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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/08 20060101AFI20220729BHJP
   G06K 7/00 20060101ALI20220729BHJP
   G06K 13/04 20060101ALI20220729BHJP
   G11B 25/04 20060101ALI20220729BHJP
   G11B 5/008 20060101ALI20220729BHJP
   G01N 27/90 20210101ALI20220729BHJP
【FI】
G06K7/08 050
G06K7/08 040
G06K7/00 095
G06K13/04
G11B25/04 521Z
G11B5/008 Z
G01N27/90
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018148188
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020024537
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】持田 哲雄
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110415(JP,A)
【文献】特開平11-282972(JP,A)
【文献】特開2015-216828(JP,A)
【文献】特開2012-118689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/08
G06K 7/00
G06K 13/04
G11B 25/04
G11B 5/008
G01N 27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気情報が記録された磁気カードを搬送するための搬送路と、
前記搬送路を内部に備える筐体と、
前記搬送路における前記磁気カードの搬送方向の途中に設定した読取位置で前記磁気情報を読み取る磁気ヘッドと、
発振回路、並びに、前記発振回路に並列に接続された第1検出コイルおよび第2検出コイル、を備える誘導型近接センサと、を有し、
前記磁気ヘッドは、前記搬送路における前記磁気カードの搬送面と垂直な垂直方向の一方側から当該搬送路を搬送される当該磁気カードに接触可能であり、
前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルのそれぞれは、前記垂直方向における前記搬送路の一方側でコイル中心線を前記垂直方向に向け、
前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記搬送方向で隣り合い、前記誘導型近接センサを駆動したときに前記垂直方向で互いに逆方向の磁界を発生させることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記垂直方向から見た場合の巻回方向が互いに逆方向であることを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記搬送方向および前記垂直方向と直交する前記搬送路の幅方向において前記磁気ヘッドと同一の位置に配置され、前記搬送方向において前記磁気ヘッドと異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記搬送方向に延びて前記搬送面の一部分を規定する板状部材を有し、
前記第1検出コイルおよび第2検出コイルは、前記板状部材における前記搬送路とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のカードリーダ。
【請求項5】
第2の発振回路と、前記第2の発振回路に接続された1つの第3検出コイルと、を備える第2の誘導型近接センサを有し、
前記第3検出コイルは、前記垂直方向における前記搬送路の一方側でコイル中心線を前記垂直方向に向け、前記搬送方向で前記磁気ヘッドの前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとは反対側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記筐体は、前記搬送路に前記磁気カードを挿入するための挿入口を備え、
前記第3検出コイルは、前記磁気ヘッドよりも前記挿入口の側に配置され、
