(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ミラー表示装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20220729BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20220729BHJP
B60R 1/12 20060101ALI20220729BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20220729BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220729BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20220729BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20220729BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G09G3/36
B60R1/04 D
B60R1/12 Z
B60R1/20
G02F1/13 505
G02F1/133 580
G09G3/20 621K
G09G3/20 642P
G09G3/20 670L
G09G3/20 680F
G09G3/34 J
(21)【出願番号】P 2018130548
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100090228
【氏名又は名称】加藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】郷原 良寛
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190535(JP,A)
【文献】特開昭61-156031(JP,A)
【文献】特開昭60-244644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0344166(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0001569(US,A1)
【文献】国際公開第2018/179987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
G02F 1/13 , 1/133
B60R 1/00 - 1/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニター表示装置と、該モニター表示装置の表示面の前面側に配置されたミラー光学素子を有するミラー表示装置において、
前記ミラー光学素子は電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化して、相対的に、低反射率で高透過率の透過状態と、高反射率で低透過率の反射鏡状態と、該両状態の中間の反射率低減反射鏡状態に、段階的にまたは無段階に、かつ可逆的に変化可能な素子であり、
前記ミラー表示装置は、動作モードとしてモニターモードとミラーモードを有し、
前記モニターモードは、前記モニター表示装置を表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記透過状態に設定するモードであり、
前記ミラーモードは、前記モニター表示装置を非表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記反射鏡状態または前記反射率低減反射鏡状態に設定するモードであり、
前記ミラー表示装置は温度センサと制御回路を有し、
前記温度センサは前記モニター表示装置の温度を検出できる箇所に設置され、
前記制御回路は、前記モニターモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記モニター表示装置の輝度を調整して該モニター表示装置の温度制御を行うものであり、もしくは前記温度センサで検出される温度に基づいて表示信号による前記モニター表示装置の駆動状態を調整して該モニター表示装置の表示品位に関する温度補償制御を行うものであり、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御を行うものであり、かつ
前記制御回路は、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記ミラー光学素子の駆動状態を調整して該ミラー光学素子の反射率の温度補償制御を行うものである、
そのように構成されたミラー表示装置。
【請求項2】
前記温度センサは前記モニター表示装置に設置されている、請求項1に記載のミラー表示装置。
【請求項3】
前記ミラー光学素子は前記モニター表示装置の枠体の前面に密着設置されて、該モニター表示装置と一体化されている、請求項1または2に記載のミラー表示装置。
【請求項4】
前記温度センサは可変抵抗型温度センサであり、
前記ミラー表示装置は温度検出回路を有し、
前記温度検出回路は前記温度センサの抵抗値を、該抵抗値に対応する値の電圧に変換して、該電圧を前記制御回路に入力する、
請求項1から3のいずれか1つに記載のミラー表示装置。
【請求項5】
前記モニター表示装置は液晶表示装置であり、
前記制御回路は、前記モニターモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記液晶表示装置のバックライトの輝度を調整して該モニター表示装置の温度制御を行うものであり、もしくは前記温度センサで検出される温度に基づいて表示信号による前記液晶表示装置の駆動状態を調整して該液晶表示装置の表示品位に関する温度補償制御を行うものであり、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御を行うものである、
請求項1から4のいずれか1つに記載のミラー表示装置。
【請求項6】
前記ミラー光学素子は、背面側に反射型偏光板を配置したTN型液晶パネル有し、
前記制御回路は、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記TN型液晶パネルの実効駆動電圧を調整して該TN型液晶パネルの反射率の温度補償制御を行う、
