(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】作業車に搭載されるレーザレーダ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220729BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018110538
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】黒木 俊明
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202018102578(DE,U1)
【文献】特開2017-106745(JP,A)
【文献】特開2000-205949(JP,A)
【文献】特開平11-304650(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03091342(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03104190(EP,A1)
【文献】特開2016-033482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01C 1/00 - 15/14
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車に搭載されるレーザレーダであって、
車体周囲にレーザ光を送出する投光部と、
前記車体周囲の反射体によって反射された前記レーザ光である反射光を受ける受光部と、
前記投光部と前記受光部を覆うとともに、前記レーザ光と前記反射光の両方が通過する通過領域を有するフードと、
前記フードの少なくとも前記通過領域に形成された減光層と、を備え、
前記減光層は、前記フードの内側から外部へ通過する光に比べて前記外部から前記フードの内側へ通過する光を大きく減光させるレーザレーダ。
【請求項2】
前記減光層は、前記フードに貼付された減光シートであり、
前記減光シートの一方面は入射する光を部分的に反射する反射面として形成され、前記減光シートの他方面は入射する光は前記反射面に比べてほとんど反射しない非反射面として形成されており、前記減光シートは、前記反射面が表面となるように、前記非反射面を前記フードの表面に密着するように貼付されている請求項
1に記載のレーザレーダ。
【請求項3】
前記減光シートは、ミラーシートである請求項
2に記載のレーザレーダ。
【請求項4】
前記減光層は、前記フードに一体形成されている請求項
1に記載のレーザレーダ。
【請求項5】
前記減光層は、前記レーザ光及び前記反射光が通過する作用位置と、前記レーザ光及び前記反射光が通過しない退避位置とに選択移動可能な減光フィルタである請求項1に記載のレーザレーダ。
【請求項6】
前記減光フィルタは、前記フードの前記通過領域を覆うように形成された湾曲板状減光フィルタであり、前記湾曲板状減光フィルタは、移動機構によって、前記レーザ光及び前記反射光が当該湾曲板状減光フィルタを通過する前記作用位置と、前記レーザ光及び前記反射光が当該湾曲板状減光フィルタを通過しない前記退避位置とに、選択的に移動させられる請求項
5に記載のレーザレーダ。
【請求項7】
前記移動機構は、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物が発生している時には、前記減光フィルタを前記作用位置に移動させ、前記浮遊物が発生していない時には、前記減光フィルタを退避位置に移動させる請求項
6に記載のレーザレーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に搭載され、作業走行の妨げとなる障害物を検出するレーザレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によるトラクタでは、障害物検出センサとして90°を超えるスキャンレンジを有する4つのレーザレーダが備えられ、これにより車体周辺に存在する障害物が検出される。なお、このレーザレーダ(Laser radar)は、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)とも呼ばれている。レーザレーダからの信号を処理する障害物検出処理部は、検出された障害物の水平方向の幅と車体からの距離を算出して障害物検知情報を出力する。この障害物検知情報に基づき、走行制御部は、車体の減速または停車、あるいは障害物を回避する操舵を実行する。
【0003】
レーザレーダで用いられているレーザ光は、直進性が良好で、遠くの障害物を検出することができる。しかし、レーザ光は、土埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物によっても反射されるため、これらの浮遊物の集合体を人物や壁体などの障害物として誤検出する問題が生じる。
【0004】