前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記磁気ヘッドの前記挿入口とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のカードリーダ。
【請求項7】
前記磁気ヘッドを前記垂直方向に変位可能に支持する支持機構を有し、
前記支持機構は、前記垂直方向で前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルの前記搬送路と反対側で当該搬送路に沿って延びる金属製の弾性板部材を備え、
前記磁気ヘッドは、前記弾性板部材に取り付けられており、
前記垂直方向における前記搬送面と前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとの間の第1距離は、前記垂直方向における前記弾性板部材と前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとの間の第2距離よりも短いことを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードからの磁気情報の読み取りを行うカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入口に挿入された磁気カードを搬送路に沿って搬送し、磁気ヘッドにより磁気情報を読み取るカードリーダは特許文献1に記載されている。このようなカードリーダでは、挿入口の周辺にスキミングヘッドと言われる磁気ヘッドを取り付けて磁気情報を取得する不正行為が行われる場合がある。
【0003】
不正行為への対策として、特許文献1に記載のカードリーダは、挿入口が形成された筐体の前面側に金属センサを搭載する。金属センサは、磁気差動型センサであり、コア体の中央に巻かれた一対の励磁コイルと、コア体の一端および他端に巻かれた一対の検出コイルを備える。スキミングヘッドは金属部分を備えるので、スキミングヘッドが挿入口の周辺に取り付けられると、金属センサからの出力の変動に基づいて、異常を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/093340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スキミングヘッドは、カード搬送路に取り付けられる場合がある。すなわち、スキミングヘッドは、挿入口よりも筐体の内側に取り付けられる場合がある。
【0006】
このような位置に取り付けられたスキミングヘッドを検出するためには、金属センサを、筐体の内部における搬送路に近い位置に配置することが望ましい。しかし、筐体の内部に金属センサを配置すると、金属センサは、筐体の内部に存在する金属製の構造物を検出する。従って、金属センサを筐体の前面側に取り付けた場合と比較して、金属製の異物の検出精度が低下する場合がある。
【0007】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、筐体の内部に配置した金属センサにより、金属部分を備える異物を精度よく検出できるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカードリーダは、磁気情報が記録された磁気カードを搬送するための搬送路と、前記搬送路を内部に備える筐体と、前記搬送路における前記磁気カードの搬送方向の途中に設定した読取位置で前記磁気情報を読み取る磁気ヘッドと、発振回路、並びに、前記発振回路に並列に接続された第1検出コイルおよび第2検出コイル、を備える誘導型近接センサと、を有し、前記磁気ヘッドは、前記搬送路における前記磁気カードの搬送面と垂直な垂直方向の一方側から当該搬送路を搬送される当該磁気カードに接触可能であり、前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルのそれぞれは、前記垂直方向における前記搬送路の一方側でコイル中心線を前記垂直方向に向け、前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記搬送方向で隣り合い、前記誘導型近接センサを駆動したときに前記垂直方向で互いに逆方向の磁界を発生させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、搬送路の近傍に、誘導型近接センサを備えることができる。搬送路の