請求項1から5のいずれか1つに記載のミラー表示装置。
【請求項7】
前記ミラー表示装置は車載用ミラーであり、
前記モニター表示装置は前記モニターモード時に、後方カメラで撮像された車両後方の映像を表示し、前記ミラー光学素子は前記ミラーモード時に、車両後方像を反射する、
請求項1から6のいずれか1つに記載のミラー表示装置。
【請求項8】
モニター表示装置の前面にミラー光学素子を配置して、モニターモードとミラーモードを切り替えて使用できるようにしたミラー表示装置の制御方法において、
前記ミラー光学素子は電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化して、相対的に、低反射率で高透過率の透過状態と、高反射率で低透過率の反射鏡状態と、該両状態の中間の反射率低減反射鏡状態に、段階的にまたは無段階に、かつ可逆的に変化可能な素子であり、
前記モニターモードは、前記モニター表示装置を表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記透過状態に設定するモードであり、
前記ミラーモードは、前記モニター表示装置を非表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記反射鏡状態または前記反射率低減反射鏡状態に設定するモードであり、
前記制御方法は、
前記ミラー表示装置に
おいて前記モニター表示装置の温度を検出できる箇所に温度センサを配設し、
前記温度センサを、前記モニターモード時は前記モニター表示装置の温度制御に使用し、もしくは該モニター表示装置の表示品位に関する温度補償制御に使用し、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御に使用し、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモード時は前記ミラー光学素子の反射率の温度補償制御に使用する方法である、
ミラー表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モニター表示装置の前面にミラー光学素子を配置して、モニターモードとミラーモードを切り替えて使用できるようにしたミラー表示装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モニター表示装置の前面にミラー光学素子を配置して、モニターモードとミラーモードを切り替えて使用できるようにしたミラー表示装置として、本出願人の出願にかかる特許文献1,2に記載されたものがある。ここでミラー光学素子は、電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化して、相対的に、低反射率で高透過率の透過状態と、高反射率で低透過率の反射鏡状態と、該両状態の中間の反射率低減反射鏡状態に、段階的にまたは無段階に、かつ可逆的に変化可能な素子である。
【0003】
モニター表示装置はそれ自身の発熱あるいは周囲の温度により様々な影響を受ける。例えば、液晶モニターにおいては、液晶パネルの温度が過度に上昇すると液晶パネルが劣化する。そこで、従来より、液晶パネルの温度を検出して、温度が所定値を超えたときに、熱源となっているバックライトの出力を低下させる対策をとっている。また、液晶パネルは駆動電圧が同じでも環境温度により透過率や表示の色度が変動し、表示品位を低下させる場合がある。そこで、従来より、環境温度を検出して、該検出温度に応じて表示信号(映像信号や画像信号)による液晶パネルの駆動状態を調整する(例えば、駆動信号のレベルを調整する)ことにより、透過率や表示の色度の変動を抑制して、環境温度の変化にかかわらず表示品位を維持する対策(表示品位に関する温度補償制御)をとっている(例えば、特許文献3に記載の色度補正制御)。また、特許文献4には、液晶表示装置の前面に液晶光学素子による光量調節部材を配置して表示光量を調節するようにした表示装置において、環境温度を検出して、該検出温度に応じて液晶光学素子に印加する実効駆動電圧を可変制御することにより、環境温度による液晶光学素子の透過率の変動を抑制して、安定した調光性能を得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-008881号公報
【文献】国際公開第WO2018/061676号パンフレット
【文献】特開2000-267629号公報
【文献】特開2004-317908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、モニター表示装置の前面にミラー光学素子を配置して、モニターモードとミラーモードに切り替えて使用できるようにしたミラー表示装置において、モニターモード時のモニター表示装置に対する温度制御および表示品位に関する温度補償制御の少なくとも一方の制御と、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモード時の、ミラー光学素子に対する反射率の温度補償制御を少ない部品点数で実現できるミラー表示装置およびその制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のミラー表示装置は、モニター表示装置と、該モニター表示装置の表示面の前面側に配置されたミラー光学素子を有するミラー表示装置において、前記ミラー光学素子は電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化して、相対的に、低反射率で高透過率の透過状態と、高反射率で低透過率の反射鏡状態と、該両状態の中間の反射率低減反射鏡状態に、段階的にまたは無段階に、かつ可逆的に変化可能な素子であり、前記ミラー表示装置は、動作モードとしてモニターモードとミラーモードを有し、前記モニターモードは、前記モニター表示装置を表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記透過状態に設定するモードであり、前記ミラーモードは、前記モニター表示装置を非表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記反射鏡状態または前記反射率低減反射鏡状態に設定するモードであり、前記ミラー表示装置は温度センサと制御回路を有し、前記制御回路は、前記モニターモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記モニター表示装置の輝度を調整して該モニター表示装置の温度制御を行うものであり、もしくは前記温度センサで検出される温度に基づいて表示信号による前記モニター表示装置の駆動状態を調整して該モニター表示装置の表示品位に関する温度補償制御を行うものであり、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御を行うものであり、かつ前記制御回路は、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記ミラー光学素子の駆動状態を調整して該ミラー光学素子の反射率の温度補償制御を行うものである。