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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/695 20150101AFI20220729BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220729BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E05F15/695
B60J5/00 A
B60R21/00 310N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018239954
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101017
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(72)【発明者】
【氏名】八木原 豊明
(72)【発明者】
【氏名】網本 建治
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283976(JP,A)
【文献】特開2006-111132(JP,A)
【文献】米国特許第6459168(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開閉体を開閉させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動させる駆動装置と、
前記開閉体の開閉時に操作される操作スイッチと、
前記操作スイッチが操作されると、前記駆動装置に閾値を下回る電圧レベルの信号を出力することにより、前記アクチュエータを駆動させる信号出力装置と、を備える車両用の開閉体制御装置であって、
前記信号出力装置は、
前記操作スイッチと前記駆動装置とを接続し、前記操作スイッチの操作に応じて前記信号を前記駆動装置に出力する信号線と、
前記車両の水没を検出する水没検出回路と、
前記車両の水没が検出され、かつ前記操作スイッチが操作されていない場合にオンするスイッチと、
前記スイッチを介して電源に接続され、前記スイッチがオンされた場合に、前記信号線に電気的に接続して、電圧レベルが前記閾値以上の信号を前記駆動装置に出力させるプルアップ抵抗と、を備えることを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項2】
前記スイッチは、
前記水没検出回路に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタに接続され、前記プルアップ抵抗と前記電源とを接続する第2のトランジスタと、を備え、
前記操作スイッチは、前記水没検出回路と前記第1のトランジスタとの接続間に接続され、
前記第1のトランジスタが、前記車両の水没が検出され、かつ前記操作スイッチが操作されていない場合に前記第2のトランジスタを駆動することによって、前記プルアップ抵抗と前記電源とを電気的に接続することを特徴とする請求項1記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記第2のトランジスタは、MOSFETであることを特徴とする請求項2記載の開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーウインドウ装置は、車両のサイドドア等のウィンドウガラスを、モータ等のアクチュエータによって駆動して昇降させる。パワーウインドウ装置は、ユーザがウインドウの昇降を指示するための操作スイッチと、ウインドウを駆動させる駆動装置と、操作スイッチの操作に応じて信号を駆動装置に出力する信号出力装置が設けられている。信号出力装置は、例えば、操作スイッチが操作されると、所定値を下回る低電圧レベルの信号を駆動装置に入力する。
【0003】