近傍にスキミングヘッドなど金属部分を備える異物が取り付けられた場合には、誘導型近接センサからの出力の変動に基づいて異物を検出できる。すなわち、誘導型近接センサは、発振回路に接続された検出コイルによって高周波の磁界を発生させる。従って、この磁界中に金属部分を備える異物が取り付けられると、異物に誘導電流(渦電流)が流れる。これにより、検出コイルのインピーダンスが変化するので、誘導型近接センサからの出力が変動する。よって、誘導型近接センサからの出力の変動に基づいて、異物が取り付けられたことを検出できる。ここで、誘導型近接センサが1つの検出コイルを備える場合には、磁界の磁束は、検出コイルの垂直方向の一方端から他方端に向かう。従って、磁界は、垂直方向に広がる。これに対して、誘導型近接センサが、搬送方向で隣り合い、垂直方向で互いに逆方向の磁界を発生させる第1検出コイルおよび第2検出コイルを備える場合には、高周波の磁界の磁束は、例えば、各検出コイルの垂直方向の一方側では第1検出コイルの側から第2検出コイルの側に向かい、他方側では第2検出コイルの側から第1検出コイルの側に向かう。従って、磁界は、第1検出コイルおよび第2検出コイルの垂直方向の一方側および他方側において搬送方向に沿った方向に広がる。よって、誘導型近接センサを搬送路の近傍に配置すれば、搬送路の発送方向に沿った広い範囲で異物を検出できる。また、磁界が搬送方向に沿った方向に広がるので、誘導型近接センサが搬送路から離間する位置にある金属製の構造物を検出することを防止或いは抑制できる。よって、搬送路に取り付けられた異物を精度よく検出できる。
【0010】
本発明において、前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記垂直方向から見た場合の巻回方向が互いに逆方向であるものとすることができる。このようにすれば、第1検出コイルが発生させる磁界と、第2検出コイルが発生させる磁界とを、垂直方向で逆方向とすることが容易である。
【0011】
本発明において、前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記搬送方向および前記垂直方向と直交する前記搬送路の幅方向において前記磁気ヘッドと同一の位置に配置され、前記搬送方向において前記磁気ヘッドと異なる位置に配置されているものとすることができる。スキミングヘッドは、磁気カードから磁気情報を読み取るために、幅方向で磁気ヘッドと同一の位置に取り付けられる可能性が高い。従って、このような位置に第1検出コイルおよび第2検出コイルを配置すれば、不正に取り付けられたスキミングヘッドを検出しやすい。
【0012】
本発明において、前記搬送方向に延びて前記搬送面の一部分を規定する板状部材を有し、前記第1検出コイルおよび第2検出コイルは、前記板状部材における前記搬送路とは反対側に配置されているものとすることができる。このようにすれば、板状部材が搬送路の側から第1検出コイルおよび第2検出コイルを覆うので、第1検出コイルおよび第2検出コイルが磁気カードと接触して摩耗することがない。
【0013】
本発明において、第2の発振回路と、前記第2の発振回路に接続された1つの第3検出コイルと、を備える第2の誘導型近接センサを有し、前記第3検出コイルは、前記垂直方向における前記搬送路の一方側でコイル中心線を前記垂直方向に向け、前記搬送方向で前記磁気ヘッドの前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとは反対側に配置されているものとすることができる。かかる第2の誘導型近接センサを有すれば、第1検出コイルおよび第2検出コイルによる異物の検出位置とは異なる位置で、異物を検出することができる。
【0014】
本発明において、前記筐体は、前記搬送路に前記磁気カードを挿入するための挿入口を備え、前記第3検出コイルは、前記磁気ヘッドよりも前記挿入口の側に配置され、前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルは、前記磁気ヘッドの前記挿入口とは反対側に配置されているものとすることができる。第2の誘導型近接センサが発生させる高周波の磁
界は、2つの検出コイルを備える誘導型近接センサが発生させる高周波の磁界と比較して、垂直方向に広がる。従って、第2の誘導型近接センサの第3検出コイルを挿入口に近い位置に配置すれば、搬送路における挿入口に近い位置において垂直方向の広い範囲で異物が取り付けられたことを検出できる。また、第3検出コイルを挿入口に近い位置に配置すれば、第2の誘導型近接センサからの出力が、筐体の内部に存在する金属製の構造物の影響を受けることを低減できる。
【0015】