これによれば、温度センサをモニターモード時はモニター表示装置の温度制御および表示品位に関する温度補償制御の少なくとも一方の制御に使用し、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモード時はミラー光学素子の反射率の温度補償制御に使用するので、温度センサをモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で共用することができる。したがって、温度センサをモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で別々に用意する場合に比べて部品点数を削減することができる。
【0007】
前記温度センサは前記モニター表示装置に設置されているものとすることができる。これによれば、温度センサにより、モニターモード時はモニター表示装置の温度を検出することができ、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモード時はミラー光学素子の周囲の環境温度を検出することができる。この場合、前記温度センサは前記モニター表示装置の枠体の内側に設置されているものとすることができる。これによれば、温度センサは、モニターモード時にモニター表示装置の温度を高精度に検出することができる。
【0008】
前記ミラー光学素子は前記モニター表示装置の枠体の前面に密着設置されて、該モニター表示装置と一体化されているものとすることができる。これによれば、モニター表示装置に設置された温度センサにより、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモード時に、ミラー光学素子の周囲の環境温度を精度よく検出することができる。
【0009】
前記温度センサは可変抵抗型温度センサであり、前記ミラー表示装置は温度検出回路を有し、前記温度検出回路は前記温度センサの抵抗値を、該抵抗値に対応する値の電圧に変換して、該電圧を前記制御回路に入力するものとすることができる。これによれば、温度検出回路をモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で共用するので、温度検出回路をモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で別々に用意する場合に比べて部品点数を削減することができる。
【0010】
前記モニター表示装置は液晶表示装置であり、前記制御回路は、前記モニターモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記液晶表示装置のバックライトの輝度を調整して該モニター表示装置の温度制御を行うものであり、もしくは前記温度センサで検出される温度に基づいて表示信号による前記液晶表示装置の駆動状態を調整して(例えば、表示信号に対応した駆動信号のレベルを調整する)該液晶表示装置の表示品位に関する温度補償制御を行うものであり、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御を行うものであるとすることができる。これによれば、液晶表示装置の温度制御および表示品位に関する温度補償制御の少なくとも一方の制御を行うことができる。
【0011】
前記ミラー光学素子は、背面側に反射型偏光板を配置したTN(Twisted Nematic)型液晶パネル有し、前記制御回路は、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモードにおいて、前記温度センサで検出される温度に基づいて前記TN型液晶パネルの実効駆動電圧(電圧駆動の場合は交流電圧値、PWM駆動の場合はデュティ比に応じた交流電圧相当値)を調整して該TN型液晶パネルの反射率の温度補償制御を行うものとすることができる。これによれば、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモードにおいて、環境温度変化によるミラー光学素子の反射率の変動を抑制して、反射率が安定した反射率低減反射鏡状態を得ることができる。この場合、前記ミラー光学素子は、前記TN型液晶パネルの実効駆動電圧がゼロのときに、前記反射鏡状態となるものとすることができる。これによれば、ミラー表示装置の電源が遮断されてモニター表示装置が非表示になったときに、ミラー表示装置はミラー光学素子によりミラーとしての機能を維持することができる。
【0012】
前記ミラー表示装置は車載用ミラーであり、前記モニター表示装置は前記モニターモード時に、後方カメラで撮像された車両後方の映像を表示し、前記ミラー光学素子は前記ミラーモード時に、車両後方像を反射するものとすることができる。この車載用ミラーによれば、モニターモード時にモニター表示装置が過大な温度になるのを抑制でき、ミラー光学素子が反射率低減反射鏡状態のミラーモード時(防眩モード時)に温度変化による反射率の変動を抑制することができる。
【0013】
前記制御回路は、例えば、手動操作に基づき前記モニターモードと前記ミラーモードの切り替えを行うものとすることができる。また、前記制御回路は、例えば、前記ミラーモード時に、周囲光の光量情報と後方光の光量情報に基づき、または手動操作に基づき前記反射鏡状態と前記反射率低減反射鏡状態の切り替えを行うものとすることができる。
【0014】