しかしながら、車両が事故や災害等で水没した場合、信号出力装置の回路部品のはんだ部分を含む導電部が水に濡れて、駆動装置に出力する信号が低電圧レベルまで下がってしまうことがある。この場合、ユーザが操作スイッチを操作していないのにも関わらず、低電圧レベルの信号が駆動装置に出力されてしまい、ウインドウの誤動作が起きる可能性がある。ウインドウの誤動作を防止するために、パワーウインドウ装置の回路部品を収容するケースの内部に、耐水性に優れた絶縁性のエポキシ樹脂を充填することにより、回路部品をケース内にモールドすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-20601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケース内にエポキシ樹脂を充填することによって、製造コストが増大する。製造コストを抑えるために、回路部品に防水コーティングを施すことも提案されているが、防水コーティングを行っても、防水性能が回路構成に対して十分でない場合もある。パワーウインドウ装置において、水没時でもウインドウの誤動作を防ぎ、ユーザの操作に応じてウインドウを昇降させる時間を確保することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車両の開閉体を開閉させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動させる駆動装置と、
前記開閉体の開閉時に操作される操作スイッチと、
前記操作スイッチが操作されると、前記駆動装置に閾値を下回る電圧レベルの信号を出力することにより、前記アクチュエータを駆動させる信号出力装置と、を備える車両用の開閉体制御装置であって、
前記信号出力装置は、
前記操作スイッチと前記駆動装置とを接続し、前記操作スイッチの操作に応じて前記信号を前記駆動装置に出力する信号線と、
前記車両の水没を検出する水没検出回路と、
前記車両の水没が検出され、かつ前記操作スイッチが操作されていない場合にオンするスイッチと、
前記スイッチを介して電源に接続され、前記スイッチがオンされた場合に、前記信号線に電気的に接続して、電圧レベルが前記閾値以上の信号を前記駆動装置に出力させるプルアップ抵抗と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の水没時に開閉体の誤動作を防止し、ユーザの操作スイッチの操作に応じて開閉体を動作させる時間を確保することができ、車両の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るパワーウインドウ装置の構成を示す図である。
図2】通常時と車両の水没時の出力回路の各構成要素の動作を示す表である。
図3】比較例1の出力回路を示す図である。
図4】比較例2の出力回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
実施の形態では、本発明の開閉体制御装置を、車両のサイドドア等に配置されたウインドウの開閉を制御するパワーウインドウ装置に適用する例を説明する。
図1は、実施の形態に係るパワーウインドウ装置の構成を示す図である。
パワーウインドウ装置1は、車両のサイドドア等に配置されたウインドウWの開閉を制御するものであり、図1に示すように、ユーザが操作する操作スイッチSW1、SW2と、ウインドウWを昇降させることにより開閉する駆動装置2と、ユーザの操作スイッチSW1、SW2の操作に応じて信号を駆動装置2に出力する信号出力装置3と、を備えている。
【0010】
操作スイッチSW1、SW2は、ユーザがウインドウWの昇降を操作するためのものであり、例えば車両のサイドドアに、上昇用の操作スイッチSW1と、下降用の操作スイッチSW2がそれぞれ配置されている。
【0011】
操作スイッチSW1、SW2は、一例として開閉可能な2つの接点C1、C2をそれぞれ備えたスイッチを用いることができる。操作スイッチSW1、SW2は、それぞれ接点C1側で信号出力装置3に接続し、接点C2側は接地されている。操作スイッチSW1、SW2は、ユーザが操作すると、接点C1、C2が閉状態となることによりオンし、ユーザが操作しない状態では接点C1、C2が開状態となりオフする。
【0012】
駆動装置2は、ウインドウWを昇降させるモータ21と、モータ21を駆動させる駆動制御回路22とを備える。
【0013】
駆動制御回路22には入力端子24a、24bが設けられ、入力端子24a、24bに信号出力装置3からの信号を入力する信号線51、71が接続されている。操作スイッチSW1が操作されると、信号線51から入力端子24aを介して信号が入力され、操作スイッチSW2が操作されると、信号線71から入力端子24bを介して信号が入力される。図示は省略するが、駆動制御回路22の入力端子24a、24bには電圧センサが設けられている。駆動制御回路22は、それぞれの入力端子24a、24bに入力される電圧のレベルを判定することで、駆動制御回路22に上昇または下降の指令を出力する。
【0014】
