(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2018180682
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】實藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 隆一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-080690(JP,A)
【文献】特開2007-103120(JP,A)
【文献】特開2017-103160(JP,A)
【文献】特開2012-079552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0141790(US,A1)
【文献】特開平10-326645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトと、
前記コンタクトを収容する収容室を有するハウジングと、
相手コネクタとの嵌合方向に交わる横方向から前記ハウジング内に差し込まれて前記コンタクトを抜け止めするリテーナとを備え、
前記ハウジングが、
前記収容室のうちの、前記コンタクトの嵌合方向前端部分を収容する前端部収容室を有するフロントハウジングと、
前記収容室のうちの、前記コンタクトの嵌合方向前端部分を除く部分を収容するメイン収容室を有するとともに前記リテーナを収容するメインハウジングとを有し、
前記フロントハウジングが、前記メインハウジングに対し嵌合方向に移動自在であって、相手コネクタとの嵌合時に該メインハウジングに対し嵌合方向後方に移動することにより前記コンタクトを前記リテーナに押し当てて該コンタクトの嵌合方向への移動を不能とすることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記メインハウジングおよび前記フロントハウジングのうちの一方が第1係合部を有し、他方が、該フロントハウジングが該メインハウジングに対し嵌合方向前方に移動したときに該第1係合部に係止して該フロントハウジングの該メインハウジングからの抜けを防止するとともに該フロントハウジングの嵌合方向後方への移動を可能とする第2係合部を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フロントハウジングが、相手コネクタとの嵌合面に突起を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記フロントハウジングが、窪みを持ち嵌合時に該相手コネクタに押し当てられて嵌合方向後方に撓むアーム部を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの摺動を抑制するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタの中には、そのコネクタを構成する部品の公差やそのコネクタを組み立てるためのクリアランスの確保に起因するガタを有するコネクタが存在する。例えば、リテーナを備えたコネクタの場合、リテーナを差し込むことによりコンタクトの抜けは防止される。ただし、部品の公差等を考慮してリテーナを確実に差し込むことができる寸法に設定すると、差し込まれたリテーナとコンタクトとの間にガタを持つことになる。
【0003】
ここで、そのようなガタを持つコネクタを、例えば自動車のエンジンルーム内など、振動の影響を受ける環境下で使用する場合について考察する。コネクタが外部からの振動の影響を受けるとハウジングに対しコンタクトが相対的に振動する。すると、その振動により、このコネクタのコンタクトと相手コネクタのコンタクトとが繰り返し摺動して摩耗が発生するおそれがある。これを防止するには、ハウジングに対するコンタクトの相対振動を抑えて、コネクタが振動するときはハウジングとコンタクトが一体的にのみ振動する構造とすることが望ましい。
【0004】
ここで、特許文献1には、1対のハウジングの嵌合時に両ハウジングを嵌合方向へ相対変位させることにより両ハウジング間の間隔を埋めて両ハウジングのガタつきを防止するコネクタが開示されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1の構造では、ハウジング同士のガタつきは防止されるが、ハウジングとコンタクトとの間のガタつきは防止されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、リテーナ付きのコネクタにおいて、ハウジングとコンタクトとの間のガタつきが防止されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、
コンタクトと、
コンタクトを収容する収容室を有するハウジングと、
相手コネクタとの嵌合方向に交わる横方向からハウジング内に差し込まれてコンタクトを抜け止めするリテーナとを備え、