この発明のミラー表示装置の制御方法は、モニター表示装置の前面にミラー光学素子を配置して、モニターモードとミラーモードを切り替えて使用できるようにしたミラー表示装置の制御方法において、前記ミラー光学素子は電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化して、相対的に、低反射率で高透過率の透過状態と、高反射率で低透過率の反射鏡状態と、該両状態の中間の反射率低減反射鏡状態に、段階的にまたは無段階に、かつ可逆的に変化可能な素子であり、前記モニターモードは、前記モニター表示装置を表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記透過状態に設定するモードであり、前記ミラーモードは、前記モニター表示装置を非表示状態に設定し、かつ前記ミラー光学素子を前記反射鏡状態または前記反射率低減反射鏡状態に設定するモードであり、前記制御方法は、前記ミラー表示装置に温度センサを配設し、前記温度センサを、前記モニターモード時は前記モニター表示装置の温度制御に使用し、もしくは該モニター表示装置の表示品位に関する温度補償制御に使用し、または前記温度制御および前記表示品位に関する温度補償制御の両方の制御に使用し、前記ミラー光学素子が前記反射率低減反射鏡状態の前記ミラーモード時は前記ミラー光学素子の反射率の温度補償制御に使用する方法である。これによれば、温度センサをモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で共用することができる。したがって、温度センサをモニター表示装置の制御とミラー光学素子の制御で別々に用意する場合に比べて部品点数を削減することができる。この制御方法において、前記ミラー光学素子が前記反射鏡状態の前記ミラーモードでは、前記ミラー光学素子の反射率の温度補償制御を行わないものとすることができる。すなわち、ミラー光学素子が反射鏡状態のミラーモードではミラー光学素子を高反射率で低透過率にすればよいので、ミラー光学素子の温度補償制御を不要にすることができる。また、この制御方法において、前記モニターモードでは、前記ミラー光学素子の反射率の温度補償制御を行わないものとすることができる。すなわち、モニターモードでは、ミラー光学素子を低反射率で高透過率にすればよいので、ミラー光学素子の温度補償制御を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図2の電子インナーミラーの制御システム構成を示すブロック図である。
【
図2】この発明を用いて構成した電子インナーミラーの機械的構造部分の実施の形態を示す模式図で、同電子インナーミラーをそのミラー面および表示面に直交する平面で切断した概略構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図2における電子ミラー素子の分解斜視図である。
【
図4】
図2における電子ミラー素子の層構造の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図1のマイコン(制御回路)による制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を車両用インナーミラーに適用した場合の、この発明の実施の形態を説明する。この車両用インナーミラーは、被視認面上に、ミラー光学素子による反射率・透過率可変式の物理ミラー(反射鏡によるミラー)と、その背後に、後方カメラのカメラモニターとして機能するモニター表示装置を重ねて配置し、物理ミラーの反射率と透過率を相互に逆方向に変化させることにより、両ミラーの機能を切り替えて使用できるようにしたものである。ここでは、この車両用インナーミラーを「電子インナーミラー」というものとする。また、この電子インナーミラーの動作モードについて、物理ミラーを使用する動作モードを「ミラーモード」、モニター表示装置を使用する動作モードを「モニターモード」というものとする。ミラーモードは物理ミラーの反射率を高めた(すなわち、反射鏡状態とした)「非防眩モード」と、物理ミラーの反射率を低減させた(すなわち、反射率低減反射鏡状態とした)「防眩モード」に切り替えることができる。モニターモード時は、物理ミラーは反射率を反射率低減反射鏡状態よりも低減させた透過状態とされて、電子インナーミラーの被視認面上に、後方カメラで撮像されてモニター表示装置に表示された映像が現れる。また、ミラーモード時は、モニター表示装置はオフ(非発光で非表示)にされて、電子インナーミラーの被視認面上に物理ミラーによる非防眩状態または防眩状態の反射像が現れる。
【0017】
図2は、この発明による電子インナーミラー10(ミラー表示装置)の機械的構造部分の概略を示す。電子インナーミラー10は、一般的なインナーミラーと同様に、図示しないステーにより、車両室内の前上部の左右中央位置で、天井またはウインドシールドに吊り下げ支持される。電子インナーミラー10において、ハウジング12の内部空間12aには、電子ミラー素子14および回路基板16が収容され固定支持されている。電子ミラー素子14は内部空間12aの開口部12bを塞ぐ位置に配置されている。この状態で、電子ミラー素子14の被視認面14aはハウジング12の外部空間に臨み、運転者等の車両搭乗者の視点18から視認される。被視認面14aには、電子インナーミラー10の動作モードに応じて、ミラーモード時には物理ミラーによる反射面が、モニターモード時にはモニター表示装置に表示された映像が択一的に現れる。回路基板16は電子ミラー素子14の背後位置に配置され、ハウジング12の外部空間からは見えない。電子ミラー素子14および回路基板16は、ハウジング12の、内部空間12aに臨む内壁面に形成された構造部分(図示せず)にそれぞれ固定支持されている。
【0018】
電子ミラー素子14の構成部品を
図3に示す。電子ミラー素子14は、モニター表示装置20と、モニター表示装置20の表示面20aの前面側に配置されるミラー光学素子22を有する。モニター表示装置20とミラー光学素子22は、対面する周縁部どうしを両面テープ21で相互に貼り付けて一体化されて、電子ミラー素子14を構成する。
【0019】
一体化された電子ミラー素子14の構造を