駆動装置2には、信号線51および2のそれぞれに接続するプルアップ抵抗25、26が設けられている。プルアップ抵抗25、26は、入力側が車両電源に接続され、出力側がそれぞれ信号線51、71に接続されている。車両電源は、特定のものに限定されず、例えばイグニッションスイッチとしても良く、あるいはバッテリとしても良い。
【0015】
信号出力装置3は、操作スイッチSW1の操作に応じて駆動装置2に信号を出力する第1の回路5と、操作スイッチSW2の操作に応じて駆動装置2に信号を出力する第2の回路7を備える。以降、第1の回路5と第2の回路7をまとめて言及するときは、単に「回路5、7」ともいう。信号出力装置3はまた、回路5、7のそれぞれに接続し、車両の水没を検出する水没検出回路9を備える。
【0016】
水没検出回路9は、車両の水没を検出する水没センサ91と、水没センサ91に抵抗92を介して接続されたPNP型のトランジスタ93とを備える。
水没センサ91は、例えば、基板上に対向配置した2か所の電極から構成することができる。これらの電極が車両の水没によって水に濡れると、電極の間にリーク電流が発生し、このリーク電流によって通電することで、水没を検出する。
水没センサ91を設置する場所は限定されないが、通常時に雨の降り込み等で濡れる場所は避け、ケース等に収納して車両全体が浸水したときに濡れる場所に配置すると良い。
【0017】
トランジスタ93は、ベース側が抵抗92を介して水没センサ91に接続し、エミッタ側が車両電源に接続している。トランジスタ93のコレクタ側は、回路5、7にそれぞれ接続している。トランジスタ93のエミッタ-ベース間には抵抗94が接続されている。水没センサ91にリーク電流が流れると、トランジスタ93のベースに電圧が印加されてオンし、コレクタ-エミッタ間が通電する。
【0018】
第1の回路5は、前記した信号線51と、信号線51に接続するプルアップ抵抗52と、信号線51とプルアップ抵抗52の電気的な接続および非接続を切り替えるスイッチ53と、を備えている。
信号線51は、一端側が操作スイッチSW1の接点C1側に接続し、他端側は信号出力装置3の出力端子4aを介して駆動装置2の駆動制御回路22の入力端子24aに接続している。
【0019】
プルアップ抵抗52は、一端側が信号線51の操作スイッチSW1と出力端子4aの間に接続し、他端側はダイオード54とスイッチ53を介して車両電源に接続している。
【0020】
スイッチ53は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)56と、MOSFET56を駆動するNPN型のトランジスタ55から構成されている。トランジスタ55は、ベース側が2つの抵抗57、58を介して水没検出回路9のトランジスタ93のコレクタ側に接続している。操作スイッチSW1は、トランジスタ93とトランジスタ55の接続間に接続している。
具体的には、2つの抵抗57と58の間に、操作スイッチSW1の接点C1がダイオード59を介して接続している。
【0021】
信号線51は、ダイオード59と操作スイッチSW1の接点C1の間に接続している。
トランジスタ55のコレクタ側は、抵抗60を介して車両電源に接続され、エミッタ側は接地されている。トランジスタ55のエミッタ-ベース間には抵抗61が接続されている。
【0022】
MOSFET56は、ゲート側がトランジスタ55のコレクタ側と車両電源との間に接続し、ソース側が車両電源に接続し、ドレイン側がダイオード54を介してプルアップ抵抗52に接続している。
【0023】
このような構成により、スイッチ53のトランジスタ55とMOSFET56は、水没により水没検出回路9のトランジスタ93がオンになり、かつ操作スイッチSW1がオフである場合に、それぞれオンとなって、プルアップ抵抗52を信号線51に電気的に接続する。
【0024】
第2の回路7は、第1の回路5と同じ構成を有しており、前記した信号線71と、信号線71に接続するプルアップ抵抗72と、信号線71とプルアップ抵抗72の電気的な接続および非接続を切り替えるスイッチ73と、を備えている。
【0025】
信号線71は、一端側が操作スイッチSW2の接点C1側に接続し、他端側は信号出力装置3の出力端子4bを介して駆動装置2の駆動制御回路22の入力端子24bに接続している
【0026】
スイッチ73は、MOSFET76と、MOSFET76を駆動するNPN型のトランジスタ75とから構成されている。トランジスタ75は、ベース側が2つの抵抗77、78を介して水没検出回路9のトランジスタ93のコレクタ側に接続し、コレクタ側は、抵抗80を介して車両電源に接続され、エミッタ側は接地されている。トランジスタ75のエミッタ-ベース間には抵抗81が接続されている。抵抗77と78の間に、操作スイッチSW2の接点C1がダイオード79を介して接続している。すなわち、操作スイッチSW2は、水没検出回路9のトランジスタ93とトランジスタ75の接続間に接続している。