本発明において、前記磁気ヘッドを前記垂直方向に変位可能に支持する支持機構を有し、前記支持機構は、前記垂直方向で前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルの前記搬送路と反対側で当該搬送路に沿って延びる金属製の弾性板部材を備え、前記磁気ヘッドは、前記弾性板部材に取り付けられており、前記垂直方向における前記搬送面と前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとの間の第1距離は、前記垂直方向における前記弾性板部材と前記第1検出コイルおよび前記第2検出コイルとの間の第2距離よりも短いことが望ましい。このようにすれば、磁気ヘッドを磁気カードに接触させることが容易である。ここで、垂直方向における搬送路の搬送面と第1検出コイルおよび第2検出コイルとの間の第1距離は、垂直方向における弾性板部材と第1検出コイルおよび第2検出コイルとの間の第2距離よりも短い。従って、第1検出コイルおよび第2検出コイルの第2方向に金属製の弾性板部材が配置されていても、第1検出コイルおよび第2検出コイルを備える誘電式近接センサからの出力が弾性板部材の影響を受けることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送路の近傍に、誘導型近接センサを備えることができる。従って、誘導型近接センサからの出力の変動に基づいて、搬送路の近傍にスキミングヘッドなど金属部分を備える異物を検出できる。また、誘導型近接センサが搬送方向で隣り合い互いに巻回方向が反対の第1検出コイルおよび第2検出コイルを備える。従って、誘導型近接センサが発生させる高周波の磁界の磁束は、搬送方向に沿った方向に広がる。よって、誘導型近接センサを搬送路の近傍に配置すれば、搬送路に取り付けられた異物を搬送方向の広い範囲で検出できる。また、誘導型近接センサが発生させる磁束が搬送方向に沿った方向に広がるので、誘導型近接センサが搬送路から離間する位置にある金属製の構造物を検出することを防止或いは抑制できる。よって、搬送路に取り付けられた異物を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したカードリーダの断面図である。
図2】磁気カードおよびカードリーダの平面構成の説明図である。
図3】検出コイル、第1検出コイルおよび第3検出コイルを備えるフレキシブルプリント基板の平面図である。
図4】カードリーダの制御系の概略ブロック図である。
図5】第1金属センサの説明図である。
図6】変形例の発振回路を備える第1金属センサの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したカードリーダの実施形態を説明する。
【0019】
(カードリーダ)
図1は本発明を適用したカードリーダの断面図である。図2は磁気カードおよびカードリーダの平面構成の説明図である。図3は、検出コイル、第1検出コイルおよび第3検出コイルを備えるフレキシブルプリント基板の平面図である。図4は、カードリーダの制御系の概略ブロック図である。カードリーダ1は、磁気カード2に記録された磁気情報の読取り、および磁気カード2への磁気情報の書込みを行う。カードリーダ1は、所定の上位
装置に接続されて使用される。
【0020】
磁気カード2は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の塩化ビニール製のカードである。図2に示すように、磁気カード2の一方の面には、磁気情報が記録された磁気ストライプ2aが設けられている。磁気ストライプ2aは、長方形形状の磁気カード2の短手方向の所定の位置で長手方向に延びる。磁気カード2には、ICチップが内蔵されている場合もある。
【0021】
図1に示すように、カードリーダ1は、前面に磁気カード2の挿入口4を備える筐体5と、筐体5の内部に設けられた搬送路6を備える。筐体5は、搬送路6の下方に位置する下側フレーム8と、上側に位置する上側フレーム9とを備える。搬送路6は挿入口4から磁気ヘッド3を経由して延びる。また、搬送路6は、挿入口4から後方に向かって直線状に延びる。
【0022】
また、カードリーダ1は、挿入口4に挿入された磁気カード2を搬送路6に沿って搬送する搬送機構11を備える。搬送機構11は、搬送ローラ12と、搬送ローラ12の駆動源である搬送モータ13(図4参照)を備える。搬送ローラ12は、上側フレーム9に回転可能に支持されている。
【0023】
以下の説明では、互いに直交する3方向をカードリーダ1の前後方向X、幅方向Y、および上下方向Zとする。前後方向Xは、搬送路6が延びる方向であり、磁気カード2が搬送される搬送方向Mである。Y方向は搬送路6の幅方向である。Z方向は上下方向Zであり、搬送路6の搬送面6aと垂直な垂直方向である。また、前後方向Xにおいて挿入口4が位置する側を前方X1、その反対方向を後方X2とする。また、カードリーダ1が設置される姿勢における下側を下方Z1、上側を上方Z2とする。
【0024】
