して設けられて混合管部5の一部として機能するので、混合管部5を短縮させても一次空気の混合量が十分に得られる。よって、燃焼性能を低下させることなくコンロ用バーナ1の全長を短くコンパクトに形成することができる。
【0024】
更に、分布室13においては、上流側の直線流動部14から下流側の周回流動部15に混合ガスが流れて、その流動距離が比較的長いことにより、分布室13の上流側と下流側との間に圧力差が生じる。
【0025】
本発明者は、分布室13における混合ガスの圧力について、分布室13の上流位置Uと下流位置Dとで比較する試験を行った。その結果、
図4に示すように、上流位置Uの圧力低下(線u)に比べて、下流位置Dの圧力低下(線d)が遅いことが明らかとなった。
【0026】
これによって、例えば、使用者が強火から弱火に急激に変化させる操作を行った場合であっても、下流側の混合ガスの圧力は遅れて低下するので、高い保炎性が得られる。
【0027】
また、
図2に示すように、胴部2には露出環状部10を貫通して上方に突出する点火電極17とサーモカップル18(炎検知器)とが取り付けられている。点火電極17とサーモカップル18とは、周回流動部15の外側であって混合管部5の横方に配置されている。
【0028】
なお、点火電極17とサーモカップル18は、
図3を参照して説明すると、周回流動部15の略下流側半部で直線yから混合管部5までの間の領域に対応する周回流動部15の外側に設けられていることが好ましい。直線yは、混合管部5の中心線xに直交して胴部2の中心sを通る仮想線である。この直線yを境界として周回流動部15を上流側領域と下流側領域とに分けると、点火電極17とサーモカップル18は、周回流動部15における下流側領域に対応する範囲内の何れかの位置に設けることが好ましく、本実施形態においては、最も好ましい例として
図2に示す位置を採用している。
【0029】
これによれば、点火電極17やサーモカップル18を設けるための胴部2の外側への張り出しが、混合管部5の延設されている側に位置するため、コンロ用バーナ1を一層コンパクトとすることができる。しかも、コンロ用バーナ1を図示しないガスコンロに取り付ける場合、燃料ガスの配管の関係等により、一般的には、混合管部5を後方に位置させる。このため、混合管部5の延設されている側に設けられた点火電極17やサーモカップル18は、頭部4の後方に位置して見え難く、コンロ用バーナ1の外観の低下を防止することができる。
【0030】
また、点火電極17及びサーモカップル18は、分布室13における下流側に位置している。上述したように、分布室13における下流側は保炎性の高い位置であり、この位置で炎を検知することにより炎の検知精度が向上する。
【0031】
また、
図3に示すように、分布室13には、直線流動部14と周回流動部15との境界部分から周回流動部15の上流部分にかけて(即ち、最初のカーブとなる部分に)、分布室13の内方に突出する抵抗付与部19が形成されている。抵抗付与部19は、周回流動部15の内周壁の下部に沿って設けられており、周回流動部15の上流部分の流路断面積を狭くすることにより、当該位置を通過する混合ガスに抵抗を付与する。
【0032】
直線流動部14と周回流動部15との境界部分では、比較的大きな圧力上昇が生じることがあるが、抵抗付与部19を設けることにより、圧力上昇に伴う大火力の形成を抑えることができる。
【0033】
しかも、抵抗付与部19が上流部分の周回流動部15に設けられていることにより、抵抗付与部19を通過して下流部分の周回流動部15へ向かう混合ガスの速度が上昇するので、分布室13における上流部分と下流部分との極度な圧力差を適度に抑えることができる。これにより、頭部4の各炎口3で形成される火炎の形状を均等化して、燃焼時に頭部4全周にわたり、均等な熱分布を得ることができる。
【0034】
また、周回流動部15の下流端には、逆流防止壁20が設けられている。逆流防止壁20を設けることにより、直線流動部14の上流部分から周回流動部15の下流端へ向かう混合ガス流が規制される。これにより、周回流動部15における混合ガスの逆流を確実に防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、抵抗付与部19を周回流動部15の内周壁の下部に位置させた例を挙げたが、本発明における抵抗付与部は、直線流動部14と周回流動部15との境界部分を通過する混合ガスに通過抵抗を付与することができればよいので、図示しないが、外周壁16内面や底面等に設けてもよい。また、直線流動部14と周回流動部15との境界部分における火力形成が適度に抑えられている場合や、保炎性が極度に低下する場合には、抵抗付与部19を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…コンロ用バーナ、2…胴部、3…炎口、4…頭部、5…混合管部、6…一次空気取入部、13…分布室、14…直線流動部、15…周回流動部、17…点火電極、18…サーモカップル(炎検知器)、19…抵抗付与部、20…逆流防止壁、x…混合管部の中心線、s…頭部の中心。