ハウジングが、
上記収容室のうちの、コンタクトの嵌合方向前端部分を収容する前端部収容室を有するフロントハウジングと、
上記収容室のうちの、コンタクトの嵌合方向前端部分を除く部分を収容するするメイン収容室を有するとともにリテーナを収容するメインハウジングとを有し、
フロントハウジングが、メインハウジングに対し嵌合方向に移動自在であって、相手コネクタとの嵌合時にメインハウジングに対し嵌合方向後方に移動することによりコンタクトをリテーナに押し当ててコンタクトの嵌合方向への移動を不能とすることを特徴とする。
【0009】
本発明のコネクタは、フロントハウジングが、相手コネクタとの嵌合時にメインハウジングに対し嵌合方向後方に移動してコンタクトをリテーナに押し当てる構造を有する。このため、ハウジングとコンタクトとの間のガタつきが防止され、このコネクタのコンタクトと相手コネクタのコンタクトとの間の摺動が抑えられる。
【0010】
ここで、本発明のコネクタにおいて、メインハウジングおよびフロントハウジングのうちの一方が第1係合部を有し、他方が、フロントハウジングがメインハウジングに対し嵌合方向前方に移動したときに第1係合部に係止してフロントハウジングのメインハウジングからの抜けを防止するとともにフロントハウジングの嵌合方向後方への移動を可能とする第2係合部を有することが好ましい。
【0011】
上記の第1係合部および第2係合部を備えると、フロントハウジングの抜けが防止されるとともに、フロントハウジングの嵌合方向への移動が可能となる。
【0012】
また、フロントハウジングが、相手コネクタとの嵌合面に突起を有することが好ましい。突起を有すると、相手コネクタとの嵌合時にその突起、すなわち、嵌合面の予め定められた箇所を相手コネクタに突き当てることができる。
【0013】
また、本発明のコネクタにおいて、フロントハウジングが、窪みを持ち嵌合時に相手コネクタに押し当てられて嵌合方向後方に撓むアーム部を有することが好ましい。
【0014】
このアーム部を備えると、ハウジングとコンタクトとの間のガタつきを防止しつつ両コネクタの嵌合面同士を接触させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、リテーナ付きのコネクタにおいて、ハウジングとコンタクトとの間のガタつきが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態のコネクタと、そのコネクタと組み合う相手コネクタとを示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した本発明の実施形態のコネクタの特徴部分を示した模式断面図である。
【
図3】相手コネクタと嵌合する際の、本実施形態のコネクタの振舞を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態のコネクタと、そのコネクタと組み合う相手コネクタとを示した外観斜視図である。
【0019】
この
図1には、相手コネクタ60に3つのコネクタ10が嵌合している状態が示されている。相手コネクタ60は、例えば自動車のエンジンルーム内などの振動が伝わりやすい環境に固定されている。この相手コネクタ60を構成している雄型のコンタクト(不図示)は、そのハウジング61に固定されている。すなわち、この相手コネクタ60は、ハウジング61とコンタクトとの間にガタがなく、一体に構成されたコネクタである。
【0020】
この相手コネクタ60に嵌合している3つのコネクタ10は、形状はそれぞれ異なっているものの、本発明の実施形態としての同じ特徴を持ったコネクタである。これら3つのコネクタ10は、レバー11を備えている。このレバー11を回動することにより相手コネクタ60と嵌合し、逆向きに回動することにより嵌合が解除される。
【0021】
図2は、
図1に示した本発明の実施形態のコネクタの特徴部分を示した模式断面図である。
【0022】
このコネクタ10は、電線50が接続された雄型のコンタクト20と、ハウジング30と、リテーナ40とを備えている。
【0023】
ハウジング30は、コンタクト20を収容する収容室301を有する。また、このハウジング30は、前ハウジング31と、中央ハウジング32と、後ハウジング33とで構成されている。前ハウジング31は、本発明にいうフロントハウジングの一例に相当する。また、中央ハウジング32、あるいは中央ハウジング32と後ハウジング33とを合わせた構成が、本発明にいうメインハウジングの一例に相当する。
【0024】
前ハウジング31は、コンタクト20を収容する収容室301の一部である前端部収容室301aを有する。この前端部収容室301aは、コンタクト20の嵌合方向前端部分を収容している。また、中央ハウジング32はコンタクト20を収容する収容室301を構成するメイン収容室301bを有する。このメイン収容室301bは、コンタクト20の嵌合方向前端部分を除く部分を収容している。前ハウジング31は、中央ハウジング32に対し、嵌合方向に移動可能となっている。前ハウジング31の移動については後で詳述する。