磁気ヘッド3は、搬送路6における搬送方向Mの途中に設定した読取位置Rで磁気カード2の磁気ストライプ2aかから磁気情報を読み取る。読取位置Rは、搬送ローラ12よりも搬送方向Mの上流側に設定されている。すなわち、読取位置Rは、搬送ローラ12よりも挿入口4に近い。磁気ヘッド3は、磁気カード2に磁気情報を書き込む場合もある。
【0025】
磁気ヘッド3は、支持機構15を介して下側フレーム8に支持されている。支持機構15は磁気ヘッド3を上下方向Zに変位可能に支持する。より詳細には、下側フレーム8は、搬送路6の下方Z1で搬送路6に沿って延びる板状のフレーム部分16を備える。フレーム部分16には、磁気ヘッド3を上下方向Zに貫通させる貫通部17が設けられている。支持機構15は、フレーム部分16における磁気ヘッド3の前方X1から下方Z1に突出する前側突部18と、フレーム部分16における磁気ヘッド3の後方X2から下方Z1に突出する後側突部19と、前側突部18および後側突部19に架け渡された板バネ20(金属製の弾性板部材)を備える。
【0026】
板バネ20は、前側突部18と後側突部19との間を前後方向Xに延びる。板バネ20は、前側突部18と後側突部19との間で弾性変形可能である。磁気ヘッド3は、板バネ20の前側部分に設けられた取付部20aに固定されている。磁気ヘッド3は、板バネ20が上下に撓むことにより、上下方向Zに変位する。本例では、板バネ20は、磁気ヘッド3の取付部分20aよりも後方に位置する後側部分が、上方Z2から見た場合に第1検出コイル21および第2検出コイル22の前端部分と重なる。また、板バネ20は、磁気ヘッド3の取付部分20aよりも前方に位置する前側部分が、上方Z2から見た場合に第3検出コイル31の後端部分と僅かに重なる。
【0027】
さらに、カードリーダ1は、前後方向Xで、磁気ヘッド3と搬送ローラ12との間に位
置する第1検出コイル21および第2検出コイル22を備える。第1検出コイル21および第2検出コイル22は、フレーム部分16および板バネ20の下方Z1に配置された回路基板23に設けられた第1発振回路24とともに、第1金属センサ25を構成する。第1金属センサ25は、誘導型近接センサであり、第1発振回路24の駆動により、第1検出コイル21および第2検出コイル22から高周波の磁界を発生させる。
【0028】
図3に示すように、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、フレキシブルプリント基板27にパターニングされて設けられている。第1検出コイル21および第2検出コイル22のそれぞれは、フレキシブルプリント基板27がフレーム部分16の上面に沿って固定されることにより、搬送路6の下方Z1でコイル中心線21a、22aを上下方向Zに向ける。また、第1検出コイル21および第2検出コイル22は搬送方向Mで隣り合う。第1検出コイル21および第2検出コイル22を上下方向Zから見た場合の第1検出コイル21の巻回方向K1と、第2検出コイル22の巻回方向K2とは互いに逆方向である。第1検出コイル21は第2検出コイル22よりも磁気ヘッド3に近い側にある。
【0029】
ここで、第1検出コイル21および第2検出コイル22は搬送方向Mで隣り合う。また、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、巻回方向が互いに逆方向であり、第1金属センサ25を駆動したときに、上下方向Zで互いに逆方向の磁界を発生させる。従って、図1に点線の矢印で示すように、第1検出コイル21および第2検出コイル22が発生させる磁界の磁束F1は、例えば、各検出コイルの上下方向Zの一方側では、第1検出コイル21の側から第2検出コイル22の側に向かい、他方側では、第2検出コイル22の側から第1検出コイル21の側に向かう。従って、磁界は、第1検出コイル21および第2検出コイル22の上下方向Zの一方側および他方側において搬送方向Mに沿った方向に広がる。
【0030】
また、カードリーダ1は、前後方向Xで、磁気ヘッド3と挿入口4との間に第3検出コイル31を備える。第3検出コイル31は、回路基板23に設けられた第2発振回路32とともに、第2金属センサ33(第2の誘導型近接センサ)を構成する。第2金属センサ33は、誘導型近接センサであり、第2発振回路32の駆動により、第3検出コイル31から高周波の磁界を発生させる。
【0031】
第3検出コイル31は、フレキシブルプリント基板27にパターニングされて設けられている。フレキシブルプリント基板27がフレーム部分16の上面に沿って固定されることにより、第3検出コイル31は、搬送路6の下方Z1でコイル中心線31aを上下方向Zに向ける。ここで、図1に点線の矢印で示すように、第3検出コイル31が一つの場合には、磁界の磁束F2は、例えば、第3検出コイル31の上下方向Zの一方端から他方端に向かう。従って、磁界は、上下方向Zに広がる。