特許文献2には、自動車に搭載され、レーザ光を用いた自車と先行車との車間距離を検出する装置が開示されている。この車間距離検出装置では、反射光の検出しきい値が、雨量検出手段によって検出された雨量に応じて、変更される。つまり、強い雨のために雨滴による反射光強度が大きい場合にはしきい値を高くし、弱い雨のため雨滴による反射光強度が小さい場合にはしきい値を低くすることで、雨滴による反射光の影響を回避しながらも、効果的に先行車からの反射光を検出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-014554公報
【文献】特開平04-291190公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示されたような、反射光の検出しきい値を専用の制御回路から出力される制御信号に基づいて調整されるレーザレーダ装置は、コスト高になるという問題がある。作業車の生産台数は、乗用車などに比べて少なく、大量生産によるコスト低減が困難であるので、その製造コストを抑えるためには、特別仕様を有しない、汎用的なレーザレーダ装置を用いることが要求される。
このため、一般に流通している安価な汎用のレーザレーダを用いるとともに、上述した誤検出に防止するための特別な制御回路を必要とせずに、土埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物による障害物の誤検出を抑制できる技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による、作業車に搭載されるレーザレーダは、車体周囲にレーザ光を送出する投光部と、前記車体周囲の反射体によって反射された前記レーザ光である反射光を受ける受光部と、前記投光部と前記受光部を覆うとともに、前記レーザ光と前記反射光の両方が通過する通過領域を有するフードと、前記フードの少なくとも前記通過領域に形成された減光層とを備え、前記減光層は、前記フードの内側から外部へ通過する光に比べて前記外部から前記フードの内側へ通過する光を大きく減光させる。
【0008】
この構成では、投光部から送出されて、車体周囲に存在する反射体によって反射されて戻ってくるレーザ光、つまり反射光の強度は、減光層の通過によって減じられる。土埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物によって反射された反射光だけでなく、本来検出したい反射体である人物、動物、車両などによって反射された反射光もその強度が減少させられる。しかしながら、本発明によるレーザレーダによって検出したい反射体は、土埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物に比べて、大きな反射面積を有することから、減光層の通過による強度減少は、人物、動物、車両によって反射された大きな強度を有する反射光に対しては、大きな影響を与えない。つまり、人物、動物、車両によって反射された反射光に基づく検出信号のS/Nは、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物によって反射された反射光に基づく検出信号のS/Nに比べて大きいので、減光層によるレーダ光の強度減少が、埃、雪片、雨滴、霧滴などによる誤検出を回避しながらも、本来検出したい人物、動物、車両などを検出することを妨げない。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記減光層は、前記フードに貼付された減光シートであり、前記減光シートの一方面は入射する光を部分的に反射する反射面として形成され、前記減光シートの他方面は入射する光は前記反射面に比べてほとんど反射しない非反射面として形成されており、前記減光シートは、前記反射面が表面となるように、前記非反射面を前記フードの表面に密着するように貼付されている。この構成では、減光層の形成が、フードに減光シートを貼り付けるだけで実現するので、製造コスト的に利点がある。
【0010】
さらに好適な実施形態の1つでは、前記減光シートは、前記フードの内側から外部へ通過する光に比べて前記外部から前記フードの内側へ通過する光を大きく減光させる減光シートである。ミラーシートとして販売されている減光シートがこのような仕様を有する。この構成では、ミラーシートである減光シートの表面反射特性により、投光部から送出されるレーザ光の強度低下に比べて、受光部に入ってくる反射光の強度低下が大きくなる。投光部から送出されるレーザ光の強度は比較的には大きく低下しないことから、強度があまり低下していないレーザ光によって反射体が照射され、その反射光の強度がミラーシートによって、比較的大きく低減される。これにより、人物、動物、車両によって反射された反射光に基づく検出信号のS/Nは、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物によって反射された反射光に基づく検出信号のS/Nに比べて大きくなる。これにより、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物が存在しているような環境においても、効果的に人物を壁体などの障害物が検出される。