【0027】
信号線71は、ダイオード79と操作スイッチSW2の接点C1の間に接続している。
トランジスタ75のコレクタ側は、抵抗80を介して車両電源に接続され、エミッタ側は接地されている。トランジスタ75のエミッタ-ベース間には抵抗81が接続されている。
MOSFET76は、ゲート側がトランジスタ75のコレクタ側に接続し、ソース側が車両電源に接続し、ドレイン側がダイオード74を介してプルアップ抵抗72に接続している。
【0028】
このような構成により、スイッチ73のトランジスタ75とMOSFET76は、水没により水没検出回路9のトランジスタ93がオンになり、かつ操作スイッチSW2がオフである場合に、それぞれオンとなって、プルアップ抵抗72を信号線71に電気的に接続する
【0029】
以上のように構成されたパワーウインドウ装置1の動作を説明する。
駆動装置2の駆動制御回路22は、入力端子24a、24bに入力される電圧レベルを判定することで、操作スイッチSW1または操作スイッチSW2が操作されたかを判定する。駆動制御回路22は、操作スイッチSW1または操作スイッチSW2が操作されていると判定した場合に、モータ21を駆動してウインドウWを上昇または下降させる。
【0030】
実施の形態において、駆動制御回路22はローアクティブ制御を行っている。駆動制御回路22は、入力端子24a、24bの両方に入力される信号の電圧レベルが閾値TH以上であると判定すると、操作スイッチSW1、SW2がともに操作されていないと判定し、モータ21を停止させウインドウWを非昇降状態とする。閾値THは、予め設定されている。
【0031】
駆動制御回路22は、入力端子24aの電圧レベルが閾値THを下回り、入力端子24bの電圧レベルが閾値TH以上である場合、操作スイッチSW1が操作されていると判定し、モータ21を駆動してウインドウWを上昇させる。
【0032】
駆動制御回路22は、入力端子24aの電圧レベルが閾値TH以上であり、入力端子24bの電圧レベルが閾値THを下回る場合、操作スイッチSW2が操作されていると判定し、モータ21を駆動してウインドウを下降させる。
【0033】
信号出力装置3は、操作スイッチSW1または操作スイッチSW2が操作された際には、出力端子4aまたは出力端子4bから閾値THを下回る電圧レベルの信号(以下、「Lo信号」という)を出力することで、駆動制御回路22の入力端子24aまたは入力端子24bに入力される電圧レベルを閾値TH以下に変化させて、ウインドウWを昇降させている。
【0034】
信号出力装置3の具体的な動作について、通常時と車両の水没時に分けて説明する。
図2は、通常時と車両の水没時の、第1の回路5の各構成要素の動作を示した表である。
図2では、通常時と水没時のそれぞれで、操作スイッチSW1の操作に応じた、第1の回路5の各構成要素の動作を示している。
なお、図示は省略しているが、第2の回路7の各構成要素も、操作スイッチSW2の操作に応じて、第1の回路5と同様に動作する。
【0035】
図2に示すように、通常時は、水没センサ91にリーク電流が流れないことから、水没検出回路9のトランジスタ93はオフである。そのため、操作スイッチSW1の操作に関わらず、第1の回路5において、スイッチ53のトランジスタ55およびMOSFET56もオフの状態であり、プルアップ抵抗52は信号線51に電気的に非接続の状態である。
通常時で操作スイッチSW1がオフの状態の場合、接点C1、C2が開状態のため、信号出力装置3から駆動装置2の駆動制御回路22にLo信号は入力されず、図2に示すように第1の回路5は駆動装置2に対してOPENの状態である。
【0036】
一方、図1に示すように、信号線51には、駆動装置2側に設けられたプルアップ抵抗25、26が接続されている。これによって、駆動装置2の入力端子24aには、プルアップ抵抗25を介して車両電源でプルアップされた閾値TH以上の信号(以下、「Hi信号」という)が入力された状態となる。これによって、駆動制御装置22は操作スイッチSW1が操作されていないと判定する。
【0037】
操作スイッチSW1が操作され、接点C1、C2が閉状態となった場合、接点C2は接地されているため、出力端子4aはGNDレベルになるため、駆動制御装置22の入力端子24aにはLo信号が入力される。これによって、駆動制御装置22は操作スイッチSW1が操作されたと判定する。