【0032】
図2に示すように、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、搬送路6の幅方向Yにおいて磁気ヘッド3と同一の位置に配置され、搬送方向Mにおいて磁気ヘッド3と異なる位置(磁気ヘッド3の後方X2)に配置されている。また、第3検出コイル31は、搬送路6の幅方向Yにおいて磁気ヘッド3と同一の位置に配置され、搬送方向Mにおいて磁気ヘッド3と異なる位置(磁気ヘッド3の前方X1)に配置される。ここで、幅方向Yにおいて磁気ヘッド3が配置されている位置は、挿入口4を介して磁気カード2が搬送路6に挿入されたときに、磁気ストライプ2aと対向する位置である。従って、第1検出コイル21および第2検出コイル22、および第3検出コイル31が配置されている位置は、挿入口4を介して磁気カード2が搬送路6に挿入されたときに、磁気ストライプ2aが通過する位置である。
【0033】
第1検出コイル21、第2検出コイル22、および第3検出コイル31は、フレーム部
分16に上方Z2から被せられた板状部材35により、覆われている。すなわち、第1検出コイル21、第2検出コイル22、および第3検出コイル31は、板状部材35を挟んで搬送路6とは反対側に位置する。板状部材35は樹脂製である。板状部材35を上方Z2から見た場合の形状は、前後方向Xに長い矩形形状である。板状部材35には、磁気ヘッド3を、上下方向Zに貫通させる穴部36が設けられている。板状部材35は、前端部分が前方に向かって下方Z1に湾曲する。板状部材35の上面35aは、搬送面6a(搬送路6の下面)の一部分を規定する。
【0034】
ここで、図1に示すように、上下方向Zにおける搬送面6aと、第1検出コイル21、第2検出コイル22および第3検出コイル31との間の第1距離D1は、上下方向Zにおける板バネ20と、第1検出コイル21、第2検出コイル22および第3検出コイル31との間の第2距離D2よりも短い。
【0035】
搬送路6の搬送方向Mにおける磁気ヘッド3と搬送ローラ12との間には、磁気カード2が挿入されたことを検出する挿入検出センサ38(図4参照))が設けられている。挿入検出センサ38としては、磁気カード2に接触して当該磁気カード2の挿入を検出する接触式のセンサを用いることができる。或いは、挿入検出センサ38としては、磁気カード2による検出光の遮断を検出して当該磁気カード2の挿入を検出する光学式のセンサを用いることができる。
【0036】
次に、カードリーダ1は、制御部41を備える。図4に示すように、制御部41の入力側には、不図示のドライバーを介して磁気ヘッド3が接続されている。また、また、制御部41の入力側には、挿入検出センサ38が接続されている。さらに、制御部41の入力側には、第1金属センサ25および第2金属センサ33が、それぞれローパスフィルタ42およびA/D変換回路43を介して、接続されている。制御部41の出力側には、不図示のドライバーを介して搬送モータ13が接続されている。
【0037】
制御部41は、搬送路6への磁気カード2の挿入が挿入検出センサ38によって検出されると、搬送モータ13を駆動して、磁気カード2の挿入方向の後端が磁気ヘッド3を通過する位置まで後方X2に搬送する。また、制御部41は、磁気ヘッド3を駆動して、磁気カード2が磁気ヘッド3を通過する際に磁気ストライプ2aに記憶された磁気情報を読み取る。さらに、制御部41は、磁気カード2が磁気ヘッド3を後方X2に通過すると、搬送モータ13を反対方向に駆動して、磁気カード2を前方X1に搬送する。これにより、制御部41は、磁気カード2の前方X1の先端部分を挿入口4から外部に突出させる。
【0038】
また、制御部41は、第1金属センサ25および第2金属センサ33からの出力に基づいて、搬送路6の近傍に金属部分を備える異物を検出すると、搬送モータ13を駆動せず、磁気カード2を搬送路6に沿って搬送する搬送動作を停止する。金属部分を備える異物としては、例えば、スキミングヘッドなど、搬送路6に取り付けられた不正な磁気ヘッドがある。
【0039】
(第1金属センサおよび第1金属センサによる異物の検出方法)
次に、図5を参照して、第1金属センサ25を詳細に説明する。図5(a)は、第1金属センサ25の回路図である。図5(b)は第1金属センサ25からの出力信号の波形の説明図である。図5(c)は、ローパスフィルタ42から出力される電圧信号の説明図である。図5(a)に示すように、第1金属センサ25は第1発振回路24を備える。
【0040】
第1発振回路24は、コネクタが電源電圧端子Vccに接続されたトランジスタTrと、トランジスタTrのコレクタとベースとの間に接続された第1抵抗素子R1と、トランジスタTrのエミッタとベースとの間に接続された第1コンデンサC1を備える。また、