【0011】
投光部から送出されるレーザ光がフードを通過する照射光通過領域と、反射光がフードを通過する反射光通過領域が実質的に区分けされている場合、前記減光層を前記反射光が通過する領域だけに形成することで、上述した減光シートとしてミラーシートを利用するのと同様な効果を得ることができる。
【0012】
投光部と受光部とが透光性材料からなるフードによって覆われているレーザレーダを用いられる場合、このフードを、より透光性の悪い材料、つまりより減光度の強い材料で製造されたフードで置き換えることで、通常のフードに減光シートを貼付するのと同じ効果を得ることが可能である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記減光層は、前記フードに一体形成されている。
【0013】
上述した減光層による効果は、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物が発生している状況下では有益であるが、そのような浮遊物が発生していない場合には、必要としない。したがって、状況によって、減光層の存在と不在とが選択できると好都合である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記減光層は、前記レーザ光及び前記反射光が通過する作用位置と、前記レーザ光及び前記反射光が通過しない退避位置とに選択移動可能な減光フィルタである。この実施形態においても、前記減光フィルタを、前記フードの内側から外部へ通過する光に比べて前記外部から前記フードの内側へ通過する光を大きく減光させるミラー減光フィルタとすることで、ミラーシートで得られた効果を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】レーザレーダを搭載した作業車の一例であるトラクタの側面図である。
【
図2】トラクタに配備された障害物センサ群を示す、トラクタの概略平面図である。
【
図3】トタクタの制御系の機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態におけるレーザレーダの斜視図である。
【
図5】レーザレーダの構造を模式的に示す断面図である。
【
図6】フードに減光シートを貼付する前のレーザレーダを示す斜視図である。
【
図7】レーザレーダの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】レーザレーダの第3の実施形態を示す断面図である。
【
図9】レーザレーダの第4の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を用いて、本発明によるレーザレーダ6を搭載し、障害物を検出する作業車を説明する。
図1で示された実施形態では、作業車は、圃場(作業地)を走行しながら作業を行う自動走行可能なトラクタである。
【0016】
図1に示されているように、このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に運転部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は運転部20に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。キャビン16の天井部には、GNSS(global navigation satellite system)モジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GNSS信号(GPS信号を含む)を受信するための衛星用アンテナがキャビン16の天井領域に取り付けられている。なお、衛星航法を補完するために、衛星測位モジュール80に、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
【0017】
図2に概略的に示すように、トラクタのボンネット15の先端部及び運転部20を覆っているキャビン16の後端部には、レーザレーダ6が設けられている。さらに、トラクタの車体1には、レーザレーダ6以外の障害物センサとして、超音波センサユニット42が備えられている。超音波センサユニット42は、車体1の前後左右に各2個ずつ、計8個設けられており、車体1の付近のほぼ全周領域にわたって、近距離に存在する障害物を検出する。さらに、車体1には、カメラ43が、車体1の前後左右に1つずつ、合計4つ設けられており、車体1の全周囲領域を撮影する。4つのカメラ43からの出力される撮影画像は、そのまま監視画像として、あるいは視点変換処理によって生成される俯瞰画像の元画像として用いられる。
【0018】