図2を参照して説明する。モニター表示装置20は高精細な動画像表示が可能なフルカラーモニターLCDで構成されている。すなわち、モニター表示装置20は、フルカラーTFT液晶等によるカラー液晶パネル24と、カラー液晶パネル24の背面側に積層配置されたバックライト26を有する。バックライト26は、モニター表示装置20がオン(動作、表示)のときは点灯され、オフ(非動作、非表示)のときは消灯される。カラー液晶パネル24とバックライト26の積層体25には、金属製(例えば鉄製)の枠体28が被せて装着されている。枠体28は積層体25の背面全面および側面全面および正面周縁部全周を覆っている(
図3参照)。枠体28の内周側の適宜の箇所には温度センサ30が収容配置されている。温度センサ30は例えば可変抵抗型温度センサ(サーミスタ)で構成される。この実施の形態では、温度センサ30は、図
2および
図3に示すように、枠体28の上辺部の長手方向中央部において、枠体28の内周面と積層体25の上端面との間に形成された空間32に収容され固定配置されている。ミラー光学素子22は、背面側に反射型偏光板を配置したTN型液晶パネルで構成される。ミラー光学素子22は、実効駆動電圧(電圧駆動の場合は交流電圧値、PWM駆動の場合はデュティ比に応じた交流電圧相当値)に応じて反射率と透過率が相互に逆方向に変化する。すなわち、実効駆動電圧がゼロ(無電圧印加、すなわち電圧が印加されない状態)のときは反射率が最高値で透過率が最低値である(反射鏡状態)。実効駆動電圧を上げていくと反射率が徐々に低下し、透過率が徐々に上昇する(反射率低減反射鏡状態)。そして、実効駆動電圧が所定値以上になると反射率が概ね最低値で透過率が概ね最高値に達して飽和する(透過状態)。モニター表示装置20とミラー光学素子22は、対向面の周縁部(枠体28の正面周縁部を構成するベゼル部28aの位置)どうしを両面テープ21で相互に貼り付けることにより、密着状態に一体化されている。
【0020】
電子ミラー素子14において、モニター表示装置20とミラー光学素子22は、電子インナーミラー10の動作モードに応じて次のように動作状態が切り替えられる。
《モニターモード》
モニター表示装置20はオン(バックライト26は点灯)される。ミラー光学素子22には、動作温度範囲内の温度変化に関わらず最低反射率(最高透過率)を得るのに十分な大きさの固定の実効駆動電圧(オン電圧)が印加される。これにより、モニター表示装置20は映像を発光表示し、ミラー光学素子22は透過状態となる。その結果、車両搭乗者の視点18からは、モニター表示装置20の映像がミラー光学素子22を透過して視認される。モニターモードではバックライト26の点灯によりモニター表示装置20が発熱する。このときモニター表示装置20の温度は温度センサ30で検出される。この温度検出に基づき、モニター表示装置20のカラー液晶パネル24の駆動について、表示品位に関する温度補償制御が行われる。また、検出される温度が所定値以上に達すると、バックライト26の輝度が自動的に低減されて過度の温度上昇が抑制される。モニターモードではミラー光学素子22には固定のオン電圧を印加すればよいので、ミラー光学素子22の温度補償制御は不要である。
《ミラーモード》
モニター表示装置20はオフ(バックライト26は消灯)される。ミラー光学素子22には、ゼロ電圧(オフ電圧、すなわち電圧印加なし)または中間電圧が印加される。オフ電圧は最高反射率が得られる電圧である。中間電圧は、オン電圧とオフ電圧の中間の実効駆動電圧であり、所定の防眩反射率(最低反射率と最高反射率の間の反射率で、夜間に所定の防眩効果が得られる反射率)が得られる電圧である。これにより、モニター表示装置20は非表示となり、ミラー光学素子22は反射鏡状態(オフ電圧印加のとき)または反射率低減反射鏡状態(中間電圧印加のとき)となる。その結果、車両搭乗者の視点18からは、ミラー光学素子22が反射鏡状態のとき(車両のイグニッション電源オフ時を含む非防眩モード)は非防眩の反射像が視認され、ミラー光学素子22が反射率低減反射鏡状態のとき(防眩モード)は防眩された反射像が視認される。このとき、モニター表示装置20はオフでバックライト26による発熱がないので、温度センサ30で検出される温度はモニター表示装置20の周囲の環境温度となり、ミラー光学素子22の温度と見なせる。防眩モードでは、環境温度にかかわらず所定の防眩反射率が維持されるように、温度センサ30で検出されるミラー光学素子22の温度に応じて、ミラー光学素子22の実効駆動電圧(中間電圧)が可変制御される。すなわち、実効駆動電圧が固定の場合は、ミラー光学素子22の反射率は、温度が低いときは高く、温度が高いときは低くなる。したがって、防眩モードでは、ミラー光学素子22の実効駆動電圧を、温度センサ30で検出される温度が低いときは高くし、検出される温度が高くなるに従って低くしていく。これにより、防眩モードでは、ミラー光学素子22の温度に関わらず所定の防眩反射率が維持される。非防眩モードではミラー光学素子22にはオフ電圧を印加(すなわち電圧印加なしに)すればよいので、ミラー光学素子22の温度補償制御は不要である。また、ミラーモードでは、非防眩モード、防眩モードのいずれの場合も、モニター表示装置20はオフなので、モニター表示装置20の温度補償制御は不要である。
【0021】
以上の動作によれば、温度センサ30は、モニター表示装置20の制御に使用される期間はミラー光学素子22の制御に使用されず、ミラー光学素子22の制御に使用される期間はモニター表示装置20の制御に使用されない。すなわち、温度センサ30をモニター表示装置20の制御とミラー光学素子22の制御に同時に使用する期間は存在しない。したがって、温度センサ30をモニター表示装置20の制御とミラー光学素子22の制御で共用することによる問題は生じない。また、制御回路(
図1のマイコン92)は両制御を同時並行して実施する必要がないので、処理負荷が軽くてすむ。
【0022】
ここで、電子ミラー素子14の層構造の詳細例を
図4を参照して説明する。これは、特許文献2の
図7に記載された電子ミラー素子と同じ構造である。なお、
図4では、枠体28および温度センサ30の図示は省略している。