【0038】
前記した第1の回路5と同様に、通常時は、第2の回路7においてスイッチ73のトランジスタ75およびMOSFET76はオフされ、プルアップ抵抗52は信号線51に電気的に非接続である。
操作スイッチSW2がオフの場合、駆動装置2の入力端子24bには、プルアップ抵抗26を介して車両電源でプルアップされたHi信号が入力されるため、駆動制御回路22は操作スイッチSW2が操作されていないと判定する。操作スイッチSW2が操作されると、出力端子4bはGNDレベルになるため、駆動制御回路22の入力端子24bにはLo信号が入力され、駆動制御回路22は操作スイッチSW2が操作されたと判定する。
【0039】
次に、車両の水没時の実施の形態の信号出力装置3の動作について、比較例1および2と対比しながら説明する。
図3は、比較例1を示す図である。
図4は、比較例2を示す図である。
実施の形態の構成と区別するために、比較例1は符号の末尾に「A」を付け、比較例2は符号の末尾に「B」を付けて図示している。なお、図3および図4は簡略化した図であり、それぞれ一つの操作スイッチSW10A、SW10Bと駆動制御回路22Aを接続する構成のみを図示している。図3の比較例1は、信号出力装置3Aに、水没検出回路、スイッチおよびプルアップ抵抗を設けない構成を示している。図4の比較例2は、信号出力装置3Bに、スイッチを設けず、プルアップ抵抗52Bを水没検出回路と操作スイッチSW10Bの間に直接接続した構成を示している。
【0040】
車両が水没すると、操作スイッチSW10Aの接点が水に濡れてリーク電流が発生することがある。
この場合、図3の比較例1では、本実施の形態とは異なり、信号線51Aにプルアップ抵抗が接続されていないので、操作スイッチSW10Aが操作されていないにも関わらず、出力端子OPがGND(低電圧)レベルになり、駆動制御回路22Aの入力端子IPにLo信号が入力される。この場合は、駆動制御回路22は操作スイッチSW10Aが操作されたと判定するため、ウインドウを誤って昇降させる可能性がある。
【0041】
一方、図2に示すように、実施の形態では、車両が水没すると、まず、水没検出回路9の水没センサ91にリーク電流が流れることによって、トランジスタ93がオンする。
【0042】
そして、操作スイッチSW1がオフの場合、接点C1、C2は開状態であるため、車両電源からトランジスタ93に流れた電流は、第1の回路5のトランジスタ55に流れる。トランジスタ55はベースに電圧が印加されてオンし、コレクタ-エミッタ間が通電する。これによって、車両電源からトランジスタ55のコレクタ側に接続されているMOSFET56のゲート側に電圧が印加されるため、MOSFET56がオンし、ソース-ドレイン間が通電する。
【0043】
これによって、プルアップ抵抗52が電気的に信号線51に電気的に接続する。操作スイッチSW1にリーク電流が発生していても、出力端子4aはプルアップ抵抗52を介して車両電源によってプルアップされるため、駆動装置2の入力端子24aに入力される信号はHi信号に維持される。これによって、駆動制御回路22は操作スイッチSW1が操作されていないと判定する。
【0044】
一方、図1において、車両の水没時、操作スイッチSW1が操作されオンになった場合は、接点C1、C2は閉状態となるため、車両電源からトランジスタ93に流れた電流は、操作スイッチSW1側に流れる。これによって、スイッチ53には電流が流れないため、トランジスタ55およびMOSFET56はオフ状態となり、プルアップ抵抗52は信号線51に対して電気的に非接続の状態となる。操作スイッチSW1の接点C2が接地されているため、出力端子4aはGNDレベルになり、駆動制御回路22の入力端子24aにはLo信号が入力される。これによって、駆動制御回路22は操作スイッチSW1が操作されたと判定する。
【0045】
第2の回路7についても、同様に、車両の水没時には、操作スイッチSW2が操作されていない場合に、スイッチ73のトランジスタ75とMOSFET76がオンとなって、プルアップ抵抗72を信号線71に電気的に接続することで、駆動制御回路22の入力端子24bに入力される信号をHi信号に維持する。これによって、駆動制御回路22は、操作スイッチSW2が操作されていないと判定する。一方、操作スイッチSW2が操作された場合には、スイッチ73のトランジスタ75とMOSFET76はオフとなって、プルアップ抵抗72は信号線71に電気的に非接続となり、駆動制御回路22の入力端子24bにはLo信号が入力される。これによって、駆動制御回路22は操作スイッチSW2が操作されたと判定する。