図3には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この実施形態の制御系には、車載ECU群からなる制御ユニット5、入出力信号処理ユニット50が含まれている。制御ユニット5には、通常の作業走行を実行する機能部に加えて、レーザレーダ6や超音波センサユニット42の検出結果を用いながら障害物衝突回避を実行する機能部が構築されている。入出力信号処理ユニット50には、トラクタの作業走行で取り扱われる入出力信号を処理する機能部が構築されている。制御ユニット5と入出力信号処理ユニット50とは、互いに車載LANによって接続されている。さらに、衛星測位モジュール80も同じ車載LANに接続されている。
【0019】
入出力信号処理ユニット50には、レーザレーダ6や超音波センサユニット42が接続している。
図3では、カメラ43は画像処理部44に接続されており、画像処理部44はカメラ43によって取得された撮影画像から監視画像を生成する。画像処理部44の処理結果は入出力信号処理ユニット50に入力される。
【0020】
入出力信号処理ユニット50には、そのほかに、車両走行機器群91、作業装置機器群92、報知デバイス群93、自動/手動切替操作具94、走行状態検出センサ群81、作業状態検出センサ群82が接続されている。車両走行機器群91には、操舵モータ14(
図1参照)をはじめ、車両走行のために制御される変速機構やエンジンユニットなどに付属する制御機器が含まれている。作業装置機器群92には、作業装置30や昇降機構31(
図1参照)を駆動するための制御機器が含まれている。報知デバイス群93には、車速、エンジン回転数、燃料残量などの報知や運転者や監視者に作業走行上の注意を促すための報知を行う、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、ブザーなどが含まれている。自動/手動切替操作具94は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードで走行中に自動/手動切替操作具94を操作することで、手動操舵での走行に切り替えられ、手動操舵での走行中に自動/手動切替操作具94を操作することで、自動操舵での走行に切り替えられる。
【0021】
走行状態検出センサ群81には、操舵角やエンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業状態検出センサ群82には、作業装置30の姿勢、地上高さ、使用幅、などの使用形態を検出する使用形態検出センサが含まれている。
【0022】
入出力信号処理ユニット50には、無線通信規格や有線通信規格を通じて外部のコンピュータとデータのやり取りを行う通信機能部も含まれているので、このトラクタの制御系は、遠隔地の管理センタ等に構築された管理コンピュータや、運転者や監視者が携帯するタブレットコンピュータやスマートフォン(モバイルフォン)などとデータ交換可能である。
【0023】
制御ユニット5は、走行制御部51、作業制御部52、走行経路設定部53、自車位置算出部54、車速管理部55、障害物検知処理ユニット56を備えている。走行経路設定部53は、自動走行の走行目標経路となる走行経路を読み出し可能にメモリに展開する。走行経路は、制御ユニット5内で生成してもよいし、別なコンピュータ上で生成されたものを、入出力信号処理ユニット50を通じてこの制御ユニット5に、ダウンロードしてもよい。自車位置算出部54は、GPS等を採用した衛星測位モジュール80からの測位データに基づいて、車体1の地図上の座標位置を算出する。
【0024】
走行制御部51は、自動走行制御機能(自動走行モード)と手動走行制御機能(手動走行モード)を有する。自動走行モードが選択されると、走行制御部51は、自動走行時において、自車位置算出部54からの自車位置と、走行経路設定部53で設定された走行経路とのずれ量を求め、このずれ量を小さくするための操舵指令や車速指令を算出する。作業制御部52は、自車位置に応じて必要な制御信号を作業装置機器群92に与える。手動走行モードが選択されると、作業制御部52は、運転者によるステアリングホイール22の操作に基づく手動走行が行われ、作業制御部52は、各種操作具の操作に基づいて作業装置機器群92を制御する。
【0025】
障害物検知処理ユニット56には、レーザレーダ6からの検出情報に基づいて障害物を決定する第1障害物決定部561と、超音波センサユニット42からのセンサ信号に基づいて前記障害物を決定する第2障害物決定部562とが含まれている。
【0026】
走行制御部51による自動走行では、走行中、障害物検知処理ユニット56によって、車体1の走行方向に障害物が検出され、車体1と障害物との距離が所定範囲に入ると、車体1の減速及び停止が行われる。
【0027】
次に、図面を用いて、この実施形態でのレーザレーダ6を説明する。
図4は、レーザレーダ6の斜視図であり、
図5は、レーザレーダ6の構造を模式的に示す断面図である。レーザレーダ6は、略直方体状のベース61と、ベース61の上面に装着された円錐台状のフード62とからなるハウジング60によって、内部構造が覆われている。フード62は透光性材料で作られている。レーザレーダ6から送出されるレーザ光及び反射体で反射して戻ってくるレーザ光(反射光)は、フード62の周壁62aを通過する。フード62の周壁62aのレーザ光が通過する通過領域THには、減光層NDとしての減光シート63が貼付されている。この減光シート63は、ミラーシート(ミラー減光シート)と呼ばれるものであり、一方面(反射面)から入射する光を部分的に反射し、他方面(非反射面)から入射する光はほとんど反射しないシートである。