図4において、電子ミラー素子14の左側は電子ミラー素子14の正面側であり、右側は同背面側である。車両搭乗者の視点18は電子ミラー素子14の正面側に配置される。ミラー光学素子22は、2枚のガラス基板46,48をスペーサ49を挟んで対向させて、空隙52を形成した構造を有する。空隙52にはTN型液晶54が封入されている。空隙52の外周部全周は封止材55(接着剤)で封止されている。ガラス基板46,48の互いの内側の面(対向面)の全面にはITO透明電極膜56,58がそれぞれ成膜されている。ITO透明電極膜56,58の表面には配向膜57,59がそれぞれ形成されている。正面側(表側)のガラス基板46の正面側の面には吸収型偏光板P1が貼着されている。吸収型偏光板P1は水平偏光を透過し、垂直偏光を吸収するように、構成されかつ偏光軸(偏光方向)が配置されている。背面側(裏側)のガラス基板48の背面側の面には反射型偏光板P2が貼着されている。反射型偏光板P2は水平偏光を透過し、垂直偏光を反射するように、構成されかつ偏光軸が配置されている。反射型偏光板P2としては例えばスリーエム社製DBEF(登録商標)を使用することができる。
【0023】
一方、モニター表示装置20はカラーモニターLCDで構成される。すなわち、モニター表示装置20は、カラー液晶パネル24と、カラー液晶パネル24の背面側に配置されたバックライト26を有する。カラー液晶パネル24は2枚のガラス基板64,66をスペーサ68を挟んで対向させて空隙70を形成した構造を有する。空隙70にはIPS(In Plane Switching)型液晶72が封入されている。空隙70の外周部全周は封止材74で封止されている。正面側のガラス基板64(カラーフィルター基板)の正面側の面には吸収型偏光板P3が貼着されている。吸収型偏光板P3は水平偏光を透過し、垂直偏光を吸収するように、構成されかつ偏光軸が配置されている。ガラス基板64の背面側の面(ガラス基板66との対向面)には、カラーフィルター76、配向膜80が順次積層されている。背面側のガラス基板66(アレイ基板)の正面側の面(ガラス基板64との対向面)には、TFT回路およびITO透明電極膜(画素電極)を含むアレイ膜82、配向膜84が順次積層されている。ガラス基板66の背面側の面には吸収型偏光板P4が貼着されている。吸収型偏光板P4は水平偏光を吸収し、垂直偏光を透過するように、構成されかつ偏光軸が配置されている。偏光板P1~P4の、水平偏光、垂直偏光に対する透過、吸収、反射の関係をまとめると次表のとおりである。
P1(吸収型) P2(反射型) P3(吸収型) P4(吸収型)
--------------------------------
水平偏光: 透過 透過 透過 吸収
垂直偏光: 吸収 反射 吸収 透過
【0024】
図4の層構造を有する電子ミラー素子14の各動作モードにおける動作を説明する。
《モニターモード》
ミラー光学素子22にオン電圧を印加する。すなわち、TN型液晶54中の液晶分子が完全に立ち上がった状態となる交流電圧または該交流電圧に相当するPWM信号を印加する。また、モニター表示装置20をオンする。すなわち、バックライト26を点灯し、IPS型液晶72に画素単位で映像の画素に応じた駆動信号を印加する。このとき、モニター表示装置20の最表面の吸収型偏光板P3からは水平偏光の映像光が出射される。この映像光はミラー光学素子22をそのまま透過して車両搭乗者の視点18に導かれて該視認者に視認される。このときミラー光学素子22に入射される外光は吸収型偏光板P1に入射される。入射された外光の垂直偏光は吸収型偏光板P1で吸収される。また、該外光の水平偏光はミラー光学素子22を透過し、モニター表示装置20に入射され、吸収型偏光板P3を透過して、吸収型偏光板P4で吸収される。したがって、該水平偏光は車両搭乗者の視点18には戻ってこない。
《ミラーモードの非防眩モード》
ミラー光学素子22にオフ電圧を印加する。すなわち、TN型液晶54に対する電圧印加なしにする。また、モニター表示装置20をオフする。すなわち、バックライト26を消灯し、IPS型液晶72に対する駆動信号印加をなしとする。このとき、ミラー光学素子22に入射される外光は吸収型偏光板P1に入射される。入射された外光の水平偏光成分は吸収型偏光板P1を透過する。透過した水平偏光はTN型液晶54で偏光軸が90度回転されて垂直偏光となる。この垂直偏光は偏光軸が水平方向に設定されている反射型偏光板P2で反射される。反射された垂直偏光はTN型液晶54で偏光軸が90度回転されて水平偏光となる。この水平偏光は偏光軸が水平方向に設定されている吸収型偏光板P1を透過して車両搭乗者の視点18に導かれる。これにより高反射率の反射鏡状態が得られる。
《ミラーモードの防眩モード》
ミラー光学素子22にオフ電圧とオン電圧の間の中間電圧(所定の防眩反射率が得られる電圧)を印加する。すなわち、TN型液晶54中の液晶分子が完全には立ち上がらない状態となる交流電圧または該交流電圧に相当するPWM信号を印加する。また、モニター表示装置20をオフする。すなわち、バックライト26を消灯し、IPS型液晶72に対する駆動信号印加をなしとする。このとき、ミラー光学素子22に入射される外光は吸収型偏光板P1に入射される。入射された外光の水平偏光成分は吸収型偏光板P1を透過する。透過した水平偏光はTN型液晶54に入射されるが、TN型液晶54には中間電圧が印加されているので、入射した水平偏光は完全な垂直偏光とはならず、一部が反射型偏光板P2を透過し、残りの一部が反射型偏光板P2で反射される。反射された偏光はTN型液晶54を透過し、該偏光の一部が吸収型偏光板P1を透過して車両搭乗者の視点18に導かれる。これにより非防眩モードよりも反射率を低減させた反射率低減反射鏡状態(防眩反射鏡状態)が得られる。温度センサ30で検出されるミラー光学素子22の温度に応じて、中間電圧の値(電圧駆動の場合は交流電圧値、PWM駆動の場合はデューティ比)を可変制御することにより、所定の防眩反射率が維持される。
【0025】
電子インナーミラー10の制御システム構成を