第1発振回路24は、トランジスタTrのエミッタとグランド端子GNDとの間に並列に接続された第2コンデンサC2および第2抵抗素子R2を備える。さらに、第1発振回路24は、第1抵抗素子R1と第1コンデンサC1との間に一方の端子が接続された第3コンデンサC3を備える。第3コンデンサC3の一方の端子と第1コンデンサC1との間には、出力端子OUTが設けられている。第1検出コイル21および第2検出コイル22は、第3コンデンサC3の他方の端子とグランド端子GNDとの間に、並列に接続されている。
【0041】
ここで、図5(b)に示すように、本例では、第1金属センサ25からの出力、すなわち、出力端子OUTから出力される出力信号は、所定の周期で変動する電圧信号を整流回路で整流した整流信号と同様の波形の信号となる。この出力信号は、ローパスフィルタ42を介することにより、図5(c)に示すように、出力信号の振幅に対応するレベルの電圧信号とされる。また、電圧信号は、A/D変換回路43を介することにより、ディジタル信号とされて制御部41に入力される。
【0042】
第1発振回路24が動作すると、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、高周波の磁界を発生させる。ここで、発生させた磁界中に金属部分を備える異物が取り付けられると、異物に誘導電流(渦電流)が流れる。これにより、第1検出コイル21および第2検出コイル22のインピーダンスが変化して、出力端子OUTからの出力信号の振幅が変動する。よって、出力信号の振幅に対応する電圧信号が変動する。従って、電圧信号のディジタル信号が入力される制御部41では、電圧信号の変動が所定の閾値を超えた場合に、金属部分を備える異物が取り付けられたことを検出できる。
【0043】
本例では、制御部41は、電圧信号に直近の7点の移動平均から閾値を超える変動があった場合に、異物が取り付けられたことを検出する。また、磁気カード2の搬送路6への挿入が挿入検出センサ38により検出された場合には、制御部41は、磁気カード2が挿入口4から排出されたときの電圧信号に、磁気カード2の挿入前の7点の移動平均から閾値を超える変動があった場合に、異物が取り付けられたことを検出する。
【0044】
ここで、第2金属センサ33においても、第2発振回路32の回路構成は、第1発振回路24と、同様である。ただし、第2金属センサ33では、第3コンデンサC3の他方側の端子とグランド端子GNDとの間に、一つの第3検出コイル31が接続されている。なお、第2金属センサ33からの出力により金属部分を備える異物を検出できる原理は、第1金属センサ25と同様である。また、制御部41が第2金属センサ33からの出力に基づいて異物を検出する異物の検出方法も、第1センサからの出力にも基づいて異物を検出する検出方法と同様である。
【0045】
(作用効果)
本例のカードリーダ1は、搬送路6の近傍に、第1金属センサ25および第2金属センサ33を備える。従って、搬送路6の近傍にスキミングヘッドなど金属部分を備える異物が取り付けられた場合には、第1金属センサ25および第2金属センサ33からの出力の変動に基づいて、異物を検出できる。
【0046】
また、第1金属センサ25は、搬送方向Mで隣り合い互いに巻回方向が反対の第1検出コイル21および第2検出コイル22を備えるので、高周波の磁界は、搬送方向Mに沿った方向に広がる。従って、第1金属センサ25によれば、搬送路6に取り付けられた異物を搬送方向Mの広い範囲で検出できる。また、磁界が搬送方向Mに沿った方向に広がるので、第1金属センサ25が搬送路6から離間する位置にある金属製の構造物を検出することを防止或いは抑制できる。よって、本例のカードリーダ1によれば、搬送路6に取り付けられた異物を精度よく検出できる。
【0047】
また、本例では、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、搬送路6の幅方向Yにおいて磁気ヘッド3と同一の位置に配置され、搬送方向Mにおいて磁気ヘッド3と異なる位置に配置されている。ここで、磁気情報を不正に読み取るためのスキミングヘッドは、幅方向Yで磁気ヘッド3と同一の位置に取り付けられる可能性が高い。従って、このような位置に第1検出コイル21および第2検出コイル22を配置すれば、スキミングヘッドを検出しやすい。
【0048】
また、本例では、カードリーダ1が、第2金属センサ33を有する。従って、第1検出コイル21および第2検出コイル22による異物の検出位置とは異なる位置で、異物を検出することができる。
【0049】