【0046】
このように、実施の形態では、水没検出回路9とスイッチ53の接続間に操作スイッチSW1を接続し、水没検出回路9とスイッチ73の接続間に操作スイッチSW2を接続することで、車両の水没時には、操作スイッチSW1、SW2の操作状態に応じて、プルアップ抵抗52、72の信号線51、71への電気的な接続と非接続を切り替えることができる。
【0047】
一方、図4に示した比較例2では、第1の回路5Bにスイッチを設けず、プルアップ抵抗52Bを水没検出回路9Bのトランジスタ93Bに直接接続している。この場合、水没時には、トランジスタ93Bがオンになると、プルアップ抵抗52Bは信号線51Bへ常時電気的に接続した状態となる。これによって、操作スイッチSW10Bが操作された際に駆動制御回路22Bに出力するLo信号の電圧もプルアップされるため、Lo信号の電圧レベルを低く維持しにくくなり、昇降しなくなる誤動作が発生する可能性がある。
【0048】
一方、実施の形態では、図1に示すように、スイッチ53、73を設けたことによって、操作スイッチSW1、SW2を操作されていない場合にのみ、プルアップ抵抗52、72が信号線51、71に電気的に接続する。このため、操作スイッチSW1、SW2が操作されたときに出力するLo信号の電圧レベルを低く維持することができる。
【0049】
また、図4に示した比較例2では、プルアップ抵抗52Bが信号線51Bに常時接続しているため、操作スイッチSW10Bの接点間に電位差が生じる時間が長くなり、これによって、操作スイッチSW10Bの接点の腐食速度を速める可能性がある。これによって、プルアップ抵抗52Bを設けていてもHi信号の電圧レベルを維持できる時間が短くなってウインドウが誤動作したり、車両の水没時にユーザがウインドウを動作させることができる時間が短くなったりする可能性がある。
【0050】
実施の形態では、図1に示す構成によってプルアップ抵抗52、72が常時接続ではないため、接点C1、C2間に電位差が生じる時間を短くすることができ、操作スイッチSW1、SW2の腐食速度を遅くすることができる。これによって、水没時に、ウインドウWの誤動作を防止し、ユーザがウインドウWを操作する時間を確保することができる。
【0051】
また、図4に示す比較例2では、プルアップ抵抗52Bを介して操作スイッチSW10B側に電流が流れるため、操作スイッチSW10Bの保護のために、プルアップ抵抗52Bの抵抗値を大きくする必要がある。プルアップ抵抗52Bの抵抗値を大きくすると、Hi信号の電圧レベルを高く維持することが難しい。
【0052】
実施の形態では、プルアップ抵抗52、72が常時接続ではないため操作スイッチSW1、SW2側に電流が流れる時間を短くすることができ、プルアップ抵抗52、72の抵抗値を低く抑えることができる。これによってプルアップ抵抗52、72を接続した際のHi信号の電圧レベルを高く維持することができる。また、電圧降下の少ないMOSFET56、76で車両電源とプルアップ抵抗52、72を接続することにより低抵抗によるプルアップとすることができ、Hi信号の電圧レベルを高く維持することができる。
【0053】
以上の通り、実施の形態に係るパワーウインドウ装置1(開閉体制御装置)は、
(1)車両のウインドウW(開閉体)を昇降(開閉)させるモータ21(アクチュエータ)と、
モータ21を駆動させる駆動装置2と、
ウインドウWの昇降時に操作される操作スイッチSW1、SW2と、
操作スイッチSW1、SW2が操作されると、駆動装置2にLo信号(閾値THを下回る電圧レベルの信号)を出力することにより、モータ21を駆動させる信号出力装置3と、を備え、
信号出力装置3は、
操作スイッチSW1、SW2と駆動装置2とを接続し、操作スイッチSW1、SW2の操作に応じて信号を駆動装置2に出力する信号線51、71と、
車両の水没を検出する水没検出回路9と、
車両の水没が検出され、かつ操作スイッチSW1、SW2が操作されていない場合にオンするスイッチ53、73と、
スイッチ53、73を介して車両電源(電源)に接続され、スイッチ53、73がオンされた場合に、信号線51、71に電気的に接続して、Hi信号(電圧レベルが閾値TH以上の信号)を駆動装置2に出力させるプルアップ抵抗52、72と、を備える。
【0054】
車両が水没して回路部品が濡れてしまうと、操作スイッチSW1、SW2が操作されていないにもかかわらず、Lo信号が出力されることがあり、それによって、ウインドウWが誤動作するおそれがある。
【0055】