図1を参照して説明する。後方カメラ86は車両の車外後部の左右中央位置に、光軸を車両後方水平方向に向けて設置されたカラービデオカメラである。モニターモード時に後方カメラ86で撮像された車両後方の映像は、描画回路88で必要な信号処理が施された後に、モニター表示装置20に供給されて、モニター表示装置20にリアルタイムで表示される。温度センサ30はここではサーミスタで構成されている。温度検出回路90は温度センサ30の抵抗値を、該抵抗値に対応する値の電圧に変換する。マイコン92(制御回路)は各種信号を入力して、モニター表示装置20のオン/オフ制御および輝度制御およびミラー光学素子22の駆動電圧制御等を行う。温度検出回路90の出力電圧はマイコン92のアナログポートに入力されてA/D変換された後に、モニターモード時はモニター表示装置20の温度制御および表示品位に関する温度補償制御に使用され、ミラーモードの防眩モード時はミラー光学素子22の反射率の温度補償制御に使用される。周囲光センサ94は車両の周囲の光量を検出する。後方光センサ96は車両の後方の光量を検出する。周囲光センサ94および後方光センサ96は、例えば電子インナーミラー10のハウジング12に、周囲光センサ94は車両前方に向けて、後方光センサ96は車両後方に向けてそれぞれ搭載される。信号処理回路98は、検出された周囲光量および後方光量に基づき防眩要否判定信号を出力する。すなわち、周囲光量が所定値以上のとき(昼間と見なせるとき)は、防眩は不要なので、後方光量の大小にかかわらず「防眩不要」の判定信号を出力する。周囲光量が所定値よりも小さいとき(夜間と見なせるとき)は、後方光量に応じて判定が切り替わる。すなわち、後方光量が所定値よりも小さいときは防眩は不要なので、「防眩不要」の判定信号を出力する。後方光量が所定値以上のとき(例えば、後続車の前照灯の強い光を受けているとき)は防眩が必要なので「防眩要」の判定信号を出力する。防眩要否判定信号は、マイコン92に入力されて、ミラーモードの自動防眩モードにおいて、防眩/非防眩の自動切替制御に利用される。反射率の温度補償特性記憶回路100は、防眩モード時にミラー光学素子22の温度に関わらず所定の防眩反射率を得るためのミラー光学素子22の中間電圧値(電圧駆動の交流電圧値またはPWM駆動のデュティ比)の特性(温度対中間電圧値特性)を記憶している。反射率の温度補償特性記憶回路100からは、防眩モード時に、温度検出回路90から得られる温度検出信号に基づき、マイコン92により、該当する中間電圧値が読み出される。表示品位に関する温度補償特性記憶回路102は、モニターモード時にモニター表示装置20の温度に関わらず所定の表示品位(色度等)を得るための、表示信号によるカラー液晶パネルの駆動電圧の調整特性を記憶している。表示品位に関する温度補償特性記憶回路102からは、モニターモード時に、温度検出回路90から得られる温度検出信号に基づき、マイコン92により、該当する調整量が読み出される。マイコン92には、このほかに、動作モード切替信号、防眩モード切替信号、ライト点灯信号等が入力される。動作モード切替信号は、モニターモードとミラーモードを切り替える信号で、運転者による動作モード切替操作に応じた信号である。防眩モード切替信号は、手動防眩(手動での防眩、非防眩の切替)と自動防眩(自動での防眩、非防眩の切替)を切り替える信号で、運転者による防眩モード切替操作(非防眩/防眩/自動防眩)に応じた信号である。ライト点灯信号は、車幅灯またはヘッドランプが点灯されていることを示す信号である。モニター表示制御部104は、マイコン92から出力されるモニター表示装置20の制御信号に基づき、モニター表示装置20のオン/オフ制御および輝度制御(温度制御)および表示品位に関する温度補償制御を行う。ミラー光学素子駆動回路106は、マイコン92から出力されるミラー光学素子22の制御信号に基づき、ミラー光学素子22の駆動電圧制御(オン電圧印加/オフ電圧印加/中間電圧印加)を行う。
【0026】
図1の制御システム構成におけるマイコン92による電子インナーミラー10の各動作時の制御内容を
図5を参照して説明する。車両のイグニッション電源がオンされると(S1)、現在設定されている動作モードが判定される(S2)。その結果、モニターモードに設定されている場合(S2で“YES”)は、モニター表示装置20がオン(バックライト26は点灯)される(S3)。また、ミラー光学素子22が固定のオン電圧で駆動されて透過状態とされる(S4)。このときミラー光学素子22は固定のオン電圧で駆動すればよいので、ミラー光学素子22について反射率の温度補償制御は不要であり行われない。後方カメラ86で撮像された車両後方の映像がモニター表示装置20に表示され、ミラー光学素子22を透過して車両搭乗者の視点18に達する。したがって、運転者はこの映像を確認しながら車両を運転することができる。モニターモードでは温度センサ30による温度検出が繰り返し行われる(S5)。そして、検出された温度に応じて、周知の表示品位に関する温度補償制御(例えば、表示信号に対応したモニター表示装置20の駆動信号のレベル調整による透過率補正制御や特許文献3に記載の色度補正制御等)が行われる(S6)。さらに、検出される温度が、過熱状態と判定される温度以下(S7で“NO”)で、かつランプ(車幅灯およびヘッドランプ)が消灯(S8で“NO”)のときは、バックライト26の輝度を「高」に設定する(S9)。これに対し、検出される温度が、過熱状態と判定される温度以下(S7で“NO”)で、かつランプ(車幅灯またはヘッドランプ)が点灯(S8で“YES”)のときは、バックライト26の輝度を「低」(夜間モード)に設定して(S10)、モニター表示の眩しさを軽減させる。また、検出される温度が、過熱状態と判定される温度を超えたとき(S7で“YES”)は、バックライト26の輝度を「低」(夜間モード時と同じまたは異なる輝度)に設定して(S11)、更なる温度上昇を抑制する。
【0027】
運転者等によるモード切替操作により動作モードがミラーモードに切り替えられると(S2で“NO”)、モニター表示装置20がオフ(バックライト26は消灯)される(S12)。そして、防眩条件(防眩状態とする条件に)に合致しているか否かが判定される(S13)。
すなわち、
(a) 手動防眩で「非防眩」が設定されているとき
(b) 自動防眩が設定され、かつ周囲光量が所定値以上のとき
(c) 自動防眩が設定され、かつ周囲光量が所定値よりも小さく、かつ後方光量が所定値よりも小さいとき
のいずれかに該当するときは、「非防眩」とすべき状態である。
これに対し、
(d) 手動防眩で「防眩」が設定されている
(e) 自動防眩が設定され、かつ周囲光量が所定値よりも小さく、かつ後方光量が所定値以上のとき
のいずれかに該当するときは、「防眩」とすべき状態である。