図6に示すように、シートを貼付する際には、反射面が表面となるように、非反射面をフード62の周壁62aの表面に密着させる。
【0028】
図5に示すように、このレーザレーダ6の内部構造は、車体周囲にレーザ光を送出する投光部71と、車体周囲の反射体によって反射されたレーザ光である反射光を受ける受光部72と、レーザ光及び反射光を90度偏向させる回転式の偏向ユニット73と、評価ユニット74とからなる。
【0029】
投光部71は、レーザ光源71aと投光光学系71bとを含み、投光用レーザ光を生成する。生成されたレーザ光は偏向ユニット73によって略90度に偏向され、フード62の周壁62aの通過領域THから減光シート63を通り抜けて、車体周辺に送出される。受光部72は、受光光学系72bとフォトダイオード72aとを含み、減光シート63とフード62とを通過し、偏向ユニット73によって略90度に偏向された反射光の強度を測定する。
【0030】
偏向ユニット73は、偏向ミラー73aと、この偏向ミラー73aを縦軸心周りで回転させる回転機構73bとを含む。この縦軸心は、投光光学系71b及び受光光学系72bの光学中心線と一致している。
【0031】
偏向ミラー73aが回転機構73bによって連続的に回転駆動されることにより、レーザ光が車体周辺を平面的にスキャンする。このレーザレーダ6のスキャン角度は270°に設定されているので、車体1の前方及び後方の270°の範囲で、車体1から数m内に存在する反射体(障害物)が検出される。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)
図7に、第2の実施形態のレーザレーダ6が示されている。このレーザレーダ6は、内部構造及びハウジング60の形状は第1の実施形態と実質的に同一である。相違点は、減光層NDとしての減光シート63がフード62の周壁62aに貼付されておらず、減光シート63と同様な光学的性能が周壁62aに与えられている。つまり、減光層NDがフード62の周壁62aに一体形成されている。この実施形態においては、周壁62aの表面をミラー処理することで、ミラーシートを貼付した第1の実施形態と同様な効果を得ることも可能である。
【0033】
(2)
図8に、第3の実施形態のレーザレーダ6が示されている。このレーザレーダ6も、内部構造及びハウジング60の形状は第1の実施形態と実質的に同一であるが、減光層NDとしての減光シート63がフード62の周壁62aに貼付されていない。減光層NDとしての機能は、周壁62aの通過領域THを覆うように配置された湾曲板状の減光フィルタ64が果たす。なお、この減光フィルタ64を、移動機構MMを用いて、通過領域THを覆う位置(レーザ光及び前記反射光が通過する作用位置)と通過領域THから離脱した位置(前記反射光が通過しない退避位置)に選択移動可能にしてもよい。その場合、埃、雪片、雨滴、霧滴などの浮遊物が発生している時には、減光フィルタ64は作用位置に移動され、浮遊物が発生していない時には、減光フィルタ64は退避位置に移動される。なお、この減光フィルタ64の外側の表面をミラー処理したミラー減光フィルタを用いてもよい。
【0034】
(3)
図9に、第4の実施形態のレーザレーダ6が示されている。この実施形態が先の実施形態と違いは、フード62の内部から外部にレーダ光が出ていくレーザ光通過領域と、フード62の外部から内部にレーダ光が入ってくる反射光通過領域が異なっていることである。このため、減光層ND(減光シート63、減光フィルタ64)が反射光通過領域にだけ設けられている
。
【0035】
(4)上述した実施形態では、レーザレーダ6は、車体1の前後に配置された2個のレーザレーダ6から構成された。これに代えて、少なくとも車体1の進行方向に1個のレーザレーダ6が配置されてもよいし、3つ以上のレーザレーダ6が配置されてもよい。
【0036】
(5)上述した実施形態では、耕耘装置を装備したトラクタが作業車として取り上げられたが、耕耘装置以外の作業装置30を装備したトラクタ、さらには、コンバインや田植機などの農作業機や建機などにも本発明は適用可能である。さらに、上述したトラクタは、自動走行と手動走行とが可能であったが、手動走行のみのトラクタに本願発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、レーザレーダを備えた作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
5 :制御ユニット
56 :障害物検知処理ユニット
561 :第1障害物決定部
562 :第2障害物決定部
6 :レーザレーダ
60 :ハウジング
61 :ベース
62 :フード
62a :周壁
63 :減光シート
64 :減光フィルタ
71 :投光部
72 :受光部
ND :減光層
TH :通過領域