【0025】
後ハウジング33は、コンタクト20を収容する収容室301に連通し電線50を通過させる貫通孔331を有する。後ハウジング33は、中央ハウジング32と一体に組み立てられている。
【0026】
リテーナ40は、相手コネクタ60(
図1参照)との嵌合方向(矢印Xで示す方向)に交わる横方向から、中央ハウジング32に差し込まれる。このリテーナ40は、コンタクト20が嵌合方向後方(後ハウジング33側)に抜けるのを防止する役割りを担っている。ただし、リテーナ40の差込み位置は、部品の公差等を考慮して、コンタクト20の係止部分21から寸法Dだけ離れた位置である。したがって、この状態のままでは、コネクタ10が振動を受けるとコンタクト20は、ハウジング30に対し、その寸法Dの範囲内でガタつくことになる。
【0027】
上述の通り、前ハウジング31は、中央ハウジング32に対し嵌合方向に移動可能である。この
図2には、前ハウジング31が中央ハウジング32に対し嵌合方向前方に移動した状態が示されている。
【0028】
前ハウジング31には、係止爪311が設けられている。また、中央ハウジング32には、その係止爪311が入り込む凹部321が設けられている。係止爪311は、本発明にいう第1係合部の一例に相当し、凹部321は、本発明にいう第2係合部の一例に相当する。凹部321は、前ハウジング31が嵌合方向前方に移動した状態では係止爪311と係止し、これにより前ハウジング31が中央ハウジング32から抜け止めされている。ただし、この凹部321は、前ハウジング31が嵌合方向後方に移動可能な寸法を有している。
【0029】
なお、この実施形態では、前ハウジング31に係止爪311が設けられ、中央ハウジング32に凹部321が設けられている。ただし、これとは逆に、中央ハウジング32が係止爪311に相当する構成を有し、前ハウジング31が凹部321に相当する構成を有していてもよい。
【0030】
また、この前ハウジング31はアーム部312を有する。このアーム部312は、相手コネクタ60側に突き出た突起312aと、その後方に設けられた窪み312bによって形成されている。このアーム部312は、突起312aが押されたときに嵌合方向後方に撓む構造となっている。
【0031】
なお、前ハウジング31の前端部収容部301aは、コンタクト20の前端に当接する内壁がテーパ面に形成されている。これにより、コンタクト20の嵌合方向(矢印Xで示す方向)の沿った長さのばらつきを吸収する。
【0032】
図3は、相手コネクタと嵌合する際の、本実施形態のコネクタの振舞を示した模式図である。
【0033】
ここで、一点鎖線は、相手コネクタ60の嵌合凹部(ここでは不図示)の嵌合面62を表している。
【0034】
図3(A)は、このコネクタ10が相手コネクタ60に向かって嵌合方向(矢印Xの方向)に移動してきて、突起312aが相手コネクタ60の嵌合面62に接した直後の状態を表している。この
図3(A)では、
図2と同様、前ハウジング31は嵌合方向前方に移動した状態にある。
【0035】
図3(B)は、
図3(A)と比べ、コネクタ10が
図2に示すガタの寸法Dだけ嵌合方向(矢印Xの方向)に移動した状態を示している。ただし、前ハウジング31は、突起312aが相手コネクタ60に接しているため、矢印Xの方向へは移動できない。したがって、前ハウジング31は、中央ハウジング32に対し相対的に、嵌合方向後方(矢印Xとは逆向き)に移動する。その移動の際には、コンタクト20も一緒に移動させ、コンタクト20をリテーナ40に押し当てる。これにより、ガタつきを生じさせる寸法Dがゼロとなる。
【0036】
図3(C)は、
図3(B)と比べ、コネクタ10がさらに嵌合方向(矢印Xの方向)に移動した状態を示している。ここでは、分かり易さのため、アーム部312を強調した形状に示している。コネクタ10を
図3(B)の状態からさらに嵌合方向前方(矢印Xの方向)に移動させると、アーム部312が撓み、嵌合面313と相手コネクタ60との間の隙間がなくなり、前ハウジング31の前端面であるコネクタ10の嵌合面313と相手コネクタの嵌合面が正しく接触する。
【0037】
このように、このコネクタ10によれば、相手コネクタと正しく嵌合し、しかも、ハウジング30とコンタクト20とのガタつきが抑えられる。
【符号の説明】
【0038】
10 コネクタ
11 レバー
20 コンタクト
30 ハウジング
301 収容室
301a 前端部収容室
301b メイン収容室
31 前ハウジング(フロントハウジング)
311 係止爪(第1係合部)
312 アーム部
312a 突起
312b 窪み
313 嵌合面
32 中央ハウジング(メインハウジング)
321 凹部(第2係合部)
33 後ハウジング
331 貫通孔
40 リテーナ
50 電線
60 相手コネクタ
61 相手コネクタのハウジング