さらに、第2金属センサ33が発生させる高周波の磁界は、第1検出コイル21および第2検出コイル22を備える第1金属センサ25が発生させる高周波の磁界と比較して、上下方向Zに広がっている。従って、第2金属センサ33を挿入口4に近い位置に配置すれば、搬送路6における挿入口4に近い位置において、上下方向Zの広い範囲で、異物が取り付けられたことを検出できる。また、第3検出コイル31が挿入口4に近い位置にあるので、第2金属センサ33からの出力が、筐体5の内部に存在する金属製の構造物の影響を受けることを低減できる。
【0050】
また、本例では、磁気ヘッド3を上下方向Zに変位可能に支持する板バネ20を有するので、磁気ヘッド3を磁気カード2に接触させることが容易である。ここで、上下方向Zにおける搬送面6aと第1検出コイル21および第2検出コイル22との間の第1距離D1は、上下方向Zにおける板バネ20と第1検出コイル21および第2検出コイル22との間の第2距離D2よりも短い。従って、第1検出コイル21および第2検出コイル22の下方Z1に金属製の板バネ20が配置されていても、第1金属センサ25からの出力が板バネ20の影響を受けることを抑制できる。
【0051】
なお、第1検出コイル21と第2検出コイル22は、上下方向Zから見た場合の巻回方向を同一の方向としてもよい。この場合には、第1検出コイル21および第2検出コイル22に対して、互いに逆方向の電流を流す。これにより、第1検出コイル21および第2検出コイル22は、上下方向Zで互いに逆方向の磁界を発生させるものとなる。よって、第1検出コイル21と第2検出コイル22とが発生させる高周波の磁界は、搬送方向Mに沿った方向に広がるものとなる。
【0052】
(変形例)
次に、各金属センサ25、33における発振回路24の別の例を説明する。図6(a)は、変形例の発信回路を備える第1金属センサ25の回路図である。図6(b)は第1金属センサ25からの出力信号の波形の説明図である。図6(c)は、ローパスフィルタ42から出力される電圧信号の説明図である。図6(a)に示すように、本例の発振回路24Aは、上記の発振回路24に、第3抵抗素子R3を備える。第3抵抗素子R3は、第1コンデンサC1の出力端子OUTの側と、第2コンデンサC2のグランド端子GNDの側との間に接続されている。
【0053】
本例では、第1金属センサ25からの出力、すなわち、出力端子OUTから出力される出力信号は、図6(b)に示すように、電源電圧Vccの1/2の電圧を中心に所定の周期で変動する。従って、第1金属センサ25の発振回路に本例の発振回路24Aを用いた場合には、出力端子OUTに整流回路45を接続する。すなわち、本例の発振回路24Aを用いた場合には、発振回路24Aと制御部41との間に、整流回路45、ローパスフィルタ42、および、A/D変換回路43を、この順番に備える。ここで、出力信号は、整
流回路45およびローパスフィルタ42を介することにより、図6(c)に示すように、出力信号の振幅に対応するレベルの電圧信号とされる。また、電圧信号はA/D変換回路43を介することによりディジタル信号とされて制御部41に入力される。
【0054】
本例においても、制御部41は、上記の場合と同様に、異物を検出することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…カードリーダ、2…磁気カード、2a…磁気ストライプ、3…磁気ヘッド、4…挿入口、5…筐体、6…搬送路、6a…搬送面、8…下側フレーム、9…上側フレーム、11…搬送機構、12…搬送ローラ、13…搬送モータ、15…支持機構、16…フレーム部分、17…貫通部、18…前側突部、19…後側突部、20…板バネ(金属製の弾性板部材)、20a…取付部分、21…第1検出コイル、21a…第1検出コイルのコイル中心線、22…第2検出コイル、22a…第2検出コイルのコイル中心線、23…回路基板、24…第1発振回路、24A…変形例の発振回路、25…第1金属センサ、27…フレキシブルプリント基板、31…第3検出コイル、31a…検出コイルのコイル中心線、32…第2発振回路、33…第2金属センサ、35…板状部材、35a…板状部材の上面、36…穴部、38…挿入検出センサ、41…制御部、42…ローパスフィルタ、43…A/D変換回路、45…整流回路、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ、C3…第3コンデンサ、D1…第1距離、D2…第2距離、F1…第1金属センサが発生させる磁界の磁束、F2…第2金属センサが発生させる磁界の磁束、K1…第1検出コイルの第1巻回方向、K2…第2検出コイルの第2巻回方向、R1…第1抵抗素子、R2…第2抵抗素子、R3…第3抵抗素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6