上記条件(a)(b)(c)のいずれかに該当するとき(S13で“NO”)は、ミラー光学素子22にオフ電圧を印加する(S14)。これにより、ミラー光学素子22は高反射率の反射鏡状態となり、運転者はミラー光学素子22による反射像を確認しながら車両を運転することができる。このとき、ミラー光学素子22はオフ電圧(すなわち電圧印加なし)で駆動すればよいので、ミラー光学素子22について反射率の温度補償制御は不要であり行われない。
一方、上記条件(d)(e)のいずれかに該当するとき(S13で“YES”)は、温度センサ30による温度検出が繰り返し行われる(S15)。そして、反射率の温度補償特性記憶回路100から、検出された温度に対応する中間電圧値(電圧駆動の交流電圧値またはPWM駆動のデュティ比)が読み出され、ミラー光学素子22は該中間電圧値で駆動される(S16)。これにより、ミラー光学素子22は周囲の環境温度にかかわらず所定の反射率を維持した反射率低減反射鏡状態(防眩反射鏡状態)が得られ(すなわち、反射率の温度補償制御が行われ)、運転者はミラー光学素子22による防眩された反射像を確認しながら車両を運転することができる。
【0028】
以上の制御は車両のイグニッション電源がオンされている間中、継続される(S17で“NO”)。車両のイグニッション電源がオフされると(S17で“YES”)、制御が終了する(S18)。車両のイグニッション電源がオフされた状態では、モニター表示装置20はオフで、ミラー光学素子22は高反射率の反射鏡状態となるので、ミラーモードの非防眩モードとなる。また、仮に、車両のイグニッション電源がオンであるにもかかわらず、電子インナーミラー10が故障して電源が供給されなくなったときも、モニター表示装置20はオフで、ミラー光学素子22は高反射率の反射鏡状態となるので、ミラーモードの非防眩モードとして使用することができる。
【0029】
前記実施の形態では温度センサとして可変抵抗型温度センサ(サーミスタ)を用いたが、この発明で使用する温度センサはこれに限らない。すなわち、半導体型温度センサ、その他各種の温度センサを用いることができる。
前記実施の形態では温度センサの設置位置をモニター表示装置の枠体の内側としたが、この発明での温度センサの設置位置はこれに限らない。すなわち、モニター表示装置の枠体の外側、その他モニター表示装置の温度を検出できる箇所に温度センサを設置することができる。また、前記実施の形態では温度センサの設置位置を枠体の上辺部としたが、これに限らず、温度センサを枠体の測辺部、下辺部等に設置することもできる。モニター表示装置において最も高温となるバックライトの光源の近くに温度センサを設置すれば、モニター表示装置の一部が局部的に過熱状態となるのを抑制することができる。
前記実施の形態ではモニター表示装置を液晶表示装置で構成したが、この発明のモニター表示装置はこれに限らない。すなわち、有機EL表示装置、その他各種の表示装置(自発光型、バックライト等を用いる他発光型のいずれも可)を用いることができる。
前記実施の形態ではミラー光学素子を、背面側に反射型偏光板を配置したTN型液晶パネルで構成したが、この発明で使用するミラー光学素子はこれに限らない。すなわち、電気駆動で反射率と透過率が相互に逆方向に変化するその他のミラー光学素子を用いることができる。
前記実施の形態ではミラー光学素子を、電圧印加なしの状態で反射率が最高値となり、印加電圧を上げていくと反射率が低下するように構成したが、これとは逆に、電圧印加なしの状態で反射率が最低値となり、印加電圧を上げていくと反射率が上昇するように構成することもできる。
前記実施の形態では、防眩モード時のミラー光学素子の反射率(防眩反射率)を固定としたが、使用者による操作で防眩反射率を可変調整可能にすることもできる。その場合、反射率の温度補償特性記憶回路は、防眩反射率ごとの温度対中間電圧値特性を記憶したものとすることができる。このとき、制御回路は使用者により設定された防眩反射率における温度対中間電圧値特性を用いて、検出される温度に応じた中間電圧値を反射率の温度補償特性記憶回路から読み出して、該中間電圧値でミラー光学素子を駆動する。
前記実施の形態ではモニター表示装置の検出温度に応じてバックライトの輝度を高、低2段階に切り替えるようにしたが、この発明はこれに限らない。すなわち、モニター表示装置の検出温度に応じてバックライトの輝度を多段階または無段階に可変制御することもできる。また、使用者による操作でバックライトの輝度を可変調整可能にすることもできる。
前記実施の形態では制御回路をマイコンで構成したが、これに限らず複数の回路素子の組み合わせで構成することもできる。
前記実施の形態ではインナーミラーの被視認面の全面についてモニターモードとミラーモードを切り替えるようにしたが、これに限らない。例えば特許文献1に記載のインナーミラーのように、被視認面の一部の領域に限りモニター表示装置を配置して、その領域についてのみモニターモードとミラーモードを切り替えるようにすることもできる。
前記実施の形態ではこの発明を車両用インナーミラーに適用した場合について説明したが、この発明はこれに限らず、モニターモードとミラーモードを有する様々な用途のミラー表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…電子インナーミラー(ミラー表示装置)、12…ハウジング、12a…内部空間、12b…開口部、14…電子ミラー素子、14a…被視認面、16…回路基板、18…運転者等の車両搭乗者の視点、20…モニター表示装置(液晶表示装置)、20a…表示面、21…両面テープ、22…ミラー光学素子(TN型液晶パネル)、24…カラー液晶パネル、25…積層体、26…バックライト、28…枠体、28a…ベゼル部、30…温度センサ、46…ガラス基板、48…ガラス基板、49…スペーサ、52…空隙、54…TN型液晶、55…封止材、56…ITO透明電極膜、57…配向膜、58…ITO透明電極膜、59…配向膜、64…ガラス基板、66…ガラス基板、68…スペーサ、70…空隙、72…IPS型液晶、74…封止材、76…カラーフィルター、80…配向膜、82…アレイ膜、84…配向膜、86…後方カメラ、88…描画回路、90…温度検出回路、92…マイコン(制御回路)、94…周囲光センサ、96…後方光センサ、98…信号処理回路、100…反射率の温度補償特性記憶回路、102…表示品位に関する温度補償特性記憶回路、104…モニター表示制御部、106…ミラー光学素子駆動回路、P1…吸収型偏光板、P2…反射型偏光板、P3…吸収型偏光板、P4…吸収型偏光板