実施の形態では、車両の水没時で、かつ操作スイッチSW1、SW2が操作されていないときに、プルアップ抵抗52、72が信号線51、71に電気的に接続して駆動装置2にHi信号を出力することで、ウインドウWの誤動作を防止することができる。
【0056】
また、水没時にプルアップ抵抗52、72を信号線51、71に常時接続させず、操作スイッチSW1、SW2が操作されていない場合のみ信号線51、71に電気的に接続させることによって、電位差が生じる時間を短くして操作スイッチSW1、SW2の接点C1、C2等の腐食速度を遅らせることができる。これによって、車両の水没時にユーザがウインドウWを操作する時間を確保することができ、車両の安全性を向上させることができる。
【0057】
また、図4に示す比較例2のようにプルアップ抵抗52Bを常時接続とした場合は、操作スイッチSW10Bの保護のためにプルアップ抵抗52Bの抵抗値を大きくする必要があったが、実施の形態では、図1に示すようにプルアップ抵抗52、72は常時接続ではないため、プルアップ抵抗52、72の抵抗値を低く抑えることができる。これによってプルアップ抵抗52、72を接続した際のHi信号の電圧レベルを高く維持することができ、ウインドウWの誤動作を適切に防止することができる。
【0058】
(2)スイッチ53、73は、
水没検出回路9に接続されたトランジスタ55、75(第1のトランジスタ)と、
トランジスタ55、75に接続され、プルアップ抵抗52、72と車両電源とを接続するMOSFET56、76(第2のトランジスタ)と、を備え、
操作スイッチSW1、SW2は、水没検出回路9とトランジスタ55、75との接続間に分岐して接続され、
トランジスタ55、75は、車両の水没が検出され、かつ操作スイッチSW1、SW2が操作されていない場合にMOSFET56、76を駆動することによって、プルアップ抵抗52、72と車両電源とを電気的に接続する。
【0059】
スイッチ53、73を、水没検出回路9と操作スイッチSW1、SW2の状態に応じてオンするトランジスタ55、75と、トランジスタ55、75のオンによって駆動され、車両電源とプルアップ抵抗52、72の電気的な接続および非接続を切り替えるMOSFET56、76で構成することで、車両の水没時に操作スイッチSW1、SW2の状態に応じたプルアップ抵抗52、72の信号線51、71への接続および非接続の切替えを適切に行うことができる。
【0060】
また、電圧降下の少ないMOSFET56、76で車両電源とプルアップ抵抗52、72を接続することにより低抵抗によるプルアップとすることができ、Hi信号の電圧レベルを高く維持することができる。これによって、車両の水没時のウインドウWの誤動作を防止することができる。
【0061】
前記した実施の形態では、一つのサイドドアのウインドウWに設けられたパワーウインドウ装置1について説明したが、これに限られず、車両のそれぞれのサイドドアのウインドウWに対して、同様の構成の装置を設けることができる。その際、水没検出回路9は、複数のパワーウインドウ装置1に対して共通の回路としても別個の回路を設けても良く、あるいは車両の前方と後方のサイドドアに分けて水没検出回路9を設けても良い。また、本発明の開閉体制御装置の適用は、パワーウインドウ装置1に限定されず、例えば他の開閉体としてサンルーフを開閉する装置にも同様の構成を適用することができる。
【0062】
前記した実施の形態では、スイッチ53、73において、車両電源とプルアップ抵抗52、72を接続する第2のトランジスタとしてMOSFET56、76を用いたが、これに限られない。水没時に出力するHi信号のプルアップに必要とされる電圧に応じて、第2のトランジスタとしてPNP型のトランジスタを用いても良い。PNP型のトランジスタを用いる場合は、ベース側をトランジスタ55、75のコレクタ側に接続し、エミッタ側を車両電源に接続し、コレクタ側をダイオード54、74を介してプルアップ抵抗52、72に接続すると良い。
【符号の説明】
【0063】
1 パワーウインドウ装置
2 駆動装置
3 信号出力装置
5 出力回路
4a、4b 出力端子
7 出力回路
9 水没検出回路
21 モータ
22 駆動制御回路
24a、24b 入力端子
25、26 プルアップ抵抗
51 信号線
55 トランジスタ
52 プルアップ抵抗
53 スイッチ
56 MOSFET
54 ダイオード
57、58、60、61 抵抗
71 信号線
72 プルアップ抵抗
73 スイッチ
76 MOSFET
74 ダイオード
77、78、80、81 抵抗
91 水没センサ
92、94 抵抗
93 トランジスタ
SW1 操作スイッチ
SW2 操作スイッチ
C1、C2 接点
W ウインドウ
図1
図2
図3
図4